説明

材料供給装置および材料供給方法

【課題】粉体容器に保持された粉体のブリッジの形成無く粉体を安定に供給することが可能な材料供給装置および材料供給方法を提供すること。
【解決手段】錐体状の粉体容器11と該粉体容器の下端に設けられた搬送スクリュー12からなる粉体材料供給装置において、粉体容器の少なくとも一つの面の壁を外圧で変形可能な板14で構成し、該変形可能な板14の外側に密閉された空間15を作り、この空間に圧力流体を供給したり排出したりすることで、該変形可能な板を適宜変形させて粉体のブリッジの形成無く粉体を安定に供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の粉体をブリッジなく安定に供給する粉体供給装置および材料供給方法にするものであり、特に真空中・真空薄膜成膜設備など極度に異物混入を嫌うクリーンな粉体材料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の材料供給装置としては、図9のように、ゴム弾性体で作られた粉体容器91の下方に搬送スクリュー92が設けられており、そのスクリュー92に起因する粉体のブリッジの形成を破壊する揺動可能な板94a,94bを設け、搬送スクリュー92の上側の粉体容器91を押し変形させ、粉体材料93のブリッジを破壊して安定して粉体材料93を供給する方法がある。
【0003】
また、図7に示すような、粉体のブリッジを防ぎ、安定して粉体を供給することが可能とされる粉体用ホッパー(特許文献1)や、図8に示すような粉体定量供給装置(特許文献2)というものがある。
【0004】
前者の特許文献1に記載の発明の場合、コーン状の剛性容器内に、同じくコーン状で軟質材製の軟性容器を設けて剛性容器と軟性容器との間に気密空隙部を形成すると共に、剛性容器に通気管を連通し、この通気管から気密空隙部に圧縮流体を供給して軟性容器を内方に自在に膨出させて閉塞状態にある粉流体を崩し、その粉粒体Pの流れを円滑にするとされている。
【0005】
また、後者の特許文献2に記載の発明の場合、貯蔵手段としてのホッパーの排出口である搬送手段としてのスクリューコンベア真上に振動手段としての振動体を設け、その上部に制圧板を設ける事により、制圧板により粉体の増減による自重圧変化がスクリューコンベアへの排出量に与える影響を抑制すると共に、振動体によりスクリューコンベアの搬送に起因するブリッジを破壊すると同時に粉体の流動性を良好にして搬送手段内の粉体充満率を常に高安定させることにより、搬送手段から定量供給を可能とするものとされる。
【特許文献1】特開2001−39489号公報(第4頁,図5)
【特許文献2】特開2001−321658公報(第4頁,図1及び図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、最近ではクリーンな環境、特に真空中で薄膜形成する半導体や精密電子機器やデバイスの製造にも粉体材料を使ったプロセスが必要になってきており、よりクリーンに粉体を安定して供給する粉体材料供給装置の必要性が高まりつつある。そのため、上記特許文献1及び2に記載の発明などでは、真空中で使用する真空薄膜成膜設備においては真空を汚染し、成膜基板や成膜プロセスをも汚染する可能性があるという問題を有することになる。
【0007】
具体的には、まず、図9に示す材料供給装置では、ゴム弾性体で作られた粉体容器91と揺動可能な板94a,94bとの擦れや衝撃、或いは、ゴム弾性体で作られた粉体容器91の変形などにより、それらの部材からのダストやコンタミの発生が懸念され、クリーンな環境においては導入が難しい。特にコンタミを嫌う真空中の薄膜プロセス設備内に導入する場合は、ゴム弾性体からの出ガスの影響なども懸念され、より導入は難しい。
【0008】
また、特許文献1に記載の発明は、コーン状のゴム弾性体を用いるために、真空薄膜成膜プロセスなどクリーンな状態が欲しい場合には、コンタミや不純ガスの発生が考えられることから現実的には使用できず、更に、金属などの材料を選択した場合、コーン(円錐)という形状から変形はせず、万が一変形させたとしても元に戻すことは極めて難しいことから材料として使えない。
【0009】
