説明

杖および情報表示装置

【課題】様々な人とのコミュニケーションを取る機会を得ることができる杖を提供する。
【解決手段】杖1に杖リンク10を配設する。無線通信機能モジュール12は、杖固有のID情報と、杖利用者がボタンなどの情報入力部11により入力した杖利用者の状況を表す状況情報とを送信するとともに、当該杖1の近傍に存在する他の杖から送信されるID情報よび状況情報を受信する。機器制御モジュール14は、前記受信された各情報に基づいて、他の杖の存在を検知し、該情報の内容を識別し、情報通達モジュール13に表示するための制御を行う。情報通達モジュール13では、前記情報に応じて異なる色のLED13aを発光し、振動機能モジュール13bは振動を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高齢者が、様々な人とのコミュニケーションを取る機会を得ることができる杖および情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、少子高齢化が進む中において、高齢者に対するサービスが盛んに登場している。高齢者が遠くの人ともコミュニケーションが気軽に取れる手段としては、例えば下記非特許文献1に開示されているようなサービスが提案されている。これらはプライバシーを勘案して、お互いにおいて負担にならないように高齢者の生活状況を見守る手段である。
【0003】
一方で、昨今の若者が手軽に携帯電話やインターネットを利用して、コミュニケーションを取っている。これはお互いに時間に関係なく連絡し合うことが可能である。しかし、高齢者の方々がこれらを使いこなすのは難しい。そのような高齢者に向けた携帯電話機器として、例えば下記非特許文献2に開示されているようなサービスも提案されている。
【0004】
また、高齢者の人にとって日常的に手軽なコミュニケーションシステムとして、例えば下記特許文献1に記載の「高齢者見守りシステム」が提案されている。
【非特許文献1】「みまもりホットライン」、象印マホービン株式会社、URL http://www.mimamori.net/
【非特許文献2】「らくらくホン シンプル」、NTTドコモ URL http://www.nttdocomo.co.jp/product/easy_phone/simple/
【特許文献1】特開2006−85609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1のサービスのように、家庭内だけに使われるような家電を用いられる場合には、コミュニケーションを取る環境が限定してしまう問題が生じる。また、実際に遠隔にいる人により詳細な連絡を取りたい場合には、電話等の他の連絡手段を利用する必要がある。
【0006】
これに対し、携帯電話や杖のように常時に持つことが可能な機器はいつでも何処でも利用することができ、コミュニケーションツールとしては適している。非特許文献2のサービスのように、携帯電話は、連絡手段としては、実際に声を用いてコミュニケーションを取ることが可能であり、慣れてしまえば、家庭内にある固定電話と変りなく利用することが可能である。
【0007】
しかしながら、加齢による耳が遠くなる等の症状のために高齢者が通信状態によっては、コミュニケーションが取り難い上に、相手の状況によっては、昼間に時間のある高齢者の相手をすることは負担になる場合が多い。
【0008】
一方特許文献1に記載の杖は、高齢者において杖は高齢者の福祉器具として、利用度が高く、利用者にとっては行動する時には必要不可欠なものであり、常時利用するツールとしては有効度が高い。また、プライバシーを考慮しており、お互いに負担の掛からない形でコミュニケーションを取ることが可能である。
【0009】
しかし、実際にコミュニケーションを取ることよりも、家族の方等が高齢者の方を見守る手段として考えられている。また、管理サーバや無線基地局が必要であり、初期の段階から大規模なシステム構築をする必要がある。
【0010】
多くの高齢者の方は、コミュニケーションの手段として実際にあって会話をするコミュニケーションを期待していることが多い。病気でもないのに、病院に行き、待合室で他の患者と会話をしたり、医師や看護婦との会話をしたりする事を楽しみに病院に行くことは一般的に知られている。
【0011】
