説明

有機EL表示装置

【課題】高色再現性と高輝度とを両立する有機EL表示装置を提供し、観察方向依存性の小さい有機EL表示装置を提供すること。
【解決手段】マイクロキャビティ構造を有する有機EL発光素子、及び、アルミニウムフタロシアニン顔料及びピグメントグリーン7のうち少なくとも1種を含む緑色顔料と、ピグメントイエロー185及びピグメントイエロー150のうち少なくとも1種を含む黄色顔料と、を含む顔料を用いて構成された緑色画素を含むカラーフィルタを具備する有機EL表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL表示装置に関するものであり、特に有機EL発光素子にカラーフィルタを用いて画像を表示する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子(Organic Electro-Luminescence devices)は、一層または複数層の薄い有機物層を負極と正極とで挟み込んだ構造を有し、前記有機物層に対し、前記正極から正孔が、前記負極から電子が、それぞれ注入される。有機EL素子は、正孔と電子とが有機物層で再結合する際の再結合エネルギーにより、有機物層中の発光材料の発光中心を励起させ、発光材料が励起状態から基底状態に失活する際に放出される光を利用した発光素子である。有機EL素子は、自発光性、高速応答性等に優れるという特徴を持ち、視認性が良好であり、超薄型、軽量であり、また動画表示性に優れることから、フルカラーのフラットパネルディスプレイへの適用が検討されている。特に、正孔輸送性の有機薄膜(正孔輸送層)と電子輸送性の有機薄膜(電子輸送層)とを積層した2層型(積層型)の有機EL素子が報告(非特許文献1参照)されて以来、該有機EL素子は、10V以下の低電圧で発光可能な大面積発光素子として注目されている。
【0003】
一方、有機EL表示装置をフルカラータイプのものとする方法としては、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機EL素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機EL素子による白色発光をカラーフイルタを通して3原色に分ける方法、有機EL素子による発光を蛍光色素層によって赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
【0004】
白色発光の有機EL素子にカラーフィルタを組み合わせる方式の有機EL表示装置において、マイクロキャビティ構造を採用した有機EL素子、すなわち光共振としての機能を有する有機EL素子は、非特許文献2に記載されている。白色に発光する有機EL素子にマイクロキャビティ構造を採用すると、ある波長の光は繰り返し反射干渉によって強さを増す。すなわち、白色に発光する有機EL素子にマイクロキャビティ構造を採用すると、有機EL素子がその外部に放出する光は白色光から着色光へと変化する。
【0005】
また3色発光法においても、外光反射によるディスプレイのコントラストの低下を防止する目的で、さらに各発光色に合わせたカラーフィルタを組み合わせる方法、およびさらにマイクロキャビティ構造を採用する方法も提案されている(特許文献1参照)。マイクロキャビティ構造において強さを増す光の波長は、例えば、マイクロキャビティ構造の光路長を変更することにより変化させることができる。したがって、カラーフィルタの着色層毎にマイクロキャビティ構造の光路長を適宜設定すれば、最大強度の光の波長を、カラーフィルタの着色層が最大透過率を示す波長と一致させることができる。
【0006】
フルカラーディスプレイにおいては、従来より表示装置の色再現性の向上と輝度の向上とは、互いに同時に成立しない関係にあると考えられており、表示装置における主要性能であるこれら2つの性能の両立については長らく改善が望まれていた。マイクロキャビティ構造を採用した有機EL素子をカラーフィルタと組み合わせる技術を用いれば、上記の理由により高色再現性と高輝度を両立することが可能となる。
【0007】
しかしながら、マイクロキャビティ構造の光源を用いた有機EL表示装置には、斜め方向から観察した画像が、法線方向から観察した画像と比較して著しく暗いという問題がある。加えて、画像を法線方向から観察し、次いで、斜め方向から観察すると、色相が変化することも指摘されており、改善が望まれている。この観察方向依存性の改善については、デバイスの構造面からの改善提案がされており(特許文献2参照)、その効果が示されているが、これらの方法はいずれも装置の複雑化を招き、結果として高コスト化につながるものであり、さらに簡便な方法での改善が望まれていた。
【0008】
一方、カラーフィルタ方式の有機EL表示装置には、液晶ディスプレイ用に開発されたカラーフィルタ材料を応用することが可能である。青色(B)、緑色(G)、赤色(R)の3原色の画素の中で、緑色(G)の画素に用いる顔料としてはC.I.ピグメントグリーン36が多用されている。この顔料は微細化によって、透過率を向上させ、高輝度を得る点で有利と考えられていたが、有機EL表示装置における高色再現性と高輝度との両立に対しては、十分なレベルではないことがわかった。このため有機EL表示装置の高色再現性と高輝度とを両立するカラーフィルタの出現が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−86358号公報
【特許文献2】特開2007−27042号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.W.Tang and S.A.VanSlyke,Applied Physics Letters vol.51,913(1987)
【非特許文献2】Kashiwabara et al., "Advanced AM-OLED Display Based on White Emitter with Microcavity Structure", SID 04 DIGEST, pp.1017-1019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、高色再現性と高輝度とを両立する有機EL表示装置を提供することである。また別の課題は観察方向依存性の小さい有機EL表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため鋭意研究開発した結果、マイクロキャビティ構造を有する有機EL発光素子、特に500nm〜600nmの範囲に最大発光強度を有し、マイクロキャビティ構造を有する有機EL発光素子において、特定のグリーン顔料と特定のイエロー顔料を組み合わせた緑色画素を有するカラーフィルタを用いることによって高色再現性と、高輝度と、なお且つ観察方向依存性の小さい有機EL表示装置を実現した。本発明者は以下の手段により解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0013】
<1> マイクロキャビティ構造を有する有機EL発光素子、及び、アルミニウムフタロシアニン顔料及びピグメントグリーン7のうち少なくとも1種を含む緑色顔料と、ピグメントイエロー185及びピグメントイエロー150のうち少なくとも1種を含む黄色顔料と、を含む顔料を用いて構成された緑色画素を含むカラーフィルタを具備する有機EL表示装置。
【0014】
<2> 前記マイクロキャビティ構造を有する有機EL発光素子が、500nm〜600nmの範囲に最大発光強度の波長を有する有機EL発光素子である<1>に記載の有機EL表示装置。
【0015】
<3> 前記アルミニウムフタロシアニン顔料が、下記構造式(I)で表される顔料である<1>または<2>に記載の有機EL表示装置。
【0016】
【化1】

【0017】
構造式(I)中、Xは、OH、Cl、またはBrを表す。R、R、R、およびRは、各々独立にハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、R、R、およびRがそれぞれ複数存在する場合は、互いに同一でも異なっていてもよい。a、b、c、およびdはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。
【0018】
<4> 緑色画素に用いる顔料の平均一次粒子サイズが25nm〜80nmの範囲である<1>から<3>のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
<5> 緑色画素に用いる顔料の平均一次粒子サイズが35nm〜75nmの範囲である<1>から<3>のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
<6> 前記緑色顔料と、前記黄色顔料との比率が、緑色顔料100質量部に対し、黄色顔料が2〜2000質量部である<1>から<5>のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【0019】
従来、高色再現性と高輝度との実現には緑色顔料として、20nm程度以下に微細化した臭塩素化した銅フタロシアニン顔料であるC.I.ピグメントグリーン36が開発され、用いられてきた。これに対し、本発明では、アルミニウムフタロシアニン顔料またはC.I.ピグメントグリーン7を含む緑色顔料と、ピグメントイエロー185またはピグメントイエロー150を含む黄色顔料とを組み合わせて用いることによって、カラーフィルタの緑色画素の分光を適正化するとともに、特に観察方向依存性の小さい緑色画素を得ることができた。
【0020】
この理由は定かではないが、アルミニウムフタロシアニン顔料またはC.I.ピグメントグリーン7の結晶性による偏向抑止、あるいは顔料表面での光の反射率が小さいことが理由であると推定される。また、ピグメントイエロー185またはピグメントイエロー150の黄色顔料を、アルミニウムフタロシアニン顔料またはC.I.ピグメントグリーン7の緑色顔料と組み合わせると双方の分散性が向上するため、緑色顔料が黄色顔料の分散剤としての機能を発揮しているのではないかと考えられ、特定の緑色顔料と特定の黄色顔料とを組み合わせたときに予期せざる効果が発揮されたものと考えられる。
特に本発明の緑色顔料及び黄色顔料の粒子サイズを比較的大きく設定することによって、驚くべきことに、輝度を低下させることなく観察方向依存性が小さくなることが見出された。これは、顔料の凝集による光の散乱が適度に調節されているためではないかと推定される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高色再現性と高輝度とを両立する有機EL表示装置を提供することができ、また観察方向依存性の小さい有機EL表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態である有機EL発光素子を用いた表示装置の断面構造である。
【図2】図2は、有機EL発光素子10R,10Bにおける有機層13の構成を拡大して表すものである。
【図3】図3は、有機EL発光素子10Gにおける有機層13の構成を拡大して表すものである。
【図4】有機EL表示装置の製造方法を工程順に表すものである。 (A)駆動パネル (B)封止パネル
【図5】有機EL表示装置の製造方法を工程順に断面構造で表すものである。 (A)接着層付与後の断面構造 (B)駆動パネルと封止パネルとの貼り合わせ後の断面構造
【図6】第3の実施の形態に係る有機EL発光素子を用いた表示装置の例の断面構造を表すものである。
【図7】実施例における有機EL発光素子10R,10G,10Bの光源の分光スペクトルである。 実線:緑色有機EL発光素子の光源スペクトル 点線:赤色有機EL発光素子の光源スペクトル 一点鎖線:青色有機EL発光素子の光源スペクトル 縦軸:発光強度(相対値) 横軸:波長
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の有機EL表示装置について詳細に説明する。
