説明

有機顔料微粒子およびその製造方法、それを含有する顔料分散組成物、光硬化性組成物、インクジェットインク、並びにそれらを用いたカラーフィルタ及びその製造方法

【課題】液晶表示装置などに用いられるカラーフィルタの特性を改善しうる有機顔料微粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】有機顔料と高分子化合物とを有する自己分散しうる有機顔料微粒子であって、該有機顔料微粒子は、第1溶媒に前記有機顔料および前記高分子化合物を溶解した有機顔料溶液と、前記有機顔料に対して貧溶媒となり前記第1溶媒と相溶する第2溶媒とを混合し、その混合液中に析出させたナノメートルサイズの微粒子であり、前記高分子化合物として前記第2溶媒に対し不溶性の化合物を用いて、前記第1溶媒及び第2溶媒のいずれとも異なる第3の溶媒に自己分散しうるものとされた有機顔料微粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機顔料微粒子およびその製造方法、それを含有する顔料分散組成物、光硬化性組成物、インクジェットインク、並びにそれらを用いたカラーフィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶カラーディスプレイやビデオカメラ等、最先端画像関連機器に使用されるカラーフィルタは、基板上に赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各着色画素部が形成された精密部材である。これら各着色画素部は、所定の色彩表示が再現されるように、各色の有機顔料が分散した樹脂の薄膜を、基板上に設けた微細構造を有する。そして、この着色画素部を形成するために用いられる光硬化性の顔料組成物顔料組成物は、有機顔料を分散した顔料分散液及び光硬化性化合物に、必要に応じて樹脂等を加えることで化学的特性を調節して調製されている。
【0003】
上述のような画像関連機器に用いられる精密部材としてその要求を満たすためには、極めて高い部材特性が必要である。カラーフィルタについても高性能・高品質が求められており、その作製に用いられる有機顔料の改良が試みられている。具体的には、顔料分散組成物の調製において貯蔵安定性に優れるもの、該顔料分散組成物を使用したカラーフィルタ着色画素部の塗膜のコントラストに優れるものなどが要求されている。
【0004】
そのために、例えば顔料粒子を10〜100nmの範囲にまで小サイズ化し、各種の用途に応用する研究が精力的に進められている。これは、ナノメートルサイズにすることで初めて発現する作用効果により、従来予想できなかった新たな特性を引き出そうとするものである。例えば、塗料、印刷インク、電子写真用トナー、インクジェットインク、カラーフィルタ等において、その研究開発が進められており、とりわけ上述のカラーフィルタおよびインクジェットインクについては、精密化学技術を用いた高性能化のための取り組みがなされ、その成果が期待されている。
【0005】
ここで有機顔料の分散方法についていうと、ビーズミル法やソルトミリング法などの各種ミリング法(ブレイクダウン法)や液相法などがあるが、上記ミリング法で有機顔料を十分に微細化し組成物中で分散させることは難しい(特許文献1参照)。液相法は微細な顔料粒子を得るのに適しており、具体的に、顔料を良溶媒(第1溶媒)に溶解した顔料溶液と貧溶媒(第2溶媒)とを混合してナノ粒子を析出させ、所定の高分子化合物を添加する方法が提案されている(特許文献2〜5参照)。しかし、上記従来技術において、第1溶媒及び第2溶媒を効率的に取り除き、これらとは異なる第3溶媒に生成させた顔料微粒子を十分に再分散させること、そしてこの第3溶媒に対する生成微粒子の自発的な分散性(自己分散性)を与えることは開示されていない。例えば特許文献5ではポリビニルピロリドンを顔料溶液に溶解して粒子形成を行っているが、これは第2溶媒(貧溶媒)として用いられた水性媒体に対して溶解性があるため、上記顔料溶液と第2溶媒とを混合して得られた微粒子分散液から上記ポリマーを取り出すことが難しい。そして、新たな第3溶媒に対して顔料微粒子を分散させるには、通常、上記ポリマーとは別の分散剤の添加が必要となる。
【0006】
【特許文献1】特開2000−239554号公報
【特許文献2】国際公開第WO2006/121016号パンフレット
【特許文献3】特開2004−43776号公報
【特許文献4】特開2007−119586号公報
【特許文献5】特開2007−23169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、液晶表示装置などに用いられるカラーフィルタの特性を改善しうる有機顔料微粒子及びその製造方法の提供を目的とする。特に、カラーフィルタを高コントラスト化するとともに、その製造品質、製造効率、及び環境適合性を高め、しかも液晶表示装置において良好な表示特性を実現しうる有機顔料微粒子及びその製造方法、それにより得られる分散組成物、光硬化性組成物、及びインクジェットインク、それらを用いたカラーフィルタ及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記の手段によって達成された。
(1)有機顔料と高分子化合物とを有する自己分散しうる有機顔料微粒子であって、
該有機顔料微粒子は、第1溶媒に前記有機顔料および前記高分子化合物を溶解した有機顔料溶液と、前記有機顔料に対して貧溶媒となり前記第1溶媒と相溶する第2溶媒とを混合し、その混合液中に析出させたナノメートルサイズの微粒子であり、前記高分子化合物として前記第2溶媒に対し不溶性の化合物を用いて、前記第1溶媒及び第2溶媒のいずれとも異なる第3の溶媒に自己分散しうるものとされたことを特徴とする有機顔料微粒子。
(2)前記高分子化合物の質量平均分子量が1000〜500000であることを特徴とする(1)に記載の有機顔料微粒子。
(3)前記高分子化合物が、ビニルモノマーの重合体及び共重合体、エステルポリマー、エーテルポリマー、並びにこれらの変性物及び共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種の高分子化合物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の有機顔料微粒子。
(4)前記高分子化合物が、炭素数4以上の炭化水素基を有するビニルモノマーの重合体及び共重合体であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
(5)前記高分子化合物が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、フェニレン基、または−CCO−基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。Wは、直鎖,分岐,もしくは環状のアルキレン基、アラルキレン基、または単結合を表す。Pは複素環基を表す。)
(6)前記高分子化合物が、さらに下記一般式(2)または(3)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
【化2】

(Rは水素原子またはメチル基を表す。Yは−NH−、−O−、または−S−を表す。Wは単結合または2価の連結基を表す。Pは複素環基をあらわす。)
(7)前記一般式(1)、(2)、または(3)中のPが、一般式(4)またはその互変異性体構造で表されることを特徴とする(5)または(6)に記載の有機顔料微粒子。
【化3】

(Rは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または水素原子を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、またはアゾ基を表す。)
(8)前記高分子化合物が、末端にエチレン性不飽和2重結合を有する重合性オリゴマーがなす側鎖を有するグラフト共重合体であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子
(9)
前記有機顔料溶液中に、さらに塩基性基もしくは酸性基を有する有機化合物を少なくとも1種以上含有させたことを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
(10)前記有機顔料溶液と第2溶媒とを、下式(1)で表されるレイノルズ数Reが50以上となる条件下で混合したことを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
Re=ρUL/μ ・・・ (1)
[数式(1)中、Reはレイノルズ数を表し、ρは有機顔料溶液の密度を表し、Uは有機顔料溶液と第2溶媒とが出会うときの相対速度を表し、Lは有機顔料溶液と第2溶媒とが出会う部分の流路もしくは供給口の等価直径を表し、μは有機顔料溶液の粘性係数を表す。]
(11)前記第1溶媒が、有機酸、有機塩基、スルホキシド化合物溶媒、及びアミド化合物溶媒よりなる群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
(12)前記第2溶媒が水性媒体及びアルコール化合物溶媒よりなる群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
(13)前記第3の溶媒が、エーテル化合物溶媒、エステル化合物溶媒、芳香族炭化水素化合物溶媒、及び脂肪族炭化水素化合物溶媒よりなる群から選択される少なくとも1種以上の溶媒であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
(14)前記有機顔料溶液中に、前記高分子化合物を前記有機顔料100質量部に対して10〜300質量部含有させたことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
(15)第1溶媒に有機顔料および高分子化合物を溶解した有機顔料溶液と、前記有機顔料に対して貧溶媒となり前記第1溶媒と相溶する第2溶媒とを混合し、その混合液中に前記有機顔料と前記高分子化合物とを有するナノメートルサイズの微粒子を析出させるに当たり、前記高分子化合物として前記第2溶媒に対して不溶性の化合物を用い、前記微粒子を前記第1溶媒及び第2溶媒のいずれとも異なる第3の溶媒に自己分散しうるものとすることを特徴とする有機顔料微粒子の製造方法。
(16)(1)〜(14)のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子を前記第3の溶媒に自己分散させたことを特徴とする顔料分散組成物。
(17)さらに、顔料分散剤を含有させたことを特徴とする(16)に記載の顔料分散組成物。
(18)(16)または(17)に記載の顔料分散組成物と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有させたことを特徴とする光硬化性組成物。
(19)さらに、アルカリ可溶性樹脂を含有させたことを特徴とする(18)に記載の光硬化性組成物。
(20)カラーフィルタ用であることを特徴とする(18)又は(19)に記載の光硬化性組成物。
(21)基板上に、(18)〜(20)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いて形成した着色パターンを有することを特徴とするカラーフィルタ。
(22)(18)〜(20)のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を直接もしくは所定の層を介して基板上に付与して感光性膜を形成する感光性膜形成工程と、形成された感光性膜にパターン露光及び現像を順次行なうことにより着色パターンを形成する着色パターン形成工程とを有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
(23)重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーを含む媒体に、(1)〜(14)のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子を含有させたことを特徴とするインクジェットインク。
(24)カラーフィルタ用であることを特徴とする(23)に記載のインクジェットインク。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機顔料微粒子及びそれを含有する顔料分散組成物、光硬化性組成物、インクジェットインクは、カラーフィルタの特性を改善し、特にカラーフィルタを高コントラスト化するとともに、その製造品質、製造効率、及び環境適合性を高め、しかも液晶表示装置において良好な表示特性を実現しうるという優れた作用効果を奏する。そして本発明の製造方法によれば、上記の優れた特性を有する有機顔料微粒子を効率良くかつ純度良く製造することができ、またこれを用いた表示品位の良好なカラーフィルタをコストを抑え効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において用いられる有機顔料は、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、アントラキノン系顔料、アントアントロン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジスアゾ縮合系顔料、ジスアゾ系顔料、アゾ系顔料、インダントロン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリアリールカルボニウム系顔料、ジオキサジン系顔料、アミノアントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ピラントロン系顔料、イソビオラントロン系顔料、それらの混合物などが挙げられる。
なかでも、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、またはアゾ系顔料であることが好ましく、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料、またはジオキサジン系顔料がより好ましい。
【0011】
前記有機顔料としては、例えば、以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー11,24,31,53,83,93,99,108,109,110,138,139,147,150,151,154,155,167,180,185,199;
C.I.ピグメントオレンジ36,38,43,71;
C.I.ピグメントレッド81,105,122,149,150,155,171,175,176,177,209,220,224,242,254,255,264,270;
C.I.ピグメントバイオレット19,23,32,37,39;
C.I.ピグメントブルー1,2,15,15:1,15:3,15:6,16,22,60,66;
C.I.ピグメントグリーン7,36,37;
C.I.ピグメントブラウン25,28;
C.I.ピグメントブラック1,7;
【0012】
本発明における顔料としては、特に限定されるものではないが、下記の顔料がより好ましい。
C.I.ピグメントイエロー11,24,108,109,110,138,139,150,151,154,167,180,185,
C.I.ピグメントオレンジ36,71,
C.I.ピグメントレッド122,150,171,175,177,209,224,242,254,255,264,
C.I.ピグメントバイオレット19,23,37,
C.I.ピグメントブルー15:1,15:3,15:6,16,22,60,66,
C.I.ピグメントグリーン36
C.I.ピグメントブラック7
【0013】
本発明においては、2種類以上の有機顔料または有機顔料の固溶体を組み合わせて用いてもよく、また、有機色素と組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明において用いられる高分子化合物は、有機顔料微粒子に第3溶媒に対する自己分散性を付与する機能を有するものであり(この観点から、該高分子化合物を「自己分散化高分子化合物」とよぶことがある。)、第1溶媒に溶解可能であり、第2溶媒に対して不溶性の化合物、つまり第2溶媒が貧溶媒となるようなものであれば特に限定されない。なかでも前記有機顔料溶液と前記第2溶媒とを混合することにより顔料を析出させた際に、分散剤として機能し、析出させた顔料微粒子に素早く吸着するような高分子化合物であることが好ましい。ここで、本発明において、溶媒に対する化合物の溶解度が2.0質量%以下であるとき、該化合物は該溶媒に対して不溶性である、つまり該化合物に対して該溶媒は貧溶媒であると定義する。
前記高分子化合物の質量平均分子量は、特に限定されないが、1000〜500000であることが好ましく、2000〜300000であることがより好ましく、3000〜200000であることが特に好ましい。前記高分子化合物の形状としては、線状であっても、分岐状(例えば、グラフト、星型等)であってもよい。また重合体が共重合体である場合には、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、末端変性共重合体のいずれであってもよい。本発明において、分子量というとき特に断らない限り質量平均分子量を意味し、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(キャリア:テトラヒドロフラン)によって測定されるポリスチレン換算質量平均分子量である。
【0015】
前記高分子化合物としては、特に限定されないが、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体(例えば、メタクリル酸アルキルの単独重合体、スチレン類の単独重合体、メタクリル酸アルキル/スチレン類の共重合体、ポリビニルブチラールなど)、エステル系ポリマー(例えば、ポリカプロラクトンなど)、エーテル系ポリマー(例えば、ポリテトラメチレンオキシドなど)、ウレタン系ポリマー(例えば、テトラメチレングリコールとヘキサメチレンジイソシアネートからなるポリウレタンなど)、アミド系ポリマー(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66など)、シリコーン系ポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサンなど)、カーボネート系ポリマー(例えば、ビスフェノールAとホスゲンから合成されるポリカーボネートなど)などが挙げられる。
【0016】
前記高分子化合物としては、これらの中でも特に、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体、エステル系ポリマー、エーテル系ポリマーおよびこれらの変性物もしくは共重合体が好ましい。溶媒への溶解性調整、コスト、合成的な容易さ等の観点から、前記高分子化合物としては、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体が特に好ましい。
【0017】
前記ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい例として挙げられる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0019】
クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、およびクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
【0020】
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどが挙げられる。
【0021】
マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、およびマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0022】
フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、およびフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
【0023】
イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、およびイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0025】
スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、およびα−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0026】
ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルおよびフェニルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0027】
ビニルケトン類の例としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどが挙げられる。
【0028】
オレフィン類の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
【0029】
マレイミド類の例としては、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、ビニルカプロラクトン等も使用できる。
【0031】
前記高分子化合物は、これらの中でも特に炭素数4以上の炭化水素基を有するビニルモノマーの重合体、もしくは共重合体であることがより好ましく、さらに炭素数6以上24以下の炭化水素基を有するモノマーの重合体、もしくは共重合体であることが特に好ましい。例として、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸アダマンチルが挙げられる。
【0032】
また上記以外にも、前記ビニルモノマーとして、酸性基を有するビニルモノマー、塩基性基を有するビニルモノマーなども好ましい例として挙げられる。
【0033】
前記酸性基を有するビニルモノマーの例としては、カルボキシル基を有するビニルモノマーとして、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの水酸基を有するモノマーと無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、(メタ)アクリル酸ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマー等を挙げることができる。また、スルホン酸基を有するビニルモノマーとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するビニルモノマーとして、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−アクリロイルオキシエチルエステル)等が挙げられる。
【0034】
塩基性窒素原子を有するビニルモノマーとして、その(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノヘキシル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モルホリノエチル、(メタ)アクリル酸ピペリジノエチル、(メタ)アクリル酸1−ピロリジノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル及び(メタ)アクリル酸N,N−メチルフェニルアミノエチルなどが挙げられ、その(メタ)アクリルアミド類としては、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド及び6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、スチレン類として、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン等が挙げられる。
【0035】
また、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基を有するモノマーを用いることも可能である。具体的には、例えば、以下の構造のモノマーを挙げることができる。
【化4】

