説明

有機EL発光装置

【課題】有機発光層の発光を利用した有機EL発光装置において、光取り出し効率を向上する。
【解決手段】有機EL発光装置1は、基板3と、この基板3上に形成された有機EL層2とを備え、有機EL層2からの光が基板3を通して取り出される。基板3は、光取り出し面32に互いに隣接すると共に、離間配置された複数の出射面33と、これら出射面33の間に形成されたV字状の溝4と、この溝形成面に設けられた反射面41とを有する。基板3の光取り出し面32上にレンズ5を備える。レンズ5は、出射面33の各々の周縁の互いに対称な点を第1焦点51a及び第2焦点51bとする略半楕円断面形状を有し、互いに隣合うレンズ5が平面視多角形の辺52で接する。これにより、有機EL層2から出射された光が、基板3の出射面33からレンズ5に入射して取り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機EL)の発光を利用した有機EL発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機物を発光させて面発光光源を得る有機EL素子が知られている。図6は、有機EL素子100の一般的な構成を示す。有機EL素子100は、透明電極の陽極102、ホール輸送層103、有機発光層104、電子注入層105、及び金属電極の陰極106の各層が、透明な基板101の一方の面上に、この順に積層されて形成される。陽極102と陰極106の間に通電することによって、陽極102側からホールが注入され、陰極106側から電子が注入される。有機発光層104は、注入されたホールと電子の再結合によって発光し、その光が、陽極102と基板101を通して取り出される。
【0003】
ここで、基板101は、ガラス等から成り、その屈折率が空気の屈折率よりも高い。このため、基板101内から空気との界面107に比較的小さい入射角で入射する光は、空気中に出射されるが、それ以外の光L101は、その界面107で反射され、基板101内において端部方向に導波されて消失し、有機EL素子100から取り出すことができない。この界面107での反射のため、有機EL素子100の光取り出し効率が低くなっている。
【0004】
そこで、基板の透光性を低くすることによって、基板内部で光を散乱させて界面での反射を軽減し、光取り出し効率の向上を図った有機EL素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、上述したような有機EL素子では、基板の透光性を低くすることよる光損失が生じるため、光取り出し効率の向上効果が十分ではない。
【特許文献1】特開2005−38661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するものであり、有機発光層の発光を利用した有機EL発光装置において、光取り出し効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、基板と、この基板上に形成された有機EL層と、を備え、前記有機EL層からの光が前記基板を通して取り出される有機EL発光装置であって、前記基板は、前記有機EL層が形成されている面とは反対側面を光取り出し面とし、この光取り出し面に互いに隣接すると共に離間配置された複数の出射面と、これら隣接する出射面の間に形成されたV字状の溝と、この溝形成面に設けられた反射面とを有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の有機EL発光装置において、前記基板の光取り出し面上に前記出射面の各々に対応して形成されたレンズをさらに備え、前記レンズは、前記出射面の各々の周縁の互いに対称な点を第1焦点及び第2焦点とする略半楕円断面形状を有し、互いに隣合うレンズが平面視多角形の辺で接するものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の有機EL発光装置において、前記有機EL層は、陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に少なくとも有機発光層とを有し、前記陽極が前記基板上に形成されており、前記基板と前記レンズの屈折率は、前記陽極の屈折率と略同じであるものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の有機EL発光装置において、前記基板の有機EL層が形成されている面に、光を拡散透過する光拡散層が設けられているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、面発光光源である有機EL層から基板に入射した光の多くが、隣接する出射面の間に形成されたV字状の溝形成面に反射面があることによって、基板上に離間配置された出射面から出射されるので、出射面が擬似的な点光源となる。この点光源は、レンズ等によって配光制御が容易であり、有機EL発光装置の光取り出し効率の向上が容易となる。
【0011】
請求項2の発明によれば、基板から出射された光は、出射面を通ってレンズに入射し、レンズの凸面で反射されずに取り出されるので、光取り出し効率が向上する。また、複数の出射面が離間配置されるが、レンズの凸面全体から光が出射され、互いに隣り合うレンズが多角形の辺で接するように隙間無く形成されるので、有機EL発光装置は、光取り出し側の全面が発光するように配光制御される。