また、高齢者の場合には、若い時に携帯電話やインターネットが普及しておらず、扱い辛いだけではなく、コミュニケーションを取る手段としての認知度が低い上に、好んで利用することは少ない。また、杖を利用する高齢者において、遠くの人の所に日常的に行くことは容易ではなく、歩いている距離の人だけとのコミュニケーションを必要に応じて取る機会を得ることが重要である。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものでその目的は、様々な人とのコミュニケーションを取る機会を得ることができる杖および情報表示装置を提供することにある。
【0013】
すなわち本発明は、例えば高齢者が利用する杖を用いて、高齢者同士が気軽に近くの人達と会う機会を作れるきっかけを作り出すサービスシステムであり、杖が持つ無線通信機器により周辺の高齢者の場所や状況を知り、その情報を伝達することにより、お互いに存在状態や状況を知り合う事により、直接的なコミュニケーションを取ることが可能となる相手と手軽に出会う機会を提供する高齢者ローカルコミュニケーションシステムを構築することができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、例えば高齢者が日常において使用する杖を利用し、高齢者同士が気軽に直接的にコミュニケーションを取る機会を作るサービスを実現するシステムを構築することができる。すなわち、無線通信機器を持つ杖が、定期的に自分のID情報を含めた情報を発信し、その電波を受信することにより、自分の近傍に存在する他の利用者の存在を検知し、そのID情報等の情報に応じて、杖に取り付けられたLEDや振動発生機能を、そのIDや状況毎に異なる反応をさせることによって、近くにいる人の存在を伝える高齢者ローカルコミュニケーションシステムである。サーバレスな環境においても各杖同士が直接通信を行うことによって、サーバレスな環境においてもシステムを構築できる。
【0015】
また、コミュニティーステーション等の人が集まるところに置かれた情報表示端末においては、周辺の杖から送られてくる情報をデータベースに蓄積し、その情報に基づき現在や過去の周辺における状況を表示する。また、表示されている特定、あるいは、全員に対して、いくつかの決められた情報を送信することにより、特定の利用者を呼び出し、コミュニケーションする機会を与える高齢者ローカルコミュニケーションシステムを構築することができる。
【0016】
上記課題を解決するための請求項1に記載の杖は、送信する情報を入力する情報入力手段と、情報の送信、受信を行う第1の無線通信手段と、発光素子および振動発生機能を有し、前記第1の無線通信手段により受信された情報を通達する情報通達手段と、前記情報通達手段を制御する機器制御手段とを具備したことを特徴としている。
【0017】
また請求項2に記載の杖は、請求項1において、前記第1の無線通信手段は、杖固有に設定されたID情報と、杖の利用者が前記情報入力手段により入力した杖利用者の状況を表す状況情報とを送信するとともに、当該杖の近傍に存在する他の杖の無線通信手段から送信されるID情報よび状況情報を受信し、前記機器制御手段は、前記受信された各情報に基づいて前記他の杖の存在を検知するとともに、該情報に応じて、前記情報通達手段の前記発光素子の発光および振動発生機能の振動状態を制御し、前記情報通達手段は、前記機器制御手段の制御によって前記発光素子を発光し、振動発生機能を動作させることを特徴としている。
【0018】
より具体的には、請求項1において、各杖が無線機能を利用し自らの持つID情報と利用者が設定した(入力した)状況情報を送信し、その送信データの受信状況に応じて近傍に存在する杖の存在を検知し、その情報に基づき杖の使用者にそのIDや状況の特有の色及び振動方法を機器制御モジュールによって制御し、杖の利用者に対し、情報通達モジュールによって、近傍にいる利用者の状況を伝えることを特徴とする。
【0019】
上記構成において、第1の無線通信手段により受信された、例えば杖固有のID情報、杖利用者の状況情報が、情報通達手段によって通達され、杖の利用者は近くにいる他の杖の利用者の存在や状況を知ることができる。このように各杖同士が直接通信を行うので、サーバレスの環境においても、直接的なコミュニケーションを取ることが可能となり、人と手軽に出会う機会を提供するローカルコミュニケーションシステムを構築することができる。
【0020】
また請求項3に記載の杖は、請求項1又は2において、前記第1の無線通信手段により受信された電波の強度を測定する電波強度測定センサと、指向性アンテナと、前記電波強度測定センサおよび指向性アンテナにより、前記他の杖の存在距離および存在方向を推定し、これら存在距離および存在方向に基づいて他の杖の存在位置を推定する第1の位置推定手段とを備え、前記機器制御手段は、前記第1の位置推定手段により推定された他の杖の存在位置を表す情報に応じて、前記情報通達手段を制御することを特徴としている。