【0036】
更に、イオン性官能基を含有するモノマーを利用することができる。イオン性ビニルモノマー(アニオン性ビニルモノマー、カチオン性ビニルモノマー)のなかで、アニオン性ビニルモノマーとして、前記酸性基を有するビニルモノマーのアルカリ金属塩や、有機アミン(例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等の3級アミン)との塩などが挙げられ、カチオン性ビニルモノマーとしては、前記含窒素ビニルモノマーを、ハロゲン化アルキル(アルキル基:C1〜18、ハロゲン原子:塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子):塩化ベンジル、臭化ベンジル等のハロゲン化ベンジル;メタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸エステル(アルキル基:C1〜18);ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸アルキルエステル(アルキル基:C1〜18);硫酸ジアルキル(アルキル基:C1〜4)等で4級化させたもの、ジアルキルジアリルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0037】
前記高分子化合物は、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーであることが好ましい。有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーとしては、例えば、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系の色素構造や、例えば、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン等の複素環構造を有するモノマーを挙げることができる。
【0038】
これら有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーの中でも、より具体的には、前記高分子化合物が、一般式(1)であらわされることを特徴とするモノマーの重合体もしくは共重合体であることが好ましい。なお、本発明において高分子化合物を繰返し単位構造式で表すとき、末端基は任意の原子もしくは任意の基であればよく、例えば単に水素原子、重合停止剤残基等であてもよい。
【化5】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、フェニレン基、または−CCO−基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。Wは単結合、直鎖、分岐、もしくは環状のアルキレン基、又はアラルキレン基を表す。Pは複素環基を表す。
【0039】
式(1)中、Jとしては−CO−、フェニレン基、ベンゾイル基が好ましい。Rは水素原子、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基など)、アリール基(例えばフェニル基)を表し、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。
【0040】
前記Wで表されるアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられ、中でもメチレン基、エチレン基、又はプロピレン基が好ましい。前記Wで表されるアラルキレン基としては、炭素数7〜13のアラルキレン基が好ましく、例えば、ベンジリデン基、シンナミリデン基等が挙げられる。前記Wで表されるアリーレン基としては、炭素数6〜12のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、クメニレン基、メシチレン基、トリレン基、キシリレン基等が挙げられ、中でもフェニレン基は特に好ましい。
【0041】
また、Wで表される直鎖、分岐もしくは環状のアルキレン基、アラルキレン基中には、−NR32−、−NR3233−、−COO−、−OCO−、−O−、−SONH−、−NHSO−、−NHCOO−、−OCONH−、又は複素環から誘導される基、が結合基として介在されていてもよい。前記R32、R33は、それぞれ独立に水素又はアルキル基を表し、水素、メチル基、エチル基、プロピル基等が好適に挙げられる。
【0042】
前記Wで表される連結基の中でも、単結合、又はアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、又は2−ヒドロキシプロピレン基がより好ましい。
【0043】
式(1)中、Pは複素環基を表すが、中でも有機顔料を構成する複素環残基が好ましく、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリミジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系、キノフタロン系顔料を形成するヘテロ環残基があげられる。該複素環残基としてはチオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、バルビツール、チオバルビツール、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、、キナクリドン、アントラキノン、フタルイミド、キナルジン、キノフタロンが挙げられ、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、キナクリドン、アントラキノン、フタルイミド、キナルジン、キノフタロン等が好ましく、ベンズイミダゾロン、インドール、キノリン、バルビツール、チオバルビツール、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン、およびフタルイミドが特に好ましい。これらの複素環残基は使用する顔料の構造又は電子的な性質を鑑みて適宜選択され得る。
【0044】
一般式(1)で表される繰返し単位は、中でも一般式(2)、(3)で表されるものが好ましい。
【化6】

は水素原子またはメチル基を表す。Yは−NH−、−O−、または−S−をあらわす。Wは単結合または二価の連結基を表し、単結合、直鎖、分岐もしくは環状のアルキレン基、またはアラルキレン基であることが好ましい。Pは複素環基をあらわす。上記式中、Wの好ましい範囲は、一般式(1)中のWと同じである。上記式中Pは、一般式(1)中のPと同じである。
【0045】
式(1)、(2)、及び(3)で表される構造として好ましい具体例を以下に挙げる。尚、本発明はこれに限るものではない。
【化7】

【化8】

上記例示したものとともに、前記一般式(1)、(2)、及び(3)で表される繰返し単位中のPが、下記一般式(4)またはその互変異性体構造で表されることもまた好ましい。
【化9】

は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、またはアゾ基を表す。
【0046】
ここで互変異性について説明する。互変異性とは異性体同士の可逆的相互変換であり、主にプロトン転位で、水素原子が相互に転位する現象である。また互変異性体とは、相互変換可能な構造異性体同士が、互いに変換する異性化の速度が速く、どちらの異性体も共存する平衡状態に達しうるものをさす。一般にみられる例としては、単結合と二重結合との変換を伴う、水素原子つまりプロトンの転位反応によって起こる。異性化の速度や平衡比は温度やpH、液相か固相か、また溶液の場合には溶媒の種類によっても変化する。平衡に達するのが数時間から数日の場合でも互変異性と呼ぶことが多い。
【0047】
本発明においては、高分子化合物中で上記互変異性を示す化学構造(部)を互変異性体構造(部)といい、一般式(4)で表される繰り返し単位中の互変異性化反応によって得られる化学構造(互変異性体構造)は下記式(a)〜(h)のとおりである。
【化10】

【0048】
は中でも、水素原子、メチル基、エチル基、2−エチルヘキシル基、又はフェニル基が好ましい。
で表される置換基は中でも、下記一般式(7)で表されるアゾ構造を有することが好ましい。
【0049】
【化11】

【0050】
23は、置換ましくは無置換の、芳香環またはヘテロ原子含有(例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子など)複素環を表す。中でもその芳香環及び複素環の構造として、5員環〜6員環の単環または2縮合環が好ましい。その中でも、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、イソキサゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズイソキサゾール環、ベンゾチアゾールチアジアゾール環が好ましい。
【0051】
以下、前記一般式(4)で表される基を複素環基Pとして有する繰り返し単位として好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれに限るものではない。また、本具体例に挙げられている構造は、考えられる互変異性体構造の中の1例であり、他の互変異性構造も取りうる。
【化12】

【化13】

【0052】
また、前記高分子化合物は、末端にエチレン性不飽和2重結合を有する重合性オリゴマーを共重合させた繰り返し単位を含むグラフト共重合体であることも好ましい。このような末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーは、所定の分子量を有する化合物であることからマクロモノマーとも呼ばれる。この特定の重合性オリゴマーは、ポリマー鎖部分とその末端のエチレン性不飽和二重結合を有する重合可能な官能基の部分からなることが好ましい。このようなエチレン性不飽和二重結合を有する基は、ポリマー鎖の一方の末端にのみ有することが、所望のグラフト重合体を得るという観点から好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0053】
また、このマクロモノマーは、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1000〜20000の範囲にあることが好ましく、特に、2000〜10000の範囲が好ましい。
上記ポリマー鎖の部分は、アルキル(メタ)アクリレート、スチレンおよびその誘導体、アクリロニトリル、酢酸ビニル及びブタジエン、からなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーから形成される単独重合体あるいは共重合体、あるいはポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリカプロラクトンであることが一般的である。
上記重合性オリゴマーは、下記一般式(5)で表されるオリゴマーであることが好ましい。
【0054】
【化14】

【0055】
但し、R及びR11は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表わし、R10は炭素原子数1〜12のアルキレン基(好ましくは炭素原子数2〜4のアルキレン基であり、置換基(例えば水酸基)を有していてもよく、さらにエステル結合、エーテル結合、アミド結合等を介して連結していてもよい)を表わし、Zは、フェニル基、炭素原子数1〜4のアルキル基を有するフェニル基又は−COOR12(但し、R12は、炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基又は炭素原子数7〜10のアリールアルキル基を表わす)を表わし、そしてqは20〜200である。Zは、フェニル基又は−COOR12(但し、R12は、炭素原子数1〜12のアルキル基)であることが好ましい。
上記重合性オリゴマー(マクロモノマー)の好ましい例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート及びポリ−i−ブチル(メタ)アクリレート、ポリスチレンの分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーを挙げることができる。市場で入手できるこのような重合性オリゴマーとしては、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6、東亜合成化学工業(株)製)及び片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6、東亜合成化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0056】
上記重合性オリゴマーは、前記一般式(5)で表される重合性オリゴマーだけでなく、下記一般式(6)で表される重合性オリゴマーであることも好ましい。
【化15】

