説明

木造建造物の柱脚金具及びそれを用いた木造建造物の補強方法

【課題】接合部の木材が劣化している場合においても接合部の補強を容易に行うことが可能な柱脚金具及びそれを用いた木造建造物の補強方法を提供すること。
【解決手段】木製の柱材3と土台材2との接合部を補強する柱脚金具4は、柱材3の下端部を被覆する嵌装部42と、土台材2に設けられたほぞ穴6に嵌合される嵌合部41と、を具備する。柱脚金具4の嵌合部41を土台材2のほぞ穴6に挿入すると共に、切除後の柱材3の下端部を柱脚金具4の嵌装部42に挿入することにより、柱材3と土台材2とを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造建造物の柱脚金具及びそれを用いた木造建造物の補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、木造住宅などの建造物の構造は、鉄筋入りコンクリートの基礎を築き、この基礎に沿って載置された土台材と、該土台材の上に立設された柱材とからなっている。
【0003】
また、近年では、このような木造住宅については、耐震性の向上や老朽化の対策が要求されている。特に、住宅の重量を支えるために重要な土台材と柱材との接合部の補強が重要視されている。
【0004】
従来、木造建造物の補強金具及び補強方法として、L字型の金具と該L字型金具に対して筋交い状に配される補強部材とをビスによって固定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−293463号公報(特許請求の範囲、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、補強金具を直接土台材及び柱材にビス等で固定するものである。このため、白蟻による食害や腐食により補強の対象となる接合部の木材が劣化している場合には適用できない懸念がある。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、接合部の木材が劣化している場合においても接合部の補強を容易に行うことが可能な柱脚金具及びそれを用いた木造建造物の補強方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、木製の柱材と土台材との接合部を補強する柱脚金具であって、上記柱材の下端部を被覆する嵌装部と、上記土台材に設けられたほぞ穴に嵌合される嵌合部と、を具備することを特徴とする。
【0008】
このように構成することにより、柱材の下端部が劣化しても、当該部分を切除して嵌装部を被覆することで、土台材と柱材とを接合することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の木造建造物の柱脚金具において、上記嵌装部及び嵌合部は、上記土台材の長手方向に沿う少なくとも1つのリブを有する中空押出形材にて一体に形成され、上記嵌装部は、上記リブ及びリブに対して平行な側片が切除された残りの断面コ字状部にて形成され、上記嵌合部は、リブと、該リブに対して平行な側片、あるいは互いに平行なリブと、上記リブと直交する側片とからなる中空矩形部にて形成される、ことを特徴とする。
【0010】
このように構成することにより、柱脚金具を中空押出形材にて一体に形成するので、強度の向上が図れると共に、コストの低廉化が図れる。また、押出形材のリブを利用してほぞを形成することにより、寸法精度の向上を図ることができる。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、木製の柱材と土台材との接合部を補強する木造建造物の補強方法であって、上記柱材の下端部を切除し、上記土台材の所定箇所にほぞ穴を設け、請求項1又は2に記載の柱脚金具の嵌合部を上記土台材のほぞ穴に挿入すると共に、切除後の柱材の下端部を上記柱脚金具の嵌装部に挿入する、ことを特徴とする。
【0012】
このように構成することにより、柱材の下端部が劣化しても、当該部分を切除して嵌装部を被覆することで、土台材と柱材とを容易に接合することができる。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、木製の柱材と土台材との接合部を補強する木造建造物の補強方法であって、上記柱材の下端部を切除し、上記土台材の一部を切除し、該切除部分に土台材の長手方向に沿う少なくとも1つのリブを有すると共に、リブと側片あるいはリブ同士からなるほぞ穴を有する中空押出形材からなる新規土台材を配置し、請求項1又は2に記載の柱脚金具の嵌合部を上記新規土台材のほぞ穴に挿入すると共に、切除後の柱材の下端部を上記柱脚金具の嵌装部に挿入する、ことを特徴とする。
