説明

有機電子デバイス用の、修飾された仕事関数を有する安定した電極および方法

一実施形態は、電極上に分子を被着させるステップを含み(なおここで電極は1つの表面を有し、分子はこの表面に結合する結合基(例えばアンカー基)を有する)、こうして周囲条件下で少なくとも100時間安定した仕事関数を提供する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、その内容全体を参照により本発明に援用する2008年7月18日付けの米国仮特許出願第61/081808号に対する優先権を請求するものである。
【背景技術】
【0002】
有機電子デバイスは典型的には、有機電子材料および正孔注入または収集用の陽極と電子注入または収集用の陰極とを含んでいる。有機電子材料のエネルギーレベルに向かってまたはこれから離れるように電極の仕事関数に変化を加える(modify)ことで、デバイスの性能を改善することが可能である。電極の組成を変更すると、結果として、より高い反応度およびより低い電極安定性などの望ましくない効果がもたらされるかもしれない。例えば空気プラズマ処理などで電極の表面を修飾すると、結果として不安定な仕事関数がもたらされ、これは経時的に変化して未処理の電極の仕事関数に近づく。電極の仕事関数に変化を加えるために、薄膜(例えば単分子層)を形成し得る分子またはポリマーで電極を処理することが可能であるが、これらの薄層は理想的な化学的抵抗性を提供しないかもしれない。フルオロアルキル化合物を使用することによって表面の化学的抵抗性を増大させることは、接着力を低下させる(濡れ性を減少させる)ものとして当技術分野において公知であり、デバイスの性能の一部のパラメータに不利な影響を及ぼすかもしれない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】S.H.Lee,et al.,J.Kor.Phys.Soc.49(5),2034−2039(2006)
【非特許文献2】S.Koh,et al.,Langmuir,22,6249−6255(2006)
【非特許文献3】Bhattacharya,A.K.;Thyagarajan,G.Chem.Rev.1981,81,415−430
【非特許文献4】Goossen,L.J.,et al.,Synlett 2005,(3),445−448
【非特許文献5】Han,L.−B.,et al.,J.Am.Chem.Soc.2000,122,5407−5408
【非特許文献6】Inorg.Chim.Acta.2001,322(1−2)106−112
【非特許文献7】「Organic Electronics:「Materials,Manufacturing and Applications」、H.Klauk ed.,Wiley−VCH,2006
【非特許文献8】「Handbook of Organic Electronics and Photonics」,H.S.Nalwa ed.,American Scientific Publishers,2006;「Organic Light Emitting Devices
【非特許文献9】Synthesis,Properties and Applications」,K.Mullen ed.,Wiley−VCH,2006
【非特許文献10】「Organic Photovoltaics:Mechanisms,Materials,and Devices」,S.−S.Sun and N.S.Sariciftci ed.,CRC,2005
【非特許文献11】「Organic Field−Effect Transistors」,Z.Bao and J.Locklin ed.,CRC,2007
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態は、電極上に分子を被着させるステップを含み(なおここで電極は1つの表面を有し、前記の分子はこの表面に結合する結合基(例えばアンカー基)を有する)、こうして周囲条件下(実験室内の空気中)で少なくとも100時間安定した仕事関数を提供する方法である。別の実施形態において、結合された分子を伴う電極の仕事関数は、その他の表面修飾手段により得ることのできる仕事関数と同じかまたは類似したものであるが、結合された分子を伴う電極の仕事関数は、その他の表面修飾手段により得られる仕事関数よりも安定している。一部の実施形態において、このその他の表面修飾手段は、空気プラズマ処理である。その他の実施形態において、電極は酸化物を含み、前記の分子はホスホン酸(例えばアルキルホスホン酸、ヘテロアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、またはヘテロアリールホスホン酸)である。さまざまなその他の実施形態としては、少なくとも1つの電極を含む有機電子デバイスにおいて、この電極が1つの表面およびこの表面に結合された結合基を伴う分子を有し、長期間にわたり安定した有機電子デバイスがある。
【0005】
別の実施形態は、
a)1つの表面を有する電極と;b)結合基を通して前記の電極の表面に結合された分子と;c)前記の電極と電気的に接触した有機電子材料と、を含むデバイスにおいて、前記の分子が少なくとも1つのフッ素化アリール基を含んでいるデバイスである。このフッ素化アリール基は、より優れた化学的抵抗性および長期安定性をもたらす一方で電極の接着特性に不利な影響を及ぼすことはない。
【0006】
別の実施形態は、a)一つの表面を有する透明な導電性金属酸化物電極およびb)その表面に結合されたフッ素化アリールホスホン酸を含む有機電子デバイスである。一部の実施形態において、フッ素化アリールホスホン酸はその表面上に単分子層を構成する。
【0007】
別の実施形態は、a)結合基およびフッ素化アリール基を含む分子を、1つの表面を有する電極上に被着させ、こうして結合基が表面に結合するステップとb)電極と有機電子材料が電気的接触状態となるように電極に近接して有機電子材料を被着させるステップとを含む方法である。この分子は、結合基とフッ素化アリール基の間にリンカー基をさらに含んでいてよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】有機電子デバイスの一部分の横断面図を示す。
【図2】いくつかのフッ素化アリールホスホン酸を示す。
【図3】空気プラズマで処理されたITOと対比した、表面結合ホスホン酸を伴うITOの仕事関数の安定性を示す。
【図4】空気プラズマで処理されたITOを用いたデバイスと対比した、表面結合ホスホン酸を伴うITOを用いたデバイスについての、(a)電流−電圧(I−V)および(b)輝度/外部量子効率(EQE)のグラフを示す。
【図5】空気プラズマで処理されたITOを用いたデバイスと対比した、表面結合ホスホン酸を伴うITOを用いたデバイスの安定性を示す。
【図6】空気プラズマで処理されたITOを用いたデバイスと対比した、表面結合ホスホン酸を伴うITOで製造されたOLEDデバイスについての、(a)電流−電圧(I−V)、および(b)輝度/外部量子効率(EQE)のグラフを示す。
【図7】空気プラズマで処理されたITOを用いたデバイスと対比した、表面結合ホスホン酸を伴うITOを用いて製造されたダイオードについての、電流−電圧(IV)グラフおよび単層ダイオードの構造を示す。
【図8】いくつかのホスホン酸を示す。
【図9】金属酸化物の表面に結合したいくつかのホスホン酸の表面エネルギーを示す。
【図10】ITO−PEDOT:PSSを用いたデバイスと対比した、表面結合ホスホン酸を伴うITOを用いて製造されたOLEDデバイスについての、(a)電流−電圧(I−V)および(b)輝度/外部量子効率(EQE)のグラフを示す。
【図11】ITO−PEDOT:PSSを用いたデバイスと対比した、表面結合ホスホン酸を伴うITOを用いて製造されたOLEDデバイスについての電界発光(EL)スペクトルを示す。
【図12】有機光起電(OPV)デバイスの構造および、空気プラズマで処理されたITOを用いたOPVデバイスと対比した、表面結合ホスホン酸を伴うITOを用いて製造されたOPVデバイスについての電流−電圧(I−V)グラフを示す。
【図13】いくつかのその他のホスホン酸および合成方法を示す。
【図14】チオフェン含有ホスホン酸を示す。
【図15】いくつかの官能基含有ホスホン酸を示す。
【図16】官能基含有ホスホン酸を含む表面上にポリマーをグラフトする方法を示す。
【図17】トリアリールアミン基を含むホスホン酸の合成を概略的に示す。
【図18】ホスホン酸の合成を概略的に示す。
【図19】ホスホン酸の合成を概略的に示す。
【図20】ホスホン酸の合成を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
さまざまな実施形態で、有機電子材料と金属酸化物電極の間の界面が制御されている(例えば電子特性、表面エネルギー、濡れ性、接着特性、機械的特性、化学的特性またはその任意の組合せを制御すること)。一つの実施形態は、電極上に分子を被着させるステップを含み(なおここで電極は1つの表面を有し、分子はこの表面に結合する結合基を有する)、こうして少なくとも100時間安定した仕事関数を提供する方法である。一般に「安定した」という用語は、周囲条件下での安定性、または不活性な作業条件下での安定性を意味する。数多くの実施形態において、安定した仕事関数は、分子を被着させる前の電極の仕事関数と異なっている。別の実施形態において、結合した分子を伴う電極の仕事関数は、その他の表面修飾手段(例えば空気プラズマ処理)によって得られると考えられる仕事関数と同じであるかまたは類似したものであるが、結合した分子を伴う電極の仕事関数は、その他の表面修飾手段によって得られる仕事関数よりも安定している。その他の実施形態において、結合分子を伴う電極の仕事関数は、24時間より長い間、その測定される仕事関数値を±0.03eV以内に維持するが、その他の表面処理を用いて得られた仕事関数は、その他の表面処理前の電極の値まで急速に減衰する。典型的に、この分子は、電極表面上で単分子層を構成する。結合基は、例えば、シラン、カルボン酸、スルホン酸、ボロン酸またはホスホン酸などの当技術分野において公知のもののいずれであってもよい。この分子は、例えば、結合剤(アンカー基と呼んでもよい)、リンカー基、および置換基を含んでいてよい。結合基(例えば−P(O)OH)はリンカー基(例えば−CH−)に結合され、置換基(例えば−C)はリンカー基に結合される。結合基は上記表面に共有結合または非共有結合されてよい。数多くの実施形態において、電極は、酸化物(例えば、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムアルミニウム亜鉛酸化物、アンチモンスズ酸化物、フッ素スズ酸化物、酸化カドミウム、またはスタン酸カドミウムなど)を含む。一実施形態において、仕事関数は4.5〜5.6eVである。その他の実施形態において、電極は酸化物を含み、上記分子はホスホン酸(例えば、アルキルホスホン酸、ヘテロアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、またはヘテロアリールホスホン酸)を含む。酸化物表面に対するホスホン酸の結合は、当技術分野において公知である。例えば、S.H.Lee,et al.,J.Kor.Phys.Soc.49(5),2034−2039(2006)およびS.Koh,et al.,Langmuir,22,6249−6255(2006)を参照されたい。例えば亜リン酸トリアルキルとフッ素化アリールハロゲン化物のMichaelis−Arbuzov反応とそれに続く加水分解(Bhattacharya,A.K.;Thyagarajan,G.Chem.Rev.1981,81,415−430を参照されたい)、光開始Arbuzov反応、臭化アリールの金属触媒リン酸化(Goossen,L.J.,et al.,Synlett 2005,(3),445−448)を参照されたい)、およびアルケンのヒドロリン酸化(Han,L.−B.,et al.,J.Am.Chem.Soc.2000,122,5407−5408を参照されたい)を含めた、当技術分野において公知の方法により、さまざまな置換基を伴う多様なアルキル、ヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリールホスホン酸が調製できる。ホスホン酸は同様に、フェロセンなどの有機金属基を含んでいてよい(例えば、Inorg.Chim.Acta.2001,322(1−2)106−112)。有機金属基は電気活性であってよい。別の実施形態において、この方法はさらに、b)電極および有機電子材料が電気的接触状態にあるように、修飾電極に近接して有機電子材料を被着させるステップを含む。この方法のその他の実施形態において、電極は陽極であり、この方法はさらに、c)正孔輸送層を被着させるステップ;d)電子輸送層を被着させるステップ;そしてe)陰極を被着させるステップを含む。有機電子材料、方法およびデバイスの例については、「Organic Electronics:「Materials,Manufacturing and Applications」、H.Klauk ed.,Wiley−VCH,2006;「Handbook of Organic Electronics and Photonics」,H.S.Nalwa ed.,American Scientific Publishers,2006;「Organic Light Emitting Devices:Synthesis,Properties and Applications」,K.Mullen ed.,Wiley−VCH,2006;「Organic Photovoltaics:Mechanisms,Materials,and Devices」,S.−S.Sun and N.S.Sariciftci ed.,CRC,2005;および「Organic Field−Effect Transistors」,Z.Bao and J.Locklin ed.,CRC,2007を参照されたい。電極および有機電子材料に関して本明細書中で使用される「電気的接触」という用語は、電荷が電極と有機電子材料の間を流れうることを意味している。電極および有機電子材料は物理的接触状態にあってもなくてもよい。電子は、有機電子材料から電極に流れてよく(例えば正孔注入)、または電極から有機電子材料に流れてもよい(例えば電子注入)。有機電子材料は、例えば、導電性ポリマー、半導体ポリマー、正孔輸送ポリマー、電子輸送ポリマー、発光性ポリマー、日射吸収ポリマー(例えば有機光電池内の作用層)、または、分子(例えばTPD、カルバゾール、ペンタセン、発光性有機金属など)などの当技術分野において公知のもののいずれか1つを含んでいてよい。有機電子材料は同様に、例えばポリマー、ポリマー主鎖の一部またはその任意の組合せに対して共有結合により連結された、ホスト内のゲストとしての正孔輸送物質、電子輸送物質、発光物質、日射吸収物質などのうちの2つ以上の配合物を有していてもよい。
【0010】
さまざまな実施形態が、1つの表面およびこの表面に結合された結合基を伴う分子を有する少なくとも1つの電極を含み、長期間にわたり安定している有機電子デバイスを含んでいる。一実施形態において、有機電子デバイスは、電極が表面に結合された分子を有していなかった場合よりも安定している。有機電子デバイスとしては例えば、有機発光ダイオード、有機電界効果トランジスタ、有機光電池などが含まれうる。その他の実施形態において、電極上に結合分子を伴う有機電子デバイスは、異なる表面処理(例えば空気プラズマ処理)を受けた電極を含むデバイスの効率と同じかまたは類似の効率を有するが、電極上に結合分子を伴うデバイスの半減期(t1/2)は少なくとも50%長い。典型的には、この分子は、電極表面上で単分子層を構成する。一実施形態においては、図1を参照すると、電極は陽極5であり、デバイスはさらに、b)電極の上にある正孔輸送層10を含む。別の実施形態において、デバイスはさらにc)正孔輸送材料の上にある電子輸送層15およびd)電子輸送層材料の上にある陰極20を含む。例えば発光層を含めてその他のデバイス層は、その他のデバイス層のいずれの間にあってもよい。その他の実施形態において、分子、電極、結合基、および有機電子材料は上述の通りであってよい。
【0011】
一実施形態において、デバイスは、a)1つの表面を有する電極;b)結合基を介して電極の表面に結合された分子;およびc)電極と電気的に接触した有機電子材料を含み、前記の分子は少なくとも1つのフッ素化アリール基を含む。そこで、この分子はさらに、結合基とフッ素化アリール基との間にリンカー基(例えば、−CH−、−CHCH−、−CHCF−、などを含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、電極は、透明な導電性金属酸化物を含む。透明な導電性金属酸化物の例としては、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムアルミニウム亜鉛酸化物、アンチモンスズ酸化物、フッ素スズ酸化物、酸化カドミウム、またはスタン酸カドミウムなどが含まれる。他の実施形態においては、電極は、結合基と反応するように官能化されたカーボンナノチューブまたはグラフェンを含む(こうして例えば、官能化された基を介してホスホン酸がカーボンナノチューブまたはグラフェンに結合するようになっている)。数多くの実施形態において、この分子は表面上で単分子層を構成する。この分子の結合基は、例えば、シラン、カルボン酸、スルホン酸、ボロン酸、またはホスホン酸を含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、フッ素化アリール基は、フェニル基、ナフタレン基またはビフェニル基を含み、フッ素数は1〜10である。別の実施形態においては、結合基はフッ素化ホスホン酸であり、導電性の透明な酸化物はインジウムスズ酸化物である。フッ素化アリール基を含む分子は、電極の仕事関数に変化をもたらし(modify)、電極表面の優れた濡れ性を維持しながら比較的安定した(接着を可能にする)仕事関数をもたらしうる。
【0012】
別の実施形態は、a)1つの表面を有する透明な導電性金属酸化物電極およびb)その表面に結合されたフッ素化アリールホスホン酸、を含む有機電子デバイスである。いくつかの実施形態では、フッ素化アリールホスホン酸は表面上で単分子層を構成する。多種多様なフッ素化アリールホスホン酸を、上述の方法などの当技術分野において公知の方法により調製することができる。他の実施形態においては、例えば、電極がインジウムスズ酸化物(ITO)である場合は、フッ素化アリールホスホン酸が結合したITOの表面上で水滴が形成する接触角は、60°〜80°である。別の実施形態においては、表面エネルギーは30mJ/m〜50mJ/mである。他の実施形態においては、表面エネルギーは35mJ/m〜45mJ/mである。その他の実施形態において、表面エネルギーの極性成分は0mJ/m〜約15mJ/mである。いくつかの実施形態において、フッ素化アリール基は1〜11個のフッ素を含む。一実施形態において、フッ素化ホスホン酸は、
【化1】

