説明

板状吸音部材および板状吸音部材生産方法

【課題】コスト性に優れた板状吸音部材およびこれの生産方法を提供すること。
【解決手段】板状吸音部材100は、構造体の表面である取付面200に固定される板状吸音部材100であって、高分子繊維から成る母材層と高分子フィルムの膜層とから構成され、取付面200に固定されたときに取付面200との間に空間を形成する立体形状を有する。母材層は、高分子繊維から成る不織布を圧縮した素材であり、膜層は、高分子フィルムを母材層の表面に熱融着した素材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療機器および電子機器等の各種機器から発生する動作音その他の音に対する吸音を行うための板状吸音部材および板状吸音部材の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機器をはじめとする各種機器の分野において、動作音の吸音を行うための手段として、ウレタンフォ−ム、フェルト、グラスウ−ル等の多孔質材料を、吸音部材として機器内部に配置することが広く行われている。このような吸音部材において、中低音域においても十分な吸音性能を得るためには、多孔質材料の十分な厚さが必要である。
【0003】
ところが、機器の小型化の要請や機器の高性能化に伴う内部構造の複雑化に伴い、吸音部材を配置することができるスペ−スは狭くなり、十分な厚さの多孔質材料を配置することは困難となってきている。
【0004】
そこで、加熱圧縮されたポリエステル繊維の表面に膜材を設けた板状部材を、吸音部材として用いる技術が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1記載の技術は、上記構造を有する板状吸音部材を、構造体の表面と多孔質吸音材料との間に空気層が形成されるような位置で、構造体に固定する。これにより、膜吸音効果が得られ、少ないスペースにおいて高い吸音性能を実現することが可能となる。
【特許文献1】特開2002−268647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の板状吸音部材を構造体の表面から所定の間隔を置いて固定するためのスペーサを、別途配置しなければならないという問題がある。狭いスペースにおいてこのようなスペーサを配置することは、施工性および部品点数の観点から、装置のコストアップを招く。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、コスト性に優れた板状吸音部材および板状吸音部材の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の板状吸音部材は、構造体の表面に固定される板状吸音部材であって、高分子繊維から成る母材層と高分子フィルムの膜層とから構成され、前記表面に固定されたときに前記表面との間に空間を形成する立体形状を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、板状吸音部材が構造体に固定されたときに板状吸音部材自体の立体形状により空気層が形成されるので、スペーサを不要とすることができ、コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、本実施の形態に係る板状吸音部材の構成について説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る板状吸音部材の形状を示す概略斜視図である。ここでは、板状吸音部材の固定の対象となる構造体の表面が、矩形平面である場合の例について説明する。参考のため、構造体の表面の形状についても併せて図示する。
【0011】
図1に示すように、板状吸音部材100は、立体形状を有する。この立体形状は、構造体の表面である取付面200と同一形状である矩形平面の一部が、平面の一面側に隆起した立体形状となっている。このような形状により、板状吸音部材100は、取付面200に固定された状態(以下「固定状態」という)において、取付面200に対して所定面積以上の面積で接触する接触領域110と、固定状態において取付面200と接触しない非接触領域120とを有する。この所定面積とは、例えば、板状吸音部材100を取付面200に対して固定するのに最低限必要な面積である。
【0012】
固定状態において、非接触領域120と取付面200との間には、背面空気層300が形成される。接触領域110は、非接触領域120を取り囲んでいる。これにより、固定状態において、背面空気層300は、板状吸音部材100と取付面200とにより閉じられた空間となる。また、接触領域110には、ねじや取付面200に設けられた突起等の連結部材を用いて取付面200に板状吸音部材100を固定するための孔111が、少なくとも3個設けられている。
【0013】
図2は、板状吸音部材100のうち非接触領域120を含む部分の断面形状を示す断面図である。参考のため、取付面200の断面形状についても併せて図示する。
【0014】
図2に示すように、板状吸音部材100の孔111は、例えば、取付面200の対応する位置に設けられた突起210に嵌め込まれる。これにより、板状吸音部材100は、取付面200に固定されるとともに、取付面200との間に、背面空気層300を形成する。板状吸音部材100は、背面空気層300の厚さtが一定となる断面形状を有する。背面空気層の厚さtおよび板状吸音部材100の構造によって、板状吸音部材100の吸音特性は変化する。板状吸音部材100は、母材層130と膜層140とから成る。
【0015】
