説明

木質パネルおよび当該木質パネルの製造方法

【課題】耐久性の向上と強度の向上とを両立させ、雨水や日射による劣化および風荷重による曲げ破壊や反りを回避し、仮囲いに利用できる木質パネルを提供すること。
【解決手段】繊維方向が交差するように単板が積層したスギ合板11の両側にガラスクロス13を配置するとともに、さらに、このガラスクロス13の外側にフェノール樹脂が含浸された単板12を配置し、加熱プレスすることによって、耐久性と強度とが向上し、仮囲いに利用できるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設期間中、建設現場と外部とを遮断するために現場周囲に設置される仮囲いに利用できる木質パネルおよび当該木質パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設現場などの仮囲いには、厚み1.2mmから1.6mm、幅500〜540mm、高さ2000〜4000mmの鋼製のパネルが用いられており、木質パネルはほとんど利用されていない。
【0003】
木質パネルは、スギなどの地域材の有効利用、鋼製のパネルの代替によるCO2削減など多くのメリットがあるが、雨水や日射による劣化(耐久性)や風荷重による曲げ破壊や反りなどの課題があった。特に、活用が強く求められているスギは軟質のため、大きな課題となっていた。
【0004】
ところで、木質パネルの耐久性処理としては、樹脂の含浸、表面への塗布に関して様々な材料、積層方法が提案・工夫されている(たとえば、特許文献1〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−229307号公報
【特許文献2】特開2002−256684号公報
【特許文献3】特開2002−19026号公報
【特許文献4】特開平9−327803号公報
【特許文献5】特開平9−60437号公報
【特許文献6】特開平6−134707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、対象が木製玄関ドアや床材であり、耐久性の向上と強度の向上の両立を図ったものは提案されていない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐久性の向上と強度の向上とを両立させ、雨水や日射による劣化および風荷重による曲げ破壊や反りを回避し、仮囲いに利用できる木質パネルおよび当該木質パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板の両側に合成樹脂が含浸された単板を配置し、加熱プレスすることにより一体化したことを特徴とする。含浸された合成樹脂は、たとえば、取扱性やコストの面からフェノール樹脂が好ましいが、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など含浸性と硬化性の良好な樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂は、水溶性であっても油溶性であってもよい。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記単板積層材あるいは前記合板と合成樹脂が含浸された単板との間にガラスクロスを配置したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板の両側にガラスクロスおよび単板を配置し、接着積層した後、合成樹脂を含浸させ、加熱プレスすることにより一体化したことを特徴とする。含浸させる合成樹脂は、たとえば、取扱性やコストの面からフェノール樹脂が好ましいが、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など含浸性と硬化性の良好な樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂は、水溶性であっても油溶性であってもよい。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記単板がスギの単板であることを特徴とする。
【0012】
本発明は、繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板の両側に合成樹脂が含浸された単板を配置した後、合成樹脂が含浸された単板を加熱プレスし、一体化することを特徴とする。含浸させる合成樹脂は、たとえば、取扱性やコストの面からフェノール樹脂が好ましいが、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など含浸性と硬化性の良好な樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂は、水溶性であっても油溶性であってもよい。
【0013】
また、本発明は、繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板の両側にガラスクロスを配置した後、さらに、該ガラスクロスの外側に合成樹脂が含浸された単板を配置し、その後、合成樹脂が含浸された単板を加熱プレスし、一体化することを特徴とする。含浸させる合成樹脂は、たとえば、取扱性やコストの面からフェノール樹脂が好ましいが、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など含浸性と硬化性の良好な樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂は、水溶性であっても油溶性であってもよい。
