説明

有軌道台車システム

【課題】有軌道台車システムにおいて、台車の不要な速度低下や走行停止を抑制する。
【解決手段】有軌道台車システムは、分岐点及び合流点を含む所定領域内に誘導線(600)を有する軌道(100)と、軌道を走行する複数の台車(200)と、誘導線管理装置(700)とを備える。複数の台車の各々は、送信部及び受信部(910,920)と、走行制御部(205)とを備える。誘導線管理装置(700)は、誘導線受信部及び誘導線誘導線送信部(710,720)と、特定台車(250)の第1の無線信号受信部(930)に対して無線信号を送信可能な第1の無線信号送信部(740)とを備えており、一の誘導線領域に一の特定台車を優先させて進入させる場合に、一の誘導線にブロッキング信号を送信すると共に、一の特定台車に対して一の誘導線領域内への進入を許可する許可信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置製造用の各種基板等が収容された容器などの被搬送物を軌道に沿って搬送する有軌道台車システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の有軌道台車システムとして、例えば天井に敷設された軌道を走行することでFOUP(Front Opening Unified Pod)等の被搬送物を搬送する懸垂型の台車を有するもの(所謂OHT:Overhead Hoist Transport)が知られている。
このような有軌道台車システムでは、軌道の分岐点や合流点において台車同士が互いに衝突しないように、衝突防止システムが備えられる場合がある。例えば特許文献1及び2では、分岐点及び合流点付近に設けられた誘導線を介して台車同士が通信を行うことで、互いを認識し合い衝突を防止するという技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3985320号公報
【特許文献2】特開2009−9440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1及び2に係る技術では、各分岐点、各合流点に設けられた誘導線を介して誘導線領域毎に通信が行われるため、一の誘導線領域を通過中の台車は、他の誘導線領域の状態を知ることができない。このため、分岐点や合流点が連続して存在する場合、一の誘導線領域を通過中の台車は、直後に存在する他の誘導線領域で速やかに停止できるような速度で走行せざるを得ない。即ち、他の台車が次の誘導線ブロック内を走行中の場合に備えて、十分に減速して進入することが求められる。よって各台車は、分岐点及び合流点が連続する箇所では、必要以上に速度低下や走行停止を行うことになる。このような速度低下や走行停止が実行されると、台車の効率的な走行が行えなくなるため、結果としてシステムの搬送効率が低下してしまう。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、分岐点及び合流点を通過する台車の不要な速度低下や走行停止を抑制することが可能な有軌道台車システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の有軌道台車システムは上記課題を解決するために、分岐点及び合流点を含む所定領域内に誘導線を有する軌道と、前記軌道に支持されると共に案内されて走行する複数の台車と、前記誘導線に電気的に接続される誘導線管理装置とを備える有軌道台車システムであって、前記複数の台車の各々は、自車の存在を他車に知らせるブロッキング信号を、前記誘導線に送信する送信部と、前記他車からの前記ブロッキング信号を、前記誘導線を介して受信する受信部と、前記受信部において前記ブロッキング信号が受信されているか否かに応じて、自車の走行を制御する走行制御部とを備え、前記誘導線管理装置は、前記誘導線の各々から前記ブロッキング信号を受信可能な誘導線受信部と、前記誘導線の各々に対して前記ブロッキング信号を送信可能な誘導線送信部と、前記複数の台車のうち特定台車とされた少なくとも1台に、無線信号を送信可能な第1の無線信号送信部とを備え、前記特定台車は、前記走行制御部と電気的に接続されており、前記第1の無線信号送信部からの無線信号を受信可能な第1の無線信号受信部を備え、前記誘導線管理装置は、一の誘導線領域に一の特定台車を優先させて進入させる場合に、前記誘導線送信部から前記一の誘導線に前記ブロッキング信号を送信すると共に、前記第1の無線信号送信部から前記一の特定台車に対して、前記ブロッキング信号を無視して前記一の誘導線領域内への進入を許可する許可信号を送信する。
【0007】
本発明の有軌道台車システムは、例えば天井や天井近傍或いは地上等に敷設された軌道と、軌道に支持されると共に案内されて走行する台車とを備えている。台車は軌道上に複数配置されており、例えば軌道を走行する走行部と、該走行部に取り付けられておりFOUPやレチクル等の被搬送物を積載する本体部とを備えて構成されている。本発明の有軌道台車システムの動作時には、台車が軌道に沿って走行することで、台車に積載された被搬送物の搬送が実現される。
【0008】
本発明に係る軌道は特に、複数の分岐点及び合流点を有している。そして、分岐点及び合流点含む所定領域内には、各種信号を伝達可能な誘導線が設けられている。尚、ここでの「所定領域」とは、分岐点及び合流点を通過しようとする台車が、他の台車との衝突を防止するために他の台車の存在を認識すべき領域であり、分岐点及び合流点の各々に対応するように複数設定されている。
【0009】
本発明に係る台車は、自車の存在を他車に知らせるブロッキング信号を誘導線に送信する送信部と、他車からのブロッキング信号を誘導線を介して受信する受信部とを備えている。これにより各台車は、送信部から誘導線を介して伝達された信号を、他の台車の受信部に受信させることができる。即ち各台車は、誘導線の設けられた所定領域内において、台車同士で誘導線を介した通信を行える。台車には更に走行制御部が備えられており、受信部においてブロッキング信号が受信されているか否かに応じて、走行が制御される。走行制御部は、ブロッキング信号が受信されている場合、他の台車との衝突を避けるため減速制御や走行停止制御等を行う。
