説明

木質化粧板

【課題】 木質化粧板において、その表面化粧溝が深くシャープな溝が可能で、しかも、溝の色調が均一で色ムラがなく外観に優れ、溝底や溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず、床材として用いた場合の足裏歩行感が良好で、床材以外に用いた場合においても、仕上がり品質、外観意匠性に優れ、しかも作業性に優れた木質化粧板を安価に提供することにある。
【解決手段】 木質基材に補強層を介して木質化粧単板が貼着されて木質化粧板本体が構成され、該木質化粧板の表面に、木質化粧単板の木質繊維方向と略平行方向に化粧溝が設けられた木質化粧板であって、前記木質化粧単板が前記化粧溝部分で分断されることなく、化粧溝を形成する補強層内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質化粧板に関するものであって、特に表面に化粧溝を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
表面に化粧溝を有する従来の木質化粧板にあっては、図6に示すように、従来の木質化粧板11は、木質基材12の表面に木質化粧単板13が貼着され、その表面に溝加工用のグルーバーやルーター等を用いて、切削加工によって切削溝が施され、化粧溝16が設けられ、木質化粧板本体15が作製される。最後に前記木質化粧板本体15に仕上げ塗装が施され、表面塗装膜14が設けられる。このようにして木質化粧板11が作製されている。
【0003】
前記化粧溝16は、該化粧溝16と直交する方向の断面において、溝形状は種々あり、例えば、図6で例示する断面視略V字型溝の他、略U字型溝、略角型溝、略台形型溝、その他の溝形状がある。しかし、いずれの形状の化粧溝16であっても、その溝底は木質基材12にまで達しており、切削加工等によって溝加工を行った後、前記表面化粧溝16の溝底に着色工程、塗装工程等を施して仕上げられたものが一般的である。この場合、木質化粧板11表面の木質化粧単板13及び表面塗装膜14は、前記化粧溝16の部分で分断されており、溝底部は木質基材12が露出している。
【0004】
従来、木質化粧板11において、表面化粧溝16の断面形状としては、該化粧溝16と直交する方向の断面において、前記種々の溝形状の中でも断面視略V字型や略U字型のものが最も一般的なものとして溝付け加工が行われてきた。また、従来からある木質化粧板として、立体感の豊かな柔らか味のある木質化粧板で、表面化粧溝の上端縁角部に角張った部分がなく歩行感が良好で、しかも、化粧単板の基材の導管孔が原因で生じる溝部分における着色ムラのないデザイン性の良好な建築用化粧板の記載がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−172904号公報(第2−4頁、第1−4図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表面化粧溝の溝底が基材にまで達する従来型の化粧溝においては、溝底に下地となる基材が露出し、表面の木質化粧単板と木質基材とで木質材料自体の色調が異なり外観上違和感が生じることが多々あった。また、前記違和感を解消するために、木質化粧板の木質化粧単板表面及び化粧溝内部に着色塗装や上塗り塗装等を施した場合においても、前記木質材料自体の色調差が原因の違和感の解消は困難で、施される塗料の色調によっては、かえって、前記違和感が強調される結果となり逆効果となることもあり、それを解消することは至難の業であり外観上の大きな問題点であった。
【0007】
また、溝底が木質基材に達するので、木質基材の欠点、例えば、虫穴、腐れ、ササクレ、毛羽立ち、バリ等が発生し、仕上がりを低下させ、着色塗装しても均一に仕上がらず、品質上の問題点があった。
【0008】
また、前記木質化粧板が床材として用いられた時、溝の上端縁角部に木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等が生じて、歩行時に靴下を破損したり、足裏歩行感が悪くなったりし、床材歩行時の、さまざまな問題点があった。床材以外の化粧板として用いられた場合においても、前記木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等は品質上の大きな問題点となっていた。
【0009】