【0014】
また、本発明は、繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板の両側にガラスクロスおよび単板を配置し、接着積層した後、合成樹脂を含浸させ、加熱プレスすることを特徴とする。含浸させる合成樹脂は、たとえば、取扱性やコストの面からフェノール樹脂が好ましいが、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など含浸性と硬化性の良好な樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂は、水溶性であっても油溶性であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる木質パネルは、単板積層材あるいは合板の両側に合成樹脂が含浸された単板を配置し、加熱プレスすることにより、耐久性と強度とを向上させたので、仮囲いに利用できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である木質パネルを利用した仮囲いを建設現場側から見た図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態である木質パネルの性能を定性的に示した図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態である木質パネルの曲げ試験に用いる試験片の積層状態を説明する図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態である木質パネルの曲げ試験の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる木質パネルおよび当該木質パネルの製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態である木質パネルを利用した仮囲いを建設現場側から見た図である。本発明の実施の形態である木質パネルは、建設期間中、建設現場と外部とを遮断するために現場周囲に設置する仮囲いに利用されるものであって、図1に示すように、現場側に架設した単管4をパネル支持材とし、隙間なく貼設される。貼設にあたり、木質パネル間の隙間をなくし、組立構造を安定化するために木質パネルの側面に実矧ぎ加工がされてもよい。
【0019】
建設現場の周囲に設置する仮囲いに利用される木質パネルは、高さが2000〜4000mm(3000mmのものが多い)と大型となるため、繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板の両側に合成樹脂が含浸された単板を配置し、加熱プレスすることにより一体化したものが用いられる。含浸された合成樹脂は、たとえば、取扱性やコストの面からフェノール樹脂が好ましいが、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など含浸性と硬化性の良好な樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂は、水溶性であっても油溶性であってもよい。
【0020】
単板積層材および合板は、乾燥単板を用いることにより含水率が均一化され、同時に節などの欠点部分も分散されるため、寸法の安定性と精度に優れており、単板積層材あるいは合板の両側に合成樹脂が含浸された単板を配置し、加熱プレスすることにより一体化し、耐久性と強度を向上させている。
【0021】
ここで用いられる単板の厚みは、3.2mm程度であり、単板積層材あるいは合板における単板の積層枚数は、木質パネルの曲げに対する強度・剛性、重量(20kg以下が好ましい)などから7〜10枚となり、木質パネルの厚みは、20〜30mmとなる。
【0022】
さらに、単板積層材あるいは合板と合成樹脂が含浸された単板との間にガラスクロスを配置し、その後、合成樹脂が含浸された単板を加熱プレスすることにより一体化することが好ましい。このように単板積層材あるいは合板と合成樹脂が含浸された単板との間にガラスクロスを配置した木質パネルは、単板積層材あるいは合板における単板の積層枚数を5枚程度にすることができる。
【0023】
なお、単板積層材あるいは合板の両側にガラスクロス及び単板を配置し、接着積層した後、合成樹脂を含浸させ、加熱プレスすることにより、一体化してもよい。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態である木質パネルの性能を定性的に示した図である。図2に示すように、スギ合板11の両側にフェノール樹脂が含浸された単板12を配置し、加熱プレスすることにより一体化した木質パネル1、スギ合板11の両側にガラスクロス13を配置した後、さらに、ガラスクロス13の両側にフェノール樹脂が含浸された単板12を配置し、その後フェノール樹脂が含浸された単板12を加熱プレスすることにより一体化した木質パネル2、スギ合板11の両側にガラスクロス13および単板12’を配置し、接着積層した後、フェノール樹脂を含浸し、加熱プレスによって一体化した木質パネルは、耐久性および強度・剛性が向上する。
【0025】
これら木質パネル1,2は、全体にフェノール樹脂を含浸させたものではないので、木口から雨水が浸透し易すく、木口の耐久性は十分ではない。したがって、木口の耐久性を向上させるべく、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等によりシーリングしたり、プラスチック、アルミ、ステンレス等でカバーしたりすることにより、木口の耐久性を向上させることになる。木質パネル3は、木口および表面からフェノール樹脂が導管や裏割れなどを通じて木材内部まえ浸透固化するために、耐久性が一層向上する。
