説明

木炭ガス化装置

【課題】木炭を熱分解等によりガス化して得られる生成ガス中のタール等を除去する簡便で安価なガス浄化プロセスを実現する。
【解決手段】木炭を部分燃焼させて木炭を熱分解するとともに、水蒸気を供給して水性ガス化反応によりガス化するガス化炉5と、ガス化炉で生成された生成ガスの熱を回収してガス化炉に供給する水蒸気を生成する冷却塔13と、冷却塔で冷却された生成ガスに洗浄水を散布して浄化する洗浄塔15と、洗浄塔の底部から抜き出される洗浄水からタール等の不純物を分離する濾過器34と、濾過器から排出される洗浄水を洗浄塔の洗浄水として循環させる循環ポンプ32と、濾過器から排出される洗浄水の一部を抜き出して処理する吸着塔36を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木炭ガス化装置に係り、具体的には、木炭を熱分解等によりガス化して生成された生成ガスを浄化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス化装置としては、特許文献1に記載されているように、竪型の移動床ガス化炉又は固定床ガス化炉に、可燃性のガス化対象物と不燃性ペレットを例えば層状に装填し、ガス化炉の底部側から空気を供給してガス化対象物の一部を燃焼させ、その燃焼熱で残りのガス化対象物を熱分解するとともに、底部側から水蒸気を供給して水性反応させてガス化し、生成されたガス(以下、生成ガスという。)を抜き出して例えば燃料ガスとして有効利用することが提案されている。
【0003】
ところで、ガス化対象物の組成によっては、熱分解が十分に行われないと生成ガス中にタールや煤(すす)等の煤塵が含まれる。そこで、特許文献1によれば、ガス化炉から排出される生成ガスを水洗洗浄塔に導いて、生成ガス中の水蒸気を凝縮させるとともに、タール分や煤塵を除去し、さらに水洗洗浄塔から排出される生成ガスのミスト等を湿式EP等により除去して、生成ガスを清浄化することが提案されている。
【0004】
一方、木屑などのバイオマス燃料をガス化して、例えば内燃機関の燃料ガスとして用いることが検討されているが、木屑などのバイオマス燃料をガス化した場合にも、生成ガスにタール分や煤塵が比較的多く含まれることから、特許文献1と同様のガス浄化処理が必要になる。
【0005】
【特許文献1】特開2004−2552
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、水洗洗浄塔により除去されたタール等を含む洗浄水の処理については配慮されていない。特に、ガス洗浄水の処理を含め、ガス浄化プロセスを全体的に合理的なプロセスとして改善する余地がある。
【0007】
特に、最近、木炭をガス化して内燃機関の燃料ガスとして用いることが要望されているが、木炭をガス化した生成ガスに含まれる煤塵やタールは、他のバイオマス燃料をガス化した生成ガスに比べて少ないから、簡便で安価なガス浄化プロセスの実現が望まれている。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、木炭を熱分解等によりガス化して得られる生成ガス中のタール等を除去する簡便で安価なガス浄化プロセスを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の木炭ガス化装置は、木炭を部分燃焼させて前記木炭を熱分解するとともに、水蒸気を供給して水性ガス化反応によりガス化するガス化炉と、該ガス化炉で生成された生成ガスの熱を回収して前記ガス化炉に供給する水蒸気を生成する冷却塔と、該冷却塔で冷却された生成ガスに洗浄水を散布して浄化する洗浄塔と、該洗浄塔の底部から抜き出される洗浄水からタール等の不純物を分離する濾過器と、該濾過器から排出される洗浄水を前記洗浄塔の洗浄水として循環させる循環ポンプと、前記濾過器から排出される洗浄水の一部を抜き出して処理する吸着塔を備えて構成する。
【0010】
すなわち、熱分解等により生成された生成ガスは温度が高いから、冷却塔に導いて生成ガスの熱により水蒸気を生成し、生成された水蒸気をガス化炉における水性ガス化反応用に用いることにより、熱収支を改善することができる。また、ガス化炉から排出される生成ガスを高温のまま洗浄塔に導入すると、洗浄水がその分多く必要になるので洗浄水処理装置が大型になるという問題があるが、本発明によれば、冷却塔を設けて水蒸気を発生させた分だけ洗浄水の量を低減できる。
