説明

有機ELパネル、有機EL装置、及び有機ELパネルの駆動方法

【課題】連続駆動時の表示品質の劣化が抑制された有機ELパネルを得る。
【解決手段】一対の電極間に少なくとも有機EL層38を含む機能層40を挟持してなる有機EL素子と、有機EL素子100の光射出面の反対側の面に配置された冷却手段6と、を備え、基板11の温度を測定する温度測定手段8と、ペルチェモジュール駆動手段7が、ペルチェモジュールに供給する電流量を決定する制御部5とをさらに備え、制御部は、温度測定手段から得られる温度情報に基づき、有機EL素子が発光している間は基板の温度が第1の温度以下に保たれ、有機EL素子が発光していない間は、基板の温度が第1の温度よりも低い第2の温度以下に保たれるように、電流量が決定されることを特徴とする有機ELパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機ELパネル、有機EL装置、及び有機ELパネルの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルは、少なくとも有機EL層を含む機能層陽極と陰極との一対の電極で挟み込んだ有機EL素子を基板上に形成し、陽極側から注入された正孔と、陰極側から注入された電子とを有機EL層内で再結合して、励起状態から失括する際に発光する現象を利用したものである。かかる有機ELパネルは次世代ディスプレイとして注目され、数多くのメーカーにおいて研究がなされている。現段階における有機ELパネルの課題の一つとして、連続駆動(発光)時における経時的な(輝度等の)表示品質の劣化が挙げられている。
【0003】
かかる劣化の要因として、機能層と電極との界面状態が変化して(電子、正孔等の)キャリア輸送・注入性が悪化することが考えられている。そしてかかる現象の対策として、例えば特許文献1には、スパッタ法により電極(電極層)を形成する際に、ターゲットと基板との間に接地電位ないし正電位のグリッド電極を介在させることにより、電離したスパッタガス等に由来する電子等が基板上に飛来するのを抑制して、電極と機能層との界面の密着性を改善する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−158821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の成膜方法は初期的な電極と機能層との界面の密着性を向上させることはできるが経時的な界面変化を抑制できず、連続駆動時の表示品質の劣化の抑制することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
一対の電極間に少なくとも有機EL層を含む機能層を挟持してなる有機EL素子と、上記有機EL素子の光射出面の反対側の面に配置された冷却手段と、を備える有機ELパネル。
【0008】
このような構成であれば、上記有機EL素子が発光中、及び/又は発光が終了した状態において、該有機EL素子を冷却できる。したがって、発光による機能層と電極との界面状態の変化を抑制、及び/又は回復させることができ、有機ELパネルの経時的な表示品質の劣化を抑制できる。
【0009】
[適用例2]
基板と、上記基板の第1の面に、光射出面の反対側の面が対向するように配置された一対の電極間に少なくとも有機EL層を含む機能層を挟持してなる有機EL素子と、上記基板の第2の面に配置された冷却手段と、上記冷却手段の駆動手段と、を備える有機ELパネル。
【0010】
このような構成であれば、上記基板を介して上記有機EL素子を冷却できる。したがって、基板上に有機EL素子を配置して形成された有機ELパネルの経時的な表示品質の劣化を抑制できる。
【0011】
[適用例3]
上述の有機ELパネルであって、上記冷却手段は2次元的に配置された複数のペルチェ素子を含むペルチェモジュールであり、上記駆動手段はペルチェモジュール駆動手段であることを特徴とする有機ELパネル。
【0012】
ペルチェ素子は温度制御性が高いため、上記有機EL素子の温度を細かく設定できる。したがってこのような構成であれば、上記有機EL素子の、発光時及び非発光時の温度を精密に管理でき、有機ELパネルの経時的な表示品質の劣化をより一層抑制できる。
【0013】
[適用例4]
上述の有機ELパネルであって、上記基板の温度を測定する温度測定手段と、上記ペルチェモジュール駆動手段が上記ペルチェモジュールに供給する電流量を決定する制御部と、をさらに備え、上記制御部は、上記温度測定手段から得られる温度情報に基づき、上記有機EL素子が発光している間は上記基板の温度が第1の温度以下に保たれ、上記有機EL素子が発光していない間は、上記基板の温度が上記第1の温度よりも低い第2の温度以下に保たれるように上記電流量が決定されることを特徴とする有機ELパネル。
【0014】
このような構成であれば、上記有機EL素子の発光中は、上記第1の温度まで冷却することにより発光を損なわない範囲内において機能層と電極との界面状態の変化を抑制できる。そして、非発光時は第2の温度まで冷却することにより、発光により生じた上記変化を回復させることができる。したがって、機能層と電極との界面状態の変化をより一層抑制でき、有機ELパネルの経時的な表示品質の劣化をより一層抑制できる。
【0015】
[適用例5]
上述の有機ELパネルであって、上記基板の温度を測定する温度測定手段と、上記ペルチェモジュール駆動手段が上記ペルチェモジュールに供給する電流量を決定する制御部と、上記有機EL素子の発光が停止した時点からの経過時間を計測する計時部と、をさらに備え、上記制御部は、上記温度測定手段から得られる温度情報及び上記計時部から得られる情報に基づき、上記有機EL素子が発光している間は上記基板の温度が第1の温度以下に保たれ、上記有機EL素子の発光が停止した時から所定の時間は、上記基板の温度が第2の温度以下に保たれ、上記所定の時間の経過後は上記基板の温度が上記第1の温度より低く上記第2の温度より高い温度である第3の温度以下に保たれるように上記電流量が決定されることを特徴とする有機ELパネル。
【0016】
このような構成であれば、上記有機EL素子の発光により生じた上記界面の変化を上記第2の温度まで冷却することで回復させることができる。そして回復後の界面を、上記第2の温度よりも高い上記第3の温度により維持できる。したがって、表示品質の劣化を抑制するための電力が抑制され、かつ、非発光状態から発光状態への移行がスムーズな有機ELパネルを得ることができる。
【0017】
[適用例6]
上述の有機ELパネルであって、上記所定の時間は1時間であり上記第3の温度は略15℃であることを特徴とする有機ELパネル。
【0018】
有機EL層の発光時には略20℃以上となり、又、20℃以下を保てば上記第2の温度まで冷却することにより回復させた上記界面の状態を維持できる。したがってこのような構成であれば、操作性等を損ねることなく、経時的な表示品質の劣化が抑制された有機ELパネルを得ることができる。
【0019】
[適用例7]
上述の有機ELパネルであって、上記第1の温度は略25℃であることを特徴とする有機ELパネル。
【0020】
このような構成であれば、発光を維持しつつ発光中の上記界面の劣化を最低限に保つことができる。したがって、表示品質を損なうことなく、経時的な表示品質の劣化が抑制された有機ELパネルを得ることができる。
【0021】
[適用例8]
上述の有機ELパネルであって、上記第2の温度は略−40℃であることを特徴とする有機ELパネル。
【0022】
略−40℃まで冷却することにより、発光により生じた上記界面の変化を充分に回復させることができる。したがって、このような構成であれば、経時的な表示品質の劣化が抑制された有機ELパネルを得ることができる。
【0023】
[適用例9]
上述の有機ELパネルであって、上記有機ELパネルの完成後、有機ELパネルとしての使用が開始されるまでの間に少なくとも1回は、所定の時間は第4の温度以下に保たれることを特徴とする有機ELパネル。
【0024】
かかる処理により、有機EL素子の形成過程で加えられた熱処理による上記界面状態の変化を回復させることができる。したがって、このような構成であれば、表示品質が向上した有機ELパネルを得ることができる。なお、上記「使用」とは、有機EL素子を発光させることにより画像を表示することである。
