説明

木造建物用仕口補強構造および当該構造施工用ドリル刃補助具

【課題】 木痩せ等した場合に梁側の締め操作だけで再度緊結できる木造建物用仕口補強構造を提供すること。
【解決手段】 柱10を横方向に貫通するとともに、梁20の突き合せ端面21を当該梁縦軸線28方向に沿って所定長さだけ穿設して連結用穴22を形成し、梁20に連結用穴22と直交するようにアーム取付用穴24を形成するとともに、当該梁縦軸線28に対し傾斜するとともに連結用穴22の先端部に連通する工具挿入用穴28を形成し、当該連結用穴22に挿入された連結軸31と、上記アーム取付用穴24に挿入されかつ通し穴42を有するアーム41と、連結軸31のねじ部と螺合してアーム41を足場として連結軸31を引っ張り可能な連結軸引張り部材51とを備え、この連結軸引張り部材51を工具55で締め回転可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物用仕口補強構造および当該構造施工用ドリル刃補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、大地震が起こった場合、木造建物の仕口には大きな荷重が作用する。
【0003】
そのため、従来から仕口を補強する方策が種々採られている。
【0004】
図27に、従来の木造建物用仕口補強構造の一例(以下、第1の仕口補強構造と称する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この第1の仕口補強構造は、梁3の端面にボルト孔101を設けるとともに、このボルト孔101と直交するように側面にアーム孔102を設け、柱1の側部にはボルト孔101の延長線上にボルト孔103を貫通穿設し、梁3のアーム孔102に、中央部にめねじ104を設けたアーム105を挿入するとともに、柱1のボルト孔103に座金106を介して胴長ボルト107を差込み、柱1側の胴長ボルト107を回してアーム105のめねじ104との間でねじ締めすることにより柱1と梁3とを緊結して仕口を補強するものとされている。
【0006】
上記第1の仕口補強構造は、図28に示すように、柱1と基礎体5(基礎コンクリート6,土台7)との突き合せ結合部(仕口)の補強にも利用可能である。
【0007】
なお、図28において、109は基礎パッキンである。この基礎パッキン109によって生じた基礎コンクリート6と土台7との間の隙間からスパナ等を差し込んで、胴長ボルト107を回して締め付けるものとされている。
【0008】
また、図29に従来の木造建物用仕口補強構造の別の例(以下、第2の仕口補強構造と称する。)を示す。
【0009】
この第2の仕口補強構造は、柱1の側面にボルト111Pで固定されたL字形の保持部材112Pと、基礎体5(基礎コンクリート6,土台7)に下方部分が係止されかつ上端部がナット116Pを介して保持部材112Pに止められた連結ボルト115Pとからなり、ナット116Pを回して締め付けることにより柱1と土台7とを緊結して仕口を補強するものとされている。
【特許文献1】実公昭59−3044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記第1の仕口補強構造(図27,28)の場合、胴長ボルト107を回して梁3と柱1(又は柱1と基礎体5)とを圧接するものとされているので、柱1の側面1sに外板等を取付けてしまった後は胴長ボルト107を回して柱1と梁3(又は柱1と基礎体5)とを再度緊結するには外板等を取外さなければならず、手間が掛かる不都合を有する。なお、柱1と梁3とを再度緊結する作業は、木材(特に、水分を多く含んだ杉等)が乾燥するにつれて収縮(木痩せ)するので、建築してから何年か経過した後に行うことが望ましい。
【0011】
また、図27に示すように柱1の片側側面に梁3を突き合せ結合する場合には、上記第1の仕口補強構造は適用可能であるが、全ての差し口(二方差し、三方差し、四方差し等)には適用できず、適用範囲が狭い。
【0012】
一方、上記第2の仕口補強構造(図29)の場合、地震の縦揺れなどにはある程度の補強効果が認められるものの、横揺れに対しては補強効果をほとんど発揮せず柱1がほぞの付け根などから破損してしまうおそれがある。
【0013】
なお、仕口補強構造が十分な強度をもっていたとしても、大地震が起きるなどして過大な横揺れが発生した場合、その一部が破壊されてしまうことは起こり得る。しかし、かかる場合でも梁が柱から離れてしまうことは家屋が完全に倒壊して居住する人間が押しつぶされてしまうことにつながるので、梁が柱から離れるのを防止する技術の確立が必要である。
【0014】
また、木材(上記した柱や梁等)に長い穴を開ける場合、木工用ドリルの刃が折れたり穴開けの位置や穴の形状がいびつになるなど不都合が生じやすい。かかる不都合を解消できる補助具の開発が望まれている。
【0015】
本発明の目的は、適用範囲が広くて取扱いやすくしかも木痩せ等した場合に梁側の締め操作だけで柱と梁を簡単に再度緊結できる木造建物用仕口補強構造を提供することにある。また、本発明の他の目的は、大地震が起きるなどして過大な横揺れが発生した場合でも、梁が柱から離れてしまうのを阻止して、家屋の完全倒壊を防止できる木造建物用仕口補強構造を提供することも目的とする。また、本発明の他の目的は、取扱いやすくしかも木痩せ等した場合に柱側の締め操作だけで柱と基礎体を簡単に再度緊結できる木造建物用仕口補強構造を提供することにある。また、本発明の他の目的は、大地震が起きるなどして過大な横揺れが発生した場合でも、柱が基礎体から離れてしまうのを阻止して、家屋の完全倒壊を防止できる木造建物用仕口補強構造を提供することも目的とする。また、本発明の他の目的は、斜めに連結される木材(第1の木材と第2の木材)が木痩せ等した場合に、例えば、第2の木材側の締め操作だけで当該両木材を簡単に再度緊結できる木造建物用仕口補強構造を提供することにある。