有機EL表示装置
【課題】複数の発光層が積層された有機EL表示装置において、画質への悪影響を低減し、消費電力の上昇を抑制する。
【解決手段】第1サブピクセルP1は、対向する電極21、22の間に挟持された第1発光層を含む第1有機化合物層31を有し、第2サブピクセルP2は、対向する電極21、22の間に挟持された第3発光層を含む第3有機化合物層33を有し、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って、第2発光層を含む第2有機化合物層32が積層されると共に、第2有機化合物層32は、第1サブピクセルP1において第1有機化合物層31よりも光取り出し側に配置され、第2有機化合物層32を挟持する対向する電極22、23のうち、光取り出し側の電極23は、第2サブピクセルP2のみに形成される。
【解決手段】第1サブピクセルP1は、対向する電極21、22の間に挟持された第1発光層を含む第1有機化合物層31を有し、第2サブピクセルP2は、対向する電極21、22の間に挟持された第3発光層を含む第3有機化合物層33を有し、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って、第2発光層を含む第2有機化合物層32が積層されると共に、第2有機化合物層32は、第1サブピクセルP1において第1有機化合物層31よりも光取り出し側に配置され、第2有機化合物層32を挟持する対向する電極22、23のうち、光取り出し側の電極23は、第2サブピクセルP2のみに形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間に発光層を含む有機化合物層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を複数備えた有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイとして、自発光型のデバイスである有機EL表示装置が注目され、活発に開発されている。
【0003】
この種の有機EL表示装置において、有機EL素子を積層することで実質的な発光面積を増加させると共に、輝度を落として、素子寿命を向上させる技術がある。例えば、1画素を並列配置した複数のサブピクセルで構成し、各サブピクセルは異なる色に発光する有機化合物層を複数積層して構成される構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、1画素が第1サブピクセルと第2サブピクセルとで構成され、第1サブピクセルに下部電極及び第1発光層を含む第1有機化合物層を、第2サブピクセルに下部電極及び第3発光層を含む第3有機化合物層を形成している。さらに、これらの上に中間電極を介して第2発光層を含む第2有機化合物層を共通に形成し、その上に上部電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−174639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の有機EL表示装置では、2つのサブピクセルについて同一色の発光層を含む有機化合物層を共通に形成している。有機EL素子からの発光光の波長と素子の膜厚とが同等の大きさであるため光の干渉効果を強く受け、所望の発光効率や色度を出すには、適切な光学干渉条件を満たすことが必要である。
【0007】
しかしながら、特許文献1の有機EL表示装置では、2つのサブピクセルにおいて並列配置されている第1有機化合物層と第3有機化合物層との発光色が異なるため、干渉効果を最適化するには有機化合物層の膜厚も異なる。その結果、2つのサブピクセルに亘って共通に形成する第2有機化合物層は、第1有機化合物層に積層されている部分と、第3有機化合物層に積層されている部分とで干渉効果が異なることになる。そのため、第2有機化合物層を発光させると、第1有機化合物層の上に積層されている部分と、第3有機化合物層の上に積層されている部分とで色度が異なり、画質に悪影響を与えるという問題がある。
【0008】
また、各サブピクセルについて2つの有機EL素子を積層しているので、上側の有機EL素子の光取り出し電極に金属電極を用いた場合、当該電極での反射光による干渉効果が下側の有機EL素子からの発光光に重畳する。また、上側の有機EL素子の光取り出し電極に非金属の透明導電膜を用いた場合、空気層と当該電極の界面での反射光による干渉効果が下側の有機EL素子からの発光光に重畳する。したがって、RGBの3つのサブピクセルを並列配置して1画素を構成する場合に比べて、発光効率が低下し、消費電力が上昇するという問題がある。
【0009】
そこで本発明の目的は、複数の発光層が積層された有機EL表示装置において、画質への悪影響を低減でき、消費電力の上昇を抑制できる有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0011】
即ち、本発明に係る有機EL表示装置は、表示領域に複数の画素を備え、各画素に第1サブピクセルと第2サブピクセルとが並列配置された有機EL表示装置であって、
上記第1サブピクセルは、対向する電極の間に挟持された第1発光層を含む第1有機化合物層を有し、
上記第2サブピクセルは、対向する電極の間に挟持された第3発光層を含む第3有機化合物層を有し、
上記第1サブピクセル及び第2サブピクセルに亘って、第2発光層を含む第2有機化合物層が積層されると共に、該第2有機化合物層は、上記第1サブピクセルにおいて上記第1有機化合物層よりも光取り出し側に配置され、
上記第2有機化合物層は対向する電極の間に挟持され、前記第2有機化合物層を挟持する対向する電極のうち、光取り出し側の電極は、上記第2サブピクセルのみに形成されていることを特徴とする有機EL表示装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第2有機化合物層を挟持する対向する2つの電極のうち、光取り出し側の電極を第2サブピクセルのみに形成している。したがって、第2有機化合物層を並列配置された第1サブピクセル及び第2サブピクセルに共通に積層する場合に、色度の異なる発光光が混ざって画質が悪化するのを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の有機EL表示装置の1画素(ピクセル)領域における積層構造を示す模式図である。
【図2】有機EL表示装置の概略を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態の有機EL表示装置における各発光層の発光領域と反射電極との間の光路長を示す概略図である。
【図4】本実施形態の比較形態となる有機EL表示装置の積層構造を示す模式図である。
【図5(a)】本実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図である。
【図5(b)】本実施形態の有機EL表示装置の駆動波形の一例を示す説明図である。
【図6】第2の実施形態の有機EL表示装置の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【図7】第2の実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図である。
【図8】第3の実施形態の有機EL表示装置の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【図9】第4の実施形態の有機EL表示装置の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【図10】第4の実施形態における素子保護層と光学干渉条件を説明する図である。
【図11】第5の実施形態の有機EL表示装置の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【図12】第6の実施形態の有機EL表示装置の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されない。なお、図面では、説明の都合上から、各層を認識可能な大きさで表しており、図面の縮尺は実際とは異なっている。また、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。
以下の説明において、陽極、有機化合物層、陰極からなる構造体を有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子と称する。また、複数の有機EL素子、平坦化層等の下地構造、駆動回路や配線構造の回路素子部、及び封止構造等からなる構造体を有機EL表示装置と称する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1及び図2を参照して、本発明に係る有機EL表示装置の一実施形態を構成する有機EL素子の積層構造について説明する。本実施形態で例示する有機EL表示装置は、基板側とは反対側(透明電極側)から有機EL素子の光を取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置であり、表示装置の利用者は光取り出し側から観察することになる。図1は、第1の実施形態の有機EL表示装置の1画素(ピクセル)領域における積層構造を示す模式図である。図2は有機EL表示装置の概略を示す斜視図であり、画素がマトリクス状に複数配置されて有機EL表示装置の表示領域が構成される。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の有機EL表示装置1の基板10上には、回路素子部11が形成されている。回路素子部11には、スイッチング用薄膜トランジスタ(図示せず)、駆動用薄膜トランジスタ11aと走査信号線、情報信号線、電源線の配線構造(図示せず)が形成されている。回路素子部11上には、平坦化層12が形成されている。平坦化層12には、平坦化層上部に形成される電極と、駆動用薄膜トランジスタ11aとの導通をとるためのコンタクトホール13a、13bが形成されている。
【0017】
そして、本実施形態の有機EL表示装置は、各画素(1画素領域)に2個の副画素(以下、「第1サブピクセルP1、第2サブピクセルP2」と呼称する)が並列配置されている。図示していないが、第1サブピクセルP1と第2サブピクセルP2との間に素子分離膜を形成してもよい。
【0018】
各サブピクセルP1,P2のそれぞれにおいて、平坦化層12の上層側に、発光層を含む有機化合物層が各々対向する電極で挟持されて積層されている。各有機化合物層は、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等を含んでいてもよい。
【0019】
以下、有機化合物層及び電極の構成を製造方法の手順に従って説明する。
【0020】
平坦化層12上には、第1電極21a,21bが形成されている。第1電極21a,21bは、光反射性の部材であることが好ましく、例えばCr、Al、Ag、Au、Pt等の材料を用いることができる。第1電極21a,21bに光反射性の部材を用いることで、光取り出し効率を向上させることができる。また、第1電極21a,21bには、反射機能を光反射性部材によって確保し、電極としての機能を光反射性部材上に形成したITO膜(インジウム錫酸化膜)等の透明導電膜によって確保するような構成も含まれる。この場合の第1電極21a,21bの反射面は上記光反射性部材の表面となる。第1電極21a,21bの成膜手法としては、公知の手法を適用することができる。
【0021】
第1電極21a,21b上には、第1サブピクセルP1に第1発光層を含む第1有機化合物層31が、第2サブピクセルP2に第3発光層を含む第3有機化合物層33がそれぞれ形成されている。第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。発光層を含む各有機化合物層には、公知の材料を用いることができる。第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33を形成後、これらの有機化合物層31,33にコンタクトホール14a,14bを形成する。コンタクトホール14a,14bの形成方法としては、例えばレーザー加工が好ましく、YAGレーザー(SHG、THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用する公知の手法を用いることができる。これらのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33上に所定のパターンで照射することにより所望の位置にコンタクトホール14a,14bを形成することができる。コンタクトホール14a,14bの径は、2μm〜15μm程度が好ましい。
【0022】
第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33上には、第2電極22a,22bがそれぞれパターン形成されている。第2電極22a,22bは、コンタクトホール14a及び13a、コンタクトホール14b及び13aを介して、それぞれ駆動用薄膜トランジスタ11aに接続されている。第2電極22a,22bには、例えばITO(インジウム錫酸化物)、InZnO(インジウム亜鉛酸化物)などの透明導電膜や、Ag、Alなどの金属材料を10nm〜30nm程度の膜厚で形成した半透過膜を用いることができる。第2電極22a,22bのパターン形成方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板1と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0023】
第2電極22a,22b上には、第2発光層を含む第2有機化合物層32が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成されている。第2有機化合物層32の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。また、第2発光層を含む第2有機化合物層32には、公知の材料を用いることができる。
【0024】
第2有機化合物層32上には、第3電極23が第2サブピクセルP2のみに形成されている。図示していないが、第1電極21a,21bと第3電極23は、電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で画素ごとに接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。また、第1電極21a,21b、及び第3電極23は、平坦下層12のコンタクトホール(不図示)、有機化合物層31、32、33のコンタクトホール(不図示)を介して回路素子部と電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。
【0025】
第3電極23は、第2電極と同様に、例えばITO、InZnOなどの透明導電膜、AgやAlなどの金属材料を10nm〜30nm程度の膜厚で形成した半透過膜を用いることができる。第3電極23のパターン形成の方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板1と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0026】
また、第1サブピクセルP1の第2有機化合物層32上には、第3電極23を形成する際に同時に形成された導電膜24が存在している。導電層24は、上述のパターニングによって、第3電極23と電気的に絶縁されている。
【0027】
なお、第2電極22a,22bのように、異なる有機化合物層の間に位置する電極は、導電層/絶縁層/導電層のように二つ以上の導電層の間に絶縁層を有する構成とし、異なる有機化合物層を独立駆動できるよう構成されていてもよい。
【0028】
また、図示していないが、有機EL表示装置の第2有機化合物層32及び第3電極23の上部に、有機EL表示装置と酸素や水分等との接触を防止する目的で、例えば、ガラス基板や封止缶等からなる封止部材を配設してもよい。
【0029】
本実施形態の有機EL表示装置は、カラーディスプレイとして機能できるように、例えば赤(R),緑(G),青(B)に発光する有機化合物層を含んでいる。本実施形態では、例えば第1有機化合物層は緑色発光、第2有機化合物層は赤色発光、第3有機化合物層は青色発光とする。
【0030】
次に、図3を参照して、本実施形態の有機EL表示装置における光干渉の条件式について説明する。図3は、第1の実施形態の有機EL表示装置における各発光層の発光領域と第1電極との間の光路長を示す概略図である。なお、光路長とは、実際の長さに材料の屈折率を乗じたものである。
【0031】
各発光層で発光が生じた場合、その光は構成する各層の屈折率及び吸収係数の違いにより、反射、屈折、透過、吸収等を繰り返して外部に取り出されることになる。その取り出される光量は様々な経路を通ってきた光が互いに干渉し、強め合うことで増大する。干渉の影響を考えた場合には、第1電極の反射率が最も高いため、発光位置から直接光取り出し方向へ向かう光と、第1電極の反射面で反射して取り出し方向へ向かう光との干渉効果が最も大きくなる。
【0032】
このとき、2L/λ+δ/2π=mの関係式(1)を満たすことで、干渉による光取り出し効率の向上が見込まれることになる。なお、上記関係式(1)中、Lは発光層の発光領域と第1電極の反射面との間の光路長、δは第1電極における位相シフト量δ、mは自然数である。
【0033】
上記関係式(1)は、文献Deppe J.Modern.Optics Vol41,No2,p325(1994)において、共振構造でのEL発光スペクトルの干渉強め合いの条件より導出されている。
【0034】
上記関係式(1)により、m=2の場合の第1有機化合物層31からのG発光、第2有機化合物層からのR発光、及び第3有機化合物層33からのB発光に関して、最適な光路長を求めたものが表1である。ここで、反射金属膜での位相シフト量は略πラジアンと考えてよいため、δはπとして計算している。
【0035】
【表1】
【0036】
λ1は第1有機化合物層31からの発光に関して強めたい波長であり、L1は第1有機化合物層31における発光領域から第1電極21aの反射面との間の光路長である。λ2は第2有機化合物層32からの発光に関して強めたい波長であり、L2は第2有機化合物層32における発光領域から第1電極21bの反射面との間の光路長である。λ3は第3有機化合物層33からの発光に関して強めたい波長であり、L3は第3有機化合物層33における発光領域から第1電極21bの反射面との間の光路長である。