【0021】
より具体的には、請求項1と2において、杖が受信電波強度測定機能を持つことにより、他の杖から送られてくるデータの電波強度を測定し、そのデータを送った杖との距離を推定し、指向性アンテナによってその杖のある方向を推定することによって、探している杖の利用者の位置を推定する機能を特徴とする。
【0022】
上記構成において、杖の利用者は他の杖の利用者の位置を容易に推定し、認識することができる。
【0023】
また請求項4に記載の杖は、請求項1ないし3のいずれか1項において、加速度センサと、傾斜センサと、杖の存在を検出する位置情報検出手段と、前記加速度センサおよび傾斜センサの検出データに基づいて杖の利用者の状態を推定する状態推定手段とを備え、前記第1の無線通信手段は、前記位置情報検出手段により検出された杖の存在位置情報および前記状態推定手段により推定された杖の利用者の状態を表す情報を送信することを特徴としている。
【0024】
より具体的には、請求項1から3において、加速度センサ、傾斜センサ、位置情報検出センサを具備する杖により、利用者の使用状況を推定し、その情報を送信することを特徴とする。
【0025】
上記構成において、転んだ等の緊急事態時に杖の利用者自身が情報入力を行わなくても、自動的にその緊急事態の情報が送信される。
【0026】
また請求項5に記載の情報表示装置は、送信する情報を入力する情報入力手段と、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の第1の無線通信手段との間で情報の送信、受信を行う第2の無線通信手段と、前記第2の無線通信手段により受信された電波の強度を測定する電波強度測定センサと、指向性アンテナと、前記電波強度測定センサおよび指向性アンテナにより、前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の杖の存在距離および存在方向を推定し、これら存在距離および存在方向に基づいて杖の存在位置を推定する第2の位置推定手段と、振動発生機能を有し、前記第2の無線通信手段により受信された情報および第2の位置推定手段で推定された位置推定情報を表示する表示手段とを具備したことを特徴としている。
【0027】
また請求項6に記載の情報表示装置は、請求項5において、前記第2の無線通信手段により送信、受信された情報を蓄積するデータベースを備え、前記表示手段は前記データベースに蓄積された情報を表示することを特徴としている。
【0028】
より具体的には、無線通信機器と、指向性アンテナと、電波強度測定機器により杖の位置情報を推定する位置情報推定モジュールと、請求項1ないし4のいずれか1項の杖から送られてくる情報を表示することが可能な表示画面と過去の杖からの情報履歴を蓄積することが可能なデータベースとを具備する情報表示機器を利用し、各IDの現在状況に基づいて特定のIDに向けて情報を送信する。
【0029】
上記構成において、請求項1〜4に記載の杖の利用者の状況を表示することができるとともに、当該杖の利用者に対して送信メッセージを送って連絡を取ることができる。
【0030】
またデータベースによって過去の履歴情報を表示することが可能となり、各杖の利用者の行動履歴を見ることができる。
【発明の効果】
【0031】
(1)請求項1〜4に記載の発明によれば、杖の利用者は近くにいる他の杖の利用者の存在や状況を容易に知ることができる。このように各杖同士が直接通信を行うので、サーバレスの環境においても、直接的なコミュニケーションを取ることが可能となり、人と手軽に出会う機会を提供するローカルコミュニケーションシステムを構築することができる。
(2)請求項3に記載の発明によれば、杖の利用者は他の杖の利用者の位置を容易に推定し、認識することができる。
(3)請求項4に記載の発明によれば、転んだ等の緊急事態時に杖の利用者自身が情報入力を行わなくても、自動的にその緊急事態の情報を送信することができる。
(4)請求項5,6に記載の発明によれば、請求項1〜4に記載の杖の利用者の状況を表示することができるとともに、当該杖の利用者に対して送信メッセージを送って連絡を取ることができる。
(5)請求項6に記載の発明によれば、データベースによって過去の履歴情報を表示することが可能となり、各杖の利用者の行動履歴を見ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【0033】