母材層130は、細かい空気の隙間を有する多孔質素材から成る板状部材であり、高分子繊維、例えばポリエステル繊維から成る。母材層130は、繊維の隙間にある空気の粘性抵抗により、所定の周波数の音のエネルギーを熱に変換し、その音を吸収する。なお、高分子繊維を採用する場合には、繊維の配向は、縦方向、横方向、ランダム配向のいずれでもよい。また、母材層130の素材は、高分子繊維を不織布としたものや高分子繊維の不織布を圧縮成型したものでもよい。ここでは、母材層130は、ポリエステル繊維の不織布を圧縮成型したものとする。
【0016】
膜層140は、所定の通音性能および吸音性能を有するとともに、母材層130の吸音性能に影響を与えない高分子フィルムである。
【0017】
膜層140および母材層130から成る複合構造体と背面空気層300とから成る共振系、並びに複合構造体の多質点系の共振により、所定の周波数の音、特に低周波音に対し、吸音が行なわれる。膜層140は、母材層130の音源側、背面空気層300側、母材層130の内部のいずれに配置されていてもよい。但し、例えば呼吸に使用される空気が通過する空間に設けられる場合には、膜層140を空気通過側に配置することにより、母材層130が通過空気と直接に接触するのを防ぎ、装置の耐久性および安全性を向上させることができる。また、板状吸音部材100の表面抵抗を低減することができるので、通過空気の流れへの影響を抑えることができ、通過空気の圧力損失を抑えることができる。ここでは、膜層140は、母材層130の冷却用空気が通過する側の面に熱融着された高分子フィルムであるものとする。
【0018】
なお、板状吸音部材100通過して背面空気層300に進入した音の大部分は、取付面200で反射して再び板状吸音部材100に戻ってくるが、音の反射面である取付面200からλ/4の距離で空気の振動がピークとなる。したがって、背面空気層300の厚さに母材層の厚さの1/2を足した長さの4倍の波長の付近の音およびこの音の整数倍の周波数の音に対する吸音率を向上させることができる。
【0019】
次に、本実施の形態に係る板状吸音部材100の生産方法について説明する。
【0020】
図3は、板状吸音部材100の生産方法の一例を示す図である。
【0021】
まず、図3(A)に示すように、厚さ20mm〜50mm、かさ密度20kg/m〜50kg/mのポリエステル繊維不織布131と、厚さ10μm〜50μmの高分子フィルム141とを積層する。母材層130の基となるポリエステル繊維不織布131の繊維の配向は、縦方向、横方向、ランダム配向のいずれでもよいが、後段の立体成型を考慮して、縦方向であることが望ましい。
【0022】
そして、図3(B)に示すように、これら高分子系フィルムおよびポリエステル繊維不織布を熱加圧し、かさ密度が増したポリエステル繊維から成る母材層130の表面に高分子フィルムから成る膜層140が融着された複合ボ−ド101を生成する。
【0023】
更に、図3(C)に示すように、凸型の金型151もしくは凹型の金型152または両方を用いた真空成型または熱加圧成型により、複合ボード101を、例えば図1および図2に示す立体形状に成型する。
【0024】
これにより、図3(D)に示すように、成型体として、取付面200との間に背面空気層300を形成することが可能な板状吸音部材100が得られる。
【0025】
このような生産方法により、ポリエステル繊維不織布の母材層130と高分子フィルムの膜層140とから構成され、取付面200の立体形状とは異なる立体形状を有することにより背面空気層300を形成する板状吸音部材100を生産することができる。
【0026】
また、平らな複合ボード101を生成してこれを成型する手順としているので、成型形状によらずに複合ボード101の生成までの処理を済ませておくことができ、生産工程の柔軟性を向上させることができるというメリットがある。また、金型への材料のセッティングが容易であるというメリットがある。
【0027】
一方で、複合ボード101を生成する処理を省略することも可能である。
【0028】
図4は、板状吸音部材100の生産方法の他の例として、複合ボード101を生成する処理を省略した生産方法の一例を示す図である。
【0029】
まず、図4(A)に示すように、厚さ20mm〜50mm、かさ密度20kg/m〜50kg/mのポリエステル繊維不織布131と、厚さ10μm〜50μmの高分子フィルム141とを積層する。
【0030】
そして、図4(B)に示すように、これら高分子系フィルムおよびポリエステル繊維不織布に対して、凸型の金型151もしくは凹型の金型152または両方を用いた熱加圧成型を行う。これにより、ポリエステル繊維不織布131のかさ密度を増大させて母材層130を形成し、母材層130の表面に高分子フィルムから成る膜層140を融着させつつ、かつ、これらを立体成型することができる。
【0031】
その結果、図4(C)に示すように、成型体として、取付面200との間に背面空気層300を形成することが可能な板状吸音部材100が得られる。
【0032】
図4に示す例では、図3に示す例に比べて、生産工程全体におけるコストを低減することができるというメリットがある。
【0033】
次に、本実施の形態に係る板状吸音部材100の吸音効果について説明する。
【0034】
ここでは、本実施の形態に係る板状吸音部材100を含む複数のサンプルに対する吸音率の実験結果について説明する。サンプルとして、3種類の本実施の形態に係る板状吸音部材100(以下「本発明品A〜C」という)と、1種類の従来構造を有する板状吸音部材(以下「従来品」という)とを用意した。
【0035】