という構造を有し、各場合に独立に、Rは、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、またはフッ素化アルキル基であり;Rはメチレン、フッ素化されたメチレン、アルケンまたはアルキンであり;n=0〜5;m=0〜3そしてq=0〜3であるが、但しここで少なくとも1つのフッ素が存在することを条件とする。他の実施形態には、フッ素化アリール基を含むホスホン酸が含まれる。他の実施形態において、透明な導電性金属酸化物は陽極であり、有機電子デバイスは、c)フッ素化アリールホスホン酸上にある正孔輸送層;d)その正孔輸送層上にある電子輸送層;およびe)その電子輸送層上にある陰極をさらに含む。正孔輸送層、電子輸送層、および陰極のために使用される材料は、当技術分野で公知である通り、ポリマー、小分子、複合材料、金属またはそれらのあらゆる組合せから選択されてよい。いくつかの実施形態においては、陽極の仕事関数は4.4eV〜5.6eVである。他の実施形態において、フッ素化ホスホン酸は、図2に示されている構造の1つに対応する。
【0013】
別の実施形態は、a)結合基およびフッ素化アリール基を含む分子を、1つの表面を有する電極上に被着させ、こうして結合基が表面に結合するステップ、とb)その電極と有機電子材料が電気的接触状態となるように電極に近接して有機電子材料を被着させるステップとを含む方法である。分子の被着ステップおよび有機電子材料の被着ステップには独立して、例えばスピンコーティング、ディップコーティング、ドロップキャスト法、蒸発、架橋、真空蒸着、またはこれらの任意の組合せなどの技術が、単一ステップまたは離散的ステップとして含まれてよい。多くの実施形態において、この分子は表面上で単分子層を構成する。他の実施形態において、電極は透明な導電性金属酸化物を含む。導電性の透明な導電性金属酸化物およびその結合は、上述の通りであってよい。他の実施形態においては、例えば、電極がインジウムスズ酸化物(ITO)である場合、フッ素化アリールホスホン酸が結合されたITOの接触角は、60°〜80°である。別の実施形態において、表面エネルギーは30mJ/m〜50mJ/mである。他の実施形態において、表面エネルギーは35mJ/m〜45mJ/mである。いくつかの実施形態において、フッ素化アリール基は、フェニル基、ナフタレン基、またはビフェニル基を含み、フッ素数は1〜10である。いくつかの実施形態において、結合基はホスホン酸であり、導電性透明酸化物はインジウムスズ酸化物である。別の実施形態において、フッ素化アリール基は1〜11個のフッ素を含んでいてよい。他の実施形態において、この分子は、
【化2】

という構造を有し、各場合に独立に、Rが、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、またはフッ素化アルキル基であり;Rがメチレン、フッ素化されたメチレン、アルケンまたはアルキンであり;n=0〜5;m=0〜3そしてq=0〜3であるフッ素化ホスホン酸であるが、但しここで少なくとも1つのフッ素が存在することを条件とする。別の実施形態においては、陽極の仕事関数は4.4eV〜5.6eVである。他の実施形態において、透明な導電性金属酸化物は陽極であり、上記方法には、c)正孔輸送層を被着させるステップと;d)電子輸送層を被着させるステップと;e)陰極を被着させるステップとがさらに含まれる。別の実施形態において、フッ素化ホスホン酸は、図2にある構造のいずれか1つを有する。
【0014】
別の実施形態は、
【化3】