【0011】
また、木炭をガス化した生成ガス中のタール分及び煤塵は少ないから、洗浄塔の底部から抜き出した洗浄水からタール等の不純物を濾過器で分離して、洗浄水を循環使用し、循環される洗浄水の一部を抜き出して処理することにより、洗浄水処理に吸着塔を用いて小型化できる。
【0012】
この場合、吸着塔の吸着材として木炭を用い、吸着能力が低下したときは、ガス化炉に投入してガス化するように構成することが好ましい。これにより、吸着材の再生処理が不要となるから、ガス浄化プロセスを簡単化及び小型化できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、木炭を熱分解等によりガス化して得られる生成ガス中のタール等を除去する簡便で安価なガス浄化プロセスを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。図1に、本発明の一実施形態の木炭ガス化装置の全体構成図を示す。
【0015】
図1に示すように、ガス化対象の木炭1は、貯槽2に受け入れた後、コンベア4によりガス化炉5の炉頂に設けられた供給装置6のホッパ部に投入されるようになっている。ガス化炉5は、竪型の円筒状容器により形成され、供給装置6から投入される木炭1が所定の高さまで充填される。木炭1の充填層には、炉底部から予熱された空気7と水蒸気8が供給され、図示していない着火バーナなどによって、炉底部側の充填層の木炭1の一部が燃焼されるようになっている。木炭1の部分燃焼の熱により、残りの木炭1が熱分解するとともに、水蒸気と水性ガス化反応してガス化される。生成ガスは充填層を通ってガス化炉5内を上昇し、炉頂部に設けられたガス排出口9から炉外に排出されるようになっている。また、ガス化炉5の底部には、灰などの燃焼残渣を排出する排出機10が設けられている。排出機10から排出される燃焼残渣は、残渣選別器11に投入され、篩い分けされる。
【0016】
ガス化炉5から排出される生成ガス12は、冷却塔13の頂部に導入されている。冷却塔13内には、熱交換チューブ14が設けられ、この熱交換チューブ14には、図示していない水源から水が供給されるようになっている。冷却塔13の底部から抜き出される生成ガスは、洗浄塔15の底部から頂部に流通され、上部に設けられた散水ノズル16から噴霧される洗浄水によって、生成ガスに含まれるタール分、水蒸気の凝縮水及び煤塵が洗浄水に取り込まれて除去される。洗浄塔15の頂部から抜き出された生成ガスは、湿式EP17に導かれてミスト等が除去される。湿式EP17から排出される生成ガスは、誘引ブロワ18に吸引されて生成ガスのバッファタンク19に貯蔵される。バッファタンク19に貯蔵された生成ガスは、燃料ガスとしてガスエンジン20に適宜供給され、発電機21を駆動するようになっている。ガスエンジン20の排気ガスは、廃熱回収ボイラ22と脱硝触媒塔23を介して大気に放出されるようになっている。また、バッファタンク19には、緊急時に生成ガスを燃焼するグラウンドフレア24が連結されている。
【0017】
ここで、本実施形態の特徴に係るガス洗浄装置の構成について説明する。洗浄塔15において生成ガスに含まれるタール分、水蒸気の凝縮水及び煤塵を取り込んだ洗浄水は、洗浄塔15の底部から抜き出され、一旦、洗浄水タンク31に貯留される。洗浄水タンク31内の洗浄水は、循環ポンプ32により抜き出されて液体サイクロン33に流入される。液体サイクロン33は、洗浄水中に含まれる比較的大きなタール分や煤塵を遠心力により分離して底部から排出するようになっている。液体サイクロン33から排出される洗浄水は濾過器34に導かれて、液体サイクロン33で分離できなかったタール分や煤塵が洗浄水から分離除去される。濾過器34を通った洗浄水は熱交換器35において加熱された後、洗浄塔15の散水ノズル16から生成ガス中に噴霧される。
【0018】
また、濾過器34から流出される洗浄水の一部は、吸着塔36に流通されて洗浄水に残っているタール分や煤塵が吸着材に吸着除去される。ここで、吸着材としては、ガス化対象の木炭1が用いられている。吸着塔36から排出される洗浄水はポンプ37によって吸引され、濾過器38を通して濾過処理され、清浄な排水となって系外に排出される。
【0019】