<マイクロキャビティ構造を有する有機EL表示装置>
本発明に用いる、マイクロキャビティ構造を有する有機EL表示装置は特許第3944906号明細書を参照し、作製することが可能である。以下図を用いて説明する。
【0024】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子である有機EL発光素子を用いた有機EL表示装置の断面構造を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられるものであり、例えば、駆動パネル10と封止パネル20とが対向配置され、接着層30により全面が貼り合わされている。駆動パネル10は、ガラスなどの絶縁材料よりなる駆動用基板11の上に、赤色の光を発生する有機EL発光素子10Rと、緑色の光を発生する有機EL発光素子10Gと、青色の光を発生する有機EL発光素子10Bとが、順に、全体としてマトリクス状に設けられているものである。
【0025】
この有機EL発光素子10R,10G,10Bは、例えば、駆動用基板11の側から、陽極としての第1電極12、有機層13、および陰極としての第2電極14がこの順に積層されたものであり、第2電極14の上には、必要に応じて保護膜15が形成されている。
【0026】
第1電極12は、反射層としての機能も兼ねており、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。例えば、第1電極12として金属などの消衰係数の高い材料を用いる場合には、できるだけ実部屈折率の低い材料を用いて、積層方向の厚み(以下、単に「厚み」と言う)を光が透過しない程度、具体的には概ね100nm以上とすれば、反射率を高くすることができるので好ましい。具体的には、第1電極12の厚みを例えば200nm程度とし、白金(Pt)、金(Au)またはタングステン(W)などの仕事関数の高い金属元素の単体または合金により構成することが好ましい。なお、第1電極12には、光学定数に実質的な差を生じない程度に別の元素を添加してもよい。
【0027】
有機層13は、有機EL発光素子10の発光色によって構成が異なっている。図2は、有機EL発光素子10R、10Bにおける有機層13の構成を拡大して表すものである。有機EL発光素子10R、10Bの有機層13は、正孔輸送層13A、発光層13Bおよび電子輸送層13Cが第1電極12の側からこの順に積層された構造を有している。正孔輸送層13Aは、発光層13Bへの正孔注入効率を高めるためのものである。本実施の形態では、正孔輸送層13Aが正孔注入層を兼ねている。発光層13Bは、電流の注入により光を発生するものである。電子輸送層13Cは、発光層13Bへの電子注入効率を高めるためのものである。
【0028】
有機EL発光素子10Rの正孔輸送層13Aは、例えば、厚みが45nm程度であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機EL発光素子10Rの発光層13Bは、例えば、厚みが50nm程度であり、2,5−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)―N−フェニルアミノ]]スチリルベンゼン―1,4−ジカーボニトリル(BSB)により構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層13Cは、例えば、厚みが30nm程度であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3)により構成されている。
【0029】
有機EL発光素子10Bの正孔輸送層13Aは、例えば、厚みが30nm程度であり、α−NPDにより構成されている。有機EL発光素子10Bの発光層13Bは、例えば、厚みが30nm程度であり、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)により構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層13Cは、例えば、厚みが30nm程度であり、Alq3により構成されている。
【0030】
図3は、有機EL発光素子10Gにおける有機層13の構成を拡大して表すものである。有機EL発光素子10Gの有機層13は、正孔輸送層13Aおよび発光層13Bが第1電極12の側からこの順に積層された構造を有している。正孔輸送層13Aは、正孔注入層を兼ねており、発光層13Bは、電子輸送層を兼ねている。
【0031】
有機EL発光素子10Gの正孔輸送層13Aは、例えば、厚みが50nm程度であり、α−NPDにより構成されている。有機EL発光素子10Gの発光層13Bは、例えば、厚みが60nm程度であり、Alq3にクマリン6(C6;Coumarin6)を1体積%混合したものにより構成されている。
【0032】
図1〜図3に示した第2電極14は、半透過性反射層としての機能を兼ねている。すなわち、この有機EL発光素子10R、10G、10Bは、第1電極12の発光層13B側の端面を第1端部P1、第2電極14の発光層13B側の端面を第2端部P2としたとき、有機層13を共振部として、発光層13Bで発生した光を共振させて第2端部P2の側から取り出す共振器構造を有している。このように共振器構造を有するようにすれば、発光層13Bで発生した光が多重干渉を起こし、一種の狭帯域フィルタとして作用することにより、取り出される光のスペクトルの半値幅が減少し、色純度を向上させることができるので好ましい。また、このような共振器構造は、封止パネル20から入射した外光についても多重干渉により減衰させることができ、後述するカラーフィルタ22(図1参照)との組合せにより有機EL発光素子10R、10G、10Bにおける外光の反射率を極めて小さくすることができるので好ましい。
特に本発明の有機EL表示装置においては、500〜600nmの範囲に最大発光強度の波長を持つ光を取り出せる共振構造を有する発光素子を含有することが好ましい。
【0033】
図1に示した保護膜15は、例えば、厚みが500nm以上10000nm以下であり、透明誘電体からなるパッシベーション膜である。保護膜15は、例えば、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)などにより構成されている。
【0034】
封止パネル20は、図1に示したように、駆動パネル10の第2電極14の側に位置しており、接着層30と共に有機EL発光素子10R、10G、10Bを封止する封止用基板21を有している。封止用基板21は、有機EL発光素子10R、10G、10Bで発生した光に対して十分な透光性を有するガラスなどの材料により構成されている。封止用基板21には、例えば、カラーフィルタ22が設けられており、有機EL発光素子10R、10G、10Bで発生した光を取り出すと共に、有機EL発光素子10R、10G、10B並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
【0035】
カラーフィルタ22は、封止用基板21のどちら側の面に設けられてもよいが、駆動パネル10の側に設けられることが好ましい。カラーフィルタ22が表面に露出せず、接着層30により保護することができるからである。カラーフィルタ22は、赤色フィルタ22R、緑色フィルタ22G、および青色フィルタ22Bを有しており、有機EL発光素子10R、10G、および10Bに対応して順に配置されている。
【0036】
赤色フィルタ22R、緑色フィルタ22G、および青色フィルタ22Bは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ22R、緑色フィルタ22G、および青色フィルタ22Bは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、その顔料を選択することにより、目的とする赤、緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0037】
図4および図5は、この表示装置の製造方法を工程順に表すものである。まず、図4(A)に示したように、上述した材料よりなる駆動用基板11の上に、例えば直流スパッタリングにより、上述した材料よりなる第1電極12を上述した厚みで成膜し、例えばリソグラフィ技術を用いて選択的にエッチングし、所定の形状にパターニングする。その後、同じく図4(A)に示したように、例えば蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる正孔輸送層13A、発光層13B、および任意に電子輸送層13Cを含む有機層13、ならびに第2電極14を順次成膜し、図2および図3に示したような有機発光素子10R,10G,10Bを形成する。その後、第2電極14の上に、必要に応じて保護膜15を形成する。これにより、駆動パネル10が形成される。
【0038】
また、図4(B)に示したように、例えば、上述した材料よりなる封止用基板21の上に、赤色フィルタ22Rの材料(本態様では、後述する着色感光性組成物を用いる)をスピンコート法などにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングした後に焼成することにより赤色フィルタ22Rを形成する。続いて、同じく図4(B)に示したように、赤色フィルタ22Rと同様にして、青色フィルタ22B、および緑色フィルタ22Gを順次形成する。これにより、封止パネル20が形成される。
赤色フィルタ、青色フィルタ、および緑色フィルタの形成順序は任意に設定できる。
【0039】
封止パネル20および駆動パネル10を形成したのち、図5(A)に示したように、保護膜15の上に、接着層30を形成する。そののち、図5(B)に示したように、駆動パネル10と封止パネル20とを接着層30を介して貼り合わせる。その際、封止パネル20のうちカラーフィルタ22を形成した側の面を、駆動パネル10と対向させて配置することが好ましい。以上により、駆動パネル10と封止パネル20とが接着され、図1〜図3に示した表示装置が完成する。
【0040】
この表示装置では、第1電極12と第2電極14との間に所定の電圧が印加されると、発光層13R、13G、13Bに電流が注入され、正孔と電子とが再結合することにより、主として発光層13R、13G、13Bの界面において発光が起こる。この光は、第1電極12と第2電極14との間で多重反射し、第2電極14、保護膜15、カラーフィルタ22および封止用基板21を透過して取り出される。このとき、封止用基板21の側から外光が入射するが、共振波長以外の外光はカラーフィルタ22により吸収されると共に、有機EL発光素子10R、10G、10Bにおける多重干渉により減衰される。一方、共振波長の外光は、カラーフィルタ22を透過して有機EL発光素子10R、10G、10Bに入射し、第2電極14および第1電極12において主に反射する。ただし、本実施の形態では、第1端部P1の側(すなわち第1電極12の発光層13R、13G、13B側の端面)と、第2端部P2の側(すなわち第2電極14の発光層13R、13G、13B側の端面)とにおける外光の反射光について、強度と位相とをそれぞれ調整することにより、有機EL発光素子10R、10G、10Bにおける反射率が20%以下となるように構成されているので、封止用基板21を透過して取り出される反射光はごくわずかとなる。したがって、外光反射または外景の映り込みが低減される。
【0041】
実施の形態を挙げて本発明の第一の実施形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
また、上記実施の形態では、有機EL発光素子の構成を具体的に挙げて説明したが、保護膜15などの全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。例えば第1電極12を、誘電体多層膜またはAlなどの反射膜の上部に透明導電膜を積層した2層構造とすることもできる。この場合、この反射膜の発光層側の端面が共振部の端部を構成し、透明導電膜は共振部の一部を構成することになる。