また、本発明の他の目的は、木材に長尺の穴を簡単かつ正確に開ける際に役立つドリル用補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、柱と梁の突き合せ結合部を補強する木造建物用仕口補強構造であって、柱を横方向に貫通するとともに、梁の突き合せ端面を当該梁縦軸線方向に沿って所定長さだけ穿設して連結用穴を形成し、梁の第1の側面部に連結用穴と直交するようにアーム取付用穴を形成するとともに、この梁の第2の側面部に当該梁縦軸線に対し傾斜するとともに連結用穴の先端部に連通する工具挿入用穴を形成し、当該連結用穴に挿入されかつ基端部に柱と係止するための係止部が設けられかつ先端部にはねじ部が形成された連結軸と、梁のアーム取付用穴に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸を通すための通し穴が開けられたアームと、連結軸のねじ部と螺合してアームを足場として連結軸を引っ張り可能な連結軸引張り部材とからなる仕口補強金具を備え、連結軸引張り部材が、工具挿入用穴から挿入された工具で締め回転可能に構成されたことを特徴とする木造建物用仕口補強構造である。
【0017】
上記構成の請求項1の発明の場合、梁側に形成された工具挿入穴を介して工具を挿入して連結軸引っ張り部材を締める方向に回転させると、連結軸が引張られる。ここで、連結軸は、基端部が柱側に係止されているので、梁側のアームを柱側に引き寄せるような方向に力を及ぼす。これにより、柱と梁とが緊結される。
【0018】
このように、梁側の連結軸引張り部材を締め回転操作するだけで、柱と梁とを緊結するので、木造建物完成後に柱と梁が木痩せ等した場合、柱に取付けられている外板等を取外すことなく当該柱と梁とを簡単に再度緊結できる。また、二方差し,三方差し,四方差しする場合などにも適用でき適用範囲が広い。
【0019】
また、柱と梁の突き合せ結合部は、梁側のほぞが柱側のほぞ穴に差し込まれて両者が結合されているのが一般的であるが、強度的に弱いほぞを連結軸が直接補強するので、大地震が起こった場合でも当該結合部が破損するのを防止できる。
【0020】
さらに、柱と梁を強く緊結しても両部材の突き合せ結合部(仕口)には大きな偏心荷重が作用せず、結合強度を低下させてしまうようなことはない。
【0021】
したがって、適用範囲が広くて取扱いやすくしかも木痩せ等した場合に柱と梁(又は柱と基礎体)を簡単に再度緊結できる。
【0022】
請求項2の発明は、柱と基礎体との突き合せ結合部を補強する木造建物用仕口補強構造であって、柱の突き合せ端面を当該柱縦軸線方向に沿って所定長さだけ穿設して連結用穴を形成し、柱の第1の側面部に連結用穴と直交するようにアーム取付用穴を形成するとともに、この柱の第2の側面部に当該柱縦軸線に対し傾斜するとともに連結用穴の先端部に連通する工具挿入用穴を形成し、当該連結用穴に挿入されかつ基端部に基礎体と係止するための係止部が設けられかつ先端部にはねじ部が形成された連結軸と、柱のアーム取付用穴に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸を通すための通し穴が開けられたアームと、連結軸のねじ部と螺合してアームを足場として連結軸を引っ張り可能な連結軸引張り部材とからなる仕口補強金具を備え、連結軸引張り部材が、工具挿入用穴から挿入された工具で締め回転可能に構成されたことを特徴とする木造建物用仕口補強構造である。
【0023】
上記構成の請求項2の発明の場合、柱の第2の側面部に形成された工具挿入用穴から工具を挿入して連結軸引っ張り部材を締める方向に回転させると、連結軸が引っ張られる。ここで、連結軸は、基端部が基礎体側に係止されているので、柱側のアームを基礎体側に引き寄せるような方向に力を及ぼす。これにより、柱と基礎体とが緊結される。これにより、柱と基礎体とが緊結される。
【0024】
このように、柱の第1の側面部に形成された工具挿入穴から工具を挿入して連結軸引っ張り部材を締める方向に回転させるだけであるので、木造建物完成後に柱が木痩せ等した場合に当該両部材を簡単に再度緊結できる。また、連結軸が柱内に収容されているので、大地震などで柱が横揺れした場合でも連結軸には過大な曲げモーメントや引張力は作用せず破損しにくい。そのため、柱と基礎体との突き合せ結合部が大きく変形したり損壊するのを防止できる。さらに、柱と基礎体を強く緊結しても両部材の突き合せ結合部(仕口)には大きな偏心荷重が作用せず、結合強度が低下してしまうようなことはない。したがって、取扱いやすく木痩せ等した場合には柱と基礎体を簡単に再度緊結できる。
【0025】
請求項3の発明は、斜めに連結される第1の木材と第2の木材の接合部を補強する構造であって、第1の木材の第1の側面部を穿設するとともに第2の木材の突き合せ端面を当該第2の木材縦軸線方向に沿って所定長さだけ穿設して連結用穴を形成し、当該第1の木材の第2の側面部に連結用穴と直交するように自在連結金具用穴を形成するとともに、当該第2の木材の第1の側面部に連結用穴と直交するようにアーム取付用穴を形成し、当該第2の木材の第2の側面部に当該木材軸線に対し傾斜するとともに連結用穴の先端部に連通する工具挿入用穴を形成し、当該連結用穴に挿入されかつ基端部が自在連結金具に所定の取付角度をもって連結されかつ先端部にはねじ部が形成された連結軸と、第1の木材の自在連結金具用穴に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸の基端部を接続するための接続部が設けられた自在連結金具と、第2の木材のアーム取付用穴に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸を通すための通し穴が開けられたアームと、連結軸の先端部のねじ部と螺合してアームを足場として連結軸を引っ張り可能な連結軸引張り部材とからなる仕口補強金具を備え、連結軸引張り部材が、工具挿入用穴から挿入された工具で締め回転可能に構成されたことを特徴とする木造建物用仕口補強構造である。
【0026】