【0025】
[適用例10]
上述の有機ELパネルであって、該有機ELパネルを、所定の時間、上記第4の温度以下に保つ手段は、上記ペルチェモジュールであることを特徴とする有機ELパネル。
【0026】
このような構成であれば、別途冷却手段を用意することなく、有機EL素子の形成過程で生じた上記界面状態の変化を回復させることができる。したがって、製造コストの増加を抑制しつつ、表示品質が向上した有機ELパネルを得ることができる。
【0027】
[適用例11]
基板と、上記基板の第1の面に光射出面の反対側の面が対向するように配置された、一対の電極間に少なくとも有機EL層を含む機能層を挟持してなる有機EL素子と、を備える有機ELパネルと、上記基板の第2の面に対向するように配置されたパネル冷却手段と、を備える有機EL装置。
【0028】
このような構成であれば、上記有機ELパネルが画像を表示中、及び/又は該画像の表示が終了した状態において、上記有機EL素子を冷却できる。したがって、有機ELパネルを構成する有機EL素子の機能層と電極との界面状態の変化を抑制、及び/又は回復させることができ、経時的な表示品質の劣化が抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0029】
[適用例12]
上述の有機EL装置であって、上記パネル冷却手段は2次元的に配置された複数のペルチェ素子を含むペルチェモジュールであり、上記駆動手段はペルチェモジュール駆動手段であることを特徴とする有機EL装置。
【0030】
ペルチェ素子は温度制御性が高いため、上記有機EL素子の温度を細かく設定できる。したがってこのような構成であれば、経時的な表示品質の劣化をより一層抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0031】
[適用例13]
上述の有機EL装置であって、上記ペルチェモジュールは、上記基板の上記第2の面に密着するように配置されていることを特徴とする有機EL装置。
【0032】
このような構成であれば、上記有機EL素子の冷却を効率的に行うことができる。したがって、コストの増加を抑制しつつ、有機EL装置の経時的な表示品質の劣化を抑制できる。
【0033】
[適用例14]
上述の有機EL装置であって、上記有機ELパネルの温度を測定するパネル温度測定手段と、上記ペルチェモジュール駆動手段が上記ペルチェモジュールに供給する電流量を決定する制御部と、をさらに備え、上記制御部は、上記パネル温度測定手段から得られる温度情報に基づき、上記有機ELパネルが画像を表示している間は上記有機ELパネルの温度が第1の温度以下に保たれ、上記有機ELパネルが画像を表示していない間は上記有機ELパネルの温度が第2の温度以下に保たれるように上記電流量を決定することを特徴とする有機EL装置。
【0034】
このような構成であれば、画像表示中は、上記第1の温度まで冷却するにより発光を損なわない範囲内において機能層と電極との界面状態の変化を抑制できる。そして、画像を表示していない間は上記第2の温度まで冷却することにより、画像表示により生じた上記変化を回復させることができる。したがって、機能層と電極との界面状態の変化をより一層抑制でき、経時的な表示品質の劣化がより一層抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0035】
[適用例15]
上述の有機EL装置であって、上記有機ELパネルの温度を測定するパネル温度測定手段と、上記ペルチェモジュール駆動手段が上記ペルチェモジュールに供給する電流量を決定する制御部と、上記有機ELパネルの発光が停止した時点からの経過時間を計測する計時部と、をさらに備え、上記制御部は、上記パネル温度測定手段から得られる温度情報及び上記計時部から得られる情報に基づき、上記有機ELパネルが発光している間は上記有機ELパネルの温度が第1の温度以下に保たれ、上記有機ELパネルの発光が停止した時から所定の時間は、上記有機ELパネルの温度が第2の温度以下に保たれ、上記所定の時間の経過後は上記有機ELパネルの温度が上記第1の温度より低く上記第2の温度より高い温度である第3の温度以下に保たれるように上記電流量を決定することを特徴とする有機EL装置。
【0036】
このような構成であれば、画像表示中に生じた上記界面の変化を上記第2の温度まで冷却することで回復させることができる。そして回復後の界面を、上記第2の温度よりも高い上記第3の温度により維持できる。したがって、表示品質の劣化を抑制するための電力が抑制され、かつ、非表示状態から表示状態への移行がスムーズな有機EL装置を得ることができる。
【0037】
[適用例16]
上述の有機EL装置であって、上記所定の時間は1時間であり上記第3の温度は略15℃であることを特徴とする有機EL装置。
【0038】
有機EL層の発光には略20℃以上が必要であり、又、該20℃以下を保てば上記第2の温度まで冷却することにより回復させた上記界面の状態を維持できる。したがってこのような構成であれば、経時的な表示品質の劣化が抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0039】
[適用例17]
上述の有機EL装置であって、上記第1の温度は略25℃であることを特徴とする有機EL装置。
【0040】
このような構成であれば、画像表示中における上記界面の劣化を最低限に保つことができる。したがって、表示品質を損なうことなく、経時的な表示品質の劣化が抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0041】
[適用例18]
上述の有機EL装置であって、上記第2の温度は略−40℃であることを特徴とする有機EL装置。
【0042】
略−40℃まで冷却することにより、発光により生じた上記界面の変化を充分に回復させることができる。したがって、このような構成であれば、経時的な表示品質の劣化が抑制された有機EL装置を得ることができる。
【0043】
[適用例19]
上述の有機EL装置であって、上記有機ELパネルは、完成後使用が開始される前に、所定の時間、第4の温度以下に冷却する処理がなされていることを特徴とする有機EL装置。
【0044】
かかる処理により、有機ELパネルの形成過程で加えられた熱処理による上記界面状態の変化を回復させることができる。したがって、このような構成であれば、表示品質が向上した有機EL装置を得ることができる。
【0045】
[適用例20]
一対の電極間に少なくとも有機EL層を含む機能層を挟持してなる有機EL素子を備える有機ELパネルの駆動方法であって、上記有機EL層が発光している間は、上記有機EL素子を第1の温度以下に保ち、上記有機EL層が発光していない間は、上記有機EL素子を第2の温度以下に保つことを特徴とする有機ELパネルの駆動方法。
【0046】
このような駆動方法によれば、上記有機EL層の発光中は、第1の温度以下に保つことにより、有機EL層の発光による上記機能層と上記電極との界面の状態の変化を抑制できる。そして、上記有機EL層の発光が終了した後に、上記有機EL層の温度を第2の温度以下に保つことにより、上記界面状態の変化を回復させることができる。したがって、有機ELパネルの経時的な表示品質の劣化を抑制しつつ画像を表示できる。
【0047】
[適用例21]
一対の電極間に少なくとも有機EL層を含む機能層を挟持してなる有機EL素子を備える有機ELパネルの駆動方法であって、上記有機EL層が発光している間は、上記有機EL素子を第1の温度以下に保ち、上記有機EL層の発光が停止した時から所定の時間は、上記有機EL素子を第2の温度以下に保ち、上記所定の時間の経過後は、上記有機EL素子を第3の温度以下に保つことを特徴とする有機ELパネルの駆動方法。
【0048】
このような駆動方法によれば、上記有機EL層の発光中における上記界面の状態の変化を抑制し、発光が終了した後の上記界面の状態の変化を回復させることができる。そして、かかる回復させた界面を、次の発光が開始されるまでの間、上記第3の温度以下に保つことにより維持できる。したがって、冷却に要するコスト等を低減しつつ、有機ELパネルの経時的な表示品質の劣化を抑制できる。