【0014】
このように構成することにより、柱材だけでなく、土台材も劣化した状態においても、土台材の劣化した部分を切除して、中空押出形材からなる新規土台材を配置すると共に、新規土台材のほぞ穴に柱脚金具の嵌合部を挿入し嵌合することで、土台材と柱材とを容易に接合することができる。また、押出形材のリブを利用してほぞを形成することにより、寸法精度の向上を図ることができる。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、請求項3又は4に記載の木造建造物の補強方法において、上記切除後の柱材の下端部と柱脚金具の嵌装部の下端部との間にスペーサを介挿する、ことを特徴とする。この場合、上記切除後の柱材の下端部にほぞ穴を設けると共に、上記スペーサの上面にほぞを設け、上記ほぞ穴にほぞを嵌合する方が好ましい(請求項6)。また、上記スペーサが、切除された柱材の下端部に介挿される上部スペーサ半体と、該上部スペーサ半体と上記柱脚金具の嵌装部の下端部との間に介挿される下部スペーサ半体とからなり、上記スペーサ半体の下端部と下部スペーサ半体の上端部の対向する面のいずれか一方にほぞを設け、他方の面にほぞと嵌合可能なほぞ穴を設けてもよい(請求項7)。
【0016】
このように構成することにより、切除後の柱材の下端部と柱脚金具の嵌装部の下端部との間にスペーサを介挿して、柱材と柱脚金具とを一体化することができる。この場合、切除後の柱材の下端部に設けたほぞ穴に、スペーサの上面に設けたほぞを嵌合することにより、柱材とスペーサとが強固に接合される(請求項6)。また、スペーサを、嵌合可能な上部スペーサ半体と下部スペーサ半体とで構成することで、切除後の柱材の下端部と柱脚金具の嵌装部の下端部との間の隙間の寸法に合わせてスペーサを介挿することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0018】
(1)請求項1記載の発明によれば、柱材の下端部が劣化しても、当該部分を切除して嵌装部を被覆することで、土台材と柱材とを接合することができるので、土台材と柱材との接合を容易にすることができる。
【0019】
(2)請求項2に記載の発明によれば、柱脚金具を中空押出形材にて一体に形成するので、上記(1)に加えて、更に強度の向上が図れると共に、コストの低廉化が図れる。また、押出形材のリブを利用してほぞを形成することにより、寸法精度の向上を図ることができるので、上記(1)に加えて、更に土台材と柱材との接合を容易かつ確実にすることができる。
【0020】
(3)請求項3記載の発明によれば、柱材の下端部が劣化しても、当該部分を切除して嵌装部を被覆することで、土台材と柱材とを接合することができるので、土台材と柱材との接合を容易にすることができる。
【0021】
(4)請求項4記載の発明によれば、上記(3)に加えて、更に土台材も劣化した状態においても、土台材の劣化した部分を切除して、中空押出形材からなる新規土台材を配置すると共に、新規土台材のほぞ穴に柱脚金具の嵌合部を挿入し嵌合することで、土台材と柱材とを容易に接合することができる。また、押出形材のリブを利用してほぞを形成することにより、寸法精度の向上を図ることができる。
【0022】
(5)請求項5記載の発明によれば、切除後の柱材の下端部と柱脚金具の嵌装部の下端部との間にスペーサを介挿して、柱材と柱脚金具とを一体化することができるので、上記(4)に加えて、更に接合部を強固にすることができる。この場合、切除後の柱材の下端部に設けたほぞ穴に、スペーサの上面に設けたほぞを嵌合することにより、柱材とスペーサとを更に強固に接合することができる(請求項6)。また、スペーサを、嵌合可能な上部スペーサ半体と下部スペーサ半体とで構成することで、切除後の柱材の下端部と柱脚金具の嵌装部の下端部との間の隙間の寸法に合わせてスペーサを介挿することができる(請求項7)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、この発明の最良の実施形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態に係る木造建造物の立柱構造を示す概略斜視図、図2は、図1の要部を示す斜視図、図3は、図2の分解斜視図である。