【0010】
本発明に係る誘導線管理装置は、上述した誘導線の各々と電気的に接続されており、例えば連続する分岐点及び合流点に対応する誘導線群(即ち、複数の誘導線からなるグループ)毎に設けられる。誘導線管理装置には、誘導線の各々からブロッキング信号を受信可能な誘導線受信部と、誘導線の各々に対してブロッキング信号を送信可能な誘導線送信部とが備えられている。即ち、誘導線管理装置は、誘導線からブロッキング信号を受信するだけでなく、自らがブロッキング信号を送信することができる。また、本発明に係る誘導線管理装置には更に、複数の台車のうち特定台車とされた少なくとも1台に、無線信号を送信可能な第1の無線信号送信部が備えられている。
【0011】
特定台車は、他の台車と比べて優先的に軌道上を走行することが可能な台車であり、例えば高速搬送用の台車として予め設定されている。特定台車には、誘導線管理装置における第1の無線信号送信部から送信された無線信号を受信可能な第1の無線信号受信部が備えられている。第1の無線信号受信部は走行制御部と電気的に接続されており、特定台車は受信した無線信号に応じて走行制御される。
【0012】
本発明では特に、誘導線管理装置は、一の誘導線領域に一の特定台車を優先させて進入させる場合に、誘導線送信部から一の誘導線にブロッキング信号を送信する。これにより、一の誘導線領域への他車の進入がブロックされる。また誘導線管理装置は、第1の無線信号送信部から一の特定台車に対して、ブロッキング信号を無視して一の誘導線領域内への進入を許可する許可信号を送信する。これにより、一の特定台車は、他車の進入がブロックされている一の誘導線領域内に優先的に進入することが可能となる。
【0013】
尚、一の特定台車と他車との衝突を防止する観点からすれば、ブロッキング信号の送信は、許可信号の送信に先立って行われることが好ましい。具体的には、ブロッキング信号を送信せずに、許可信号だけを先に送信してしまうと、一の誘導線領域に一の特定台車及び他車の両方が進入してしまうという事態が生じうる。よって、許可信号を送信する前に、ブロッキング信号が送信される方がよい。
【0014】
加えて、ここでの「ブロッキング信号を無視して」とは、一の誘導線からブロッキング信号を受信しているにもかかわらず、一の誘導線領域内に進入する場合を含む他、一の誘導線からのブロッキング信号を受信しないようにして、一の誘導線領域内に進入する(即ち、他車にはブロッキング信号が受信されるが、特定台車にはブロッキング信号が受信されないようにして、特定台車を一の誘導線領域内に進入させる)場合をも含む広い概念である。例えば、合流点において合流する2つの軌道部分のうち、一方の軌道部分に対応する誘導線にだけブロッキング信号を送信するようにすれば、一方の軌道部分に対する他車の進入を防止しつつ、他方の軌道部分を走行する特定台車を合流点に進入可能とすることができる。
【0015】
ここで仮に、特定台車が第1の無線信号受信部を備えていない(即ち、誘導線管理装置との無線通信が行えない)とする。この場合、特定台車は、分岐点及び合流点が連続する箇所において、各分岐点及び合流点の状況を夫々認識することが困難となってしまう。例えば、一の合流点を通過している際には、その合流点の直後に存在する他の合流点における他の台車の存在を認識することができない。従って、一の合流点から他の合流点に侵入する際には、先行する他の台車が存在する場合に備えて、十分に減速して進入することが求められる。よって、各台車は、分岐点及び合流点が連続する箇所において、必要以上の速度低下や走行停止を行うことになる。
【0016】
しかるに本発明では特に、上述したように、特定台車及び誘導線管理装置が無線信号を用いて通信を行える。このため特定台車は、分岐点及び合流点が連続する箇所において、走行している誘導線領域以外の誘導線領域における他の台車の走行状況を認識できる。即ち、複数の誘導線を管理している誘導線管理装置から、他の誘導線領域の状況を無線通信で知らせてもらうことができる。従って、分岐点及び合流点を通過する台車の不要な速度低下や走行停止を抑制することが可能である。
【0017】
尚、本発明は、誘導線管理装置を備えず誘導線のみを利用したブロッキング制御を行っている既存のシステムに対して、誘導線管理装置や無線信号送信部及び無線信号受信部といった機器を新たに付加するだけで実現可能である。このため、特定台車が既存の台車と共存できると共に、改良を安価で且つ短期間内に行える。
【0018】
本発明の有軌道台車システムの一態様では、前記特定台車は、前記許可信号を受信した場合に、前記一の誘導線から受信した前記ブロッキング信号を無視して、前記一の誘導線領域に進入可能とされる。
【0019】
この態様によれば、許可信号を受信した特定台車は、一の誘導線からブロッキング信号を無視して一の誘導線領域に進入可能とされるため、他の台車と比べて、特定台車を優先的に走行させることができる。よって、システムにおける搬送効率を確実に高めることが可能である。
【0020】
本発明の有軌道台車システムの他の態様では、前記誘導線は、前記分岐点において分岐する又は前記合流点において合流する2つの軌道部分の各々の右側に位置するように設けられた第1の誘導線部、及び前記2つの軌道部分の各々の左側に位置するように設けられた第2の誘導線部を備え、前記送信部及び前記受信部は、前記第1の誘導線部及び前記第2の誘導線部の各々に対応するように、前記複数の台車の各々の左右両側に一対ずつ設けられ、前記複数の台車の各々は、前記2つの軌道部分のいずれに分岐するか又はいずれから合流するかによって、右側の前記送信部及び左側の前記受信部と、左側の前記送信部及び右側の前記受信部とのいずれの組み合わせを動作させるかを切替える。
【0021】