上記構成の請求項3の発明の場合、第2の木材側に形成された工具挿入穴を介して工具を挿入して連結軸引っ張り部材を締める方向に回転させる(締め回転させる)と、連結軸が引張られる。この際、連結軸は、その基端部が自在連結金具によって係止されているので、連結軸引っ張り部材を円滑かつ確実に回転できる。これにより、連結軸は、第1の木材側の自在連結金具と第2の木材側のアーム間で引っ張られる。したがって、第1の木材と第2の木材とが緊結される。このように、第2の木材側の連結軸引張り部材を締め回転操作するだけで、第1の木材と第2の木材とが緊結される。
【0027】
請求項4の発明は、長尺の木工ドリルの刃を軸線方向移動自在かつ回転自在にガイドするドリル刃ガイド筒を有し、このドリル刃ガイド筒を木材に当該木材軸線方向と傾斜した角度位置および平行な角度位置のいずれかに選択的に保持可能な保持部とから成るドリル用補助具である。
【0028】
上記構成の請求項4の発明の場合、長尺の木工ドリルの刃には木材の穴開け作業中に大きな曲げ荷重が作用して折れたり、穴開けの位置や穴開け寸法が狂いやすい(特に、木材に軸線に対して傾斜した長い穴を開ける場合には、かかる不都合が生じやすい)が、本ドリル用補助具を使用すると、長尺の木工ドリル刃はドリル刃ガイド筒によって穴開け作業中にガイドされるので、かかる不都合は生じない。この際、ドリル刃ガイド筒は、ドリル刃の軸線方向移動および回転を制限しないので、当該ドリル刃には不必要な荷重を作用させるようなことはなく円滑に穴開け作業を行える。したがって、例えば、請求項1又は2の木造建物用仕口補強構造を施工する際にも使用することで、当該構造の施工を円滑かつ確実に行える。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発によれば、木造建物完成後に柱と梁が木痩せ等した場合、梁側の工具挿入穴を介して工具を挿入して連結軸引っ張り部材の締め操作(回転操作)だけで簡単に再度緊結できる。また、二方差し,三方差し,四方差しする場合などにも適用でき適用範囲が広い。また、柱と梁の突き合せ結合部は、梁側のほぞが柱側のほぞ穴に差し込まれて両者が結合されているのが一般的であるが、強度的に弱いほぞを連結軸が直接補強するので、大地震が起こった場合でも当該結合部が破損するのを防止できる。
【0030】
請求項2の発明によれば、木痩せ等した場合には柱側の締め操作だけで柱と基礎体を簡単に再度緊結できる。また、大地震が起きるなどして過大な横揺れが発生した場合でも、柱画基礎体柱から離れてしまうのを阻止して、家屋の完全倒壊を防止できる。
【0031】
請求項3の発明によれば、木痩せ等した場合には、第2の木材側に形成された工具挿入穴を介して工具を挿入して連結軸引っ張り部材を締める方向に回転させる(締め回転させる)だけで、当該両木材とを緊結できる。
【0032】
請求項4の発明によれば、木材に長尺の穴開けを行う場合でも木工ドリル刃を軸線方向移動および回転自在にガイドするので、当該長尺の穴開け作業を円滑かつ確実に行える。例えば、請求項1又は2の木造建物用仕口補強構造を施工する際に使用することで、当該構造の施工を円滑かつ確実に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0034】
(第1の実施の形態)
【0035】
最初に、本発明に係る木造建物用仕口補強構造の基本的原理を、図10および図11を参照しながら説明する。
【0036】
木造建物用仕口補強構造は、図10に示すように、柱10および梁20に連結用穴22を形成し、当該梁20の側面部に連結用穴22と直交するようにアーム取付用穴を形成するとともに、当該梁縦軸線に対し傾斜しかつ連結用穴22の先端部に連通した工具挿入用穴26を形成し、連結用穴22に挿入されかつその基端部が係止部32によって柱10と係止された連結軸31と、梁20のアーム取付用穴に挿入されかつ長手方向中央部に通し穴が開けられたアーム41と、連結軸31の先端部のねじ部と螺合してアーム41を足場として連結軸31を引っ張り可能な連結軸引張り部材51とからなる仕口補強金具によって、柱10と梁20とを緊結可能に構成されている。なお、連結軸31を、梁20に連結用穴22内に十分深く挿入すると、図11に示すように、その先端部がアーム41の通し穴を通過して連結軸引張り部材51のねじ穴52の入口部分に少し螺合する。この際、連結軸引張り部材51は、連結用穴22の内周と先端部およびアーム41によって動きを拘束されているので、連結軸31の先端部と円滑かつ確実に螺合する。
【0037】
すなわち、連結軸31は、係止部32によって柱10に軸方向(横方向)移動禁止および回転禁止に係止されており、その先端部のねじ部はアーム41の通し穴を通って連結軸引張り部材51のねじ穴52と螺合している。その状態で、工具挿入用穴26から工具55を挿入して連結軸引っ張り部材51を締める方向に回転させると(例えば、右回転させると)、図12に示すように、連結軸31の先端部は連結軸引張り部材51のねじ穴52内を距離αだけ進み、係止部32とアーム41間(距離L1)の連結軸31部分は距離αに相当した力で引っ張られる。ここで、連結軸31は係止部32によって係止されているので、連結軸引張り部材51を円滑かつ確実に締める方向に回転させて連結軸31を引っ張ることができる。これにより、連結軸31は、柱10と梁20とが緊結される。
【0038】
第1の実施形態に係る木造建物用仕口補強構造は、図1および図2に示すように、柱10を横方向に貫通するとともに梁20の突き合せ端面21を所定長さだけ穿って連結用穴22を形成し、梁20の第1の側面部23に連結用穴22と直交するようにアーム取付用穴24を形成し、この梁20の第2の側面部(第1の側面部23と直角)に当該梁縦軸線に対し傾斜するとともに連結用穴22の先端部23aに連通する工具挿入用穴26を形成し、連結用穴22に挿入されかつ基端部に柱10と係止するための係止部32が設けられかつ先端部にはねじ部が形成された連結軸31と、梁20のアーム取付用穴24に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸31を通すための通し穴42が開けられたアーム41と、連結軸31のねじ部と螺合してアーム41を足場として連結軸31を引っ張り可能な連結軸引張り部材51とからなる仕口補強金具30によって、柱10と梁20とを緊結して両者(10,20)の突き合せ結合部(仕口)を補強可能に構成されている。