【0025】
この木造建造物の立柱構造は、木造建造物の基礎1上に設置される土台材2と、土台材2上に立設される柱材3とを、図4に示すこの発明に係る柱脚金具4を用いて、土台材2と柱材3とを連結する構造である。
【0026】
基礎1は、鉄筋入りコンクリート製である。基礎1には柱材3の立設位置を外して土台材2を固定するためのアンカーボルト5が立設されている。
【0027】
土台材2は、木造建造物の外壁側の側面における柱材3の接合箇所に上端及び外方に向かって開口するほぞ穴6が設けられている(図3参照)。このほぞ穴6に後述する柱脚金具4の嵌合部41が嵌合される。
【0028】
柱材3は、木材にて形成されており、その下端部の劣化部が切除されて、切除された後の柱材3の下端部の3辺に後述する柱脚金具4の嵌装部42が被覆されている。なお、柱材3を土台材2に接合する際には、柱材3の下端部の対向する2辺には互いに平行な2個の固定用の貫通孔31が穿設される。
【0029】
柱脚金具4は、図5に示すように、4つの側片40a〜40dからなる中空部4aに少なくとも1つ(図5においては1つの場合を示す)のリブ43を有する、アルミニウム合金製の略矩形状の中空押出形材40からなる。この場合、中空押出形材40における上端側の例えば略2/3の部分のリブ43及びリブ43に対して平行な側片40aを、図5における切削線7aに沿って切除された残りの断面コ字状部にて嵌装部42が形成される。また、中空押出形材40における下端側の例えば略1/3の部分を、図5における切削線7bに沿って切除することにより、リブ43と、このリブ43に対して直交する一対の側片40b,40cとからなる中空矩形状の嵌合部41が形成されている。
【0030】
したがって、柱脚金具4は、図4に示すように、上端側の略2/3の部分のリブ43及びリブ43に対して平行な側片40aが切除された残りの断面コ字状部にて形成される嵌装部42と、この嵌装部42の切除された側片40aの下端部に延在する側片40aと、側片40aと対向するリブ43と、側片40a及びリブ43と直交する一対の側片40b,40cとからなる中空矩形部にて形成される嵌合部41とからなる。このように形成される柱脚金具4の嵌合部41によっていわゆる片胴付きのほぞが形成される。
【0031】
このように、柱脚金具4を、アルミニウム製の中空押出形材にて一体に形成することにより、強度の向上が図れると共に、コストの低廉化が図れる。また、押出形材のリブ43を利用してほぞを構成する嵌合部41を形成することにより、寸法精度の向上が図れ、土台材2と柱材3の接合を容易かつ確実にすることができる。
【0032】
なお、柱脚金具4の嵌装部42における対向する側片40b,40cの対向する4箇所には第1の貫通孔44aが穿設されている。また、嵌合部41におけるリブ43と側片40aの対向する4箇所には第2の貫通孔44bが穿設されている。
【0033】
上記のように形成される柱脚金具4を用いて、土台材2と柱材3とを接合するには、まず、下端部が切除された柱材3の下端部の対向する2辺に、互いに平行な2個の固定用の貫通孔31を穿設する。また、土台材2における柱材3の接合部にほぞ穴6を設けると共に、土台材2の長手方向に沿うほぞ穴6の側面の2箇所に互いに平行な固定用の貫通孔61を穿設する。
【0034】
次に、柱脚金具4の嵌装部42を斜めにした状態で柱材3の下端部から挿入しながら回動して嵌合部41を土台材2のほぞ穴6に挿入すると共に、柱材3の下端部を嵌装部42に挿入して、嵌合部41をほぞ穴6に嵌合し、柱材3の下端部に嵌装部42を被覆する。
【0035】
次に、嵌装部42に設けられた第1の貫通孔44aと柱材3に設けられた固定用の貫通孔31に第1の固定部材である2本の固定ピン8aを貫通して、嵌装部42と柱材3を固定する。また、嵌合部41に設けられた第2の貫通孔44bと土台材2のほぞ穴6に設けられた固定用の貫通孔61に第2の固定部材である2本の固定ピン8bを貫通して、嵌合部41と土台材2を固定する。
【0036】
上記のようにして、この発明に係る柱脚金具4を用いて、劣化した柱材3と土台材2を接合することができる。
【0037】
なお、第1実施形態では、柱材3の下端部を切除した分だけ隙間が生じるが、隙間に対応した厚さのスペーサ(図示せず)を柱材3の下端部と嵌装部42の下端部との間に介挿する必要がある。また、この発明に係る柱脚金具4は新築の木造建造物にも適用でき、この場合はスペーサを用いずに柱材3と土台材2を強固に接合することができる。