この態様によれば、分岐点において分岐する又は合流点において合流する2つの軌道部分の各々の右側には第1の誘導線部が設けられている。また、2つの軌道部分の各々の左側には第2の誘導線部が設けられている。即ち、軌道を走行する台車から見て、右側には第1の誘導線部が設けられており、左側(即ち、第1の誘導線部の反対側)には第2の誘導線部が設けられている。
【0022】
本態様では更に、複数の台車の各々に備えられる送信部及び受信部が、第1の誘導線部及び第2の誘導線部の各々に対応するように、台車の左右両側に一対ずつ設けられている。具体的には、台車の右側には、軌道部分の右側に設けられた第1の誘導線部と信号を送受信する送信部及び受信部が設けられており、車の左側には、軌道部分の左側に設けられた第2の誘導線部と信号を送受信する送信部及び受信部が設けられている。
【0023】
ここで本態様では特に、複数の台車の各々は、2つの軌道部分のいずれに分岐するか又はいずれから合流するかによって、右側の送信部及び左側の受信部と、左側の送信部及び右側の受信部とのいずれの組み合わせを動作させるかを切替える。例えば、右側の送信部及び左側の受信部が動作する場合は、左側の送信部及び右側の受信部の動作が停止される。この場合、軌道部分の右側に設けられた第1の誘導線部は送信部から送信された信号の伝達に用いられ、軌道部分の左側に設けられた第2の誘導線部は受信部へと信号を伝達するために用いられる。一方で、左側の送信部及び右側の受信部が動作する場合は、右側の送信部及び左側の受信部の動作が停止される。この場合、軌道部分の右側に設けられた第1の誘導線部は受信部へと信号を伝達するために用いられ、軌道部分の左側に設けられた第2の誘導線部は送信部から送信された信号の伝達に用いられる。
【0024】
上述したように、台車の左右両側に設けられた一対の送信部及び受信部の動作を切替えるようにすれば、第1の誘導線部及び第2の誘導線部を用いて、信号の送受信を効率的に行うことが可能である。よって、ブロッキング信号及び許可信号等を適切に台車に伝達することが可能となり、システムの搬送効率を高めることが可能である。
【0025】
本発明の有軌道台車システムの他の態様では、前記特定台車は、前記走行制御部と電気的に接続されており、前記誘導線管理装置に無線信号を送信可能な第2の無線信号送信部を更に備え、前記誘導線管理装置は、前記第2の無線信号送信部からの無線信号を受信可能な第2の無線信号受信部と、前記第1の無線信号送信部及び前記第2の無線信号受信部の各々と電気的に接続されており、前記誘導線から受信した前記ブロッキング信号に基づいて、前記誘導線領域内の状態を判断する判断部とを更に備え、前記一の誘導線領域に進入しようとする前記一の特定台車は、前記一の誘導線領域に進入する前に、該一の誘導線領域内への進入許可を求める要求信号を第2の無線信号送信部から送信し、前記誘導線管理装置は、前記要求信号を受信すると、前記判断部において前記一の誘導線領域内に他車が存在するか否かを判断し、前記他車が存在しない場合に前記第1の無線信号送信部から前記一の特定台車に前記許可信号を送信する。
【0026】
この態様によれば、特定台車には、誘導線管理装置に無線信号を送信可能な第2の無線信号送信部が備えられている。第2の無線信号送信部は、第1の無線信号受信部と同様に走行制御部に接続されている。一方、誘導線管理装置には、第2の無線信号送信部からの無線信号を受信可能な第2の無線信号受信部が備えられている。よって、本態様に係る特定台車及び誘導線管理装置は、互いに無線信号を送受信することが可能である。
【0027】
本態様に係る特定台車によれば、一の誘導線領域に進入する前に、該一の誘導線領域内への進入許可を求める要求信号が第2の無線信号送信部から送信される。そして、誘導線管理装置は、第2の無線信号受信部において要求信号を受信すると、判断部において一の誘導線領域の状況を判断する。判断部では、誘導線受信部から受信したブロッキング信号に基づいて、誘導線領域内の状態が判断される。具体的には、要求信号が受信された時点で、一の誘導線領域にブロッキング信号が送信されているか否か(即ち、一の誘導線領域内に他車が存在するか否か)が判断される。
【0028】
判断部において、一の誘導線領域内に他車が存在しないと判断された場合、第1の無線信号送信部から一の特定台車に許可信号が送信される。このため、第1の無線信号受信部において許可信号を受信した一の特定台車は、速度低下や走行停止することなく一の誘導線領域内に進入することができる。このようにすれば、誘導線領域内の進入制御を自動的に行えるため、システムをより効率的に動作させることが可能である。
【0029】
上述した特定台車が第2の無線信号送信部を備える態様では、前記一の誘導線領域に進入しようとする前記一の特定台車は、前記一の誘導線領域から所定距離前方に離間した軌道位置に設けられたマークを検出した際に、前記要求信号を送信するように構成してもよい。
【0030】
この場合、一の誘導線領域から所定距離前方(即ち、走行方向で見て手前側)に離間した軌道位置には、特定台車が走行中に検出可能なマークが設けられる。尚、ここでの「所定距離」とは、高速走行している(言い換えれば、減速制御されていない)特定台車が、許可信号を受けない状態で誘導線領域内に進入したとしても、他車と衝突する前に確実に停止できるような距離として設定される。
【0031】
特定台車は、上述したマークを検出すると要求信号を送信する。この場合、一の誘導線領域から所定距離手前を走行している際に要求信号が送信されるため、仮に一の誘導線領域に他車が存在しており許可信号が送信されない場合であっても、他車との衝突を確実に防止することができる。よって、極めて簡単な構成で、的確に誘導線領域への進入を制御することができる。
【0032】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】有軌道台車システムの全体構成を示す上面図である。
【図2】台車の構成を示す側面図である。