【0049】
[適用例22]
上述の有機ELパネルの駆動方法であって、上記第3の温度は略15℃であることを特徴とする有機ELパネルの駆動方法。
【0050】
略15℃に保つことで、一度回復させた上記界面の状態を維持できる。したがって、このような駆動方法によれば、冷却コストを低減しつつ有機ELパネルの経時的な表示品質の劣化を抑制できる。
【0051】
[適用例23]
上述の有機ELパネルの駆動方法であって、上記第1の温度は略25℃であり、上記第2の温度は略−40℃であることを特徴とする有機ELパネルの駆動方法。
【0052】
上記有機EL層の温度を略25℃以下に保つことにより、画像表示中における上記界面の変化を最低限に保つことができる。また、略−40℃まで冷却することにより、有機EL層の発光により生じた上記界面の変化を充分に回復させることができる。したがって、このような構成であれば、有機ELパネルにより画像表示を行う場合の経時的な表示品質の劣化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態、及び後述する各実施形態に共通する、有機ELパネルの全体構成を示す回路構成図である。規則的に配置された個々の有機EL素子100の発光を個別に制御して、表示領域Bに画像を形成するアクティブマトリクス型の有機ELパネルを例にしている。表示領域Bには、複数の走査線102と、走査線102と直交する複数の信号線104と、信号線104と平行に延びる複数の電源供給線106が形成されている。上記3種類の配線で囲まれる方形の区画が画素領域Aである。
【0054】
各々の画素領域Aには、走査線102を介して走査信号が供給されるスイッチング用TFT108と、スイッチング用TFT108を介して信号線104から供給される画素信号を保持する保持容量110と、保持容量110によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT112と、駆動用TFT112を介して電源供給線106から駆動電流が流れ込む有機EL素子100が形成されている。後述するように、有機EL素子100は、陽極32(図2参照)と表示領域Bの全範囲に渡って共通電位となる陰極42(図3参照)と、該双方の電極で挟持される有機EL層38を含む機能層40(図2参照)等からなる。そして、上記駆動電流は陽極32に供給される。
【0055】
表示領域Bの周辺には、走査線駆動回路120、及び信号線駆動回路130が形成されている。走査線102には、走査線駆動回路120から、図示しない外部回路より供給される各種信号に応じて走査信号が順次供給される。そして、信号線104には信号線駆動回路130から画像信号が供給され、電源供給線106には図示しない外部回路から画素駆動電流が供給される。
【0056】
走査線102が駆動されスイッチング用TFT108がオン状態になると、その時点の信号線104の電位が保持容量110に保持され、保持容量110の状態に応じて駆動用TFT112のレベルが決まる。そして、駆動用TFT112を介して電源供給線106から陽極32に駆動電流が流れ、さらに機能層40を介して陰極42に駆動電流が流れる。その結果、有機EL層38は駆動電流の大きさに応じて発光する。個々の有機EL素子が独立に制御され、駆動電流の大きさに応じて発光することで表示領域Bに画像が形成される。そして各々の画素領域A毎にカラーフィルタを配置すれば、表示領域Bにカラー画像を形成できる。なお、本実施形態及び第2以降の各実施形態では、カラーフィルタについての図示及び説明の記載は省略する。
【0057】
図2、及び図3は、本実施形態の有機ELパネル、及びその製造工程を模式的に示す工程断面図である。以下、各工程について記載する。なお、本実施形態の有機ELパネルは、(図示する)下側に向けて表示光を射出するボトムエミッション型の有機ELパネルである。また、図2及び図3においては、スイッチング用TFT108等の素子群及び、走査線駆動回路120等の表示領域Bに形成される回路群については図示及び説明の記載を省略する。
【0058】
まず、図2(a)に示すように、ガラス等からなる透光性基板10上に、ITO(酸化インジウム・錫)膜からなる陽極32を形成する。該陽極は、透光性基板10の全面にスパッタ法で形成したITO膜を公知技術であるフォトリソグラフィー法とエッチング法とによって島状にパターニングして形成する。かかる工程により、表示領域Bに陽極32が2次元的かつ規則的に配置される。
なお、上述したように、本実施形態の有機ELパネル1(図3(c)参照)はボトムエミッション型であり陽極32側が光射出面である。したがって、陽極32、及び陽極32が形成される側の基板は透光性を有することが必要である。
【0059】
次に、図2(b)に示すように、陽極32が形成された透光性基板10の表面を洗浄した後、該透光性基板の全面に対して、O2プラズマ処理を行う。かかる処理により、有機系の不純物が除去されて、陽極32の表面が親液性となる。
【0060】
次に、図2(c)に示すように、陽極32が形成された透光性基板10上にSiO2等の絶縁材料からなる隔壁層(図示せず)を形成した後、該隔壁層を公知技術であるフォトリソグラフィー法とエッチング法とによりパターニングして、隔壁34を形成する。かかる工程により、透光性基板10上に、陽極32を底部として格子状の隔壁34を側部とする凹部が形成される。
【0061】
次に、図2(d)に示すように、陽極32上、すなわち上述の凹部内に正孔注入輸送層36を形成する。正孔注入輸送層36の形成材料としては3,4ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)等の混合物を用いることができる。かかる混合物を溶媒に分散させた液体材料をスピンコーティング法により所定の膜厚(20nm〜100nm)に成膜し、焼成・乾燥(略200℃で10分間)を行うことで、上述の材料からなる正孔注入輸送層36を形成できる。
【0062】
次に、図2(e)に示すように、正孔注入輸送層36上に有機EL層38を形成する。有機EL層38の形成材料としては、フルオレン(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ペリレン系色素、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の有機材料を用いることができる。かかる材料をトルエン等の溶媒に溶解して得られる液体材料をスピンコーティング法により所定の膜厚(50nm〜100nm)に成膜し、窒素雰囲気中で焼成(略130℃で30分間)を行い、上記溶媒を蒸発させることで、上述の材料からなる有機EL層38を形成できる。なお、正孔注入輸送層36と有機EL層38との積層体が機能層40である。
【0063】
次に、図3(a)に示すように、透光性基板10上全面、すなわち機能層40上及び隔壁34上に陰極42を形成する。かかる工程により、一対の電極、すなわち陽極32と陰極42との間に有機EL層38を含む機能層40を挟持してなる有機EL素子100が形成される。
本実施形態における陰極42は膜厚5nmのカルシウムと膜厚300nmのアルミニウムとの積層体である。本実施形態の有機ELパネルはボトムエミッション型であるため、陰極42は透過性(透光性)は必要としない。一方で、有機EL層38で生じた光のうち上方すなわち陰極42に向かう光を陽極32の側に反射するために反射性を有することが好ましい。
【0064】
次に、図3(b)に示すように、封止接着層44を介して基板11を接着する。基板11が封止接着層44と対向する面が第1の面であり、図3(b)における上側の面が第2の面である。基板11の形状は、後述する有機EL素子100は形成されている領域よりも広い(大きい)ものであることが好ましい。
【0065】
以上の工程により、有機ELパネル20が形成される。封止接着層44は熱硬化性樹脂又は紫外線硬化樹脂が好ましい。上述したように、本実施形態の有機ELパネルはボトムエミッション型であるため、基板11は透光性を必要としない。したがって、基板11の形成材料は、ガラスではなく金属板等を用いることもできる。
【0066】