【0057】
前記一般式(6)中、R13は水素原子またはメチル基をあらわし、R14は炭素数1〜8のアルキレン基を表す。Qは−OR15または−OCOR16を表す。ここでR15、R16は水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。nは2〜200を表す。
前記一般式(6)において、R13は、水素原子又はメチル基を表す。R14は、炭素数1〜8のアルキレン基を表し、中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。Qは、−OR15又は−OCOR16を表す。ここで、R15は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、又は炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基を表す。R16は、炭素数1〜18のアルキル基を表す。また、nは、2〜200を表し、5〜100が好ましく、10〜100が特に好ましい。
【0058】
一般式(6)で表される重合性オリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられ、これらは市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。
一般式(6)で表される重合性モノマーは前記したように市販品としても入手可能であり、市販品としては、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(商品名:NKエステルM−40G,M−90G,M−230G(以上、新中村化学工業(株)製);商品名:ブレンマーPME−100,PME−200,PME−400,PME−1000,PME−2000、PME−4000(以上、日油(株)製))、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350,日油(株)製)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPP−500、PP−800、PP−1000,日油(株)製)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー70PEP−350B,日油(株)製)、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマー55PET−800,日油(株)製)、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーNHK−5050,日油(株)製)、などが挙げられる。
また上記一般式(5)(6)の重合性オリゴマー以外にも、ポリカプロラクトンモノマーも好ましく、市販品としては、ポリカプロラクトンモノメタクリレート(商品名:プラクセル FM2D、FM3、FM5、FA1DDM、FA2D、ダイセル化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0059】
ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体の製造には、例えばラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でビニルモノマーの重合体もしくは共重合体を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0060】
前記ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体は、末端に官能基を有する高分子化合物であってもよい。該官能基としては、析出した顔料への吸着能に優れた官能基であることが好ましい。
【0061】
末端に官能基を有する高分子化合物は、例えば、官能基を含有する連鎖移動剤を用いてラジカル重合を行う方法、官能基を含有する重合開始剤を用いて重合(例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合など)を行う方法などにより、合成することが可能である。
【0062】
高分子化合物の末端に官能基を導入できる連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト化合物(例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル〕プロピオン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)アミノ〕プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メカルプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メカルプルイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール、ベンゼンチオール、トルエンチオール、メルカプトアセトフェノン、ナフタレンチオール、ナフタレンメタンチオール等)またはこれらメルカプト化合物の酸化体であるジスルフィド化合物、およびハロゲン化合物(例えば、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸など)が挙げられる。
【0063】
また、高分子化合物の末端に官能基を導入できる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−シアノプロパノール)、2,2’−アゾビス(2−シアノペンタノール)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロライド)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕等又はこれらの誘導体等が挙げられる。
【0064】
自己分散化高分子化合物の使用量は特に限定されないが、有機顔料微粒子を析出させるに際し、有機顔料溶液に含有させる量として、顔料100質量部に対して10〜300質量部の範囲であることが好ましく、10〜120質量部の範囲であることがより好ましく、20〜100質量部の範囲であることが特に好ましい。上記の範囲であれは、効果的に有機顔料微粒子の粒子径をナノメートルサイズに制御することができ、析出させた有機顔料微粒子をフロックとして効率的に取り出すことができ、更には、第3溶媒への自己分散性を付与することができる。前記高分子化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0065】
本発明において「自己分散性」とは、所定の分散物(分散液)中に存在する微粒子が、該所定の分散物を構成する分散媒(連続相)を実質的に取り除き、これとは異なる分散媒(第3の分散媒)中に前記微粒子を存在させたとき、別の分散剤や界面活性剤を添加しなくても前記異なる分散媒(第3の分散媒)に対して自発的に良好な分散性を示すことをいう。このとき、全媒体中の70質量%以上100質量%以下を取り除き、上記切り替えられた第3の分散媒を添加することが好ましく、再分散後に24時間静置したとき沈降物が全微粒子の0〜10質量%であることが好ましい。なお、微粒子の生成に用いた溶媒(第1溶媒及び第2溶媒)の具体的な除去・濃縮の方法については後述する。
【0066】
有機顔料微粒子中に含まれる前記高分子化合物の量は特に限定されないが、例えば微粒子をフロックとして取り出したとき、ないし、第3の溶媒に再分散させたときに、有機顔料微粒子中で顔料100質量部に対して10〜100質量部程度が取り込まれ含まれていることが実際的である。また、再分散させた分散物中において前記自己分散化高分子化合物の総量は特に限定されないが、分散物中の顔料100質量部に対して、上記微粒子中の該高分子化合物の量を含め、10〜200質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましい。これに対し有機顔料の含有量としては特に限定されないが、有機顔料微粒子中で20〜90質量%であることが実際的である。
【0067】
本発明で用いることができる高分子化合物の例を以下に示すが本発明はこれらに制限されるものではない。
(1)ポリメタクリル酸メチル
(2)ポリプロピレングリコール
(3)ポリεカプロラクトン
(4)メタクリル酸メチル/スチレン共重合体
(5)メタクリル酸ベンジル/アクリル酸共重合体
(6)メタクリル酸メチル/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド共重合体
(7)メタクリル酸メチル/上記構成成分Q−17を与えるモノマー共重合体
(8)メタクリル酸メチル/上記構成成分Q−17を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
(9)上記構成成分M−1を与えるモノマー/スチレン/メタクリル酸共重合体
(10)上記構成成分M−1を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(11)上記構成成分M−1を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド共重合体
(12)上記構成成分Q−22を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリスチレン/メタクリル酸共重合体
(13)上記構成成分Q−10を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(14)上記構成成分M−1を与えるモノマー/末端(メタ)アクリロイル化ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール/メタクリル酸共重合体
(15)上記構成成分Q−4を与えるモノマー/末端(メタ)アクリロイル化ポリエチレングリコール/メタクリル酸共重合体
(16)上記構成成分Q−1を与えるモノマー/末端(メタ)アクリロイル化ポリプロピレングリコール/メタクリル酸共重合体
(17)上記構成成分M−1を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリカプロラクトン/メタクリル酸共重合体
(18)上記構成成分Q−21を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリスチレン/メタクリル酸/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド共重合体
(19)上記構成成分M−1を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
(20)上記構成成分Q−22を与えるモノマー/スチレン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド共重合体
(21)上記構成成分M−1を与えるモノマー/N,N−ジメチル−4−ビニルベンズアミド/メタクリル酸共重合体
(22)上記構成成分Q−23を与えるモノマー/4−tブチルスチレン/メタクリル酸共重合体
(23)上記構成成分M−3を与えるモノマー/メタクリル酸/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
(24)上記構成成分Q−24を与えるモノマー/メタクリル酸/末端メタクリロイル化ポリカプロラクトン共重合体
(25)上記構成成分M−2を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/末端(メタ)アクリロイル化ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール共重合体
(26)上記構成成分M−7を与えるモノマー/メタクリル酸/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体
(27)上記構成成分Q−9を与えるモノマー/4−ビニルピリジン/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
(28)上記構成成分M−10を与えるモノマー/末端メタクリロイル化ポリブチルメタクリレート/N−ビニルイミダゾール共重合体
(29)上記構成成分M−1を与えるモノマー/メタクリル酸/末端メタクリロイル化ポリn−ブチルメタクリレート/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
(30)上記構成成分Q−4を与えるモノマー/アクリル酸/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート共重合体
(31)上記構成成分M−13を与えるモノマー/スチレン/メタクリル酸共重合体
(32)上記例示化合物M−1を与えるモノマー/メタクリル酸/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/メタクリル酸ドデシル共重合体
(33)上記構成成分Q−1を与えるモノマー/メタクリル酸/末端メタクリロイル化ポリスチレン/メタクリル酸ステアリル共重合体
(34)メタクリル酸/末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレート/メタクリル酸イソボルニル共重合体
(35)メタクリル酸シクロヘキシル/4−ビニルピリジン共重合体
(36)上記構成成分Q−1を与えるモノマー/メタクリル酸ブチル共重合体
(37)上記構成成分M−1を与えるモノマー/スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体
(38)上記構成成分M−2を与えるモノマー/スチレン/メタクリル酸ブチルエステル共重合体
(39)上記構成成分Q−21を与えるモノマー/メタクリル酸tブチルエステル/メタクリル酸共重合体
(40)上記構成成分Q−10を与えるモノマー/スチレン/ブチルアクリルアミド共重合体
(41)メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体
また、前記化合物に加えて市販高分子化合物を使用しても良い。市販ブロック型高分子としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−2000、2001」、EFKA社製「EFKA4330、4340」等を挙げることができる。
市販グラフト型高分子としては、ルーブリゾール社製「ソルスパース24000、28000、32000、38500、39000、55000」、BYK Chemie社製「Disperbyk−161、171、174」等が挙げられる。
市販末端変性型高分子としては、ルーブリゾール社製「ソルスパース3000、17000、27000」等を挙げることができる(市販ポリマーはいずれも商品名)。
【0068】
前記高分子化合物は、上記の有機顔料溶液中で、塩基性基もしくは酸性基を有する有機化合物と共存させてもよいが、含窒素高分子化合物と酸性基を有する高分子化合物とを併用して共存させないことが好ましい。前記2種の化合物を併用して共存させると、含窒素高分子化合物の窒素原子と酸性基を有する高分子化合物の酸性基とが相互作用するため、有機顔料微粒子が凝集しやすくなることがあり、カラーフィルタとした際にコントラストが低下したりすることがある。また前記高分子化合物が含窒素高分子化合物を含むものであるときには、顔料溶液中に塩基性窒素原子を有する化合物を共存させないことが好ましい。これを共存させるとカラーフィルタとしたときに、ベークにより着色してしまうことがある。
【0069】
第1溶媒(良溶媒)は、前記の有機顔料および高分子化合物を溶解することが可能で、第2溶媒(貧溶媒)と相溶する(均一に混ざる)ものであれば特に限定されない。第1溶媒に対する有機顔料の溶解度は、0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。この溶解度に特に上限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。また第1溶媒に対する上記自己分散化高分子化合物の溶解度は4.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であることがより好ましい。この溶解度に特に上限はないが、通常用いられる高分子化合物を考慮すると70質量%以下であることが実際的である。
【0070】
第1溶媒と第2溶媒との相溶性は、第1溶媒の第2溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。第1溶媒の第2溶媒に対する溶解量に特に上限はないが、任意の割合で混じり合うことが実際的である。
【0071】
第1溶媒としては、特に限定されないが、有機酸(例えば、ギ酸、ジクロロ酢酸、メタンスルホン酸等)、有機塩基(例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、ナトリウムメトキシド等)、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等)、ケトン系溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホラン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、乳酸エチル等)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、オクタン等)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例えば、四塩化炭素、ジクロロメタン等)、イオン性液体(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等)、二硫化炭素溶
媒、またはこれらの混合物などが好適に挙げられる。
【0072】
これらの中でも、有機酸、有機塩基、水系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、またはこれらの混合物がより好ましく、有機酸、有機塩基、スルホキシド系溶媒、アミド系溶媒、またはこれらの混合物が特に好ましい。
【0073】
有機酸としては、例えばスルホン酸化合物、カルボン酸化合物、酸無水物化合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0074】
上記のスルホン酸化合物としては、アルキルスルホン酸、ハロゲン化アルキルスルホン酸、芳香族スルホン酸などが挙げられ、アルキル鎖や芳香環は無置換であっても置換基Tで置換されていてもよい。ここでいう置換基Tはスルホン酸化合物に置換可能なものであればどのような置換基でもよい。
【0075】
置換基Tとしては、例えば、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、ニトロ基、アミノ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシフォスフィニル基、ジアリールオキシフォスフィニル基等を挙げることができる。
【0076】
本発明に用いられるスルホン酸化合物としては、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸4水和物、などが挙げられる。
【0077】
上記カルボン酸化合物としては、アルキルカルボン酸、ハロゲン化アルキルカルボン酸、芳香族カルボン酸などが挙げられ、アルキル鎖や芳香環は無置換であっても上記置換基Tで置換されていてもよい。カルボン酸化合物として、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、ジフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸、フルオロ酢酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロジフルオロ酢酸、シアノ酢酸、フェノキシ酢酸、ジフェニル酢酸、チオ酢酸、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−クロロプロピオン酸、2,2−ジクロロプロピオン酸、3−クロロプロピオン酸、2−ブロモプロピオン酸、3−ブロモプロピオン酸、2,3−ジブロモプロピオン酸、2−クロロ酪酸、3−クロロ酪酸、4−クロロ酪酸、イソ酪酸、2−ブロモイソ酪酸、シクロヘキサンカルボン酸、ニトロ酢酸、ホスホノ酢酸、ピルビン酸、シュウ酸、プロパルギル酸、トリメチルアンモニウム酢酸、安息香酸、テトラフルオロ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、2−クロロ安息香酸、2−フルオロ安息香酸、ギ酸ベンゾイル、ベンゾイル安息香酸、2−ジメチルアミノ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、ピコリン酸、クエン酸、システイン、スルファニル酸、スクアリン酸などがあげられる。
【0078】
本発明においては、カルボン酸及びスルホン酸以外にも、酸無水物を上記酸をなすものとして用いることができ、具体的には、無水酢酸、プロピオン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、トリクロロ酢酸無水物などの酸無水物が挙げられる。また、これら以外の有機酸として、例えば、リン酸イソプロピルエステル、リン酸メチルエステル、フェニルホスホン酸、エチレンジアミンテトラホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、メチレンジホスホン酸が挙げられる。
【0079】
有機酸としては、中でも、アルキルスルホン酸、アルキルカルボン酸、ハロゲン化アルキルカルボン酸、芳香族スルホン酸が好ましく、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、クロロ酢酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、がより好ましい。
【0080】
有機塩基の例としては、第1級アミン類、第2級アミン類、第3級アミン類、第4級アミン類、アニリン類、ピペリジン類、ピペラジン類、アミジン類、フォルムアミジン類、ピリジン類、グアニジン類、モルホリン類、含窒素複素環類、金属アルコキシド類等があげられるがこれらに限定されるものではない。これらの中でも、第3級アミン類、第4級アミン類、モルホリン類、含窒素複素環類、金属アルコキシド類等が好ましい。
【0081】
具体的には、アニリン、2−クロロアニリン、3−フルオロアニリン、2,4−ジフルオロアニリン、2−ニトロアニリン、N,N−ジエチルアニリン、2,6−ジエチルアニリン、2,4−ジメトキシアニリン、p−フェニレンジアミン、ピリジン、2−アミノピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、2,2−ジピリジル、ピロリジン、ピペリジン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、オキサゾール、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロオクタン、1−シアノグアニジン、N,N’−ジフェニルグアニジン、シクロヘキシルアミン、ブチルアミン、シクロプロピルアミン、t−ブチルアミン、ベンジルアミン、ジイソプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、テトラヒドロキノリン、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、モルホリン、チオモルホリン、N−メチルモルホリン、ヘキサメチルホスホルアミド、1−メチル−4−ピペリドン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ビス−(3−アミノプロピル)エーテル、ソジウムメトキシド、ソジウムエトキシド、ソジウム−t−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシドなどが挙げられる。
【0082】
これらの中でも、アニリン、2,4−ジフルオロアニリン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロオクタン、トリエチルアミン、テトラヒドロキノリン、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、N−メチルモルホリン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、ソジウムメトキシド、ソジウムエトキシド、ソジウム−t−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシドが好ましく、2,4−ジフルオロアニリン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、テトラヒドロキノリン、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、N−メチルモルホリン、ソジウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシドがより好ましい。
【0083】
スルホキシド系溶媒としては、より具体的には、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。
【0084】
アミド系溶媒としては、より具体的には、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0085】
有機顔料溶液の調製条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
【0086】
有機顔料を、第1溶媒中に均一に溶解するとき、一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性が用いられることが好ましい。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合化合物顔料は、アルカリ性で、フタロシアニン化合物顔料は酸性で溶解することができる。
【0087】
アルカリ性で溶解するときに用いられる塩基として、前記有機塩基以外に、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの無機塩基を用いることも可能である。使用する塩基の量は特に限定されないが、無機塩基の場合、有機顔料に対して1.0〜30モル当量であることが好ましく、1.0〜25モル当量であることがより好ましく、1.0〜20モル当量であることが特に好ましい。有機塩基の場合、有機顔料に対して1.0〜100モル当量であることが好ましく、5.0〜100モル当量であることがより好ましく、20〜100モル当量であることが特に好ましい。
【0088】
酸性で溶解するときに用いられる酸として、前記有機酸以外に、硫酸、塩酸、燐酸などの無機酸を用いることも可能である。使用する酸の量は特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多く、有機顔料に対して3〜500モル当量であることが好ましく、10〜500モル当量であることがより好ましく、30〜200モル当量であることが特に好ましい。
【0089】
無機塩基または無機酸を有機溶媒と混合して、有機顔料の良溶媒(第1溶媒)として用
いる際は、アルカリまたは酸を完全に溶解させるため、若干の水や低級アルコールなどのアルカリまたは酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶媒に添加することができる。水や低級アルコールの量は、有機顔料溶液全量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどを用いることができる。
【0090】
有機顔料溶液の粘度は0.5〜100.0mPa・sであることが好ましく1.0〜50.0mPa・sであることがより好ましい。
【0091】
有機顔料溶液は、第1溶媒に有機顔料と高分子化合物とを溶解したものであれば特に限定されず、他の成分を含んでいても構わない。
他の成分としては、特に限定されないが、酸性基を有する有機化合物、塩基性を有する有機化合物などが好適に挙げられる。これらの成分は、前記有機顔料溶液と前記第2溶媒とを混合することにより顔料を析出させた際に、析出させた顔料に素早く吸着し、顔料表面を酸性あるいは塩基性に処理する作用を有するものである。上記他の成分の前記第2溶媒への溶解性は特に制限されないが、前記第2溶媒が貧溶媒となるような化合物であることが好ましい。
