説明

有機EL表示装置

【課題】多色画像を表示可能とする表示装置であって、駆動電圧の低電圧化及び長寿命化が可能な有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】有機EL表示装置は、アクティブエリア102において、赤色に発光する第1有機EL素子40Rと、第1有機EL素子よりも薄い厚みを有するとともに緑色に発光する第2有機EL素子40Gと、第1有機EL素子よりも厚い厚みを有するとともに青色に発光する第3有機EL素子40Bと、を備えたアレイ基板100と、アクティブエリアに対向するように配置され第2有機EL素子からの緑色光よりも第3有機EL素子からの青色光に対する散乱強度が高く、且つ、第2有機EL素子からの緑色光よりも第1有機EL素子からの赤色光に対する散乱強度が低い散乱層DFと、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表される平面表示装置は、CRTディスプレイと比較して、薄型、軽量、低消費電力であるといった特徴を活かして、需要が急速に伸びてきており、携帯情報端末機器を始め、大型テレビ等の種々のディスプレイに利用されるようになってきている。そして、近年では、液晶表示装置に比べて、自発光型で、高速応答、広視野角、高コントラストの特徴を有し、かつ、更に薄型軽量化が可能な有機エレクトロルミネセンス(EL)素子を備えた有機EL表示装置の開発が盛んに行われている。
【0003】
フルカラー表示タイプの有機EL表示装置は、赤(R)、緑(G)、青(B)にそれぞれ発光する有機EL素子を備えている。互いに異なる色に発光する有機EL素子は、異なる発光スペクトルで発光する発光材料を含む発光層を備えている。
【0004】
特許文献1によれば、各有機EL素子に同程度の大きさの電流を供給して同じ輝度で発光させるために、有機EL素子の素子寿命に応じて発光面積を定めることが提案されている。
【特許文献1】特開2007−323966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各有機EL素子の発光効率(発光層に供給される電流に対する発光輝度の割合)は、発光材料の特性など種々の因子によって異なる。特に、青色に発光する有機EL素子については、他の色の有機EL素子と比較して発光効率が低い。このため、所望のホワイトバランスを実現するためには、青味の不足を補うために、青色に発光する有機EL素子に大電流を供給して高輝度化する必要がある。
【0006】
これは、有機EL素子を駆動するのに必要な駆動電圧の高電圧化を招くだけでなく、特に、青色に発光する有機EL素子の寿命を縮めてしまうおそれがある。このため、青色に発光する有機EL素子の発光効率の改善が望まれている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、多色画像を表示可能とする表示装置であって、駆動電圧の低電圧化及び長寿命化が可能な有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
アクティブエリアにおいて、赤色に発光する第1有機EL素子と、前記第1有機EL素子よりも薄い厚みを有するとともに緑色に発光する第2有機EL素子と、前記第1有機EL素子よりも厚い厚みを有するとともに青色に発光する第3有機EL素子と、を備えたアレイ基板と、
前記アクティブエリアに対向するように配置され、前記第2有機EL素子からの緑色光よりも前記第3有機EL素子からの青色光に対する散乱強度が高く、且つ、前記第2有機EL素子からの緑色光よりも前記第1有機EL素子からの赤色光に対する散乱強度が低い散乱層と、
を備えたことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多色画像を表示可能とする表示装置であって、駆動電圧の低電圧化及び長寿命化が可能な有機EL表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1の表示装置は、自己発光型表示装置の一例であるアクティブマトリクス型駆動方式を採用した上面発光型の有機EL表示装置である。この有機EL表示装置は、表示パネル1を備えており、さらに各種ドライバなどを備えて構成されても良い。
【0012】
表示パネル1は、図1に示すように、画像を表示するアクティブエリア102を有するアレイ基板100を備えている。このアクティブエリア102は、マトリクス状に配置された複数の画素PXによって構成されている。また、図1では、カラー表示タイプの有機EL表示装置を例に示しており、アクティブエリア102は、複数種類の色画素、例えば3原色に対応した赤色画素PXR、緑色画素PXG、及び、青色画素PXBによって構成されている。