このように構成されることから、本実施形態によれば、ガス化炉5から排出される高温(例えば、700℃)の生成ガス12は、冷却塔13に導入されて熱交換チューブ14に流通される水を加熱して水蒸気が発生される。この水蒸気は、ガス化炉5の供給する水蒸気8として用いられる他、熱交換器39に導かれてガス化炉5の供給する空気7の余熱に用いられる。このように、生成ガス12を洗浄塔15に導入して洗浄水を噴霧して冷却及び凝縮させる前に、生成ガス12の熱によりガス化炉5で用いる空気7と水蒸気8を加熱するようにしているから、熱の有効利用を図ってガス浄化プロセスの熱収支を改善することができる。
【0020】
また、生成ガス12は、冷却塔13で冷却されて低温(例えば、200℃)となり、洗浄塔15に導入されて散水ノズル16から噴霧される洗浄水により、さらに冷却される。これにより、生成ガス中に含まれるタール分及び水蒸気が凝縮されるとともに、煤塵が洗浄水に取り込まれて生成ガスが浄化される。この場合、ガス化炉5から排出される生成ガス12を高温のまま洗浄塔15に導入すると、洗浄水がその分多く必要になるが、本実施形態によれば、冷却塔13を設けて熱回収した分だけ、洗浄水の量を低減できるので、洗浄水処理装置を小型化することにつながるという効果がある。
【0021】
また、木炭をガス化した生成ガス中のタール分及び煤塵は少ないから、洗浄塔15の底部から抜き出した洗浄水からタール等の不純物を液体サイクロン33や濾過器34で分離することにより、洗浄水を循環使用することができる。その結果、循環される洗浄水の一部を抜き出して吸着塔36で吸着処理することにより、洗浄液を浄化することができるから、洗浄水処理量を大幅に低減できるとともに、洗浄水処理装置を小型化することができる。
【0022】
さらに、吸着塔36の吸着材として木炭を用い、吸着能力が低下したときは、ガス化炉5に投入してガス化するように構成すれば、吸着材の再生処理が不要となるから、ガス浄化プロセスを一層、簡単化及び小型化できる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、木炭を熱分解等によりガス化して得られる生成ガス中のタール等を除去するガス浄化プロセスを、簡便で安価に実現することができる。
【0024】
すなわち、従来技術によれば、木屑などのバイオマス燃料をガス化した生成ガスを水洗した大量の洗浄水を処理するためには、大型でかつ複雑な洗浄水処理装置が必要となる。例えば、洗浄塔から排出される洗浄水からタール等を分離する装置、及び分離したタール等を焼却する装置、あるいは、生物処理装置や活性炭吸着などによる浄化処理が必要になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の木炭ガス化装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0026】
5 ガス化炉
13 冷却塔
14 伝熱管
15 洗浄塔
16 散水ノズル
17 湿式EP
31 洗浄水タンク
32 循環ポンプ
33 液体サイクロン
34 濾過器
35 熱交換器
36 吸着塔
38 濾過器
39 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木炭を部分燃焼させて前記木炭を熱分解するとともに、水蒸気を供給して水性ガス化反応によりガス化するガス化炉と、該ガス化炉で生成された生成ガスの熱を回収して前記ガス化炉に供給する水蒸気を生成する冷却塔と、該冷却塔で冷却された生成ガスに洗浄水を散布して浄化する洗浄塔と、該洗浄塔の底部から抜き出される洗浄水からタール等の不純物を分離する濾過器と、該濾過器から排出される洗浄水を前記洗浄塔の洗浄水として循環させる循環ポンプと、前記濾過器から排出される洗浄水の一部を抜き出して処理する吸着塔を備えてなる木炭ガス化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記吸着塔は、ガス化対象の木炭を吸着材として用い、該木炭の吸着能力が低下したときは、前記ガス化炉に投入してガス化することを特徴とする木炭ガス化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−222978(P2008−222978A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67552(P2007−67552)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】