【0042】
上記実施の形態では、第2電極14が半透過性反射層により構成されている場合について説明したが、さらにまた、第2電極14は、半透過性反射層と透明電極とが第1電極の側から順に積層された構造としてもよい。この透明電極は、半透過性反射層の電気抵抗を下げるためのものであり、発光層で発生した光に対して十分な透光性を有する導電性材料により構成されている。透明電極を構成する材料としては、例えば、ITOまたはインジウムと亜鉛(Zn)と酸素とを含む化合物が好ましい。室温で成膜しても良好な導電性を得ることができるからである。透明電極の厚みは、例えば30nm以上1000nm以下とすることができる。また、この場合、半透過性反射層を一方の端部とし、透明電極を挟んだ位置に他方の端部を設け、透明電極を共振部とする共振器構造を形成するようにしてもよい。さらに、そのような共振器構造を設ける場合には、保護膜15を、透明電極を構成する材料と同程度の屈折率を有する材料により構成すれば、保護膜15を共振部の一部とすることができ、好ましい。
【0043】
さらに、本発明は、第2電極14を透明電極とし、この透明電極の有機層13と反対側の端面の反射率が大きくなるように構成して、第1電極12の発光層13B側の端面を第1端部、透明電極の有機層と反対側の端面を第2端部とした共振器構造を構成した場合についても適用することができる。例えば、保護膜15または接着層30との境界面での反射率を大きくして、この境界面を第2端部としてもよい。また、保護膜15および接着層30を設けずに、透明電極を大気層に接触させ、透明電極と大気層との境界面の反射率を大きくして、この境界面を第2端部とするようにしてもよい。
【0044】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施形態として、駆動用基板(TFT基板)側から光を取り出す場合について述べる。
上記第1の実施の形態においては、駆動用基板11の上に、第1電極12、有機層13および第2電極14を駆動用基板11の側から順に積層し、封止パネル20の側から光を取り出すようにした場合について説明したが、第2の実施の形態として、積層順序を逆にして、駆動用基板11の上に、第2電極14、有機層13および第1電極12を駆動用基板11の側から順に積層し、駆動用基板11の側から光を取り出すようにすることもできる。
【0045】
また、例えば、上記第1の実施の形態では、第1電極12を陽極、第2電極14を陰極とする場合について説明したが、第2の実施の形態として、陽極および陰極を逆にして、第1電極12を陰極、第2電極14を陽極としてもよい。この場合、第2電極14の材料としては、仕事関数が高い金、銀、白金、銅などの単体または合金が好適であるが、正孔注入用薄膜層を設けることによって他の材料を用いることもできる。また、第2電極14には、光学定数に実質的な差を生じない程度に別の元素を添加してもよい。
【0046】
〔第3の実施の形態〕
次に、白色の有機EL発光素子を用いた場合を説明する。
第1の実施の形態は、赤色、緑色、青色の各色に発光する有機EL発光素子を用いるものであるが、白色の有機EL発光素子に対してマイクロキャビティ構造を採用する形態をとることも可能である。この方法は有機EL発光層が1種類である点が赤色、緑色、青色の3色を塗り分ける方式に対して工程が簡略化できる点で好ましい。図6は、この第3の実施の形態に係る発光素子である有機EL発光素子を用いた表示装置の例について断面構造を表すものである。
【0047】
有機層13Wは白色に発光する層である。駆動用基板11の上に第1電極を形成した後、図6の例のように透明導電膜16を設け、その上に白色発光層である有機層13Wを設けることも出来る。第1の実施の形態と同様に、第2電極14が半透過性反射層としての機能を兼ね、第1電極12の発光層側の端面から第2電極14の発光層側の端面に至る部分で、13Wおよび16を共振部として、発光層で発生した光を共振させて第2端部P2の側から取り出す共振器構造とすることができる。このような共振器構造を有するようにすれば、発光層で発生した光が多重干渉を起こし、一種の狭帯域フィルタとして作用することにより、取り出される光のスペクトルの半値幅が減少し、色純度を向上させることができる。その際、図6の例では透明導電膜16の膜厚を変えることで、赤色、緑色、青色の各色のフィルタに適した色の光を取り出すことが可能となる。
その他の部分については図1と同じ機能を有している。
【0048】
次に本発明のマイクロキャビティ構造を有する有機EL表示装置に備えられるカラーフィルタについて詳述する。
本発明の有機EL表示装置は、緑色画素、赤色画素、および青色画素を具備したカラーフィルタを備える。必要によって、遮光、反射防止などのために、さらにブラックマトリクスを備えたカラーフィルタであってもよい。
各着色画素は、それぞれの色に着色された着色組成物を用いて、フォトリソ法、インクジェットによる印刷法、反転印刷法、あるいはナノインプリント法など各種のパターン成形方法を使用して形成することができる。フォトリソ法を使用することが、生産性、パターンの安定成形性などの点で好ましい。
以下本発明の好ましい形態であるフォトリソ法による着色パターン成形について説明する。
【0049】
〔着色感光性組成物〕
フォトリソ法では、着色感光性組成物を用いる。着色感光性組成物は、着色剤として顔料、染料等の着色剤、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、および光重合開始剤等から構成される。着色剤としては顔料を用いることが耐光性、耐熱性に優れる観点から好ましい。本発明においては、緑色画素に用いる顔料として、アルミニウムフタロシアニン顔料及びピグメントグリーン7のうち1種以上からなる緑色顔料と、ピグメントイエロー185及びピグメントイエロー150のうち1種以上からなる黄色顔料とを含むものである。
【0050】
アルミニウムフタロシアニン顔料としては、下記構造式(I)で表される化合物が好ましい。
【0051】
【化2】

【0052】
構造式(I)中、Xは、OH、Cl、またはBrを表す。R、R、R、およびRは、各々独立にハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、R、R、およびRがそれぞれ複数存在する場合は、互いに同一でも異なっていてもよい。a、b、c、およびdはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。
【0053】
前記アルミニウムフタロシアニン顔料としては、構造式(I)で表される化合物が好適である。また、この化合物の2分子が結合した二量体であってもよい。
【0054】
上記構造式(I)で表されるアルミニウムフタロシアニン顔料の中でも、下記構造式(II)で表される化合物が特に好ましい。また、この化合物の2分子がOH基の酸素原子を介して結合された二量体も好適である。
【0055】
【化3】

【0056】
本発明では緑色画素の着色剤として、上記のアルミニウムフタロシアニン顔料及びピグメントグリーン7のうち少なくとも1種を含む緑色顔料と、ピグメントイエロー185及びピグメントイエロー150のうち少なくとも1種を含む黄色顔料と、を併用することにより、顔料の総量を低減することが可能であり、薄膜とした場合でも高い色度、色濃度が得られ、色純度が高く良好な色再現性を得ることができる。
【0057】
本発明では緑色顔料として、前記アルミニウムフタロシアニン顔料もしくはC.I.ピグメントグリーン7のいずれか1種以上を用いるが、さらに従来公知の緑色顔料を併用してもよい。この場合の緑色顔料は無機または有機顔料のいずれでもよく、例えば、C.I.ピグメントグリーン36,37などのハロゲン化フタロシアニン系顔料等が挙げられる。これらは一種のみならず二種以上を併用してもよい。ただし、これらの顔料の使用量としては、アルミニウムフタロシアニン顔料とC.I.ピグメントグリーン7との総使用量の60質量%以下となる範囲において使用可能である。
【0058】
また黄色顔料として、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー150のいずれか1種以上を用いるが、さらに従来公知の黄色顔料を併用してもよい。この場合の黄色顔料は無機または有機顔料のいずれでもよく、例えば、C.I.ピグメントイエロー83、138、139、などの顔料等が挙げられる。これらは一種のみならず二種以上を併用してもよい。ただし、これらの顔料の使用量としては、C.I.ピグメントイエロー185、およびC.I.ピグメントイエロー150の総使用量の80質量%以下となる範囲において使用可能である。
【0059】
本発明の緑色画素に用いるアルミニウムフタロシアニン顔料、ピグメントグリーン7のいずれか1種以上から成る緑色顔料と、ピグメントイエロー185、ピグメントイエロー150のいずれか1種以上から成る黄色顔料との比率は、緑色顔料100質量部に対し、黄色顔料2〜2000質量部の範囲が好ましく、更に好ましくは5〜1000質量部の範囲である。この範囲であると色再現性と透過率が好ましい。
【0060】
本発明においては、上記顔料及び上記以外に添加可能な他の顔料は、あらかじめ種々の樹脂で処理しておくことが好ましい。すなわち、顔料は一般に合成後、種々の方法で乾燥が行なわれる。通常は水媒体から乾燥させて粉末体として供給されるが、水が乾燥するには大きな蒸発潜熱を必要とし、乾燥粉末とするには大きな熱エネルギーを与える。そのため、顔料は一次粒子が集合した凝集体(二次粒子)を形成しているのが普通であり、かかる凝集体を形成している顔料を微粒子に分散するのは容易ではないため、あらかじめ樹脂で処理しておくことが分散容易となり望ましい。ここでの樹脂としては、後述のアルカリ可溶性樹脂を挙げることができる。
【0061】
前記分散処理の方法としては、フラッシング処理やニーダー、エクストルーダー、ボールミル、2本または3本ロールミル等による混練方法がある。このうち、フラッシング処理や2本または3本ロールミルによる混練法が微粒子化に好適である。
前記フラッシング処理は、通常、顔料の水分散液と、水と混和しない溶媒に溶解した樹脂溶液とを混合し、水媒体中から有機媒体中に顔料を抽出し、顔料を樹脂で処理する方法である。この方法によれば、顔料の乾燥を経ることがないので、顔料の凝集を防ぐことができ、分散が容易となる。また、上記の2本または3本ロールミルによる混練は、顔料と樹脂または樹脂の溶液とを混合した後、高いシェア(せん断力)を与えながら、顔料と樹脂を混練することによって顔料表面に樹脂をコーティングすることにより顔料を処理する方法である。この過程で凝集していた顔料粒子はより低次の凝集体から一次粒子にまで分散される。
【0062】
また、顔料は、あらかじめアクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、マレイン酸樹脂、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂等で処理した加工顔料として用いることもできる。この加工顔料の形態としては、樹脂と顔料が均一に分散している粉末、ペースト状、またはペレット状が好ましい。また、樹脂がゲル化した不均一な塊状のものは好ましくない。
【0063】
本発明の緑色画素以外の赤色画素および青色画素に用いる顔料としては、高透過率、高色再現性を考慮して任意に選択できる。
赤色画素に用いる顔料は、赤色顔料単独、赤色顔料と黄色顔料との組合せ、赤色顔料2種以上の組合せ等を任意に選ぶことができる。赤色顔料3種以上の併用も可能である。
【0064】