【0013】
アレイ基板100の少なくともアクティブエリア102は、封止基板200によって封止されている。封止基板200は、光透過性を有する絶縁性の基板、たとえばガラス基板によって構成されている。この封止基板200のアレイ基板100と対向する内面は、平坦に形成されていても良いし、少なくともアクティブエリア102との対向面が窪み、周縁部より肉薄に形成されても良い。
【0014】
これらのアレイ基板100と封止基板200とは、それぞれの周縁部がアクティブエリア102を囲むように枠状に配置されたシール部材300によって接合されている。このシール部材300は、感光性樹脂や熱硬化性樹脂などの樹脂材料や、フリットガラス(低融点ガラス)などである。
【0015】
各画素PX(R、G、B)は、画素回路10及びこの画素回路10によって駆動制御される表示素子40を備えている。図1に示した画素回路10は、一例であって、他の構成の画素回路を適用しても良いことは言うまでもない。
【0016】
図1に示した例では、画素回路10は、駆動トランジスタDRT、各種スイッチ(第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3)、蓄積容量素子Csなどを備えて構成されている。
【0017】
駆動トランジスタDRTは、高電位電源線P1と第3スイッチSW3との間に接続されている。表示素子40は、第3スイッチSW3と低電位電源線P2との間に接続されている。第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のゲート電極は、第1ゲート線GL1に接続されている。第3スイッチSW3のゲート電極は、第2ゲート線GL2に接続されている。第1スイッチSW1のソース電極は、映像信号線SLに接続されている。
【0018】
これらの駆動トランジスタDRT、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、及び、第3スイッチSW3は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)によって構成され、その半導体層は、アモルファスシリコンやポリシリコンなどによって形成可能であり、ここではポリシリコンによって形成されている。
【0019】
表示素子40は、自発光性の表示素子である有機EL素子40(R、G、B)によって構成されている。すなわち、赤色画素PXRは、主に赤色波長に対応した光を出射する第1有機EL素子40Rを備えている。緑色画素PXGは、主に緑色波長に対応した光を出射する第2有機EL素子40Gを備えている。青色画素PXBは、主に青色波長に対応した光を出射する第3有機EL素子40Bを備えている。
【0020】
各種有機EL素子40(R、G、B)は、基本的に同一構成であり、例えば、図2に示すように、配線基板120上に配置されている。なお、配線基板120は、ガラス基板などの絶縁性の支持基板SUBの上に、アンダーコート層UC、ゲート絶縁膜GI、層間絶縁膜II、保護絶縁膜PSなどの絶縁層を備える他に、各種スイッチSW、駆動トランジスタDRT、蓄積容量素子Cs、各種配線(ゲート線、映像信号線、電源線等)などを備えて構成されている。アンダーコート層UC、ゲート絶縁膜GI、及び、層間絶縁膜IIは、例えば、窒化シリコン(SiN)や酸化シリコン(SiO)などの無機系材料によって形成されている。
【0021】
すなわち、図2に示した例では、アンダーコート層UCの上には、スイッチや駆動トランジスタなどのトランジスタ素子(図1に示した回路構成においては第3スイッチSW3に相当する)20の半導体層SCが配置されている。半導体層SCは、ゲート絶縁膜GIによって覆われている。
【0022】
ゲート絶縁膜GIの上には、トランジスタ素子20のゲート電極20Gや図示しないゲート線などが配置されている。ゲート電極20Gやゲート線は、層間絶縁膜IIによって覆われている。層間絶縁膜IIの上には、トランジスタ素子20のソース電極20S及びドレイン電極20Dや図示しない信号線などが配置されている。
【0023】
これらのソース電極20S及びドレイン電極20Dは、ゲート絶縁膜GI及び層間絶縁膜IIを半導体層SCまで貫通するコンタクトホールを介して半導体層SCにそれぞれコンタクトしている。これらのソース電極20S及びドレイン電極20Dや信号線は、保護絶縁膜PSによって覆われている。
【0024】
この実施の形態においては、有機EL素子40(R、G、B)は、保護絶縁膜PSの上に配置されている。これらの有機EL素子40(R、G、B)は、対向する第1電極PEと第2電極CEとの間に有機層ORGが介在した構成であり、以下に詳細な構造について説明する。