【0012】
請求項3の発明によれば、陽極と基板間の界面、及び基板とレンズ間の界面での屈折率差がほぼ無くなり、これら界面での光の反射が防止されるので、光取り出し効率が向上する。
【0013】
請求項4の発明によれば、有機EL層から出射された光は、光拡散層で拡散透過し、拡散透過によって全反射が軽減されて基板に入射し、レンズを通して取り出されるので、光取り出し効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る有機EL発光装置を図1乃至図4を参照して説明する。図1は本実施形態の有機EL発光装置1(以下、発光装置という)の断面構成を示す。なお、図は端面を示し、レンズの断面ハッチングは図示を省いている。図2は発光装置1を光取り出し側から見た構成を示す。発光装置1は、有機EL層2と、これが形成される透光性の基板3とを備える。この発光装置1は、有機EL層2から放出される光を基板3を通して取り出すものである。
【0015】
基板3は、有機EL層2が形成されている面31とは反対側面を光取り出し面32としており、光取り出し面32は、互いに隣接すると共に離間配置された複数の出射面33を有する。これら隣接する出射面33の間に空気プリズム構造としてV字状の溝4が形成され、溝4の形成面は反射面41となる。
【0016】
基板3は、例えば、ガラス又はポリスチレン等の樹脂から成る。基板3の光取り出し面32上の出射面33は、中心に対して点対称な平面形状とされ、略等間隔に離間配置され、V字状の溝4に囲まれている。V字状の溝4は、基板3に切削又は型による成型によって形成され、内部が空気であり、空気と基板3との屈折率差により、基板3内から反射面41に入射する光を反射する。反射面41は、アルミニウム又は銀等の金属を蒸着して反射率を高めてもよい。
【0017】
発光装置1は、基板3の光取り出し面32上に出射面33の各々に対応してレンズ5が形成されている。レンズ5は、例えば、ポリスチレン又はアクリル等の透光性樹脂を成型したものであり、出射面33の中心33Cを含み基板3に直交する任意の断面において、出射面33の周縁の互いに対称な点をそれぞれ第1焦点51a、第2焦点51bとする略半楕円断面形状を有し、発光装置1の光取り出し側が凸形状である。レンズ5の光軸53は、出射面33の中心33Cを通り、基板3の法線方向となる。互いに隣り合うレンズ5は、平面視多角形の辺52で接する。その多角形は、例えば、六角形であり、各レンズ5はハニカム状に接する。また、多角形を矩形とし、各レンズ5が格子状に接するようにしてもよい。なお、レンズ5は、略半楕円断面形状を有するが、多角形の辺52で互いに隣接することから、光軸53から周辺52までの距離が一定ではなく、形成される凸レンズ形状は楕円面ではない。
【0018】
図3は、一つのレンズ5の断面形状を示す。レンズ5に入射する光は、基板3の出射面33から入射する。レンズ5は、出射面33の各々の周縁の互いに対称な点を第1焦点51a及び第2焦点51bとする略半楕円断面形状を有する。このため、レンズ5の凸面54への入射角が最大になる光は、第1焦点51a及び第2焦点51bから凸面54の中心541に入射する光である。このときの入射角を臨界角以下の所定の大きさの角度αに設定することによって、出射面33を通って凸面54に入射する任意の光について、その入射角θは角度α以下となり、凸面54で反射されずに取り出される。上記の角度αの設定は、出射面33及びレンズ5の径等を定めることによって行われる。
【0019】
図4は、有機EL層2の構成を示す。有機EL層2は、陽極22と陰極26との間に少なくとも有機発光層24を有する面発光光源であり、例えば、透明電極から成る陽極22、ホール輸送層23、有機発光層24、電子注入層25、及び陰極26の各層が、この順で積層されて成る。各層の材料は、例えば、陽極22がITO(Indium Tin Oxide)、ホール輸送層23がアリールアミン類、有機発光層24がアルミ錯体(Alq)、電子注入層25がアルカリ金属でドーピングした有機層又はリチウム錯体、陰極26がアルミニウム等の金属である。陽極22と陰極26間に通電することによって、有機発光層24から光が放出される。有機発光層24から放出された光は、透明な陽極22を通して取り出される。金属から成る陰極26は、有機発光層24からの光を光取り出し側に反射する。有機EL層2は、さらに他の層を有してもよく、例えば、陽極22とホール輸送層23との間に、銅フタロシアニン等から成るホール注入層を設けてもよいし、有機発光層24と電子注入層25との間にオキサジアゾール類等から成る電子輸送層を設けてもよい。有機EL層2のこれら各層は、例えば、真空蒸着法によって基板3の面31に陽極22から順に成膜される。
【0020】
ここで、基板3とレンズ5の屈折率は、陽極22の屈折率と略同じことが望ましい。陽極22のITOの屈折率は約2であり、基板3は、例えば、屈折率が約2の高屈折率のガラスから形成され、レンズ5は、例えば、酸化モリブデン等を添加して屈折率を高めた樹脂から成型される。また、基板3とレンズ5は、屈折率を高めた樹脂等が一体成型されたものであってもよい。これにより、陽極22と基板3間の界面、及び基板3とレンズ5間の界面での屈折率差がほぼ無くなり、これら界面での光の反射が防止される。
【0021】