という構造を有するホスホン酸であり、ここでRは3〜30個の−CH−基を含み、n=0〜5、m=0〜5であり、Rは上述の通りである。一実施形態において、Rはエーテルを介してフェニル環に結合されている。Rも同様に、その他の化合物またはポリマーと反応させるかまたは架橋できる官能基であってもよい。一実施形態では、Rは少なくとも1つのエーテル結合を含む。一実施形態において、Rは−(CH−O−(CH−O−(CH−を含み、ここで各場合に独立に、x=1〜12、y=0〜1そしてz=0〜4である。他の実施形態は、ホスホン酸を含むデバイスと方法である。1つの実施形態は、ホスホン酸を含むトランジスタである。
【0015】
別の実施形態は、電極と有機電子材料の間の一部の相互作用特性(例えば接着力)が改善されるような形で電極の表面エネルギーを変える(modify)方法である。大部分の実施形態において、電極の表面エネルギーは、(例えば本明細書中で記述されているように)電極の表面に結合する分子を被着させることにより変えられる。この分子は単分子層を形成してもよい。いくつかの実施形態において、仕事関数は有意な形では変化を加えられない。他の実施形態において、仕事関数は、有機電子材料への、または有機電子材料からの電子の流れを増加または減少させるように変えられる。一実施形態は、a)1つの表面、第1の仕事関数、および第1の表面エネルギーを有する電極を準備するステップと;b)その表面上に分子を被着させるステップとを含み、こうして第2の仕事関数および第2の表面エネルギーを有する修飾電極を提供する方法において、その分子が結合基を通して電極に結合し、第1の表面エネルギーと第2の表面エネルギーが異なるものである方法である。一実施形態において、修飾電極に対する有機電子材料の接着力がその電極に対するその有機電子材料の接着力よりも優れたものとなるように、第2の表面エネルギーは第1の表面エネルギーと異なっており、この場合、電子が有機電子材料と電極の間を流れることができる。別の実施形態において、第2の仕事関数は、有機電子材料と電極の間の電子の流れが改善されるように、第1の仕事関数と異なっている。他の実施形態においては、第2の表面エネルギーは、修飾電極に対する有機電子材料の接着力がその電極に対するその有機電子材料の接着力よりも優れたものとなるように、第1の表面エネルギーと異なっており、この場合、電子は有機電子材料と電極の間を流れることができ、第2の仕事関数は、有機電子材料と電極との間の電子の流れが改善されるように第1の仕事関数と異なっている。一実施形態において、電極は透明な導電性金属酸化物であり、第2の表面エネルギーは約20mJ/m〜約50mJ/mであり、仕事関数は約4.4eV〜約5.6eVである。一部の実施形態において、表面エネルギーの極性成分は0mJ/m〜約15mJ/mである。別の実施形態においては、その分子は上記表面上で単分子層を形成する。別の実施形態においては、透明導電性金属酸化物は、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムアルミニウム亜鉛酸化物、アンチモンスズ酸化物、フッ素スズ酸化物、酸化カドミウム、またはスタン酸カドミウムを含み、上記分子はホスホン酸である。別の実施形態において、この分子はアルキルホスホン酸、ヘテロアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、またはヘテロアリールホスホン酸である。別の実施形態において、第1の仕事関数と第2の仕事関数とは異なるものであり、第2の表面エネルギーと第1の表面エネルギーとは本質的に同じである。
【0016】
他の実施形態は、図2、9、10および14および表1に示されているものの一部などのホスホン酸を含む。これらのホスホン酸は、金属酸化物の表面に結合し、かつ/または上述の通りの有機電子デバイスを構成する。
【0017】
他の実施形態は、チオフェン含有ホスホン酸を含む。チオフェン含有ホスホン酸は、金属酸化物の表面に結合し、かつ/または上述の通りの有機電子デバイスを構成する。チオフェン含有ホスホン酸の例は、図14に示されている。一実施形態において、チオフェン含有ホスホン酸は、それが結合している金属酸化物の表面に対するチオフェン含有正孔輸送ポリマーの相溶性および/または接着力を改善する。
【0018】
他の実施形態は、官能基を含むホスホン酸を含む。官能基を含むホスホン酸は金属酸化物の表面に結合し、かつ/または、上述の通りの有機電子デバイスを構成する。官能基は、例えば分子、ポリマー、バイオポリマー、タンパク質、核酸などを含む多様な化合物に対する反応性を有していてよい。例えば官能基は求電子性、求核性であるか、ラジカルを生成するか、光反応性であるか、またはこれらの任意の組合せであってよい。官能基は、例えば、カルボン酸、アクリレート、アミン、アルデヒド、ケトン、アルケン、アルキン、または当技術分野において公知のもののうちの任意のものであってよい。官能基はまた、例えば、エステル、カルバメート、フタルイミドなどとして保護されていてもよい。官能基を含むホスホン酸のいくつかの例が、図15に示されている。他の実施形態には、その官能基と反応するための分子および/またはポリマーが含まれる。ホスホン酸が金属酸化物の表面に結合されている場合、その官能基を第2の分子および/またはポリマーと反応させて、その第2の分子および/またはポリマーを上記表面に結合(例えば共有結合により結合)させてもよい。一実施形態において、ベンゾフェノン官能基は、ポリマー中の−C−H結合と反応する。他の実施形態は、その官能基を分子および/またはポリマーと反応させる方法、その方法により製造された製品および、その方法により製造された有機電子デバイスを含む。別の実施形態においては、その官能基は、モノマーと反応させて上記表面からポリマーを成長させるために用いられる。その官能基をポリマーと反応させる(例えばポリマーを表面上の官能基を介して表面に付着させる)例が図16aに示され、官能基からの重合の例が図16bに示されている。他の実施形態には、金属酸化物の表面に分子および/またはポリマーを結合する方法において、官能基を含むホスホン酸とその分子および/またはポリマーとを反応させるステップを含む方法であって、ホスホン酸が金属酸化物の表面に結合され、その官能基が分子および/またはポリマーと反応する方法が含まれる。他の実施形態には、官能基含有ホスホン酸と分子および/またはポリマーとを反応させるステップを含み、ホスホン酸が金属酸化物の表面に結合され、官能基が分子および/またはポリマーと反応するプロセスによって製造された有機電子デバイスまたはセンサー(例えばバイオセンサー)が含まれる。他の実施形態には、官能基含有ホスホン酸をポリマーのモノマーと反応させるステップを含む金属酸化物の表面からポリマーを成長させる方法において、そのホスホン酸が金属酸化物の表面に結合されている方法が含まれる。他の実施形態には、官能基およびホスホン酸を有する分子と、ポリマーのモノマーとを反応させるステップを含み、そのホスホン酸が金属酸化物の表面に結合されているプロセスによって製造された有機電子デバイスまたはセンサー(例えばバイオセンサー)が含まれる。重合プロセスには、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、縮重合が含まれていてよい。
【0019】
別の実施形態は、トリアリールアミンを含むホスホン酸、および、そのトリアリールアミン−ホスホン酸を含む有機電子デバイスである。トリアリールアミンは、
【化4】

という構造を含んでいてよく、式中Arは各場合に独立にアリール基であり、Rはメチレン、フッ素化されたメチレン、アルケン、またはアルキンであり、q=0〜3である。各々のAr基は独立に、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、ヘテロアルキル基またはハロゲンで置換されていてもよい。Ar基は、それがベンゼン環である場合、NおよびRに関してオルト、メタまたはパラ置換されていてもよい。別の実施形態において、Ar、Arおよび/またはArのうちの1つ以上は−NArで置換され、ここでArは各場合に独立に、アリールまたはヘテロアリール基である。いくつかの実施形態においては、Arは−NArで置換され、Arはベンゼン環、ビフェニルまたはナフチルである。いくつかの実施形態において、隣接するAr基は(例えば単結合、エチレン結合、ヘテロアルキル架橋、1つまたは複数の多重結合、またはアリールまたはヘテロアリール環内の原子と)結合して、1つ以上の環を形成してもよい(例えばArおよびArが単結合により結合されてカルバゾールを形成する場合)。
【0020】
他の実施形態には、ホスホン酸を含むポリマー、そして、金属酸化物の表面に結合されたホスホン酸を含むポリマーを含む有機電子デバイスまたはセンサーが含まれる。このポリマーは例えばホモポリマーまたはコポリマーであってよい。コポリマーは、モノマーまたは異なる組成物、異性体であるモノマー、立体異性体であるモノマー、またはそれらの任意の組合せを含んでいてよい。コポリマーは、例えば、他の官能基(例えば上述のもの)、相溶化基(例えばPEG)、または防汚性基(例えばフッ素化基)、またはそれらの任意の組合せを含んでいてよい。他の実施形態には、金属酸化物の表面に対して、ホスホン酸を含むポリマーを結合させる方法、およびこの方法により製造される製品が含まれる。
【0021】
以下の実施例は例示を目的としており、特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0022】
電極表面を特徴づけするのに用いられる方法
X線光電子分光法(XPS)およびUV光電子分光法(UPS): 単色Al(Kα)源(300W)およびUPS(HeI励振源)を用いるXPSを、原子的に清浄な金の試料を用いてフェルミエネルギー(EF)を頻繁に較正しながらKratos Axis−Ultraスペクトロメータを使用して、他の文献に記載されている通りに実施した[Alloway,D.M.;Hofmann,M.;Smith,D.L.;Gruhn,N.E.;Graham,A.L.;Colorado,R.;Wysocki,V.H.;Lee,T.R.;Lee,P.A.;Armstrong,N.R.J.Phys.Chem.B2003,107,11690−11699]。全てのITO試料は、スペクトロメータと電子平衡状態にあった。すなわち、各試料についてフェルミエネルギーは公知であった。UPSデータの収集前に、全てのXPSスペクトルを取得した。別段の指摘の無いかぎり、全ての特徴づけを正規の取出し角(0°)で実施した。
【0023】
接触角:これらの測定は、プローブ液として水およびヘキサデカン(0.5μL)を用いて、KRUESS Drop Shape Analysis System DSA 10Mk2で実施した。表面上に数滴(典型的には6回反復)をすばやく落とし、針を手前に引いて、カメラで直ちに液滴形状をとらえた。画像をDrop Shape Analysisソフトウェアで分析して、所与の各液滴に最も適した方法、つまり通常は小円あてはめおよび結果の平均化によって、接触角を決定した。この接触角データを用いて、調和平均法によって表面エネルギーの成分を計算した。
【0024】
〔結合分子をもつITOの調製〕
まず最初に、ITOがコーティングされたガラス基板(20Ω/□,Colorado Concept Coatings,L.L.C.)を、20分間、Triton−X(Aldrich)のDI(脱イオン)水中希釈溶液を用いて超音波浴中で清浄した。その後、そのITO基板をDI水で十分に洗い流し、DI水中で20分間最終超音波処理に付した。アセトンとエタノールを用いて各々20分ずつ超音波浴中でさらなる有機清浄を行なった。清浄中の各ステップの後で、窒素ガンを用いて試料をブローして、ITO表面から残っている溶剤を吹き飛ばした。
【0025】
洗浄したITO基板を、次に、70℃の真空乾燥オーブン内で一晩(1×10−2Torr)の圧力下で乾燥させた。
【0026】
[SiOxバリヤ層形成]
デバイス構造のために、さまざまなデバイス用の陽極および陰極の間に電気的短絡を作り出すことなく、電気的接触を上部陰極に物理的に作ることのできる領域を画定するために、でシャドウマスクを用いて、ITO上へのe−ビームによって基板のいくらかの部分に300nmのSiOxの不動態化層を被着させた。SiOxの被着は、4Å/sの速度で、1×10−6未満の圧力で行なった。
【0027】
[単分子層の形成:]
有機ホスホン酸(2:1のCHCl:COH中1mM)を室温で一晩撹拌し;結果として得た溶液を0.2マイクロメートルのPTFEを通して濾過し;上で調製したITO基板を室温でそのホスホン酸溶液中に沈め、その溶液は1時間を経過するまで蒸発するがままにさせておいた。その後、基板を1時間120℃のホットプレート上でアニーリングした。その後、デバイス用に有機層を被着させるかあるいは仕事関数を測定する前に、温度を室温まで下げた。全ての単分子層形成ステップおよび溶液処理は、HOレベルが1ppm未満で空気レベルが20ppm未満である窒素を充填したグローブボックス(GB)内で実施した。
【0028】
〔電極仕事関数の安定性およびデバイスの安定性〕
図3は、空気プラズマで処理したITOと対比させた、オクチルホスホン酸(OPA)の結合分子を伴うITOと3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデシルフルオロオクチルホスホン酸(FOPA)の結合分子を伴うITOの両方の仕事関数のはるかに改善した安定性の例を示している。ITOの表面に結合したFOPAを用いて製造されたデバイスの寿命(図5)は、安定性の増加を示した。
【0029】
〔フッ素化アリールホスホン酸〕
インジウムスズ酸化物(ITO)の表面に結合されたその他の分子の例を表1に示している。
【0030】
【表1】