【0025】
すなわち、第1電極PEは、保護絶縁膜PSの上において各画素PXに独立した島状に配置され、陽極として機能する。この第1電極PEは、保護絶縁膜PSをドレイン電極20Dまで貫通するコンタクトホールを介して、ドレイン電極20Dにコンタクトしている。
【0026】
このような第1電極PEは、アルミニウム(Al)や銀(Ag)などの光反射性を有する導電材料を用いて形成された反射層の上に、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)やインジウム・ジンク・オキサイド(IZO)などの光透過性を有する導電材料を用いて形成された透過層を積層した構造であってもよいし、反射層単層、または、透過層単層として構成しても良い。トップエミッション方式の場合、第1電極PEは、反射層を有していることが望ましい。
【0027】
有機層ORGは、第1電極PEの上に配置され、少なくとも発光層を含んでいる。この有機層ORGは、発光層以外の機能層を含むことができ、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、バッファ層などの機能層を含むことができる。有機層ORGにおいては、発光層が有機系材料であればよく、発光層以外の層は無機系材料でも有機系材料でも構わない。発光層は、赤、緑、または青に発光する発光機能を有した有機化合物によって形成される。なお、有機層ORGは、低分子系材料によって形成された薄膜を含んでいても良い。このような薄膜は、マスク蒸着法などの手法により成膜可能である。
【0028】
有機層ORGにおいて、発光層以外の機能層は共通層であってもよい。例えば、図2に示すように、有機層ORGは、全ての赤色画素PXR、緑色画素PXG、及び、青色画素PXBを含むアクティブエリア102に亘って広がった連続膜を少なくとも1層含んでいる。この場合、有機層ORGは、第1電極PEと隔壁PIとを被覆している。
【0029】
第2電極CEは、複数の画素PX、つまり、赤色画素PXR、緑色画素PXG、及び、青色画素PXBで共用する共通電極であって、各画素PXの有機層ORGの上に配置され、陰極として機能する。つまり、第1電極PEの上の有機層ORGは、第2電極CEによって覆われている。このような第2電極CEは、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)との混合物などからなる半透過層、及び、ITOなどの光透過性を有する導電材料を用いて形成された透過層を積層した構造であってもよいし、半透過層単層、または、透過層単層として構成しても良い。トップエミッション方式の場合、第2電極CEは、半透過層を有していることが望ましい。
【0030】
また、アレイ基板100は、アクティブエリア102において、隣接する画素PX(R、G、B)間を分離する隔壁PIを備えている。この隔壁PIは、例えば、各第1電極PEの周縁を覆うように配置され、アクティブエリア102において格子状またはストライプ状に形成されている。これにより、隣接する異なる色の有機EL素子が絶縁される。このような隔壁PIは、例えば樹脂材料をパターニングすることによって形成される。この隔壁PIは、有機層ORGによって覆われている。隔壁PIの上の有機層ORGは、第2電極CEによって覆われている。
【0031】
封止基板200は、アレイ基板100の有機EL素子40(R、G、B)に対向するように配置されている。これらのアレイ基板100と封止基板200とは、アクティブエリア外において、シール部材300により貼り合わせられている。これにより、アレイ基板100と封止基板200との間に密閉空間が形成される。有機EL素子40(R、G、B)は、この密閉空間内に配置され、密封されている。
【0032】
本実施の形態においては、波長が400nm乃至435nmの範囲内にある光の色を紫、波長が435nm乃至480nmの範囲内にある光の色を青、波長が480nm乃至490nmの範囲内にある光の色を緑青、波長が490nm乃至500nmの範囲内にある光の色を青緑、波長が500nm乃至560nmの範囲内にある光の色を緑、波長が560nm乃至580nmの範囲内にある光の色を黄緑、波長が580nm乃至595nmの範囲内にある光の色を黄、波長が595nm乃至610nmの範囲内にある光の色を橙、波長が610nm乃至750nmの範囲内にある光の色を赤、波長が750nm乃至800nmの範囲内にある光の色を赤紫と定義するのが一般的であり、ここでは、主波長が400nm乃至490nmの範囲内にある光の色を青色、主波長が490nmより長く且つ595nmよりも短い光の色を緑色、主波長が595nm乃至800nmの範囲内にある光の色を赤色と定義する。