【図3】台車の移載動作を示す斜視図である。
【図4】台車の横移載動作を示す斜視図である。
【図5】誘導線管理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】軌道における誘導線の配置位置を示す断面図である。
【図7】第1実施形態に係る有軌道台車システムの動作を、順を追って示す概念図(その1)である。
【図8】第1実施形態に係る有軌道台車システムの動作を、順を追って示す概念図(その2)である。
【図9】第1実施形態に係る誘導管理装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】第1実施形態に係る有軌道台車システムの動作を、順を追って示す概念図(その3)である。
【図11】比較例に係る有軌道台車システムの動作を示す概念図である。
【図12】第2実施形態に係る有軌道台車システムの軌道構成を示す上面図である。
【図13】第2実施形態に係る有軌道台車システムにおける通信方法を示す概念的に示すブロック図である。
【図14】第2実施形態に係る有軌道台車システムの動作を、順を追って示す概念図(その1)である。
【図15】第2実施形態に係る有軌道台車システムの動作を、順を追って示す概念図(その2)である。
【図16】第2実施形態に係る有軌道台車システムの動作を、順を追って示す概念図(その3)である。
【図17】第1実施形態に係る有軌道台車システムの動作を、順を追って示す概念図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0035】
先ず、本実施形態に係る有軌道台車システムの全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、実施形態に係る有軌道台車システムの全体構成を示す上面図である。
【0036】
図1において、本実施形態に係る有軌道台車システムは、軌道100と、台車200と、コントローラ300とを備えて構成されている。
【0037】
軌道100は、例えば天井に敷設されており、アルミニウムやステンレス等の金属から構成される。本実施形態に係る軌道100は特に、複数の合流点や分岐点を有するように構成されている。また、ここでは図示を省略しているが、軌道100には誘導線が設けられている。また、連続する分岐点及び合流点に対応する誘導線には、誘導線管理装置が電気的に接続されている。誘導線及び誘導線管理装置の具体的な構成については後に詳述する。
【0038】
台車200は、軌道100上に複数配置されており、軌道100に沿って走行することで、被搬送物であるFOUPを搬送することが可能である。
【0039】
また台車200は、車上コントローラ205を夫々有している。車上コントローラ205は、本発明の「走行制御部」の一例であり、コントローラ300から搬送指令を受け取り、台車200の走行を制御する。尚、車上コントローラ205は、台車200の走行を制御するだけでなく、台車200に備えられた各機器を総括的に制御するという機能も有している。
【0040】
コントローラ300は、例えば演算回路やメモリ等を含んで構成されており、車上コントローラ205を介して、台車200に搬送指令を与えることが可能に構成されている。
【0041】
尚、ここでの図示は省略しているが、軌道100に沿った位置には、FOUPを一時的に保管する棚(例えば、バッファやポート等)及び半導体製造装置が設けられている
【0042】
次に、台車200のより具体的な構成について、図2を参照して説明する。ここに図2は、台車の構成を示す側面図である。尚、図2では説明の便宜上、後述する誘導線及び誘導線管理装置と通信を行うための部材を省略して図示してある。
【0043】
図2において、台車200は、走行部210、本体部220、移動部230、昇降部235、昇降ベルト240及び把持部250を備えて構成されている。
【0044】
台車200は、走行部210が例えばリニアモータ等によって推進力を与えることで、走行ローラ215が転動されつつ、軌道100に沿って走行する。走行部210の下面には、本体部220が吊り下がる形で取り付けられている。
【0045】
本体部220には、移動部230が取り付けられている。移動部230は、軌道100の側方(即ち、図における左右方向)に移動することが可能である。移動部230の下面には、昇降部235が取り付けられている。
【0046】
昇降部235の下面には、FOUPを把持する把持部250が昇降ベルト240によって取り付けられている。把持部250は、昇降ベルト240を巻き出す或いは巻き取ることで、本体部220に対し昇降可能である。
【0047】
次に、台車によるFOUPの移載方法について、図3及び図4を参照して説明する。ここに図3及び図4は夫々、実施形態に係る台車のFOUPの移載方法を示す斜視図である。
【0048】
図3において、台車200が、軌道100の真下に位置するポート510上のFOUP400を移載する際には、先ず台車200が軌道100上を走行して、ポート510上に設置されたFOUP400の上方に停止する。そして、把持部250とFOUP400との位置の微調整が行われる。
【0049】
続いて、図に示すように、昇降部235によって昇降ベルト240が巻き出されることで、把持部250がFOUP400の位置まで降下する。降下された把持部250は、FOUP400を把持する。
【0050】
FOUP400が把持されると、昇降ベルト240が巻き取られ、把持部250及び把持されたFOUP400が本体部220の位置まで上昇する。そして、再び台車200が軌道100上を走行して、FOUP400が搬送される。
【0051】
図4において、FOUP400が、軌道100の側方にそれた位置にあるサイドバッファ520に設置されている場合には、移動部230が軌道100の側方に移動した後に、昇降部235によって昇降ベルト240が巻き出され、把持部250がFOUP400の位置まで降下する。このように動作することで、軌道部100からFOUP400の横移載を行うことが可能となる。