次に、図3(c)に示すように、基板11の第2の面に、冷却手段としてのペルチェモジュール6と、温度測定手段としてのサーミスタ8を配置する。ペルチェモジュール6は有機EL素子100が形成されている領域と平面視で重なる領域に形成することが好ましい。
さらに、基板11の、有機EL素子100(図1参照)が形成されている領域と平面視で重ならない領域に、ペルチェモジュール6に駆動電流を供給するペルチェモジュール駆動回路7と、ペルチェモジュール6に供給する電流量を決定する制御部5とを配置する。上述の符号5〜8の各要素は、図示しない接続配線により、後述する図8に示すように接続されている。以上の工程により本実施形態の有機ELパネル1が形成される。なお、上記の双方の要素は、基板11の第1の面と第2の面のどちらに形成してもかまわない。
【0067】
本実施形態の有機ELパネル1は、電源に接続されている場合、使用状況に応じて所定の温度に保たれる。具体的には、駆動されている間すなわち画像を表示している間は第1の温度である略25℃に保たれ、非駆動時すなわち画像を表示していない間は第2の温度である略−40℃に保たれる。
【0068】
制御部5は制御プログラムを内蔵しており、サーミスタ8から得られる温度情報、すなわち基板11の温度の測定値と、予め記録された上記所定の温度(第1の温度である略25℃及び第2の温度である略−40℃)とに基づき、ペルチェモジュール6を駆動する。
【0069】
具体的には、上述の(サーミスタ8による)測定値が上記所定の温度を上回っているときは、ペルチェモジュール駆動回路7に指示してペルチェモジュール6に駆動電流を供給させて基板11を冷却する。その結果、有機ELパネル1は、有機EL素子100に電流を供給することによる温度上昇、あるいは周辺温度の変動等にもかかわらず、画像表示時及び非画像表示時の双方において所定の温度に保たれる。なお、上記第2の温度は略−30℃以下であれば効果が期待でき、−30℃〜−50℃の範囲内であることが好ましい。
【0070】
(本実施形態の効果)
上述したように、本実施形態の有機ELパネル1は、駆動中、すなわち有機EL素子100が備える機能層40を、駆動電流を流すことにより発光させて、該発光により画像を表示している間は、該有機EL素子100の温度が第1の温度である略25℃に保たれ、画像を表示していない間は第2の温度である略−40℃に保たれている。
【0071】
有機EL層38を含む機能層40の温度は、上述の通電により上昇する。そしてかかる温度上昇は、該機能層を挟持する一対の電極の温度も上昇させる。ここで、有機材料からなる機能層40と無機材料からなる一対の電極との間には、比較的大きい熱膨張係数差がある。具体的には、電極の形成材料である(Al、ITO等の)金属材料の熱膨張係数は20×10-6℃に対して機能層40の形成材料である有機材料の膨張係数は60×10-5℃と一桁以上大きい。したがって機能層40の温度が上昇すると、機能層40と該機能層を挟持する一対の電極(陽極32及び陰極42)との間に応力が生じて、機能層40と上記一対の電極との界面(以下、単に「界面」と称する。)の状態が不安定になる。そして、かかる界面の状態が維持されると、表示品質を劣化させることとなる。
【0072】
本実施形態の有機ELパネル1は、上述の表示品質の劣化を、画像表示中及び画像表示の終了後の双方において有機EL素子100の温度を制御することにより抑制している。すなわち有機EL素子100が発光している間は、該有機EL素子100の温度を略25℃に保ち、上述の熱膨張係数の差による応力の増大を抑制し、界面状態の変化が進むことを抑制している。そして有機EL素子100の発光が終了した後は、該有機EL素子の温度を略−40℃まで冷却することで、発光中とは逆方向の応力を発生させて、通電による温度上昇により変化した界面状態を良好な状態に戻している。したがって、本実施形態の有機ELパネル1は、冷却手段を有しない有機ELパネルに比べて界面状態が良好な状態に保たれることとなり、経時的な表示品質の劣化が抑制される。
【0073】
本実施形態の有機ELパネル1は、図3(d)に示すように、電源に接続することにより、有機ELパネル1単体として有機EL素子100を第4の温度まで冷却できる。まず、電源55に制御部5を接続する。そして、ペルチェモジュール駆動回路7を介してペルチェモジュール6に電流を供給する。その結果、該ペルチェモジュールにより基板11を介して、有機EL素子100が冷却される。上記第4の温度は、−30℃乃至−50℃が好ましく、特に略−40℃が好ましい。また冷却の時間は、10時間以上連続して行うことが好ましい。
【0074】
上記の冷却温度は、サーミスタ8による測定結果を基に制御部5が、ペルチェモジュール駆動回路7のON/OFFを制御することで、所定の範囲内に維持される。かかる冷却工程、すなわち有機ELパネルとしての使用が開始された後の冷却とは別の、初期冷却工程を実施することで、本実施形態の有機ELパネル1の連続駆動時における表示品質の劣化は一層抑制される。
【0075】
上述の熱膨張係数差による界面状態の変化は駆動時(画像表示時)だけではなく有機ELパネル1の製造時にも発生している。例えば、封止接着層44を硬化させる際の加熱工程等でも、機能層40及び該機能層を挟持する一対の電極の温度を上昇させて、界面に応力を発生させ得る。したがって、有機ELパネル1は完成した段階すなわち未使用の段階においても上述の界面状態の変化は生じている。
【0076】
上述の有機ELパネル1として使用が開始された後の冷却に加えて初期冷却工程を実施すると、製造中の加熱工程の実施にもかかわらず、界面状態も良好に保つことができ、表示品質の経時的な劣化がより一層抑制される。例えば初期冷却工程として−30℃で10時間冷却した場合、500時間の連続画像表示後の輝度は初期輝度の略90%を維持できる。一方、初期冷却工程を実施しない場合は、500時間の連続画像表示後の輝度は初期輝度の略60%となり、初期冷却の効果が確認できる。なお上述の初期冷却工程は、有機ELパネル1に備えられたペルチェモジュール6を用いずに、該有機ELパネルとは無関係の冷却手段、例えば冷蔵庫等を用いて行ってもよい。
【0077】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態の有機ELパネル2を示す模式断面図である。図3(c)に示す第1の実施形態の有機ELパネル1に計時部9を付加した構成であり、他の構成要素は共通している。そこで、かかる共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は省略する。
【0078】
本実施形態の有機ELパネル2は、使用状況に応じてのみではなく、計時部9が算出する経過時間に応じての温度管理もなされることが特徴である。制御部5は、画像表示中(駆動中)は、内蔵する制御プログラムに基づき、有機ELパネル2の温度(具体的には基板11の温度)が第1の温度に保たれるようにペルチェモジュール駆動回路7に指示してペルチェモジュール6に駆動電流を供給させる。そして画像表示が終了すると同時に、有機ELパネル2の温度が第2の温度に保たれるようにペルチェモジュール駆動回路7に指示してペルチェモジュール6に駆動電流を供給させるとともに、計時を開始する。なお、上記第1の実施形態と同様に、第1の温度は略25℃が好ましく、第2の温度は略−40℃が好ましい。
【0079】
そして所定の時間が経過後は、有機ELパネル2の温度が第1の温度より低く第2の温度よりは高い第3の温度に保たれるように、ペルチェモジュール駆動回路7に指示してペルチェモジュール6に駆動電流を供給させる。その結果、有機ELパネル2は、周辺温度の変動にもかかわらず、駆動が終了後所定の時間内は第2の温度で冷却され、該所定の時間が経過後は再度の駆動が開始されるまで第3の温度に保たれる。
なお、上記所定の時間は1乃至10時間であればよい。また、上述の第3の温度は室温程度であればよく、略15℃から略25℃の範囲に定めることができる。
【0080】
(本実施形態の効果)