更に、特許文献2に記載の発明は、4角錐状の粉体容器ホッパーを用いて振動体を内部に入れ振動で粉体を安定に落とそうとするものであるが、クリーンを要求する環境で粉体の中に振動体などの複雑な構成の構造物を入れると粉体を汚染してしまい、かつ、振動体による粉体舞い上げの危険性もあることから導入は非常に困難であると考える。
【0010】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、粉体容器に保持された粉体のブリッジの形成無く粉体を安定に供給することが可能な材料供給装置および材料供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の材料供給装置は、粉体を保持する錐体状の粉体容器と、前記粉体容器の下方に設けられ前記粉体を攪拌しながら吐出口に供給するスクリューと、前記粉体を吐出する吐出口からなる材料供給装置であって、前記粉体容器の少なくとも一つの壁面を外圧で変形可能な板で構成するとともに、前記変形可能な板の外側に密閉された空間を形成し、この形成に圧力流体を供給または/かつ排出することで前記変形可能な板を変形させることで粉体を吐出口から供給することで解決できる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の粉体供給装置および方法によれば、クリーンが求められる環境で安定した粉体供給ができ、特に真空中でプロセスを行なう設備などでも、ダストやコンタミの発生無く、プロセスなどに影響無く安定に粉体を供給できることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施例に係る材料供給装置の断面図を示すものであり、図2は、図1に対して垂直な方向の断面図である。図2において、図1と同じ構成要素に関しては、同じ符号を用い、説明を省略する。
【0014】
以下、図1及び図2を参照しながら、本実施の形態に係る材料供給装置および材料供給方法を説明する。図1において、材料供給装置は粉体13を入れておく錐体状の粉体容器11の下側に搬送スクリュー12を持ち、その真上の粉体容器11内の壁に少なくとも一つの面を保有し、その面の壁を外圧で変形可能な板(壁)14を設け、変形可能な板14の外側に密閉された空間15を形成し、空間15の圧力の増減による板14の変形により、搬送スクリュー12に起因する粉体のブリッジを破壊することで、搬送スクリュー12による安定した粉体供給を可能としたものである。
【0015】
この変形可能な板14の外側に密閉された空間15の圧力の変化のさせ方の一例について、図6を基に説明する。
【0016】
図6(1)に示すように、例えば、密閉された空間15内を真空ポンプ20を使用して、バルブ17の開閉により、絶対圧0Paから10000Pa(大気圧)の変動をさせれば、材料供給装置が真空の中であれば、変形可能な板14はフラットな状態と粉体側に膨らんだ状態とを繰り返すことになり、搬送スクリュー12に起因する粉体のブリッジを破壊することが可能となる。材料供給装置が通常の大気の中であれば、変形可能な板14は粉体側から見て凹んだ状態とフラットな状態とを繰り返すことにより、これもまた搬送スクリュー12に起因する粉体のブリッジを破壊することが可能となる。
【0017】
絞り弁16の調整とバルブ17の開閉のタイミングにより、例えば図6(2)のように圧力の変化の周期を変えることができ、また、エアーや窒素などの圧力源19を圧力調整弁18により圧力調整することで、図6(3)のように、大気圧よりも高い圧力(この場合絶対圧20000Pa)を密閉された空間15へ送り込むことができ、バルブ17の開閉により、絶対圧0Paから20000Paの変動をさせれば、材料供給装置が真空の中であれば、変形可能な板14はフラットな状態とより粉体側に膨らんだ状態とを繰り返すことになり、搬送スクリュー12に起因する粉体のブリッジを破壊する効果がさらに得られる。
【0018】
材料供給装置が通常の大気の中であれば、変形可能な板14は粉体側から見て凹んだ状態と粉体側に膨らんだ状態とを繰り返すことにより、これもまた搬送スクリュー12に起因する粉体のブリッジを破壊する効果がさらに得られる。これにより、安定した粉体の供給が可能となる。また、変形可能な板14に関しては、塑性変形領域にならないよう注意が必要である。変形可能な板14と空間15は一面だけに限られないものとする。また、図3のように粉体を接する面のみ変形可能な板を使用し、その他は剛性の高い部材で空間を作り丈夫にしてもよい。この場合もまた、変形可能な板(壁)と空間は一面だけに限られないものとする。