【0092】
本発明に用いうる酸性基を有する有機化合物の酸性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、ホスホン酸基、水酸基、スルフィド基、などがあげられるがこれらに限定されるものではない。また、分子中に1種単独でも、2種以上の同一、または異なる官能基を含んでいてもよい。またこれら酸性基を有する有機化合物は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。これらの中でも、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基を有するものが好ましい。
【0093】
カルボン酸基を有する有機化合物としては、例えば、ベヘン酸、13−ドコセン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、2−ヘキシルデカン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、デカン酸、オクタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、1,12−トデカンジカルボン酸、セバチン酸、1−アダマンタンカルボン酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、ピロメリット酸、p−ベンゾイルアミノ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、安息香酸、トリメリット酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、β−オキシナフトエ酸、p−オクチルオキシ安息香酸、トリフェニル酢酸、マンデル酸、パーフルオロオクタン酸、p−ニトロ安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸、4−スルファモイル安息香酸、o−ベンゾイルアミノ安息香酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、2−キノリンカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、4−ヒドロキシビフェニル−3−カルボン酸、2−ナフチル酢酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,8−ナフタル酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、インドール−3−酪酸、3,7−ジカルボン酸ジフェニルオキサイドテトラクロロフタル酸、フタリン酸、葉酸、ベンジル酸、ナフテン酸、ジフェニル酢酸、2,4−ジクロロ安息香酸などが上げられる。
【0094】
スルホン酸基を有する有機化合物としては、例えば、β−ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、セチル硫酸、C酸、J酸、γ酸、ジアミノスチルベンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、1−ナフチルアミン−4−スルホン酸(ナフチオン酸)、ドビアス酸、ペリ酸、ジェー酸、コッホ酸、メタニル酸、トルエンスルホン酸、オクタンスルホン酸などが挙げられる。
【0095】
スルフィン酸基を有する化合物としては、p−トルエンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、p−カルボキシベンゼンスルフィン酸、オクチルスルフィン酸、エチルスルフィン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルフィン酸、4−アセトアミドベンゼンスルフィン酸、チオフェン−2−スルフィン酸、メチルスルフィン酸、イソブチルスルフィン酸、ヘキサデシルスルフィン酸、ヒドロキシルメタンスルフィン酸などが上げられる。
【0096】
スルフェン酸化合物としては、ベンゼンスルフェン酸、p−トルエンスルフェン酸などが挙げられる。
ホスホン酸化合物としてはステアリルホスホン酸、ラウリルホスホン酸などが挙げられる。
【0097】
本発明において、酸性基を有する有機化合物の添加量として、顔料に対し0.01〜30質量%の範囲にあることが好ましく、0.05〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、0.05〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0098】
塩基性基を有する有機化合物としては、アルキルアミン、アリールアミン、アラルキルアミン、ピラゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体などが挙げられ、好ましくはアルキルアミン、アリールアミン、イミダゾール誘導体が挙げられる。
【0099】
前記塩基性基を有する有機化合物の炭素数としては、6以上が好ましく、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは10以上である。
前記塩基性基を有する有機化合物において、アルキルアミンとしては、例えば、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−ヘチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、1−メチルブチルアミン、1−エチルブチルアミン、t−アミルアミン、3−アミノヘプタン、t−オクチルアミン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ヘキサジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、N−メチルオクタデシルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N−メチルジブチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−メイルジオクチルアミン、トリオクチルアミン、トリイソオクチルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、トリドデシルアミン、N−メチル−N−オクタデシル−1−オクタデシルアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルー1,6−ヘキサンジアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’、N’ ’−ペンタメチルジエチレントリアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロドデシルアミン、1−アダマンダンアミンなどが挙げられ、好ましくはオクチルアミン、2−ヘチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、オクタデシルアミン、t−オクチルアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、ジオクチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、N−メチルオクタデシルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−メイルジオクチルアミン、トリオクチルアミン、トリイソオクチルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、トリドデシルアミン、N−メチル−N−オクタデシル−1−オクタデシルアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルー1,6−ヘキサンジアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’、N’ ’−ペンタメチルジエチレントリアミン、シクロドデシルアミン、1−アダマンダンアミンなどが挙げられ、さらに好ましくは、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ジデシルアミン、N−メチルオクタデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、トリドデシルアミンなどが挙げられる。またポリアリルアミン、ポリビニルアミンなどの塩基性基を有する有機高分子化合物も好適である。
【0100】
アリールアミンとしては、例えば、N,N−ジブチルアニリン、4−ブチルアニリン、4−ペンチルアミン、4−ヘキシルアミン、4−ヘプチルアニリン、4−オクチルアニリン、4−デシルアニリン、4−ドデシルアニリン、4−テトラデシルアニリン、4−ヘキサデシルアニリン、4−ブトキシアニリン、4−ペンチルオキシアニリン、4−ヘキシルオキシアニリン、4−ヘキシルオキシアニリンなどが挙げられるが、好ましくは4−オクチルアニリン、4−デシルアニリン、4−ドデシルアニリン、4−テトラデシルアニリン、4−ヘキサデシルアニリン、4−ペンチルオキシアニリン、4−ヘキシルオキシアニリン、4−ヘキシルオキシアニリンなどが挙げられ、さらに好ましくは、4−デシルアニリン、4−ドデシルアニリン、4−テトラデシルアニリン、4−ヘキサデシルアニリン、4−ペンチルオキシアニリン、4−ヘキシルオキシアニリン、4−ヘキシルオキシアニリンなどが挙げられる。
【0101】
イミダゾール誘導体としては、例えば、1−(10−ヒドロキシデシル)イミダゾール、1−ブチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどが挙げられる。
【0102】
前記塩基性基を有する有機化合物としては、顔料に対し0.01〜30質量%の範囲にあることが好ましく、0.05〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、0.05〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0103】
また塩基性基と複素環基とで構成される有機化合物を添加することも好ましい。
このような有機化合物としては、例えば、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、1−(2−アミノフェニル)ピロール、5−アミノピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、5−アミノ−1−エチルピラゾール、3−アミノトリアゾール、2−アミノチアゾール、5−アミノインドール、2−アミノベンズチアゾール、5−アミノベンズイミダゾール、N,N−ジメチル−5−アミノベンズイミダゾール、フタルイミド、5−アミノベンズイミダゾロン、N,N−ジメチル−5−アミノベンズイミダゾロン、5−アミノウラシル、6−アミノウラシル、ウラシル、チミン、アデニン、グアニン、メラミン、アミノピラジン、8−アミノキノリン、3−アミノキノリン、9−アミノアクリジン、ASTRAブルー6GLL(塩基性フタロシアニン誘導体)、2−アミノアントラキノン、3−アミノアントラキノン、アクリドン、N−アクリドン、キナクリドン、NILEレッド、メチレンバイオレットナフタルイミドなどが挙げられる。好ましくは、2−アミノベンズチアゾール、5−アミノベンズイミダゾール、N,N−ジメチル−5−アミノベンズイミダゾール、5−アミノベンズイミダゾロン、N,N−ジメチル−5−アミノベンズイミダゾロン、5−アミノウラシル、6−アミノウラシル、ウラシル、チミン、アデニン、グアニン、メラミン、8−アミノキノリン、3−アミノキノリン、9−アミノアクリジン、ASTRAブルー6GLL(塩基性フタロシアニン誘導体)、2−アミノアントラキノン、3−アミノアントラキノン、アクリドン、N−アクリドン、キナクリドン、NILEレッド、メチレンバイオレットナフタルイミドが挙げられ、より好ましくは、9−アミノアクリジン、ASTRAブルー6GLL(塩基性フタロシアニン誘導体)、2−アミノアントラキノン、3−アミノアントラキノン、アクリドン、N−アクリドン、5−アミノベンズイミダゾール、N,N−ジメチル−5−アミノベンズイミダゾール、5−アミノベンズイミダゾロン、N,N−ジメチル−5−アミノベンズイミダゾロン、5−アミノウラシル、6−アミノウラシル、NILEレッド、メチレンバイオレットナフタルイミドが挙げられる。
【0104】
前記塩基性基と複素環基とで構成される有機化合物の添加量としては、顔料に対し0.01〜30質量%の範囲にあることが好ましく、0.05〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、0.05〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0105】
上記に挙げた以外にも特開2007−9096号公報や特開平7−331182号公報等に記載の顔料誘導体を挙げることができる。ここで言う顔料誘導体とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料誘導体型の化合物、あるいは化学修飾された顔料前駆体の顔料化反応により得られる顔料誘導体型の化合物を指す。市販品としては、例えば、EFKA社製「EFKA6745(フタロシアニン誘導体))」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)」等を挙げることができる(いずれも商品名)。顔料誘導体を用いる場合、その使用量としては、顔料に対し0.5〜30質量%の範囲にあることが好ましく、3〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、5〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0106】
第2溶媒(貧溶媒)は特に限定されないが、第2溶媒に対する有機顔料の溶解度は、0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。有機顔料の第2溶媒への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると0.0001質量%以上が実際的である。また第2溶媒に対する上記自己分散化高分子化合物の溶解度は、2.0質量%以下(不溶性)であり、1.0質量%以下であることが好ましい。有機顔料の第2溶媒への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられる高分子化合物を考慮すると0.001質量%以上が実際的である。
【0107】
第2溶媒としては、特に限定されないが、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等)、ケトン系溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、スルホキシド系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホラン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、乳酸エチル等)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン等)、芳香族炭化水素系溶媒(例えば、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、オクタン等)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル等)、ハロゲン系溶媒(例えば、四塩化炭素、ジクロロメタン等)、イオン性液体(例えば、1−エチル−3
−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等)、二硫化炭素溶媒、またはこれらの混合物などが好適に挙げられる。
これらの中でも、水系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物がより好ましく、水系溶媒、アルコール系溶媒、またはこれらの混合物が特に好ましい。
【0108】
水系溶媒としては、例えば、水、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などが挙げられる。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。
【0109】
第1溶媒の具体例として列挙したものと第2溶媒として列挙したものとで共通するものもあるが、第1溶媒及び第2溶媒として同じものを組み合わせることはなく、採用する各有機顔料および高分子化合物との関係で第1溶媒に対する溶解度が第2溶媒に対する溶解度より十分高ければよく、顔料に関しては、例えば、その溶解度差が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。第1溶媒と第2溶媒に対する溶解度の差に特に上限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。高分子化合物に関しては、例えば、その溶解度差が2.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましい。第1溶媒と第2溶媒に対する溶解度の差に特に上限はないが、通常用いられる高分子化合物を考慮すると70質量%以下であることが実際的である。
【0110】
第2溶媒の状態は特に限定されず、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。有機顔料溶液の粘度は0.5〜100.0mPa・sであることが好ましく1.0〜50.0mPa・sであることがより好ましい。
【0111】
有機顔料溶液と第2溶媒とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、有機顔料溶液を第2溶媒に噴流して混合することが好ましく、その際に第2溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。さらに供給管を介してポンプで液中に連続供給することが好ましい。供給管の内径は0.1〜200mmが好ましく0.2〜100mmがより好ましい。供給管から液中に供給される速度としては1〜10000ml/minが好ましく、5〜5000ml/minがより好ましい。
【0112】
有機顔料溶液と第2溶媒との混合に当り、レイノルズ数を調節することにより、析出生成させる顔料ナノ粒子の粒子径を制御することができる。ここでレイノルズ数は流体の流れの状態を表す無次元数であり次式で表される。
Re=ρUL/μ ・・・ 数式(1)
数式(1)中、Reはレイノルズ数を表し、ρは有機顔料溶液の密度[kg/m]を表し、Uは有機顔料溶液と第2溶媒とが出会う時の相対速度[m/s]を表し、Lは有機顔料溶液と第2溶媒とが出会う部分の流路もしくは供給口の等価直径[m]を表し、μは有機顔料溶液の粘性係数[Pa・s]を表す。
【0113】
等価直径Lとは、任意断面形状の配管の開口径や流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径をいう。等価直径Lは、配管の断面積をA、配管のぬれぶち長さ(周長)または流路の外周をpとすると下記数式(2)で表される。
L=4A/p ・・・ 数式(2)
配管を通じて有機顔料溶液を第2溶媒中に注入して粒子を形成することが好ましく、配管に円管を用いた場合には等価直径は円管の直径と一致する。例えば、液体供給口の開口径を変化させて等価直径を調節することができる。等価直径Lの値は特に限定されないが、例えば、上述した供給口の好ましい内径と同義である。
【0114】
有機顔料溶液と第2溶媒とが出会う時の相対速度Uは、両者が出会う部分の面に対して垂直方向の相対速度で定義される。すなわち、例えば静止している第2溶媒中に有機顔料溶液を注入して混合する場合は、供給口から注入する速度が相対速度Uに等しくなる。相対速度Uの値は特に限定されないが、例えば、0.5〜100m/sとすることが好ましく、1.0〜50m/sとすることがより好ましい。
【0115】
有機顔料溶液の密度ρは、選択される材料の種類により定められる値であるが、例えば、0.8〜2.0kg/mであることが実際的である。また、有機顔料溶液の粘性係数μについても用いられる材料や環境温度等により定められる値であるが、その好ましい範囲は、上述した有機顔料溶液の好ましい粘度と同義である。
【0116】
レイノルズ数(Re)の値は、小さいほど層流を形成しやすく、大きいほど乱流を形成しやすい。例えば、レイノルズ数を60以上で調節して顔料ナノ粒子の粒子径を制御して得ることができ、100以上とすることが好ましく、150以上とすることがより好ましい。レイノズル数に特に上限はないが、例えば、100000以下の範囲で調節して制御することで良好な顔料ナノ粒子を制御して得ることができ好ましい。あるいは、得られるナノ粒子の平均粒径が60nm以下となるようにレイノルズ数を高めた条件としてもよい。このとき、上記の範囲内においては、通常レイノルズ数を高めることで、より粒径の小さな顔料ナノ粒子を制御して得ることができる。
【0117】
有機顔料溶液と第2溶媒との混合比は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。有機微粒子を析出させた場合の液中の粒子濃度は特に制限されないが、溶媒1000mlに対して有機粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。また、顔料微粒子を生成させる際の調製スケールは、特に限定されないが、第2溶媒の混合量が10〜2000Lの調製スケールであることが好ましく、50〜1000Lの調製スケールであることがより好ましい。
【0118】
有機粒子の粒径に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、質量平均、体積平均等)などがあり、本発明においては、特に断りのない限り、平均粒径とは数平均径をいう。
【0119】
本発明において顔料微粒子(一次粒子)の平均粒径は1nm〜1μmであることが好ましく、1〜200nmであることがより好ましく、2〜100nmであることがさらに好ましく、5〜80nmであることが特に好ましい。なお形成される粒子は結晶質粒子でも非晶質粒子でもよく、またはこれらの混合物でもよい。
【0120】
また、粒子の単分散性を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いる。本発明において顔料微粒子(一次粒子)の単分散性、つまりMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
【0121】
有機粒子の粒径の測定方法としては、顕微鏡法、質量法、光散乱法、光遮断法、電気抵抗法、音響法、動的光散乱法が挙げられ、顕微鏡法、動的光散乱法が特に好ましい。顕微鏡法に用いられる顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などが挙げられる。動的光散乱法による粒子測定装置として、例えば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−7000シリーズなどが挙げられる。
【0122】
顔料微粒子を析出させ分散液を調製するに当り、顔料溶液及び第2溶媒の少なくとも一方に、少なくとも第2溶媒が良溶媒(第2溶媒に対する溶解度が4.0質量%以上)となるような化合物(以下、粒径調整剤と称することがある)を含有させてもよい。
【0123】
高分子粒径調整剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩/ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアリルアミン系モノマー/SO共重合体、ジアリルアミン塩酸塩/マレイン酸共重合体、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体、縮合ナフタレンスルホン酸塩、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩/ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアリルアミン系モノマー/SO共重合体などが好ましい。これら粒径調整剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
質量平均分子量が1,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることが特に好ましい。
【0124】
アニオン粒径調整剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性の粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0125】
カチオン性の粒径調整剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンのカチオン性物質の塩が挙げられる。これらカチオン性粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0126】
両イオン性の粒径調整剤は、前記アニオン性の粒径調整剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性の粒径調整剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する粒径調整剤である。
【0127】
ノニオン性の粒径調整剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性の粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0128】
粒径調整剤の含有量は、顔料微粒子の粒径制御をより一層向上させるために、顔料に対して0.1〜100質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜50質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜20質量%の範囲である。また粒径調整剤は、単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0129】
第3溶媒の種類は特に限定されないが、有機溶媒であることが好ましく、例えば、エステル化合物溶媒、アルコール化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒が好ましく、エステル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒または脂肪族化合物溶媒がより好ましく、エステル化合物溶媒が特に好ましい。また、該第3溶媒は上記溶媒による純溶媒であっても、複数の溶媒による混合溶媒であってもよい。
なお、本発明においては、上記の第3溶媒に限らず後述する第4溶媒を含め、分散組成物の媒体とされる、前記良溶媒(第1溶媒)及び前記貧溶媒(第2溶媒)のいずれとも異なる溶媒を総称して「第3の溶媒」という。
【0130】
エステル化合物溶媒としては、例えば、2−(1−メトキシ)プロピルアセテート、酢酸エチル、乳酸エチルなどが挙げられる。アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノールなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0131】
なかでも、乳酸エチル、酢酸エチル、エタノール、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートが好ましく、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートがより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。なお第3溶媒が第1溶媒もしくは第2溶媒と同じものであることはない。
【0132】
第3溶媒の添加の時機は顔料ナノ粒子の析出後であれば特に限定されないが、顔料ナノ粒子を析出させた混合液に添加しても良いし、混合液の溶媒分の一部、を除去してから加えても良いし、あるいは全部を予め除去(濃縮)してから添加してもよい。