再び図1を参照して、上記のように構成された発光装置1の光路について説明する。有機EL層2から放出されて基板3に入射した光のうち、V字状の溝4に囲まれた出射面33に向かう光L1は、出射面33から出射される。基板3に入射した光のうち、V字状の溝4に向かう光L2は、反射面41によって、ほとんどが出射面33に向けて反射され、出射面33から出射される。出射面33から出射された光L1、L2は、出射面33からレンズ5に入射し、略半楕円断面形状の凸面54で反射されずに取り出される。
【0022】
このように、基板3の光取り出し面32から取り出される光は、基板3上に離間して配置された出射面33を通ってレンズ5に入射するため、レンズ5の凸面54で反射されずに取り出される。これにより、上記のような出射面33が設けられていない場合に比べて、光取り出し効率が向上する。また、隣接する出射面33の間に形成されたV字状の溝形成面に反射面41があることによって、基板3内に入射した光の多くが出射面33に向けられレンズ5を通して取り出されるので、光取り出し効率が向上する。また、複数の出射面33が離間配置されるが、レンズ5の凸面54全体から光が出射され、互いに隣り合うレンズ5が多角形の辺52で接するように隙間無く形成されるので、発光装置1は、光取り出し側の全面が発光するように配光制御される。なお、本実施形態の発光装置1は、レンズ5を備えるが、レンズ5を備えない場合であっても、面発光光源である有機EL層2から基板3に入射した光の多くが、基板3上に離間配置された出射面33から出射されるので、出射面33が擬似的な点光源となる。この点光源は、面発光光源と比べてレンズ等による配光制御が容易であり、発光装置の光取り出し効率の向上が容易となる。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る発光装置を図5を参照して説明する。図5は本実施形態の発光装置11の構成を示す。本実施形態の発光装置11は、第1の実施形態と同様の構成に加え、基板3の有機EL層2が形成されている面31に、光を拡散透過する光拡散層6を備える。光拡散層6は、例えば、基板の面31にショットブラスト又はエッチング等によって形成された微差な凹凸である。光拡散層6の上に、有機EL層2が蒸着等によって形成される。
【0024】
本実施形態によれば、有機EL層2から出射された光は、光拡散層6で拡散透過し、拡散透過によって全反射が軽減されて基板3に入射し、レンズ5を通して取り出されるので、光取り出し効率が向上する。
【0025】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、光拡散層6は、SiO等の微粒子を分散した透明な樹脂を材料としてスピンコーティング等によって形成した層であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機EL発光装置の端面図。
【図2】同装置の平面図。
【図3】同装置におけるレンズの断面形状の説明図。
【図4】同装置における有機EL層の断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る有機EL発光装置の端面図。
【図6】一般的な有機EL素子の断面図。
【符号の説明】
【0027】
1、11 有機EL発光装置
2 有機EL層
22 陽極
24 有機発光層
26 陰極
3 基板
31 光取り出し面
33 出射面
4 V字状の溝
41 反射面
5 レンズ
51a 第1焦点
51b 第2焦点
52 辺
6 光拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板上に形成された有機EL層と、を備え、前記有機EL層からの光が前記基板を通して取り出される有機EL発光装置であって、
前記基板は、前記有機EL層が形成されている面とは反対側面を光取り出し面とし、この光取り出し面に互いに隣接すると共に離間配置された複数の出射面と、これら隣接する出射面の間に形成されたV字状の溝と、この溝形成面に設けられた反射面とを有することを特徴とする有機EL発光装置。
【請求項2】
前記基板の光取り出し面上に前記出射面の各々に対応して形成されたレンズをさらに備え、
前記レンズは、前記出射面の各々の周縁の互いに対称な点を第1焦点及び第2焦点とする略半楕円断面形状を有し、互いに隣合うレンズが平面視多角形の辺で接することを特徴とする請求項1に記載の有機EL発光装置。
【請求項3】
前記有機EL層は、陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に少なくとも有機発光層とを有し、前記陽極が前記基板上に形成されており、
前記基板と前記レンズの屈折率は、前記陽極の屈折率と略同じであることを特徴とする請求項2に記載の有機EL発光装置。
【請求項4】
前記基板の有機EL層が形成されている面に、光を拡散透過する光拡散層が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機EL発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−146955(P2010−146955A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325772(P2008−325772)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】