【0031】
〔ジエチル3,4,5−トリフルオロベンジルホスホネートの合成〕
3,4,5−トリフルオロベンジルヨージド(5.075g、22.55mmol)をトリエチルホスファイト(11.6mL、67.7mmol)と混ぜ、混合物を135℃で一晩加熱し撹拌した。混合物を、高真空下に置き、12時間70℃に加熱した。最終生成物は、透明な油(6.10g、収量96%)であった。H NMR(400.14MHz,CDCl)δ6.93(m,2H),4.07(quint,J=7.10Hz,4H),3.06(d,J=21.7Hz,2H),1.28(t,J=7.05Hz,6H)。13C{H}NMR(100.62MHz,CDCl)δ150.8(dddd,J=249.7,9.8,3.8,3.8Hz,2C),138.74(dtd,J=250.6,15.2,3.9Hz),128.2−127.9(m),113.9−113.6(m,2C),62.30(d,J=6.74Hz,2C),32.93(d,J=139.8Hz),16.20(d,J=6.01Hz,2C)。31P{H}NMR(202.45MHz,CDCl):δ24.96。分析計算値(実測値)%:C46.82(46.72)、H5.00(4.96)。MS(FAB、m/z):269(M、100%)。[M+H]についての正確な質量計算値(実測値)、m/z):269.05544(269.05616)。
【0032】
〔3,4,5−トリフルオロベンジルホスホン酸(F3BPA)の合成〕
無水ジクロロメタン(30mL)中にジエチル3,4,5−トリフルオロベンジルホスホネート(2.80g、9.92mmol)を溶解させた。シリンジを介して、ブロモトリエチルシラン(4.1mL、31.7mmol)を添加した。グリースを塗ったガラス栓を反応物にかぶせて6時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去して黄色油を得た。これを10:1のメタノール:水(20mL)中に溶解させ、一晩撹拌した。溶剤を除去した後、アセトニトリル中での再結晶化により大きな白色針状結晶を得た(2.00g、収量89%)。H NMR(400.14MHz,DMSO)δ7.16(m,2H),2.99(d,J=21.4Hz,2H)。13C{H}NMR(100.62MHz,DMSO)δ149.9(dddd,J=246,9.6,3.6,3.6Hz,2C),137.5(dtd,J=247,15.4,3.7),132.1−131.8(m),114.4−114.1(m,2C),34.42(d,J=132Hz)。31P{H}NMR(161.97MHz,DMSO):δ20.54。分析計算値(実測値)%:C37.19(37.17)、H2.67(2.63)。MS(FAB、m/z):227(M、100%)。[M+H]についての正確な質量計算値(実測値)、m/z):227.00849(227.00670)。
【0033】
〔ジエチル3,4,5−トリフルオロフェニルホスホネートの合成〕
窒素パージした丸底フラスコ内で、トリフルオロブロモベンゼン(1.70mL、14.2mmol)、ジエチルホスファイト(2.20mL、17.1mmol)、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン(4.60mL、21.3mmol)およびエタノール(50mL)を全て混合した。5分間撹拌した後、トリフェニルホスフィン(223mg、0.85mmol)および酢酸パラジウム(64mg、0.28mmol)を一緒にフラスコに添加した。この溶液を76℃まで加熱し、一晩撹拌した。溶液は当初半透明の褐色であったが、朝までにはより透明になっていた。冷却して、シリカプラグ(溶離剤としてヘキサンから始め、必要に応じて酢酸エチルで極性を増大させる)を実施し、UV活性スポット(1:1のヘキサン:酢酸エチルでR=0.35)を単離した。最終生成物は、透明な油である(3.477g、収量91%)。H NMR(400.14MHz,CDCl)δ7.44(dt,J=14.4,6.50Hz,2H),4.19−4.07(m,4H),1.34(t,J=7.07Hz,6H)。13C{H}NMR(100.62MHz,CDCl)δ151.1(dddd,J=254.7,25.4,10.1,2.9Hz,2C),142.5(dtd,J=258.6,15.1,3.3Hz),125.0(dtd,J=194.5,5.8,5.2Hz),116.3−116(m,2C),62.72(d,J=5.63Hz,2C),16.16(d,J=6.34Hz,2C)。31P{H}NMR(161.97MHz,CDCl):δ14.94。分析計算値(実測値)%:C44.79(44.51),H4.51(4.65)。MS(FAB,m/z):283(m,100%)。[M+H]についての正確な質量計算値(実測値)、m/z):283.07109(283.07135)。
【0034】
〔3,4,5−トリフルオロフェニルホスホン酸(F3PPA)の合成〕
丸底フラスコ中で、ジエチル3,4,5−トリフルオロフェニルホスホネート(320mg)に、12MのHCl(12mL、過剰量)を添加した。反応混合物を12時間還流した。冷却し、溶剤を除去した後、褐色の油を得た。H NMRは、未反応の出発物質が存在することを示していた。8MのHClを12mL添加し、反応混合物を再び数日間還流した。混合物を冷却させ、数週間放置した。溶剤を除去した後、オフホワイトの固体を得た(190mg、収量76%)。H NMR(400.14MHz,DMSO)δ7.49−7.42(m,2H)。13C{H}NMR(100.62MHz,DMSO)δ150.1(dddd,J=251.0,23.7,7.3,2.6Hz,2C),140.5(dtd,J=253.1,15.3,2.6Hz),131.8(dm,J=178.4Hz),115.3−114.9(m,2C)。31P{H}NMR(161.97MHz,DMSO):δ9.22.分析計算値(実測値)%:C33.98(33.94),H1.90(1.80)。MS(FAB,m/z):213(m,100%)。[M+H]についての正確な質量計算値(実測値)、m/z):212.99284(212.99418)。
【0035】
〔ジエチル3,5−ジフルオロベンジルホスホネートの合成〕
3,5−ジフロロベンジルブロミド(3.0mL、23.2mmol)をトリエチルホスファイト(9.1mL、53.3mmol)と混ぜ、混合物を一晩135℃で加熱し撹拌した。混合物を高真空下に置き、12時間70℃に加熱した。最終生成物は透明な油であった(5.78g、収量94%)。H NMR(400.14 MHz,CDCl)δ6.83(m,2H),6.71(dt,J=9.00,2.28Hz),4.06(m,4H),3.12(d,J=21.94Hz,2H),1.28(t,J=7.09Hz,6H)。31P{H}NMR(161.97MHz,CDCl):δ25.22。
【0036】
〔3,5−ジフルオロベンジルホスホン酸の合成〕
無水ジクロロメタン(25mL)中にジエチル3,5−ジフルオロベンジルホスホネート(3.00g、11.4mmol)を溶解させた。シリンジを介してブロモトリメチルシラン(4.9mL、37mmol)を添加した。グリースを塗ったガラス栓を反応物にかぶせ、6時間撹拌した。減圧下で揮発性物質を除去して、黄色油を得た。これを8:1のメタノール:水(25mL)中に溶解させ、一晩撹拌した。溶剤を除去した後、アセトニトリル中で再結晶化によって白色の結晶質固体が得られた(1.98g、収量91%)。H NMR(400.14MHz,DMSO)δ7.05(dt,J=9.49,2.09Hz),6.95(d,J=8.54Hz,2H),3.02(d,J=21.57Hz,2H)。31P{H}NMR(161.97MHz,DMSO):δ20.63。分析計算値(実測値)%:C40.40(40.67),H3.39(3.39)。
【0037】
〔ジエチル2,6−ジフルオロベンジルホスホネートの合成〕
2,6−ジフルオロベンジルブロミド(3.0g、14.5mmol)をトリエチルホスファイト(6.2mL、36.2mmol)と混ぜ、混合物を一晩135℃で加熱し撹拌した。混合物を高真空下に置き、10時間80℃に加熱した。最終生成物はわずかに黄色みがかった油(3.30g、収量86%)であった。H NMR(400.14MHz,DMSO)δ7.36(m),7.10(m,2H),3.96(m,4H),3.20(d,J=21.08Hz,2H),1.16(t,J=7.05Hz,6H)。13C{H}NMR(100.62MHz,CDCl)δ161.0(ddd,J=249.0,7.3,6.2Hz,2C),128.4(dt,J=10.2,3.82Hz),111.0(ddd,J=18.9,6.0,3.5Hz,2C),108.5(dt,J=19.8,10.5Hz),62.1(d,J=6.5Hz,2C),20.6(dt,J=142.1,2.3Hz),16.0(d,J=6.2Hz,2C)。31P{H}NMR(161.97MHz,DMSO):δ24.68。分析計算値(実測値)%:C50.01(49.71),H5.72(5.78)。MS(FAB,m/z):265(M,100%)。[M+H]についての正確な質量計算値(実測値)、m/z):265.08051(265.08278)。
【0038】
〔2,6−ジフルオロベンジルホスホン酸の合成〕
ジエチル2,6−ジフルオロベンジルホスホネート(2.00g、7.57mmol)を無水ジクロロメタン(20mL)中に溶解させた。ブロモトリメチルシラン(3.3mL、25mmol)を、シリンジを介して添加した。グリースを塗ったガラス栓を反応物にかぶせ、6時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去して、黄色油を得た。これを10:1のメタノール:水(20mL)中に溶解させ、一晩撹拌した。溶剤を除去した後、アセトニトリル中での再結晶により白色結晶質固体を得た(1.199g、収量76%)。H NMR(400.14MHz,DMSO)δ7.29(m),7.04(m,2H),2.96(d,J=20.99Hz,2H)。31P{H}NMR(161.97MHz,DMSO):δ19.51。分析計算値(実測値)%:C40.40(40.64),H3.39(3.34)。
【0039】
〔ジエチル2,6−ジフルオロフェニルホスホネートの合成〕
窒素を勢いよく流しておいた圧力容器の中で、2,6−ジフルオロヨードベンゼン(3.0g、12.5mmol)をトリエチルホスファイト(10.7mL、62.5mmol)と混合した。容器を密閉し、20時間光反応器(16球−350nm)内で回転させた。反応混合物を5時間50℃で高真空(0.08Torr)下に置いた。ヘキサンおよび酢酸エチルでカラム処理を実施した(実施するにつれて極性を増大させた)。UV活性であった最上位スポットを分離した。溶剤を除去した後、黄味がかった液体が残った(2.30g、収量74%)。H NMR(400.14MHz,DMSO)δ7.72(m),7.21(m,2H),4.10(m,4H),1.25(t,J=7.04Hz)。31P{H}NMR(161.97MHz,DMSO):δ8.23。上述の通りにホスホネートを加水分解して、対応するホスホン酸を得ることができる。
【0040】
〔4−フルオロフェニルホスホン酸の合成〕
ジエチル4−フルオロフェニルホスホネート(600mg、2.55mmol)を8MのHCl(10mL、余剰)と混ぜ、混合物を一晩還流させた。反応物を冷却し、濾過して暗色の小粒を除去した。固体が形成し始めるまで真空下で溶剤を除去した。混合物を次に数時間冷蔵庫の中に入れた。固体を乾燥させてオフホワイトの粉末(P80mg)を得た。H NMR(400.14MHz,DMSO)δ7.71(ddd,J=12.49,8.52,5.99Hz,2H),7.28(ddd,J=9.02,9.02,2.65Hz,2H)。31P{H}NMR(161.97MHz,DMSO):δ12.81。分析計算値(実測値)%:C40.93(40.33),H3.43(3.49)。
【0041】
濾液を真空下で乾燥して、ベージュ色の粉末(250mg)を得た。分析計算値(実測値)%:C40.93(39.47)、H3.43(3.48)。
【0042】
〔ペルフルオロフェニルホスホン酸の合成〕
ジエチルペルフルオロフェニルホスホネート(1060mg、3.48mmol)を8MのHCl(10mL、過剰)と混ぜ、混合物を一晩還流させた。反応物を冷却し、濾過して暗色の小粒を除去した。固体が形成し始めるまで真空下で溶剤を除去した。混合物を次に数時間冷蔵庫の中に入れた。固体を乾燥させてオフホワイトの粉末(130mg)を得た。H NMRはDMSO以外いかなる信号も示さなかった。31P{H}NMR(161.97MHz,DMSO):δ−0.93。分析計算値(実測値)%:C29.05(29.89),H0.81(1.02)。
【0043】
濾液を真空下で乾燥して、ベージュ色の粉末(740mg)を得た。分析計算値(実測値)%:C29.05(29.33)、H0.81(0.95)。
【0044】
〔デバイスの効率〕
OLEDデバイスを、表面に結合したホスホン酸(PA)を有するITO電極を用いて製造した。次にホスホン酸で修飾されたITOの試料を、蒸発チャンバと2重グローブボックスを直列に連結するT−アンテチャンバを通って蒸発チャンバ内に装てんするために移送した。まず最初に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’ビフェニル−4,4’’ジアミン(α−NPD)(40nm)の正孔輸送層(HTL)を、熱蒸発により1Å/sの速度で被着させた。4,4’−ジ(カルバゾール−9−イル)−ビフェニル(CBP)中の(6wt%)のfacトリス(2−フェニルピリジナト−N,C’)イリジウム[Ir(ppy)]の同時蒸発によって、発光層を形成させ、厚み20nmのフイルムを得た。基板における蒸発速度は1Å/sであった。その後、0.4Å/sの速度で発光層上に、バソクプロイン(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン,BCP)(40nm)の正孔遮断層を被着させた。有機層の被着中、圧力を1×10−7Torrより低く保った。最後に、電子注入層として作用するフッ化リチウムの薄層(LiF、3nm)とそれに続く陰極としてのAl(200nm)を被着させた。LiFおよびAlを1×10−6Torrより低い圧力で、それぞれ0.1Å/sおよび2Å/sの速度で被着させた。各デバイスについて0.1cmの作用面積を伴って1枚の基板から5つのデバイスを製造するためにAl被着用としてシャドウマスクを使用した。デバイスの最終的構成は、ガラス/ITO/単分子層/α−NPD(40nm)/CBP:Ir(ppy)(20nm)/BCP(40nm)/LiF(3nm)/Al(200nm)であった。
【0045】
デバイスを空気に曝露することなくグローブボックス内で電流−電圧−光(I−L−V)特性を測定した。
【0046】
デバイスは、空気プラズマ処理を受けたITOを用いて製造されたデバイスと比べ非常に類似した効率を示した(図6、図6中に記されている構造については表1を参照されたい)。しかしながら、仕事関数は空気プラズマ処理されたITOの場合よりも、フッ素化アリールホスホン酸で処理されたITOの場合により安定していたことから、製造はより容易であった。
【0047】
表2:図8に示された化合物についての仕事関数および価電子帯最高点(VBMs)の値。エントリ1=DSC ITO;エントリ2=DSC OP ITO−2;エントリ3=DSC OP−ITO−2;エントリ4=DSC OP−ITO−3。DSC ITOは、洗浄剤/溶剤で清浄済みITOであり(以下参照)、DSC OP−ITOはDSC−ITOプラス15分間のOPエッチングである。その他の試料は全て、示されたPAで修飾されたOP−ITOである。試料欄中の番号は図8内の化合物を意味する。いくつかの場合において、OPは単分子層の被覆を増大させ、DSC単独の場合に比べて表面エネルギーおよび仕事関数に対し異なる形で影響を及ぼす。
【0048】
【表2】