すなわち、第3溶媒を置換用溶媒として用い、顔料ナノ粒子を析出させた分散液中の第1溶媒及び第2溶媒からなる溶媒分を第3溶媒で置換することができる。
あるいは、第1溶媒および第2溶媒を完全に除去(濃縮)し、顔料粒子粉末として取り出してから、第3溶媒を加えることもできる。
【0133】
また、後述する顔料分散組成物とするときに、1度目の溶媒分の除去工程(第1除去)を経た後、第3溶媒を添加して溶媒置換し、2度目の溶媒分の除去工程(第2除去)により溶媒分を除去し粉末化してもよい。そして、その後顔料分散剤及び/又は溶媒を添加して所望の顔料分散組成物とすることができる。
あるいは第1溶媒および第2溶媒を完全に除去(濃縮)し、顔料粒子粉末として取り出してから、第3溶媒及び/又は顔料分散剤を添加して、所望の顔料分散組成物とすることができる。
第3溶媒の添加量は特に限定されないが、顔料ナノ粒子100質量部に対して、100〜300000質量部であることが好ましく、500〜10000質量部であることがより好ましい。
【0134】
有機顔料微粒子析出後の混合液からの溶媒分の除去工程としては、特に限定されないが、例えば、フィルタなどによりろ過する方法、遠心分離によって有機顔料微粒子を沈降させて濃縮する方法などが挙げられる。
フィルタろ過の装置は、例えば、減圧あるいは加圧ろ過のような装置を用いることができる。好ましいフィルタとしては、ろ紙、ナノフィルタ、ウルトラフィルタなどを挙げることができる。
遠心分離機は有機顔料微粒子を沈降させることができればどのような装置を用いてもよい。例えば、汎用の装置の他にもスキミング機能(回転中に上澄み層を吸引し、系外に排出する機能)付きのものや、連続的に固形物を排出する連続遠心分離機などが挙げられる。遠心分離条件は、遠心力(重力加速度の何倍の遠心加速度がかかるかを表す値)で50〜10000が好ましく、100〜8000がより好ましく、150〜6000が特に好ましい。遠心分離時の温度は、分散液の溶剤種によるが、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましく、0〜60℃が特に好ましい。
また、溶媒分の除去工程として、真空凍結乾燥により溶媒を昇華させて濃縮する方法、加熱ないし減圧による溶媒を乾燥させて濃縮する方法、それらを組合せた方法などを用いることもできる。
【0135】
顔料ナノ粒子は例えばビヒクル中で分散させた状態で用いることができる。前記ビヒクルとは、塗料でいえば、液体状態にあるときに顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を固める部分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。なお本発明においては、ナノ粒子形成時に用いる高分子化合物および/または再分散化に用いる顔料分散剤とを総称してバインダーと称する。
【0136】
再分散化後の顔料ナノ粒子の分散組成物の顔料ナノ粒子濃度は目的に応じて適宜定められるが、好ましくは分散組成物全量に対して顔料ナノ粒子が2〜30質量%であることが好ましく、4〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。上記のようなビヒクル中に分散させる場合に、バインダーおよび溶解希釈成分の量は有機顔料の種類などにより適宜定められるが、分散組成物全量に対して、バインダーは1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。溶解希釈成分は5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。
【0137】
本発明の顔料分散組成物における有機顔料微粒子(内部に自己分散型高分子化合物等を取り込んでいてもよい。以下、節に断らない限り同様である。)の含有量は特に限定されないが、1.0〜35.0質量%であることが好ましく、5.0〜25.0質量%であることがより好ましい。
【0138】
本発明の有機顔料微粒子を第3の溶媒に再分散させるとき、別の分散剤等を添加しなくても、第3の溶媒中で有機顔料微粒子の凝集状態が自発的に解かれ媒体中に分散する性質を有し、先に述べたとおり、この性質があることを「自己分散しうる」ないし「自己分散性を有する」という。ただし、本発明において再分散性を一層向上させるために、有機顔料微粒子の再分散時に顔料分散剤等を添加してもよい。
【0139】
このような凝集状態にある有機顔料微粒子を再分散する方法として、例えば超音波による分散方法や物理的なエネルギーを加える方法を用いることができる。用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、ナノ粒子の熱凝集が起こるため、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御、などによって行うことができる。
物理的なエネルギーを加えて顔料ナノ粒子を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の分散機が挙げられる。また、高圧分散法や、微小粒子ビーズの使用による分散方法も好適なものとして挙げられる。
【0140】
本発明の顔料分散組成物には、顔料の分散性をより向上させる目的で、従来から公知の顔料分散剤や界面活性剤等の分散剤などを本発明の効果を損なわない限りにおいて加えることもできる。
顔料分散剤としては、高分子分散剤(例えば、直鎖状高分子、ブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等)、顔料誘導体等を挙げることができる。分散剤は、顔料の表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有するブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子が好ましい構造として挙げることができる。一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
高分子化合物の例として、ブロック型高分子としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−2000、2001」、EFKA社製「EFKA4330、4340」等を挙げることができる。グラフト型高分子の例としては、ルーブリゾール社製「ソルスパース24000、28000、32000、38500、39000、55000」、BYK Chemie社製「Disperbyk−161、171、174」等が挙げられる。
末端変性型高分子の例としては、ルーブリゾール社製「ソルスパース3000、17000、27000」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
【0141】
本発明において顔料誘導体(以下、「顔料誘導体型分散剤」ともいう)とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料誘導体型分散剤、あるいは化学修飾された顔料前駆体の顔料化反応により得られる顔料誘導体型分散剤と定義する。一般に、シナジスト型分散剤ともいわれている。
【0142】
特に限定されないが、例えば、特開2007−9096号公報や、特開平7−331182号公報等に記載の酸性基を有する顔料誘導体、塩基性基を有する顔料誘導体、フタルイミドメチル基などの官能基を導入した顔料誘導体などが好適に用いられる。
【0143】
市販品としては、EFKA社製「EFKA6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
線状高分子としては、後述するアルカリ可溶性樹脂を挙げることができ、上記顔料誘導体と併用することも好ましい。
顔料分散剤は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用して使用してもよい。
【0144】
本発明の光硬化性組成物は、前記有機顔料微粒子の分散組成物と、光重合性化合物と、光重合開始剤(以下、光重合開始剤系と称する場合もある)とを含み、好ましくは、更に、アルカリ可溶性樹脂を含む。以下、光硬化性組成物の各成分について説明する。
【0145】
有機顔料微粒子および、その分散組成物を作製する方法については既に詳細に述べた。光硬化性組成物中の有機顔料微粒子の含有量は、全固形分(本発明において、全固形分とは、有機溶媒を除く組成物合計をいう。)に対し、3〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜60質量%がさらに好ましい。この量が多すぎると分散液の粘度が上昇し製造適性上問題になることがある。少なすぎると着色力が十分でない。また、調色のために通常の顔料と組み合わせて用いてもよい。顔料は上記で記述したものを用いることができる。
【0146】
光重合性化合物(以下、重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーと称する場合がある)としては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合する多官能モノマーであることが好ましい。そのような光重合性化合物としては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。また、特開平10−62986号公報に一般式(1)および(2)に記載のように、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化した化合物も好適なものとして挙げられる。
【0147】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
【0148】
光重合性化合物は、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、光硬化性組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。この量が多すぎると現像性の制御が困難になり製造適性上問題となる。少なすぎると露光時の硬化力が不足する。
【0149】
光重合開始剤又は光重合開始剤系(本発明において、光重合開始剤系とは複数の化合物の組み合わせで光重合開始の機能を発現する混合物をいう。)としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール二量体が好ましい。
【0150】
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」や、オキシム系として、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等も好適なものとしてあげることができる。
【0151】
光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。光硬化性組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。この量が多すぎると感度が高くなりすぎ制御が困難になる。少なすぎると露光感度が低くなりすぎる。
【0152】
アルカリ可溶性樹脂としては、光硬化性組成物ないし、カラーフィルタ用インクジェットインクの調製時に添加することもできるが、前記有機顔料微粒子の分散組成物を製造する際、または有機顔料微粒子形成時に添加することも好ましい。有機顔料溶液および有機顔料溶液を添加して有機顔料微粒子を生成させるための第2溶媒の両方もしくは一方にアルカリ可溶性樹脂を添加することもできる。またはアルカリ可溶性樹脂溶液を別系統で有機顔料微粒子形成時に添加することも好ましい。
【0153】
アルカリ可溶性樹脂としては、酸性基を有するバインダーが好ましく、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するアルカリ可溶性のポリマーが好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩などを有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4,139,391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。
【0154】
アルカリ可溶性樹脂は、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよく、有機顔料微粒子100質量部に対する添加量は10〜200質量部が一般的であり、25〜100質量部が好ましい。
【0155】
その他、架橋効率を向上させるために、アルカリ可溶性樹脂の側鎖に重合性基を有していてもよく、UV硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂等も有用である。更に、アルカリ可溶性樹脂として、側鎖の一部に水溶性の原子団を有する樹脂を用いることもできる。
【0156】
光硬化性組成物においては、上記成分の他に、更に光硬化性組成物調製用の有機溶媒(第4溶媒)を用いてもよい。第4溶媒の例としては、特に限定されないが、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、スルホキシド系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒、またはこれらの混合物などが好適に挙げられるが、なかでも、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、またはこれらの混合物などがより好ましい。
ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、1,3−ブチレングリコールジアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセルソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、n−オクタン等が挙げられる。
これらの溶媒は、単独で用いてもあるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。また沸点が180℃〜250℃である溶剤を必要によって使用することができる。有機溶媒の含有量は、光硬化性組成物全量に対して10〜95質量%が好ましい。
【0157】
また、光硬化性組成物中に適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤としては、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。界面活性剤の含有量は、光硬化性組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0158】
光硬化性組成物は、熱重合防止剤を含むことが好ましい。該熱重合防止剤の例としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン等が挙げられる。熱重合防止剤の含有量は、光硬化性組成物全量に対して1質量%以下が好ましい。
【0159】
光硬化性組成物には、必要に応じ前記着色剤(顔料)に加えて、着色剤(染料、顔料)を添加することができる。着色剤のうち顔料を用いる場合には、光硬化性組成物中に均一に分散されていることが望ましい。染料ないし顔料としては、具体的には、前記顔料として、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。補助的に使用する染料もしくは顔料の含有量は、光硬化性組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0160】
光硬化性組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、特開平5−72724号公報記載の化合物のほか、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、光硬化性組成物全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0161】
また、光硬化性組成物においては、上記添加剤の他に、特開平11−133600号公報に記載の「接着助剤」や、その他の添加剤等を含有させることができる。
【0162】
光硬化性組成物はその組成を適宜に調節して、インクジェットインクとすることができる。インクジェットインクとしてはカラーフィルタ用以外にも、印字用等、通常のインクジェットインクとしてもよいが、なかでもカラーフィルタ用インクジェットインクとすることが好ましい。
本発明のインクジェットインクは前記の有機顔料微粒子を含むものであればよく、重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーを含む媒体に、前記の有機顔料微粒子を含有させたものである。ここで重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーとしては、先に光硬化性組成物において説明したものを用いることができる。
このとき、粘度の変動幅が±5%以内になるようインク温度を制御することが好ましい。射出時の粘度は5〜25mPa・sであることが好ましく、8〜22mPa・sであることがより好ましく、10〜20mPa・sであることが特に好ましい(本発明において粘度は、特に断らない限り25℃のときの値である。)。前記射出温度の設定以外に、インクに含有させる成分の種類と添加量を調節することで、粘度の調整をすることができる。前記粘度は、例えば、円錐平板型回転粘度計やE型粘度計などの通常の装置により測定することができる。
また、射出時のインクの表面張力は15〜40mN/mであることが、画素の平坦性向上の観点から好ましい(本発明において表面張力は、特に断らない限り23℃のときの値である。)。より好ましくは、20〜35mN/m、最も好ましくは、25〜30mN/mである。表面張力は、界面活性剤の添加や、溶剤の種類により調整することができる。前記表面張力は、例えば、表面張力測定装置(協和界面科学株式会社製、CBVP−Z)や、全自動平衡式エレクトロ表面張力計ESB−V(協和科学社製)などの測定器を用いて白金プレート方法により測定することができる。
【0163】
カラーフィルタ用インクジェットインクの吹き付けとしては、帯電したインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用できる。
また、各画素形成のために用いるインクジェット法に関しては、インクを熱硬化させる方法、光硬化させる方法、あらかじめ基板上に透明な受像層を形成しておいてから打滴する方法など、通常の方法を用いることができる。
【0164】
インクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう。)には、通常のものを適用でき、コンティニアスタイプ、ドットオンデマンドタイプが使用可能である。ドットオンデマンドタイプのうち、サーマルヘッドでは、吐出のため、特開平9−323420号に記載されているような稼動弁を持つタイプが好ましい。ピエゾヘッドでは、例えば、欧州特許A277,703号、欧州特許A278,590号などに記載されているヘッドを使うことができる。ヘッドはインクの温度が管理できるよう温調機能を持つものが好ましい。射出時の粘度は5〜25mPa・sとなるよう射出温度を設定し、粘度の変動幅が±5%以内になるようインク温度を制御することが好ましい。また、駆動周波数としては、1〜500kHzで稼動することが好ましい。
【0165】
また、各画素を形成した後、加熱処理(いわゆるベーク処理)する加熱工程を設けることができる。即ち、光照射により光重合した層を有する基板を電気炉、乾燥器等の中で加熱する、あるいは赤外線ランプを照射する。加熱の温度及び時間は、感光性濃色組成物の組成や形成された層の厚みに依存するが、一般に充分な耐溶剤性、耐アルカリ性、及び紫外線吸光度を獲得する観点から、約120℃〜約250℃で約10分〜約120分間加熱することが好ましい。
このようにして形成されたカラーフィルタのパターン形状は特に限定されるものではなく、一般的なブラックマトリックス形状であるストライプ状であっても、格子状であっても、さらにはデルタ配列状であってもよい。
【0166】
本発明においては、既述のカラーフィルタ用インクジェットインクを用いた画素形成工程の前に、予め隔壁を作成し、該隔壁に囲まれた部分にインクを付与する作製方法が好ましい。この隔壁はどのようなものでもよいが、カラーフィルタを作製する場合は、ブラックマトリクスの機能を持った遮光性を有する隔壁(以下、単に「隔壁」とも言う。)であることが好ましい。該隔壁は通常のカラーフィルタ用ブラックマトリクスと同様の素材、方法により作製することができる。例えば、特開2005−3861号公報の段落番号[0021]〜[0074]や、特開2004−240039号公報の段落番号[0012]〜[0021]に記載のブラックマトリクスや、特開2006−17980号公報の段落番号[0015]〜[0020]や、特開2006−10875号公報の段落番号[0009]〜[0044]に記載のインクジェット用ブラックマトリクスなどが挙げられる。
【0167】
光硬化性組成物を用いた塗布膜における含有成分については、既に記載したものと同様である。また、光硬化性組成物を用いた塗布膜の厚さは、その用途により適宜定めることができるが、0.5〜5.0μmであることが好ましく、1.0〜3.0μmであることがより好ましい。この光硬化性組成物を用いた塗布膜においては、前述のモノマーもしくはオリゴマーを重合させて光硬化性組成物の重合膜とし、それを有するカラーフィルタを作製することができる(カラーフィルタの作製については後述する。)。光重合性化合物の重合は、光照射により光重合開始剤又は光重合開始剤系を作用させて行うことができる。
【0168】
尚、上記塗布膜は、光硬化性組成物を、通常の塗布方法により塗布し乾燥することによって形成することができるが、本発明においては、液が吐出する部分にスリット状の穴を有するスリット状ノズルによって塗布することが好ましい。具体的には、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリット状ノズル、及びスリットコータが好適に用いられる。
【0169】
光硬化性組成物の基板への塗布方法は、1〜3μmの薄膜を均一に高精度に塗布できるという点からスピン塗布が優れており、カラーフィルタの作製に広く一般的に用いることができる。しかし、近年においては、液晶表示装置の大型化および量産化に伴って、製造効率および製造コストをより高めるために、スピン塗布よりも広幅で大面積な基板の塗布に適したスリット塗布がカラーフィルタの作製に採用されるようになってきている。尚、省液性という観点からもスリット塗布はスピン塗布よりも優れており、より少ない塗布液量で均一な塗膜を得ることができる。
【0170】
スリット塗布は、先端に幅数十ミクロンのスリット(間隙)を有し且つ矩形基板の塗布幅に対応する長さの塗布ヘッドを、基板とのクリアランス(間隙)を数10〜数100ミクロンに保持しながら、基板と塗布ヘッドとに一定の相対速度を持たせて、所定の吐出量でスリットから供給される塗布液を基板に塗布する塗布方式である。このスリット塗布は、(1)スピン塗布に比して液ロスが少ない、(2)塗布液の飛びちりがないため洗浄処理が軽減される、(3)飛び散った液成分の塗布膜への再混入がない、(4)回転の立ち上げ停止時間がないのでタクトタイムが短縮化できる、(5)大型の基板への塗布が容易である、等の利点を有する。これらの利点から、スリット塗布は大型画面液晶表示装置用のカラーフィルタの作製に好適であり、塗布液量の削減にとっても有利な塗布方式として期待されている。
【0171】
尚、上記作製方法における塗布は、通常の塗布装置等によって行うことができるが、本発明においては、既に説明した、スリット状ノズルを用いた塗布装置(スリットコータ)によって行うことが好ましい。スリットコータの好ましい具体例等は、前記と同様である。
【0172】
本発明のカラーフィルタは、コントラストに優れる。本発明においてコントラストとは、2枚の偏光板の間において、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量の比を表す(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。
カラーフィルタのコントラストが高いということは液晶と組み合わせたときの明暗のディスクリミネーションが大きくできるということを意味しており、液晶ディスプレイがCRTに置き換わるためには非常に重要な性能である。
【0173】
本発明のカラーフィルタは、テレビ用として用いる場合は、F10光源による、レッド(R)、グリーン(G)、及びブルー(B)のそれぞれ全ての単色の色度が、下表に記載の値(以下、本発明において「目標色度」という。)との差(ΔE)で5以内の範囲であることが好ましく、更に3以内であることがより好ましく、2以内であることが特に好ましい。
【0174】
x y Y
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R 0.656 0.336 21.4
G 0.293 0.634 52.1
B 0.146 0.088 6.90
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0175】
本発明において色度は、顕微分光光度計(オリンパス光学社製;OSP100又は200)により測定し、F10光源視野2度の結果として計算して、xyz表色系のxyY値で表す。また、目標色度との差は、La表色系の色差で表す。
【0176】
本発明のカラーフィルタを備えた液晶表示装置はコントラストが高く、黒のしまり等の描写力に優れ、とくにVA方式であることが好ましい。ノートパソコン用ディスプレイやテレビモニター等の大画面の液晶表示装置等としても好適に用いることができる。また、本発明のカラーフィルタはCCDデバイスに用いることができ、優れた性能を発揮する。
【実施例】
【0177】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」とは特に断らない限りいずれも質量基準である。
【0178】
(合成例1)
(モノマーM−1の合成)
2−チオバルビツール酸45.28部、水酸化ナトリウム13.82部をジメチルスルホキシド200部に溶解させ、25℃に加熱する。これにクロロメチルスチレン57.53部を滴下し、55℃でさらに5時間加熱攪拌を行う。加熱攪拌後、この反応液にメタノール150部、蒸留水150部を加えて1時間攪拌し、続いてこの溶液を蒸留水2000部に攪拌しながら注ぎ、得られた析出物を濾別、洗浄することで、上記繰返し単位M−1をなすビニルモノマー(以下、単に「モノマーM−1」という。)80.1部を得た。
【0179】
(重合体P−1の合成)
下記のモノマー溶液を窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株)社製、スリーワンモータ「商品名」)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して78℃まで昇温し30分攪拌する。続いて、下記の開始剤溶液を上記の液に添加し、2時間78℃で加熱攪拌する。加熱攪拌後、さらに下記開始剤溶液を添加し、78℃にて2時間加熱攪拌する操作を計2度繰り返す。最後の2時間攪拌後、引き続いて90度で2時間加熱攪拌する。得られた反応液をイソプロパノール1500部に攪拌しながら注ぎ、生じた沈殿を濾取して、加熱乾燥させることでグラフト重合体P−1を得た。
(モノマー溶液)
・モノマーM−1 2.0部
・スチレン 16.0部
・メタクリル酸 2.0部
・1−メチル−2−ピロリドン 46.67部
(開始剤溶液)
・2.2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(和光純薬(株)製V−601「商品名」)
0.6部
・1−メチル−2−ピロリドン 2部
【0180】
(合成例2)
(重合体P−2の合成)
合成例1で用いたスチレンを末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート(数平均分子量6000、東亜合成化学(株)製AA−6(商品名))に変更し、開始剤溶液に加えるV―601の量を0.1部に変更した以外は、合成例1と同様にしてグラフト重合体P−2を得た。
【0181】
(合成例3〜35)
合成例1で示したモノマー溶液の成分組成及び開始剤溶液の成分組成を表1のように変更した以外は合成例1と同様にして、重合体P−3〜P−35を得た。
【表1】