【0052】
以下では、有軌道台車システムに特有である分岐点及び合流点での走行制御について2つの実施形態を挙げて説明する。
【0053】
<第1実施形態>
先ず、本実施形態に係る有軌道台車システムに係る誘導線及び誘導線管理装置、並びに台車における通信装置の構成について、図5及び図6を参照して説明する。ここに図5は、誘導線管理装置の構成を示すブロック図であり、図6は、軌道における誘導線の配置位置を示す断面図である。
【0054】
図5において、軌道100における合流点が連続する箇所には、合流点の各々に対して誘導線600a及び600bが設けられる。誘導線600a及び600bの各々には、誘導コアやハーネス等を介して誘導線管理装置700が電気的に接続されている。
【0055】
誘導線管理装置700は、第1誘導線送受信部710、第2誘導線送受信部720、判断部730及び無線通信部740を備えて構成されている。
【0056】
第1誘導線送受信部710及び第2誘導線送受信部720は、本発明の「誘導線受信部」の一例であり、誘導線600a及び600bの各々に供給されているブロッキング信号を受信可能に構成されている。また、第1誘導線送受信部710及び第2誘導線送受信部720は、本発明の「誘導線送信部」の一例でもあり、誘導線600a及び600bの各々にブロッキング信号を送信可能に構成されている。
【0057】
判断部730は、第1誘導線送受信部710及び第2誘導線送受信部720の各々と電気的に接続されており、第1誘導線送受信部710及び第2誘導線送受信部720の各々がブロッキング信号を受信しているか否かによって、誘導線600a及び600bの各々にブロッキング信号が供給されている状態であるか否か(言い換えれば、誘導線600a及び600bが設けられた領域を台車が走行しているか否か)を判断する。
【0058】
無線通信部740は、本発明の「第1の無線信号送信部」の一例であり、アンテナ810を介して、無線信号を送信することが可能に構成されている。また、無線通信部740は、本発明の「第2の無線信号受信部」の一例でもあり、アンテナ810を介して、無線信号を受信することが可能に構成されている。
【0059】
図6において、誘導線600は、例えばループ状の道電線として構成されており、軌道100の下面側(即ち、台車と対向する面側)に設けられている。尚、図5では、軌道100における右側の縁及び左側の縁に夫々沿うように誘導線600が設けられているが、一方の縁に沿うものだけが設けられる部分も存在してよい。
【0060】
尚、台車200には、誘導線600を介して信号を送受信するための送信部及び受信部が設けられている。例えば台車200には、軌道100の右側に位置する誘導線に対応する一対の送信部及び受信部が設けられると共に、軌道100の左側に位置する誘導線に対応する一対の送信部及び受信部が設けられる。また本実施形態では特に、複数の台車200のうち少なくとも1台は、高速搬送用の特定台車として設定されている。特定台車は、上述した送信部及び受信部に加えて、誘導線管理装置700との無線通信行うための無線通信部を備えている。
【0061】
次に、本実施形態に係る有軌道台車システムの動作について、図7から図10を参照して詳細に説明する。ここに図7、図8及び図10は夫々、第1実施形態に係る有軌道台車システムの動作を、順を追って示す概念図である。また図9は、第1実施形態に係る誘導管理装置の動作を示すフローチャートである。
【0062】
図7に示すように、ここでは、軌道100が連続する2つの合流点を有しており、特定台車200aが、2つの合流点を直進して通過する場合の動作を例に挙げて説明する。尚、以下では、特定台車200aから見て手前側の合流点周辺における誘導線600aが設けられる領域を第1誘導線領域、二番目の合流点周辺における誘導線600bが設けられる領域を第2誘導線領域と称する。
【0063】
図8において、特定台車200aが第1誘導線領域に進入し、図示せぬマーク検出部によってマーク150を読み取れる位置まで走行したとする。特定台車200aは、マーク150を検出すると、誘導線管理装置700に対して、第2誘導線領域の許可を求める要求信号を送信する。要求信号は、アンテナ810を介して誘導線管理装置700に受信される。以下では、要求信号を受信した後に誘導線管理装置700が行う具体的な処理について説明する。
【0064】
図9において、誘導線管理装置700における無線通信部740が要求信号を受信すると(ステップS01:YES)、判断部730において誘導線600bの状態が判断される(ステップS02)。具体的には、第2誘導線送受信部720においてブロッキング信号が受信されているか否かが判定される。即ち、誘導線600bに対して、他の台車200からブロッキング信号が送信されているか否かが判定される。
【0065】
誘導線600bにブロッキング信号が送信されている場合(ステップS03:NO)、無線通信部740から特定台車200aに対して、第2誘導線領域の通過を許可しない不許可信号が送信される(ステップS04)。不許可信号を受信した特定台車200aは、第2誘導線領域の合流点において停止できるよう減速制御される。
【0066】
一方、誘導線600bにブロッキング信号が送信されていない場合(ステップS03:YES)、先ず第2誘導線送受信部720から誘導線600bに対して、ブロッキング信号が送信される(ステップS05)。続いて、無線通信部740から特定台車200aに対して、第2誘導線領域の通過を許可する許可信号が送信される(ステップS06)。
【0067】
図10において、誘導線600bにブロッキング信号が送信されることで、第2誘導線領域には、他車の進入が禁止される。このため、図に示すような、第2誘導線領域に侵入しようとする台車200は、走行停止するよう制御される。一方、許可信号を受信した特定台車200aは、誘導線600bに送信されているブロッキング信号を無視して、第2誘導線領域に進入することができる。このため、特定台車200aは、減速制御を行うことなく第2誘導線領域を通過することができる。第2誘導線領域を通過した特定台車は、誘導線管理装置700に対して、通過完了を知らせるための無線信号を送信する。