【0038】
<第2実施形態>
図6は、この発明に係る木造建造物の立柱構造を示す要部斜視図、図7は、図6の分解斜視図、図8は、図6のIII−IIIに線に沿う断面図である。
【0039】
第2実施形態は、切除された柱材と土台材との間の隙間をスペーサによって充填して、柱材3と土台材2との接合を強固にした場合である。
【0040】
すなわち、第2実施形態に係る木造建造物の立柱構造は、切除後の柱材3の下端部と柱脚金具4の嵌装部42の下端部との間にスペーサ10を介挿して、柱材3と土台材2との接合を強固にした場合である。この場合、切除後の柱材3の下端部には、ほぞ穴32が設けられており、このほぞ穴32に、スペーサ10の上面に設けられたほぞ11を嵌合して柱材3とスペーサ10とが一体化される。
【0041】
上記スペーサ10は、例えばアルミダイキャストや鋳鉄製又は木製部材にて形成されており、柱脚金具4の嵌装部42の下端部に挿入される矩形ブロック状の基部12の上面の中央部に、両胴付きのほぞ11を突設してなる。また、スペーサ10の基部12とほぞ11には、それぞれスペーサ10の長手方向に貫通する互いに平行な2個の貫通孔13a,13bが穿設されている。なお、スペーサ10の基部12の高さは、柱材3の切除される寸法に合わせて設定される。
【0042】
なお、第2実施形態において、上記柱脚金具4の嵌装部42の対向する側片40b,40cの対向する8箇所には第1の貫通孔44aが穿設されている。
【0043】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0044】
上記のように構成される第2実施形態に係る木造構造物の立脚構造を組み立てるには、まず、下端部が切除された柱材3の下端部にほぞ穴32を設けると共に、下端部の対向する2辺に、互いに平行な2個の固定用の貫通孔31を穿設する。また、土台材2における柱材3の接合部にほぞ穴6を設けると共に、土台材2の長手方向に沿うほぞ穴6の側面の2箇所に互いに平行な固定用の貫通孔61を穿設する。
【0045】
次に、柱脚金具4の嵌装部42を斜めにした状態で柱材3の下端部から挿入しながら回動(起立)して嵌合部41を土台材2のほぞ穴6に挿入すると共に、柱材3の下端部を嵌装部42に挿入して、嵌合部41をほぞ穴6に嵌合し、柱材3の下端部に嵌装部42を被覆する。
【0046】
次に、柱材3の切除量に対応した寸法に予め設定されたスペーサ10を用意し、このスペーサ10のほぞ11を柱材3に設けられたほぞ穴32に嵌合して柱材3とスペーサ10とを一体化し、柱材3の下端部及びスペーサ10に嵌装部42を被覆する。
【0047】
なお、スペーサ10のほぞ11を柱材3に設けられたほぞ穴32に嵌合して柱材3とスペーサ10とを一体化した後に、柱脚金具4の嵌装部42を斜めにした状態で柱材3の下端部から挿入しながら回動(起立)して嵌合部41を土台材2のほぞ穴6に挿入すると共に、柱材3の下端部を嵌装部42に挿入して、嵌合部41をほぞ穴6に嵌合し、柱材3の下端部に嵌装部42を被覆するようにしてもよい。
【0048】
また、ジャッキ等を用いて一時的に柱材3を上方に持ち上げることができる場合は、柱脚金具4を起立させた状態で水平に移動して嵌合部41をほぞ穴6に嵌合した後、ジャッキ等による持ち上げを解除し柱材3を下方に戻して、柱材3の下端部に嵌装部42を被覆するようにしてもよい。
【0049】
次に、嵌装部42に設けられた第1の貫通孔44aと柱材3に設けられた固定用の貫通孔31とスペーサ10に設けられた貫通孔13a,13bに第1の固定部材である4本の固定ピン8aを貫通して、嵌装部42と柱材3及びスペーサ10を固定する。また、嵌合部41に設けられた第2の貫通孔44bと土台材2のほぞ穴6に設けられた固定用の貫通孔61に第2の固定部材である2本の固定ピン8bを貫通して、嵌合部41と土台材2を固定する。
【0050】
上記のように構成される第2実施形態によれば、切除後の柱材3の下端部と柱脚金具4の嵌装部42の下端部との間にスペーサ10を介挿して、柱材3と柱脚金具4とを一体化することができ、柱材3と土台材2との接合部を強固にすることができる。
【0051】