【0039】
なお、従来例(図27〜図29)と共通する構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略化または省略する。
【0040】
具体的には、梁20の突き合せ端面21には、図1および図2に示すように、ほぞ20aが形成されており、このほぞ20aは柱10の端面に形成されたほぞ穴10aに差し込まれている。連結用穴22は、図2に示すように、梁20の長手方向軸線から上下方向に所定距離(例えば、0〜15mm)だけ離れて形成されている。このように、梁20の端面中央から上下方向に離して連結用穴22を形成することにより、梁20などの木材中央部に自然的に入るひび割れを回避することができるとともに、連結軸31に引張り力が加わっても梁20の自然ひびに関係なく引張り力を低下させることがなくなる。
【0041】
また、連結用穴22は、梁20のほぞ20aを貫通するものとされている。連結軸31で、ほぞ20aを直接補強するためである。この連結用穴2の内径は、穴開けに支障がでない範囲で連結軸31との間隙が極力小さくなるように選定されている。これにより、梁20の断面欠落が少なくなり、かつ連結軸31が座屈等するのを効果的に防止できる。なお、上記した連結用穴22の内径は21mmとされている。また、上記したアーム取付用穴24は、連結用穴22よりも大きな内径(例えば、30.5mm)を有するものとされている。ちなみに、アーム取付用穴24に嵌挿されるアーム41は、直径が30mmとされている。
【0042】
次に、仕口補強金具30を構成する部品(31,41,51等)について詳述する。
【0043】
連結軸31は、長寸(例えば、全長=311〜360mm)で丸軸形状とされている。この連結軸31の基端部には、係止部32が形成されている。この係止部32は、梁20と柱10を挟んで対向する梁70に形成された長穴72に挿入され固定用ねじ軸73と、当該梁70の側面部に長穴72と直交するよう形成された円筒部材取付穴75に挿入されるとともに中央部のねじ穴74aが固定用ねじ軸73の一端部73aと螺合した固定用円筒部材74と、固定用ねじ軸73の他端部に螺合したロックナット(35,36)および座金37と、連結軸31の基端部に設けられたねじ部34と、から構成されている。なお、上記した長穴72は、柱10に形成された貫通穴12と整合している。
【0044】
上記した固定用ねじ軸73は、上記した固定用円筒部材74ならびにロックナット(35,36)および座金37によって柱10と固定される。したがって、この固定用ねじ軸73にねじ部34を介して連結軸31をと連結すれば、当該連結軸31は柱10に係止されることになる。
【0045】
また、この実施形態では、連結軸31は、市販されているステンレス鋼製のねじ棒を使用している。その外周全面にはメートルねじのM12(外径12mm)が螺設されている。なお、連結軸31を軸線方向にねじ結合された複数個の連結軸構成要素から形成してもよい。このように、連結軸31を分割可能とすることにより、柱10や梁20の大きさや取付け条件などに応じて連結軸31の長さを簡単に変えることができ、一段と取り扱いやすくなる。
【0046】
次に、アーム41は、図8に示すように、円筒形状とされている。アーム41の通し穴42の内径は、連結軸31の直径(12mm)よりも若干大きい12.4mmとされている。また、アーム41の一端面には、当該アーム41を軸線回りに回動するための調節用溝45が形成されている。この調節用溝45にドライバーの先端等を入れて回すことにより、通し穴42の軸線回り方向の位置を調節できる。なお、アーム41の通し穴42の縁部は、連結軸31が挿入しやすいように面取りがされている。
【0047】
また、連結軸引張り部材51は、図6に示すように、一端部が開口したねじ穴52を有しており頭部には工具で回動操作するための工具挿入凹部53が形成されている。工具挿入凹部53は、その横断面の輪郭が六角形状とされている。この実施形態では、連結軸引張り部材51は、外形が六角形柱状に形成されており、ステンレス鋼製とされている。工具55は、図7に示すように、横断面形状が六角形状のレンチ部56と、このレンチ部56に一端部が連結された長尺の柄57と、この柄57の他端部に設けられたハンドル部57から形成されている。この工具55の柄57を梁20の工具挿入穴26に差し込めば、先端のレンチ部56が連結軸引張り部材51の工具挿入凹部53に斜めに嵌まり込む。その状態で、工具20のハンドル部57を回せば、連結軸引張り部材51を締まる方向に回転することができる。なお、この際、工具55のレンチ部56が連結軸引張り部材51の工具挿入凹部53と斜めに入っているが、当該凹部53より外れてしまうことはない。
【0048】
次に、この実施形態の作用について述べる。
【0049】
まず、連結軸31の係止部32を形成する。それには、梁70の側面部71の円筒部材取付穴75に固定用円筒部材74を挿入し、その状態で当該梁70の長穴72に固定用ねじ軸73を挿入し、当該ねじ軸73を回転させて、その一端部73aを固定用ねじ軸73のねじ穴74aと螺合させる。そして、座金37が柱10のほぞ穴10aの図1中右の底面と圧接するまで固定用ねじ軸73を回転させる。これにより、固定用ねじ軸73は柱10に係止される。次に、連結軸31の基端部にあるねじ部34を固定用ねじ軸73の先端部に連結する。これにより連結軸31の基端部は柱10に係止される。
【0050】