【0037】
本実施形態では、λ1は530nm、λ2は620nm、λ3は450nmとした。表1から分かる通り、強めたい発光波長が異なると適切な光路長も異なる。同一の次数mとする場合は、波長が長い光を発する有機化合物層の膜厚をより厚くなることになる。
【0038】
本実施形態では、第1有機化合物層31は緑色発光、第2有機化合物層32は赤色発光、第3有機化合物層33は青色発光とする場合を例示したが、本発明は各有機化合物層31,32,33の発光色については限定されない。
【0039】
ただし、より好適には、本実施形態の有機化合物層の構成と発光色の組み合わせで構成するのが望ましい。その理由を、以下に説明する。光干渉の関係式(1)の次数mが大きくなると視野角特性が悪くなるため、次数mはできるだけ小さい値にすることが望ましい。このため、第2サブピクセルP2において、上層側の第2有機化合物層32は、最も波長の長い赤色発光とするのが望ましい。上層側の第2有機化合物層32は、下層側の第1有機化合物層31があることによって、発光領域と第1電極との光路長が長くなっているからである。また、下層側の第1有機化合物層31は、上層側の第2有機化合物層32の発光領域と第1電極との光路長を短くできるよう、最も波長の短い青色発光とするのが望ましい。
【0040】
図4は、本実施形態の比較形態となる有機EL表示装置1aの積層構造を示す模式図である。図4に示すように、この有機EL表示装置1aは、第3電極23が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に形成されている点以外は、図1の本実施形態の有機EL表示装置1と同じである。比較形態の有機EL表示装置1aでは、第2有機化合物層32は第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に形成されている。そのため、第2有機化合物層32の発光領域から第1電極の反射面との間の光路長は、第1有機化合物層31に積層されている箇所と、第3有機化合物層33に積層されている箇所とで異なる。したがって、第3有機化合物層33からの発光は、第1有機化合物層31に積層されている箇所と、第3有機化合物層33に積層されている箇所とで色度が異なる。
【0041】
これに対し、本実施形態の有機EL表示装置1では、第3電極23をパターン形成して第2サブピクセルP2のみに形成していることにより、第1サブピクセルP1における第2有機化合物層32を非発光としている。これにより、第2有機化合物層32からの発光色に関し、第2サブピクセルP2の第2有機化合物層32からの発光光と色度の異なる発光光が混ざることを防止している。このように本実施形態の有機EL表示装置1は、第2有機化合物層32を2つのサブピクセルに共通に形成する場合に発生する色度の異なる発光が混ざることによる画質の悪化を低減している。
【0042】
次に、図5(a)(b)を参照して、本実施形態の有機EL表示装置1の具体的な駆動方法について説明する。図5(a)は本実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図、図5(b)は有機EL表示装置の駆動波形の一例を示す説明図である。
【0043】
図5(a)に示すように、各画素は、スイッチング用TFT61a,61bと駆動用TFT62a,62bと積層された有機EL素子とコンデンサ63a,63bで構成されている。ここで、スイッチング用TFT61a,61bのゲート電極は、ゲート信号線51に接続されている。また、スイッチング用TFT61a,61bのソース領域はソース信号線52a,52bに、ドレイン領域は駆動用TFT62a,62bのゲート電極に接続されている。また、駆動用TFT62aのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は有機EL素子の第2電極22aに接続されている。また、駆動用TFT62bのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は有機EL素子の第2電極22bに接続されている。
【0044】
またコンデンサ63a,63bは電極のそれぞれが、駆動用TFT62a,62bのゲート電極とGND(接地)とに接続されるように形成されている。このように、駆動用TFT62a,62bと有機EL素子が直列に接続されており、有機EL素子に流れる電流をソース信号線52a,52bから供給されるデータ信号に応じて駆動用TFT62a,62bで制御することにより発光制御される。
【0045】
さらに図5(a)及び図5(b)を参照して、本実施形態の有機EL表示装置1の駆動動作を説明する。まず時間t1において、ゲート信号線51の電位をVgに設定すると、スイッチングTFT61a,61bがオン状態となる。第1有機化合物層を発光するソース信号線52aの電位Vsig_a1、第3有機化合物層を発光するソース信号線52bの電位Vsig_b1がTFT61a,61bを介してコンデンサ63a,63b及び駆動TFT62a,62bのゲート容量に充電される。
【0046】
時間t2において、ゲート信号線51の電位が0Vに設定され、スイッチングTFT61a,61bがオフ状態となり、コンデンサ63a,63bに充電された電圧が保持される。
【0047】
時間t3において、第1電極21a,21b及び第3電極23の電位がVcに設定される。このとき、電源供給線53は0Vのままなので、有機化合物層及び駆動用TFT62a,62bのソースドレイン間に電位差が生じる。これにより、第1有機化合物層31に第1電極21aから正孔が注入されると共に、第2電極22aから電子が注入される。また、第3有機化合物層33に第1電極21bから正孔が、第2電極22bから電子が注入される。これにより、第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33が発光する。なお、このとき第2有機化合物層32には逆方向電圧が印加されるため発光しない。有機発光層に流れる電流は駆動用TFT62a,62bで制御され、コンデンサ63a,63bに充電された電圧に応じて、駆動用TFT62a,62bのソースドレイン間に電流I_a1、I_b1が流れる。この状態は、時間t4まで維持される。
【0048】
時間t4において、第1電極21a,21b及び第3電極23の電位が0Vに設定される。すると、有機発光層及び駆動用TFT62a,62bのソースドレイン間に電位差が無くなるので、第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33は発光しなくなる。続いて、第2有機化合物層を発光させるための信号Vsig_b2がソース信号線52bに設定される。また、信号Vsig_a2がソース信号線52aに設定される。
【0049】
時間t5において、ゲート信号線51の電位をVgに設定すると、スイッチングTFT61a,61bがオン状態となる。それにより、ソース信号線52a,52bの電位Vsig_a2,Vsig_b2がスイッチングTFT61a,61bを介してコンデンサ63a,63b及び駆動用TFT62a,62bのゲート容量に充電される。
【0050】
時間t6において、ゲート信号線51の電位が0Vに設定され、スイッチングTFT61a,61bがオフ状態となり、コンデンサ63a,63bに充電された電圧が保持される。
【0051】
時間t7において、電源供給線53の電位がVcに設定される。このとき、第1電極21a,21b及び第3電極23の電位が0Vなので、有機発光層及び駆動用TFT62a,62bのソースドレイン間に電位差が生じる。これにより、第2有機化合物層32に第2電極22bから正孔が注入されると共に、第3電極23から電子が注入され発光が得られる。なお、このとき、第1有機化合物層31、第3有機化合物層33には逆方向電圧が印加されるため発光しない。発光層に流れる電流は駆動用TFT62bで制御され、コンデンサ63bに充電された電圧に応じて、駆動用TFT62bのソースドレイン間に電流I_b2が流れる。この状態は、時間t8まで維持される。
【0052】
時間t8において、電源供給線53の電位が0Vに設定される。すると、有機発光層及び駆動用TFT62a,62bのソースドレイン間に電位差が無くなるので、第2有機化合物層32は発光しなくなる。
【0053】
上述の動作を繰り返すことで、第1有機化合物層31、第2有機化合物層32、第3有機化合物層33を時分割で発光させることができる。具体的には、人間が識別できない程度、例えば60Hz程度あるいはそれ以上高い周期で駆動することにより、第1有機化合物層31、第3有機化合物層33の発光色と、第2有機化合物層32の発光色との任意の混合色の光を表現することができる。
【0054】
以上説明したように、第1の実施形態の有機EL表示装置1によれば、第2有機化合物層を挟持する第2電極22a,22b及び第3電極23のうち、光取り出し側の第3電極23を第2サブピクセルP2のみに形成している。したがって、第2有機化合物層を第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に形成する場合に、色度の異なる発光光が混ざって画質が悪化するのを低減できる。
【0055】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、図1の構成の有機EL表示装置1を時分割駆動する場合について説明した。第2の実施形態では、図1と同様の有機化合物層及び電極の構成であり、各有機EL素子を独立駆動する形態について説明する。第1の実施形態との違いは、各電極の駆動トランジスタとの配線接続形態や、各電極同士の電気的接続形態だけである。
【0056】
図6は、第2の実施形態の有機EL表示装置2の1画素領域における積層構造を示す模式図である。図6に示すように、平坦化層には、平坦化層上部に形成される電極と、駆動用薄膜トランジスタ11aとの導通をとるためのコンタクトホール13a,13b,13cが形成されている。
【0057】
第1電極21a,21bは、コンタクトホール13a、コンタクトホール13bを介してそれぞれ駆動用薄膜トランジスタ11aに接続されている。第1電極21a,21b上には、第1の実施形態と同様に、第1サブピクセルP1に第1発光層を含む第1有機化合物層31が、第2サブピクセルP2に第3発光層を含む第3有機化合物層33がそれぞれ形成されている。第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。発光層を含む各有機化合物層には、公知の材料を用いることができる。
【0058】
第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33上には、第2電極22a,22bがそれぞれパターン形成されている。第2電極22a,22bのパターン形成の方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0059】
図示していないが、第2電極22aと第2電極22bは電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で画素ごとに接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。また図6では、第2電極22a,22bがパターン形成された構成を図示しているが、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に形成してもよい。また、第2電極22a,22bは、平坦下層12のコンタクトホール(不図示)と有機化合物層31または32のコンタクトホール(不図示)を介して、回路素子部と電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。
【0060】
第3有機化合物層33の形成及び第2電極22bの形成後、第3有機化合物層33にコンタクトホール14cを形成する。コンタクトホール14cの形成方法は、例えば、レーザー加工が好ましく、YAGレーザー(SHG、THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用する公知の手法を用いることができる。これらのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33上に所定のパターンで照射する。これにより、所望の位置にコンタクトホールを形成できる。コンタクトホール14cの径としては、例えば2μm〜15μmが好ましい。
【0061】
第2電極22a,22b上には、第1の実施形態と同様に、第2発光層を含む第2有機化合物層32が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に形成されている。第2有機化合物層32の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。また、発光層を含む第2有機化合物層32には、公知の材料を用いることができる。
【0062】
また、第2有機化合物層32の形成後、第2有機化合物層32にコンタクトホール14dを形成する。コンタクトホール14dの形成方法は、上述したコンタクトホール14cの形成方法と同様である。例えば、YAGレーザー、エキシマレーザーなどのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、第2有機化合物層32上に所定のパターンで照射し、コンタクトホール14dを形成する。コンタクトホール14dの径としては、例えば、2μm〜15μmが好ましい。
【0063】
有機化合物層の形成とコンタクトホールの形成の順序は、上述の様に、第3有機化合物層の形成及び第2電極22bの形成後にコンタクトホール14cを形成し、第2有機化合物層を形成し、コンタクトホール14dを形成してもよいし、次のようにしてもよい。即ち、第3有機化合物層の形成及び第2電極22bの形成後、第2有機化合物層を形成し、その後にコンタクトホール14cと14dを一括に形成してもよい。
【0064】
第2有機化合物層32の形成及びコンタクトホール14dの形成後、第2サブピクセルP2における第2有機化合物層32上には、第3電極23が形成される。第3電極23は、コンタクトホール14d及び14c、コンタクトホール13cを介して駆動用薄膜トランジスタ11aに接続されている。第3電極23のパターン形成の方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0065】
また、第1サブピクセルP1の第2有機化合物層32上には、第3電極23を形成する際に同時に形成された導電膜24が存在している。導電層24は、上述のパターニングによって、第3電極23と電気的に絶縁されている。
【0066】
なお、本実施形態の有機EL表示装置では、第2有機化合物層32の極性が、第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33と逆になるよう形成されている。
【0067】
次に図7は、第2の実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図である。上述の電極構成の違いに伴う配線構造と、第2有機化合物層32の極性のみが、第1の実施形態と異なる。
【0068】
図7に示すように、各画素は、スイッチング用TFT61a,61b、61cと駆動用TFT62a,62b,62cと積層された有機EL素子とコンデンサ63a,63b、63cで構成されている。ここで、スイッチング用TFT61a,61b,61cのゲート電極は、ゲート信号線51に接続されている。また、スイッチング用TFT61a,61b,61cのソース領域はソース信号線52a,52b、52cに、ドレイン領域は駆動用TFT62a,62b、62cのゲート電極に接続されている。さらに、駆動用TFT62aのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は有機EL素子の第1電極21aに接続されている。そして、駆動用TFT62bのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は有機EL素子の第1電極21bに接続されている。駆動用TFT62cのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は有機EL素子の第3電極23に接続されている。また、コンデンサ63a,63b,63cは電極のそれぞれが、駆動用TFT62a,62b,62cのゲート電極とGND(接地)とに接続されるように形成されている。
【0069】
このように駆動用TFT62a,62b,62cと有機EL素子が直列に接続されており、有機EL素子に流れる電流をソース信号線52a,52b,52cから供給されるデータ信号に応じて駆動用TFT62a,62b,62cで制御することにより発光制御される。
【0070】
以上のように構成とすることで、第1有機化合物層31、第2有機化合物層32、第3有機化合物層33を独立に駆動することができる。
【0071】
第2の実施形態の有機EL表示装置2は、第1の実施形態との違いが各電極の駆動トランジスタとの配線接続形態や、各電極同士の電気的接続形態だけであるので、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0072】
<第3の実施形態>
第1の実施形態では、第2有機化合物層32の形成後、第2サブピクセルP2に第3電極23をパターン形成し、第1サブピクセルP1においては、第2有機化合物層32上に、第3電極23と電気的に絶縁された導電膜24が存在する形態を示した。
【0073】
第3の実施形態では、第2有機化合物層32の形成後、第2サブピクセルP2に第3電極23をパターン形成する。さらに、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に、金属材料からなる導電層や、ITO、IZOなどの屈折率が第2有機化合物層32以上である非金属導電膜層を配置しない形態を説明する。
【0074】
以下、第1の実施形態と相違のある点を中心に説明する。図8は、第3の実施形態の有機EL表示装置3の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【0075】