本実施形態の有機ELパネル2は、第1の実施形態の有機ELパネルとは異なり、画像表示が終了後所定の時間、略−40℃で冷却された後、一般的な室温より若干低い温度である略15℃で維持される。上述したように、略−40℃の環境に置かれた有機ELパネルは、機能層40に通電することにより生じた界面状態の変化が元の良好な状態に戻る。そして良好になった界面は、略15℃まで上昇しても元の劣化した状態には戻ることはなく、良好な状態で維持される。画像表示が終了後、次の画像表示が開始されるまでの間、連続して略−40℃の環境に置かれる有機ELパネルに比べて表示品質の経時的な劣化は殆んど変わらない。
【0081】
したがって、本実施形態の有機ELパネル2は、過度に冷却することなく表示品質が維持されることとなり、冷却に要するコスト等を低減できる。又、上記所定の時間経過後は有機EL層が発光する際の温度よりも低い温度で維持されるため、画像表示開始直後の表示品質が低下することも回避できる。
【0082】
(第3の実施形態)
図5に第3の実施形態にかかる有機EL装置3の模式断面図を示す。図5(a)は、第3の実施形態の有機EL装置3を示す模式断面図であり、矢印の方向が光(表示光)を射出する方向である。図5(b)は、有機EL装置3の上ケース51と下ケース52とを分離して展開させた態様を示す模式断面図である。なお、有機EL装置とは、有機ELパネル20単体すなわち図3(b)に示す有機ELパネル20を構成要素として含む表示装置を示す概念である。
【0083】
有機EL装置3の構成要素は、上ケース51と下ケース52とを除くと第1の実施形態の有機ELパネル1と略共通している。すなわち、有機EL装置3は、有機ELパネル20と、制御部5と、パネル冷却手段としてのペルチェモジュール16と、ペルチェモジュール駆動回路7と、パネル温度測定手段としてのサーミスタ18と、からなっている。有機ELパネル20を除く4つの要素は下ケース52に備えられており、互いに、図示しない配線で接続されている。そして、ペルチェモジュール16とサーミスタ18とは、図5(b)に示すように、下ケース52に上部が同一平面に位置するように配置されている。したがって、有機ELパネル20を光射出面ではない方の面を下にして、図5(b)の矢印に示す様に下ケース52上に配置すると、ペルチェモジュール16とサーミスタ18とが上述の光射出面ではない方の面に密着する。有機ELパネル20が配置された下ケース52上に、上ケース51を矢印に示す様に配置して、本実施形態の有機EL装置3が得られる。なお、ペルチェモジュール16及び/又はサーミスタ18は、有機ELパネル20に密着させずに、熱伝導性の高いシート状部材を介して配置してもよい。
【0084】
上述したように、有機EL装置3は第1の実施形態の有機ELパネル1と略同一の構成であり、機能及び得られる効果も同様である。有機ELパネル20が備える有機EL素子100(図3等参照)の温度は、有機EL装置3が画像を表示している間は第1の温度である略25℃に保たれ、画像を表示していない間は第2の温度である略−40℃に保たれている。そして、かかる温度管理により、熱膨張係数の差による界面状態の変化が抑制され、表示品質の経時的な劣化を抑制されている。
【0085】
本実施形態の有機EL装置3は、有機ELパネル20を構成要素の一つとしたことにより、以下の効果が生じている。第1の効果は、パネル冷却手段としてペルチェモジュール16以外の手段を採ることが容易となることである。パネル冷却手段を有機ELパネル20と一体化させる必要がないため、ヒートパイプ、あるいは通常の水冷等を用いることが容易である。
【0086】
第2の効果は、有機ELパネル20のみを着脱できることである。通電による加熱により生じた界面の劣化を回復させるための温度は略−40℃で一応足りるが、上述の劣化が大きい場合、より低い温度で冷却することが好ましい場合もあり得る。そしてかかる場合の冷却温度が、有機EL装置3の冷却手段の能力を超える場合もあり得る。本実施形態の有機EL装置3は、かかる場合に有機ELパネル20を取り外して、ペルチェモジュール16以上の冷却能力を持つ他の冷却手段を用いて、上記界面の状態を回復させることができる。
【0087】
(第4の実施形態)
図6に第4の実施形態にかかる有機EL装置4の模式断面図を示す。有機EL装置4は、有機ELパネル20と、上ケース51と、下ケース52と、計時部9と、制御部5と、パネル冷却手段としてのペルチェモジュール16と、ペルチェモジュール駆動回路7と、パネル温度測定手段としてのサーミスタ18と、からなっている。かかる構成要素は、計時部9を除くと、第3の実施形態の有機EL装置3と略共通している。また、有機ELパネル20単体が構成要素であり、上ケース51と下ケース52とが備えられている点を除くと、第2の実施形態の有機ELパネル2とも略共通している。したがって有機EL装置4は、第2の実施形態の有機ELパネル2と略同一の機能を有し、得られる効果も略同一である。そして、第3の実施形態の有機EL装置と同様の効果も得られている。
【0088】
有機ELパネル20が備える有機EL素子100(図3等参照)の温度は、有機EL装置4が画像を表示している間は第1の温度である略25℃に保たれている。そして、画像表示が終了後所定の時間、略−40℃で冷却された後、次の画像表示が開始されるまでは室温より若干低い温度である略15℃で維持される。そして、かかる温度管理により、熱膨張係数の差による界面状態の変化が抑制され、表示品質の経時的な劣化を抑制されている。したがって、本実施形態の有機EL装置4が備える有機ELパネル20は、過度に冷却されることなく表示品質が維持されており、冷却に要するコスト等を低減されている。また本実施形態の有機EL装置4は、第3の実施形態の有機EL装置と同様に、ペルチェモジュール16以外のパネル冷却手段を用いることができ、有機ELパネル20の着脱も容易である。
なお、上記所定の時間は1乃至10時間が好ましく、上記第3の温度は、略15℃から略25℃の範囲に定めることができる点も第2の実施形態と同様である。
【0089】
(第5の実施形態)
次に第5の実施形態としての、有機ELパネルの駆動方法、及び有機EL装置の駆動方法について、図7、及び図8を用いて述べる。本実施形態の対象となる装置は、第1の実施形態の有機ELパネル1、及び第3の実施形態の有機EL装置3である。図7は、有機ELパネル1、及び有機EL装置3の駆動方法を示すフローチャートである。図8(a)は有機ELパネル1の冷却機構を有機EL素子100等と共に示す電気ブロック図であり、図8(b)は有機EL装置3の冷却機構を有機ELパネル20と共に示す電気ブロック図である。
【0090】
有機ELパネル1の冷却機構は、図8(a)に示すように、制御部5と、冷却手段としてのペルチェモジュール6と、該ペルチェモジュールを駆動するペルチェモジュール駆動回路7と、温度測定手段としてのサーミスタ8と、で構成されている。また、有機EL装置3の冷却機構は、図8(b)に示すように、制御部5と、パネル冷却手段としてのペルチェモジュール16と、該ペルチェモジュールを駆動するペルチェモジュール駆動回路7と、パネル温度測定手段としてのサーミスタ18と、で構成されている。
【0091】
図8に示すように、有機ELパネル1と有機EL装置3の違いは、ペルチェモジュール等の要素を冷却手段としてのペルチェモジュール6等として有機ELパネル1の構成要素とするか、パネル冷却手段としてのペルチェモジュール16等として有機EL装置3の構成要素とするか、の違いである。そして、上記双方の構成要素は有機EL素子100(図3等参照)を冷却することにより、該素子の界面の経時劣化を抑制することを目的としており、機能、あるいは動作は共通している。そこで、図7に示す駆動方法のフローチャートを用いて、有機ELパネル1と有機EL装置3とに共通する駆動方法について説明する。
【0092】
なお、冷却手段としてのペルチェモジュール6とパネル冷却手段としてのペルチェモジュール16との総称としてペルチェモジュール6/16を用い、温度測定手段としてのサーミスタ8とパネル温度測定手段としてのサーミスタ18との総称としてサーミスタ8/18を用いる。制御部5、ペルチェモジュール駆動回路7、及び計時部9は共通である。
【0093】
まず、ステップS11で、制御部5が、有機EL素子100が駆動中(有機EL層38が発光中)であるか否か、すなわち有機ELパネル1又は有機EL装置3が画像を表示中であるか否かを判断する。本実施形態の駆動方法は、有機EL素子100を、駆動中であれば第1の温度T1以下に冷却し、駆動中でない場合は第2の温度T2以下に冷却するものである。したがって、駆動中であると判断されればステップS12に進み、駆動中ではないと判断されればステップS15に進む。