【0068】
図9に戻り、通過完了を知らせる無線信号を受信した誘導線管理装置700は、第2誘導線送受信部720による誘導線600bへのブロッキング信号の送信を停止する(ステップS08)。これにより、第2誘導線領域に対するブロッキングが解除され、特定台車200a以外の台車200も第2誘導線領域に進入することが可能となる。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る有軌道台車システムによれば、誘導線管理装置700、及び無線通信可能な特定台車200aが備えられているため、連続した合流点における特定台車200aの優先的な走行を実現できる。以下では、このような誘導線管理装置700、及び無線通信可能な特定台車200aが備えられていないシステムにおける問題点について、図11を参照して説明する。ここに図11は、比較例に係る有軌道台車システムの動作を示す概念図である。
【0070】
図11において、比較例に係る有軌道台車システムでは、誘導線管理装置700、及び無線通信可能な特定台車200aが備えられていない。このため、誘導線600aが設けられた第1誘導線領域を走行する特定台車200aは、誘導線600bが設けられた第2誘導線領域における他車の存在を認識できない。よって、特定台車200aは、第2誘導線領域に他車が存在するか否かによらず、距離L(即ち、第2誘導線領域に侵入してから合流点までの距離)で確実に停止できる程度に速度を低下させてから、第2誘導線領域に進入することが求められる。
【0071】
これに対し、本実施形態に係る有軌道台車システムでは、特定台車200a及び誘導線管理装置700が互いに無線通信を行うことで、誘導線600aが設けられた第1誘導線領域を走行する特定台車200aは、誘導線600bが設けられた第2誘導線領域における他車の存在を認識可能となる。従って、特定台車200aは、第2誘導線領域に他車が存在する場合は、他車との衝突を防止するため減速制御を行う。一方で、第2誘導線領域に他車が存在しない場合は、減速制御をすることなく高速での通過が可能となる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係る有軌道台車システムによれば、分岐点及び合流点を通過する特定台車200aの不要な速度低下や走行停止を抑制することができる。従って、システムの搬送効率を効果的に高めることが可能である。
【0073】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る有軌道台車システムについて説明する。尚、第2実施形態は、上述した第1実施形態と比べて一部の構成及び動作が異なるのみであり、その他の部分については概ね同様である。このため、以下の第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
【0074】
先ず、第2実施形態に係る有軌道台車システムの軌道構成について、図12を参照して説明する。ここに図12は、第2実施形態に係る有軌道台車システムの軌道構成を示す上面図である。
【0075】
図12において、第2実施形態に係る有軌道台車システムは、本軌道100aに第1合流軌道101が合流する第1合流点と、本軌道100aに第2合流軌道102が合流する第2合流点とを有している。図に示すように、第1合流点及び第2合流点は、比較的短い間隔で連続している。
【0076】
本軌道100aの第1合流点周辺(即ち、第1誘導線領域)には、本軌道100aを走行する台車200から見て右側に誘導線601aが設けられており、左側に誘導線602aが設けられている。また、第1合流軌道101の第1合流点周辺には、第1合流軌道101を走行する台車200から見て右側に誘導線603aが設けられており、左側に誘導線604aが設けられている。
【0077】
誘導線601a及び603aは、図中の破線で示す接続配線によって、互いに電気的に接続されている。このため、誘導線601aに送信された信号は、図中の矢印で示すように、誘導線603aへと伝達される。同様に、誘導線602a及び604aも、互いに電気的に接続されている。このため、誘導線602aに送信された信号は、図中の矢印で示すように、誘導線604aへと伝達される。以下では、誘導線601a及び603aのことを誘導線A系統と称し、誘導線602a及び604aのことを誘導線B系統と称するものとする。
【0078】
本軌道100aの第2合流点周辺(即ち、第2誘導線領域)には、本軌道100aを走行する台車200から見て右側に誘導線601bが設けられており、左側に誘導線602bが設けられている。また、第2合流軌道102の第2合流点周辺には、第2合流軌道102を走行する台車200から見て右側に誘導線603bが設けられており、左側に誘導線604bが設けられている。
【0079】
誘導線601b及び603bは、図中の破線で示す接続配線によって、互いに電気的に接続されている。このため、誘導線601bに送信された信号は、図中の矢印で示すように、誘導線603bへと伝達される。同様に、誘導線602b及び604bも、互いに電気的に接続されている。このため、誘導線602bに送信された信号は、図中の矢印で示すように、誘導線604bへと伝達される。以下では、誘導線601b及び603bのことを誘導線C系統と称し、誘導線602b及び604bのことを誘導線D系統と称するものとする。
【0080】
次に、第2実施形態に係る有軌道台車システムにおける通信方法について、図13を参照して説明する。ここに図13は、第2実施形態に係る有軌道台車システムにおける通信方法を示す概念的に示すブロック図である。
【0081】