また、上記特開平11−172904号公報に記載されている建築用化粧板の表面化粧溝においては、基材として合板と中比重繊維板を積層接着して構成された複合基材を用いるので、コスト的に不利なものとなっていた。
【0010】
また、上記特開平11−172904号公報に記載の表面化粧溝においては、表面化粧溝を加工する際、基材表面に化粧単板を貼着し、テノーナー、ギャグソー、カッターなどを用いて溝加工した後、化粧板表面の全面及び表面化粧溝の内部を、素地研磨し、続いてロールコーター、リバースコーター等を用いて着色、下塗り、中塗りを行い、フローコーターで上塗りを行う工程が採用されているが、それらの工程が複雑で、作業性に劣り、コスト的にも高価につくといった問題点があった。
【0011】
また、化粧単板が溝の箇所で分断されており、下地の中比重繊維板が露出するといった問題点もあった。
【0012】
さらに、溝底になる中比重繊維板と木質化粧単板とは材質が異なるので、着色剤や塗料等で溝内部を着色する際、着色剤や塗料が、溝内部の表面へ吸い込む時の吸い込み程度が異なり、そのことが原因で、溝内部に着色ムラが生じ易いという問題点もあった。
【0013】
また、型押し方法によって溝付け加工を行った場合、あまり深く型押しすると木質化粧単板にヒビ割れが発生するので、溝の深さや溝内壁の傾斜角度に制限があり、あまり、深くてシャープな溝付け加工が困難であった。
【0014】
また、型押し方法によって溝付け加工を行った場合、木質基材や木質化粧単板等の木質材料が、まわりの湿気の吸放湿によって含水率変動すると、せっかく設けた化粧溝が経日変化によって、段々と浅くなり極端な場合は化粧溝が消失してしまうという問題点があった。
【0015】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題、すなわち本発明の目的とするところは、木質化粧板において、その表面化粧溝が深くシャープな溝が可能で、長期間使用しても溝が浅くなったり、溝が消失することがなく、しかも、溝の色調が均一で色調ムラがなく外観に優れ、溝底や溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず、床材として用いた場合の足裏歩行感が良好で、床材以外に用いた場合においても、仕上がり品質、外観意匠性に優れ、しかも作製する際の作業性に優れた木質化粧板を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、木質基材に補強層を介して木質化粧単板が貼着され、表面に塗装膜が施されて木質化粧板本体が構成され、該木質化粧板本体の表面に、木質化粧単板の木質繊維方向と略平行方向に化粧溝が設けられた木質化粧板であって、前記塗装膜が設けられた木質化粧単板が前記化粧溝部分で分断されることなく、化粧溝を形成する補強層内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されていることを特徴としている。
【0017】
このような請求項1に記載の木質化粧板では、前記木質化粧単板が、前記補強層を介して木質基材に貼着されているので、溝付け加工時の木質化粧単板の破損が有効に防止でき、深くシャープな溝付け加工が可能となり、外観意匠性に優れ、仕上がり品質にも優れたものとなる。また、長期間使用しても木質化粧単板の割れが生じることがなく長期耐久性に優れたものとなる。さらに、塗装膜が施された木質化粧単板が、前記化粧溝部分において、分断されることなく、化粧溝を形成する補強層内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されているので、化粧溝の部分において、下地の補強層や基材が露出することなく、表面化粧溝の色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れ、溝内部、溝底部、溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず床材として使用した場合の足裏歩行感が良好で、また、床材以外の化粧板として使用した場合の仕上がり品質が良好で、しかも作製する際の作業性に優れた木質化粧板を安価に提供できる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の木質化粧板において、前記補強層が熱硬化性樹脂層で形成された固化層からなり、前記化粧溝が前記固化層で被覆され、前記塗装膜が設けられた木質化粧単板が前記化粧溝部分で分断されることなく、化粧溝を形成する固化層内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されていることを特徴としている。