一方、梁20の連結用穴21の先端部に連結軸引っ張り部材51を挿入し、その状態で、アーム41を当該梁20のアーム取り付け用穴24に挿入する。これにより、連結軸引っ張り部材51は、アーム41と連結用穴21の先端部との間に閉じ込められることになり、梁20を動かしても連結用穴21内の位置が狂わない。この状態で、図3に示すように、柱10に固定された連結軸31を梁20側の連結用穴21内に挿入する。連結軸31の先端部は、挿入に伴い、アーム41の通し穴42を通り連結軸引っ張り部材51のねじ穴52と少し噛みこんだ位置に達する。この状態で、工具55の柄57を梁20の工具挿入穴26に差し込んで、その先端のレンチ部56を連結軸引張り部材51の工具挿入凹部53に嵌めてハンドル部57を回す。これにより、連結軸引張り部材51を締まる方向に回転して、連結軸31を引っ張る。ここで、連結軸31は、基端部が柱10側に係止されているので、梁20側のアーム41を柱10側に引き寄せるような方向に力を及ぼす。これにより、柱10と梁20とが緊結される。
【0051】
なお、例えば、木痩せの仕方が激しい場合には、ねじ穴52の縦軸線方向寸法が長い連結軸引張り部材51を選定すれば、連結軸31をより強く引っ張って柱10と梁20とを緊結できる。ねじ穴52の縦軸線方向寸法が短い連結軸引張り部材51を選定すれば、柱10と梁20とを過度に緊結し過ぎない。このように、ねじ穴52の縦軸線方向寸法が相違する連結軸引張り部材51を付け替えるだけで、連結軸31の引っ張り度合いを簡単に変更して柱10と梁20とを緊結できる。
【0052】
このように、梁20側の連結軸引張り部材51を締め回転操作するだけで、柱10と梁20とを緊結するので、木造建物完成後に柱と梁が木痩せ等した場合、柱に取付けられている外板等を取外すことなく当該柱と梁とを簡単に再度緊結できる。また、二方差し,三方差し,四方差しする場合などにも適用でき適用範囲が広い。
【0053】
また、柱10と梁20の突き合せ結合部は、梁20側のほぞ20aが柱10側のほぞ穴10aに差し込まれて両者が結合されているのが一般的であるが、強度的に弱いほぞ20aを連結軸31が直接補強するので、大地震が起こった場合でも当該結合部が破損するのを防止できる。
【0054】
したがって、適用範囲が広くて取扱いやすくしかも木痩せ等した場合に柱と梁(又は柱と基礎体)を簡単に再度緊結できる。
【0055】
(第2の実施形態)
【0056】
第2の実施形態に係る木造建物用仕口補強構造は、図9に示すように、柱120の突き合せ端面120aを当該柱縦軸線方向に沿って所定長さだけ穿設して連結用穴122を形成し、柱120の第1の側面部に連結用穴122と直交するようにアーム取付用穴124を形成するとともに、この柱120の第2の側面部125に当該柱縦軸線に対し傾斜するとともに連結用穴122の先端部に連通する工具挿入用穴126を形成し、当該連結用穴122に挿入されかつ基端部に基礎体110と係止するための係止部132が設けられた連結軸131と、柱120のアーム取付用穴124に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸131を通すための通し穴142が開けられたアーム141と、連結軸131のねじ部と螺合してアーム141を足場として連結軸150を引っ張り可能な連結軸引張り部材150とからなる仕口補強金具130を備え、連結軸引張り部材150が、工具挿入用穴126から挿入された工具55で締め回転可能に構成されている。
【0057】
上記構成の第2の実施形態に係る木造建物用仕口補強構造の場合、柱120の第2の側面部に形成された工具挿入用穴126から工具55を挿入して連結軸引っ張り部材151を回転させると、連結軸131が引っ張られる。ここで、連結軸131は基礎体110側に係止されているので、柱120側のアーム141を基礎体110側に引き寄せるような方向に力を及ぼす。これにより、柱120と基礎体110とが緊結される。
【0058】
このように、柱110の工具挿入穴126から工具55を挿入して連結軸引っ張り部材151を締まる方向に回転させるだけであるので、木造建物完成後に柱120が木痩せ等した場合に当該柱120と基礎体110とを簡単に再度緊結できる。また、連結軸131が柱120内に収容されているので、大地震などで柱120が横揺れした場合でも連結軸131には過大な曲げモーメントや引張力は作用せず破損しにくい。そのため、柱120と基礎体110との突き合せ結合部が大きく変形したり損壊するのを防止できる。さらに、柱120と基礎体110を強く緊結しても柱120および基礎体110の突き合せ結合部(仕口)には大きな偏心荷重が作用せず、結合強度が低下してしまうようなことはない。したがって、取扱いやすく木痩せ等した場合には柱120と基礎体110を簡単に再度緊結できる。
【0059】
而して、連結軸31の係止部32を形成するには、取付板113の図示しない通し穴にボルト191を雄ねじ部を上にしてセットした状態で当該取付板113を基礎111上に基礎パッキン115およびスペーサー112を介して固定する。なお、ボルト191の頭部191hは、その高さが基礎パッキン115およびスペーサー112の厚さよりも小さいので基礎111と干渉しない。
【0060】
一方、柱120の連結用穴121の先端部に連結軸引っ張り部材151を挿入し、その状態で、アーム141を当該柱120のアーム取り付け用穴124に挿入する。これにより、連結軸引っ張り部材151は、アーム141と連結用穴121の先端部との間に閉じ込められることになり、柱120を動かしても連結用穴121内の位置が狂わない。この状態で、基礎体110側に係止された連結軸131を柱120側の連結用穴121内に挿入する。連結軸131の先端部は、挿入に伴い、アーム141の通し穴142を通り連結軸引っ張り部材151のねじ穴152と少し噛みこんだ位置に達する。この状態で、工具55の柄57を柱120の工具挿入穴126に差し込んで、その先端のレンチ部56を連結軸引張り部材151の工具挿入凹部53に嵌めてハンドル部57を回す。これにより、連結軸引張り部材151を締まる方向に回転して、連結軸131を引っ張る。ここで、連結軸131は、基端部が基礎体110側に係止されているので、柱120側のアーム141を基礎体110側に引き寄せるような方向に力を及ぼす。これにより、柱120と基礎体110とが緊結される。
【0061】
