説明

有軌道台車システム

【課題】床面を覆うカバーを容易に固定できるようにすると共に、レールの基礎となるベースプレートの側部を簡単にカバーできるようにして、更に有軌道台車の走行によるパーティクルの巻き上げを少なくする。
【解決手段】クリーンルーム内の有軌道台車の走行レール8の底部の溝9を利用して、取付板14を取り付け、取付板14に多数の孔24を備えた床カバー12を取り付ける。床カバー12の上面には一面に小径の孔24を設けて、クリーンルーム内の空気がワッフル4から吸引されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は有軌道台車システムに関し、特に有軌道台車の走行スペースの床面を覆うカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2006−52063)は、クリーンルーム内に、スタッカークレーンなどの有軌道台車のシステムを設けることを開示している。ところでクリーンルームでは、空気吸引用の大きな孔からなるワッフルを床面に設けることがある。ワッフルが設けられていると、ワッフルをカバーで塞いで、有軌道台車や給電線、ラックなどを点検する作業員の安全を図る必要がある。単に床面にカバーを並べるだけで、カバーを固定しないと、カバーが外れると危険である。またレールの施行前にカバーを並べると、固定されていないカバーが、レールの施工の邪魔となる。しかしボルトなどで床面にカバーを固定すると、取付が大変である。
【特許文献1】特開2006−52063
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、床面を覆うカバーを容易に固定できるようにすると共に、カバーがレールの施工を妨げないようにすることにある。
請求項2の発明での追加の課題は、レールの基礎となるベースプレートの側部を簡単にカバーできるようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、有軌道台車の走行によるパーティクルの巻き上げを少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、床面上に間隔を置いて配置した複数のベースプレートを介して、有軌道台車の走行レールを支持した有軌道台車システムであって、
前記床面を覆うカバーを、前記ベースプレートとベースプレートとの間の位置で、レールの底部に取り付けたことを特徴とする。
【0005】
好ましくは、前記レールの長手方向に沿ったカバーの両端に、カバーの上面よりも低い位置の突き出しを設けると共に、前記ベースプレートの上方で前記床面を覆う第2のカバーを設けて、レールの長手方向に沿った前記第2のカバーの両端を、前記突き出しで支持する。
また好ましくは、前記カバーと床面との間にスペースを設けるとともに、カバーの上面に複数の小孔を設ける。
【発明の効果】
【0006】
この発明では、カバーはレールの施工後に取り付けるので、レールの施工を妨げない。そしてカバーは、ベースプレートとベースプレートとの間で、レールの底部に取り付ける。この位置では、レールの底部は床面から浮いており、取付が簡単である。
【0007】
前記のカバーでベースプレートの側部も覆うようにしても良いが、カバーはベースプレートの間を覆い、ベースプレートの側部は第2のカバーで覆うようにすると、カバーの設置が簡単になる。即ち、レールの底部に取り付けた最初のカバーを設け、この段階ではカバーとカバーの間に隙間があるので、設置が容易になる。次にベースプレートの上方でカバーに覆われていない隙間を、第2のカバーで覆う。第1のカバーの前後両端、即ちレールの長手方向に沿った両端に突き出しを設け、この突き出しで第2のカバーの前後両端を支持すると、簡単に第2のカバーを設置できる。
カバーに通気用の小孔、即ち作業者の足などが落ちることがない程度の小孔を設け、カバーと床面との間にスペースを設けると、有軌道台車の走行風が、カバーに遮られて直接床面に及びにくくなる。このため床面に堆積したパーティクルが巻き上げられて、周囲を汚染することが少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0009】
図1〜図8に、実施例の有軌道台車システムと、その変形とを示す。なお有軌道台車の種類は任意であるが、ここではスタッカークレーンとする。さらに有軌道台車システムはクリーンルーム内に設け、液晶基板や半導体基板などを収納したカセットなどを搬送するものとする。2は床で、直径数十cm程度の大径のワッフル4を規則的に配置し、クリーンルーム内の空気を吸引する。ワッフル4を避けるように、所定のピッチでベースプレート6を床2に固定し、ベースプレート6の上部に走行レール8を固定する。ここでは走行レール8は左右一対配置するが、走行レール8は1本でも良い。9は溝で、走行レール8の長手方向に平行に、走行レール8の底面の例えば中央部に設けた長溝で、ベースプレート6への走行レール8の取付などに用いる。10は走行面で、スタッカークレーンの走行車輪などが走行する面である。
【0010】
12は床カバーで、14は取付板であり、ベースプレート6,6の間で走行レール8の底部の溝9を利用し、ボルト16とナット18などの締結部材により、取付板14を走行レール8の底部に取り付ける。そして取付板14は走行レール8の底部の外へ延び、走行レール8の底部の外側で、取付板14の上から、ボルト20とナット22などの締結部材により、床カバー12を取り付ける。以下では、走行レール8の長手方向を前後方向、これに水平面内で直角な方向を左右方向として説明する。取付板14や床カバー12の前後の幅は、ベースプレート6,6間の隙間の幅とほぼ等しく、床カバー12の左右の幅は走行レール8,8の左右の間隔よりもやや狭い。床カバー12の上面には一面に小径の孔24を設けて、クリーンルーム内の空気がワッフル4から吸引されるようにする。26は床面で、床カバー12と床面26との間のスペースを床上スペース28とする。実施例では、床カバー12は床面26に接しないが、床カバー12の前後両端に設けた受け部44を床面26に接触させても良い。
【0011】
図3等に示すように、ベースプレート6の左右方向の側部を、床カバー12ではなく、中間カバー30により覆う。中間カバー30の上面には多数の孔32を設けて、クリーンルーム内の空気をワッフル4へ吸引する。中間カバー30の例えば左右両端に回動片34を設けて、水平面内で回動自在にする。また中間カバー30の前後の側部46を、床カバー12の前後両端の受け部44で支持する。
【0012】
図4等に示すように、床カバー12の例えば左右両端にボルト孔40を設けて、前記のボルト20により、取付板14に固定する。また床カバー12の前後両端に、前記の受け部44を設け、受け部44は床カバー12の上面よりも低い位置に配置し、床カバー12の前後に突き出すようにする。そして中間カバー30の前後の側部46を受け部44で受けることにより、中間カバー30を支持する。また中間カバー30の底部の4隅に下方への突き出し47,48を設けて、この内、対角線上に配置した2つの突き出し47,47を回動片34,34の回り止めとする。なお突き出し48は設けなくても良い。回動片34をボルト42が貫通し、ナット50は例えば回動片34に固定され、回動片34は中間カバー30の例えば下面の左右に配置する。なお床カバー12と中間カバー30とは上面の高さをほぼ等しくする。
【0013】
実施例での、床カバー12や中間カバー30の取り付けを説明する。床2上にベースプレート6と走行レール8とを設置する。走行レール8の底部中央にはベースプレート6への取付用などに溝9が設けられているので、これを利用してボルト16とナット18とにより取付板14を取り付ける。次に左右の取付板14,14の間に床カバー12をボルト16とナット18で取り付ける。これによってベースプレート6の側部を除き、走行レール8,8間のスペースを床カバー12で覆うことができる。
【0014】
床カバー12,12の間に、中間カバー30を設置する。この時、図7に一点鎖線で示すように、回動片34を当初は中間カバー30の底部に隠れる位置に配置しておく。そして床カバー12の前後の受け部44で、中間カバー30の側部46を支持する。次に回動片34を貫通しているボルト42を、図7の矢印の向きに回動させると、回動片34は突き出し47に接触して、それ以上回動できなくなる。ここでナット50は回動片34に固着されているので、ボルト42を回し続けることにより、ナット50を締めることができる。以上のようにして、中間カバー30を前後の床カバー12に固定する。
【0015】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 床カバー12等は、走行レール8の設置後に設けるので、走行レール8の設置の邪魔にならない。
(2) 取付板14は走行レール8の底部の溝9を利用して簡単に取り付けることができ、床カバー12は取付板14にボルト14で簡単に固定できる。
(3) 中間カバー30は床カバー12の設置後に設けるので、床カバー12の設置の邪魔にならない。そして中間カバー30の側部46を受け部44で支持すると、中間カバー30を設置できる。
(4) 回動片34を中間カバー30から露出しない向きに配置して、回動片34をボルト42により回動させると、簡単に中間カバー30を固定できる。
(5) 床カバー12や中間カバー30と床面26の間には、床上スペース28がある。このため有軌道台車の走行風は、床カバー12、中間カバー30により遮られて床面26には達さず、床面26上に堆積しているパーティクルが巻き上げられることを防止できる。
【0016】
図8に変形例の有軌道台車システムを示し、特に指摘した点以外は実施例と同様である。60は新たなカバーで、その表面には多数の小孔24を設け、その前後方向一端に孔などの係合凹部61を設け、前後方向他端に係合突起62を設ける。そして実施例と同様に、取付板14にボルト20で固定し、係合突起62を係合凹部61に係合させると、ベースプレート6の側部も覆うことができる。
【0017】
実施例では左右一対の走行レール8,8を有するシステムを説明したが、走行レール8を1本として、その左右それぞれに床カバーや中間カバーなどを設けても良い。また回動片34は設けなくても良い。