AS−6:片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、東亜合成化学工業(株)製)、
AA―6:片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、東亜合成化学工業(株)製)
AB−6:片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、東亜合成化学工業(株)製)
PME−1000;ブレンマーPME−1000(商品名)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(日油(株)製))、
PE−350;ブレンマーPE−350(商品名),ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油(株)製)
PP−1000;ブレンマーPP−1000(商品名)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油(株)製)
PEP−350B;ブレンマー70PEP−350B(商品名)、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油(株)製)、
FM5;プラクセル FM5(商品名)、ポリカプロラクトンモノメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製)
【0182】
MAA;メタクリル酸(和光純薬社製)
St;スチレン(和光純薬社製)
DMAPAAm;ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(和光純薬社製)
DMVBAm;N,N−ジメチル−4−ビニルベンズアミド
tBuSt;4−tブチルスチレン(東京化成社製)
4−Vpy;4−ビニルピリジン
VIm;N−ビニルイミダゾール
AA;アクリル酸(和光純薬社製)
NMP;1−メチル−2−ピロリドン(和光純薬社製)
MMA:メチルメタクリレート(和光純薬社製)
BMA:ブチルメタクリレート(和光純薬社製)
tBMA:tブチルメタクリレート(和光純薬社製)
BAAm:ブチルアクリルアミド(和光純薬社製)
MAAm:メチルアクリルアミド(和光純薬社製)
StMA:ステアリルメタクリレート(東京化成社製)
DMA:ドデシルメタクリレート(東京化成社製)
IbMA:イソボルニルメタクリレート(aldrich社製)
CyMA:シクロヘキシルメタクリレート(和光純薬社製)
M−X,Q−Xは上記例示の繰返し単位に対応するビニルモノマーを意味する。
【0183】
(実施例1)
第1溶媒としてのメタンスルホン酸(和光純薬社製)2500mlを80℃に加熱しながら、顔料C.I.ピグメントバイオレット23(クラリアント社製、Hostaperm Violet RL−NF[商品名])112.5g及びポリメチルメタクリレート(質量平均分子量20000)80.0gを添加して、顔料溶液1を調製した。
【0184】
これとは別に第2溶媒として、1mol/l水酸化ナトリウム溶液(和光純薬社製)20mlを含有した水2000mlを用意した。
【0185】
ここで、25℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により500rpmで攪拌した第2溶媒中に、80℃にした顔料溶液1をNP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名、日本精密化学社製)を用いて注入した。顔料溶液1の送液配管の流路径及び供給口径を2.2mmとし、その供給口を第2溶媒中に入れ、流速200ml/minで220ml注入することにより、有機顔料粒子を形成し、顔料分散液を調製した。この顔料分散液中の微粒子について、日機装社製ナノトラックUPA−EX150[商品名]を用いて、その粒径及び単分散度を測定したところ、それぞれ、数平均粒径35nm、Mv/Mn1.50であった。
【0186】
上記の手順で調製した顔料分散液を(株)コクサン社製H−110A型遠心濾過機[商品名]および敷島カンバス(株)社製P89C型ロ布[商品名]を用いて3000rpmで90分濃縮し、顔料分散液から溶媒分を取り除いて減じ(第1濃縮・除去工程)、80℃で12時間乾燥させ、有機顔料微粒子のフロックからなる粉末V−1を得た(有機顔料含率59.0質量%)。
【0187】
前記有機顔料微粒子の粉末V−1を用い、下記組成物を調製し、モーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで2時間分散することで、顔料分散組成物1を作製した。このとき、前記有機顔料微粒子は1−メトキシ−2−プロピルアセテートに対して良好な自己分散性を示した。
前記有機顔料微粒子の粉末V−1 20.4g(顔料12.04g)
1−メトキシ−2−プロピルアセテート(PGMEA)「第3溶媒」 100.0g
【0188】
[コントラストの測定]
得られた顔料分散組成物1をガラス基板上に厚みが2μmになるように塗布し、サンプルを作製した。バックライトユニットとして3波長冷陰極管光源(東芝ライテック(株)社製FWL18EX−N[商品名])に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板((株)サンリツ社製の偏光板HLC2−2518[商品名])の間にこのサンプルを置き、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。2枚の偏光板、サンプル、色彩輝度計の設置位置は、バックライトから13mmの位置に偏光板を、40mm〜60mmの位置に直径11mm長さ20mmの円筒を設置し、この中を透過した光を、65mmの位置に設置した測定サンプルに照射し、透過した光を、100mmの位置に設置した偏光板を通して、400mmの位置に設置した色彩輝度計で測定した。色彩輝度計の測定角は2°に設定した。バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が1280cd/mになるように設定した。得られたコントラストの測定結果を表3に示す。
【0189】
(実施例2〜24)(比較例1、2)
実施例1において、用いた各剤の成分組成を下表2に示したものにそれぞれ代えた以外同様にして、顔料分散組成物2〜24及び比較のための顔料分散組成物c1及びc2を調製しコントラストを測定した。その結果を表3に示す。ただし、第一溶媒がメタンスルホン酸/ギ酸の場合は、第1溶媒として、メタンスルホン酸(和光純薬社製)2000ml、ギ酸(和光純薬社製)500mlを60℃に加熱して顔料溶解液を調製した。第2溶媒、第3溶媒は実施例1と同じものを用いた。また、再分散用分散剤を使用する場合は、それぞれ作製した有機顔料微粒子の粉末を用い、下記組成物を調製し、モーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで2時間分散することで、顔料分散組成物とした。
【0190】
(実施例25)
第1溶媒としてのジメチルスルホキシド(和光純薬社製)1000mlに、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%メタノール溶液35.9ml、顔料C.I.ピグメントレッド254(Irgaphor Red BT−CF、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50g、及び重合体P−1 50.0gを添加して、顔料溶液1を調製した。これとは別に第2溶媒として、1mol/l塩酸(和光純薬社製)16mlを含有した水1000mlを用意した。
ここで、5℃に温度コントロールし、GK−0222−10型ラモンドスターラー(商品名、藤沢薬品工業社製)により500rpmで攪拌した第2溶媒1000mlに、顔料溶液1をNP−KX−500型大容量無脈流ポンプ(商品名、日本精密化学社製)を用いて、流路径1.1mmの送液配管から流速400ml/minで100ml注入することにより、有機顔料微粒子を形成し、顔料ナノ粒子分散液25を調製した。
上記の手順で調製した、顔料ナノ粒子分散液25を(株)コクサン社製H−112型遠心濾過機(商品名)および敷島カンバス(株)社製P89C型ロ布(商品名)を用いて5000rpmで90分濃縮し、顔料分散液から溶媒分を取り除いて減じ(第1濃縮・除去工程)、80℃で12時間乾燥させ、有機顔料微粒子のフロックからなる粉末V―25を得た(有機顔料含率59.0質量%)。
前記有機顔料微粒子の粉末V−25を用い、下記組成物を調製し、モーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで12時間分散することで、顔料分散組成物25を作製した。
前記有機顔料微粒子の粉末V−25 20.4g(顔料12.04g)
ソルスパース39000「商品名(後述)」 1.2g
1−メトキシ−2−プロピルアセテート(PGMEA)「第3溶媒」 98.8g
【0191】
(実施例26〜60)(比較例3,4)
実施例25において、用いた各剤の成分組成を下表に示したものにそれぞれ代えた以外同様にして、顔料分散組成物26〜60(実施例26〜60)、比較のための顔料分散組成物c3及びc4(比較例3,4)を調製した。第2溶媒及び第3溶媒は実施例25と同じものを用いた。
【0192】
【表2−1】