赤色顔料としては例えば、C.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、52:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、66、67、81:1、81:2、81:3、83、88、90、105、112、119、122、123、144、146、149、150、155、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、184、185、187、188、190、200、202、206、207、208、209、210、216、220、224、226、242、246、254、255、264、270、272、279などである。
【0065】
また黄色顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214
C.I.Pigment Orange 2、5、13、16、17:1、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、71、73などである。
【0066】
青色画素に用いる顔料は、青色顔料単独、青色顔料と紫色顔料との組合せ、青色顔料2種以上の組合せ等を任意に選ぶことができる。青色顔料3種以上の併用も可能である。
【0067】
青色顔料としては例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66、79、C.I.Pigment Blue79のCl置換基をOHに変更したもの、C.I.Pigment Blue80などである。
【0068】
紫色顔料としては例えば、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、32、37、42などである。
上記以外にサブフタロシアニン系顔料も使用できる。
【0069】
本発明においては、必要に応じて、微細でかつ整粒化された顔料を用いることが好ましい。
本発明では、アルミニウムフタロシアニン顔料、ピグメントグリーン7、ピグメントイエロー185、ピグメントイエロー150の顔料の粒子サイズは、平均一次粒子サイズが25nm〜80nmの範囲であることが好ましく、35nm〜75nmの範囲であることがより好ましい。この範囲内であると表示装置のカラーフィルタとして用いる際、高輝度で色再現性が良好であり好ましい。
平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、粒子が凝集していない部分で100個の粒子の球相当径を計測し、その平均値を算出することによって求める。
【0070】
有機顔料の微細化には、有機顔料を、水溶性有機溶剤及び水溶性無機塩類と共に高粘度な液状組成物として、摩砕する工程を含む方法を用いることが好ましい。
本発明においては、有機顔料の微細化には、以下の方法を用いることがより好ましい。
【0071】
即ち、まず、有機顔料、水溶性有機溶剤、及び水溶性無機塩類の混合物(液状組成物)に対し、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸若しくは2軸の押出機等の混練機を用いて、強い剪断力を与えることで、混合物中の有機顔料を摩砕した後、この混合物を水中に投入し、攪拌機等でスラリー状とする。次いで、このスラリーをろ過、水洗し、水溶性有機溶剤及び水溶性無機塩を除去した後、乾燥することで、微細化された上記の顔料を得る方法である。
【0072】
前記の微細化方法に用いられる水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテール、ジエチレングリコールモノエチルエーテール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレンゴリコールモノメチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
また、少量用いることで顔料に吸着して、廃水中に流失しないならば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、アニリン、ピリジン、キノリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘササン、ハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を併用してもよい。また、必要に応じて2種類以上の溶剤を混合して使用してもよい。
これら水溶性有機溶剤の使用量は、上記有機顔料に対して、50質量%〜300質量%の範囲が好ましく、より好ましくは100質量%〜200質量%の範囲である。
【0073】
また、本発明において水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、硫酸ナトリウム等が用いられる。
水溶性無機塩の使用量は、顔料の1倍質量〜50倍質量が好ましく、多い方が摩砕効果はあるが、生産性の点から、より好ましい量は1倍質量〜10倍質量である。
また、水溶性無機塩の溶解を防ぐため、摩砕される液状組成物中の水分が1質量%以下であることが好ましい。
【0074】
本発明において、顔料、水溶性有機溶剤、及び水溶性無機塩を含む液状組成物を摩砕する際には、前述の混練機などの湿式粉砕装置を用いればよい。この湿式粉砕装置の運転条件については特に制限はないが、粉砕メディア(水溶性無機塩)による磨砕を効果的に進行させるため、装置がニーダーの場合の運転条件は、装置内のブレードの回転数は、10rpm〜200rpmが好ましく、また2軸の回転比が相対的に大きいほうが、摩砕効果が大きく好ましい。また、運転時間は、乾式粉砕時間と併せて1時間〜8時間が好ましく、装置の内温は50℃〜150℃が好ましい。また、粉砕メディアである水溶性無機塩は粉砕粒度が5μm〜50μmで粒子径の分布範囲が狭く、且つ、球形であることが好ましい。
上記のような摩砕後の混合物を、80℃の温水と混合することで、水溶性有機溶剤と水溶性無機塩類とを溶解させ、その後、ろ過、水洗し、オーブンで乾燥して、微細な有機顔料を得ることができる。
【0075】
その他微細な有機顔料を得る方法としては、有機顔料を良溶媒に溶解させ有機顔料溶液を作製した後、該溶液を該溶液と相溶性のある有機顔料の貧溶媒と混合して析出させる方法などがある。
【0076】
<顔料分散組成物>
このようにして得られた顔料は、着色感光性組成物を調整する前に、通常、顔料の分散性を向上させるために顔料分散組成物(顔料分散液ともいう)の形態をとる。
顔料の顔料分散組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分(質量)に対して、10〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましい。顔料の含有量が前記範囲内であると、色濃度が充分で優れた色特性を有する着色感光性組成物が得られる。
【0077】
顔料分散組成物は、分散剤の少なくとも1種を含有する。この分散剤の含有により、顔料の分散性を向上させることができる。
分散剤としては、例えば、公知の顔料分散剤や界面活性剤を適宜選択して用いることができる。
【0078】
具体的には、多くの種類の化合物を使用可能であり、例えば、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学工業(株)製)、W001(裕商(株)社製)等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;W004、W005、W017(裕商(株)社製)等のアニオン系界面活性剤;EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450(いずれもチバ・スペシャルテイケミカル社製)、等の高分子分散剤;ソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、24000、26000、28000などの各種ソルスパース分散剤(日本ルーブリゾール(株)社);アデカプルロニックL31,F38,L42,L44,L61,L64,F68,L72,P95,F77、P84、F87、P94,L101,P103,F108、L121、P−123(旭電化(株)製)及びイオネットS−20(三洋化成(株)製)、Disperbyk 101,103,106,108,109,111,112,116,130,140,142,162,163,164,166,167,170,171,174,176,180,182,2000,2001,2050,2150(ビックケミー(株)社製)が挙げられる。その他、アクリル系共重合体など、分子末端もしくは側鎖に極性基を有するオリゴマーもしくはポリマーが挙げられる。
【0079】
分散剤の顔料分散組成物中における含有量としては、既述の顔料の質量に対して、1〜100質量%が好ましく、3〜70質量%がより好ましい。
【0080】
顔料分散組成物には、必要に応じて、顔料誘導体が添加される。分散剤と親和性のある部分を導入した顔料誘導体、あるいは極性基を導入した顔料誘導体を顔料表面に吸着させ、これを分散剤の吸着点として用いることで、顔料を微細な粒子として着色感光性組成物中に分散させ、その再凝集を防止することができ、色再現性が高く、輝度の高い優れたカラーフィルタを構成するのに有効である。
【0081】
顔料誘導体は、具体的には有機顔料を母体骨格とし、側鎖に酸性基や塩基性基、芳香族基を置換基として導入した化合物である。有機顔料は、具体的には、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノリン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンゾイミダゾロン顔料等が挙げられる。一般に、色素と呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系、トリアジン系、キノリン系等の淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。色素誘導体としては、特開平11−49974号公報、特開平11−189732号公報、特開平10−245501号公報、特開2006−265528号公報、特開平8−295810号公報、特開平11−199796号公報、特開2005−234478号公報、特開2003−240938号公報、特開2001−356210号公報等に記載されているものを使用できる。
【0082】
顔料誘導体の顔料分散組成物中における含有量としては、顔料の質量に対して、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。該含有量が前記範囲内であると、顔料分散組組成物の粘度を低く抑えながら、顔料の分散を良好に行なえると共に、分散後の顔料分散安定性を向上させることができ、透過率が高く優れた色特性を有する着色膜を得ることができる。上記の範囲で顔料誘導体を含有する顔料分散液を、カラーフィルタの作製に適用すると、良好な色特性を有する高コントラストなカラーフィルタを得ることができる。
【0083】
分散の方法は、例えば、顔料と分散剤を予め混合してホモジナイザー等で予め分散しておいたものを、ジルコニアビーズ等を用いたビーズ分散機(例えばGETZMANN社製のディスパーマット)等を用いて微分散させることによって行なえる。分散時間としては、3〜6時間程度が好適である。
【0084】
着色感光性組成物は、既述の顔料分散組成物と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含んでなり、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。なお、顔料分散組成物の詳細については既述の通りである。以下、各成分を詳述する。
【0085】
<アルカリ可溶性樹脂>
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。このうち、更に好ましくは、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものである。