なお、上記説明では、スペーサ10が1つの部材にて形成される場合について説明したが、スペーサ10を2部材にて形成してもよい。例えば、図9に示すように、スペーサ10Aを、切除された柱材3の下端部に介挿される上部スペーサ半体14と、上部スペーサ半体14と柱脚金具4の嵌装部42の下端部との間に介挿される下部スペーサ半体15とで構成してもよい。この場合、上部スペーサ半体14の下端部と下部スペーサ半体15の上端部の対向する面のいずれか一方(図9では、上部スペーサ半体14を示す)にほぞ16が設けられ、他方(図9では下部スペーサ半体15を示す)の面にほぞ16と嵌合可能なほぞ穴17が設けられている。なお、ほぞ16を下部スペーサ半体15の上面に設け、ほぞ穴17を上部スペーサ半体14の下面に設けてもよい。また、上部スペーサ半体14の上面には、柱材3の下端面に設けられたほぞ穴32に嵌合可能なほぞ11が設けられている。なお、この場合、上部スペーサ半体14は、基部12の上下部にほぞ11,16を設けた略十字状に形成され、ほぞ11,16には、それぞれ貫通孔13bが穿設されている。また、下部スペーサ半体15には、柱脚金具4の嵌装部42に設けられた第1の貫通孔44a及び上記貫通孔13bに連通する貫通孔13cが穿設されている。
【0052】
なお、この場合、上部スペーサ半体14は、例えばアルミダイキャストや鋳鉄製又は木製部材にて形成されている。また、下部スペーサ半体15は、柱材3と同様に木製部材にて形成され、柱材3の追加材としての役割を有する。
【0053】
上記のように、スペーサ10Aを、嵌合可能な上部スペーサ半体14と下部スペーサ半体15とで構成することにより、1個の場合に比べてスペーサ10Aの高さを高くすることができるので、柱材3の劣化状態が下端部の広い範囲に及んでいる場合において、柱材3の切除量を多くした場合に好適である。
【0054】
<第3実施形態>
図10は、この発明に係る木造建造物の立柱構造を示す要部斜視図、図11は、図10の分解斜視図である。
【0055】
第3実施形態は、柱材の劣化に加えて土台材も劣化した場合の柱材と土台材の両方を補強できるようにした場合である。すなわち、第3実施形態に係る木造建造物の立柱構造は、柱材3の下端部を切除すると共に、柱材3と接合する土台材2の劣化部を切除し、切除された柱材3の下端部を柱脚金具4の嵌装部42によって被覆し、また、土台材2の切除部に新規土台材20を配置し、新規土台材20に設けられたほぞ穴6Aに柱脚金具4の嵌合部41を嵌合した場合である。
【0056】
この場合、新規土台材20は、4つの側片20a〜20dからなる中空部の長手方向に沿う少なくとも1つ(図10,図11では2つを示す)のリブ21a,21bを有する、アルミニウム合金製の断面が略矩形状の中空押出形材にて形成されている。また、新規土台材20の上面には、リブ21aと側片20aとからなるほぞ穴6Aが設けられている。更に、新規土台材20の外側の側片20aにおけるほぞ穴6Aを構成する部分には、互いに平行な2つの貫通孔61Aが穿設されている。
【0057】
なお、第3実施形態において、柱材3の下端部と柱脚金具4の下端部との間には、第2実施形態と同様にスペーサ10が介挿されている。柱材3とスペーサ10の構造は第2実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0058】
次に、第3実施形態に係る木造構造物の立脚構造の組立手順について説明する。まず、柱材3の劣化した下端部を切除し、下端部が切除された柱材3の下端部にほぞ穴32を設けると共に、下端部の対向する2辺に、互いに平行な2個の固定用の貫通孔31を穿設する。また、土台材2の劣化した部分を切除し、予め土台材2の切除した箇所の寸法に設定された新規土台材20を切除部分に配置する。この新規土台材20における柱材3の接合部に、ほぞ穴6Aを設けると共に、新規土台材20の外側の側片20aにおけるほぞ穴6Aを構成する部分に、互いに平行な2つの貫通孔61Aを穿設する。なお、新規土台材20は、例えば長手方向の2箇所をアンカーボルト(図示せず)によって基礎1上に固定される。
【0059】
次に、柱脚金具4の嵌装部42を斜めにした状態で、水平に移動して柱材3の下端部から挿入しながら回動(起立)して柱材3の下端部を嵌装部42に挿入すると共に、嵌合部41を新規土台材20のほぞ穴6Aに落とし込むようにして嵌合し、柱材3の下端部に嵌装部42を被覆する。なお、予め柱脚金具4の嵌合部41を新規土台材20のほぞ穴6Aに挿入して、新規土台材20に柱脚金具4を装着した状態で、新規土台材20を切除部分に配置してもよい。
【0060】