第2有機化合物層32の形成までは、第1の実施形態の有機EL表示装置1と同様である。図8に示すように、第2有機化合物層32の形成後、第2サブピクセルP2における第2有機化合物層32上には、第3電極23が形成される。図示していないが、第1電極21a,21bと第3電極23は、電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で画素ごとに接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。また、第1電極21a,21b、及び第3電極23は、平坦下層12のコンタクトホール(不図示)、有機化合物層31、32、33のコンタクトホール(不図示)を介して回路素子部と電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。
【0076】
第3電極23には、第2電極と同様に、例えば、ITO、IZOなどの透明導電膜、AgやAlなどの金属材料を10nm〜30nm程度の膜厚で形成した半透過膜を用いることができる。第3電極23のパターン形成方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0077】
本実施形態の有機EL表示装置3と、第1の実施形態の有機EL表示装置1との相違は、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に、金属材料からなる導電層や、ITO、IZOなどの屈折率が第2有機化合物層32以上である非金属導電膜層を配置していない点である。
【0078】
第3の実施形態の有機EL表示装置3では、第2サブピクセルP2のみに第3電極23をパターン形成する。さらに、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に、金属材料からなる導電層や、ITO、IZOなどの屈折率が第2有機化合物層層32以上である非金属導電膜層を配置しない構成としている。これにより、図4に示した比較形態の有機EL表示装置1aに対し、発光効率の低下を抑制している。その理由を以下に説明する。
【0079】
第3の実施形態の有機EL表示装置3と比較形態の有機EL表示装置1aの構成上の相違である第1サブピクセルP1に注目する。比較形態の有機EL表示装置1aの構成では、第2有機化合物層32上に第3電極23が形成されている。第3電極23には、例えば、AgやAl等の金属材料を10nm〜30nm程度の膜厚で形成した半透過膜や、ITO、IZOなどの透明性を有する非金属の導電膜が用いることが考えられる。
【0080】
このとき、第3電極23に金属電極を用いた場合、一部の光は有機EL素子側に反射される。また、非金属の透明導電膜を用いた場合、非金属膜と空気層の界面において、R=(n1−n2)2/(n1+n2)2の関係式(2)から算出される割合のエネルギーの光が反射される。なお、関係式(2)中、Rはエネルギー反射率、n1は非金属層の屈折率、n2は空気層の屈折率である。
【0081】
この関係式(2)は、透明体に対して垂直入射する場合のフレネルの関係式である。このような空気層との界面での反射光が、発光層の発光領域と第1電極の反射面との間の光路長が関係式(1)を満足することにより強めあった発光と干渉してしまうと、取り出し光の効率が低下する。
【0082】
比較形態の有機EL表示装置1aにおいて、例えば第3電極23にIZOを用いた場合、電極と空気層の界面での反射光の割合は、IZOの屈折率が約2.1、空気層の屈折率が1であることから、関係式(2)により12.6%程度となる。これに対し、本実施形態の有機EL表示装置3の第1サブピクセルP1では、空気層との界面を形成するのは第2有機化合物層32である。この場合の空気層との界面での反射光の割合は、一般に有機化合物層の屈折率が1.7程度と考えられることから、関係式(2)により6.7%程度となる。
【0083】
したがって、本実施形態の有機EL表示装置3では、第1有機化合物層31からの発光光のうち、空気層との界面で反射し干渉に寄与する光の割合が比較形態の有機EL表示装置1aに比して低減しており、発光効率の低下を抑制し、消費電力の上昇を抑制している。
【0084】
本実施形態の有機EL表示装置3では、第2サブピクセルP2のみに第3電極23をパターン形成し、第1サブピクセルP1に金属材料からなる導電層や、ITO、IZOなどの屈折率が第2有機化合物層32以上である非金属導電膜層を配置していない。これにより、空気層との界面で反射し干渉に寄与する光の割合を比較形態の有機EL表示装置1aに比して低減している。
【0085】
即ち、第1サブピクセルP1において、第1電極の反射面からの光路長が第1の有機EL素子からの発光光の可干渉距離以下である領域の中で最も光取出し側にある反射界面が、第2有機化合物層32の光取り出し側の表面となっている。
【0086】
本実施形態では、第1サブピクセルP1において、空気層との界面を形成する層が第2有機化合物層32である場合を示した。これに限らず、第2有機化合物層32の上に、非金属で透明性を有し、屈折率が空気層の屈折率以上で、第2有機化合物層32の屈折率以下である物質からなる層が形成されていてもよい。このような構成とすることで、上述した発光効率の低下をさらに抑制することができる。
【0087】
例えば、第2有機化合物層32の上に、屈折率1.5の有機樹脂層が形成されている場合を考える。有機樹脂層は、非金属で透明性を有し、屈折率が空気層の屈折率以上で、一般に有機層の屈折率が1.7程度と考えられることから第2有機化合物層32の屈折率以下である。この場合、第1サブピクセルP1では、空気層との界面を形成するのは有機樹脂層である。この場合の空気層との界面での反射光の割合は、関係式(2)により4%程度となる。このように、空気層との界面を形成するのが第2有機化合物層32である場合よりも、空気層界面での反射の割合を低減することができ、発光効率の低下をさらに抑制することができる。
【0088】
即ち、第1サブピクセルにおいて、第2有機化合物層の光取り出し側の表面と、第1電極の反射面からの光路長が第1の有機EL素子からの発光の可干渉距離以下である領域の中で最も光取出し側にある反射界面との間に、所定の物質からなる層を配置している。所定の物質からなる層とは、非金属で透明性を有し、屈折率が第1サブピクセルP1の最も光取り出し側にある有機化合物層の屈折率と、可干渉距離以下である領域の直上の層である物質の屈折率との間の値をもつ物質からなる層である。この場合、屈折率が第1サブピクセルP1の最も光取り出し側にある有機化合物層とは第2有機化合物層であり、第1電極の反射面からの光路長が第1の有機EL素子からの発光光の可干渉距離以下である領域の直上の層は空気層である。
【0089】
本実施形態の有機EL表示装置3の駆動方法については、第1の実施形態と同様に時分割駆動をしてもよいし、第2の実施形態と同様の電極構成及びコンタクトホール構成として独立駆動をしてもよい。
【0090】
第3の実施形態の有機EL表示装置3は、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。特に第3の実施形態の有機EL表示装置3では、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に導電層や非金属導電膜層を配置しないことで、第1有機化合物層31からの発光光のうち、空気層との界面で反射し干渉に寄与する光の割合を比較形態の有機EL表示装置1aに比して低減しており、発光効率の低下を抑制し、消費電力の上昇を抑制している。
【0091】
<第4の実施形態>
第4の実施形態では、第3の実施形態の有機EL表示装置3の第2有機化合物層32の上部に、素子保護層9を設ける形態を説明する。第3の実施形態との相違は、素子保護層9の有無のみであり、有機化合物層の構成、電極構成等は第3の実施形態と同様である。以下、第3の実施形態と相違のある点を中心に説明する。
【0092】
図9は、第4の実施形態の有機EL表示装置4の1画素領域における積層構造を示す模式図である。図4に示すように、それぞれのサブピクセルP1,P2の最も光取り出し側に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に素子保護層9が形成されている。具体的には、第1サブピクセルP1における第2有機化合物層32の上部、及び第2サブピクセルP2における第3電極23の上部に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に素子保護層9が形成されている。これにより、本実施形態の有機EL表示装置4と酸素や水分等との接触を防止することができる。
【0093】
素子保護層9としては、非金属である物質から構成されるのが望ましく、例えば有機樹脂を10〜20μm程度堆積し、最上部にガラス部材を設けた構造や、有機樹脂と窒化酸化シリコン等の無機物質を共に含む構造とすることができる。
【0094】
第4の実施形態の有機EL表示装置4は、第1電極21a,21bの反射面と、素子外部の空気層との反射界面である素子保護層9の最上面との間の光路長が、第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以上となっている。このような構成にすることで、第1有機化合物層31からの発光光で、屈折率差の大きい空気層との界面での反射光による干渉効果が、取り出し光に重畳することを防止できる。
【0095】
具体的には、光路長が2μm以上で光学干渉が起こり難くなるという条件から、第1電極21a,21bの反射面と、素子外部の空気層との反射界面である素子保護層9の最上面との間の光路長を2μm以上としている。このような構成では、第1電極21a,21bの反射面からの光学的距離が第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以下の領域内にある反射界面についてのみ、反射光による干渉効果を考えればよい。
【0096】
図10は、第4の実施形態における素子保護層と光学干渉条件を説明する図である。図10において、(a)は素子保護層9として、有機樹脂と窒化酸化シリコン等の無機物質を共に含む構造とした有機EL表示装置4aを示している。
【0097】
図10(a)に示すように、有機EL表示装置4aは、第1サブピクセルP1では第2有機化合物層32上に、第2サブピクセルP2では第3電極23上に、無機化合物層91が堆積されている。そして無機化合物層91上に、有機樹脂層92、無機化合物層93が堆積されている。
【0098】
無機化合物層91の構成材料として、例えば、SiN、SiO2等が挙げられるが、耐水性、耐熱性に優れた材料であればよく、これに限定されない。無機化合物層91の膜厚は、100〜200nm程度が望ましい。これにより、発光素子部と酸素や水分等との接触を防止することができる。
【0099】
なお、第2有機化合物層32上または第2電極23上に、無機化合物層91の膜厚と同程度以上の大きさの異物が存在する場合、無機化合物層91だけでは発光素子部を被覆しきれないことがある。本実施形態の有機EL表示装置4aでは、無機化合物層91上に、有機樹脂層92が異物の大きさよりも十分大きいと考えられる膜厚で堆積されている。具体的には、例えば10μm程度の膜厚とするのが好ましい。そして、有機樹脂層92上に無機化合物層93が堆積されている。無機化合物層93の構成材料としては、例えばSiN、SiO2等が挙げられるが、耐水性、耐熱性に優れた材料であればよく、これに限定されない。無機化合物層93の膜厚は、例えば100〜200nm程度が望ましい。このように、無機化合物層91の上に、厚膜の有機樹脂層92、無機化合物層93をさらに堆積する。これにより、第2有機化合物層32上または第3電極23上に、無機化合物層91の膜厚と同程度以上の大きさの異物が存在する場合でも、有機樹脂層92及び無機化合物層93によって発光素子部を被覆することができる。したがって、発光素子部と酸素や水分等との接触を防止することができる。
【0100】
次に図10(b)を参照して、本実施形態の有機EL表示装置4aにおける光学干渉関係について説明する。図10(b)は、有機EL表示装置4aの第1サブピクセルP1について、第1電極21aの反射面と、素子外部の空気層との反射界面である素子保護層9の最上面との間の光路長Ltを示している。本実施形態の有機EL表示装置4aでは、この光路長Ltが第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以上となっている。なお、光路長とは、前述の通り、実際の長さに材料の屈折率を乗じたものである。
【0101】
本実施形態の有機EL表示装置4aにおいて、無機化合物層91にSiNを用いた場合における第1サブピクセルP1での各界面での反射の割合を考える。SiNの屈折率は1.8程度、有機樹脂の屈折率は1.5程度と考えられる。したがって、以下では第2有機化合物層32の屈折率を1.7、無機化合物層91の屈折率を1.8、有機樹脂層92の屈折率を1.5とし、関係式(2)に則して各界面の反射の割合を算出する。
【0102】
本実施形態の有機EL表示装置4aでは、有機樹脂層92が10μm程度堆積されていることから、第1電極21a,21bの反射面からの光路長が第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以下である領域は、有機樹脂層92より下層側の領域である。この領域内にある反射界面として、第2有機化合物層32と無機化合物層91との界面、及び無機化合物層91と有機樹脂層92との界面での反射の割合は、関係式(2)により、それぞれ約0.08%、約2.3%である。したがって、第2有機化合物層32を透過した第1有機化合物層31からの発光で、第2有機化合物層32より上部にある反射界面からの反射光の割合は、(1−0.0008)×0.023≒0.023で、略2.3%である。
【0103】
これに対し、比較形態の有機EL表示装置1a及び第3の実施形態の有機EL表示装置3では、第2有機化合物層32より上部にある反射界面からの反射光の割合は、前述の通り、それぞれ約12.6%、約6.7%であった。従って、第4の実施形態の有機EL表示装置4では、第1有機化合物層31からの発光のうち、干渉に寄与する光の割合が比較形態の有機EL表示装置1a及び第3の実施形態の有機EL表示装置3に比して低減しており、発光効率の低下をさらに抑制でき、消費電力の上昇を抑制できる。
【0104】
本実施形態の有機EL表示装置4aでは、素子保護層9を形成する各層での反射界面での屈折率差が、第2有機化合物層と空気層との屈折率差以下である。このような場合、第3の実施形態の有機EL表示装置3に比して、干渉に寄与する光の割合が低減する。
【0105】
本実施形態の有機EL表示装置4aでは、第3の実施形態の有機EL表示装置3に対し、素子保護層9を設けることで、第1電極21aの反射面と、素子外部の空気層との反射界面との光路長を第1有機化合物層からの発光光の可干渉距離以上とした。これにより、屈折率差の大きい空気層との反射界面での反射光の影響をなくすことにより、発光効率の低下を抑制した。
【0106】
本実施形態の有機EL表示装置4aにおいて無機化合物層91にSiNを用いた場合は、各層の屈折率の大小関係が次のようになっている。即ち、第1電極21aの反射面からの光路長が第1有機化合物層からの発光の可干渉距離以下である領域の直上の層である有機樹脂層92と、第2有機化合物層との間に、屈折率が第2有機化合物層の1.7よりも大きい1.8であるSiN(91)がある。これに対し、有機樹脂層92と第2有機化合物層32との間に物質がない、もしくは屈折率が有機樹脂層92の屈折率と第2有機化合物層32の屈折率の間の値をとる物質のみが存在する構成とすることで、発光効率の低下をさらに抑制できる。この例を、図10(c)に示す。
【0107】
図10(c)では、素子保護層9として、第1サブピクセルP1では第2有機化合物層32上に、第2サブピクセルP2では第3電極23上に、有機樹脂層94を10〜20μm程度堆積している。そして、最上部にガラス部材95を設けた構造とした有機EL表示装置4を示している。
【0108】
図10(d)を参照して、本実施形態の有機EL表示装置4bにおける光学干渉関係について説明する。図10(d)には、本実施形態の有機EL表示装置4bのサブピクセルP1について、第1電極21aの反射面と、素子外部の空気層との反射界面である素子保護層9の最上面との間の光路長Ltを示している。本実施形態の有機EL表示装置4bでは、この光路長Ltが第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以上となっている。なお、光路長とは、前述の通り、実際の長さに材料の屈折率を乗じたものである。
【0109】
本実施形態の有機EL表示装置4bにおいて、第1サブピクセルP1での各界面での反射の割合を考える。有機樹脂の屈折率は1.5程度と考えられることから、以下では第2有機化合物層32の屈折率を1.7、有機樹脂層92の屈折率を1.5とし、関係式(2)に則して各界面の反射の割合を算出する。
【0110】
本実施形態の有機EL表示装置4bでは、有機樹脂層94が10〜20μm程度堆積されていることから、第1電極21aの反射面からの光路長が第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以下である領域は、有機樹脂層94より下層側の領域である。この領域内にある反射界面として、第2有機化合物層32と有機樹脂層94の界面での反射の割合は、関係式(2)により、約0.4%である。
【0111】
したがって、本実施形態の有機EL表示装置4bでは、第1有機化合物層31からの発光のうち、干渉に寄与する光の割合が有機EL表示装置4aに対して低減しており、発光効率の低下をさらに抑制でき、消費電力の上昇を抑制できる。
【0112】
本実施形態の有機EL表示装置4bでは、上記の有機EL表示装置4aと同様に、素子保護層9を形成する各層での反射界面での屈折率差が、第2有機化合物層と空気層との屈折率差以下である。このような場合、第3の実施形態の有機EL表示装置3に比して、干渉に寄与する光の割合が低減する。
【0113】
また、有機EL表示装置4bは、即ち、第1サブピクセルにおいて、第1電極21aの反射面からの光路長が第1有機化合物層からの発光光の可干渉距離以下である領域の中で最も光取出し側にある反射界面が、第2有機化合物層の光取り出し側の表面となっている。この場合、第1電極21aの反射面からの光路長が第1有機化合物層からの発光光の可干渉距離以下である領域の直上の層は有機樹脂層94である。
【0114】
第4の実施形態の有機EL表示装置の駆動方法については、第1の実施形態と同様に時分割駆動をしてもよいし、第2の実施形態と同様の電極構成及びコンタクトホール構成として独立駆動をしてもよい。