【0086】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0087】
上記の線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等である。さらに側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0088】
これらの中では特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。
このほか、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合したもの等も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0089】
上記以外に、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0090】
アルカリ可溶性樹脂の具体的な構成単位については、特に(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が好適である。ここで(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を合わせた総称であり、以下も同様に(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの総称である。
【0091】
前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0092】
また、前記ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR1112、CH=C(R11)(COOR13) 〔ここで、R11は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R12は炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、R13は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕、等を挙げることができる。
【0093】
これら共重合可能な他の単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい共重合可能な他の単量体は、CH=CR1112、CH=C(R11)(COOR13)、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート及びスチレンから選択される少なくとも1種であり、特に好ましくは、CH=CR1112及び/又はCH=C(R11)(COOR13)である。
【0094】
アルカリ可溶性樹脂の着色感光性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは、2〜12質量%であり、特に好ましくは、3〜10質量%である。
【0095】
<光重合性化合物>
本発明の着色感光性組成物は光重合性化合物を含有する。
光重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物が好ましく、中でも4官能以上のアクリレート化合物がより好ましい。
【0096】
前記少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレートを挙げることができる。
更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に着色感光性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用できる。
【0097】
また、特開平10−62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の、前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も用いることができる。
【0098】
中でも、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらのアクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造(ジペンタエリスリトールとアクリロイル基の間を、エチレングリコール、プロピレングリコール残基で連結している構造)が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
また、特公昭48−41708号、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、UA−7200」(新中村化学社製、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)などが挙げられる。
また、酸基を有するエチレン性不飽和化合物類も好適であり、市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のカルボキシル基含有3官能アクリレートであるTO−756、及びカルボキシル基含有5官能アクリレートであるTO−1382などが挙げられる。
【0099】
光重合性化合物は、1種単独で用いる以外に、2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合性化合物の着色感光性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分100部に対して、3〜55部が好ましく、より好ましくは10〜50部である。光重合性化合物の含有量が前記範囲内であると、硬化反応が充分に行なえる。
【0100】
<光重合開始剤>
本発明に用いる着色感光性組成物には、光重合開始剤を含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、特開昭60−3626号公報に記載のハロメチルオキサジアゾール、特公昭59−1281号公報、特開昭53−133428号公報等に記載のハロメチル−s−トリアジン等活性ハロゲン化合物、米国特許第4318791号、欧州特許出願公開第88050号の各明細書に記載のケタール、アセタール、又はベンゾインアルキルエーテル類等の芳香族カルボニル化合物、米国特許第4199420号明細書に記載のベンゾフェノン類等の芳香族ケトン化合物、仏国特許発明第2456741号明細書に記載の(チオ)キサントン類又はアクリジン類化合物、特開平10−62986号公報に記載のクマリン系又はビイミダゾール系の化合物、特開平8−015521号公報等のスルホニウム有機硼素錯体等、等を挙げることができる。
【0101】
前記光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾイル系、キサントン系、活性ハロゲン化合物(トリアジン系、ハロメチルオキサジアゾール系、クマリン系)、アクリジン系、ビイミダゾール系、オキシムエステル系等が好ましい。
【0102】
前記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−トリル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどを好適に挙げることができる。
【0103】
前記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタールなどを好適に挙げることができる。
【0104】
前記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−(ビスジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−(ビスジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、等を好適に挙げることができる。
【0105】
前記ベンゾイン系又はベンゾイル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、メチルo−ベンゾイルベンゾエート等を好適に挙げることができる。
【0106】
前記キサントン系光重合開始剤としては、例えば、ジエチルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、モノイソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、等を好適に挙げることができる。
【0107】
前記活性ハロゲン光重合開始剤(トリアジン系,オキサジアゾール系,クマリン系)としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ビフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メチルビフェニル)−s−トリアジン、p−ヒドロキシエトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、メトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル−s−トリアジン、3,4−ジメトキシスチリル−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−ベンズオキソラン−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(クロロメチル)−s−トリアジン、4−(p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(クロロメチル)−s−トリアジン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(ナフト−1−イル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−スチリル)スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、3−メチル−5−アミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−クロロ−5−ジエチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−ブチル−5−ジメチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン等を好適に挙げることができる。
【0108】
前記アクリジン系光重合開始剤としては、例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン等を好適に挙げることができる。
【0109】
前記ビイミダゾール系光重合開始剤としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体等を好適に挙げることができる。
【0110】
上記以外に、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等が挙げられる。
【0111】