【0049】
図9は、さまざまな試料(上に列挙)の表面エネルギーグラフを示す。上部の青色部分は極性成分であり、下部のオレンジ色部分は、分散性成分である。図9は、ITOの表面に結合した表2中のホスホン酸のいくつかの表面エネルギーを示す。
【0050】
表3:フッ素数、F1sピーク対In3pピークの面積比、(分子上のフッ素数を考慮に入れた)調整後の比率、および(調整後の比率の1つを1.00に設定し他を同様の形で調整した)相対比。試料欄内の番号は、図8中の化合物を意味する。
【0051】
【表3】

【0052】
F1sおよびIn3p(3/2)ピークの面積を計算しそれらを互いに比較することにより、各々のPAが互いとの関係においていかに優れた単分子層を生成したかに関し概要を知ることができる(表1)。ただし、いくつかの事項を考慮に入れなくてはならない。まず第1に、各修飾剤のフッ素数を考慮に入れるように強度を全て調整しなければならない。さらに、オルト置換された複数のフッ素を有する修飾物質は、フッ素が指す方向を理由として、相対比の減少を示すかもしれない。これらの原子はX線から遮へいされているかもしれないため、それらの強度は、予想より低い可能性がある。
【0053】
図10は、ITO−PEDOT:PSS(20nm)を用いたデバイスと対比した、表面に結合したホスホン酸を伴うITOを用いて製造されたOLEDデバイスについてのIVおよび輝度/EQEグラフを示す。1000cd/mにおけるデバイスの効率は、空気プラズマ、PEDOT:PSS4083(CLEVIOS PVP AI4083、旧Baytron、ロット番号HCD07P109)、PEDOT:PSS CH8000(CLEVIOS PVP CH8000、旧Baytron、ロット番号BPSV0003)、F5BPAについて、20%、18.9%、17%および17.8%である。表面に結合したホスホン酸を伴うITOおよびITO−PEDOTを用いて製造されたデバイスの電界発光スペクトルは、図11に示されている。PEDOTデバイスについての電界発光スペクトルは、空気プラズマおよびホスホン酸が結合したITOデバイスと比べて変化している。この変化は、デバイスの色出力に影響を及ぼす。したがってITOホスホン酸電極は、空気プラズマがもつ仕事関数安定性の問題やPEDOTでの色変化無しに、空気プラズマおよびPEDOTデバイスとほぼ同じ効率を有する。
【0054】
有機光起電(OPV)デバイス(図12)を、ホスホン酸(PA)修飾ITO電極上で製造した。比較のため、空気プラズマ処理に基づくOPVデバイスも同様に製造した。ポリ3−ヘキシチオフェン(P3HT)および6,6−フェニルC71ブチル酸メチルエステル(PCBM−70)をベースとするバルクヘテロ結合層(100nm)を、クロロベンゼン溶液(10:7(P3HT:PCBM)の比で17mg/ml)から700RPMで1時間スピンコートした。1×10−6Torr未満の圧力および2Å/sの速度で熱蒸発を使用することによってP3HT:PCBMの上面にアルミニウム電極を被着させた。各デバイスについて0.1cmの作用面積をもつ基板1枚あたり5つのデバイスを製造するため、Al被着用にシャドウマスクを使用した。その後、窒素環境下で30分間、ホットプレート上において150℃で試料をアニールした。図12は、プラズマ処理されたITOデバイスおよびホスホン酸処理されたデバイスについての、71.5mW/cmのランプ強度での明及び暗IVグラフを示す。表4に列挙したデバイスパラメータは、3つのデバイス毎の平均である。
【0055】
【表4】