【0115】
第4の実施形態の有機EL表示装置4a、4bは、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。特に第4の実施形態の有機EL表示装置4a、4bでは、第3の実施形態の有機EL表示装置3に対し、素子保護層9を設けることで、屈折率差の大きい空気層との反射界面での反射光の影響をなくすことにより、発光効率の低下を抑制でき、消費電力の上昇を抑制できるという特有の効果を奏する。
【0116】
<第5の実施形態>
第1の実施形態では、第2有機化合物層32が、第1有機化合物層31と第3有機化合物層33の上部に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成される形態を示した。第5の実施形態は、第2有機化合物層32が双方のサブピクセルP1,P2に共通形成され、第1サブピクセルP1に形成された第1有機化合物層31の上部に形成されている。さらに、第2サブピクセルP2において、この第2有機化合物層32の上部に、第3有機化合物層33が形成される形態である。以下、第1の実施形態と相違のある点を中心に説明する。
【0117】
図11は、第5の実施形態の有機EL表示装置6の1画素領域における積層構造を示す模式図である。図11に示すように、平坦化層には、平坦化層上部に形成される電極と、駆動用薄膜トランジスタ11aとの導通をとるためのコンタクトホール13a,13bが形成されている。
【0118】
第1電極21a,21bの形成後、第1サブピクセルP1に第1発光層を含む第1有機化合物層31が形成される。第1有機化合物層31の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。発光層を含む各有機化合物層には、公知の材料を用いることができる。第1有機化合物層31の形成後、これらの有機化合物層に、コンタクトホール14aを形成する。コンタクトホール14aの形成方法は、例えば、レーザー加工が好ましく、YAGレーザー、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用する公知の手法を用いることができる。これらのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、第1有機化合物層31上に所定のパターンで照射することにより所望の位置にコンタクトホール14aを形成できる。コンタクトホール14aの径は、例えば2μm〜15μm程度が好ましい。
【0119】
続いて、第1有機化合物層31上に、第2電極22aがパターン形成される。第2電極22aは、コンタクトホール14a及び13aを介して駆動用薄膜トランジスタ11aに接続されている。第2電極22aのパターン形成方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0120】
第2電極22a上には、第2発光層を含む第2有機化合物層32が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成されている。第2有機化合物層32の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。また、発光層を含む第2有機化合物層32には、公知の材料を用いることができる。
【0121】
第2有機化合物層32の形成後、これらの有機化合物層の第2サブピクセルP2の領域に、コンタクトホール14bを形成する。コンタクトホール14bの形成方法は、上述したコンタクトホール14aの形成方法と同様である。即ち、例えばYAGレーザー、エキシマレーザーなどのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、第2有機化合物層32上に所定のパターンで照射し、コンタクトホール14bを形成する。コンタクトホール14bの径は、例えば2μm〜15μm程度が好ましい。
【0122】
第2有機化合物層32の形成及びコンタクトホール14bの形成後、第2有機化合物層32上には、第2サブピクセルP2に第2電極22bが形成される。第2電極22bは、コンタクトホール14b及び13bを介して駆動用薄膜トランジスタに接続されている。第2電極22bのパターン形成方法は、第2電極22aと同様である。
【0123】
第2電極22b形成後、第2電極22b上には、第2サブピクセルP2に第3発光層を含む第3有機化合物層33が形成される。第3有機化合物層33の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。発光層を含む各有機化合物層には、公知の材料を用いることができる。
【0124】
第3有機化合物層33上には、第2サブピクセルP2のみに第3電極23が形成される。図示していないが、第1電極21a,21bと第3電極23は、電気的に接続されている。接続の形態は、例えば、表示領域内で画素ごとに接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。第3電極23のパターン形成方法は、第2電極22a,22bと同様である。また、第1電極21a,21b、及び第3電極23は、平坦下層12のコンタクトホール(不図示)、有機化合物層31、32、33のコンタクトホール(不図示)を介して回路素子部と電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。
【0125】
また、第1サブピクセルP1の第2有機化合物層32上には、第3電極23を形成する際に同時に形成された導電膜24が存在している。導電層24は、上述のパターニングによって、第3電極23と電気的に絶縁されている。
【0126】
第5の実施形態の有機EL表示装置5は、第1の実施形態の有機EL表示装置1と同様に、第2サブピクセルP2のみに第3電極23をパターン形成していることにより、第1サブピクセルP1における第2有機化合物層32を非発光としている。これにより、第2有機化合物層32からの発光色に関し、第2サブピクセルP2の第2有機化合物層32からの発光と色度の異なる発光光が混ざることを防止している。
【0127】
さらに、本実施形態の有機EL表示装置5は、中間電極である第2電極22aと22bの間に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に第2有機化合物層32が形成されている。これにより、次のようにサブピクセル間で第2電極22aと第2電極22bが短絡する確率を下げることができ、有機EL表示装置の製造歩留まりを向上できる。
【0128】
第2電極22a,22bのパターン形成方法として、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成する場合を考える。第1の実施形態の有機EL表示装置1のように、第2電極22aと22bの間に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に形成された層がない構成では、一定の確率で第2電極22aと22bが接触して形成されてしまう不良が起こり得る。これは、次に述べる理由による。
【0129】
シャドーマスクの設計上、第2電極22aと22bが分離して形成されるように、マスクのアライメント精度や蒸着ずれを考慮して、マスク開口が形成される。しかし、一定の確率で発生するマスクの大きな歪みや熱による膨張等で、電極の蒸着位置がずれ、上述の不良が発生する。
【0130】
このような不良が発生しないように、シャドーマスクの開口をさらに離すよう設計してもよい。しかし、マスク開口を離せば、電極が形成される面積が減少し、この電極が挟持する有機EL素子の発光面積が減少してしまう。
【0131】
これに対し、本実施形態の有機EL表示装置5では、第2電極22a,22bの蒸着位置がずれても、第2電極22aと22bの間に第2有機化合物層32が形成されているため、第2電極22aと22bが短絡することがない。このようにして、第5の実施形態の有機EL表示装置5では、有機EL素子の発光面積を必要以上に減少させることなく、サブピクセル間で第2電極22aと第2電極22bが短絡する確率を低減できる。
【0132】
本実施形態の有機EL表示装置5は、各有機化合物層の構成と発光色の組み合わせについては限定されない。ただし、より好適な構成としては、第1の実施形態で述べた理由から、第1有機化合物層31は緑色発光、第2有機化合物層32は青色発光、第3有機化合物層33は赤色発光とするのが望ましい。
【0133】
また、第5の実施形態の有機EL表示装置5の駆動方法については、第1の実施形態と同様に時分割駆動をしてもよいし、第2の実施形態と同様の電極構成及びコンタクトホール構成として独立駆動をしてもよい。
【0134】
さらに、第5の実施形態の有機EL表示装置5に対し、第3の実施形態のように、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に、金属材料からなる導電層や、屈折率が第2有機化合物層以上である非金属導電膜層を配置しない構成としてもよい。このようにすることで、第3の実施形態の有機EL表示装置3と同様に、発光効率の低下を抑制でき、消費電力の上昇を抑制できる。
【0135】
そして、第5の実施形態の有機EL表示装置5に対し、第4の実施形態のように素子保護層9を設けてもよい。このようにすることで、第4の実施形態の有機EL表示装置4a、4bと同様に、屈折率差の大きい空気層との反射界面での反射光の影響をなくすことができ、発光効率の低下を抑制し、消費電力の上昇を抑制できる。
【0136】
<第6の実施形態>
第5の実施形態では、第2有機化合物層32が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成され、第1サブピクセルP1に形成された第1有機化合物層31の上部にされている。そして、第2のサブピクセルP2において、第3有機化合物層33が第2有機化合物層32の上部に形成される形態を示した。第6の実施形態では、第3有機化合物層33も、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成され、第2有機化合物層32の上部に形成される形態である。以下、第5の実施形態と相違のある点を中心に説明する。
【0137】
図12は、第6の実施形態の有機EL表示装置6の1画素領域における積層構造を示す模式図である。第2電極22b形成までは、第5の実施形態の有機EL表示装置5と同様である。図12に示すように、第2電極22bの形成後、第2電極22b上には、第3発光層を含む第3有機化合物層33が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成される。第3有機化合物層33の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。
【0138】
第3有機化合物層33上には、第2サブピクセルP2のみに第3電極23が形成されている。図示していないが、第1電極21a,21bと第3電極23は、電気的に接続されている。接続の形態は、例えば、表示領域内で画素ごとに接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。また、第1電極21a,21b、及び第3電極23は、平坦下層12のコンタクトホール(不図示)、有機化合物層31、32、33のコンタクトホール(不図示)を介して回路素子部と電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。
【0139】
第3電極23のパターン形成方法は、第2電極22a,22bと同様である。また、第1サブピクセルP1の第2有機化合物層32上には、第3電極23を形成する際に同時に形成された導電膜24が存在している。導電層24は、前述のパターニングによって、第3電極23と電気的に絶縁されている。
【0140】
第6の実施形態の有機EL表示装置6では、第2有機化合物層32と第3有機化合物層33を、双方のサブピクセルに共通に形成して、第1の実施形態の有機EL表示装置1や第5の実施形態の有機EL表示装置5に対し、プロセス工程を簡便化している。
【0141】
第6の実施形態の有機EL表示装置6は、第1の実施形態の有機EL表示装置1や第5の実施形態の有機EL表示装置5と同様に、第2サブピクセルP2のみに第3電極23をパターン形成している。これにより、第1サブピクセルP1における第2有機化合物層32及び第3有機化合物層33を非発光としている。そして、第2有機化合物層及び第3有機化合物層からの発光色に関し、第2サブピクセルP2の第2有機化合物層及び第3有機化合物層からの発光と色度の異なる発光光が混ざることを防止している。
【0142】
本実施形態の有機EL表示装置6は、各有機化合物層の構成と発光色の組み合わせについては限定されない。ただし、より好適な構成としては、第1の実施形態で述べた理由から、第5の実施形態と同様に第1有機化合物層31は緑色発光、第2有機化合物層32は青色発光、第3有機化合物層33は赤色発光とするのが望ましい。
【0143】
また、第6の実施形態の有機EL表示装置6の駆動方法については、第1の実施形態と同様に時分割駆動をしてもよいし、第2の実施形態と同様の電極構成及びコンタクトホール構成として独立駆動をしてもよい。
【0144】
さらに、第6の実施形態の有機EL表示装置6に対し、第3の実施形態のように、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に、金属材料からなる導電層や、屈折率が第2有機化合物層以上である非金属導電膜層を配置しない構成としてもよい。このようにすることで、第3の実施形態の有機EL表示装置3と同様に、発光効率の低下を抑制でき、消費電力の上昇を抑制できる。
【0145】
そして、第6の実施形態の有機EL表示装置6に対し、第4の実施形態のように素子保護層9を設けてもよい。このようにすることで、第4の実施形態の有機EL表示装置4a、4bと同様に、屈折率差の大きい空気層との反射界面での反射光の影響をなくすことができ、発光効率の低下を抑制し、消費電力の上昇を抑制できる。
【0146】
本実施形態の有機EL表示装置6は、第3有機化合層が、第1の有機EL素子よりも光取り出し側に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成されているので、プロセス工程を簡便化することができる。
【0147】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【0148】
上記の実施形態では、本発明を基板側とは反対側(透明電極側)から有機EL素子の光を取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置に適用したが、第2の実施形態は、基板側から光を取り出すボトムエミッション型の有機EL表示装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0149】
1、2、3、4、4a、4b、5、6 有機EL表示装置、10 基板、21a,21b 第1電極、22a,22b 第2電極、23 第3電極、24 導電膜、31 第1有機化合物層、32 第2有機化合物層、33 第3有機化合物層、9 素子保護層、91 無機化合物層、92 有機樹脂層、93 無機化合物層、94 有機樹脂層、95 ガラス部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間に発光層を含む有機化合物層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を複数備えた有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイとして、自発光型のデバイスである有機EL表示装置が注目され、活発に開発されている。
【0003】
この種の有機EL表示装置において、有機EL素子を積層することで実質的な発光面積を増加させると共に、輝度を落として、素子寿命を向上させる技術がある。例えば、1画素を並列配置した複数のサブピクセルで構成し、各サブピクセルは異なる色に発光する有機化合物層を複数積層して構成される構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、1画素が第1サブピクセルと第2サブピクセルとで構成され、第1サブピクセルに下部電極及び第1発光層を含む第1有機化合物層を、第2サブピクセルに下部電極及び第3発光層を含む第3有機化合物層を形成している。さらに、これらの上に中間電極を介して第2発光層を含む第2有機化合物層を共通に形成し、その上に上部電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−174639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の有機EL表示装置では、2つのサブピクセルについて同一色の発光層を含む有機化合物層を共通に形成している。有機EL素子からの発光光の波長と素子の膜厚とが同等の大きさであるため光の干渉効果を強く受け、所望の発光効率や色度を出すには、適切な光学干渉条件を満たすことが必要である。
【0007】
しかしながら、特許文献1の有機EL表示装置では、2つのサブピクセルにおいて並列配置されている第1有機化合物層と第3有機化合物層との発光色が異なるため、干渉効果を最適化するには有機化合物層の膜厚も異なる。その結果、2つのサブピクセルに亘って共通に形成する第2有機化合物層は、第1有機化合物層に積層されている部分と、第3有機化合物層に積層されている部分とで干渉効果が異なることになる。そのため、第2有機化合物層を発光させると、第1有機化合物層の上に積層されている部分と、第3有機化合物層の上に積層されている部分とで色度が異なり、画質に悪影響を与えるという問題がある。
【0008】
また、各サブピクセルについて2つの有機EL素子を積層しているので、上側の有機EL素子の光取り出し電極に金属電極を用いた場合、当該電極での反射光による干渉効果が下側の有機EL素子からの発光光に重畳する。また、上側の有機EL素子の光取り出し電極に非金属の透明導電膜を用いた場合、空気層と当該電極の界面での反射光による干渉効果が下側の有機EL素子からの発光光に重畳する。したがって、RGBの3つのサブピクセルを並列配置して1画素を構成する場合に比べて、発光効率が低下し、消費電力が上昇するという問題がある。
【0009】