図1において、杖1には、例えばボタンから成り、送信する情報を入力する情報入力手段としての情報入力部11と、情報の送信、受信を行う第1の無線通信手段としての無線通信機能モジュール12と、発光素子および振動発生機能を有し、無線通信機能モジュール12により受信された情報を通達する情報通達手段としての情報通達モジュール13と、情報通達モジュール13を制御する機器制御手段としての機器制御モジュール14とを備えた杖リンク10が設けられている。
【0034】
13aは発光素子としての複数の色を有したLED(発光ダイオード)であり、13bは例えばバイブレータなどの振動機能モジュールである。
【0035】
尚情報入力部11に入力された情報を送信データに変換したり、無線通信機能モジュール12により受信されたデータの内容を識別し、その情報に基づいて情報通達モジュール13を制御する処理(機器制御モジュール14の処理)は、杖リンク10内の図示省略のコンピュータにより行われるものである。
【0036】
前記無線通信機能モジュール12が行う無線通信としては、例えば無線LAN、特定省電力無線、微弱無線、ZIGBEE、BLUETOOTHなどを利用する。これらの無線通信機能を利用した場合、無線通信距離は数mから数kmである。利用するシーンに応じて、通信距離の合った無線方式を利用することによって、老人ホームのような狭い建物内から、町内全体まで様々な利用シーンに適した環境を構築するよう選定する。この無線通信機能を利用し、自らが持つID情報を特定の間隔で発信する。また、他の杖に設けられた無線通信機能モジュールから送られてくるデータを受信する。
【0037】
情報通達モジュール13は受信した情報に含まれるID情報や伝達内容によって予め設定された色と振動を発生する。受信したID情報や伝達内容によって、異なる色や振動を発生するために機器制御モジュール14を設けている。
【0038】
図2に各杖同士による情報送受信のフローチャートを示す。各杖は固有のID情報を持ち、その情報を例えばt秒毎に無線によって送信する(ステップS1)。また、杖1に数種類のボタン(情報入力部11)を用意することによって、「忙しい」や「暇」といった情報を送信データに付加することが可能である。
【0039】
各杖1は通信可能距離にいる他の杖からの情報を受信し(ステップS2)、機器制御モジュール14がその受信した情報を解析し、識別し、その情報に基づいて、情報通達モジュール13のLED13aを光らせたり、振動機能モジュール13bを振動させたりする(ステップS3)。
【0040】
すなわち、図1の実施例における無線通信機能モジュール12が送信するデータは、杖固有のID情報、杖1の利用者が情報入力部11のボタンを操作して入力した杖利用者の状況を表す状況情報であり、これらデータは数値又は記号化され所定の伝送フォーマットで送信される。
【0041】
例えば1番目のデータは、各杖1の利用者毎に順次割り付けされた例えば数字から成るID情報とし、2番目のデータは、利用者の状態を表す、例えば座っているときは「1」、歩いているときは「2」、走っているときは「3」…のような数字から成る状況情報とする(したがって杖利用者は自身の状況に応じて「1」、「2」、「3」に相当するボタンの操作を行うものとする)。
【0042】
又は前記数字の代わりに複数種類の絵、記号を用いてもよく、またアイコンの種類、表情を変えるようにしてもよい。
【0043】
そしてそれら送信データを無線通信機能モジュール12が受信した場合には、機器制御モジュール14が前記フォーマット化されたデータを解析し、識別し、例えばID情報であればそのID情報に対応する色のLED13aを発光させ、状況情報であればその状況に対応して振動機能モジュール13bを振動させる。
【0044】
すなわち、「座っている」や「歩いている」状況であれば振動周波数を低くし、「走っている」状況の場合には振動周波数を高くする。
【0045】
これによって、受信されたID情報が杖利用者のうちの誰であるかや、その杖利用者がどのような状況にあるか等を容易に理解することができる。
【0046】
その結果、杖1の利用者は近傍にいる人達の状態を知ることが出来る。仮に時間がある人がいた場合には、その情報に基づいて近くを散策すれば、その人に会うことができ、直接コミュニケーションを取る機会を得ることができる。
【0047】