【0019】
このような請求項2に記載の木質化粧板では、前記補強層が熱硬化性樹脂層で形成された固化層からなり、前記化粧溝が前記固化層で被覆され、前記塗装膜が設けられた木質化粧単板が前記化粧溝部分で分断されることなく、化粧溝を形成する固化層内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されているので、木質化粧板作製後、木質化粧板の含水率変動によって化粧溝が浅くなる溝戻り現象が生じたり、極端な場合は溝が消失するといった問題が有効に防止できる。従って、長期間使用しても、いつまでも深く、シャープな化粧溝が保持でき、外観意匠性にとって大変好適である。
【0020】
しかも、溝内部、溝底部、溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず床材として使用した場合の足裏歩行感が良好で、また、床材以外の化粧板として使用した場合の仕上がり品質が良好で、しかも作製する際の作業性に優れた木質化粧板を安価に提供できる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、前記木質化粧単板が、前記補強層を介して木質基材に貼着されているので、溝付け加工時の木質化粧単板の破損が有効に防止でき、深くシャープな溝付け加工が可能となり、外観意匠性に優れ、仕上がり品質にも優れたものとなる。また、長期間使用しても木質化粧単板の割れが生じることがなく長期耐久性に優れたものとなる。さらに、塗装膜が施された木質化粧単板が、前記化粧溝部分において、分断されることなく、化粧溝を形成する補強層内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されているので、化粧溝の部分において、下地の補強層や基材が露出することなく、表面化粧溝の色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れ、溝内部、溝底部、溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず床材として使用した場合の足裏歩行感が良好で、また、床材以外の化粧板として使用した場合の仕上がり品質が良好で、しかも作製する際の作業性に優れた木質化粧板を安価に提供できる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、前記補強層が熱硬化性樹脂層で形成された固化層からなり、前記化粧溝が前記固化層で被覆され、前記塗装膜が設けられた木質化粧単板が前記化粧溝部分で分断されることなく、化粧溝を形成する固化層内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されているので、木質化粧板作製後、木質化粧板の含水率変動によって化粧溝が浅くなる溝戻り現象が生じたり、極端な場合は溝が消失するといった問題が有効に防止できる。従って、長期間使用しても、いつまでも深く、シャープな化粧溝が保持でき、外観意匠性にとって大変好適である。しかも、溝内部、溝底部、溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず床材として使用した場合の足裏歩行感が良好で、また、床材以外の化粧板として使用した場合の仕上がり品質が良好で、しかも作製する際の作業性に優れた木質化粧板を安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態の一例を図面に従って詳細に説明する。図1は本発明の第一実施形態における木質化粧板を示す斜視図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1の要部拡大断面図、図4は本発明の木質化粧板の溝付け加工前の木質化粧板本体を示す断面図、図5は本発明の第二の実施形態における木質化粧板を示す断面図である。
【0024】