そこで本発明の目的は、複数の発光層が積層された有機EL表示装置において、画質への悪影響を低減でき、消費電力の上昇を抑制できる有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0011】
即ち、本発明に係る有機EL表示装置は、表示領域に複数の画素を備え、各画素に第1サブピクセルと第2サブピクセルとが並列配置された有機EL表示装置であって、
上記第1サブピクセルは、対向する電極の間に挟持された第1発光層を含む第1有機化合物層を有し、
上記第2サブピクセルは、対向する電極の間に挟持された第3発光層を含む第3有機化合物層を有し、
上記第1サブピクセル及び第2サブピクセルに亘って、第2発光層を含む第2有機化合物層が積層されると共に、該第2有機化合物層は、上記第1サブピクセルにおいて上記第1有機化合物層よりも光取り出し側に配置され、
上記第2有機化合物層は対向する電極の間に挟持され、前記第2有機化合物層を挟持する対向する電極のうち、光取り出し側の電極は、上記第2サブピクセルのみに形成されていることを特徴とする有機EL表示装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第2有機化合物層を挟持する対向する2つの電極のうち、光取り出し側の電極を第2サブピクセルのみに形成している。したがって、第2有機化合物層を並列配置された第1サブピクセル及び第2サブピクセルに共通に積層する場合に、色度の異なる発光光が混ざって画質が悪化するのを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の有機EL表示装置の1画素(ピクセル)領域における積層構造を示す模式図である。
【図2】有機EL表示装置の概略を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態の有機EL表示装置における各発光層の発光領域と反射電極との間の光路長を示す概略図である。
【図4】本実施形態の比較形態となる有機EL表示装置の積層構造を示す模式図である。
【図5(a)】本実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図である。
【図5(b)】本実施形態の有機EL表示装置の駆動波形の一例を示す説明図である。
【図6】第2の実施形態の有機EL表示装置の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【図7】第2の実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図である。
【図8】第3の実施形態の有機EL表示装置の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【図9】第4の実施形態の有機EL表示装置の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【図10】第4の実施形態における素子保護層と光学干渉条件を説明する図である。
【図11】第5の実施形態の有機EL表示装置の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【図12】第6の実施形態の有機EL表示装置の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されない。なお、図面では、説明の都合上から、各層を認識可能な大きさで表しており、図面の縮尺は実際とは異なっている。また、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。
以下の説明において、陽極、有機化合物層、陰極からなる構造体を有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子と称する。また、複数の有機EL素子、平坦化層等の下地構造、駆動回路や配線構造の回路素子部、及び封止構造等からなる構造体を有機EL表示装置と称する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1及び図2を参照して、本発明に係る有機EL表示装置の一実施形態を構成する有機EL素子の積層構造について説明する。本実施形態で例示する有機EL表示装置は、基板側とは反対側(透明電極側)から有機EL素子の光を取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置であり、表示装置の利用者は光取り出し側から観察することになる。図1は、第1の実施形態の有機EL表示装置の1画素(ピクセル)領域における積層構造を示す模式図である。図2は有機EL表示装置の概略を示す斜視図であり、画素がマトリクス状に複数配置されて有機EL表示装置の表示領域が構成される。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の有機EL表示装置1の基板10上には、回路素子部11が形成されている。回路素子部11には、スイッチング用薄膜トランジスタ(図示せず)、駆動用薄膜トランジスタ11aと走査信号線、情報信号線、電源線の配線構造(図示せず)が形成されている。回路素子部11上には、平坦化層12が形成されている。平坦化層12には、平坦化層上部に形成される電極と、駆動用薄膜トランジスタ11aとの導通をとるためのコンタクトホール13a、13bが形成されている。
【0017】
そして、本実施形態の有機EL表示装置は、各画素(1画素領域)に2個の副画素(以下、「第1サブピクセルP1、第2サブピクセルP2」と呼称する)が並列配置されている。図示していないが、第1サブピクセルP1と第2サブピクセルP2との間に素子分離膜を形成してもよい。
【0018】
各サブピクセルP1,P2のそれぞれにおいて、平坦化層12の上層側に、発光層を含む有機化合物層が各々対向する電極で挟持されて積層されている。各有機化合物層は、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等を含んでいてもよい。
【0019】
以下、有機化合物層及び電極の構成を製造方法の手順に従って説明する。
【0020】
平坦化層12上には、第1電極21a,21bが形成されている。第1電極21a,21bは、光反射性の部材であることが好ましく、例えばCr、Al、Ag、Au、Pt等の材料を用いることができる。第1電極21a,21bに光反射性の部材を用いることで、光取り出し効率を向上させることができる。また、第1電極21a,21bには、反射機能を光反射性部材によって確保し、電極としての機能を光反射性部材上に形成したITO膜(インジウム錫酸化膜)等の透明導電膜によって確保するような構成も含まれる。この場合の第1電極21a,21bの反射面は上記光反射性部材の表面となる。第1電極21a,21bの成膜手法としては、公知の手法を適用することができる。
【0021】
第1電極21a,21b上には、第1サブピクセルP1に第1発光層を含む第1有機化合物層31が、第2サブピクセルP2に第3発光層を含む第3有機化合物層33がそれぞれ形成されている。第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。発光層を含む各有機化合物層には、公知の材料を用いることができる。第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33を形成後、これらの有機化合物層31,33にコンタクトホール14a,14bを形成する。コンタクトホール14a,14bの形成方法としては、例えばレーザー加工が好ましく、YAGレーザー(SHG、THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用する公知の手法を用いることができる。これらのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33上に所定のパターンで照射することにより所望の位置にコンタクトホール14a,14bを形成することができる。コンタクトホール14a,14bの径は、2μm〜15μm程度が好ましい。
【0022】
第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33上には、第2電極22a,22bがそれぞれパターン形成されている。第2電極22a,22bは、コンタクトホール14a及び13a、コンタクトホール14b及び13aを介して、それぞれ駆動用薄膜トランジスタ11aに接続されている。第2電極22a,22bには、例えばITO(インジウム錫酸化物)、InZnO(インジウム亜鉛酸化物)などの透明導電膜や、Ag、Alなどの金属材料を10nm〜30nm程度の膜厚で形成した半透過膜を用いることができる。第2電極22a,22bのパターン形成方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板1と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0023】
第2電極22a,22b上には、第2発光層を含む第2有機化合物層32が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成されている。第2有機化合物層32の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。また、第2発光層を含む第2有機化合物層32には、公知の材料を用いることができる。
【0024】
第2有機化合物層32上には、第3電極23が第2サブピクセルP2のみに形成されている。図示していないが、第1電極21a,21bと第3電極23は、電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で画素ごとに接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。また、第1電極21a,21b、及び第3電極23は、平坦下層12のコンタクトホール(不図示)、有機化合物層31、32、33のコンタクトホール(不図示)を介して回路素子部と電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。
【0025】
第3電極23は、第2電極と同様に、例えばITO、InZnOなどの透明導電膜、AgやAlなどの金属材料を10nm〜30nm程度の膜厚で形成した半透過膜を用いることができる。第3電極23のパターン形成の方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板1と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0026】
また、第1サブピクセルP1の第2有機化合物層32上には、第3電極23を形成する際に同時に形成された導電膜24が存在している。導電層24は、上述のパターニングによって、第3電極23と電気的に絶縁されている。
【0027】
なお、第2電極22a,22bのように、異なる有機化合物層の間に位置する電極は、導電層/絶縁層/導電層のように二つ以上の導電層の間に絶縁層を有する構成とし、異なる有機化合物層を独立駆動できるよう構成されていてもよい。
【0028】
また、図示していないが、有機EL表示装置の第2有機化合物層32及び第3電極23の上部に、有機EL表示装置と酸素や水分等との接触を防止する目的で、例えば、ガラス基板や封止缶等からなる封止部材を配設してもよい。
【0029】
本実施形態の有機EL表示装置は、カラーディスプレイとして機能できるように、例えば赤(R),緑(G),青(B)に発光する有機化合物層を含んでいる。本実施形態では、例えば第1有機化合物層は緑色発光、第2有機化合物層は赤色発光、第3有機化合物層は青色発光とする。
【0030】
次に、図3を参照して、本実施形態の有機EL表示装置における光干渉の条件式について説明する。図3は、第1の実施形態の有機EL表示装置における各発光層の発光領域と第1電極との間の光路長を示す概略図である。なお、光路長とは、実際の長さに材料の屈折率を乗じたものである。
【0031】
各発光層で発光が生じた場合、その光は構成する各層の屈折率及び吸収係数の違いにより、反射、屈折、透過、吸収等を繰り返して外部に取り出されることになる。その取り出される光量は様々な経路を通ってきた光が互いに干渉し、強め合うことで増大する。干渉の影響を考えた場合には、第1電極の反射率が最も高いため、発光位置から直接光取り出し方向へ向かう光と、第1電極の反射面で反射して取り出し方向へ向かう光との干渉効果が最も大きくなる。
【0032】
このとき、2L/λ+δ/2π=mの関係式(1)を満たすことで、干渉による光取り出し効率の向上が見込まれることになる。なお、上記関係式(1)中、Lは発光層の発光領域と第1電極の反射面との間の光路長、δは第1電極における位相シフト量δ、mは自然数である。
【0033】
上記関係式(1)は、文献Deppe J.Modern.Optics Vol41,No2,p325(1994)において、共振構造でのEL発光スペクトルの干渉強め合いの条件より導出されている。
【0034】
上記関係式(1)により、m=2の場合の第1有機化合物層31からのG発光、第2有機化合物層からのR発光、及び第3有機化合物層33からのB発光に関して、最適な光路長を求めたものが表1である。ここで、反射金属膜での位相シフト量は略πラジアンと考えてよいため、δはπとして計算している。
【0035】
【表1】
【0036】
λ1は第1有機化合物層31からの発光に関して強めたい波長であり、L1は第1有機化合物層31における発光領域から第1電極21aの反射面との間の光路長である。λ2は第2有機化合物層32からの発光に関して強めたい波長であり、L2は第2有機化合物層32における発光領域から第1電極21bの反射面との間の光路長である。λ3は第3有機化合物層33からの発光に関して強めたい波長であり、L3は第3有機化合物層33における発光領域から第1電極21bの反射面との間の光路長である。
【0037】
本実施形態では、λ1は530nm、λ2は620nm、λ3は450nmとした。表1から分かる通り、強めたい発光波長が異なると適切な光路長も異なる。同一の次数mとする場合は、波長が長い光を発する有機化合物層の膜厚をより厚くなることになる。
【0038】
本実施形態では、第1有機化合物層31は緑色発光、第2有機化合物層32は赤色発光、第3有機化合物層33は青色発光とする場合を例示したが、本発明は各有機化合物層31,32,33の発光色については限定されない。
【0039】
ただし、より好適には、本実施形態の有機化合物層の構成と発光色の組み合わせで構成するのが望ましい。その理由を、以下に説明する。光干渉の関係式(1)の次数mが大きくなると視野角特性が悪くなるため、次数mはできるだけ小さい値にすることが望ましい。このため、第2サブピクセルP2において、上層側の第2有機化合物層32は、最も波長の長い赤色発光とするのが望ましい。上層側の第2有機化合物層32は、下層側の第1有機化合物層31があることによって、発光領域と第1電極との光路長が長くなっているからである。また、下層側の第1有機化合物層31は、上層側の第2有機化合物層32の発光領域と第1電極との光路長を短くできるよう、最も波長の短い青色発光とするのが望ましい。
【0040】
図4は、本実施形態の比較形態となる有機EL表示装置1aの積層構造を示す模式図である。図4に示すように、この有機EL表示装置1aは、第3電極23が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に形成されている点以外は、図1の本実施形態の有機EL表示装置1と同じである。比較形態の有機EL表示装置1aでは、第2有機化合物層32は第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に形成されている。そのため、第2有機化合物層32の発光領域から第1電極の反射面との間の光路長は、第1有機化合物層31に積層されている箇所と、第3有機化合物層33に積層されている箇所とで異なる。したがって、第3有機化合物層33からの発光は、第1有機化合物層31に積層されている箇所と、第3有機化合物層33に積層されている箇所とで色度が異なる。
【0041】
これに対し、本実施形態の有機EL表示装置1では、第3電極23をパターン形成して第2サブピクセルP2のみに形成していることにより、第1サブピクセルP1における第2有機化合物層32を非発光としている。これにより、第2有機化合物層32からの発光色に関し、第2サブピクセルP2の第2有機化合物層32からの発光光と色度の異なる発光光が混ざることを防止している。このように本実施形態の有機EL表示装置1は、第2有機化合物層32を2つのサブピクセルに共通に形成する場合に発生する色度の異なる発光が混ざることによる画質の悪化を低減している。
【0042】
次に、図5(a)(b)を参照して、本実施形態の有機EL表示装置1の具体的な駆動方法について説明する。図5(a)は本実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図、図5(b)は有機EL表示装置の駆動波形の一例を示す説明図である。
【0043】
図5(a)に示すように、各画素は、スイッチング用TFT61a,61bと駆動用TFT62a,62bと積層された有機EL素子とコンデンサ63a,63bで構成されている。ここで、スイッチング用TFT61a,61bのゲート電極は、ゲート信号線51に接続されている。また、スイッチング用TFT61a,61bのソース領域はソース信号線52a,52bに、ドレイン領域は駆動用TFT62a,62bのゲート電極に接続されている。また、駆動用TFT62aのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は有機EL素子の第2電極22aに接続されている。また、駆動用TFT62bのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は有機EL素子の第2電極22bに接続されている。
【0044】
またコンデンサ63a,63bは電極のそれぞれが、駆動用TFT62a,62bのゲート電極とGND(接地)とに接続されるように形成されている。このように、駆動用TFT62a,62bと有機EL素子が直列に接続されており、有機EL素子に流れる電流をソース信号線52a,52bから供給されるデータ信号に応じて駆動用TFT62a,62bで制御することにより発光制御される。
【0045】