【0026】
つぎに、図3および図4に基づいて、本発明の実施の形態である木質パネルの曲げ試験結果を説明する。図3は、曲げ試験に用いる試験片の積層状態を説明する図であり、図4は、本発明の実施の形態である木質パネルの曲げ試験結果を示した図である。
【0027】
図3に示すように、試験片は、3プライの合板(厚み9mm)の上下に単板(厚み3.2mm)を接着し、5プライとしたものであって、以下の5種類を用意した。
(1)試験片1:無処理の単板が合板に接着された木質パネル
(2)試験片2:単板と合板との間に厚み0.16mmの平織、質量153g/m2のガラスクロスが配置され、接着された木質パネル
(3)試験片3:合板と単板との間に厚み0.18mmの平織、質量211g/m2のガラスクロスを配置され、接着された木質パネル
(4)試験片4:合板と単板との間に厚み0.24mmの目抜平織、質量211g/m2のガラスクラスが配置され、接着された木質パネル
(5)試験片5:フェノール樹脂が含浸され、かつプレスされた単板が合板に接着された木質パネル
なお、これら試験片1〜5は、長さ450mm×幅32mm×厚み12〜16mmの寸法を有している。
【0028】
図5に示すように、曲げ試験の結果、試験片1については37.2(N/mm2)の最大曲げ強さが得られた。また、試験片2については44.5(N/mm2)の最大曲げ強さ(試験片1の1.20倍)、試験片3については50.0(N/mm2)の最大曲げ強さ(試験片1の1.34倍)、試験片4については52.0(N/mm2)の最大曲げ強さ(試験片1の1.41倍)が得られた。
【0029】
このことから、単板積層材あるいは合板の両側にフェノール樹脂が含浸された単板を配置し、加熱プレスすることにより一体化した木質パネル1は、通常の合板よりも曲げ強さが約40%増大し、単板と合板との間にガラスクロスが配置され、接着された木質パネル2は、通常の合板よりも曲げ強さが20〜40%増大することが確認された。さらに、フェノール樹脂が含浸され、かつプレスされた単板は、表層部がフェノール樹脂で強化されるため、反りも防止される。
【0030】
上述した実施の形態である木質パネル1,2,3は、単板積層材あるいは合板(無処理)よりも耐久性および強度・剛性が向上するので、建設現場の周囲に設置する仮囲いに利用できる。
【0031】
そして、本実施の形態である木質パネル1,2,3を仮囲いに利用すれば、地域材を有効利用でき、CO2の削減に資することができる。更に、単板をスギの単板とすれば、花粉症の対策にもなる。
【0032】
また、本実施の形態である木質パネルを仮囲いに利用すれば、都市建設現場のイメージアップにも資することになる。
【符号の説明】
【0033】
1,2,3 木質パネル
4 単管
11 スギ合板
12,12’ 単板
13 ガラスクロス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板の両側に合成樹脂が含浸された単板を配置し、加熱プレスすることにより一体化したことを特徴とする木質パネル。
【請求項2】
前記単板積層材あるいは前記合板と合成樹脂が含浸された単板との間にガラスクロスを配置したことを特徴とする請求項1に記載の木質パネル。
【請求項3】
繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板の両側にガラスクロスおよび単板を配置し、接着積層した後、合成樹脂を含浸させ、加熱プレスすることにより一体化したことを特徴とする木質パネル。
【請求項4】
前記単板がスギの単板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の木質パネル。
【請求項5】
繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板の両側に合成樹脂が含浸された単板を配置した後、合成樹脂が含浸された単板を加熱プレスし、一体化することを特徴とする木質パネルの製造方法。
【請求項6】
繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板の両側にガラスクロスを配置した後、さらに、該ガラスクロスの外側に合成樹脂が含浸された単板を配置し、その後、合成樹脂が含浸された単板を加熱プレスし、一体化することを特徴とする木質パネルの製造方法。
【請求項7】
繊維方向が平行となるように単板が積層された単板積層材あるいは繊維方向が交差するように単板が積層された合板の両側にガラスクロスおよび単板を配置し、接着積層した後、合成樹脂を含浸させ、加熱プレスすることを特徴とする木質パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−173194(P2010−173194A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18769(P2009−18769)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願「経済産業省中部経済産業局 平成20年度地域イノベーション創出研究開発事業(革新的加工技術による高機能ハイブリット木質部材の実用化)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】