図1〜図4において、本発明の木質化粧板1の第一実施形態の詳細を示す。図4に示すように、木質基材2の表面に補強層Sが設けられ、その表面に木質化粧単板3が貼着され、さらにその表面に表面塗装膜4が施され、木質化粧板本体5が構成されている。また、図1〜図3に示すように、前記木質化粧板本体5の表面に木質化粧単板3の木質繊維方向と略平行方向に化粧溝6が設けられ、本例に示す第一実施形態の木質化粧板1が構成されている。前記化粧溝6は、木質化粧板1の使用目的及びそのデザインや外観を考慮して決められるもので、化粧溝6の長手方向と直交する断面における溝形状、溝の幅寸法、溝の深さ寸法、及び溝の本数等は、木質化粧板1の仕上がりデザイン、外観を考慮して決定される。化粧溝6の本数は、1本の場合もあり、2本以上の複数の場合もある。
【0025】
また、化粧溝6の溝の長手方向は、本発明では、表面に貼着されている木質化粧単板3の木質繊維方向と略平行方向に設けられている。木質化粧板1の長手方向と木質化粧単板3の木質繊維方向を略平行して方向を略揃えて貼着されている場合は、溝方向は縦溝となる。逆に、木質化粧板1の短手方向と木質化粧単板3の木質繊維方向を略平行して方向を略揃えて貼着されている場合は溝方向は横溝となる。
【0026】
図3において、本発明の第一実施形態における木質化粧板1では、木質基材2の表面に補強層Sが設けられており、該補強層Sの表面に木質化粧単板3が貼着され、その表面に塗装膜4が施され、木質化粧板本体5が構成されている。また、前記木質化粧単板3は、表面に塗装膜4が施された状態で、前記化粧溝6の部分で分断されることなく、化粧溝6を形成する補強層内壁面SWに沿って且つ木質化粧単板3と補強層内壁面SWとが密接し、しかも滑らかな連続体として形成されている。本発明の第一実施形態では、溝方向と直交する方向の断面において、断面視略U字型の溝形状の場合を示し、第一実施形態の説明は、略U字型の場合で説明するが、その他の溝形状の場合も同様である。
【0027】
本発明の木質化粧板1に用いられる木質基材2として、合板、中比重繊維板、集成材、木削片板、または、これらの複合材料が好適なものとして例示できる。これらの材料に限定されるものではない。また、溝形状としては、溝長手方向と直交する方向における断面視形状で、図1〜3に示す略U字型溝の他、略V字型溝、略半円形型溝、略角型溝、略台形型溝、その他の形状の溝が例示でき、木質化粧板1の使用目的及びそのデザインや外観等を考慮して決められる。溝形状もこれらに限定されるものではない。
【0028】
また、本発明の木質化粧板1の表面には、表面塗装膜4が施されている。これに用いる塗料としては、木質化粧単板3の銘木木目の外観意匠性を際だたせるために、無色透明又は着色透明の合成樹脂塗料が好適に用いられる。塗料成分は、木質材料用の塗料として、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、アミノアルキッド樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料等を例示できる。これらの中で、紫外線硬化型のウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料等が、溝形成工程における生産ライン適性や製造効率、形成される溝の品質安定性等の観点から、好適なものとして例示できる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0029】
また、木質化粧板1の表面を無塗装で仕上げる場合、木質用ワックス等で仕上げる場合もある。いずれにしても、本発明の木質化粧板1は、木質化粧単板3の表面に塗装膜4を形成した後に溝付け加工が行われ、従って、溝形成時点で既に、溝部分は塗装膜4で仕上げされていることが望ましい。また、本発明の木質化粧板1は、木質基材2表面に補強層Sが設けられ、該補強層Sを介して木質化粧単板3が貼着され、木質化粧単板3の表面に塗装膜4が施され、前記木質化粧単板3は、化粧溝6の箇所において分断されておらず、そのすぐ下面に設けられている補強層Sと密接して設けられている。化粧溝6の箇所の凹部Uの箇所の補強層Sの内壁面SWに沿って且つ該補強層内壁面SWと密接して滑らかな連続体として設けられている。
【0030】
本発明の木質化粧板1は、溝付け加工後必要に応じて表面仕上げ塗装が施される。この場合の塗料も木質材料用の塗料として、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、アミノアルキッド樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料等を例示できる。これらの中で、紫外線硬化型のウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料等を好適なものとして例示できる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0031】