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例の有軌道台車システムの要部鉛直方向断面図
【図2】図1を部分的に拡大して示す鉛直方向断面図
【図3】実施例の有軌道台車システムの要部平面図
【図4】実施例で用いる2種類の床カバーを並べて示す平面図
【図5】2種類のカバーの側面を並べて示す図
【図6】有軌道台車の走行方向に沿って2種類の床カバーを接続した状態を示す鉛直方向断面図
【図7】実施例での2種類の床カバー間の固定を示す図
【図8】変形例の有軌道台車システムの要部鉛直方向断面図
【符号の説明】
【0019】
2 床
4 ワッフル
6 ベースプレート
8 走行レール
9 溝
10 走行面
12 床カバー
14 取付板
16,20 ボルト
18,22 ナット
24,32 孔
26 床面
28 床上スペース
30 中間カバー
34 回動片
40 ボルト孔
42 ボルト
44 受け部
46 側部
47,48 突き出し
50 ナット
60 カバー
61 係合凹部
62 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に間隔を置いて配置した複数のベースプレートを介して、有軌道台車の走行レールを支持した有軌道台車システムであって、
前記床面を覆うカバーを、前記ベースプレートとベースプレートとの間の位置で、レールの底部に取り付けたことを特徴とする有軌道台車システム。
【請求項2】
前記レールの長手方向に沿ったカバーの両端に、カバーの上面よりも低い位置の突き出しを設けると共に、前記ベースプレートの上方で前記床面を覆う第2のカバーを設けて、レールの長手方向に沿った前記第2のカバーの両端を、前記突き出しで支持することを特徴とする、請求項1の有軌道台車システム。
【請求項3】
前記カバーと床面との間にスペースを設けるとともに、カバーの上面に複数の小孔を設けたことを特徴とする請求項1の有軌道台車システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−46278(P2009−46278A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215663(P2007−215663)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】