【0033】
第2有機EL素子40Gは、第1有機EL素子40Rよりも薄い厚みを有している。第3有機EL素子40Bは、第1有機EL素子40Rより厚い厚みを有している。ここでの厚みとは、支持基板SUBの法線に沿った距離に相当する。有機EL素子40(R、G、B)の厚みとは、第1電極PEと第2電極CEとの間の支持基板SUBの法線に沿った距離に相当する。
【0034】
このような構成において、第1有機EL素子40R及び第2有機EL素子40Gは、同次数の干渉効果を利用した素子構成を採用でき、ここでは、例えば0次干渉効果を利用した素子構成を採用している。第3有機EL素子40Bは、第1有機EL素子40R及び第2有機EL素子40Gよりも高次の干渉効果を利用した素子構成を採用でき、ここでは、例えば1次干渉効果を利用した素子構成を採用している。
【0035】
各有機EL素子の基本構成について、その一例を説明する。
【0036】
図3に示すように、配線基板120の上において、第1乃至第3有機EL素子40(R、G、B)の各々は、陽極として機能する第1電極PEを備えている。この第1電極PEは、反射層PERを有している。ここに示した例では、第1電極PEは、2層構造であり、その配線基板120側(つまり有機層ORGと反対側)に反射層PERを有し、その有機層ORG側に透過層PETを有している。
【0037】
反射層PERは、例えば、銀(Ag)によって形成されているが、光反射性を有する他の導電材料によって形成されても良い。透過層PETは、例えば、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)によって形成されているが、光透過性を有する他の導電材料によって形成されても良い。
【0038】
有機EL素子40(R、G、B)の各々の第1電極PEは、同一工程で形成され、実質的に同一の厚みを有している。
【0039】
有機EL素子40(R、G、B)の各々は、第1電極PEの上に有機層ORGを備えている。第3有機EL素子40Bの有機層ORGは、第1有機EL素子40Rの有機層ORGよりも厚く形成されている。また、第1有機EL素子40Rの有機層ORGは、第2有機EL素子40Gの有機層ORGよりも厚く形成されている。
【0040】
すなわち、有機EL素子40(R、G、B)の各々の有機層ORGは、その第1電極PE側から順に積層されたホール輸送層HTL、発光層EM、及び、電子輸送層ETLを有している。
【0041】
第3有機EL素子40Bのホール輸送層HTLは、第1有機EL素子40Rのホール輸送層HTLよりも厚く形成されている。また、第1有機EL素子40R及び第2有機EL素子40Gのホール輸送層HTLは、実質的に同一の厚みを有している。このようなホール輸送層HTLの厚みの差は、アクティブエリア102に亘って広がった(つまり、有機EL素子40(R、G、B)の各々に共通の)連続膜と、第3有機EL素子40Bのみに個別に成膜した薄膜とを組み合わせることによって形成可能である。
【0042】
より具体的には、有機EL素子40(R、G、B)の透過層PETの上には、連続膜である第1ホール輸送層HTL1が配置されている。第3有機EL素子40Bについては、第1ホール輸送層HTL1の上に第2ホール輸送層HTL2が配置されている。さらに、第1有機EL素子40R及び第2有機EL素子40Gの第1ホール輸送層HTL1の上、及び、第3有機EL素子40Bの第2ホール輸送層HTL2の上には、連続膜である第3ホール輸送層HTL3が配置されている。第2ホール輸送層HTL2の厚みは、第3有機EL素子40Bの厚みが第1有機EL素子40Rの厚みより厚くなるように設定されている。
【0043】
このようなホール輸送層HTLは、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)によって形成されているが、他の材料によって形成されても良い。
【0044】
電子輸送層ETLは、アクティブエリア102に亘って広がった連続膜であり、いずれの有機EL素子40(R、G、B)においても実質的に同一の厚みを有している。このような電子輸送層ETLは、例えば、Alqによって形成されているが、他の材料によって形成されても良い。
【0045】
また、有機EL素子40(R、G、B)における有機層ORGの各々は、少なくとも対応する色に発光する発光層EMを有している。すなわち、第1有機EL素子40Rの発光層EMは、少なくとも赤色に発光する第1発光層EM1を有している。第2有機EL素子40Gの発光層EMは、少なくとも緑色に発光する第2発光層EM2を有している。第3有機EL素子40Bの発光層EMは、少なくとも青色に発光する第3発光層EM3を有している。