図3に本発明の木質化粧板1の第一実施形態における、要部拡大断面図を示す。本例における木質化粧板1においては、溝長手方向と直交する方向の断面で見て略U字型形状の溝の例を示す。また、本例では、溝方向と直交する方向の断面で見て略U字型形状の溝の例で詳述するが、溝形状が略U字型以外に、略V字型、又はそれら以外の形状の溝形状であっても略U字型の場合と同様である。
【0032】
本例で示す略U字型溝の場合、化粧溝6の溝底部において、溝の内壁が溝の外方へ膨出する向きの曲面が形成されており、しかも、化粧溝6の上端縁角部Dにおいて、溝の内方へ膨出する向きの曲面が形成されており、該曲面によって面取部Mが形成されている。この場合の面取部Mの形状は、いわゆるアール面となる。このように構成された化粧溝6は、溝方向と直交する方向の断面で見て略U字型形状の溝となる。面取部Mの形状は本例に示すような、曲面からなるアール面以外に、図示しないが、平坦面からなるC面であってもよいものとする。
【0033】
本発明の木質化粧板1において、木質基材2に化粧溝6を形成する凹部Uが設けられている。さらに、前記凹部Uの箇所において、木質基材2の内壁面に沿って、前記補強層Sが設けられている。木質化粧単板3は、その表面に塗装膜4が施され、前記凹部Uを形成する補強層内壁面SWに沿って、且つ、前記補強層内壁面SWと密接するようにして、切れ目なく滑らかな連続体として設けられている。このように、木質化粧単板3が、滑らかな連続体として設けられているので、化粧溝6の内部、底部、溝上端縁角部Dにおいて、木質基材2が露出しない。従って、木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ずる恐れがない。
【0034】
また、木質化粧単板3は、その表面に塗装膜4が施されており、その後、溝形成され、溝形成時点で、既に、溝部分及び溝以外の部分も塗装膜4で仕上げされている。従って、必要に応じて行われる仕上げ塗装の際、化粧溝6及び溝以外の部分に、油性又は水性の着色ステイン等を用いて下地着色を施し、さらに無色透明、又は、着色透明の下地塗装、仕上げ塗装を行っても、前記木繊維の毛羽立ち、ササクレ、バリ等が原因の着色ムラが発生することがなく、表面化粧溝及び溝以外の部分も、色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れたものとなる。また、化粧溝6の内部において、木質基材2や補強層Sが露出せず、木質化粧単板3が表面にでているので、表面着色工程、仕上げ塗装工程が複雑な塗装工程を必要とせず簡略化できる。従って、表面着色工程、仕上げ塗装工程が複雑な塗装工程を必要とせず、簡略化でき、場合によっては省略も可能で、製造時の品質も安定することにより、製造時の作業性に優れ、コスト的にも安価なものとなる。
【0035】
また、木質化粧単板3がその表面に塗装膜が施され、化粧溝6を構成する凹部Uの箇所において、分断されることなく滑らかな連続体として設けられているので、すなわち、前記化粧溝6の上端縁角部Dの周辺及び溝内部にまで前記木質化粧単板3が切れ目なく滑らかに連続して設けられているので、特に、溝上端縁角部Dにおいて、下地が露出せず木質化粧単板3で覆われており、前記面取部Mが形成されており、該面取部Mの働きで、木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ずることがない。従って、本発明の木質化粧板1を床材として用いた場合、前記木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が原因で生じる、靴下やストッキングの破損が防止でき、また、歩行時に足裏に木繊維のササクレ等が刺さる恐れもなく、足裏歩行感に優れたものとなる。また、床材以外の化粧板として用いられた時においても、仕上がりの品質の良好なものとなる。
【0036】
また、前記補強層が木質化粧単板3の下面に設けられているので、製造工程における木質化粧単板3の破損等が生じにくく、さらに、長期間使用しても木質化粧単板3にヒビ割れ等が発生しにくい。木質化粧板1を構成する木質材料が、まわりの湿気等を吸放湿して含水率が変動しても、木質化粧単板3がその下面に設けられた補強層Sの働きで、ヒビ割れしにくく、長期耐久性に優れ、品質の安定したものとなる。