このように、柱120側の連結軸引張り部材151を回転操作するだけで、柱120と基礎体110とを緊結するので、木造建物完成後に例えば柱120が木痩せ等した場合、当該柱120側からの工具回転操作によって当該柱と基礎体110とを簡単に再度緊結できる。
【0062】
(第3の実施形態)
【0063】
第3の実施形態は、図13〜図20に示される。
【0064】
この第3の実施形態に係る木造建物用仕口補強構造は、図13および図14に示すように、斜めに連結される第1の木材(80)と第2の木材(81)の接合部を補強する構造であって、第1の木材(80)の第1の側面部(80a)を穿設するとともに第2の木材(81)の突き合せ端面(81a)を当該梁縦軸線方向に沿って所定長さだけ穿設して連結用穴82を形成し、当該第1の木材(80)の第2の側面部に連結用穴82と直交するように自在連結金具用穴83を形成するとともに、当該第2の木材(81)の第1の側面部に連結用穴82と直交するようにアーム取付用穴84を形成し、当該第2の木材(81)の第2の側面部(81b)に当該木材軸線に対し傾斜するとともに連結用穴82の先端部に連通する工具挿入用穴85を形成し、当該連結用穴82に挿入されかつ基端部86aが自在連結金具87に所定の取付角度をもって連結されかつ先端部86aにはねじ部が形成された連結軸86と、第1の木材(80)の自在連結金具用穴83に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸86の基端部86aを接続するための接続部87aが設けられた自在連結金具87と、第2の木材(81)のアーム取付用穴84に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸86を通すための通し穴89が開けられたアーム88と、連結軸86の先端部86aのねじ部と螺合してアーム88を足場として連結軸86を引っ張り可能な連結軸引張り部材95とからなる仕口補強金具86Fを備え、第1の木材(80)と第2の木材(81)とを堅結する構成とされている。
【0065】
この第3の実施形態では、第1の木材として、図13に示す横材80が選定されている。第2の木材として、同図に示す斜め材81が選定されている。
【0066】
横材80側の連結用穴82は、自在連結金具87を自在連結金具用穴83内に装着するため斜め材81側よりも開口面積が大きく形成されているが、斜め材81の突き合せ端面81aで外部から隠れるものとされている。
【0067】
特に、この実施形態では、横材80に斜め材81がVの字状に接合されている接合部を補強する構造であるのを考慮して、自在連結金具87は、2つの同形の連結本体97と、これら連結本体97を固定する固定部96とから構成されている。連結本体97には貫通穴部97bが形成されているとともに、接続部97aが形成されている。固定部96は、図16に示すように、2つの連結本体97をそれぞれの貫通穴部97bが中心軸が一直線上に並ぶようにかつその状態で接続部97aが整合する位置にくるように組み合わった状態で固定するもので、当該両連結本体97を挟む2つの挟持部材96dと、当該挟持部材96dと協働して当該両連結本体87を固定する固定ねじ96eとから構成されている。詳しくは、挟持部材96dには、固定ねじ96eと螺合するねじ穴が形成されている。
【0068】
なお、自在連結金具87は、図17および図18に示すように構成してもよい。この自在連結金具87は、円柱形状の一方本体98aと他方本体98bと、これら両本体(98a,98b)を縦軸線が直線上に並ぶように連結する固定ねじ99とから構成されている。詳しくは、両本体(98a,98b)には、固定ねじ99と螺合するねじ穴98sが形成されている。また、両本体(98a,98b)の側面部には、連結軸86の基端部86bと螺合する接続ねじ穴98fが接続相手となる連結軸86の軸線の延長線が合致するような角度(角度θ1,θ2)に形成されている。なお、図中、87kは取付用溝である。この溝87kにマイナスドライバーを差し込めば、組み付けの際に本体(98a,98b)を固定しておくことができる。また、取付用溝87kの伸延方向は、接続ねじ穴98fの中心軸線と平行なので組み付けの際の取り付け姿勢を決めるのに便利である。
【0069】
したがって、上記した固定ねじ99で、一方本体98aと他方本体98bとを、各接続ねじ穴98fの軸線方向を変更した状態で固定できる。すなわち、図16および図17に示す自在連結金具87は一対の接続ねじ穴98fの軸線方向を変更可能な可動型の連結金具である。
【0070】
さらに、自在連結金具87を図19および図20に示すように固定型に構成してもよい。この自在連結金具87は、円柱形状の本体98を有している。この本体98の側面部には、図19に示す各連結軸86の基端部と螺合する一対の接続ねじ穴98fが形成されている。この自在連結金具87は、各斜め材81が横材80に対して図19紙面と直交方向に位置ずれした状態で連結される構造に使用されるが、構成が簡単で各連結軸86の基端部を強固に連結できる。なお、図20中、87mは取付用溝である。この溝87kにマイナスドライバーを差し込めば、組み付けの際に本体(98a,98b)を固定しておくことができる。また、取付用溝87mの伸延方向は、一方の接続ねじ穴98fの中心軸線と平行なので組み付けの際の取り付け姿勢を決めるのに便利である。
【0071】
上記構成の木造建物用仕口補強構造の場合、斜め材81側に形成された工具挿入穴85を介して工具55を挿入して連結軸引っ張り部材86を締める方向に回転させると、連結軸86が引張られる。この際、連結軸86は、その基端部が自在連結金具87によって係止されているので、連結軸引っ張り部材86を円滑かつ確実に回転できる。これにより、連結軸86は、横材80側の自在連結金具87と斜め材81側のアーム88間で引っ張られる。したがって、横材80と斜め材81とが緊結される。
【0072】
このように、斜め材81側の連結軸引張り部材86を締め回転操作するだけで、横材80と斜め材81とを緊結できる。
【0073】