本発明では、以上の光重合開始剤に限定されるものではなく、他の公知のものも使用することができる。例えば、米国特許第2,367,660号明細書に記載のビシナールポリケタルドニル化合物、米国特許第2,367,661号及び第2,367,670号明細書に記載のα−カルボニル化合物、米国特許第2,448,828号明細書に記載のアシロインエーテル、米国特許第2,722,512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3,046,127号及び第2,951,758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3,549,367号明細書に記載のトリアリールイミダゾリルダイマー/p−アミノフェニルケトンの組合せ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール系化合物/トリハロメチール−s−トリアジン系化合物、J.C.S.Perkin II(1979)1653−1660、J.C.S.PerkinII(1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載のオキシムエステル化合物等が挙げられる。
また、これらの光重合開始剤を併用することもできる。
【0112】
光重合開始剤の着色感光性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。光重合開始剤の含有量が前記範囲内であると、重合反応を良好に進行させて強度の良好な膜形成が可能である。
【0113】
−増感色素−
着色感光性組成物において必要に応じて増感色素を添加することが好ましい。この増感色素が吸収しうる波長の露光により上記重合開始剤成分のラジカル発生反応や、それによる重合性化合物の重合反応が促進されるものである。このような増感色素としては、公知の分光増感色素又は染料、又は光を吸収して光重合開始剤と相互作用する染料又は顔料が挙げられる。
【0114】
(分光増感色素又は染料)
本発明に用いられる増感色素として好ましい分光増感色素又は染料は、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体、アントラキノン類、(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、等が挙げられる。
【0115】
より好ましい分光増感色素又は染料の例を以下に例示する。
特開昭62−143044号公報に記載の陽イオン染料;特公昭59−24147号公報記載のキノキサリニウム塩;特開昭64−33104号公報記載の新メチレンブルー化合物;特開昭64−56767号公報記載のアントラキノン類;特開平2−1714号公報記載のベンゾキサンテン染料;特開平2−226148号公報
及び特開平2−226149号公報記載のアクリジン類;特公昭40−28499号公報記載のピリリウム塩類;特公昭46−42363号公報記載のシアニン類;特開平2−63053号記載のベンゾフラン色素;特開平2−85858号公報、特開平2−216154号公報の共役ケトン色素;特開昭57−10605号公報記載の色素;特公平2−30321号公報記載のアゾシンナミリデン誘導体;特開平1−287105号公報記載のシアニン系色素;特開昭62−31844号公報、特開昭62−31848号公報、特開昭62−143043号公報記載のキサンテン系色素;特公昭59−28325号公報記載のアミノスチリルケトン;特開平2−179643号公報記載の色素;特開平2−244050号公報記載のメロシアニン色素;特公昭59−28326号公報記載のメロシアニン色素;特開昭59−89303号公報記載のメロシアニン色素;特開平8−129257号公報記載のメロシアニン色素;特開平8−334897号公報記載のベンゾピラン系色素が挙げられる。
【0116】
(350〜450nmに極大吸収波長を有する色素)
増感色素の他の好ましい態様として、以下の化合物群に属しており、且つ、350〜450nmに極大吸収波長を有する色素が挙げられる。
例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)が挙げられる。
【0117】
<溶剤>
顔料分散組成物及び着色感光性組成物は、一般に上記成分と共に溶剤を用いて好適に調製することができる。
溶剤としては、エステル類、例えば、ギ酸アミル;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチルなどの酢酸アルキルエステル類;プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;ケトン類、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン、等が挙げられる。
【0118】
これらのうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸−n−ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。
溶剤は、単独で用いる以外に2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
<その他成分>
本発明においてカラーフィルタの製造に用いられる着色感光性組成物には、必要に応じて、連鎖移動剤、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、熱重合防止剤、着色剤、光重合開始剤、その他充填剤、上記のアルカリ可溶性樹脂以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの各種添加物を含有することができる。
−連鎖移動剤−
着色硬化性組成物に添加し得る連鎖移動剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどのN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどの複素環を有するメルカプト化合物、および脂肪族多官能メルカプト化合物などが挙げられる。
連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
−フッ素系有機化合物−
フッ素系有機化合物を含有することで、塗布液としたときの液特性(特に流動性)を改善でき、塗布厚の均一性や省液性を改善することができる。すなわち、基板と塗布液との界面張力を低下させて基板への濡れ性が改善され、基板への塗布性が向上するので、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成が可能である点で有効である。
【0121】
フッ素系有機化合物のフッ素含有率は3〜40質量%が好適であり、より好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは7〜25質量%である。フッ素含有率が前記範囲内であると、塗布厚均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中への溶解性も良好である。
【0122】
フッソ系界面活性剤としては、末端、主鎖および側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物を好適に用いることができる。具体的市販品としては、例えばメガファックF142D、同F172、同F173、同F176、同F177、同F183、同780、同781、同R30、同R08、同F−472SF、同BL20、同R−61、同R−90(大日本インキ(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431、Novec FC−4430(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG7105,7000,950,7600、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145、同S−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭ガラス(株)製)、エフトップEF351、同352、同801、同802(JEMCO(株)製)などである。
【0123】
フッ素系有機化合物は特に、塗布膜を薄くしたときの塗布ムラや厚みムラの防止に効果的である。また、更には液切れを起こしやすいスリット塗布においても効果的である。
【0124】
フッ素系有機化合物の添加量は、着色感光性組成物の全質量に対して、0.001〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1.0質量%である。
【0125】
−熱重合開始剤−
着色感光性組成物には、熱重合開始剤を含有させることも有効である。熱重合開始剤としては、例えば、各種のアゾ系化合物、過酸化物系化合物が挙げられ、前記アゾ系化合物としては、アゾビス系化合物を挙げることができ、前記過酸化物系化合物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートなどを挙げることができる。
【0126】
−熱重合成分−
着色感光性組成物には、熱重合成分を含有させることも有効である。必要によっては、該着色感光性組成物により形成される着色膜(硬化膜)の強度を上げるために、エポキシ化合物を添加することができる。エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、ビフェニル型、脂環式エポキシ化合物などのエポキシ環を分子中に2個以上有する化合物が挙げられる。例えばビスフェノールA型としては、エポトートYD−115、YD−118T、YD−127、YD−128、YD−134、YD−8125、YD−7011R、ZX−1059、YDF−8170、YDF−170など(以上東都化成製)、デナコールEX−1101、EX−1102、EX−1103など(以上ナガセケムテック製)、プラクセルGL−61、GL−62、G101、G102(以上ダイセル化学製)の他に、これらの類似のビスフェノールF型、ビスフェノールS型も挙げることができる。またEbecryl 3700、3701、600(以上ダイセル・サイテック製)などのエポキシアクリレートも使用可能である。クレゾールノボラック型としては、エポトートYDPN−638、YDPN−701、YDPN−702、YDPN−703、YDPN−704など(以上東都化成製)、デナコールEM−125など(以上ナガセケムテック製)、ビフェニル型としては3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’ジグリシジルビフェニルなど、脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021、2081、2083、2085、エポリードGT−301、GT−302、GT−401、GT−403、EHPE−3150(以上ダイセル化学製)、サントートST−3000、ST−4000、ST−5080、ST−5100など(以上東都化成製)などを挙げることができる。また1,1,2,2−テトラキス(p−グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(p−グリシジルオキシフェニル)メタン、トリグリシジルトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、o−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、他にアミン型エポキシ樹脂であるエポトートYH−434、YH−434L(東都化成製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の骨格中にダイマー酸を導入することで変性したグリシジルエステル等も使用できる。
【0127】
−界面活性剤−
着色感光性組成物には、塗布性を改良する観点から、各種の界面活性剤を用いて構成することが好ましく、前述のフッソ系界面活性剤の他にノニオン系、カチオン系、アニオン系の各種界面活性剤を使用できる。中でも、前記のフッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0128】