【0037】
また、本発明に用いる前記補強層Sは、例えば、和紙、薄葉紙、クラフト紙等の紙類、不織布、布帛、寒冷紗等の単板補強材料を単体で用いることを例示できる。また、これらを複合させて用いる場合もある。これらの他、塩ビ樹脂シート、オレフィン樹脂シート、ポリエステル樹脂シート、ポリエチレン樹脂シート、PET樹脂シート等の合成樹脂シート等もまた好適なものとして例示できる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0038】
また、本発明の第一実施形態における木質化粧板1の場合、上記構成を有しているので、上記さまざまな効果のうち、特に、補強増Sの働きで、木質化粧単板3のヒビ割れ防止が可能となる。また、溝上端縁角部Dや溝底部Bの木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点防止と、特に床材として用いた場合の足裏歩行感の向上、さらに床材以外の化粧板として用いた場合の仕上がり品質にとって、よりいっそう好適である。
【0039】
図5において、本発明の木質化粧板1の第二の実施形態を詳述する。第一実施形態における前記補強層Sが、図5に示す第二実施形態の例では、補強層Sが熱硬化性樹脂層から構成されている。前記熱硬化性樹脂層を前記凹部Uに設ける方法として、熱硬化性樹脂を紙、不織布、布帛等に含浸させて作製された、いわゆる含浸紙を前記補強層Sとして用いる方法が好適な方法として例示できる。しかし、この方法以外の方法であってもよいものとする。
【0040】
木質基材2の表面に、熱硬化性樹脂含浸紙が積層され、その表面に木質化粧単板3がこの順で積層される。溝付け方法は、木質基材2、補強層Sとしての熱硬化性樹脂含浸紙、木質化粧単板3の順で積層されている積層体の化粧単板3表面から、先端部が溝形状と略合致する型押しロール又は型板を用いて熱圧して型押しする方法の他、あらかじめ、木質基材2に凹部Uを型押し又は切削によって形成しておき、前記凹部Uに補強層Sとしての熱硬化性樹脂含浸紙を熱圧して溝形状と合致する凹形状を有する固化層Kを形成しておいて、木質化粧単板3を前記固化層Kに沿って且つ密接させて貼着し、その表面に塗装膜4を設ける方法等がある。
【0041】
前記、木質基材2の表面に、熱硬化性樹脂含浸紙が積層され、その表面に木質化粧単板3がこの順で積層される。溝付け方法は、木質基材2、補強層Sとしての熱硬化性樹脂含浸紙、木質化粧単板3の順で積層されている積層体の化粧単板3表面から、先端部が溝形状と略合致する型押しロール又は型板を用いて熱圧して型押しする方法の場合、前記熱硬化性樹脂含浸紙は、内部に含浸させた樹脂が未硬化の状態にあり、熱圧前は、柔軟性が十分に残存している。この後、前記溝部分及び溝間の平坦部全体に熱と圧力を加えると含浸樹脂が熱硬化し固化層Kが形成される。前記固化層Kの内壁面KWに木質化粧単板3が密接している。
【0042】
前記補強層S又は熱硬化性樹脂含浸紙は、木質化粧単板裏面全体にわたって設けてもよいし、また、化粧溝6を構成する凹部Uの箇所にのみ設けてもよいものとする。
【0043】
熱硬化性樹脂含浸紙に用いる含浸樹脂は、例えば、和紙、薄葉紙、クラフト紙等の紙類、不織布、布帛、寒冷紗等の単板補強材料に、樹脂を含浸させた樹脂含浸紙、樹脂含浸不織布、樹脂含浸布帛等が好適に用いられる。前記含浸樹脂としては、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂を好適なものとして例示できる。これらの樹脂は加熱圧締され熱硬化する際に、木質化粧単板3との間で接着性を発現するので、木質化粧単板3を貼る接着剤は不要である。
【0044】
このようにして、熱硬化性樹脂含浸紙を補強層Sとして用い、溝部分又は溝部分と溝以外の部分の全体を熱圧することで、溝部分又は溝部分と溝以外の部分の全体に、固化層Kが形成されるので、木質化粧板1が長期間使用中に、まわりからの吸放湿によって含水率変動が生じ、このことによって、溝形状が湿気等により変形したり溝が浅くなったり、極端な場合、せっかく設けられた溝が消失するといったことが解消する。
【0045】