さらに図5(a)及び図5(b)を参照して、本実施形態の有機EL表示装置1の駆動動作を説明する。まず時間t1において、ゲート信号線51の電位をVgに設定すると、スイッチングTFT61a,61bがオン状態となる。第1有機化合物層を発光するソース信号線52aの電位Vsig_a1、第3有機化合物層を発光するソース信号線52bの電位Vsig_b1がTFT61a,61bを介してコンデンサ63a,63b及び駆動TFT62a,62bのゲート容量に充電される。
【0046】
時間t2において、ゲート信号線51の電位が0Vに設定され、スイッチングTFT61a,61bがオフ状態となり、コンデンサ63a,63bに充電された電圧が保持される。
【0047】
時間t3において、第1電極21a,21b及び第3電極23の電位がVcに設定される。このとき、電源供給線53は0Vのままなので、有機化合物層及び駆動用TFT62a,62bのソースドレイン間に電位差が生じる。これにより、第1有機化合物層31に第1電極21aから正孔が注入されると共に、第2電極22aから電子が注入される。また、第3有機化合物層33に第1電極21bから正孔が、第2電極22bから電子が注入される。これにより、第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33が発光する。なお、このとき第2有機化合物層32には逆方向電圧が印加されるため発光しない。有機発光層に流れる電流は駆動用TFT62a,62bで制御され、コンデンサ63a,63bに充電された電圧に応じて、駆動用TFT62a,62bのソースドレイン間に電流I_a1、I_b1が流れる。この状態は、時間t4まで維持される。
【0048】
時間t4において、第1電極21a,21b及び第3電極23の電位が0Vに設定される。すると、有機発光層及び駆動用TFT62a,62bのソースドレイン間に電位差が無くなるので、第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33は発光しなくなる。続いて、第2有機化合物層を発光させるための信号Vsig_b2がソース信号線52bに設定される。また、信号Vsig_a2がソース信号線52aに設定される。
【0049】
時間t5において、ゲート信号線51の電位をVgに設定すると、スイッチングTFT61a,61bがオン状態となる。それにより、ソース信号線52a,52bの電位Vsig_a2,Vsig_b2がスイッチングTFT61a,61bを介してコンデンサ63a,63b及び駆動用TFT62a,62bのゲート容量に充電される。
【0050】
時間t6において、ゲート信号線51の電位が0Vに設定され、スイッチングTFT61a,61bがオフ状態となり、コンデンサ63a,63bに充電された電圧が保持される。
【0051】
時間t7において、電源供給線53の電位がVcに設定される。このとき、第1電極21a,21b及び第3電極23の電位が0Vなので、有機発光層及び駆動用TFT62a,62bのソースドレイン間に電位差が生じる。これにより、第2有機化合物層32に第2電極22bから正孔が注入されると共に、第3電極23から電子が注入され発光が得られる。なお、このとき、第1有機化合物層31、第3有機化合物層33には逆方向電圧が印加されるため発光しない。発光層に流れる電流は駆動用TFT62bで制御され、コンデンサ63bに充電された電圧に応じて、駆動用TFT62bのソースドレイン間に電流I_b2が流れる。この状態は、時間t8まで維持される。
【0052】
時間t8において、電源供給線53の電位が0Vに設定される。すると、有機発光層及び駆動用TFT62a,62bのソースドレイン間に電位差が無くなるので、第2有機化合物層32は発光しなくなる。
【0053】
上述の動作を繰り返すことで、第1有機化合物層31、第2有機化合物層32、第3有機化合物層33を時分割で発光させることができる。具体的には、人間が識別できない程度、例えば60Hz程度あるいはそれ以上高い周期で駆動することにより、第1有機化合物層31、第3有機化合物層33の発光色と、第2有機化合物層32の発光色との任意の混合色の光を表現することができる。
【0054】
以上説明したように、第1の実施形態の有機EL表示装置1によれば、第2有機化合物層を挟持する第2電極22a,22b及び第3電極23のうち、光取り出し側の第3電極23を第2サブピクセルP2のみに形成している。したがって、第2有機化合物層を第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に形成する場合に、色度の異なる発光光が混ざって画質が悪化するのを低減できる。
【0055】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、図1の構成の有機EL表示装置1を時分割駆動する場合について説明した。第2の実施形態では、図1と同様の有機化合物層及び電極の構成であり、各有機EL素子を独立駆動する形態について説明する。第1の実施形態との違いは、各電極の駆動トランジスタとの配線接続形態や、各電極同士の電気的接続形態だけである。
【0056】
図6は、第2の実施形態の有機EL表示装置2の1画素領域における積層構造を示す模式図である。図6に示すように、平坦化層には、平坦化層上部に形成される電極と、駆動用薄膜トランジスタ11aとの導通をとるためのコンタクトホール13a,13b,13cが形成されている。
【0057】
第1電極21a,21bは、コンタクトホール13a、コンタクトホール13bを介してそれぞれ駆動用薄膜トランジスタ11aに接続されている。第1電極21a,21b上には、第1の実施形態と同様に、第1サブピクセルP1に第1発光層を含む第1有機化合物層31が、第2サブピクセルP2に第3発光層を含む第3有機化合物層33がそれぞれ形成されている。第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。発光層を含む各有機化合物層には、公知の材料を用いることができる。
【0058】
第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33上には、第2電極22a,22bがそれぞれパターン形成されている。第2電極22a,22bのパターン形成の方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0059】
図示していないが、第2電極22aと第2電極22bは電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で画素ごとに接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。また図6では、第2電極22a,22bがパターン形成された構成を図示しているが、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に形成してもよい。また、第2電極22a,22bは、平坦下層12のコンタクトホール(不図示)と有機化合物層31または32のコンタクトホール(不図示)を介して、回路素子部と電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。
【0060】
第3有機化合物層33の形成及び第2電極22bの形成後、第3有機化合物層33にコンタクトホール14cを形成する。コンタクトホール14cの形成方法は、例えば、レーザー加工が好ましく、YAGレーザー(SHG、THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用する公知の手法を用いることができる。これらのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33上に所定のパターンで照射する。これにより、所望の位置にコンタクトホールを形成できる。コンタクトホール14cの径としては、例えば2μm〜15μmが好ましい。
【0061】
第2電極22a,22b上には、第1の実施形態と同様に、第2発光層を含む第2有機化合物層32が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に形成されている。第2有機化合物層32の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。また、発光層を含む第2有機化合物層32には、公知の材料を用いることができる。
【0062】
また、第2有機化合物層32の形成後、第2有機化合物層32にコンタクトホール14dを形成する。コンタクトホール14dの形成方法は、上述したコンタクトホール14cの形成方法と同様である。例えば、YAGレーザー、エキシマレーザーなどのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、第2有機化合物層32上に所定のパターンで照射し、コンタクトホール14dを形成する。コンタクトホール14dの径としては、例えば、2μm〜15μmが好ましい。
【0063】
有機化合物層の形成とコンタクトホールの形成の順序は、上述の様に、第3有機化合物層の形成及び第2電極22bの形成後にコンタクトホール14cを形成し、第2有機化合物層を形成し、コンタクトホール14dを形成してもよいし、次のようにしてもよい。即ち、第3有機化合物層の形成及び第2電極22bの形成後、第2有機化合物層を形成し、その後にコンタクトホール14cと14dを一括に形成してもよい。
【0064】
第2有機化合物層32の形成及びコンタクトホール14dの形成後、第2サブピクセルP2における第2有機化合物層32上には、第3電極23が形成される。第3電極23は、コンタクトホール14d及び14c、コンタクトホール13cを介して駆動用薄膜トランジスタ11aに接続されている。第3電極23のパターン形成の方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0065】
また、第1サブピクセルP1の第2有機化合物層32上には、第3電極23を形成する際に同時に形成された導電膜24が存在している。導電層24は、上述のパターニングによって、第3電極23と電気的に絶縁されている。
【0066】
なお、本実施形態の有機EL表示装置では、第2有機化合物層32の極性が、第1有機化合物層31及び第3有機化合物層33と逆になるよう形成されている。
【0067】
次に図7は、第2の実施形態の有機EL表示装置の各画素の等価回路を示す説明図である。上述の電極構成の違いに伴う配線構造と、第2有機化合物層32の極性のみが、第1の実施形態と異なる。
【0068】
図7に示すように、各画素は、スイッチング用TFT61a,61b、61cと駆動用TFT62a,62b,62cと積層された有機EL素子とコンデンサ63a,63b、63cで構成されている。ここで、スイッチング用TFT61a,61b,61cのゲート電極は、ゲート信号線51に接続されている。また、スイッチング用TFT61a,61b,61cのソース領域はソース信号線52a,52b、52cに、ドレイン領域は駆動用TFT62a,62b、62cのゲート電極に接続されている。さらに、駆動用TFT62aのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は有機EL素子の第1電極21aに接続されている。そして、駆動用TFT62bのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は有機EL素子の第1電極21bに接続されている。駆動用TFT62cのソース領域は電源供給線53に、ドレイン領域は有機EL素子の第3電極23に接続されている。また、コンデンサ63a,63b,63cは電極のそれぞれが、駆動用TFT62a,62b,62cのゲート電極とGND(接地)とに接続されるように形成されている。
【0069】
このように駆動用TFT62a,62b,62cと有機EL素子が直列に接続されており、有機EL素子に流れる電流をソース信号線52a,52b,52cから供給されるデータ信号に応じて駆動用TFT62a,62b,62cで制御することにより発光制御される。
【0070】
以上のように構成とすることで、第1有機化合物層31、第2有機化合物層32、第3有機化合物層33を独立に駆動することができる。
【0071】
第2の実施形態の有機EL表示装置2は、第1の実施形態との違いが各電極の駆動トランジスタとの配線接続形態や、各電極同士の電気的接続形態だけであるので、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0072】
<第3の実施形態>
第1の実施形態では、第2有機化合物層32の形成後、第2サブピクセルP2に第3電極23をパターン形成し、第1サブピクセルP1においては、第2有機化合物層32上に、第3電極23と電気的に絶縁された導電膜24が存在する形態を示した。
【0073】
第3の実施形態では、第2有機化合物層32の形成後、第2サブピクセルP2に第3電極23をパターン形成する。さらに、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に、金属材料からなる導電層や、ITO、IZOなどの屈折率が第2有機化合物層32以上である非金属導電膜層を配置しない形態を説明する。
【0074】
以下、第1の実施形態と相違のある点を中心に説明する。図8は、第3の実施形態の有機EL表示装置3の1画素領域における積層構造を示す模式図である。
【0075】
第2有機化合物層32の形成までは、第1の実施形態の有機EL表示装置1と同様である。図8に示すように、第2有機化合物層32の形成後、第2サブピクセルP2における第2有機化合物層32上には、第3電極23が形成される。図示していないが、第1電極21a,21bと第3電極23は、電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で画素ごとに接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。また、第1電極21a,21b、及び第3電極23は、平坦下層12のコンタクトホール(不図示)、有機化合物層31、32、33のコンタクトホール(不図示)を介して回路素子部と電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。
【0076】
第3電極23には、第2電極と同様に、例えば、ITO、IZOなどの透明導電膜、AgやAlなどの金属材料を10nm〜30nm程度の膜厚で形成した半透過膜を用いることができる。第3電極23のパターン形成方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0077】
本実施形態の有機EL表示装置3と、第1の実施形態の有機EL表示装置1との相違は、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に、金属材料からなる導電層や、ITO、IZOなどの屈折率が第2有機化合物層32以上である非金属導電膜層を配置していない点である。
【0078】
第3の実施形態の有機EL表示装置3では、第2サブピクセルP2のみに第3電極23をパターン形成する。さらに、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に、金属材料からなる導電層や、ITO、IZOなどの屈折率が第2有機化合物層層32以上である非金属導電膜層を配置しない構成としている。これにより、図4に示した比較形態の有機EL表示装置1aに対し、発光効率の低下を抑制している。その理由を以下に説明する。
【0079】
第3の実施形態の有機EL表示装置3と比較形態の有機EL表示装置1aの構成上の相違である第1サブピクセルP1に注目する。比較形態の有機EL表示装置1aの構成では、第2有機化合物層32上に第3電極23が形成されている。第3電極23には、例えば、AgやAl等の金属材料を10nm〜30nm程度の膜厚で形成した半透過膜や、ITO、IZOなどの透明性を有する非金属の導電膜が用いることが考えられる。
【0080】
このとき、第3電極23に金属電極を用いた場合、一部の光は有機EL素子側に反射される。また、非金属の透明導電膜を用いた場合、非金属膜と空気層の界面において、R=(n1−n2)2/(n1+n2)2の関係式(2)から算出される割合のエネルギーの光が反射される。なお、関係式(2)中、Rはエネルギー反射率、n1は非金属層の屈折率、n2は空気層の屈折率である。
【0081】
この関係式(2)は、透明体に対して垂直入射する場合のフレネルの関係式である。このような空気層との界面での反射光が、発光層の発光領域と第1電極の反射面との間の光路長が関係式(1)を満足することにより強めあった発光と干渉してしまうと、取り出し光の効率が低下する。
【0082】
比較形態の有機EL表示装置1aにおいて、例えば第3電極23にIZOを用いた場合、電極と空気層の界面での反射光の割合は、IZOの屈折率が約2.1、空気層の屈折率が1であることから、関係式(2)により12.6%程度となる。これに対し、本実施形態の有機EL表示装置3の第1サブピクセルP1では、空気層との界面を形成するのは第2有機化合物層32である。この場合の空気層との界面での反射光の割合は、一般に有機化合物層の屈折率が1.7程度と考えられることから、関係式(2)により6.7%程度となる。
【0083】
したがって、本実施形態の有機EL表示装置3では、第1有機化合物層31からの発光光のうち、空気層との界面で反射し干渉に寄与する光の割合が比較形態の有機EL表示装置1aに比して低減しており、発光効率の低下を抑制し、消費電力の上昇を抑制している。
【0084】
本実施形態の有機EL表示装置3では、第2サブピクセルP2のみに第3電極23をパターン形成し、第1サブピクセルP1に金属材料からなる導電層や、ITO、IZOなどの屈折率が第2有機化合物層32以上である非金属導電膜層を配置していない。これにより、空気層との界面で反射し干渉に寄与する光の割合を比較形態の有機EL表示装置1aに比して低減している。
【0085】
即ち、第1サブピクセルP1において、第1電極の反射面からの光路長が第1の有機EL素子からの発光光の可干渉距離以下である領域の中で最も光取出し側にある反射界面が、第2有機化合物層32の光取り出し側の表面となっている。
【0086】
本実施形態では、第1サブピクセルP1において、空気層との界面を形成する層が第2有機化合物層32である場合を示した。これに限らず、第2有機化合物層32の上に、非金属で透明性を有し、屈折率が空気層の屈折率以上で、第2有機化合物層32の屈折率以下である物質からなる層が形成されていてもよい。このような構成とすることで、上述した発光効率の低下をさらに抑制することができる。