【0019】
(実施の形態2)
図4は実施の形態1に係る材料供給装置において、変形可能な板の外側に密閉された空間が複数個で構成される点で異なる。従って、以下、図1と同じ構成要素に関しては、同じ符号を用い説明を省略する。
【0020】
図4において、材料供給装置は、粉体容器11内の壁に少なくとも一つの面に変形可能な板44a,44bと2個以上を保持し、それに対し、変形可能な板の外側の空間45a,45bを形成し、この各々の空間(45a,45b)に圧力を送り込み、各部で個々に変形可能とする。これにより、上下の比較的長い粉体容器などにも対応することが可能となる。このように、粉体容器11内の壁に少なくとも一つの面に変形可能な板と空間を複数個作り各部で変形可能とする。このとき、変形可能な板と空間は上下、左右の配列に限定されるものではない。
【0021】
また、複数個の変形可能な板に関しては、大きさも変えて良いし、同時,交互,互いに独立に動作させても良い。更に、複数個の変形可能な板それぞれに圧力を変え変形量を変えても良い。また、粉体が少なくなった場合には、下側だけ変形させて不要な部分を動かさなくても良い。
【0022】
(実施の形態3)
粉体の材料に関して、特に供給する粉が数百μm以下の大きさの微細なものや誘電体など静電気を帯びやすい粉体材料に関しては、特にブリッジを形成しやすい。上記より本発明の該変形可能な板の材質は、帯電し難い金属製のものが望ましく、クリーンな環境・特に真空で使用することも考慮すると、耐食性のあるステンレス、チタン、インコネル、ハステロイなどを使用すると好適である。
【0023】
また、図5(1)(2)に粉体53を載せた板51を少しずつ傾斜させていき所定の角度で停止した後、板51上の滑り状態・粉体の残存状態を示す。更に、その板51を約2mm変形させてこれを粉体53がこれ以上落ちない状態まで繰り返す動作を行ない、その後の板51上の粉体53の滑り状態・粉体の残存状態を示す。
【0024】
前提条件として、粉体は金属酸化物の約数μmの粉体を使用、板51の材質はステンレス、板51の表面粗度はRa=0.8aとした。上記結果を踏まえ、板51上は緩やかな傾斜であればあるほどスクリュー径に対し、タンク幅が大きくなり、スクリューが小さくてもタンク容量が大きくすることができるが、前述した実施の形態1〜3の構成を取ったとしても、粉体は変形可能な板14上をすべりにくくなるため、変形可能な板14の傾斜角度に関しては、30度以上は最低限必要である。なお、90度以上傾けると粉体53の流動性が悪化することになるので好適ではない。ゆえに、変形可能な板14は30度以上90度未満の範囲で傾けると好適である。
【0025】
更に、板51の面粗度を何種類か変化させ、粉体53を20g載せた板51を少しずつ傾斜させて行き、所定の角度60度で停止した後、板51上の粉体の残存重量を測定する。Ra=6.3aの板51上に残った粉体の量を100%として評価した結果を図5(3)に示す。
【0026】
このときの前提条件として、粉体は金属酸化物の約数μmの粉体を使用、板51の材質はステンレスとした。上記結果より、板51の粉体に接する面は最大高さRa=0.8a以下の面粗度が望ましく、更にバフ研磨・電解研磨などの表面処理を板51に施せば、なお一層良い効果が得られる。
【0027】
以上説明したように、本発明の材料供給装置および材料供給方法によれば、クリーンな環境で汚染も無く安定に粉体を供給できる方法であり、錐体状の粉体容器と該粉体容器の下端に設けられた搬送スクリューからなる粉体材料供給装置において、粉体容器の少なくとも一つの面の壁を外圧で変形可能な板で構成し、該変形可能な板の外側に密閉された空間を作り、この空間に圧力流体を供給したり排出したりすることで該変形可能な板を適宜変形させて粉体を供給する限り本発明から逸脱するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の材料供給装置および材料供給方法によれば、ダスト・コンタミの発生無く、安定した粉体の供給が可能となるため、クリーンが求められる環境である食品・製薬の製造・実験などや、特に粉体を真空中で供給し真空での成膜プロセスなどを行なう用途またそれらの製造設備の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1に係る材料供給装置の断面を示す図