また、上記のような構成を有する本発明の第二実施形態の木質化粧板1において、その表面に貼着されている木質化粧単板3は、その表面に塗装膜4が設けられており、木質基材2とその表面の熱硬化性樹脂含浸紙によって設けられた凹部Uを形成する固化層内壁面KWに沿って且つ前記固化層内壁面KWに密接するようにして、切れ目なく滑らかな連続体として設けられている。このように、木質化粧単板3が、滑らかな連続体として設けられているので、化粧溝6の内部、溝底部B、溝上端縁角部Dにおいて、木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ずる恐れがない。
【0046】
また、特に、溝上端縁角部Dにおいて、面取部Mが形成されているので、木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ずることがなく、本発明の木質化粧板1を床材として用いた場合、前記木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が原因で生じる、靴下やストッキングの破損が防止でき、また、歩行時に足裏に木繊維のササクレ等が刺さる恐れもなく、足裏歩行感に優れたものとなる。また、床材以外の化粧板として用いられた時においても、仕上がり品質の優れたものとなる。
【0047】
また、必要に応じて実施される仕上げ塗装時において、化粧溝6又は木質化粧板1表面全体に、油性又は水性の着色ステイン等を用いて下地着色を施し、さらに無色透明、着色透明の下地塗装、仕上げ塗装等を用いて塗装仕上げを行った際、木質基材2や補強層S、固化層Kが露出しないので前記木繊維の毛羽立ち、ササクレ、バリ等が原因の着色ムラが発生することがなく、表面化粧溝6の色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れたものとなる。また、表面着色工程、仕上げ塗装工程が複雑な塗装工程を必要とせず簡略化でき、製造時の品質も安定することにより、製造時の作業性に優れ、コスト的にも安価なものとなる。
【0048】
また、本発明の第二実施形態における化粧溝6の場合、上記構成を有しているので、上記さまざまな効果のうち、特に固化層Kが形成されているので、木質化粧板1が長期間使用中に、まわりからの吸放湿によって含水率変動が生じ、このことによって、溝形状が湿気等により変形したり溝が浅くなったり、極端な場合溝が消失するといったことが解消する。また、溝上端縁角部Dの木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点防止と、特に床材として用いた場合の足裏歩行感の向上、さらに床材以外の化粧板として用いた場合の仕上がり品質向上効果も有する。
【0049】
本発明の木質化粧板1を作製するに際し、化粧溝6の溝付け方法は、第一実施形態では木質基材2の表面に補強層Sを貼着しておいて、木質化粧単板3を貼着し、表面塗装後に型押しする方法、型押しと同時に塗装膜4を設ける方法、木質化粧単板3にあらかじめ、前工程で表面塗装膜4を設けておいて、さらに、木質基材2にあらかじめ溝加工を施し、続いて凹部Uを形成しておいて、該凹部Uに補強層Sを貼着しておいて、塗装膜付きの木質化粧単板を前記凹部Uの補強層内壁面SWに密接するように貼り付ける方法、木質基材2にあらかじめ溝加工を施し凹部Uを形成しておいて、該凹部Uに補強層Sを貼着しておいて、木質化粧単板3を凹部Uの補強層内壁面SWに密接するように貼り付けておいて、その上から塗装膜4を施す方法、等が好適な方法として例示できる。これらの製造方法の中で、木質基材2の表面に補強層Sを貼着しておいて、木質化粧単板3を貼着し、表面塗装後に型押しする方法が製造効率や品質の安定性、コスト等の面から好適である。
【0050】
また、第二実施形態では、木質基材2の表面に補強層Sを積層し、さらに木質化粧単板3を積層した後、表面塗装膜4を設け、溝形状と同様の形状を有する熱ロールや溝形状と同様の形状を有する型押し突起(図示せず)を有する熱板プレスで熱圧と同時に型押しを行い、補強層を硬化させ、固化層Kを形成するとともに化粧溝6を形成する方法、型押しと同時に塗装膜4を設ける方法、木質化粧単板3にあらかじめ、前工程で表面塗装膜4を設けておいて、さらに、木質基材2にあらかじめ溝加工を施し、続いて凹部Uを形成しておいて、該凹部Uに固化層Kを設けておいて、塗装膜付きの木質化粧単板を前記凹部Uの固化層内壁面KWに密接するように貼り付ける方法、木質基材2にあらかじめ溝加工を施し凹部Uを形成しておいて、該凹部Uに固化層Kを設けておいて、木質化粧単板3を凹部Uの固化層内壁面KWに密接するように貼り付けておいて、その上から塗装膜4を施す方法等が例示できる。これらの製造方法の中で、木質基材2の表面に補強層Sを積層し、さらに木質化粧単板3を積層した後、表面塗装膜4を設け、溝形状と同様の形状を有する熱ロールや溝形状と同様の形状を有する型押し突起(図示せず)を有する熱板プレスで熱圧と同時に型押しを行い、補強層を硬化させ、固化層Kを形成するとともに化粧溝6を形成する方法が製造効率や品質の安定性、コスト等の面から最も好適である。