小さなコミュニティーがいくつも存在する場合には、自らが属す、あるいは、公開しても良い、グループのIDも付加することによって限られたグループの人達にのみ情報を伝えることが可能である。また、他人に全く知られずに行動したい場合には、電源を切ることによって、プライバシーを守ることが可能である。
【0048】
図3は位置推定モジュール21によって、探している相手の持つ杖の位置を推定することが可能な杖の実施例である。
【0049】
図3において図1と同一部分は同一符号をもって示し、その説明は省略する。図3において図1と異なる点は、図1の杖リンク10に、無線通信機能モジュール12で受信された電波の強度を測定する電波強度測定センサ22、指向性アンテナ23およびセンサ信号処理機能部24を有し、他の杖の存在位置を推定する第1の位置推定手段としての位置推定モジュール21を設けて杖リンク20を構成し、該杖リンク20を杖1に配設した点にある。
【0050】
尚センサ信号処理機能部24は、前記センサ22、前記アンテナ23の検出信号に基づいて他の杖の存在位置を推定する処理を行うものであり、例えば杖リンク20内のコンピュータ(図示省略)で構成される。
【0051】
また図3の実施例における機器制御モジュール14は、図1で述べた制御に加えて、位置推定モジュール21により推定された他の杖の存在位置を表す情報に応じて情報通達モジュール13を制御するものである。
【0052】
図3の構成において、無線通信機能モジュール12により電波受信が可能である相手が見つかった時に、指向性アンテナ23を様々な方向に向けることによって相手のいる方向を推定する。また、その時の電波強度によって通信相手の距離を推定する。この時に、例えば方位磁石を付加した杖を利用し、指向性アンテナ23を1回転させ、全ての方位の電波強度を測定し、その電波強度の一番高い方向に杖が存在すると推定することによって、より推定精度を高めることができる。
【0053】
このような位置推定により、情報通達モジュール13には、図1で述べたID情報、状況情報に加えて、前記推定された他の杖の存在位置を表す情報が通達(表示)される。
【0054】
この場合他の杖の存在位置までの推定距離を、例えば4mであれば「4」に対応する色のLED13aを発光させるものである。
【0055】
このように位置情報を推定して表示することによって、お互いに時間のあるコミュニケーションを取りたい人とより確実に会える。
【0056】
図4は状態推定モジュール31によって、自分自身の状態を杖が自動的に認識する杖の実施例である。
【0057】
図4において図1と同一部分は同一符号をもって示し、その説明は省略する。図4において図1と異なる点は、図1の杖リンク10に、杖の加速度を検出する加速度センサ32、杖の傾斜度を検出する傾斜センサ33およびセンサ信号処理機能部34を有し、当該杖1の状態を推定する状態推定手段としての状態推定モジュール31と、例えばGPSや移動体電話網の基地局情報から自身の杖1の存在位置情報を検知する、位置情報検出手段としての位置情報検出センサ35とを設けて杖リンク30を構成し、該杖リンク30を杖1に配設した点にある。
【0058】
尚センサ信号処理機能部34は、前記センサ32,33の検出信号に基づいて自身の杖1の状態を推定する処理を行うものであり、例えば杖リンク30内のコンピュータ(図示省略)で構成される。
【0059】
また図4の実施例における無線通信機能モジュール12は、位置情報検出センサ35で検知した自身の杖1の存在位置情報および状態推定モジュール31により推定された自身の杖1の使用状態を表す情報を送信するものである。
【0060】
図4の構成のように、加速度センサ32や傾斜センサ33を取り付けることによって、杖1の利用者が自分の状態をボタン等によって設定することなく、自動的に前記状態を表すデータを送信することができる。また、転んだ等の状態を推定して(傾斜センサ33で検出された傾斜度で推定される)緊急の情報を送信することによって、近くにいる人達に助けてもらうことも可能となる。
【0061】
図5は情報表示装置の実施形態例である。図5において40は、本発明の情報表示装置としての情報表示機器である。41は、例えばボタンやキー群から成り、送信する情報を入力する情報入力手段としての情報入力部である。
【0062】
42は、前記図1、図3、図4の杖1に設けられた無線通信機能モジュール12との間で情報の送信、受信を行う第2の無線通信手段としての無線通信機能モジュールである。
【0063】
43は、前記無線通信機能モジュール42により受信された電波の強度を測定する電波強度測定センサ44、指向性アンテナ45およびセンサ信号処理機能部46を有し、前記図1、図3、図4の杖1の存在位置を推定する第2の位置推定手段としての位置推定モジュールである。