【0193】
【表2−2】

【0194】
【表2−3】

【0195】
・ポリメタクリル酸メチル(水に不溶性の高分子化合物、質量平均分子量20000)
・ポリプロピレングリコール(水に不溶性の高分子化合物、質量平均分子量3000)
・ポリε−カプロラクトン(水に不溶性の高分子化合物、質量平均分子量10000)
・メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(水に不溶性の高分子化合物、組成比80/20質量%、質量平均分子量10000)
・メタクリル酸ベンジル/アクリル酸共重合体(水に不溶性の高分子化合物、組成比95/5質量%、質量平均分子量20000)
・メタクリル酸メチル/N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド共重合体(水に不溶性の高分子化合物、組成比90/10質量%、質量平均分子量30000)
・PVP:ポリビニルピロリドン(水に溶解性の高分子化合物、和光純薬、商品名:K30、質量平均分子量40000)
・EFKA6745(商品名、EFKA社製、顔料誘導体)
・ポリアリルアミン塩酸塩(日東紡(株)製、質量平均分子量100000)
・ポリアクリル酸(質量平均分子量25000)
・ソルスパーズ55000(商品名、ルーブリゾール社製、グラフト型分散剤)
・ソルスパーズ39000(商品名、ルーブリゾール社製、グラフト型分散剤)
・MSA:メタンスルホン酸
・MPA:1−メトキシ−2−プロピルアセテート
・DMSO:ジメチルスルホキシド
・SM−28:ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液
・TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%メタノール溶液
【0196】
【表3】