【0056】
官能化ホスホン酸の合成
【0057】
〔2−(12−ブロモドデシル)イソインドリン−1,3−ジオンの合成〕
1,12−ジブロモドデカン(32.22g、98.2mmol)、カリウムフタルイミド(4.60g、24.5mmol)、およびジメチルホルムアミド(20mL)を混合し、2.5時間160℃で還流させた。冷却し、水を添加し、有機物質をジクロロメタン(分液漏斗上で分離したもの)中に取り込んだ。溶剤を減圧下で蒸発させ、粗生成物をヘキサン中でカラム処理した。複数スポットは分離せず、画分を一緒にした。溶剤を除去し、粗製物を300mLのアセトン中に再度溶解させた。これを還流させ、10gのカリウムフタルイミドを4時間にわたり添加した。混合物を一晩還流した。冷却し、溶剤を除去した後、粗生成物を1:1の酢酸エチル:ヘキサンを用いてカラム処理した。最上部のスポットが所望の生成物であることが判明し、これを白色固体(9.30g)として収集し、それは報告された文献すなわちHelv.Chimica Acta.2001,84(3),678−689に整合していた。
【0058】
〔ジエチル12−(1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)ドデシルホスホネートの合成〕
2−(12−ブロモドデシル)イソインドリン−1,3−ジオン(9.30g、23.6mmol)を丸底フラスコ中でトリエチルホスファイト(11.76g、70.7mmol)と混ぜ、混合物を16時間135℃で加熱し撹拌した。反応混合物を次に4時間90℃で高真空下に置いた。その後、酢酸エチル中でカラムクロマトグラフィにより透明な油として生成物を得た(8.96g、収量84%)。H NMR(400.14MHz,CDCl)δ7.80(dd,J=5.43,3.04Hz,2H),7.67(dd,J=5.47,3.05Hz,2H),4.08−4.02(m,4H),3.63(t,J=7.33Hz,2H),1.73−1.45(m,6H),1.32−1.11(m,22H)。13C{H}NMR(100.62MHz,CDCl)δ168.4(2C),133.7(2C),132.1(2C),123.0(2C),61.30(d,J=6.5Hz,2C),37.96,30.51,(d,J=17.0Hz),29.41(2C),29.35,29.25,29.07,28.98,28.49,26.75,25.55(d,J=140.1Hz),22.29(d,J=5.0Hz),16.39(d,J=6.1Hz,2C)。31P{H}NMR(161.97MHz,CDCl):δ33.38。MS(ESI,m/z):452.235(M,100%)。[M+H]についての正確な質量計算値(実測値)、m/z):452.256039(452.254800)。正確な質量計算値(実測値)%:C63.84(63.41)、H8.48(8.53)。
【0059】
〔12−(1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)ドデシルホスホン酸の合成〕
無水ジクロロメタン(25mL)中にジエチル12−(1,3−ジオキソイソインドリン−2−イル)ドデシルホスホネート(2.00g、4.43mmol)を溶解させた。シリンジを介してブロモトリメチルシラン(1.8mL、14.2mmol)を添加した。グリースを塗ったガラス栓を反応物にかぶせ、一晩撹拌した。揮発物質を減圧下で除去して黄色の油を得た。これを10:1のメタノール:水(20mL)中に溶解させ、一晩撹拌した。溶剤を除去した後、アセトニトリル中での再結晶化により、白色粉末固体(1.709g、収量98%)を得た。H NMR(400.14MHz,DMSO)δ7.84(m,4H),3.54(t,J=7.1Hz,2H),1.58−1.53(m,2H),1.50−1.31(m,4H),1.30−1.20(m,16H)。13C{H}NMR(100.62MHz,DMSO)δ167.9(2C),134.4(2C),131.6(2C),123.0(2C),37.36,30.08(d,J=15.8Hz),28.99,28.95,28.87(2C),28.70,28.53,27.85,27.54(d,J=136.5Hz),26.22,22.73,(d,J=4.58Hz)。31P{H}NMR(161.97MHz,DMSO)δ27.74。MS(FAB,m/z):396.2(M,100%)。[M+H]についての正確な質量計算値(実測値)、m/z):396.19399(396.19445)。分析計算値(実測値)%:C60.75(60.64),H7.65(7.80)。
【0060】
〔11−ホスホノウンデカン酸の合成〕
11−メトキシ−11−オキソウンデシルホスホン酸(1.72g,6.136mmol)を8MのHCl(25mL、過剰)中に溶解させ、混合物を一晩還流させた。冷却して白色結晶質固体が沈殿した。これを濾過し、低温アセトニトリルで洗浄した。濾液を濃縮し、形成した沈殿物も同じく濾過により収集した(1.156g、収量71%)。
【0061】
3−(4−ベンゾイルフェノキシ)プロピルホスフィン酸の合成は文献にしたがって行なった。
【0062】
トリアリールアミンを含むホスホン酸の合成
【0063】
以下の合成手順は図17を参照したものである。
〔N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アニリンの合成〕
蒸留したばかりのアニリン(4.84g、52.0mmol)、p−ヨードアニソール(30.4g、130.0mmol)、粉末無水炭酸カリウム(57.5g、416.0mmol)、電解銅粉末(13.3g、208.0mmol)、および18−クラウン−6(2.75g、10.4mmol)を、乾燥した3口丸底フラスコに窒素下で添加した。混合物を100mLのo−ジクロロベンゼン中で18時間還流させた(その間、一部の溶剤が蒸発した)。酢酸エチル(250mL)を反応フラスコに添加した。結果として得た混合物を濾過して、銅および有機塩を除去し、溶剤を減圧下で除去した。メタノールで洗浄することで生成物を精製して、黄褐色の固体(11.2g、70.1%)を得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.16(m,2H),7.01,(d,J=9.0Hz,4H),6.78(d,J=9.0Hz,4H),6.83(t,J=1.5Hz,2H),6.81(t,J=1.5Hz,1H),3.55(s,6H)。
【0064】
〔4−ブロモ−N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アニリン.2の合成〕
250mLの丸底フラスコ内で100mLのジメチルホルムアミド中に、N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アニリン1(9.0g,29.5mmol)を溶解させた。30mLのジメチルホルムアミド中にN−ブロモスクシンイミド(5.25g、29.5mmol)を溶解させ、反応混合物に滴下により添加した。反応物を室温で撹拌し、その間薄層クロマトグラフィ(TLC)により監視した(反応時間=23時間)。反応混合物を600mLの水を用いて失活させ、4×150mLのジクロロメタンで抽出した。有機層を一緒にして、4×150mLの飽和チオ硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶剤を減圧下で除去した。5:1のヘキサン:酢酸エチルで溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィを用いて、これより前に調製した物質と共に生成物を精製した(12.1g、100%)。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.28(d,J=9.0Hz,2H),7.05(d,J=9.0Hz,4H),6.90(d,J=9.0Hz,4H),6.73(d,J=9.0Hz,2H),3.77(s,6H)。
【0065】
〔3−(4−ブロモフェノキシ)プロパン−1−オールの合成〕
250mLの丸底フラスコに、4−ブロモフェノール(16.5g、95.3mmol)、3−ブロモプロパノール(15.9g、114.4mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(50mL)、および炭酸カリウム(22.4g、162.0mmol)を添加した。反応物を室温で撹拌し、その間TLC(CHCl)により監視した。4−ブロモフェノールの消失時点で、50mLの水の入った分液漏斗内に混合物を注ぎ込んだ。ジエチルエーテル中に生成物を抽出し、有機層を3×25mL分量の冷水で洗浄した。溶剤を減圧下で除去した。生成物を、ジクロロメタンで溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィにより精製した。溶剤を減圧下で除去した。残留溶剤および残った3−ブロモプロパノールを真空中で除去した(14.2g、64.4%)。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.35(d,9.0Hz),6.77(d,J=9.0Hz,2H),4.06(t,J=6.0Hz,2H),3.84(t,J=6.0Hz,2H),2.10(q,J=6.0Hz,2H),1.65(s,1H)。
【0066】
〔(3−(4−ブロモフェノキシ)プロポキシ)(tert−ブチル)ジメチルシランの合成〕
窒素下の乾燥した100mLの丸底フラスコに、3−(4−ブロモフェノキシ)プロパン−1−オール(9.0g,39.0mmol)、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(7.0g,47.0mmol)、イミジゾール(3.2g、47.0mmol)、および20mLのN,N−ジメチルホルムアミドを添加した。反応物を室温で撹拌し、その間薄層クロマトグラフィによって監視した。出発物質が消失した時点で、反応混合物を、50mLの冷水の入った分液漏斗に注ぎ込んだ。生成物を3×25mLのエーテルを用いて抽出した。有機層を一緒にし、3×25mLの冷水および3×25mLの飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。結果として得た有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、乾燥剤から濾別し、溶剤を減圧下で除去した。4:6のジクロロメタン:シリカゲルプラグを通してヘキサンで溶出する濾過により、その物質を精製した。溶剤を減圧下で除去した(12.1g、89.4%)。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.34(d,J=9.0Hz,2H),6.76(d,J=9.0Hz,2H),4.00(t,J=6.0Hz,2H),3.76(t,J=6.0Hz,2H),1.95(q,J=6.0Hz,2H),0.87(s,9H),0.03(s,6H)。
【0067】
〔4−(3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)−N−(4−メトキシフェニル)アニリン.5の合成〕
窒素下の乾燥した500mLの丸底フラスコに、(3−(4−ブロモフェノキシ)プロポキシ)(tert−ブチル)ジメチルシラン(12.1g,35.0mmol)、4−アニシジン(5.17g、42.0mmol)、および20mLの無水トルエンを添加した。この混合物を10分間脱ガスしてから、ジベンジリデンアセトンジパラジウムPd(dba)(0.64g、0.70mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)(0.68g、1.2mmol)、および20mLの無水トルエンを添加した。10分間の混合後、10mLの無水トルエンと共にナトリウムtert−ブトキシド(4.7g、49.0mmol)を添加した。反応混合物を90℃まで加熱し、一晩撹拌し、その間薄層クロマトグラフィにより監視した。出発物質の消失時点で、反応混合物を、シリカゲルプラグを通してジクロロメタンで溶出して濾過した(反応時間=22時間)。生成物をフラッシュクロマトグラフィにより精製した(シリカゲル、5:1のヘキサン:酢酸エチル)。溶剤を減圧下で除去した。残留溶剤を真空中で除去した(11.3g、83.0%)。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.06(d,J=3.3Hz,2H),7.03(d,J=3.3Hz,2H),6.91,(d,J=3.3Hz,2H),6.88(d,J=3.3Hz,2H),6.85(s,1H),4.10(t,6.3Hz,2H),3.90(t,J=6.0Hz,2H),3.81(s,3H),2.01(q,J=6.3Hz,2H),0.97(s,9H),0.14(s,6H)。
【0068】
〔N1−(4−(3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)フェニル)−N1,N4,N4−トリス(4−メトキシフェニル)ベンゼン−1,4−ジアミン.6の合成〕
乾燥した200mLのシュレンクフラスコ中で10分間、窒素でスパージングすることにより無水トルエン(30.0mL)を脱ガスした。トリ(tert−ブチル)ホスフィン(0.187g;0.924mmol)およびPd(dba)(0.283g、0.309mmol)を添加し、混合物を撹拌した。10分後に4−ブロモ−N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アニリン(5.92g;15.4mmol)、4−(3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)−N−(4−メトキシフェニル)アニリン(6.00g;15.4mmol)およびナトリウムtert−ブトキシド(2.08g、21.6mmol)を添加した。反応物を90℃で撹拌し、その間TLC(5:1のヘキサン:酢酸エチル)により監視した。出発物質の消失時点で、セライトを通して酢酸エチルで溶出して混合物を濾過した。生成物をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、5:1のヘキサン:酢酸エチル)により精製した。溶剤を減圧下で除去し、残留溶剤を真空中で除去した(9.06g、90.6%)。H NMR(300MHz,CO)δ6.98(m,8H),6.86(m,8H),6.82(s,4H),4.06(t,J=6.3Hz,2H),3.83(t,J=6.3Hz,2H),3.76(s,9H),1.95(q,J=6.0Hz,2H),0.890(s,9H),0.058(s,6H)。13C{H}NMR(300MHz,CO,δ):156.40,155.83,143.65,142.31,126.24,123.78,116.04,115.41,65.28,60.09,55.63,33.27,26.23,−5.27。HRMS−EI(m/z):C4250Siについての[M]計算値,690.35;実測値,690.6)。C4250Siについての分析計算値:C,73.01;H,7.29;N,4.05。実測値:C,73.25;H,7.43;N,4.01。
【0069】
〔3−(4−((4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4−メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロパン−1−オール.7の合成〕
窒素下の乾燥した250mLの丸底フラスコにN1−(4−(3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)フェニル)−N1,N4,N4−トリス(4−メトキシフェニル)ベンゼン−1,4−ジアミン(9.06g,13.1mmol)、テトラヒドロフラン(12.4mL)、およびテトラブチルアンモニウムフルオリド(8.21g,31.4mmol)を添加した。反応物を室温で撹拌し、その間薄層クロマトグラフィにより監視した。出発物質が消失した時点で、150mLの冷水の入った分液漏斗中に反応混合物を注ぎ込んだ。生成物を3×75mLのエーテルを用いて抽出した。有機層を一緒にし、MgSO上で乾燥させた。乾燥剤を濾過によって除去し、溶剤を減圧下で除去した。この物質をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、1:2のヘキサン:酢酸エチル)および再結晶(メタノール)により精製して、白色固体を得た(5.93g、78.6%)。H NMR(400MHz,CO)δ6.97(m,8H),6.85(m,8H),6.81(s,4H),4.07(t,J=6.3 Hz,2H),3.78(s,9H),3.71(q,J=5.7Hz,2H),3.63(t,J=5.2Hz,2H),1.93(q,J=6.3Hz,2H)。H NMR(400MHz,DOを伴うCO)δ6.95(m,8H),6.84(m,8H),6.79(s,4H),4.03(t,J=6.3Hz,2H),3.74(s,9H),3.68(t,J=6.2Hz,2H),1.92(q,J=6.3Hz,2H)。13C{H}NMR(400MHz,CO)δ156.29, 155.77,143.59,143.53,142.22,142.13,126.17,123.68,123.64,115.98,115.37,65.74,58.80,55.62,33.11。HRMS−EI(m/z):C3636についての[M]計算値,576.26;実測値,576.4)。C3636についての分析計算値:C,74.98;H,6.39;N,4.86。実測値:C,74.80;H,6.25;N,4.82。
【0070】
〔3−(4−((4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4−メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルメタンスルホネートの合成〕
乾燥したシュレンクフラスコに、3−(4−((4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4−メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロパン−1−オール(1.16g,2.01mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(0.012g,0.100mmol)を添加した。フラスコを真空下で排気し、窒素で満たしてから無水テトラヒドロフラン(2.0mL)を添加した。混合物を氷浴中に入れ、10分間撹拌した。トリエチルアミン(0.712g、7.04mmol)を添加し、反応物を10分間撹拌した。塩化メタンスルホニル(0.691g、6.03mmol)を添加し、混合物を5分間撹拌した。氷浴を除去し、混合物を室温で撹拌し、その間薄層クロマトグラフィ(1:2のヘキサン:酢酸エチル)により監視した。出発物質が消失した時点で、反応混合物を、100mLの冷水の入った分液漏斗に注ぎ込んだ。生成物を3×50mLのエーテルを用いて抽出した。有機層を一緒にし、3×50mLの水、重炭酸ナトリウム溶液、および塩化ナトリウム溶液で洗浄した。結果として得たエーテル層をMgSO上で乾燥させた。乾燥剤を濾過により除去し、溶剤を減圧下で除去した。残留溶剤を真空中で除去した。この物質をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、4:2のトルエン:酢酸エチル)で精製して、オフホワイトの固体(0.967g、73.3%)を得た。H NMR(400MHz,CO)δ6.96(m,8H),6.85(m,8H),6.80(s,4H),4.43(t,J=6.3Hz,2H),4.09(t,J=6.0Hz,2H),3.74(s,9H),3.09(s,3H),2.19(q,J=6.2Hz,2H)。13C{H}NMR(400MHz,CO)δ156.42,156.39,155.30,143.73,143.49,142.62,142.26,142.22,126.33,126.28,126.00,123.91,123.69,116.14,115.41,67.94,64.61,55.63,36.97,29.87。HRMS−EI(m/z):C3738Sについての[M]計算値,654.24;実測値,654.1)。C3738Sについての分析計算値:C,67.87;H,5.85;N,4.28。実測値:C,67.61;H,5.77;N,4.26。
【0071】
〔N1−(4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル)−N1,N4,N4−トリス(4−メトキシフェニル)ベンゼン−1,4−ジアミン.9の合成〕
乾燥したシュレンクフラスコに3−(4−((4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4−メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルメタンスルホネート(4.06g,6.20mmol)を添加した。フラスコを真空下で排気し、窒素で満たした。臭化リチウム(5.39g;62.0mmol)およびテトラヒドロフラン(6.2mL)を窒素下で添加した。混合物を一晩60℃で撹拌した。出発物質の消失時点で、反応混合物を、100mLの冷水の入った分液漏斗中に注ぎ込んだ。3×50mLのエーテルを用いて生成物を抽出した。有機層を一緒にし、3×50mLの水で洗浄した。結果として得たエーテル層をNaSO上で乾燥させた。乾燥剤を濾過により除去し、溶剤を減圧下で除去した。残留溶剤を真空中で除去した(3.12g、78.2%)。H NMR(400MHz,CO)δ6.97(m,8H),6.86(m,8H),6.80(s,4H),4.09(t,J=5.9Hz,2H),3.75(s,9H),3.66(t,J=6.6Hz,2H),2.28(q,J=6.2Hz,2H)。13C{H}NMR(400MHz,CO)δ156.39,155.34,143.71,143.51,142.22,127.05,126.27,126.03,123.90,123.70,116.10,115.40,114.61,66.34,55.62,33.25,31.05。HRMS−EI(m/z):C3635BrNについての[M]計算値,640.18;実測値,640.1)。C3635BrNについての分析計算値:C,67.60;H,5.52;N,4.38.実測値:C,67.43;H,5.61;N,4.24。
【0072】
〔ジエチル3−(4−((4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4−メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルホスホネートの合成〕
乾燥したシュレンクフラスコにN1−(4−(3−ブロモプロポキシ)フェニル)−N1,N4,N4−トリス(4−メトキシフェニル)ベンゼン−1,4−ジアミン(0.714g,1.12mmol)を添加し、フラスコを窒素でパージした。トリエチルホスファイト(1.12mL)を添加し、混合物を一晩160℃で撹拌した。出発物質が消失した時点で、溶剤を減圧蒸留で除去した。生成物をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、酢酸エチル)により精製して、薄黄色の油(0.649g、83.4%)を得た。H NMR(400MHz,CO)δ6.96(m,8H),6.84(m,8H),6.80(s,4H),4.05(m,6H),3.74(s,9H),1.93(m,4H),1.26(t,J=7.0Hz,6H)。13C{H}NMR(400MHz,CO)δ156.36,155.50,143.64,143.55,142.41,142.25,126.22,126.11,123.80,123.71,116.10,115.38,68.35(d,J=16.6Hz),61.70(d,J=6.2Hz),23.52(d,J=4.6Hz),22.61,(d,J=142Hz),16.73(d,J=5.8Hz)。HRMS−EI(m/z):C4045Pについての[M]計算値,696.30;実測値,696.2)。C4045Pについての分析計算値:C,68.95;H,6.51;N,4.02。実測値:C,68.80;H,6.46;N,4.02。
【0073】
〔3−(4−((4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4−メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルホスホン酸.11〕
窒素下で乾燥した25mLの丸底フラスコにジエチル3−(4−((4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4−メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルホスホネート(0.500g,0.718mmol)を添加し、フラスコを窒素でパージした。窒素下でジクロロメタン(1.00mL)およびブロモトリメチルシラン(0.199g、2.30mmol)を添加し、混合物を一晩、室温で撹拌した。出発物質が消失した時点で、窒素パージによって溶剤を除去した。残留溶剤を真空中で除去した。無水メタノール(8.00mL)をフラスコに添加し、一晩室温で撹拌した。白色固体を、カニューレ濾過によってメタノールから濾過した。3×5mLの無水メタノールを用いて固体を洗浄し、真空中で乾燥させた。窒素雰囲気下で緑色固体として生成物を収集した(0.185g、40.2%)。H NMR(400MHz,(CDSO)δ9.87(s,2H),6.89(m,8H),6.83(m,8H),6.71(s,4H),3.91(m,2H),3.69(s,9H),1.84(m,2H),1.51(m,2H)。13C{H}NMR(400MHz,(CDS,δ),154.98,154.40,142.17,140.91,140.77,125.27,125.19,122.72,122.68,115.37,114.82,68.35(m),55.24,23.62(m)。31P NMR(400MHz,(CDS,δ):25.05。HRMS−EI(m/z):C3637Pについての[M]計算値,640.23;実測値,640.1)。C3637Pについての分析計算値:C,67.49;H,5.82;N,4.37。実測値:C,67.09;H,6.16;N,3.99。
【0074】
ITO表面上の官能性ホスホン酸との反応
【0075】
〔官能基と反応させるための化合物、(E)−メチル3−(4−(4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデシルオキシ)フェニル)アクリレートの合成〕
無水DMSO(10mL)に(E)−メチル3−(4−ヒドロキシフェニル)アクリレート(166mg、0.93mmol)を添加し、丸底フラスコ中で窒素下で撹拌した。粉砕した水酸化ナトリウム(44mg、1.1mmol)を添加した。30分後に、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ヘプタデカフルオロ−11−ヨードウンデカン(500mg,0.85mmol)を添加した。反応物を一晩撹拌した。水で洗浄し、ジクロロメタンで抽出して油を得た。溶離剤として酢酸エチルの量を次第に増量させるヘキサンを用いたシリカカラム上でこの粗製生成物を精製した。白色固体を単離した(418mg、収量77%)。H NMR(400.14MHz,CDCl)δ7.65(d,J=16.0Hz),7.48(d,J=8.75Hz,2H),6.90(d,J=8.75Hz,2H),6.32(d,J=16.0Hz),4.07(t,J=5.90Hz,2H),3.80(3H),2.40−2.20(m,2H),2.18−2.05(m,2H)。
【0076】
〔(E)−11−(シンナモイルオキシ)ウンデシルホスホン酸を用いたITOの修飾およびその表面への架橋〕
レンズクロスを用いてTriton−X100でITO(ガラス上)基板を洗浄した。その後、10分間Triton−X100溶液中で基板を音波処理し、水で洗い流し、水中で10分間音波処理し、エタノールで洗浄し、その後エタノール中で10分間音波処理し、さらにエタノールで洗浄し、窒素下で乾燥させた。複数の試料を同じ基板から得ることができるように基板を2つの部分に切断した。全ての試料を空気プラズマにあてた(15分間)。液体の体積が基板の面より低くなるまで、数時間にわたり、一方の試料をエタノール中の(E)−11−(シンナモイルオキシ)ウンデシルホスホン酸の1mM溶液の中に水平状態で浸漬した。もう一方の試料は、液体の体積が基板の面より低くなるまで、数時間にわたりエタノール中に水平状態で浸漬した。これらをその後、エタノールで洗い流し、36時間、140℃のオーブン内に入れた。次にこれらをTEA/エタノールの5%v/v溶液中で30分間音波処理した。その後、これをエタノールで、次に水で洗い流し、窒素下で乾燥させた。
【0077】
〔溶液Z − ジクロロメタン(0.5mL)中の(E)−メチル3−(4−(4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデシルオキシ)フェニル)アクリレート(7mg)の溶液〕
試料1−修飾ITO基板を、その上に数滴の溶液Zを滴下し、10分間光反応器内に入れ(8球−300nm、8球−350nm)、その後ジクロロメタンで濯ぎ、1分間ジクロロメタン中で超音波処理し、次にジクロロメタン中で再び濯いだもの。
試料2−修飾ITO基板を、その上に数滴の溶液Zを滴下し、30分間光反応器内に入れ(8球−300nm、8球−350nm)、その後ジクロロメタンで洗い流し、1分間ジクロロメタン内で超音波処理し、次にジクロロメタン中で再び洗い流したもの。
【0078】
表面の元素分析は、試料1および試料2についてフッ素が存在することを示した。
【0079】
〔3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルホスホン酸を用いたITOの修飾〕
レンズクロスを用いてTriton−X100でITO(ガラス上)基板を洗浄した。その後、10分間Triton−X100溶液中で2つの基板を超音波処理し、水で濯ぎ、水中で10分間超音波処理し、エタノールで洗浄し、その後エタノール中で10分間音波処理し、その後エタノールで洗浄し、窒素下で乾燥させた(表2のDSC法)。複数の試料を同じ基板から得ることができるように、基板をより小さい部分に切断した。
【0080】
ITO− この基板を数時間、液体の体積が基板の面より低くなるまでエタノール中に水平状態で浸漬した。その後それをエタノールで、次に水で濯ぎ、窒素下で乾燥させた。
【0081】
PA/ITO 0− この基板を、液体の体積が基板のレベルより低くなるまで数時間、エタノール中の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルホスホン酸の1mM溶液中に水平状態で浸漬した。その後それをエタノールで、次に水で濯ぎ、窒素下で乾燥させた。
【0082】
PA/ITO TEA 10− この基板を、液体の体積が基板の面より低くなるまで数時間、エタノール中の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルホスホン酸の1mM溶液中に水平状態で浸漬した。その後基板を10分間、TEA/エタノールの5%v/v溶液中で超音波処理した。その後それをエタノールで、次に水で濯ぎ、窒素下で乾燥させた。
【0083】
PA/ITO TEA 30− この基板を、液体の体積が基板の面より低くなるまで数時間、エタノール中の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルホスホン酸の1mM溶液中に水平状態で浸漬した。その後基板を30分間、TEA/エタノールの5%v/v溶液中で超音波処理した。その後それをエタノールで、次に水で濯ぎ、窒素下で乾燥させた。
【0084】
PA/ITO TEA 60− この基板を、液体の体積が基板の面より低くなるまで数時間、エタノール中の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルホスホン酸の1mM溶液中に水平状態で浸漬した。その後基板を60分間、TEA/エタノールの5%v/v溶液中で超音波処理した。その後それをエタノールで、次に水で濯ぎ、窒素下で乾燥させた。
【0085】
PA/ITO THF 10−この基板を、液体の体積が基板の面より低くなるまで数時間、エタノール中の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルホスホン酸の1mM溶液中に水平状態で浸漬した。その後基板を10分間、THF中で超音波処理した。その後それをエタノールで、次に水で濯ぎ、窒素下で乾燥させた。
【0086】
PA/ITO THF 30− この基板を、液体の体積が基板の面より低くなるまで数時間、エタノール中の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルホスホン酸の1mM溶液中に水平状態で浸漬した。その後基板を30分間、THF中で超音波処理した。その後それをエタノールで、次に水で濯ぎ、窒素下で乾燥させた。
【0087】
PA/ITO TEA 60− この基板を、液体の体積が基板の面より低くなるまで数時間、エタノール中の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルホスホン酸の1mM溶液中に水平状態で浸漬した。その後基板を60分間、THF中で超音波処理した。その後それをエタノールで、次に水で濯ぎ、窒素下で乾燥させた。
【0088】
PA/ITO THF 10+10− この基板を、液体の体積が基板の面より低くなるまで数時間、エタノール中の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルホスホン酸の1mM溶液中に水平状態で浸漬した。その後基板を10分間、THF中で超音波処理した。このTHFを廃棄し、基板をさらに10分間THF中で超音波処理した。その後それをエタノールで、次に水で濯ぎ、窒素下で乾燥させた。
【0089】
〔ポリ(PEG)(ホスホン酸)コポリマーの合成〕
【化5】