【0064】
尚センサ信号処理機能部46は、前記センサ44、前記アンテナ45の検出信号に基づいて他の杖の存在位置を推定する処理を行うものであり、例えば杖リンク40内のコンピュータ(図示省略)で構成される。
【0065】
47は、無線通信機能モジュール42で受信された情報、位置推定モジュール43で推定された位置推定情報および後述のデータベース内に蓄積された情報を画面に表示するディスプレイ47aと、例えばバイブレータから成る振動発生機能モジュール47bとを有した、表示手段としてのコミュニケーションモジュールである。
【0066】
尚前記ディスプレイ47aは、その画面上をクリックすることで詳細画面に表示が切り換わるなどの機能を備えている。
【0067】
48は前記コミュニケーションモジュール47を制御する機器制御モジュールである。
【0068】
50は、無線通信機能モジュール42により送信、受信された情報を蓄積するデータベースである。
【0069】
尚、情報入力部41に入力された情報を送信データに変換したり、無線通信機能モジュール42により受信されたデータの内容を識別し、その情報に基づいてコミュニケーションモジュール47を制御する処理(機器制御モジュール48の処理)、更にはデータベース50へのデータ蓄積処理およびデータベース50のデータをコミュニケーションモジュール47に表示させる処理等は、情報表示機器40内の図示省略のコンピュータにより行われるものである。
【0070】
また、位置推定モジュール43は、前記図3の位置推定モジュール21と同様の動作を行うものである。
【0071】
尚図5(b)はディスプレイ47aの表示画面の例を示している。
【0072】
上記のように構成された情報表示機器40を高齢者がよく集まる公民館や家等に設置することにより、受信圏内に、図1、図3、図4に示す杖1を持っている人の状況がディスプレイ47aに画面表示されて詳細にわかると共に、情報入力部41にメッセージなどを入力することによって杖1の利用者に必要な情報を発信する。情報表示機器40は複数の指向性アンテナ45を持つことによって、動かすことなく各杖の位置情報を推定することが可能である。
【0073】
図6はディスプレイ47aの画面表示の例を示している。図6において、自らの位置(情報表示機器40の位置)を中心として、その受信圏内にある杖全てを画面上にID毎に表示する(ID1〜ID3)。このIDをクリックすることによって、更に詳細にその人の状態を文字情報として見ることができる。この時に必要に応じて、情報表示機器40の利用者の杖の持つID情報に基づき、その人に必要なあるいは観閲可能な情報のみを表示する。
【0074】
また、連絡を取りたい相手が受信エリアにいる場合には、その相手あるいは全ての人に対して、特定の送信メッセージを送ることによって、必要な相手に連絡を取ることができる。その時には、その利用者のID情報と情報表示機器40を特定する情報(利用端末情報)を送ることによって、誰が何処から送ったのかが受信機(杖1)で認識することができ、その情報に基づき、杖1の情報通達モジュール13を制御することにより、情報を受信した杖の利用者は認識することができる。
【0075】
例えば、「会いましょう」というシグナルであれば、その情報表示機器40(情報端末)が設置されている場所に行けば会うことができ、直接コミュニケーションを取ることが可能となる。
【0076】
また、データベース50を持つことによって、過去の履歴情報を表示することができ、各利用者の行動履歴を見ることができる。
【0077】
また、緊急時等においては、この情報表示機器40(情報端末)を直接持って、行動することによって、杖1を持つ人をより確実に探すことが可能となる。また、杖1に組み込んだ機能を靴や時計等に組み込むことによって、杖1を利用している高齢者に限らず様々な人とのコミュニケーションをする機会を作り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の杖の一実施形態例を示し、(a)は杖の外観図、(b)は杖リンクの構成図。
【図2】本発明の杖の一実施形態例を示し、杖同士による情報送受信のフローチャート。
【図3】本発明の杖の他の実施形態例を示し、(a)は杖の外観図、(b)は位置推定モジュールを持つ杖リンクの構成図。
【図4】本発明の杖の他の実施形態例を示し、(a)は杖の外観図、(b)は状態推定モジュールを持つ杖リンクの構成図。