【0197】
表3に示すように、比較例の分散組成物の有機顔料微粒子は自己分散性を示さずゲル化してしまい、コントラスト測定をすることができなかった。これに対し、本発明の有機顔料微粒子(実施例)は良好な自己分散性を示して高コントラストを実現し、再分散用の分散剤の添加により一層高いコントラストを示した。また、上記の結果から、本発明によれば、顔料溶液に含有させて微粒子折出時の分散安定化に用いた高分子化合物を第3溶媒の分散安定化にそのまま作用させて微粒子を自己分散させることができるため、高分子化合物の取り出しや切り替えの手間を大幅に省略することができ、工程の効率化及びコストの削減とともに、極めて環境適合性の高い製造を実現しうることが分かる。
【0198】
(実施例61)
[カラーフィルタの作製(スリット状ノズルを用いた塗布による作製)]
〔ブラック(K)画像の形成〕
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。該基板を120℃3分熱処理して表面状態を安定化させた。
該基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、下記表4に記載の組成よりなる光硬化性組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置;東京応化工業(株)社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃で3分間プリベークして膜厚2.4μmの光硬化性組成物層K1を得た。
【0199】
[表4]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
K顔料分散物(カーボンブラック) 25質量部
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 8.0質量部
メチルエチルケトン 53質量部
アルカリ可溶性樹脂2 9.1質量部
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002質量部
DPHA液 4.2質量部
重合開始剤A 0.16質量部
界面活性剤1 0.044質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
超高圧水銀灯を有すプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該光硬化性組成物層の間の距離を200μmに設定し、露光量300mJ/cmでパターン露光した。
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、該光硬化性組成物K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(KOH、ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)にて23℃で80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、ブラック(K)の画像Kを得た。引き続き、220℃で30分間熱処理した。
【0200】
〔レッド(R)画素の形成〕
前記画像Kを形成した基板に、下記表5に記載の組成よりなる光硬化性組成物R1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Rを形成した。
該光硬化性組成物R1の膜厚及び顔料(C.I.P.R.254及びC.I.P.R.177)の塗布量を以下に示す。
光硬化性組成物膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 1.00
C.I.P.R.254塗布量(g/m) 0.70
C.I.P.R.177塗布量(g/m) 0.30
【0201】
[表5]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R顔料分散物A(C.I.P.P.254) 35質量部
R顔料分散物B(C.I.P.P.177) 6.8質量部
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 7.6質量部
メチルエチルケトン 37質量部
アルカリ可溶性樹脂1 0.7質量部
DPHA液 3.8質量部
重合開始剤B 0.12質量部
重合開始剤A 0.05質量部
フェノチアジン 0.01質量部
界面活性剤1 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0202】
〔グリーン(G)画素の形成〕
前記画像Kと画素Rを形成した基板に、下記表6に記載の組成よりなる光硬化性組成物G1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Gを形成した。該光硬化性組成物層G1の膜厚及び顔料(C.I.P.G.36及びC.I.P.Y.150)の塗布量を以下に示す。
光硬化性組成物膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 1.92
C.I.P.G.36塗布量(g/m) 1.34
C.I.P.Y.150塗布量(g/m) 0.58
【0203】
[表6]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料分散物(C.I.P.G.36) 28質量部
Y顔料分散物(C.I.P.Y.150) 15質量部
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 29質量部
メチルエチルケトン 26質量部
シクロヘキサノン 1.3質量部
アルカリ可溶性樹脂2 2.5質量部
DPHA液 3.5質量部
重合開始剤B 0.12質量部
重合開始剤A 0.05質量部
フェノチアジン 0.01質量部
界面活性剤1 0.07質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0204】
〔ブルー(B)画素の形成〕
前記画像K、画素R及び画素Gを形成した基板に、下記表7に記載の組成よりなる光硬化性組成物B1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Bを形成し、目的のカラーフィルタAを得た。
該光硬化性組成物層B1の膜厚及び顔料(C.I.P.B.15:6及びC.I.P.V.23)の塗布量を以下に示す。
光硬化性組成物膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 0.75
C.I.P.B.15:6塗布量(g/m) 0.45
C.I.P.V.23塗布量(g/m) 0.30
【0205】
[表7]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
B顔料分散物(C.I.P.B.15:6) 15.0質量部
V顔料分散物1(C.I.P.V.23) 7.5質量部
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 28質量部
メチルエチルケトン 26質量部
アルカリ可溶性樹脂3 17質量部
DPHA液 4.0質量部
重合開始剤B 0.17質量部
フェノチアジン 0.02質量部
界面活性剤1 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0206】
ここで、上記表に記載の光硬化性組成物K1、R1、G1、B1の調製についてさらに詳細に説明する。
光硬化性組成物K1は、まず表に記載の量のK顔料分散物、1−メトキシ−2−プロピルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、次いで、表に記載の量のメチルエチルケトン、アルカリ可溶性樹脂2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、重合開始剤A(2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン)、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpmで30分間攪拌することによって得た。
【0207】
尚、表に記載の組成物の内、下記成分についてその組成を以下に示した。
<K顔料分散物>
・カーボンブラック(商品名:Nipex 35、デグサ ジャパン(株)社製)
13.1質量部
・下記顔料分散剤A 0.65質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72質量部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 79.53質量部
【0208】
【化16】

【0209】
<アルカリ可溶性樹脂2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 27質量部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 73質量部
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)社製、
商品名:KAYARAD DPHA) 76質量部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 24質量部
<界面活性剤1>
・メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業(株)社製)
13CHCHOCOCH=CH:40質量部と、
H(OCH(CH)CHOCOCH=CH:55質量部と、
H(OCHCHOCOCH=CH:5質量部との
共重合体(質量平均分子量3,0万) 30質量部
・メチルエチルケトン 70質量部
【0210】
光硬化性組成物R1は、まず表に記載の量のR顔料分散物A、R顔料分散物B、1−メトキシ−2−プロピルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、次いで、表に記載の量のメチルエチルケトン、アルカリ可溶性樹脂1、DPHA液、重合開始剤B(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール)、重合開始剤A、フェノチアジンをはかり取り、温度24℃(±2℃)でこの順に添加して150rpmで30分間攪拌し、更に、表に記載の量の界面活性剤1をはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpmで5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得た。
【0211】
また、表に記載の組成物の内、R顔料分散物A、顔料分散物Bは国際公開第WO2006/121016号パンフレットの実施例1に記載の方法を用いて、その組成が下記質量部となるようにして調製したものである。
<R顔料分散物A>
・C.I.P.R.254(商品名:Irgaphor Red BT−CF チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製) 10質量部
・顔料分散剤A 1質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3万) 10質量部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 79質量部
<R顔料分散物B>
・C.I.P.R.177(商品名:Cromophtal Red A2B、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製) 22.5質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比 のランダム共重合物、分子量3万) 15質量部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 62.5質量部
【0212】
<アルカリ可溶性樹脂1>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート
=38/25/37モル比のランダム共重合物、分子量4万) 27質量部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 73質量部
【0213】
光硬化性組成物G1は、まず表に記載の量のG顔料分散物、Y顔料分散物、1−メトキシ−2−プロピルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、次いで、表に記載の量のメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アルカリ可溶性樹脂2、DPHA液、重合開始剤B、重合開始剤A、フェノチアジンをはかり取り、温度24℃(±2℃)でこの順に添加して150rpmで30分間攪拌し、更に、表に記載の量の界面活性剤1をはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpmで5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得た。
【0214】
尚、表に記載の組成物のうち、G顔料分散物は、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)社製の「商品名:GT−2」を用いた。Y顔料分散物は、御国色素(株)社製の「商品名:CFエロ−EX3393」を用いた。
【0215】
光硬化性組成物B1は、まず表に記載の量のB顔料分散物、V顔料分散物1、1−メトキシ−2−プロピルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、次いで、表に記載の量のメチルエチルケトン、アルカリ可溶性樹脂3、DPHA液、重合開始剤B、フェノチアジンをはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpmで30分間攪拌し、更に、表に記載の量の界面活性剤1をはかり取り、温度24℃(±2℃)で添加して30rpmで5分間攪拌し、ナイロンメッシュ#200で濾過することによって得た。
【0216】
尚、表に記載の組成物のうち、B顔料分散物は、御国色素(株)社製の「商品名:CFブル−EX3357」を用いた。V顔料分散物1として、実施例1で作製した顔料分散組成物1を用いた。
【0217】
アルカリ可溶性樹脂3の組成は、以下のとおりである。
<アルカリ可溶性樹脂3>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート
=36/22/42モル比のランダム共重合物、分子量3.7万)27質量部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 73質量部
【0218】
以上のようにして、カラーフィルタ1を作製した。上記カラーフィルタ1で用いたV顔料分散組成物1をV顔料分散組成物2〜24、c1、c2に、それぞれ置き換えるほかはカラーフィルタAと同様にカラーフィルタ2〜24、c1、c2を作製した。それぞれのカラーフィルタについて前記[コントラストの測定]と同様にしてコントラストを測定した結果を下記表3に示した。なお、V顔料分散組成物c1、c2は、ゲル状の非常に高粘度な状態の分散組成物をそのまま使用した。
【0219】
[表8]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例 カラーフィルタ コントラスト
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
実施例61 #1 6,200
実施例62 #2 5,800
実施例63 #3 6,500
実施例64 #4 5,700
実施例65 #5 6,300
実施例66 #6 6,250
実施例67 #7 6,800
実施例68 #8 5,300
実施例69 #9 5,300
実施例70 #10 5,900
実施例71 #11 5,800
実施例72 #12 10,500
実施例73 #13 7,300
実施例74 #14 10,900
実施例75 #15 10,300
実施例76 #16 9,700
実施例77 #17 9,700
実施例78 #18 9,300
実施例79 #19 10,000
実施例80 #20 10,500
実施例81 #21 8,000
実施例82 #22 10,000
実施例83 #23 11,000
実施例84 #24 10,000
比較例5 #c1 250
比較例6 #c2 400
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0220】
上記表8の結果から本発明のカラーフィルタ1〜24は、いずれもコントラストが高く、表示装置に組み込んだときに良好な表示特性を発揮しうるものであった。一方、比較例のカラーフィルタc1及びc2は、コントラストが低く実用上の要求を満足しないレベルのものであった。この結果から、本発明によれば余計な高分子化合物の使用や切り替えを要さず、上記高性能のカラーフィルタを環境適合化を実現して効率的かつコストを抑えて製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料と高分子化合物とを有する自己分散しうる有機顔料微粒子であって、
該有機顔料微粒子は、第1溶媒に前記有機顔料および前記高分子化合物を溶解した有機顔料溶液と、前記有機顔料に対して貧溶媒となり前記第1溶媒と相溶する第2溶媒とを混合し、その混合液中に析出させたナノメートルサイズの微粒子であり、前記高分子化合物として前記第2溶媒に対し不溶性の化合物を用いて、前記第1溶媒及び第2溶媒のいずれとも異なる第3の溶媒に自己分散しうるものとされたことを特徴とする有機顔料微粒子。
【請求項2】
前記高分子化合物の質量平均分子量が1000〜500000であることを特徴とする請求項1に記載の有機顔料微粒子。
【請求項3】
前記高分子化合物が、ビニルモノマーの重合体及び共重合体、エステルポリマー、エーテルポリマー、並びにこれらの変性物及び共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも一種の高分子化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機顔料微粒子。
【請求項4】
前記高分子化合物が、炭素数4以上の炭化水素基を有するビニルモノマーの重合体及び共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
【請求項5】
前記高分子化合物が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Jは−CO−、−COO−、−CONR−、−OCO−、フェニレン基、または−CCO−基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す。Wは、直鎖,分岐,もしくは環状のアルキレン基、アラルキレン基、または単結合を表す。Pは複素環基を表す。)
【請求項6】
前記高分子化合物が、さらに下記一般式(2)または(3)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
【化2】

(Rは水素原子またはメチル基を表す。Yは−NH−、−O−、または−S−を表す。Wは単結合または2価の連結基を表す。Pは複素環基をあらわす。)
【請求項7】
前記一般式(1)、(2)、または(3)中のPが、一般式(4)またはその互変異性体構造で表されることを特徴とする請求項5または6に記載の有機顔料微粒子。
【化3】

(Rは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または水素原子を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、またはアゾ基を表す。)
【請求項8】
前記高分子化合物が、末端にエチレン性不飽和2重結合を有する重合性オリゴマーがなす側鎖を有するグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
【請求項9】
前記有機顔料溶液中に、さらに塩基性基もしくは酸性基を有する有機化合物を少なくとも1種以上含有させたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
【請求項10】
前記有機顔料溶液と第2溶媒とを、下式(1)で表されるレイノルズ数Reが50以上となる条件下で混合したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
Re=ρUL/μ ・・・ (1)
[数式(1)中、Reはレイノルズ数を表し、ρは有機顔料溶液の密度を表し、Uは有機顔料溶液と第2溶媒とが出会うときの相対速度を表し、Lは有機顔料溶液と第2溶媒とが出会う部分の流路もしくは供給口の等価直径を表し、μは有機顔料溶液の粘性係数を表す。]
【請求項11】
前記第1溶媒が、有機酸、有機塩基、スルホキシド化合物溶媒、及びアミド化合物溶媒よりなる群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
【請求項12】
前記第2溶媒が、水性媒体及びアルコール化合物溶媒よりなる群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
【請求項13】
前記第3の溶媒が、エーテル化合物溶媒、エステル化合物溶媒、芳香族炭化水素化合物溶媒、及び脂肪族炭化水素化合物溶媒よりなる群から選択される少なくとも1種以上の溶媒であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
【請求項14】
前記有機顔料溶液中に、前記高分子化合物を前記有機顔料100質量部に対して10〜300質量部含有させたことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子。
【請求項15】
第1溶媒に有機顔料および高分子化合物を溶解した有機顔料溶液と、前記有機顔料に対して貧溶媒となり前記第1溶媒と相溶する第2溶媒とを混合し、その混合液中に前記有機顔料と前記高分子化合物とを有するナノメートルサイズの微粒子を析出させるに当たり、前記高分子化合物として前記第2溶媒に対して不溶性の化合物を用い、前記微粒子を前記第1溶媒及び第2溶媒のいずれとも異なる第3の溶媒に自己分散しうるものとすることを特徴とする有機顔料微粒子の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子を前記第3の溶媒に自己分散させたことを特徴とする顔料分散組成物。
【請求項17】
さらに、顔料分散剤を含有させたことを特徴とする請求項16に記載の顔料分散組成物。
【請求項18】
請求項16または17に記載の顔料分散組成物と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有させたことを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項19】
さらに、アルカリ可溶性樹脂を含有させたことを特徴とする請求項18に記載の光硬化性組成物。
【請求項20】
カラーフィルタ用であることを特徴とする請求項18又は19に記載の光硬化性組成物。
【請求項21】
基板上に、請求項18〜20のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いて形成した着色パターンを有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項22】
請求項18〜20のいずれか1項に記載の光硬化性組成物を直接もしくは所定の層を介して基板上に付与して感光性膜を形成する感光性膜形成工程と、形成された感光性膜にパターン露光及び現像を順次行なうことにより着色パターンを形成する着色パターン形成工程とを有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項23】
重合性モノマーおよび/または重合性オリゴマーを含む媒体に、請求項1〜14のいずれか1項に記載の有機顔料微粒子を含有させたことを特徴とするインクジェットインク。
【請求項24】
カラーフィルタ用であることを特徴とする請求項23に記載のインクジェットインク。

【公開番号】特開2010−95693(P2010−95693A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274629(P2008−274629)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロジープログラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「有機顔料ナノ結晶の新規製造プロセスの研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】