【0087】
例えば、第2有機化合物層32の上に、屈折率1.5の有機樹脂層が形成されている場合を考える。有機樹脂層は、非金属で透明性を有し、屈折率が空気層の屈折率以上で、一般に有機層の屈折率が1.7程度と考えられることから第2有機化合物層32の屈折率以下である。この場合、第1サブピクセルP1では、空気層との界面を形成するのは有機樹脂層である。この場合の空気層との界面での反射光の割合は、関係式(2)により4%程度となる。このように、空気層との界面を形成するのが第2有機化合物層32である場合よりも、空気層界面での反射の割合を低減することができ、発光効率の低下をさらに抑制することができる。
【0088】
即ち、第1サブピクセルにおいて、第2有機化合物層の光取り出し側の表面と、第1電極の反射面からの光路長が第1の有機EL素子からの発光の可干渉距離以下である領域の中で最も光取出し側にある反射界面との間に、所定の物質からなる層を配置している。所定の物質からなる層とは、非金属で透明性を有し、屈折率が第1サブピクセルP1の最も光取り出し側にある有機化合物層の屈折率と、可干渉距離以下である領域の直上の層である物質の屈折率との間の値をもつ物質からなる層である。この場合、屈折率が第1サブピクセルP1の最も光取り出し側にある有機化合物層とは第2有機化合物層であり、第1電極の反射面からの光路長が第1の有機EL素子からの発光光の可干渉距離以下である領域の直上の層は空気層である。
【0089】
本実施形態の有機EL表示装置3の駆動方法については、第1の実施形態と同様に時分割駆動をしてもよいし、第2の実施形態と同様の電極構成及びコンタクトホール構成として独立駆動をしてもよい。
【0090】
第3の実施形態の有機EL表示装置3は、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。特に第3の実施形態の有機EL表示装置3では、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に導電層や非金属導電膜層を配置しないことで、第1有機化合物層31からの発光光のうち、空気層との界面で反射し干渉に寄与する光の割合を比較形態の有機EL表示装置1aに比して低減しており、発光効率の低下を抑制し、消費電力の上昇を抑制している。
【0091】
<第4の実施形態>
第4の実施形態では、第3の実施形態の有機EL表示装置3の第2有機化合物層32の上部に、素子保護層9を設ける形態を説明する。第3の実施形態との相違は、素子保護層9の有無のみであり、有機化合物層の構成、電極構成等は第3の実施形態と同様である。以下、第3の実施形態と相違のある点を中心に説明する。
【0092】
図9は、第4の実施形態の有機EL表示装置4の1画素領域における積層構造を示す模式図である。図4に示すように、それぞれのサブピクセルP1,P2の最も光取り出し側に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に素子保護層9が形成されている。具体的には、第1サブピクセルP1における第2有機化合物層32の上部、及び第2サブピクセルP2における第3電極23の上部に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に素子保護層9が形成されている。これにより、本実施形態の有機EL表示装置4と酸素や水分等との接触を防止することができる。
【0093】
素子保護層9としては、非金属である物質から構成されるのが望ましく、例えば有機樹脂を10〜20μm程度堆積し、最上部にガラス部材を設けた構造や、有機樹脂と窒化酸化シリコン等の無機物質を共に含む構造とすることができる。
【0094】
第4の実施形態の有機EL表示装置4は、第1電極21a,21bの反射面と、素子外部の空気層との反射界面である素子保護層9の最上面との間の光路長が、第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以上となっている。このような構成にすることで、第1有機化合物層31からの発光光で、屈折率差の大きい空気層との界面での反射光による干渉効果が、取り出し光に重畳することを防止できる。
【0095】
具体的には、光路長が2μm以上で光学干渉が起こり難くなるという条件から、第1電極21a,21bの反射面と、素子外部の空気層との反射界面である素子保護層9の最上面との間の光路長を2μm以上としている。このような構成では、第1電極21a,21bの反射面からの光学的距離が第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以下の領域内にある反射界面についてのみ、反射光による干渉効果を考えればよい。
【0096】
図10は、第4の実施形態における素子保護層と光学干渉条件を説明する図である。図10において、(a)は素子保護層9として、有機樹脂と窒化酸化シリコン等の無機物質を共に含む構造とした有機EL表示装置4aを示している。
【0097】
図10(a)に示すように、有機EL表示装置4aは、第1サブピクセルP1では第2有機化合物層32上に、第2サブピクセルP2では第3電極23上に、無機化合物層91が堆積されている。そして無機化合物層91上に、有機樹脂層92、無機化合物層93が堆積されている。
【0098】
無機化合物層91の構成材料として、例えば、SiN、SiO2等が挙げられるが、耐水性、耐熱性に優れた材料であればよく、これに限定されない。無機化合物層91の膜厚は、100〜200nm程度が望ましい。これにより、発光素子部と酸素や水分等との接触を防止することができる。
【0099】
なお、第2有機化合物層32上または第2電極23上に、無機化合物層91の膜厚と同程度以上の大きさの異物が存在する場合、無機化合物層91だけでは発光素子部を被覆しきれないことがある。本実施形態の有機EL表示装置4aでは、無機化合物層91上に、有機樹脂層92が異物の大きさよりも十分大きいと考えられる膜厚で堆積されている。具体的には、例えば10μm程度の膜厚とするのが好ましい。そして、有機樹脂層92上に無機化合物層93が堆積されている。無機化合物層93の構成材料としては、例えばSiN、SiO2等が挙げられるが、耐水性、耐熱性に優れた材料であればよく、これに限定されない。無機化合物層93の膜厚は、例えば100〜200nm程度が望ましい。このように、無機化合物層91の上に、厚膜の有機樹脂層92、無機化合物層93をさらに堆積する。これにより、第2有機化合物層32上または第3電極23上に、無機化合物層91の膜厚と同程度以上の大きさの異物が存在する場合でも、有機樹脂層92及び無機化合物層93によって発光素子部を被覆することができる。したがって、発光素子部と酸素や水分等との接触を防止することができる。
【0100】
次に図10(b)を参照して、本実施形態の有機EL表示装置4aにおける光学干渉関係について説明する。図10(b)は、有機EL表示装置4aの第1サブピクセルP1について、第1電極21aの反射面と、素子外部の空気層との反射界面である素子保護層9の最上面との間の光路長Ltを示している。本実施形態の有機EL表示装置4aでは、この光路長Ltが第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以上となっている。なお、光路長とは、前述の通り、実際の長さに材料の屈折率を乗じたものである。
【0101】
本実施形態の有機EL表示装置4aにおいて、無機化合物層91にSiNを用いた場合における第1サブピクセルP1での各界面での反射の割合を考える。SiNの屈折率は1.8程度、有機樹脂の屈折率は1.5程度と考えられる。したがって、以下では第2有機化合物層32の屈折率を1.7、無機化合物層91の屈折率を1.8、有機樹脂層92の屈折率を1.5とし、関係式(2)に則して各界面の反射の割合を算出する。
【0102】
本実施形態の有機EL表示装置4aでは、有機樹脂層92が10μm程度堆積されていることから、第1電極21a,21bの反射面からの光路長が第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以下である領域は、有機樹脂層92より下層側の領域である。この領域内にある反射界面として、第2有機化合物層32と無機化合物層91との界面、及び無機化合物層91と有機樹脂層92との界面での反射の割合は、関係式(2)により、それぞれ約0.08%、約2.3%である。したがって、第2有機化合物層32を透過した第1有機化合物層31からの発光で、第2有機化合物層32より上部にある反射界面からの反射光の割合は、(1−0.0008)×0.023≒0.023で、略2.3%である。
【0103】
これに対し、比較形態の有機EL表示装置1a及び第3の実施形態の有機EL表示装置3では、第2有機化合物層32より上部にある反射界面からの反射光の割合は、前述の通り、それぞれ約12.6%、約6.7%であった。従って、第4の実施形態の有機EL表示装置4では、第1有機化合物層31からの発光のうち、干渉に寄与する光の割合が比較形態の有機EL表示装置1a及び第3の実施形態の有機EL表示装置3に比して低減しており、発光効率の低下をさらに抑制でき、消費電力の上昇を抑制できる。
【0104】
本実施形態の有機EL表示装置4aでは、素子保護層9を形成する各層での反射界面での屈折率差が、第2有機化合物層と空気層との屈折率差以下である。このような場合、第3の実施形態の有機EL表示装置3に比して、干渉に寄与する光の割合が低減する。
【0105】
本実施形態の有機EL表示装置4aでは、第3の実施形態の有機EL表示装置3に対し、素子保護層9を設けることで、第1電極21aの反射面と、素子外部の空気層との反射界面との光路長を第1有機化合物層からの発光光の可干渉距離以上とした。これにより、屈折率差の大きい空気層との反射界面での反射光の影響をなくすことにより、発光効率の低下を抑制した。
【0106】
本実施形態の有機EL表示装置4aにおいて無機化合物層91にSiNを用いた場合は、各層の屈折率の大小関係が次のようになっている。即ち、第1電極21aの反射面からの光路長が第1有機化合物層からの発光の可干渉距離以下である領域の直上の層である有機樹脂層92と、第2有機化合物層との間に、屈折率が第2有機化合物層の1.7よりも大きい1.8であるSiN(91)がある。これに対し、有機樹脂層92と第2有機化合物層32との間に物質がない、もしくは屈折率が有機樹脂層92の屈折率と第2有機化合物層32の屈折率の間の値をとる物質のみが存在する構成とすることで、発光効率の低下をさらに抑制できる。この例を、図10(c)に示す。
【0107】
図10(c)では、素子保護層9として、第1サブピクセルP1では第2有機化合物層32上に、第2サブピクセルP2では第3電極23上に、有機樹脂層94を10〜20μm程度堆積している。そして、最上部にガラス部材95を設けた構造とした有機EL表示装置4を示している。
【0108】
図10(d)を参照して、本実施形態の有機EL表示装置4bにおける光学干渉関係について説明する。図10(d)には、本実施形態の有機EL表示装置4bのサブピクセルP1について、第1電極21aの反射面と、素子外部の空気層との反射界面である素子保護層9の最上面との間の光路長Ltを示している。本実施形態の有機EL表示装置4bでは、この光路長Ltが第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以上となっている。なお、光路長とは、前述の通り、実際の長さに材料の屈折率を乗じたものである。
【0109】
本実施形態の有機EL表示装置4bにおいて、第1サブピクセルP1での各界面での反射の割合を考える。有機樹脂の屈折率は1.5程度と考えられることから、以下では第2有機化合物層32の屈折率を1.7、有機樹脂層92の屈折率を1.5とし、関係式(2)に則して各界面の反射の割合を算出する。
【0110】
本実施形態の有機EL表示装置4bでは、有機樹脂層94が10〜20μm程度堆積されていることから、第1電極21aの反射面からの光路長が第1有機化合物層31からの発光光の可干渉距離以下である領域は、有機樹脂層94より下層側の領域である。この領域内にある反射界面として、第2有機化合物層32と有機樹脂層94の界面での反射の割合は、関係式(2)により、約0.4%である。
【0111】
したがって、本実施形態の有機EL表示装置4bでは、第1有機化合物層31からの発光のうち、干渉に寄与する光の割合が有機EL表示装置4aに対して低減しており、発光効率の低下をさらに抑制でき、消費電力の上昇を抑制できる。
【0112】
本実施形態の有機EL表示装置4bでは、上記の有機EL表示装置4aと同様に、素子保護層9を形成する各層での反射界面での屈折率差が、第2有機化合物層と空気層との屈折率差以下である。このような場合、第3の実施形態の有機EL表示装置3に比して、干渉に寄与する光の割合が低減する。
【0113】
また、有機EL表示装置4bは、即ち、第1サブピクセルにおいて、第1電極21aの反射面からの光路長が第1有機化合物層からの発光光の可干渉距離以下である領域の中で最も光取出し側にある反射界面が、第2有機化合物層の光取り出し側の表面となっている。この場合、第1電極21aの反射面からの光路長が第1有機化合物層からの発光光の可干渉距離以下である領域の直上の層は有機樹脂層94である。
【0114】
第4の実施形態の有機EL表示装置の駆動方法については、第1の実施形態と同様に時分割駆動をしてもよいし、第2の実施形態と同様の電極構成及びコンタクトホール構成として独立駆動をしてもよい。
【0115】
第4の実施形態の有機EL表示装置4a、4bは、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。特に第4の実施形態の有機EL表示装置4a、4bでは、第3の実施形態の有機EL表示装置3に対し、素子保護層9を設けることで、屈折率差の大きい空気層との反射界面での反射光の影響をなくすことにより、発光効率の低下を抑制でき、消費電力の上昇を抑制できるという特有の効果を奏する。
【0116】
<第5の実施形態>
第1の実施形態では、第2有機化合物層32が、第1有機化合物層31と第3有機化合物層33の上部に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成される形態を示した。第5の実施形態は、第2有機化合物層32が双方のサブピクセルP1,P2に共通形成され、第1サブピクセルP1に形成された第1有機化合物層31の上部に形成されている。さらに、第2サブピクセルP2において、この第2有機化合物層32の上部に、第3有機化合物層33が形成される形態である。以下、第1の実施形態と相違のある点を中心に説明する。
【0117】
図11は、第5の実施形態の有機EL表示装置6の1画素領域における積層構造を示す模式図である。図11に示すように、平坦化層には、平坦化層上部に形成される電極と、駆動用薄膜トランジスタ11aとの導通をとるためのコンタクトホール13a,13bが形成されている。
【0118】
第1電極21a,21bの形成後、第1サブピクセルP1に第1発光層を含む第1有機化合物層31が形成される。第1有機化合物層31の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。発光層を含む各有機化合物層には、公知の材料を用いることができる。第1有機化合物層31の形成後、これらの有機化合物層に、コンタクトホール14aを形成する。コンタクトホール14aの形成方法は、例えば、レーザー加工が好ましく、YAGレーザー、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用する公知の手法を用いることができる。これらのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、第1有機化合物層31上に所定のパターンで照射することにより所望の位置にコンタクトホール14aを形成できる。コンタクトホール14aの径は、例えば2μm〜15μm程度が好ましい。
【0119】
続いて、第1有機化合物層31上に、第2電極22aがパターン形成される。第2電極22aは、コンタクトホール14a及び13aを介して駆動用薄膜トランジスタ11aに接続されている。第2電極22aのパターン形成方法としては、例えば、表示領域の全領域に電極材料を成膜した後にレーザー加工で行ってもよいし、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成するようにしてもよい。また、電極材料が形成された基板を基板10と対向させてレーザーアブレーションにより選択的に転写形成してもよい。
【0120】
第2電極22a上には、第2発光層を含む第2有機化合物層32が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成されている。第2有機化合物層32の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。また、発光層を含む第2有機化合物層32には、公知の材料を用いることができる。
【0121】
第2有機化合物層32の形成後、これらの有機化合物層の第2サブピクセルP2の領域に、コンタクトホール14bを形成する。コンタクトホール14bの形成方法は、上述したコンタクトホール14aの形成方法と同様である。即ち、例えばYAGレーザー、エキシマレーザーなどのレーザー光を数μmに絞って走査したり、面状光源にしてコンタクトホール部分を透過するマスクを介したりして、第2有機化合物層32上に所定のパターンで照射し、コンタクトホール14bを形成する。コンタクトホール14bの径は、例えば2μm〜15μm程度が好ましい。
【0122】
第2有機化合物層32の形成及びコンタクトホール14bの形成後、第2有機化合物層32上には、第2サブピクセルP2に第2電極22bが形成される。第2電極22bは、コンタクトホール14b及び13bを介して駆動用薄膜トランジスタに接続されている。第2電極22bのパターン形成方法は、第2電極22aと同様である。
【0123】
第2電極22b形成後、第2電極22b上には、第2サブピクセルP2に第3発光層を含む第3有機化合物層33が形成される。第3有機化合物層33の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。発光層を含む各有機化合物層には、公知の材料を用いることができる。
【0124】