ノニオン系界面活性剤の例として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤が特に好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリル化エーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−プロピレンポリスチリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、エチレンジアミンポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物などのノニオン系界面活性剤があり、これらは花王(株)、日本油脂(株)、竹本油脂(株)、(株)ADEKA、三洋化成(株)などから市販されているものが適宜使用できる。上記の他に前述の分散剤も使用可能である。
【0129】
上記以外に、着色感光性組成物には各種の添加物を添加できる。添加物の具体例としては、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤、ガラス、アルミナ等の充填剤;イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの、アルコール可溶性ナイロン、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから形成されたフェノキシ樹脂などのアルカリ可溶の樹脂などがある。
【0130】
また、未硬化部のアルカリ溶解性を促進し、着色感光性組成物の現像性の更なる向上を図る場合には、有機カルボン酸、好ましくは分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸の添加を行なうことができる。具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
【0131】
−熱重合防止剤−
着色感光性組成物には、以上のほかに更に、熱重合防止剤を加えておくことが好ましく、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール等が有用である。
【0132】
<着色感光性組成物及びこれを用いたカラーフィルタの製造方法>
着色感光性組成物は、既述の顔料分散組成物にアルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、及び光重合開始剤を(好ましくは溶剤と共に)含有させ、これに必要に応じて界面活性剤等の添加剤を混合し、各種の混合機、分散機を使用して混合分散する混合分散工程を経ることによって調製することができる。
なお、混合分散工程は、混練分散とそれに続けて行なう微分散処理からなるのが好ましいが、混練分散を省略することも可能である。
【0133】
着色感光性組成物の製造方法の一例を以下に示す。
顔料と水溶性有機溶剤と水溶性無機塩類との混合物を、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸もしくは2軸の押出機等の混練機を用いて、強い剪断力を与えながら顔料を摩砕した後、この混合物を水中に投入し、攪拌機等でスラリー状とする。次いで、このスラリーをろ過、水洗し、水溶性有機溶剤と水溶性無機塩を除去した後、乾燥し、微細化された顔料が得られる。
【0134】
顔料と分散剤及び/又は顔料誘導体と溶剤とでビーズ分散を行なう。主として縦型もしくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を使用し、0.01mm〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズで微分散処理し、顔料分散組成物を得る。また、顔料を微細化する処理を省くことも可能である。
なお、混練、分散についての詳細は、T.C.Patton著”Paint Flowand Pigment Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等に記載されている。
そして、上記のようにして得られた顔料分散組成物に、光重合性化合物、光重合開始剤、およびアルカリ可溶性樹脂などを添加して、本発明の着色感光性組成物を得る。
【0135】
着色感光性組成物を、直接又は他の層を介して封止用基板等に回転塗布、スリット塗布、流延塗布、ロール塗布、バー塗布等の塗布方法により塗布して、着色感光性の塗布膜を形成し、所定のマスクパターンを介して露光し、露光後に塗布膜の未硬化部を現像液で現像除去することによって、各色(3色あるいは4色)の画素からなるパターン状皮膜を形成し、カラーフィルタとすることができる。
この際、使用する放射線としては、特にg線、h線、i線、j線等の紫外線が好ましい。有機EL表示装置用のカラーフィルタは、プロキシミティ露光機、ミラープロジェクション露光機で主としてh線、i線を使用した露光が好ましい。
【0136】
本発明のカラーフィルタは、既述の着色感光性組成物を用いてガラスなどの基板上に形成されるものであり、着色感光性組成物を直接若しくは他の層を介して基板上に例えばスリット塗布によって塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥させ、パターン露光し、現像液を用いた現像処理を順次行なうことによって好適に作製することができる。これにより、本発明の有機EL表示装置に用いられるカラーフィルタをプロセス上の困難性が少なく、高品質でかつ低コストに作製することができる。
【0137】
前記基板としては、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、プラスチック基板が挙げられる。これらの基板上には、通常、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されていたり、密着促進等のために透明樹脂層が設けられている。プラスチック基板には、その表面にガスバリヤー層及び/又は耐溶剤性層を有していることが好ましい。
また本発明においては、薄膜トランジスター(TFT)が配置された駆動用基板上に着色層をフォトリソ法で形成することもできる。
【0138】
着色感光性組成物を基板に塗布する方法としては特に限定されるものではないが、スリット・アンド・スピン法、スピンレス塗布法等のスリットノズルを用いる方法(以下スリットノズル塗布法という)が好ましい。スリットノズル塗布法において、スリット・アンド・スピン塗布法とスピンレス塗布法は、塗布基板の大きさによって条件は異なるが、例えばスピンレス塗布法により第五世代のガラス基板(1100mm×1250mm)を塗布する場合、スリットノズルからの着色感光性組成物の吐出量は、通常、500〜2000マイクロリットル/秒、好ましくは800〜1500マイクロリットル/秒であり、また塗工速度は、通常、50〜300mm/秒、好ましくは100〜200mm/秒である。着色感光性組成物の固形分としては通常、10〜20%、好ましくは13〜18%である。基板上に本発明の着色感光性組成物による塗膜を形成する場合、該塗膜の厚み(プリベーク処理後)としては、一般に0.3〜5.0μmであり、望ましくは0.5〜5.0μm、最も望ましくは0.8〜4.5μmである。
【0139】
通常は塗布後にプリベーク処理を施す。必要によってプリベーク前に真空処理を施すことができる。真空乾燥の条件は、真空度が、通常、0.1〜1.0torr、好ましくは0.2〜0.5torr程度である。
プリベーク処理は、ホットプレート、オーブン等を用いて50〜140℃の温度範囲で、好ましくは70〜110℃程度であり、10〜300秒の条件にて行なうことができる。高周波処理などを併用しても良い。高周波処理は単独でも使用可能である。
【0140】
現像処理では、露光後の塗布膜の未硬化部を現像液に溶出させ、硬化部分のみを残存させる。現像温度としては、通常20〜30℃であり、現像時間としては20〜90秒である。
現像液としては、未硬化部における着色感光性の着色感光性組成物の塗膜を溶解する一方、硬化部を溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、種々の有機溶剤の組合せやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
【0141】
前記有機溶剤としては、顔料分散組成物又は着色感光性組成物を調製する際に使用できる既述の溶剤が挙げられる。
前記アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように溶解したアルカリ性水溶液が挙げられる。アルカリ性水溶液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。
現像方式は、デイップ方式、シャワー方式、スプレー方式などいずれでもよく、これにスウィング方式、スピン方式、超音波方式などを組み合わせても良い。現像液に触れる前に、被現像面を予め水等で湿しておいて、現像むらを防ぐこともできる。また基板を傾斜させて現像することもできる。
【0142】
現像処理後は、余剰の現像液を洗浄除去するリンス工程を経て、乾燥を施した後、硬化を完全なものとするために、加熱処理(ポストベーク)が施される。
リンス工程は通常は純水で行うが、省液のために、最終洗浄で純水を用い、洗浄はじめは使用済の純水を使用したり、基板を傾斜させて洗浄したり、超音波照射を併用したりできる。
【0143】
リンスの後で水切り、乾燥をした後に、通常約200℃〜250℃の加熱処理を行なう。この加熱処理(ポストベーク)は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行なうことができる。
以上の操作を所望の色相数に合わせて各色毎に順次繰り返し行なうことにより、複数色の着色された硬化膜が形成されてなるカラーフィルタを作製することができる。
本発明の有機EL表示装置は、有機EL発光素子と上記方法で形成されたカラーフィルタを備えることで、高色再現性と高輝度との両立という優れた効果を奏する。
【実施例】
【0144】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0145】
(実施例1)
<顔料分散液の作製>
−グリーンフィルタ用の分散液の調製−
−ピグメントグリーン36の分散液の調製−
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 75部
(共重合組成モル比70/30、重量平均分子量30000、酸価40)
・ピグメントグリーン36 125部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 450部
をサンドミルで24時間分散した。
【0146】
−その他のグリーンフィルタ用の分散液の調製−
ピグメントグリーン36の分散液の調製においてピグメントグリーン36をそれぞれアルミニウムフタロシアニンハイドロオキサイド(構造式(II))、ピグメントグリーン7、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー185の顔料と等質量で置き換える他は同様にして、アルミニウムフタロシアニンハイドロオキサイド、ピグメントグリーン7、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー185の各分散液を調製した。
【0147】
ピグメントイエロー185については下記組成で、以下に示す方法で微細化顔料を作製した後、顔料分散液を調製した。
下記化合物を双腕型ニーダーに仕込み、80℃で30時間混練した。その後、80℃の1%塩酸水溶液100質量部に前記混合物を取り出し、1時間攪拌した後、濾過、湯洗、乾燥、粉砕し、微細化顔料を得た。
・ピグメントイエロー185 40部
・粉砕した塩化ナトリウム 400部
・ジエチレングリコール 80部
【0148】
さらに下記組成をサンドミルで24時間分散することにより、顔料分散組成物を調製した。