【図2】本発明の実施の形態1に係る材料供給装置の断面を示す図
【図3】本発明の実施の形態2に係る材料供給装置の断面を示す図
【図4】本発明の実施の形態3に係る材料供給装置の断面を示す図
【図5】(1)(2)本発明の実施の形態3に係る傾斜角度を示す図、(3)本発明の実施の形態3に係る表面荒さと滑りやすさを示す図
【図6】本発明の実施の形態1に係る絶対圧力と時間との関係を示す図
【図7】従来の技術(特許文献1に記載の発明)の概略を示す図
【図8】従来の技術(特許文献2に記載の発明)の概略を示す図
【図9】従来の技術の概略を示す図
【符号の説明】
【0030】
11 粉体容器
12 搬送スクリュー
13 粉体材料
14 変形可能な板
15 変形可能な板14の外側に密閉された空間
15a 変形可能な板14の外側に密閉された空間15への圧力流体経路
16 絞り弁
17 バルブ
18 圧力調整弁
19 エアー(窒素などの圧力源)
20 真空排気ポンプ
21 粉体用シール
22 ベアリング
23 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を保持する錐体状の粉体容器と、前記粉体容器の下方に設けられ前記粉体を攪拌しながら吐出口に供給するスクリューと、前記粉体を吐出する吐出口からなる材料供給装置であって、前記粉体容器の少なくとも一つの壁面を外圧で変形可能な板で構成するとともに、前記変形可能な板の外側に密閉された空間を形成し、この形成に圧力流体を供給または/かつ排出することで前記変形可能な板を変形させることで粉体を吐出口から供給することを特徴とする材料供給装置。
【請求項2】
前記変形可能な板の外側にこの板よりも剛性の高い容器を設けて空間を形成したことを特徴とする請求項1に記載の材料供給装置。
【請求項3】
前記空間は独立した複数個の空間に分割されて形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の材料供給装置。
【請求項4】
前記独立した複数個の空間にそれぞれ異なる圧力の流体を供給排出し、変形可能な板が部分的に異なる変形をするようにしたことを特徴とする請求項3に記載の材料供給装置。
【請求項5】
前記変形可能な板は、ステンレス、チタン、インコネル、ハステロイの何れかの材料であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の材料供給装置。
【請求項6】
前記変形可能な板の角度を水平面に対して30度以上90度未満傾けたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の材料供給装置。
【請求項7】
前記変形可能な板のうち、少なくとも粉体と面する側の一面の面粗度を最大高さRa=0.8a以下にしたことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の材料供給装置。
【請求項8】
錐体状の粉体容器内に保持された粉体をスクリューによって攪拌しながら吐出口まで供給し、前記粉体を吐出口から吐出する材料供給方法であって、前記粉体容器の少なくとも一つの壁面を外圧で変形可能な板で構成するとともに、前記変形可能な板の外側に密閉された空間を形成し、この形成に圧力流体を供給または/かつ排出することで前記変形可能な板を変形させることで粉体を吐出口から供給することを特徴とする材料供給方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−298629(P2006−298629A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126034(P2005−126034)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】