次に、柱材3の切除量に対応した寸法に予め設定されたスペーサ10を用意し、このスペーサ10のほぞ11を柱材3に設けられたほぞ穴32に嵌合して柱材3とスペーサ10とを一体化し、柱材3の下端部及びスペーサ10に嵌装部42を被覆する。
【0061】
また、ジャッキ等を用いて一時的に柱材3を上方に持ち上げることができる場合は、柱脚金具4を起立させた状態で水平に移動し、嵌合部41を新規土台材20のほぞ穴6Aに落とし込むようにして嵌合した後、ジャッキ等による持ち上げを解除し柱材3を下方に戻して、柱材3の下端部に嵌装部42を被覆するようにしてもよい。
【0062】
次に、嵌装部42に設けられた第1の貫通孔44aと柱材3に設けられた固定用の貫通孔31とスペーサ10に設けられた貫通孔13a,13bに第1の固定部材である4本の固定ピン8aを貫通して、嵌装部42と柱材3及びスペーサ10を固定する。また、嵌合部41に設けられた第2の貫通孔44bと新規土台材20に設けられた固定用の貫通孔61Aに第2の固定部材である2本の固定ピン8bを貫通して、嵌合部41と土台材2を固定する。
【0063】
上記のように構成される第3実施形態によれば、柱材3だけでなく、土台材2も劣化した状態においても、土台材2の劣化した部分を切除して、中空押出形材からなる新規土台材20を配置すると共に、新規土台材20のほぞ穴6Aに柱脚金具4の嵌合部41を挿入し嵌合することで、新規土台材20と柱材3とを容易に接合することができる。また、第3実施形態によれば、柱脚金具4は押出形材のリブ43を利用してほぞ(嵌合部41)を形成し、新規土台材20は押出形材のリブ21を利用してほぞ穴6Aを形成するので、寸法精度の向上を図ることができ、柱材3と新規土台材20との接合を強固にすることができる。
【0064】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、柱脚金具4の嵌合部41が中空押出形材の側片40aと、側片40aと対向するリブ43と、側片40a及びリブ43と直交する一対の側片40b,40cとからなる中空矩形部にて形成される場合について説明したが、嵌合部41は、必ずしもこのような構造に限定されるものではない。例えば、図12に示すように、柱脚金具4の嵌合部41を構成するリブ43と側片40aの対向する部位にリブ43及び側片40aと直交する1又は複数(図12では2個を示す)の補強リブ45を設けるようにしてもよい。
【0065】
このように嵌合部41を構成する中空矩形部内に補強リブ45を設けることにより、柱脚金具4の嵌合部41の強度を更に高めることができると共に、柱材3と土台材2との接合部の強度を向上させることができる。
【0066】
なお、図12において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0067】
また、上記第3実施形態では、柱脚金具4の嵌合部41が片胴付きのほぞを形成し、新規土台材20に設けられるほぞ穴6Aが新規土台材20の側片20aとリブ21によって形成される場合について説明したが、別の形態にしてもよい。例えば、図13に示すように、柱脚金具4Aを、互いに平行な2つのリブ43,43aを有する中空押出形材にて形成すると共に、嵌合部41Aを、2つのリブ43,43aと、これら43,43aと直交する側片20b,20cとからなる両胴付きのほぞとしてもよい。また、柱脚金具4Aの嵌合部41Aに合わせて、新規土台材20Aのほぞ穴6Bを、新規土台材20Aの2つのリブ21a,21b間に形成してもよい。
【0068】
このように、柱脚金具4Aの嵌合部41Aを両胴付きのほぞとし、新規土台材20Aのほぞ穴6Bを、新規土台材20Aの2つのリブ21a,21b間に形成することにより、柱脚金具4と新規土台材20Aとを、ずれのない状態で位置決めして嵌合し接合することができる。
【0069】
なお、図13において、その他の部分は第3実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の第1実施形態に係る木造建造物の立柱構造を示す斜視図である。
【図2】図1の木造建造物の立柱構造の要部を示す斜視図である。
【図3】図1の木造建造物の立柱構造の分解斜視図である。
【図4】この発明における柱脚金具を示す斜視図(a)、(a)の平面図(b)、(a)のI−I線に沿う断面図(c)及び(a)のII−II線に沿う断面図(d)である。
【図5】上記柱脚金具を形成する前の中空押出形材を示す斜視図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係る木造建造物の立柱構造の要部を示す斜視図である。