【0051】
第二実施形態による型押し方法によれば、溝付け加工時において、割れにくいので、極めてシャープで且つ深さの深い溝付けが可能となり、外観意匠性にとって優れたものとなる。しかも長期間使用しても、溝が浅くなったり、溝が消失するといったことがない。
【0052】
いずれにしても、本発明の木質化粧板1は、木質基材2に補強層Sを設け、該補強層Sを介して木質化粧単板3を貼着し、表面に塗装膜4を設け、溝付け加工し、溝付け加工後必要に応じて表面仕上げ塗装が施される。この場合の塗料も木質材料用の塗料として、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、アミノアルキッド樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料等を例示できる。これらの中で、紫外線硬化型のウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料等を好適なものとして例示できる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0053】
また、本発明の木質化粧板1に用いる木質化粧単板3は例えば銘木からなるスライス突板や、木質単板、ロータリーレースによって製造される単板、ハーフロータリーレースにより製造される単板等が好適なものとして例示できる。特に、木質化粧単板3の表面に透明で軟質の樹脂シートをラミネートした複合材料の場合は、表面塗装仕上げが必要でない場合があり、塗装工程省略によって大きくコストダウンできる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第一実施形態における木質化粧板を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図1の要部拡大断面図。
【図4】本発明の木質化粧板の溝付け加工前の木質化粧板本体を示す断面図。
【図5】本発明の第二実施形態における木質化粧板を示す断面図。
【図6】従来の木質化粧板の断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 木質化粧板
2 木質基材
3 木質化粧単板
4 表面塗装膜
5 木質化粧板本体
6 化粧溝
S 補強層
SW 補強層内壁面
K 固化層
KW 固化層内壁面
U 凹部
B 溝底部
D 溝上端縁角部
M 面取部
11 従来の木質化粧板
12 木質基材
13 木質化粧単板
14 表面塗装膜
15 木質化粧板本体
16 化粧溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材に補強層を介して木質化粧単板が貼着され、表面に塗装膜が施されて木質化粧板本体が構成され、該木質化粧板本体の表面に、木質化粧単板の木質繊維方向と略平行方向に化粧溝が設けられた木質化粧板であって、前記塗装膜が設けられた木質化粧単板が前記化粧溝部分で分断されることなく、化粧溝を形成する補強層内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されていることを特徴とする木質化粧板。
【請求項2】
前記補強層が熱硬化性樹脂層で形成された固化層からなり、前記化粧溝が前記固化層で被覆され、前記塗装膜が設けられた木質化粧単板が前記化粧溝部分で分断されることなく、化粧溝を形成する固化層内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の木質化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−196385(P2007−196385A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14226(P2006−14226)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(398051497)株式会社パル (65)
【Fターム(参考)】