【0046】
ここでは、特に、第1有機EL素子40Rの発光層EMは、第2有機EL素子40Gの発光層EMよりも厚く形成されている。より具体的には、第2有機EL素子40Gの発光層EMが第2発光層EM2のみによって構成されている一方で、第1有機EL素子40Rの発光層EMは、第1発光層EM1に加えて他の色の発光層、例えば、第3発光層EM3を含んで構成されている。このような発光層EMの厚みの差は、実質的に第1有機EL素子40Rと第2有機EL素子40Gとの厚みの差を形成する。
【0047】
なお、第3有機EL素子40Bの発光層EMは、例えば第3発光層EM3のみによって構成されている。
【0048】
各発光層EMは、いずれもホスト材料を含んでいる。ホスト材料としては、たとえば、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニル−エテン−1−イル)−ジフェニル(略称;BPVBI)が使用可能である。
【0049】
第1発光層EM1は、赤色波長に発光中心を有するルミネセンス性有機化合物又は組成物からなる第1発光材料(ドーパント材料)を含んでいる。この第1発光材料としては、例えば、4−(Dicyanomethylene)−2−methyl−6−(julolidin−4−yl−vinyl)−4H−pyran(略称;DCM2)が使用可能である。
【0050】
第2発光層EM2は、緑色波長に発光中心を有するルミネセンス性有機化合物又は組成物からなる第2発光材料(ドーパント材料)を含んでいる。この第2発光材料としては、例えば、トリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(略称;Alq)が使用可能である。
【0051】
第3発光層EM3は、青色波長に発光中心を有するルミネセンス性有機化合物又は組成物からなる第3発光材料(ドーパント材料)を含んでいる。この第3発光材料としては、例えば、bis[(4,6−difluorophenyl)−pyridinato−N,C2’](picorinate)iridium(III)(略称;FIrpic)が使用可能である。
【0052】
有機EL素子40(R、G、B)の各々は、有機層ORGの上に第2電極CEを備えている。この第2電極CEは、半透過層を有している。ここに示した例では、第2電極CEは、単層構造であり、有機層ORGの電子輸送層ETLの上に積層された半透過層によって構成されている。この第2電極CEは、例えば、マグネシウム・銀によって形成されているが、他の導電材料によって形成されても良い。なお、このような第2電極CEは、表示領域に亘って広がった連続膜であり、いずれの有機EL素子においても実質的に同一の厚みを有している。
【0053】
このような本実施形態によれば、青色に発光する第3有機EL素子40Bの厚みは、赤色に発光する第1有機EL素子40Rの厚みよりも厚く、また、緑色に発光する第2有機EL素子40Gの厚みは、第1有機EL素子40Rの厚みよりも薄い。ここでの有機EL素子40(R、G、B)の厚みとは、実質的に第1電極PEの反射層PERと第2電極(半透過層)CEとの間の支持基板SUBの法線に沿った距離(つまり、透過層PETの膜厚と有機層ORGの膜厚との総和)に相当する。
【0054】
このため、第3有機EL素子40Bは、第1有機EL素子40Rや第2有機EL素子40Gよりも高次の干渉効果を利用した素子構成を適用可能となるため、発光する青色の色純度を向上することができる。したがって、第3有機EL素子40Bの駆動電圧を高電圧化することなく十分な青味成分を提供でき、低輝度で発光させても所望の色を表示することが可能となる。
【0055】
第1乃至第3有機EL素子40(R、G、B)において、同次数の干渉効果を利用した素子構成を採用した場合、第3有機EL素子40Bは最も短い波長の光を発光するため、最も薄く形成される。この場合、第3有機EL素子40Bにおいて、発光層EMと第2電極CEとの距離が比較的短く、励起子が第2電極CEに引き寄せられて発光に寄与しなくなる消光により、発光効率の低下が顕著となる。発光層EMと第2電極CEとの距離を十分に確保しようとすると、同次数の干渉効果を利用するためには、素子全体の厚みが決まっているため、発光層EMと第1電極PEとの間の厚みが薄くなる。この場合、ホール輸送層HTLの厚みが薄くなり、キャリアバランスが劣化する。
【0056】