【図7】図6の分解斜視図である。
【図8】図6のIII−III線に沿う断面図である。
【図9】この発明におけるスペーサの別の形態を示す断面図である。
【図10】この発明の第3実施形態に係る木造建造物の立柱構造の要部を示す斜視図である。
【図11】図10の分解斜視図である。
【図12】この発明における柱脚金具の別の形態を示す斜視図である。
【図13】この発明における柱脚金具と新規土台材の別の形態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
2 土台材
3 柱材
4 柱脚金具
6,6A,6B ほぞ穴
8a,8b 固定ピン(固定部材)
10,10A スペーサ
11 ほぞ
13a,13b,13c 貫通孔
14 上部スペーサ半体
15 下部スペーサ半体
16 ほぞ
17 ほぞ穴
20 新規土台材
21,21a,21b リブ
31 貫通孔
32 ほぞ穴
40 中空押出形材
40a〜40d 側片
41 嵌合部
42 嵌装部
43,43a リブ
44a 第1の貫通孔
44b 第2の貫通孔
61,61A 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製の柱材と土台材との接合部を補強する柱脚金具であって、
上記柱材の下端部を被覆する嵌装部と、上記土台材に設けられたほぞ穴に嵌合される嵌合部と、を具備することを特徴とする木造建造物の柱脚金具。
【請求項2】
請求項1記載の木造建造物の柱脚金具において、
上記嵌装部及び嵌合部は、上記土台材の長手方向に沿う少なくとも1つのリブを有する中空押出形材にて一体に形成され、上記嵌装部は、上記リブ及びリブに対して平行な側片が切除された残りの断面コ字状部にて形成され、上記嵌合部は、リブと、該リブに対して平行な側片、あるいは互いに平行なリブと、上記リブと直交する側片とからなる中空矩形部にて形成される、ことを特徴とする木造建造物の柱脚金具。
【請求項3】
木製の柱材と土台材との接合部を補強する木造建造物の補強方法であって、
上記柱材の下端部を切除し、
上記土台材の所定箇所にほぞ穴を設け、
請求項1又は2に記載の柱脚金具の嵌合部を上記土台材のほぞ穴に挿入すると共に、切除後の柱材の下端部を上記柱脚金具の嵌装部に挿入する、
ことを特徴とする木造建造物の補強方法。
【請求項4】
木製の柱材と土台材との接合部を補強する木造建造物の補強方法であって、
上記柱材の下端部を切除し、
上記土台材の一部を切除し、該切除部分に土台材の長手方向に沿う少なくとも1つのリブを有すると共に、リブと側片あるいはリブ同士からなるほぞ穴を有する中空押出形材からなる新規土台材を配置し、
請求項1又は2に記載の柱脚金具の嵌合部を上記新規土台材のほぞ穴に挿入すると共に、切除後の柱材の下端部を上記柱脚金具の嵌装部に挿入する、
ことを特徴とする木造建造物の補強方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の木造建造物の補強方法において、
上記切除後の柱材の下端部と柱脚金具の嵌装部の下端部との間にスペーサを介挿する、ことを特徴とする木造建造物の補強方法。
【請求項6】
請求項5記載の木造建造物の補強方法において、
上記切除後の柱材の下端部にほぞ穴を設けると共に、上記スペーサの上面にほぞを設け、上記ほぞ穴にほぞを嵌合する、ことを特徴とする木造建造物の補強方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の木造建造物の補強方法において、
上記スペーサが、切除された柱材の下端部に介挿される上部スペーサ半体と、該上部スペーサ半体と上記柱脚金具の嵌装部の下端部との間に介挿される下部スペーサ半体とからなり、上記スペーサ半体の下端部と下部スペーサ半体の上端部の対向する面のいずれか一方にほぞを設け、他方の面にほぞと嵌合可能なほぞ穴を設けてなる、ことを特徴とする木造建造物の補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−144458(P2009−144458A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324649(P2007−324649)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】