【0094】
ステップS12では、制御部5が、サーミスタ8/18の測定値TがT1以下であるか否かを判断する。T1は略25℃が好ましい。有機EL素子100の温度を25℃以下に維持すれば、界面の状態が良好に保たれ、表示品質の経時劣化が抑制される。一方で、駆動中であれば25℃よりも低い温度であると、有機EL素子100の発光が抑制されて表示品質が損なわれる。
サーミスタ8/18の測定値TがT1以下である場合、ステップS14に進む。ステップS14では、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7をOFFとしてペルチェモジュール6/16への電流の供給を停止する。
【0095】
なお、ステップS14及び後述するステップS17で、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7に指示する場合、指示内容と指示時のペルチェモジュール駆動回路7の状態(ON/OFF状態)が一致している場合は、該状態はそのまま維持され、異なっている場合に指示内容の動作が行われる。したがって、ステップS11からステップS12へ進む段階で、サーミスタ8/18の測定値TがT1以下であり、かつペルチェモジュール駆動回路7がOFFであった場合、ステップS14では動作は行われない。したがって、サーミスタ8/18の測定値TがT1以下である場合、ステップS11とステップS12とステップS14とからなるループが繰り返される。サーミスタ8/18の測定値TがT1以上である場合、ステップS13に進む。
【0096】
ステップS13では、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7をONにして、ペルチェモジュール6/16に電流を供給する。その結果、基板11を介して有機EL素子100が冷却される。そして、冷却が開始された後、再度ステップS11に進む。したがって、サーミスタ8/18の測定値TがT1以上である場合、ステップS11とステップS12とステップS13とからなるループが繰り返される。
以上の結果、駆動中、すなわち画像を表示している間の有機EL素子100の温度はT1である略25℃に維持される。
【0097】
ステップS15では、制御部5が、サーミスタ8/18の測定値TがT2以下であるか否かを判断する。T2は略−40℃が好ましい。サーミスタ8/18の測定値TがT2以下である場合、ステップS17に進む。ステップS17では、ペルチェモジュール駆動回路7がONであった場合、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7をOFFとしてペルチェモジュール6/16への電流の供給を停止する。上述したように、ステップS17でペルチェモジュール駆動回路7がOFFであった場合は、該状態はそのまま維持される。そして、ペルチェモジュール駆動回路7がOFFとされた後(あるいはOFFであることが確認された後)後、再度ステップS11に進む。したがって、非駆動中、すなわち画像を表示していない間においては、サーミスタ8/18の測定値TがT2以下である場合、ステップS11ステップS15とステップS17とからなるループが繰り返される。なお、この段階で画像の表示が開始されれば上述のループからステップS12に進む。
【0098】
サーミスタ8/18の測定値TがT2以上である場合、ステップS16に進む。ステップS16では、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7をONにして、ペルチェモジュール6/16に電流を供給する。その結果、基板11を介して有機EL素子100が冷却される。そして、冷却が開始された後、再度ステップS11に進む。したがって、非駆動中、すなわち画像を表示していない間においては、サーミスタ8/18の測定値TがT2以上である場合、ステップS11ステップS15とステップS16とからなるループが繰り返される。なお、この段階で画像の表示が開始されれば上述のループからステップS12に進む。
以上の結果、非駆動中、すなわち画像を表示していない間の有機EL素子100の温度はT2である略−40℃に維持される。
【0099】
(本実施形態の効果)
本実施形態の有機ELパネルの駆動方法、及び有機EL装置の駆動方法によれば、有機EL素子100の温度は、画像が表示されている間、すなわち該有機EL素子に駆動電流が流れている間は第1の温度である略25℃に保たれ、画像が表示されていない間は第2の温度である略−40℃に保たれる。したがって、本実施形態の有機ELパネルの駆動方法、及び有機EL装置の駆動方法によれば、有機EL素子100の界面状態が良好な状態に保たれることとなり、有機ELパネル又は有機EL装置の表示品質の経時的な劣化が抑制される。
【0100】
(第6の実施形態)
次に第6の実施形態としての、有機ELパネルの駆動方法、及び有機EL装置の駆動方法について、図9、及び図10を用いて述べる。本実施形態の対象となる装置は、第2の実施形態の有機ELパネル2、及び第4の実施形態の有機EL装置4である。図9は、有機ELパネル2、及び有機EL装置4の駆動方法を示すフローチャートである。図10(a)は有機ELパネル2の冷却機構の電気ブロック図であり、図10(b)は有機EL装置4の冷却機構の電気ブロック図である。上述の第5の実施形態にかかる図8(a)、(b)に示すブロック図とは、計時部9の有無以外は同一である。そこで個々の構成要素についての記載は省略する。
【0101】
図10に示すように、有機ELパネル2と有機EL装置4の違いは、ペルチェモジュール等の要素を冷却手段としてのペルチェモジュール6等として有機ELパネルの構成要素とするか、パネル冷却手段としてのペルチェモジュール16等として有機EL装置の構成要素とするか、の違いである。また、第5の実施形態と同様に、上記双方(有機ELパネル2と有機EL装置4)の構成要素は有機EL素子100(図3等参照)を冷却することにより、該有機EL素子の界面の経時劣化を抑制することを目的としており、機能、あるいは動作は共通している。そこで、図9に示す駆動方法のフローチャートを用いて、有機ELパネル2と有機EL装置4とに共通する駆動方法について説明する。
【0102】
なお、上述の第5の実施形態と同様に、冷却手段としてのペルチェモジュール6とパネル冷却手段としてのペルチェモジュール16との総称としてペルチェモジュール6/16を用い、温度測定手段としてのサーミスタ8とパネル温度測定手段としてのサーミスタ18との総称としてサーミスタ8/18を用いる。
【0103】
ステップS21〜24については上述の第5の実施形態の駆動方法と同一である。まず、ステップS21で、制御部5が、画像表示中か否かすなわち有機EL素子100が通電中であるか否かを判断する。画像表示中であると判断されればステップS22に進み、制御部5が、サーミスタ8/18の測定値TがT1より高いか否かを判断する。T1は、第5の実施形態と同様に略25℃が好ましい。
【0104】
サーミスタ8/18の測定値TがT1以下である場合、ステップS24に進む。ステップS24では、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7をOFFとしてペルチェモジュール6/16への電流の供給を停止する。
なお、ステップS24及び後述するステップS23等で、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7に指示する場合、指示内容と指示時のペルチェモジュール駆動回路7の状態(ON/OFF状態)が一致している場合は、該状態はそのまま維持され、異なっている場合に指示内容の動作が行われる。したがって、ステップS21からステップS22へ進む段階で、サーミスタ8/18の測定値TがT1以下であり、かつペルチェモジュール駆動回路7がOFFであった場合、ステップS24では動作は行われない。
【0105】