一方で、本実施形態によれば、第3有機EL素子40Bは、第1有機EL素子40Rや第2有機EL素子40Gよりも高次の干渉効果を利用した素子構成が可能となるため、調整マージンが拡大する。すなわち、このような構成の第3有機EL素子40Bによれば、発光層EMと第2電極CEとの距離を十分に確保して第2電極CEでの消光を抑制することが可能となるとともに、ホール輸送層HTLの厚みも十分に確保してキャリアバランスを改善することが可能となる。このため、第3有機EL素子40Bにおける発光効率を向上することができる。
【0057】
これにより、第3有機EL素子40Bの駆動電圧の低電圧化及び長寿命化が可能となる。
【0058】
また、第1有機EL素子40R及び第2有機EL素子40Gについては、より低次の干渉効果を利用した素子構成を適用可能であるため、素子全体の厚みが薄くなり、駆動電圧の低電圧化が可能となる。したがって、第1乃至第3有機EL素子の全てにおいて、駆動電圧の低電圧化が可能となり、低消費電力化が可能となる。
【0059】
特に、上述した実施の形態では、第1有機EL素子40R及び第2有機EL素子40Gは、0次干渉構成とし、第3有機EL素子40Bは、一次干渉構成としている。これを実現するための一例として、ここでは、第1有機EL素子40Rについては、透過層PETの膜厚及び有機層ORGの膜厚の総和は120nmとしている。また、第2有機EL素子40Gについては、透過層PETの膜厚及び有機層ORGの膜厚の総和は90nmとしている。また、第3有機EL素子40Bについては、透過層PETの膜厚及び有機層ORGの膜厚の総和は180nmとしている。
【0060】
ただし、干渉構成による制約のため、素子からの発光した光の色純度を確保する為には、第1有機EL素子40Rの総膜厚は110nm〜130nmの範囲が好ましい。同様に、第2有機EL素子40Gの総膜厚は、85nm〜105nmの範囲、第3有機EL素子40Bの総膜厚は、182nm〜202nmの範囲が好ましい。
【0061】
このような構成の有機EL表示装置によれば、いずれの有機EL素子40(R、G、B)においても高い発光効率が実現でき、しかも、高い色純度が得られるとともに、白を表示した際の色味付きがなく、また、所望の色の多色画像を表示可能となる。
【0062】
また、ホール輸送層HTLの一部、電子輸送層ETL、及び、第2電極CEは、共通層であって、アクティブエリア102に亘って広がった連続膜であるため、これらを形成するためのファインマスクが不要であり、また、材料の利用効率を向上できる。
【0063】
また、上述した実施の形態においては、いずれも上面発光型を採用している。すなわち、第1乃至第3有機EL素子40(R、G、B)から出射された光を封止基板200側から取り出すため、出射された光をアレイ基板100側から取り出す構造とは異なり、支持基板SUB上に配置される薄膜トランジスタや各種配線による開口率の制限を受けることがない。したがって、画素の小さい高精細のパネルでも有機EL素子の発光面積が十分に確保できるようになり、有機EL素子の通電劣化(寿命)が改善できる。
【0064】
ところで、有機EL素子において、より高次の干渉効果を利用した素子構成を適用するほど素子全体の厚みが厚くなるため、斜め方向から観察した場合には実質的な光路長が長くなり、干渉条件からはずれてしまう。このため、高次の素子構成ほど、同一輝度での視野角が狭くなる傾向にある。
【0065】
本実施形態のように、第1有機EL素子40R及び第2有機EL素子40Gはゼロ次干渉構成とし、第3有機EL素子40Bは一次干渉構成とした場合、第3有機EL素子40Bでの輝度−視野角特性が第1有機EL素子40R及び第2有機EL素子40Gよりも狭くなる。
【0066】
例えば、図4には、有機EL表示装置の法線に対する視角(deg.)と、各有機EL素子40(R、G、B)の規格化輝度との関係の一例が示されている。ゼロ次干渉構成の第1有機EL素子40R及び第2有機EL素子40Gについては、規格化輝度が1/2となる視角、つまり半値角度が55°であるのに対して、一次干渉構成の第3有機EL素子40Bについては、半値角度が44°である。
【0067】
そこで、この有機EL表示装置は、図5に示すように、アクティブエリア102に対向するように配置された散乱層DFを備えている。この散乱層DFは、短波長の光ほど散乱強度が高いレイリー散乱を実現するように構成されている。つまり、この散乱層DFは、第2有機EL素子40Gから出射された緑色光よりも第3有機EL素子40Bから出射された青色光に対する散乱強度が高く、且つ、第2有機EL素子40Gから出射された緑色光よりも第1有機EL素子40Rから出射された赤色光に対する散乱強度が低くなるように構成されている。
【0068】