第3有機化合物層33上には、第2サブピクセルP2のみに第3電極23が形成される。図示していないが、第1電極21a,21bと第3電極23は、電気的に接続されている。接続の形態は、例えば、表示領域内で画素ごとに接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。第3電極23のパターン形成方法は、第2電極22a,22bと同様である。また、第1電極21a,21b、及び第3電極23は、平坦下層12のコンタクトホール(不図示)、有機化合物層31、32、33のコンタクトホール(不図示)を介して回路素子部と電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。
【0125】
また、第1サブピクセルP1の第2有機化合物層32上には、第3電極23を形成する際に同時に形成された導電膜24が存在している。導電層24は、上述のパターニングによって、第3電極23と電気的に絶縁されている。
【0126】
第5の実施形態の有機EL表示装置5は、第1の実施形態の有機EL表示装置1と同様に、第2サブピクセルP2のみに第3電極23をパターン形成していることにより、第1サブピクセルP1における第2有機化合物層32を非発光としている。これにより、第2有機化合物層32からの発光色に関し、第2サブピクセルP2の第2有機化合物層32からの発光と色度の異なる発光光が混ざることを防止している。
【0127】
さらに、本実施形態の有機EL表示装置5は、中間電極である第2電極22aと22bの間に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に第2有機化合物層32が形成されている。これにより、次のようにサブピクセル間で第2電極22aと第2電極22bが短絡する確率を下げることができ、有機EL表示装置の製造歩留まりを向上できる。
【0128】
第2電極22a,22bのパターン形成方法として、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法により選択的に形成する場合を考える。第1の実施形態の有機EL表示装置1のように、第2電極22aと22bの間に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に共通に形成された層がない構成では、一定の確率で第2電極22aと22bが接触して形成されてしまう不良が起こり得る。これは、次に述べる理由による。
【0129】
シャドーマスクの設計上、第2電極22aと22bが分離して形成されるように、マスクのアライメント精度や蒸着ずれを考慮して、マスク開口が形成される。しかし、一定の確率で発生するマスクの大きな歪みや熱による膨張等で、電極の蒸着位置がずれ、上述の不良が発生する。
【0130】
このような不良が発生しないように、シャドーマスクの開口をさらに離すよう設計してもよい。しかし、マスク開口を離せば、電極が形成される面積が減少し、この電極が挟持する有機EL素子の発光面積が減少してしまう。
【0131】
これに対し、本実施形態の有機EL表示装置5では、第2電極22a,22bの蒸着位置がずれても、第2電極22aと22bの間に第2有機化合物層32が形成されているため、第2電極22aと22bが短絡することがない。このようにして、第5の実施形態の有機EL表示装置5では、有機EL素子の発光面積を必要以上に減少させることなく、サブピクセル間で第2電極22aと第2電極22bが短絡する確率を低減できる。
【0132】
本実施形態の有機EL表示装置5は、各有機化合物層の構成と発光色の組み合わせについては限定されない。ただし、より好適な構成としては、第1の実施形態で述べた理由から、第1有機化合物層31は緑色発光、第2有機化合物層32は青色発光、第3有機化合物層33は赤色発光とするのが望ましい。
【0133】
また、第5の実施形態の有機EL表示装置5の駆動方法については、第1の実施形態と同様に時分割駆動をしてもよいし、第2の実施形態と同様の電極構成及びコンタクトホール構成として独立駆動をしてもよい。
【0134】
さらに、第5の実施形態の有機EL表示装置5に対し、第3の実施形態のように、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に、金属材料からなる導電層や、屈折率が第2有機化合物層以上である非金属導電膜層を配置しない構成としてもよい。このようにすることで、第3の実施形態の有機EL表示装置3と同様に、発光効率の低下を抑制でき、消費電力の上昇を抑制できる。
【0135】
そして、第5の実施形態の有機EL表示装置5に対し、第4の実施形態のように素子保護層9を設けてもよい。このようにすることで、第4の実施形態の有機EL表示装置4a、4bと同様に、屈折率差の大きい空気層との反射界面での反射光の影響をなくすことができ、発光効率の低下を抑制し、消費電力の上昇を抑制できる。
【0136】
<第6の実施形態>
第5の実施形態では、第2有機化合物層32が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成され、第1サブピクセルP1に形成された第1有機化合物層31の上部にされている。そして、第2のサブピクセルP2において、第3有機化合物層33が第2有機化合物層32の上部に形成される形態を示した。第6の実施形態では、第3有機化合物層33も、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成され、第2有機化合物層32の上部に形成される形態である。以下、第5の実施形態と相違のある点を中心に説明する。
【0137】
図12は、第6の実施形態の有機EL表示装置6の1画素領域における積層構造を示す模式図である。第2電極22b形成までは、第5の実施形態の有機EL表示装置5と同様である。図12に示すように、第2電極22bの形成後、第2電極22b上には、第3発光層を含む第3有機化合物層33が第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成される。第3有機化合物層33の各層は、例えば、シャドーマスクを用いた蒸着法などの公知の手法で形成される。
【0138】
第3有機化合物層33上には、第2サブピクセルP2のみに第3電極23が形成されている。図示していないが、第1電極21a,21bと第3電極23は、電気的に接続されている。接続の形態は、例えば、表示領域内で画素ごとに接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。また、第1電極21a,21b、及び第3電極23は、平坦下層12のコンタクトホール(不図示)、有機化合物層31、32、33のコンタクトホール(不図示)を介して回路素子部と電気的に接続されている。接続の形態は、表示領域内で接続されていてもよいし、表示領域外で接続されていてもよい。
【0139】
第3電極23のパターン形成方法は、第2電極22a,22bと同様である。また、第1サブピクセルP1の第2有機化合物層32上には、第3電極23を形成する際に同時に形成された導電膜24が存在している。導電層24は、前述のパターニングによって、第3電極23と電気的に絶縁されている。
【0140】
第6の実施形態の有機EL表示装置6では、第2有機化合物層32と第3有機化合物層33を、双方のサブピクセルに共通に形成して、第1の実施形態の有機EL表示装置1や第5の実施形態の有機EL表示装置5に対し、プロセス工程を簡便化している。
【0141】
第6の実施形態の有機EL表示装置6は、第1の実施形態の有機EL表示装置1や第5の実施形態の有機EL表示装置5と同様に、第2サブピクセルP2のみに第3電極23をパターン形成している。これにより、第1サブピクセルP1における第2有機化合物層32及び第3有機化合物層33を非発光としている。そして、第2有機化合物層及び第3有機化合物層からの発光色に関し、第2サブピクセルP2の第2有機化合物層及び第3有機化合物層からの発光と色度の異なる発光光が混ざることを防止している。
【0142】
本実施形態の有機EL表示装置6は、各有機化合物層の構成と発光色の組み合わせについては限定されない。ただし、より好適な構成としては、第1の実施形態で述べた理由から、第5の実施形態と同様に第1有機化合物層31は緑色発光、第2有機化合物層32は青色発光、第3有機化合物層33は赤色発光とするのが望ましい。
【0143】
また、第6の実施形態の有機EL表示装置6の駆動方法については、第1の実施形態と同様に時分割駆動をしてもよいし、第2の実施形態と同様の電極構成及びコンタクトホール構成として独立駆動をしてもよい。
【0144】
さらに、第6の実施形態の有機EL表示装置6に対し、第3の実施形態のように、第1サブピクセルP1において、第2有機化合物層32上に、金属材料からなる導電層や、屈折率が第2有機化合物層以上である非金属導電膜層を配置しない構成としてもよい。このようにすることで、第3の実施形態の有機EL表示装置3と同様に、発光効率の低下を抑制でき、消費電力の上昇を抑制できる。
【0145】
そして、第6の実施形態の有機EL表示装置6に対し、第4の実施形態のように素子保護層9を設けてもよい。このようにすることで、第4の実施形態の有機EL表示装置4a、4bと同様に、屈折率差の大きい空気層との反射界面での反射光の影響をなくすことができ、発光効率の低下を抑制し、消費電力の上昇を抑制できる。
【0146】
本実施形態の有機EL表示装置6は、第3有機化合層が、第1の有機EL素子よりも光取り出し側に、第1サブピクセルP1及び第2サブピクセルP2に亘って共通に形成されているので、プロセス工程を簡便化することができる。
【0147】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【0148】
上記の実施形態では、本発明を基板側とは反対側(透明電極側)から有機EL素子の光を取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置に適用したが、第2の実施形態は、基板側から光を取り出すボトムエミッション型の有機EL表示装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0149】
1、2、3、4、4a、4b、5、6 有機EL表示装置、10 基板、21a,21b 第1電極、22a,22b 第2電極、23 第3電極、24 導電膜、31 第1有機化合物層、32 第2有機化合物層、33 第3有機化合物層、9 素子保護層、91 無機化合物層、92 有機樹脂層、93 無機化合物層、94 有機樹脂層、95 ガラス部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域に複数の画素を備え、各画素に第1サブピクセルと第2サブピクセルとが並列配置された有機EL表示装置であって、
前記第1サブピクセルは、対向する電極の間に挟持された第1発光層を含む第1有機化合物層を有し、
前記第2サブピクセルは、対向する電極の間に挟持された第3発光層を含む第3有機化合物層を有し、
前記第1サブピクセル及び第2サブピクセルに亘って、第2発光層を含む第2有機化合物層が積層されると共に、該第2有機化合物層は、前記第1サブピクセルにおいて前記第1有機化合物層よりも光取り出し側に配置され、
前記第2有機化合物層は対向する電極の間に挟持され、前記第2有機化合物層を挟持する対向する電極のうち、光取り出し側の電極は、前記第2サブピクセルのみに形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第1サブピクセルにおいて、
前記第1有機化合物層を挟んで対向する電極のうち光取り出し側とは反対側に配置される電極の反射面からの光路長が前記第1有機化合物層の第1発光層からの発光光の可干渉距離以下である領域の中で、
最も光取出し側にある反射界面が、前記第2有機化合物層の光取り出し側の表面であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記第1サブピクセルにおいて、
光取り出し側に存在する有機化合物層上に、前記第2サブピクセルのみに形成された電極と電気的に絶縁された導電膜が存在することを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記第1サブピクセルにおいて、
前記第2有機化合物層の光取り出し側の表面と、前記第1有機化合物層を挟んで対向する電極のうち光取り出し側とは反対側に配置される電極の反射面からの光路長が前記第1有機化合物層の第1発光層からの発光光の可干渉距離以下である領域の中で、最も光取出し側にある反射界面との間に、
非金属で透明性を有し、屈折率が前記第1サブピクセルの最も光取り出し側にある有機化合物層の屈折率と、前記可干渉距離以下である領域の直上の層である物質の屈折率との間の値をもつ物質からなる層のみが存在することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
それぞれのサブピクセルの最も光取り出し側に、第1サブピクセル及び第2サブピクセルに共通に素子保護層が形成され、
前記素子保護層は非金属であり、前記第1サブピクセルの最も光取り出し側にある有機化合物層の屈折率との差が、該有機化合物層の屈折率と空気層の屈折率との差以下である屈折率をもつ層であって、
前記第1サブピクセルにおいて、前記第1有機化合物層を挟んで対向する電極のうち光取り出し側とは反対側に配置される電極の反射面と、素子外部の空気層との反射界面である前記素子保護層の表面との間の光路長が、前記第1有機化合物層の第1発光層からの発光光の可干渉距離以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記第3有機化合物層は、前記第2サブピクセルにおいて前記第2有機化合物層よりも光取り出し側に積層されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記第3有機化合物層は、前記第1サブピクセル及び前記第2サブピクセルに亘って積層され、
前記第1サブピクセルにおいて、前記第1有機化合物層及び前記第2有機化合物層よりも光取り出し側に形成され、
前記第3有機化合物層を挟持する前記対向する電極のうち、光取り出し側の電極は、前記第2サブピクセルのみに形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項1】
表示領域に複数の画素を備え、各画素に第1サブピクセルと第2サブピクセルとが並列配置された有機EL表示装置であって、
前記第1サブピクセルは、対向する電極の間に挟持された第1発光層を含む第1有機化合物層を有し、
前記第2サブピクセルは、対向する電極の間に挟持された第3発光層を含む第3有機化合物層を有し、
前記第1サブピクセル及び第2サブピクセルに亘って、第2発光層を含む第2有機化合物層が積層されると共に、該第2有機化合物層は、前記第1サブピクセルにおいて前記第1有機化合物層よりも光取り出し側に配置され、
前記第2有機化合物層は対向する電極の間に挟持され、前記第2有機化合物層を挟持する対向する電極のうち、光取り出し側の電極は、前記第2サブピクセルのみに形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第1サブピクセルにおいて、
前記第1有機化合物層を挟んで対向する電極のうち光取り出し側とは反対側に配置される電極の反射面からの光路長が前記第1有機化合物層の第1発光層からの発光光の可干渉距離以下である領域の中で、
最も光取出し側にある反射界面が、前記第2有機化合物層の光取り出し側の表面であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記第1サブピクセルにおいて、
光取り出し側に存在する有機化合物層上に、前記第2サブピクセルのみに形成された電極と電気的に絶縁された導電膜が存在することを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記第1サブピクセルにおいて、
前記第2有機化合物層の光取り出し側の表面と、前記第1有機化合物層を挟んで対向する電極のうち光取り出し側とは反対側に配置される電極の反射面からの光路長が前記第1有機化合物層の第1発光層からの発光光の可干渉距離以下である領域の中で、最も光取出し側にある反射界面との間に、
非金属で透明性を有し、屈折率が前記第1サブピクセルの最も光取り出し側にある有機化合物層の屈折率と、前記可干渉距離以下である領域の直上の層である物質の屈折率との間の値をもつ物質からなる層のみが存在することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
それぞれのサブピクセルの最も光取り出し側に、第1サブピクセル及び第2サブピクセルに共通に素子保護層が形成され、
前記素子保護層は非金属であり、前記第1サブピクセルの最も光取り出し側にある有機化合物層の屈折率との差が、該有機化合物層の屈折率と空気層の屈折率との差以下である屈折率をもつ層であって、
前記第1サブピクセルにおいて、前記第1有機化合物層を挟んで対向する電極のうち光取り出し側とは反対側に配置される電極の反射面と、素子外部の空気層との反射界面である前記素子保護層の表面との間の光路長が、前記第1有機化合物層の第1発光層からの発光光の可干渉距離以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記第3有機化合物層は、前記第2サブピクセルにおいて前記第2有機化合物層よりも光取り出し側に積層されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記第3有機化合物層は、前記第1サブピクセル及び前記第2サブピクセルに亘って積層され、
前記第1サブピクセルにおいて、前記第1有機化合物層及び前記第2有機化合物層よりも光取り出し側に形成され、
前記第3有機化合物層を挟持する前記対向する電極のうち、光取り出し側の電極は、前記第2サブピクセルのみに形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−22836(P2012−22836A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158614(P2010−158614)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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