なお、以上の第1〜第3実施形態の木造建物用仕口補強構造は、現在市販の仕口補強金具を使用した補強構造の場合よりも約4倍の引っ張り強度を有することが、大学(東洋大学工学部建築学科松野研究室)での試験や公的機関(中央研究所)での試験で確認されている。
【0074】
(第4の実施形態)
【0075】
第4の実施形態は、図21〜図23に示される。
【0076】
この第4の実施形態に係るドリル用補助具60は、長尺の木工ドリルの刃69aを軸線61x方向移動自在かつ回転自在にガイドするドリル刃ガイド筒61を有し、このドリル刃ガイド筒61を木材(例えば、梁20)に当該木材軸線方向と傾斜した角度(例えば、19°〜35°)位置および平行な角度位置のいずれかに選択的に保持可能な保持部65とから成る。
【0077】
より具体的には、ドリル用補助具60は、門型の本体62を有しており、この本体62の上面部には、ドリル刃ガイド筒61が支持部材63等を介して当該本体62に対して筒縦軸線が斜めになるように着脱自在に取り付けられている。このドリル刃ガイド筒61は、ステンレス鋼製の円筒形状とされており、その先端部には筒縦軸線に対して傾斜した傾斜面64が形成されている。なお、図22中、68はガイド筒61を補強するための部材である。
【0078】
保持部65は、本体62の両側面部(62a,62a)に螺合した各2つの締付用ねじ部材66から形成されている。例えば、本ドリル用補助具60の本体61の両側面部(62a,62a)が梁20を挟むように配置して、各2つの締付用ねじ部材66を締め付けると当該本体61は当該梁20に固定される。その状態で、例えばハンドドリルの長尺の木工ドリル刃69をドリル刃ガイド筒61に挿入すれば、当該ドリル刃69はドリル刃ガイド筒61によってガイドされるので、当該ドリル刃69には穴開け作業中に過大な曲げ荷重等が作用するようなことはない。
【0079】
なお、本体62に対して筒縦軸線が直角となるドリル刃ガイド筒61に付け替えて、当該本体62の取り付け姿勢を図23に示すように変更すると、木材(例えば、梁20)に縦軸線方向に長尺の穴を開けられる。
【0080】
したがって、例えば、上記した第1〜第3の実施形態の木造建物用仕口補強構造を施工する際にも、本ドリル用補助具を使用すれば、当該構造の施工(連結用穴22および工具挿入用穴26等の穴開け作業)を円滑かつ確実に行える。なお、ドリル刃ガイド筒61の先端には、傾斜面64が形成されているので、ドリル刃69の先端が木材のどの部分に当たってドリル作業が行われるのか容易に確認できる。また、ドリル刃69の傾斜面64は、斜めにカットされているので、当該部分を介してドリル作業中に切り屑が円滑に出てゆきガイド筒69内には溜まらない。これにより、一段とドリル作業が円滑に行える。
【0081】
なお、上記した実施形態では、工具挿入穴(26)の穴開け開始位置の算出を、以下に詳述する工具挿入穴算出スケール201を用いている。この工具挿入穴算出スケール201は、木材(例えば、梁20)が通常横断面が四角形状(各角が90度)であること、当該木材(梁20)には連結用穴(22)に直交するアーム取付用穴(24)が開けられることを利用している。
【0082】
この工具挿入穴算出スケール201は、図24に示すように、透明樹脂製の本体202を有しており、この本体202には、縦基準線203と横基準線204が記されている。また、本体202には、定規部205が形成されている。
【0083】
上記工具挿入穴算出スケール201を用いて工具挿入穴(26)の穴開け開始位置を算出するには、例えば第1の実施形態で使用する場合を以下説明すると、図25(A)に示すように、梁20の第1の側面部23にアーム取付用穴24を形成するために縦墨入れ線29aを記すとともに、横墨入れ線29bを記す。そして、同図(B)に示すように、縦墨入れ線29aと横墨入れ線29bとの交点をアーム取付用穴24の穴開け開始位置として図示しないドリルでアーム取付用穴24を形成する。次に、図25(C)に示すように、梁20の第2の側面部25に上記縦墨入れ線29aに続く縦縦墨入れ線29cを記す。次に、同図(D)に示すように、アーム取付用穴24に深さ測定スケール19を差し込み、当該スケール19の側端を当該取付用穴24の内側面に押し付けた状態で梁20の第1の側面部23の表面から連結用穴22の最下部までの長さL9を測定する。
【0084】
次に、図26(A)に示すように、梁20の第2の側面部25に記した縦墨入れ線29c上であって、第1の側面部23の表面からの長さが上記L9の位置に横墨入れ線29dを記す。工具挿入穴算出スケール201を、その縦基準線203が縦墨入れ線29cに重なり、横基準線204が横墨入れ線29dに重なるように、梁20の第2の側面部25上に重ね合わせる。その状態で、図26(B)に示すように、工具挿入穴算出スケール201の定規部205を用いて、梁20の第2の側面部25上に筆記具209で記しをつける。こうして、図26(C)に示すように、梁20の第2の側面部25に記された書き入れ線206を延長させ、当該延長線29fに続く墨入れ線29gを梁20の第1の側面部23に記す。この墨入れ線29gと前述した横墨入れ線29bとが交わる位置が工具挿入穴(26)の穴開け開始位置(p)となる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係る木造建物用仕口補強構造を説明するための横断面図である。
【図2】本発明に係る木造建物用仕口補強構造を説明するための縦断面図である。
【図3】本発明に係る木造建物用仕口補強構造の形成工程(1)を説明するための図である。
【図4】本発明に係る木造建物用仕口補強構造の形成工程(2)を説明するための図である。
【図5】本発明に係る木造建物用仕口補強構造の形成工程(3)を説明するための図である。
【図6】工具による連結軸引っ張り部材の締め回転操作を説明するための図である。
【図7】工具を説明するための図である。
【図8】連結軸とアームと固定用ねじ軸と固定用円筒部材とを示す図である。
【図9】第2の実施形態を説明するための図である。
【図10】本発明に係る木造建物用仕口補強構造の原理を説明するための図である。
【図11】本発明に係る木造建物用仕口補強構造の原理を説明するための図である。