サーミスタ8/18の測定値TがT1より高い場合、次のステップS23に進む。ステップS23では、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7をONにして、ペルチェモジュール6/16に電流を供給する。その結果、基板11を介して有機EL素子100が冷却される。以上の結果、画像表示中の有機EL素子100の温度はT1である略25℃以下に維持される。
【0106】
ステップS21で、制御部5が画像表示中ではないと判断すると、次のステップS25に進む。ステップS25では、制御部5が、計時部9の測定結果に基づき画像表示が終了してからの経過時間が1時間を超えているか否かを判断する。制御部5が(上記経過時間が)1時間以下であると判断すると、ステップS26に進む。
【0107】
ステップS26では、制御部5が、サーミスタ8/18の測定値TがT2より高いか否かを判断する。T2は略−40℃が好ましい。サーミスタ8/18の測定値TがT2以下である場合、ステップS28に進む。ステップS28では、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7をOFFとしてペルチェモジュール6/16への電流の供給を停止する。なお、上述したように、ステップS28に進んだときにペルチェモジュール駆動回路7がOFFであった場合、ステップS28では動作は行われない。
【0108】
サーミスタ8/18の測定値TがT2より高い場合、ステップS27に進む。ステップS27では、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7をONにして、ペルチェモジュール6/16に電流を供給する。その結果、有機EL素子100の冷却が開始される。そして、冷却が開始された後、再度ステップS21に進む。
【0109】
以上述べたように、画像の表示の終了後、すなわち有機EL素子100の駆動が停止した後1時間は、ステップS21とステップS25とステップS26とステップS28とを順次行うループ、又はステップS21とステップS25とステップS26とステップS27とを順次行うループが繰り返される。その結果、有機EL素子100が駆動を停止してから1時間を経過するまでの間は、該有機EL素子の温度はT2である略−40℃以下に維持される。
【0110】
ステップS25で、制御部5が、画像表示が終了してからの経過時間が1時間を超えていると判断すると、ステップS29に進む。ステップS29では、制御部5が、サーミスタ8/18の測定値TがT3より高いか否かを判断する。T3は略15℃が好ましい。
【0111】
サーミスタ8/18の測定値TがT3以下である場合、ステップS31に進む。ステップS31では、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7をOFFとしてペルチェモジュール6/16への電流の供給を停止する。なお、上述したように、ステップS31に進んだときにペルチェモジュール駆動回路7がOFFであった場合、ステップS31では動作は行われない。
【0112】
サーミスタ8/18の測定値TがT3よりも高い場合、ステップS30に進む。ステップS30では、制御部5がペルチェモジュール駆動回路7をONにして、ペルチェモジュール6/16に電流を供給する。その結果、有機EL素子100の冷却が開始される。そして、冷却が開始された後、再度ステップS21に進む。
【0113】
以上述べたように、画像表示の終了後、すなわち有機EL素子100の駆動が停止した後1時間経過した後は、再度画像の表示が開始されるまでの間は、1時間は、ステップS21とステップS25とステップS29とステップS31を順次行うループ、又はステップS21とステップS25とステップS29とステップS30とを順次行うループが繰り返される。その結果、有機EL素子100が駆動を停止してから1時間を経過した後は、再度画像の表示が開始されるまで、有機EL素子100の温度はT3である略15℃以下に維持される。
【0114】
(本実施形態の効果)
上述したように、本実施形態の有機ELパネルの駆動方法、及び有機EL装置の駆動方法によれば、有機EL素子(図3等参照)の温度は、画像が表示されている間は第1の温度である略25℃に保たれ、画像表示が終了後所定の時間、第2の温度である略−40℃に保たれる。そして、上記所定の時間の経過後は、第3の温度である略15℃で維持される。したがって、本実施形態の有機ELパネルの駆動方法、及び有機EL装置の駆動方法によれば、過度に冷却することなく界面状態が良好な状態に保たれることとなり、冷却に要するコスト等を増加させずに有機ELパネル又は有機EL装置の経時的な表示品質の劣化が抑制される。
なお、上記所定の時間は1乃至10時間が好ましいが、10時間を越えても問題はない。また、上述の第3の温度は室温程度であればよく、略15℃から略25℃の範囲に定めることができる。
【0115】
(変形例1)
上述の第1〜6の実施形態の有機ELパネル又は有機EL装置が備える有機EL素子100は、ボトムエミッション型であった。しかし変形例1に示すように、トップエミッション型の有機EL素子を備える有機ELパネル又は有機EL装置においても実施可能である。陽極32(図3参照)が形成される側の基板が透光性基板となり、該基板の反対側にペルチェモジュール6(又は16)を配置すれば、上述の第1〜6の実施形態で示したものと同様の、経時的な表示品質の劣化を抑制する効果を得ることができる。
【0116】
(変形例2)
上述の第1〜6の実施形態の有機ELパネル又は有機EL装置では、温度測定手段(又はパネル温度測定手段)として、サーミスタを用いている。しかし変形例2に示すように、サーミスタ以外の温度測定手段、例えば熱電対等を用いても実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】有機ELパネルの全体構成を示す回路構成図。
【図2】有機ELパネル、及びその製造工程を模式的に示す工程断面図。
【図3】有機ELパネル、及びその製造工程を模式的に示す工程断面図。
【図4】第2の実施形態の有機ELパネルを示す模式断面図。
【図5】(a)は第3の実施形態の有機EL装置の模式断面図、(b)は、有機EL装置の上ケースと下ケースとを分離して展開させた態様を示す模式断面図。
【図6】第4の実施形態にかかる有機EL装置の模式断面図。
【図7】第5の実施形態の有機ELパネルの駆動方法及び有機EL装置の駆動方法を示すフローチャート。
【図8】第5の実施形態の有機ELパネルの駆動方法及び有機EL装置の電気ブロック図。
【図9】第6の実施形態の有機ELパネルの駆動方法及び有機EL装置の駆動方法を示すフローチャート。
【図10】第6の実施形態の有機ELパネルの駆動方法及び有機EL装置の電気ブロック図。
【符号の説明】
【0118】
1…有機ELパネル、2…有機ELパネル、3…有機EL装置、4…有機EL装置、5…制御部、6…冷却手段としてのペルチェモジュール、7…ペルチェモジュール駆動回路、8…温度測定手段としてのサーミスタ、9…計時部、10…透光性基板、11…基板、16…パネル冷却手段としてのペルチェモジュール、18…パネル温度測定手段としてのサーミスタ、20…有機ELパネル、32…陽極、34…隔壁、36…正孔注入輸送層、38…有機EL層、40…機能層、42…陰極、44…封止接着層、51…上ケース、52…下ケース、55…電源、100…有機EL素子、102…走査線、104…信号線、106…電源供給線、108…スイッチング用TFT、110…保持容量、112…駆動用TFT、120…走査線駆動回路、130…信号線駆動回路、A…画素領域、B…表示領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に少なくとも有機EL層を含む機能層を挟持してなる有機EL素子と、
前記有機EL素子の光射出面の反対側の面に配置された冷却手段と、
を備える有機ELパネル。
【請求項2】
基板と、
前記基板の第1の面に、光射出面の反対側の面が対向するように配置された一対の電極間に少なくとも有機EL層を含む機能層を挟持してなる有機EL素子と、
前記基板の第2の面に配置された冷却手段と、
前記冷却手段の駆動手段と、
を備える有機ELパネル。
【請求項3】