【0090】
無水THF中にトリエチレングリコールモノメチルエーテル(1.33mL、8.35mmol)を溶解させ、窒素下で撹拌した。水素化ナトリウム(224mg、9.34mmol)を添加し、反応物をさらに30分間撹拌した。その後ポリ(ビニルベンジルクロリド)(1.50g、9.83mmol)を添加し、反応物を一晩撹拌した。溶剤を除去し、残渣を酢酸エチル中に再度溶解させ、水で洗浄した。真空下で溶剤を除去して、オレンジ色の粘着性油/固体としてPEG/Clポリスチレンを得た(2.34g)。
【0091】
【化6】

【0092】
PEG/C1ポリスチレン(500mg、1.78mmol)をジオキサン(15mL)中でトリエチルホスファイト(0.30mL、1.78mmol)と混ぜ、混合物を100℃で一晩加熱し、続いて8時間135℃で撹拌した。冷却後、反応混合物を低温ヘキサン(約200mL)の中に滴下し、その間勢いよく撹拌した。ヘキサンを傾瀉し、底面の粘着性固体を少量の酢酸エチル中に再度溶解させ、その後再び低温ヘキサン(約200mL)中で再度沈殿させた。ヘキサンを傾瀉し、底面にPEG/ホスホネートポリスチレンの粘着性の黄色固体/油が残った(482mg)。
【0093】
【化7】