図13において、本軌道100aを直進しようとする特定台車200aと、第1合流軌道101から本軌道100aと合流しようとする合流台車200bと、誘導線管理装置700との間の通信を考える。この場合、特定台車200aの送信コア901から送信されるブロッキング信号は、誘導線A系統を介して、合流台車200bの受信コア904へと伝達される。一方、合流台車200bの送信コア903から送信されるブロッキング信号は、誘導線B系統を介して、特定台車200aの受信コア902へと伝達される。また、合流台車200bの送信コア903から送信されるブロッキング信号は、誘導線B系統を介して、誘導線管理装置700の受信コア906へと伝達される。一方、誘導線管理装置700の送信コア905から送信されるブロッキング信号は、誘導線A系統を介して、合流台車200bの受信コア904へと伝達される。加えて、特定台車200a及び誘導線管理装置700は、無線通信によって、例えば高速通過要求信号や高速通過不許可信号等の信号を互いに信号を送受信可能とされている。
【0082】
尚、台車200は、右側(即ち、誘導線A系統に対応する側)及び左側(即ち、誘導線B系統に対応する側)の各々に、一対の送受信コア(即ち、送信コア及び受信コアとして選択的に機能できるもの)を備えるように構成される。或いは、台車200は、右側及び左側に一対の送信コア及び受信コアを別部材として夫々備えるように構成される。加えて、台車200は、自身が合流点(分岐点)の直進側にいるか、合流側(分岐側)にいるかを認識可能とされている。
【0083】
上述したような構成において、台車200は、自身が合流点の直進側にいる場合、一対の送受信コアのうち右側を送信コアとして機能させると共に、左側を受信コアとして機能させるように予め設定される。また、台車200は、自身が合流点の合流側にいる場合、一対の送受信コアのうち右側を受信コアとして機能させると共に、左側を送信コアとして機能させるように予め設定される。このように自身の走行位置によって送信及び受信を切替えるようにすれば、図12に示したような構成の誘導線600において好適にブロッキング信号の送受信を行うことが可能である。
【0084】
次に、第2実施形態に係る有軌道台車システムの動作について、図14から図17を参照して具体的に説明する。ここに図14から図17は夫々、第2実施形態に係る有軌道台車システムの動作を、順を追って示す概念図である。
【0085】
図14(a)において、誘導線管理装置700は、誘導線601bに対して送信用コイル951によってブロッキング信号を送信可能とされており、誘導線602bから受信用コイル952によってブロッキング可能を受信可能とされている。尚、誘導線管理装置700は、誘導線601a及び602aについても同様にブロッキングの送受信が可能とされているが、説明の便宜上、ここでは図示を省略している。
【0086】
図14(b)において、第1誘導線領域及び第2誘導線領域のいずれにも台車200が進入していない場合には、いずれの誘導線600にもブロッキング信号は送信されない。従って、誘導線A系統からD系統の全てにおいて台車200が進入可能な状態(即ち、空き状態)となっている。
【0087】
図15において、本軌道100aを直進しようとする特定台車200aが第1誘導線領域に進入してきたとする。この場合、特定台車200aは、自身の存在を第1合流軌道101側に知らせるため、送信用コイル953を介して誘導線601aにブロッキング信号を送信する。特定台車200aから誘導線601aに送信されたブロッキング信号は、誘導線603aへと伝達される。このため、第1合流軌道101に進入しようとする合流台車(図示せず)は、誘導線603aからブロッキング信号を受信することになる。従って、第1合流軌道101は台車200が進入できない状態(即ち、誘導線B系統はブロック状態)となる。
【0088】
加えて、特定台車200aは、本軌道100aを高速で直進するために、アンテナ820によって、誘導線管理装置700に高速通過要求信号を送信する。具体的には、現在通過中の第1合流点の直後に存在する第2合流点への他車の進入を禁止するように要求する。尚、特定台車200aは、本軌道100aにおける無線送信地点(図示せず)において無線通信を行う。無線送信地点は、最高速で走行する特定台車200aが、第2合流点までに停止できるだけの距離を持った地点として予め設定されている。
【0089】
図16において、無線通信で高速通過要求信号を受信した誘導線管理装置700は、送信用コイル951を介して誘導線601bにブロッキング信号を送信する。誘導線管理装置700から誘導線601bに送信されたブロッキング信号は、誘導線603bへと伝達される。このため、第2合流軌道102に進入しようとする合流台車(図示せず)は、誘導線603bからブロッキング信号を受信することになる。従って、第2合流軌道102は台車200が進入できない状態(即ち、誘導線D系統はブロック状態)となる。
【0090】
尚、無線通信を行った時点で、既に他車が第2合流軌道102に進入している場合(即ち、誘導線C系統がブロック状態である場合)には、誘導線管理装置700がアンテナ810によって、特定台車200aへと高速通過不許可信号を送信する。高速通過不許可信号を受信した特定台車200aは、他車との衝突を回避するため減速を開始する。
【0091】
図17において、特定台車200aが第2誘導線領域へと進入すると、誘導線A系統へのブロッキング信号の送信が停止されるため、第1合流軌道101へ他車が進入可能な状態となる。一方で、特定台車200aは、誘導線601bへブロッキング信号を送信可能な状態となるが、誘導線601bには、既に誘導線管理装置700からブロッキング信号が送信されている。よって、特定台車200aはブロッキング信号の送信を行わずともよい。或いは、特定台車200aがブロッキング信号を601bへと送信するようにして、誘導線管理装置700による誘導線601bへのブロッキング信号の送信を停止してもよい。このようにすれば、第2合流軌道102への他車の進入を禁止しつつ、特定台車200aは第2合流点を高速通過することが可能となる。