請求項2に記載の有機ELパネルであって、前記冷却手段は2次元的に配置された複数のペルチェ素子を含むペルチェモジュールであり、前記駆動手段はペルチェモジュール駆動手段であることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項4】
請求項3に記載の有機ELパネルであって、
前記基板の温度を測定する温度測定手段と、
前記ペルチェモジュール駆動手段が前記ペルチェモジュールに供給する電流量を決定する制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記温度測定手段から得られる温度情報に基づき、前記有機EL素子が発光している間は前記基板の温度が第1の温度以下に保たれ、前記有機EL素子が発光していない間は、前記基板の温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度以下に保たれるように前記電流量が決定されることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項5】
請求項3に記載の有機ELパネルであって、
前記基板の温度を測定する温度測定手段と、
前記ペルチェモジュール駆動手段が前記ペルチェモジュールに供給する電流量を決定する制御部と、
前記有機EL素子の発光が停止した時点からの経過時間を計測する計時部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記温度測定手段から得られる温度情報及び前記計時部から得られる情報に基づき、前記有機EL素子が発光している間は前記基板の温度が第1の温度以下に保たれ、前記有機EL素子の発光が停止した時から所定の時間は、前記基板の温度が第2の温度以下に保たれ、前記所定の時間の経過後は前記基板の温度が前記第1の温度より低く前記第2の温度より高い温度である第3の温度以下に保たれるように前記電流量が決定されることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項6】
請求項5に記載の有機ELパネルであって、
前記所定の時間は1時間であり前記第3の温度は略15℃であることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の有機ELパネルであって、
前記第1の温度は略25℃であることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の有機ELパネルであって、
前記第2の温度は略−40℃であることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機ELパネルであって、
前記有機ELパネルの完成後、有機ELパネルとしての使用が開始されるまでの間に少なくとも1回は、所定の時間は第4の温度以下に保たれることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項10】
請求項9に記載の有機ELパネルであって、
該有機ELパネルを、所定の時間、前記第4の温度以下に保つ手段は、前記ペルチェモジュールであることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項11】
基板と、前記基板の第1の面に光射出面の反対側の面が対向するように配置された、一対の電極間に少なくとも有機EL層を含む機能層を挟持してなる有機EL素子と、を備える有機ELパネルと、
前記基板の第2の面に対向するように配置されたパネル冷却手段と、
を備える有機EL装置。
【請求項12】
請求項11に記載の有機EL装置であって、前記パネル冷却手段は2次元的に配置された複数のペルチェ素子を含むペルチェモジュールであり、駆動手段はペルチェモジュール駆動手段であることを特徴とする有機EL装置。
【請求項13】
請求項12に記載の有機EL装置であって、前記ペルチェモジュールは、前記基板の前記第2の面に密着するように配置されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の有機EL装置であって、
前記有機ELパネルの温度を測定するパネル温度測定手段と、
前記ペルチェモジュール駆動手段が前記ペルチェモジュールに供給する電流量を決定する制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記パネル温度測定手段から得られる温度情報に基づき、前記有機ELパネルが画像を表示している間は前記有機ELパネルの温度が第1の温度以下に保たれ、前記有機ELパネルが画像を表示していない間は前記有機ELパネルの温度が第2の温度以下に保たれるように前記電流量を決定することを特徴とする有機EL装置。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の有機EL装置であって、
前記有機ELパネルの温度を測定するパネル温度測定手段と、
前記ペルチェモジュール駆動手段が前記ペルチェモジュールに供給する電流量を決定する制御部と、
前記有機ELパネルの発光が停止した時点からの経過時間を計測する計時部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記パネル温度測定手段から得られる温度情報及び前記計時部から得られる情報に基づき、前記有機ELパネルが発光している間は前記有機ELパネルの温度が第1の温度以下に保たれ、前記有機ELパネルの発光が停止した時から所定の時間は、前記有機ELパネルの温度が第2の温度以下に保たれ、前記所定の時間の経過後は前記有機ELパネルの温度が前記第1の温度より低く前記第2の温度より高い温度である第3の温度以下に保たれるように前記電流量を決定することを特徴とする有機EL装置。
【請求項16】
請求項15に記載の有機EL装置であって、
前記所定の時間は1時間であり前記第3の温度は略15℃であることを特徴とする有機EL装置。
【請求項17】
請求項14又は15に記載の有機EL装置であって、
前記第1の温度は略25℃であることを特徴とする有機EL装置。
【請求項18】
請求項14又は15に記載の有機EL装置であって、
前記第2の温度は略−40℃であることを特徴とする有機EL装置。
【請求項19】
請求項11〜18のいずれか一項に記載の有機EL装置であって、
前記有機ELパネルは、完成後使用が開始される前に、所定の時間、第4の温度以下に冷却する処理がなされていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項20】
一対の電極間に少なくとも有機EL層を含む機能層を挟持してなる有機EL素子を備える有機ELパネルの駆動方法であって、
前記有機EL層が発光している間は、前記有機EL素子を第1の温度以下に保ち、
前記有機EL層が発光していない間は、前記有機EL素子を第2の温度以下に保つことを特徴とする有機ELパネルの駆動方法。
【請求項21】
一対の電極間に少なくとも有機EL層を含む機能層を挟持してなる有機EL素子を備える有機ELパネルの駆動方法であって、
前記有機EL層が発光している間は、前記有機EL素子を第1の温度以下に保ち、
前記有機EL層の発光が停止した時から所定の時間は、前記有機EL素子を第2の温度以下に保ち、
前記所定の時間の経過後は、前記有機EL素子を第3の温度以下に保つことを特徴とする有機ELパネルの駆動方法。
【請求項22】
請求項21に記載の有機ELパネルの駆動方法であって、前記第3の温度は略15℃であることを特徴とする有機ELパネルの駆動方法。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の有機ELパネルの駆動方法であって、前記第1の温度は略25℃であり、前記第2の温度は略−40℃であることを特徴とする有機ELパネルの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−193801(P2009−193801A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32785(P2008−32785)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】