レイリー散乱を利用した散乱層DFの散乱強度は、波長をλとしたとき、1/λの4乗に比例するため、青色光の散乱の効果が最も強く現れる。例えば、図6には、各波長の光について、散乱層DFを適用する前(B)と、散乱層DFを適用した後(A)とでの輝度−視野角特性の比較結果の一例が示されている。いずれの波長の光についても、散乱層DFを適用することによって同一輝度での視野角が広がることが確認され、さらに、短波長の光ほど、より視野角が広がることが確認された。
【0069】
このように、より高次の干渉構成の第3有機EL素子40Bから出射された青色光を優先的に散乱させることにより、第3有機EL素子40Bでの輝度−視野角特性を拡大することができ、より低次の干渉構成の第1有機EL素子40R及び第2有機EL素子40Gでの輝度−視野角特性との差が低減できる。このため、ホワイトバランスが維持できる視野角の許容範囲を拡大することが可能となる。
【0070】
例えば、図7には、散乱層DFを適用した有機EL表示装置の法線に対する視角(deg.)と、各有機EL素子40(R、G、B)の規格化輝度との関係の一例が示されている。第1有機EL素子40R及び第3有機EL素子40Bについては、半値角度が56°であり、第2有機EL素子40Gについては、半値角度が59°であった。
【0071】
このため、駆動電圧の低電圧化及び長寿命化を可能としつつ、さらに、広視野角化が可能となる。
【0072】
図5に示した例では、散乱層DFは、アクティブエリア102に形成された各画素の有機EL素子40(R、G、B)を含む表示素子部50と、封止基板200との間に配置されている。より具体的には、散乱層DFは、封止基板200の内面200Aに配置され、アクティブエリア102の全体に亘って対向している。すなわち、上面発光型を採用した有機EL表示装置においては、アレイ基板100の各有機EL素子40(R、G、B)から出射された光は、封止基板200を介して観察される。つまり、封止基板200側に表示面が形成される。したがって、散乱層DFは、有機EL素子40(R、G、B)から表示面までの間に配置され、有機EL素子40(R、G、B)からの出射光を適度に散乱させて表示面に案内している。
【0073】
このような散乱層DFは、有機EL表示装置の外方に露出しないため、傷つきにくく、また、外気や外力の影響を受けにくい。このため、散乱層DFの耐久性を向上することが可能となる。
【0074】
なお、散乱層DFは、図8に示すように、封止基板200の外面200Bに配置されても良い。封止基板200の外方に偏光板などの光学素子が配置される場合には、散乱層DFは、封止基板200と光学素子との間に配置されても良いし、封止基板200の外面200Bに配置された光学素子の上に積層されても良い。
【0075】
上述したような散乱層DFは、図9に示すように、母材中に微粒子を分散させた薄膜によって構成しても良いし、また、図10に示すように、その表面に微小な凹凸を形成した薄膜によって構成しても良いし、封止基板200の表面に微小な凹凸を直接形成して構成しても良い。微小な凹凸を有する薄膜の形成手法として、ナノインプリントなどを適用可能である。ガラス基板の表面に凹凸を形成する手法として、サンドブラストなどを適用可能である。
【0076】
図9に示したように、微粒子Mを含む薄膜からなる散乱層DFにおいては、微粒子Mは、例えば、SiO、TiO、ZnOなどの比較的高屈折率の材料によって形成され、また、母材は、例えば、アクリル樹脂や、シリコン樹脂など比較的低屈折率の材料によって形成されている。このような散乱層DFにおいて、微粒子Mの平均粒径Dは、100nm以下であることが望ましい。
【0077】
すなわち、散乱係数の波長(λ)と散乱粒子の大きさに関するサイズパラメータの定義として、α=π*D/λで表記されるものがある。このサイズパラメータαについて、0.4未満の場合、主としてレイリー散乱の領域となる。このため、有機EL表示装置において各有機EL素子40(R、G、B)から出射される光の波長が400nm〜800nmであることを考慮すると、これらの波長範囲において、レイリー散乱を実現するためには、平均粒径Dが100nm以下であれば良い。
【0078】
また、図10に示したように、表面に凹凸を有する散乱層DFにおいては、同様の理由から、凹凸の平均ピッチ(凸部のピーク−ピーク間の平均間隔)は、100nm以下であることが望ましい。
【0079】
以上説明したように、多色画像を表示可能とする表示装置であって、駆動電圧の低電圧化及び長寿命化が可能となるのに加え、広視野角化が可能な有機EL表示装置を提供できる。