・前記微細化顔料 125部
・ポリビニルピロリドン 10部
(和光純薬(株)社製、商品名:K30、分子量40,000)
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 65部
(共重合組成モル比70/30、重量平均分子量30,000、酸価40)
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 450部
【0149】
このピグメントイエロー185の分散液を「PY185a」とする。
PY185aの調製方法において、双腕型ニーダーによる混練時間を15時間、5時間、3時間とそれぞれ変えた以外は同様にして3種の分散液を調製した。混練時間が15時間のものを「PY185b」、5時間のものを「PY185c」、3時間のものを「PY185d」とする。
また、ピグメントイエロー150についても平均1次粒子サイズの異なるa、b、cの3種類のグレードの顔料を準備し、他の顔料と同様に分散した。調製方法はPY185a、b、cと全く同じで、PY185を等質量のPY150に置き換えることによって調製した。
【0150】
−レッドフィルタ、およびブルーフィルタ用の分散液の調製−
ピグメントグリーン36の分散液の調製において、ピグメントグリーン36を、ピグメントレッド254/ピグメントレッド177を6/4(質量比)で混合した顔料、またはピグメントブルー15:6/ピグメントバイオレット23を9:1(質量比)で混合した顔料にそれぞれ置き換えた他はピグメントグリーン36の分散液の調製と同様にして、レッドフィルタ、およびブルーフィルタ用の分散液を調製した。
【0151】
<着色感光性組成物の作製>
着色感光性組成物は、NTSC規格の色再現を目標として、特にグリーンフィルタ用レジストはCIE色度座標の値 x=0.21、y=0.71 を目標値として、使用する光源によって混合比を変えて作製した。
−組成−
・緑色顔料分散液 100部
(緑色顔料分散液として、表1の顔料分散液1と顔料分散液2とを、表1に記載の比率で混合した顔料分散液を100部使用した。)
・アルカリ可溶性樹脂:メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体(=30/70[モル比])の50質量%溶液(重量平均分子量:30,000、溶剤:1−メトキシ−2−プロピルアセテート) 15部
・重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬社製) 6部
・光重合開始剤:2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体 2部
・増感色素:4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン 1部
・水素供与性化合物:2−メルカプトベンゾチアゾール 0.5部
・重合禁止剤:p−メトキシフェノール 0.001部
・フッソ系界面活性剤(商品名:Megafac R08 DIC社製) 0.02部
・溶剤:1−メトキシ−2−プロピルアセテート 128部
【0152】
【表1】

【0153】
表1で、PG36はピグメントグリーン36を、PG7はピグメントグリーン7を、AL−phtalはアルミニウムフタロシアニンハイドロオキサイドを、PY150はピグメントイエロー150を、PY139はピグメントイエロー139の分散液を、それぞれ示し、PY185a、PY185b、PY185cは既述のとおりである。また顔料分散液の欄の( )内は顔料分散液1と顔料分散液2の使用量比を示す。
【0154】
<グリーンフィルタ用 着色感光性組成物の評価>
調製した各着色感光性組成物に対して、透過型電子顕微鏡で撮影した映像より、100個の粒子の球相当径を調べ、その平均をとり、平均1次粒子サイズを算出した。結果は、表2に示した。
【0155】
<有機EL表示装置の作製>
(有機EL表示装置1〜3の作製)
有機EL表示装置1を作製した。ここで上記第1の実施の形態と同様にカラーフィルタ22を封止基板21の駆動パネル10側に作製した。カラーフィルタの作製には上記着色感光性組成物を用いた。有機EL表示装置1のグリーンフィルタとしては表1における水準1の構成を用い、膜厚は、目標色度(x=0.21 y=0.71)を可能な限り達成できるように調整して塗布した。有機EL表示装置1の各色フィルタの膜厚は、レッドフィルタ3.2μm、ブルーフィルタ3.0μm、グリーンフィルタ3.4μmであった。
【0156】
上記第1の実施の形態と同様の構成(ただし、第1電極と有機層の間に正孔注入用薄膜層を有する構成)を有する有機EL発光素子10R、10G、10Bをそれぞれ作製した。その際、第1電極12は、アルミニウムを98質量%含むアルミニウム系合金により構成し、厚みは200nmとした。第1電極12上に、正孔注入用薄膜層を、酸化クロム(II)により構成し、厚みは4nmとした。有機層13は、上記実施の形態で例示した材料により構成し、その合計厚みは、有機EL発光素子10R、10G、10Bいずれも150nmとした。第2電極14は、第1電極12と同様の材料により構成し、厚みは17nmとした。
【0157】
有機EL発光素子10Rの正孔輸送層13Aは、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されて、有機EL発光素子10Rの発光層13Bは、2,5−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)―N−フェニルアミノ]]スチリルベンゼン―1,4−ジカーボニトリル(BSB)により構成され、有機発光素子10Rの電子輸送層13Cは、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3)により構成されている。
有機EL発光素子10Bの正孔輸送層13Aは、α−NPDにより構成され、有機EL発光素子10Bの発光層13Bは、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)により構成され、有機発光素子10Bの電子輸送層13Cは、Alq3により構成されている。
有機EL発光素子10Gの正孔輸送層13Aは、α−NPDにより構成されている。有機EL発光素子10Gの発光層13Bは、Alq3にクマリン6(C6;Coumarin6)を1体積%混合したものにより構成されている。
【0158】
有機EL表示装置1のグリーンフィルタに用いる顔料を表1の水準2、3のように変更する他は、有機EL表示装置1と同様にして、有機EL表示装置2、3を作製した。
【0159】
(有機EL表示装置4〜21の作製)
有機EL表示装置1の作製において有機層13の厚みを、有機EL発光素子10Rでは125nm、有機EL発光素子10Gでは110nm、有機EL発光素子10Bでは93nmとする(マイクロキャビティを形成)以外は有機EL表示装置1と同様にして、有機EL表示装置4を作製した。
【0160】
さらに有機EL表示装置4のグリーンフィルタに用いる顔料を表1の水準5〜21のように変更する他は、有機EL表示装置4の作製と同様にして、有機EL表示装置5〜21を作製した。
【0161】
<有機EL表示装置の評価>
−色度、輝度−
各有機EL表示装置の色度および輝度を、表示装置に対して法線方向に色彩輝度計(商品名:BM−5、トプコン社製)を設置して、色度(x値、y値)、および輝度(Y値)を測定した。結果は表2に示した。
色度:グリーンを表示させたときのCIE色度値を測定した。
輝度:有機EL表示装置1での測定結果を100としたときの各有機EL表示装置の測定結果の比率(%)を、相対輝度として表2に示した。
【0162】
−観察方向依存性−
グレーを表示させたときの色味の、法線方向と、法線方向に対し45度の角度とから見た色味の違いを10人のパネラーにより評価し、5段階評価を行った。その平均点を表2に示した。
(評価基準)
5:全く差は分からない。
4:僅かに差を認識できる。
3:差が認識できる。
2:差が大きい。
1:全く違った色に見える。
【0163】
【表2】

【0164】
表2から、マイクロキャビティ構造をもたない光源を用いた水準1〜3では目標色度に到達しないのに対し、マイクロキャビティ構造を採用した水準4以降では目標色度への到達が可能となり、高い輝度が得られることが分かる。しかしながら、マイクロキャビティ構造を採用したことにより水準5〜7では観察方向依存性が大きくなっていることが分かる。アルミニウムフタロシアニン顔料、ピグメントグリーン7のいずれか1種と、ピグメントイエロー185、ピグメントイエロー150のいずれか1種とで構成され、マイクロキャビティ構造を有する水準8〜13、および水準15〜20はいずれも輝度が高く、しかも観察方向依存性が小さく、高画質の有機EL表示装置を提供していることがわかる。特に顔料の平均一次粒子サイズを25〜80nmとすることによって、高い輝度と観察方向依存性の少ない高画質とを両立した有機EL表示装置を得られることがわかる。
【符号の説明】
【0165】
10:駆動パネル
10R:赤色の光を発生する有機EL発光素子
10G:緑色の光を発生する有機EL発光素子
10B:青色の光を発生する有機EL発光素子
11:駆動用基板
12:第1電極
13:有機層
13A:正孔輸送層
13B:発光層
13C:電子輸送層
13W:白色発光輸送層
14:第2電極
15:保護膜
16:透明導電膜
20:封止パネル
21:封止用基板
22:カラーフィルタ
22R:赤色カラーフィルタ
22G:緑色カラーフィルタ
22B:青色カラーフィルタ
30:接着層
P1:第2端部
P2:第1端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロキャビティ構造を有する有機EL発光素子、及び、アルミニウムフタロシアニン顔料及びピグメントグリーン7のうち少なくとも1種を含む緑色顔料と、ピグメントイエロー185及びピグメントイエロー150のうち少なくとも1種を含む黄色顔料と、を含む顔料を用いて構成された緑色画素を含むカラーフィルタを具備する有機EL表示装置。
【請求項2】
前記マイクロキャビティ構造を有する有機EL発光素子が、500nm〜600nmの範囲に最大発光強度の波長を有する有機EL発光素子である請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記アルミニウムフタロシアニン顔料が、下記構造式(I)で表される顔料である請求項1または請求項2に記載の有機EL表示装置。
【化1】


構造式(I)中、Xは、OH、Cl、またはBrを表す。R、R、R、およびRは、各々独立にハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、R、R、およびRがそれぞれ複数存在する場合は、互いに同一でも異なっていてもよい。a、b、c、およびdはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。
【請求項4】
前記緑色画素に用いる顔料の平均一次粒子サイズが25nm〜80nmの範囲である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記緑色画素に用いる顔料の平均一次粒子サイズが35nm〜75nmの範囲である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記緑色顔料と、前記黄色顔料との比率が、緑色顔料100質量部に対し、黄色顔料が2〜2000質量部である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−67601(P2010−67601A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179177(P2009−179177)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】