【0094】
無水ジクロロメタン(20mL)中に上記のPEG/ホスホネートポリスチレンを溶解させた。シリンジを介してブロモトリメチルシラン(1.0mL、過剰mmol)を添加した。グリースを塗ったガラス栓を反応物にかぶせ、6時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去して、黄色の油/固体を得た。これに対して1:1のメタノール:水(25mL)を添加し、反応物を8時間還流させた。溶剤を除去した後、固体を高真空下に置いて、軟質のオフホワイト固体としてPEG/ホスホン酸ポリスチレンを得た(260mg)。
【0095】
ホスホン酸カリウムの合成
【0096】
〔オクタデシルホスホン酸水素カリウム(オクタデシルホスホン酸一塩基性カリウム塩)の合成〕
100mMのKOH溶液3.0mLを、30mLの水中のオクタデシルホスホン酸(100mg、0.3mmol)の分散溶液へと撹拌しながら滴定した。その混合物を次に60℃まで加熱し、その間、水が蒸発するまで撹拌した(約3時間)。その後、結果として得た白色固体を真空下で乾燥させた。
【0097】
〔オクタデシルホスホン酸カリウム(オクタデシルホスホン酸二塩基性カリウム塩)の合成〕
100mMのKOH溶液6.0mLを、30mLの水中のオクタデシルホスホン酸(100mg、0.3mmol)の分散溶液へと撹拌しながら滴定した。その混合物を次に60℃まで加熱し、その間、水が蒸発するまで撹拌した(約3時間)。その後、結果として得た白色固体を真空下で乾燥させた。
【0098】
ITO修飾物質としてのフェニル置換PA(F3PPAおよびCF3PPA)の使用:
(a)実施例1では、DI水中のTriton−X(Aldrich)の希釈溶液を用いて、ITOをコーティングしたガラス(20Ω/□Colorado Concept Coatings,L.L.C)を最初に超音波浴中で清浄し(20分間)、続いてDI水中で超音波処理する(20分間)実験手順にしたがってITOを修飾するために、F3PPAを使用した。さらに、アセトンとエタノール(各20分間)を用いて超音波浴中で有機清浄を行なった。その後、洗浄したITO基板を1時間、圧力(1×10−2Torr)下で70℃の真空乾燥オーブン内で乾燥させた。30分間、F3PPAの溶液(CHCl:COH=2:1中1mM)中に、洗浄したITO基板を浸漬し、それに続いて120℃でアニールする(1時間)ことによって、表面修飾を実施した。全てのステップを、窒素充填したグローブボックス(O<20ppmおよびHO<1ppm)内で実施した。ケルビンプローブ(Besocke Delta Phi)を用いて空気中で仕事関数を測定した。F3PPA修飾ITOの異なる場所での複数回の測定により、約5.17eVという平均仕事関数値を得た。
【0099】
(b)実施例2では、(a)で記述した通りの実験手順にしたがってCF3PPAを使用してITOを修飾した。ケルビンプローブ(Besocke Delta Phi)を用いて空気中で仕事関数を測定した。CF3PPA修飾ITOの異なる場所での複数回の測定により約5.36eVという平均仕事関数値を得た。
【0100】
(c)実施例3では、(a)で記述した通りの実験手順にしたがってCF3PPAを使用してITOを修飾した。ITO/修飾物質/α−NPD(120nm)/Al(200nm)という構造をもつ単層ダイオード中で、修飾電極を使用した。1×10−7Torr未満の圧力で1Å/sの速度でα−NPDを熱蒸発させた。シャドウマスクを用いて2Å/sの速度でAl陰極を被着させ、デバイス1個あたり0.1cmという作用面積を得た。グローブボックスの内部でデバイスを試験した。修飾ITOの電流電圧特性は、修飾されなかったITO電極、および空気プラズマで修飾されたものと合わせて、図18に示されている。未修飾のITOと比較して、CF3PPA修飾物質を用いたダイオードの場合に所与の印加電圧に対する、より低い電流開始とより大きな電流密度は、正孔の注入に対する障壁が低いことを示し、かつCF3PPAで修飾された場合にITOの仕事関数が増大することを実証している。CF3PPAに基づくダイオード内での電荷注入の改善は、空気プラズマ処理と類似しているが、図3に示されているように長期の安定性を伴うものである。
【0101】
(d)実施例4では、(a)にある通りの実験手順にしたがってF3PPAを使用してITOを修飾し、5.17Evという仕事関数値を得た。その後、ITO/修飾物質/α−NPD(120nm)/Al(200nm)という構造をもつ単層ダイオード中で、この修飾電極を使用した。(c)で記述した手順を用いてα−NPDおよびAlを被着させた。修飾ITOの電流電圧特性は、修飾されなかったITO電極と合わせて、図19に示されている。未修飾のITOと比較して、F3PPA修飾物質を用いたダイオードの場合に所与の印加電圧対する、より低い電流開始とより大きな電流密度は、正孔の注入に対する障壁が低いことを示し、かつF3PPAで修飾された場合にITOの仕事関数が増大することを実証している。比較のため、空気プラズマ修飾を用いたダイオードについての電流密度−電圧曲線も示されている。
【0102】
(e)実施例5では、ITO/修飾物質/ペンタセン(100nm)/Al(200nm)という構造をもつ単層ダイオード中でCF3PPAを使用した。ペンタセンを、0.5Å/sの速度および1×10−7Torr未満の圧力で熱蒸発させた。シャドウマスクを用いて2Å/sの速度でAl陰極を被着させ、0.1cmの作用面積を有するデバイスを得た。この修飾ITOの電流電圧特性は、修飾されなかったITO電極上の特性と合わせて、図20に示されている。修飾物質CF3PPAを用いて修飾されたITOを用いたダイオードは、表面修飾物質を用いないダイオードと類似の注入特性および電流密度−電圧(J−V)特性を示した。単層ダイオード内のITOの仕事関数増大時における注入障壁のこの不変性は、フェルミ準位ピン止め効果(J.Appl.Phys.105,074511,2009)に起因している。
【0103】
(f)実施例6では、F3PPAを、ITO/修飾物質/ペンタセン(100nm)/Al(200nm)という構造をもつ単層ダイオード内で使用した。(e)で記述した方法を用いてデバイスを製造した。修飾ITOの電流電圧特性は、修飾されなかったITO電極のものと共に図21に示されている。修飾物質F3PPAを用いて修飾されたITOを用いたダイオードは、表面修飾物質を用いないダイオードと類似の電流密度−電圧(J−V)特性を示した。
【0104】
(g)実施例6では、(a)で記述した実験手順にしたがって、CF3PPAを使用してITOを修飾し、約5.36eVという仕事関数値を得た。異なる供給源から得た異なるグレードの2つのITO上で表面修飾を実施した。図22は、時間の一関数として測定された修飾されたITOの仕事関数を示し、且つ修飾ITOの安定性を明らかにしている。CF3PPAを用いて修飾されたITOについての仕事関数の変動は、測定時間全体にわたり初期値の1.8%未満であった。これは、表面修飾物質に基づいた仕事関数の安定性が空気中で4000時間を上回っていることを実証している。これとは対照的に、空気プラズマなどのその他の手段により達成されるITOの改善された仕事関数は安定しておらず、図3に示されたものである。
【0105】
ドーピング可能なトリフェニルアミンPAを用いた表面修飾:
(h)実施例7では、表面修飾物質としてトリフェニルアミンPAを使用し、ここでは(a)に記述されている通りにITOコーティングされたガラス(20Ω/□Colorado Concept Coatings,L.L.C.)を調製した。清浄にしたITO基板をトリフェニルアミンPAの溶液(無水THF中1mM)中に30分間浸漬し、続いて120℃でアニールする(1時間)ことによって、表面修飾を実施した。その後、トリフェニルアミンPA SAM層を伴うこの修飾ITO基板を、強い電子受容体を用いてドーピングした。F4TCNQを使用したPAのドーピング例は、以下のスキーム内で示される。全てのステップは窒素を充填したグローブボックス(O<20ppmおよびHO<1ppm)で実施した。
【0106】
(i)実施例8では、ドーピングされたおよびされていない形でのトリフェニルアミンPAを、ITO/修飾物質/α−NPD(120nm)/Al(200nm)という構造を伴う単層ダイオード中で使用した。(c)で記述した通りに、α−NPDおよびAlを熱蒸発させた。窒素を充填したグローブボックス内でデバイスを試験した。ドーピングされたおよびされていないトリフェニルアミンPAを使用した修飾ITOの電流電圧特性は、図23で比較されている。
【0107】
有機太陽電池での表面修飾物質の試験
【0108】
(j)実施例9では、ITO/修飾物質/ペンタセン(50nm)/C60(45nm)/BCP(8nm)/Al(200nm)という構成をもつ有機太陽電池に、(a)に記述した通りの実験手順にしたがってCF3PPAを用いて修飾したITOを使用した。まず最初に、デバイス試験中の電気的短絡を回避するために、基板の半分の上にSiOxのバリヤ層(300nm)を被着させた。その後、修飾ITO上に0.5Å/sの速度で厚み50nmのペンタセン層を被着させた。その後、1Å/sの速度で、ペンタセン層の上面上にC60の層(45nm)を被着させた。その次に0.4Å/sの速度で、励起子遮断層として作用するためのBCPの薄層を被着させた。全ての有機材料を1×10−7Torr未満の圧力で熱蒸発させた。各々0.1cmの作用面積をもつ1基板あたり5個の画定されたデバイスを作るため、シャドウマスクを用いてAl陰極(200nm)を被着させた。このデバイスを、窒素充填したグローブボックス内で試験した(O<1ppmおよびHO<1ppm)。78mW/cmの放射照度を有する175Wキセノンランプ(ASB−XE−175EX、CVI)の広帯域光(350〜900nm)を使用して、太陽電池特性を測定した。
【0109】
CF3PPA修飾物質を使用して暗所でおよび照明下で測定されたOPVデバイスの電流密度−電圧(J−V)特性は、図24に示されている。広帯域照明(放射照度約78mW/cm)下での光起電パラメータ、Voc、Jsc、FF、および電力変換効率(η)を3個のデバイスについて平均したものが表Xに要約されている。比較のため、未修飾のITOおよび空気プラズマで修飾したITOを使用して同じ工程で製造したOPVデバイスの性能も表に示されている。より高い仕事関数を有するCF3PPAで修飾したITOをベースとしたOPVデバイスは、未修飾ITOおよび空気プラズマ修飾ITOに対するものと類似のデバイスの性能(エラーバー内で、表Xを参照されたい)をもたらしている。
【0110】
【表5】

【0111】
その他の実施形態は以下のクレーム中にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1つの表面を有する電極と;b)結合基を介して前記電極の前記表面に結合された分子と;c)前記電極と電気的に接触した有機電子材料とを含むデバイスにおいて、前記分子が少なくとも1つのフッ素化アリール基を含んでいるデバイス。
【請求項2】
前記電極が透明な導電性金属酸化物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記透明な導電性金属酸化物が、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムアルミニウム亜鉛酸化物、アンチノミスズ酸化物、フッ素スズ酸化物、酸化カドミウム、またはスタン酸カドミウムを含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記分子が前記電極の前記表面上で単分子層を構成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記結合基が、シラン、カルボン酸、スルホン酸、ボロン酸、またはホスホン酸を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記フッ素化アリール基が、フェニル基、ナフタレン基、またはビフェニル基を含み、フッ素数が1〜10である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記結合基がフッ素化ホスホン酸である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記電極がインジウムスズ酸化物(ITO)を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記フッ素化ホスホン酸が
【化1】

の構造を有し、式中、各場合に独立に、Rが水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、またはフッ素化アルキル基であり;Rがメチレン、フッ素化されたメチレン、アルケン、またはアルキンであり;n=1〜5;m=0〜3、そしてq=0〜3である、請求項8または9に記載のデバイス。
【請求項10】
前記フッ素化ホスホン酸が
【化2】

である、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
【化3】

を含む物質の組成物であって、式中、各場合に独立に、Rが水素、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、またはフッ素化アルキル基であり;Rがメチレン、フッ素化されたメチレン、アルケン、またはアルキンであり;n=1〜5;m=0〜3;そしてq=0〜3である、組成物。
【請求項12】
【化4】

を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
【化5】

を含む、請求項12に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2011−528327(P2011−528327A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517914(P2011−517914)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059027
【国際公開番号】WO2010/007081
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(594136664)ジョージア・テック・リサーチ・コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】