【図5】本発明の情報表示装置の一実施形態例を示し、(a)は構成図、(b)は表示画面の例を示す説明図。
【図6】本発明の一実施形態例の情報表示装置における表示画面の様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0079】
1…杖、10,20,30…杖リンク、11,41…情報入力部、12,42…無線通信機能モジュール、13…情報通達モジュール、13a…LED、13b,47b…振動機能モジュール、14,48…機器制御モジュール、21,43…位置推定モジュール、22,44…電波強度測定センサ、23,45…指向性アンテナ、24,34,46…センサ信号処理機能部、31…状態推定モジュール、32…加速度センサ、33…傾斜センサ、35…位置情報検出センサ、47a…ディスプレイ、50…データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信する情報を入力する情報入力手段と、
情報の送信、受信を行う第1の無線通信手段と、
発光素子および振動発生機能を有し、前記第1の無線通信手段により受信された情報を通達する情報通達手段と、
前記情報通達手段を制御する機器制御手段と
を具備したことを特徴とする杖。
【請求項2】
前記第1の無線通信手段は、杖固有に設定されたID情報と、杖の利用者が前記情報入力手段により入力した杖利用者の状況を表す状況情報とを送信するとともに、当該杖の近傍に存在する他の杖の無線通信手段から送信されるID情報よび状況情報を受信し、
前記機器制御手段は、前記受信された各情報に基づいて前記他の杖の存在を検知するとともに、該情報に応じて、前記情報通達手段の前記発光素子の発光および振動発生機能の振動状態を制御し、
前記情報通達手段は、前記機器制御手段の制御によって前記発光素子を発光し、振動発生機能を動作させることを特徴とする請求項1に記載の杖。
【請求項3】
前記第1の無線通信手段により受信された電波の強度を測定する電波強度測定センサと、指向性アンテナと、前記電波強度測定センサおよび指向性アンテナにより、前記他の杖の存在距離および存在方向を推定し、これら存在距離および存在方向に基づいて他の杖の存在位置を推定する第1の位置推定手段とを備え、
前記機器制御手段は、前記第1の位置推定手段により推定された他の杖の存在位置を表す情報に応じて、前記情報通達手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の杖。
【請求項4】
加速度センサと、傾斜センサと、杖の存在を検出する位置情報検出手段と、前記加速度センサおよび傾斜センサの検出データに基づいて杖の利用者の状態を推定する状態推定手段とを備え、
前記第1の無線通信手段は、前記位置情報検出手段により検出された杖の存在位置情報および前記状態推定手段により推定された杖の利用者の状態を表す情報を送信することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の杖。
【請求項5】
送信する情報を入力する情報入力手段と、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の第1の無線通信手段との間で情報の送信、受信を行う第2の無線通信手段と、
前記第2の無線通信手段により受信された電波の強度を測定する電波強度測定センサと、
指向性アンテナと、
前記電波強度測定センサおよび指向性アンテナにより、前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の杖の存在距離および存在方向を推定し、これら存在距離および存在方向に基づいて杖の存在位置を推定する第2の位置推定手段と、
振動発生機能を有し、前記第2の無線通信手段により受信された情報および第2の位置推定手段で推定された位置推定情報を表示する表示手段と
を具備したことを特徴とする情報表示装置。
【請求項6】
前記第2の無線通信手段により送信、受信された情報を蓄積するデータベースを備え、
前記表示手段は前記データベースに蓄積された情報を表示する
ことを特徴とする請求項5に記載の情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−152337(P2008−152337A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336931(P2006−336931)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】