【図12】本発明に係る木造建物用仕口補強構造の原理を説明するための図である。
【図13】第3の実施形態を説明するための図である。
【図14】第3の実施形態の詳細を説明するための図である。
【図15】自在連結金具の連結本体を説明するための図である。
【図16】自在連結金具を説明するための図である。
【図17】自在連結金具の変形例を説明するための分解斜視図である。
【図18】自在連結金具の変形例を説明するための図である。
【図19】自在連結金具の変形例を使用した木造建物用仕口補強構造を説明するための図である。
【図20】自在連結金具の変形例を説明するための図である。
【図21】ドリル用補助具を説明するための図である。
【図22】ドリル用補助具を端部から視た図である。
【図23】ドリル刃ガイド筒を付け替えた状態を示す図である。
【図24】工具挿入穴算出スケールを説明するための図である。
【図25】工具挿入穴算出スケールの使用方法を説明するための図である。
【図26】工具挿入穴算出スケールの使用方法を説明するための図である。
【図27】従来の木造建物用仕口補強構造を説明するための図である。
【図28】従来の木造建物用仕口補強構造を説明するための図である。
【図29】従来の木造建物用仕口補強構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0086】
10 柱
12 連結用穴
20 梁
21 突合せ端面
23 第1の側面部
24 アーム取付用穴
25 第2の側面部
26 工具挿入用穴
28 梁縦軸線
30 仕口補強金具
31 連結軸
32 係止部
35 ロックナット
36 ロックナット
37 座金
41 アーム
42 通し穴
51 連結軸引っ張り部材
60 ドリル用補助具
61 ドリル刃ガイド筒
65 保持部
69 ドリル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁の突き合せ結合部を補強する木造建物用仕口補強構造であって、
柱を横方向に貫通するとともに、梁の突き合せ端面を当該梁縦軸線方向に沿って所定長さだけ穿設して連結用穴を形成し、梁の第1の側面部に連結用穴と直交するようにアーム取付用穴を形成するとともに、この梁の第2の側面部に当該梁縦軸線に対し傾斜するとともに連結用穴の先端部に連通する工具挿入用穴を形成し、当該連結用穴に挿入されかつ基端部に柱と係止するための係止部が設けられかつ先端部にはねじ部が形成された連結軸と、梁のアーム取付用穴に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸を通すための通し穴が開けられたアームと、連結軸のねじ部と螺合してアームを足場として連結軸を引っ張り可能な連結軸引張り部材とからなる仕口補強金具を備え、
連結軸引張り部材が、工具挿入用穴から挿入された工具で締め回転可能に構成されたことを特徴とする木造建物用仕口補強構造。
【請求項2】
柱と基礎体との突き合せ結合部を補強する木造建物用仕口補強構造であって、
柱の突き合せ端面を当該柱縦軸線方向に沿って所定長さだけ穿設して連結用穴を形成し、柱の第1の側面部に連結用穴と直交するようにアーム取付用穴を形成するとともに、この柱の第2の側面部に当該柱縦軸線に対し傾斜するとともに連結用穴の先端部に連通する工具挿入用穴を形成し、当該連結用穴に挿入されかつ基端部に基礎体と係止するための係止部が設けられかつ先端部にはねじ部が形成された連結軸と、柱のアーム取付用穴に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸を通すための通し穴が開けられたアームと、連結軸のねじ部と螺合してアームを足場として連結軸を引っ張り可能な連結軸引張り部材とからなる仕口補強金具を備え、
連結軸引張り部材が、工具挿入用穴から挿入された工具で締め回転可能に構成されたことを特徴とする木造建物用仕口補強構造。
【請求項3】
斜めに連結される第1の木材と第2の木材の接合部を補強する構造であって、
第1の木材の第1の側面部を穿設するとともに第2の木材の突き合せ端面を当該第2の木材縦軸線方向に沿って所定長さだけ穿設して連結用穴を形成し、当該第1の木材の第2の側面部に連結用穴と直交するように自在連結金具用穴を形成するとともに、当該第2の木材の第1の側面部に連結用穴と直交するようにアーム取付用穴を形成し、当該第2の木材の第2の側面部に当該木材軸線に対し傾斜するとともに連結用穴の先端部に連通する工具挿入用穴を形成し、当該連結用穴に挿入されかつ基端部が自在連結金具に所定の取付角度をもって連結されかつ先端部にはねじ部が形成された連結軸と、第1の木材の自在連結金具用穴に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸の基端部を接続するための接続部が設けられた自在連結金具と、第2の木材のアーム取付用穴に挿入されかつ長手方向中央部に連結軸を通すための通し穴が開けられたアームと、連結軸の先端部のねじ部と螺合してアームを足場として連結軸を引っ張り可能な連結軸引張り部材とからなる仕口補強金具を備え、
連結軸引張り部材が、工具挿入用穴から挿入された工具で締め回転可能に構成されたことを特徴とする木造建物用仕口補強構造。
【請求項4】
長尺の木工ドリルの刃を軸線方向移動自在かつ回転自在にガイドするドリル刃ガイド筒を有し、このドリル刃ガイド筒を木材に当該木材軸線方向と傾斜した角度位置および平行な角度位置のいずれかに選択的に保持可能な保持部とから成るドリル用補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2006−291578(P2006−291578A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114000(P2005−114000)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(501409005)有限会社石田工務店 (1)
【Fターム(参考)】