【0080】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示した有機EL表示装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【図3】ず3は、図2に示した有機EL表示装置が含む有機EL素子に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、散乱層を備えていない有機EL表示装置における色毎の視角−規格化輝度の一例を示す図である。
【図5】図5は、散乱層を備えた有機EL表示装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【図6】図6は、散乱層を備えていない場合と、散乱層を備えた場合とでの色毎の視角−規格化輝度を比較した一例を示す図である。
【図7】図7は、散乱層を備えた有機EL表示装置における色毎の視角−規格化輝度の一例を示す図である。
【図8】図8は、散乱層を備えた有機EL表示装置の他の構成の一例を模式的に示す図である。
【図9】図9は、本実施形態に適用可能な散乱層の構成の一例を模式的に示す図である。
【図10】図10は、本実施形態に適用可能な散乱層の他の構成の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1…表示パネル 100…アレイ基板 200…封止基板
PXR…赤色画素 PXG…緑色画素 PXB…青色画素
40R…第1有機EL素子 40G…第2有機EL素子 40B…第3有機EL素子
PE…第1電極(PER…反射層 PET…透過層)
ORG…有機層(ETL…電子輸送層 HTL…第1ホール輸送層 EM…発光層)
CE…第2電極
DF…散乱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブエリアにおいて、赤色に発光する第1有機EL素子と、前記第1有機EL素子よりも薄い厚みを有するとともに緑色に発光する第2有機EL素子と、前記第1有機EL素子よりも厚い厚みを有するとともに青色に発光する第3有機EL素子と、を備えたアレイ基板と、
前記アクティブエリアに対向するように配置され、前記第2有機EL素子からの緑色光よりも前記第3有機EL素子からの青色光に対する散乱強度が高く、且つ、前記第2有機EL素子からの緑色光よりも前記第1有機EL素子からの赤色光に対する散乱強度が低い散乱層と、
を備えたことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
さらに、前記アレイ基板の前記第1乃至第3有機EL素子に対向するように配置された封止基板を備え、
前記散乱層は、前記第1乃至第3有機EL素子と前記封止基板との間に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記散乱層は、平均粒径が100nm以下の粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記散乱層は、表面に100μm以下の平均ピッチで形成された凹凸を有することを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記第1乃至第3有機EL素子の各々は、陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極と前記陰極との間に介在した有機層と、を有し、
前記第3有機EL素子の前記有機層は、前記第1有機EL素子の前記有機層よりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記第1乃至第3有機EL素子の各々の前記有機層は、前記陽極側にホール輸送層を有し、
前記第3有機EL素子の前記ホール輸送層は、前記第1有機EL素子の前記ホール輸送層よりも厚いことを特徴とする請求項5に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記第1乃至第3有機EL素子の各々の前記有機層は、発光層を有し、
前記第1有機EL素子の前記発光層は、前記第2有機EL素子の前記発光層よりも厚いことを特徴とする請求項5に記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
前記陽極は前記有機層と反対側に反射層を有するとともに、前記陰極は半透過層を有することを特徴とする請求項5に記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−153116(P2010−153116A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328001(P2008−328001)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】