【0092】
以上説明したように、第2実施形態に係る有軌道台車システムによれば、第1実施形態と同様に、分岐点及び合流点を通過する特定台車200aの不要な速度低下や走行停止を抑制することができる。従って、システムの搬送効率を効果的に高めることが可能である。
【0093】
尚、上述の実施形態では、2つの合流点が連続する箇所を例に挙げて説明したが、より多くの合流点が連続する箇所においても、本実施形態の効果は同様に得られる。また、合流点に代えて分岐点が連続する箇所であっても同様であり、合流点及び分岐点が混在して連続するような箇所であってもよい。
【0094】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う有軌道台車システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
100…軌道、150…マーク、200…台車、200a…特定台車、205…車上コントローラ、210…走行部、215…走行ローラ、220…本体部、230…移動部、235…昇降部、240…昇降ベルト、250…把持部、300…コントローラ、400…FOUP、510…ポート、520…サイドバッファ、600…誘導線、700…誘導線管理装置、710…第1誘導線送受信部、720…第2誘導線送受信部、730…判断部、740…無線通信部、810,820…アンテナ、910…第1送受信コイル、920…第2送受信コイル、930…台車無線通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐点及び合流点を含む所定領域内に誘導線を有する軌道と、前記軌道に支持されると共に案内されて走行する複数の台車と、前記誘導線に電気的に接続される誘導線管理装置とを備える有軌道台車システムであって、
前記複数の台車の各々は、
自車の存在を他車に知らせるブロッキング信号を、前記誘導線に送信する送信部と、
前記他車からの前記ブロッキング信号を、前記誘導線を介して受信する受信部と、
前記受信部において前記ブロッキング信号が受信されているか否かに応じて、自車の走行を制御する走行制御部と
を備え、
前記誘導線管理装置は、
前記誘導線の各々から前記ブロッキング信号を受信可能な誘導線受信部と、
前記誘導線の各々に対して前記ブロッキング信号を送信可能な誘導線送信部と、
前記複数の台車のうち特定台車とされた少なくとも1台に、無線信号を送信可能な第1の無線信号送信部と
を備え、
前記特定台車は、前記走行制御部と電気的に接続されており、前記第1の無線信号送信部からの無線信号を受信可能な第1の無線信号受信部を備え、
前記誘導線管理装置は、一の誘導線領域に一の特定台車を優先させて進入させる場合に、前記誘導線送信部から前記一の誘導線に前記ブロッキング信号を送信すると共に、前記第1の無線信号送信部から前記一の特定台車に対して、前記ブロッキング信号を無視して前記一の誘導線領域内への進入を許可する許可信号を送信する
ことを特徴とする有軌道台車システム。
【請求項2】
前記特定台車は、前記許可信号を受信した場合に、前記一の誘導線から受信した前記ブロッキング信号を無視して、前記一の誘導線領域に進入可能とされることを特徴とする請求項1に記載の有軌道台車システム。
【請求項3】
前記誘導線は、前記分岐点において分岐する又は前記合流点において合流する2つの軌道部分の各々の右側に位置するように設けられた第1の誘導線部、及び前記2つの軌道部分の各々の左側に位置するように設けられた第2の誘導線部を備え、
前記送信部及び前記受信部は、前記第1の誘導線部及び前記第2の誘導線部の各々に対応するように、前記複数の台車の各々の左右両側に一対ずつ設けられ、
前記複数の台車の各々は、前記2つの軌道部分のいずれに分岐するか又はいずれから合流するかによって、右側の前記送信部及び左側の前記受信部と、左側の前記送信部及び右側の前記受信部とのいずれの組み合わせを動作させるかを切替える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の有軌道台車システム。
【請求項4】
前記特定台車は、前記走行制御部と電気的に接続されており、前記誘導線管理装置に無線信号を送信可能な第2の無線信号送信部を更に備え、
前記誘導線管理装置は、
前記第2の無線信号送信部からの無線信号を受信可能な第2の無線信号受信部と、
前記第1の無線信号送信部及び前記第2の無線信号受信部の各々と電気的に接続されており、前記誘導線から受信した前記ブロッキング信号に基づいて、前記誘導線領域内の状態を判断する判断部と
を更に備え、
前記一の誘導線領域に進入しようとする前記一の特定台車は、前記一の誘導線領域に進入する前に、該一の誘導線領域内への進入許可を求める要求信号を第2の無線信号送信部から送信し、
前記誘導線管理装置は、前記要求信号を受信すると、前記判断部において前記一の誘導線領域内に他車が存在するか否かを判断し、前記他車が存在しない場合に前記第1の無線信号送信部から前記一の特定台車に前記許可信号を送信する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の有軌道台車システム。
【請求項5】
前記一の誘導線領域に進入しようとする前記一の特定台車は、前記一の誘導線領域から所定距離前方に離間した軌道位置に設けられたマークを検出した際に、前記要求信号を送信することを特徴とする請求項4に記載の有軌道台車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−20423(P2013−20423A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152854(P2011−152854)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】