本発明品A〜Cは、いずれも、かさ密度24kg/m、厚さ30mmのポリエステル繊維不織布を厚さ2mmに熱加圧プレスしたボードと、厚さ20μmのポリエチレンフィルムとを複合した複合ボードを、熱加圧成型により、直径100mmのお椀形状に立体成型したものである。但し、本発明品A〜Cの背面空気層300の厚さは、3mm、8mm、13mmである。すなわち、本発明品Cの全体の厚さは、15mmとなっている。図5に、本発明品Cの外形を示す。
【0036】
従来品は、直径100mmの円盤形状であって、かさ密度24kg/m、厚さ15mmのポリエステル繊維不織布の表面に厚さ20μmのポリエチレンフィルムとを複合した複合ボードである。但し、本発明品A〜Cとは異なり、圧縮加工は行っていない。従来品の厚さを15mmとしたのは、本発明品Cとの比較を行うためである。
【0037】
図6は、本発明品A〜Cおよび従来品の吸音効果に関する評価結果の一例を示す図である。ここでは、横軸を1/3オクターブバンド中心周波数(以下単に「周波数」という)[Hz]、縦軸を垂直入射吸音率(以下単に「吸音率」という)として、各周波数についての吸音率の実験データを示す。本発明品A〜Cのデータは、順に、丸印、三角印、菱形印で示す。従来品のデータは、四角印で示す。
【0038】
図6に示すように、本発明品A〜Cの間で比較すると、背面空気層300の厚さが最も厚い本発明品Cにおいて、最も高い吸音効果を得られることが分かる。また、同じ厚さを有する本発明品Cと従来品との間で比較すると、本発明品Cのほうが、630Hz付近を中心として、最大で0.3も高い吸音率を得られることが分かる。このように、実験結果からも、本発明品が、従来品に比べて大幅に吸音性能が向上したものであり、吸音部材としての有効性が高いことが実証された。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、板状吸音部材100は、取付面200に固定されたときに取付面200との間に空間を形成する立体形状を有するので、単体で背面空気層300を形成することができる。すなわち、スペーサを不要とすることができ、コストを抑えることができる。
【0040】
また、板状吸音部材100は、高分子繊維から成る母材層130と高分子フィルムの膜層140とから成るので、高い吸音効果を発揮することができる。
【0041】
また、母材層130は、高分子繊維不織布を圧縮したものであるため、吸音性能を保持しつつ適度な硬さを得ることができ、立体形状を維持することができる。
【0042】
また、膜層140は、高分子フィルムを母材層130に融着したものであるため、内部摩擦による吸音効果を向上させることができる。更に、高分子フィルムが融着された側を通過する空気の清浄性を保ち、かつ、通過空気の摩擦損失を抑えた状態で、より高い吸音性能を得ることができる。
【0043】
また、熱加圧成型または真空成型により立体成型を行うので、複雑な形状の取付面200に対しても適用が容易である。
【0044】
また、吸音材としてポリエステル繊維を用いるので、ウレタンフォーム等の従来の多孔質材料に比べて、耐久性、作業環境性、およびリサイクル性において優れた吸音部材を提供することができる。
【0045】
ここで、板状吸音部材100の具体的な適用対象の一例として、呼吸器疾患の患者が在宅で酸素を吸入する在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)において使用される吸着型酸素濃縮器(PSA:pressure swing adsorption)を考える。
【0046】
吸着型酸素濃縮器は、通常、患者の近くに配置され、患者の就寝中も継続して使用される。したがって、酸素濃縮器は、至近距離で動作していても患者の安眠を妨げない程度の静音性が求められる。
【0047】
吸着型酸素濃縮器における音の発生源は、例えば、コンプレッサ、冷却用ファン、マニホールド、シーブベッド等である。また、これらは、カバーあるいやケーシング等の筐体の内部に格納されている。
【0048】
したがって、筐体の内壁を取付面200として、板状吸音部材100を作製して固定することが考えられる。または、各部を個別に覆う筐体を設け、その筐体の内壁に板状吸音部材100を固定することが考えられる。これにより、吸着型酸素濃縮器の動作音の騒音レベルおよび音圧レベルを低減することができ、機器の静音性に関する付加価値を向上させることができる。
【0049】
また、吸着型酸素濃縮器からは、原料空気あるいは冷却空気の流路の音が、吸気口や排気口を介して外部に漏れる。したがって、これら空気の流路の内壁に板状吸音部材100を固定することが考えられる。なお、原料空気の流路に板状吸音部材100を配置する場合には、原料空気が通過する側に膜層140を配置することにより、母材層130が原料空気と直接に接触するのを防ぐことができ、装置の耐久性および安全性を向上させることができる。
【0050】
なお、吸着型酸素濃縮器以外にも、動作音を発生させる各種機器を覆う筐体の内面、機械室や楽器練習室の壁および天井にも、板状吸音部材100を適用することができる。特に、静音性および安全性が要求される医療用人工呼吸器、CPAP(continuous positive airway pressure)装置等の医療用機器に好適である。
【0051】
また、板状吸音部材100には、後付けが容易であるというメリットや、立体形状の工夫や配置の工夫によって高いデザイン性を発揮することができるというメリットがある。これらのメリットは、特に、上述の建築構造への適用において価値が高い。
【0052】
以下、本実施の形態の変形例として、板状吸音部材100の立体形状の他の例について説明する。
【0053】
(変形例1)
図6に示す実験結果を再度検討すると、本発明品A〜Cの間の間で周波数ごとに吸音率を比較したとき、800Hzでは本発明品Bの吸音率が最も高い。すなわち、背面空気層300の厚さの違いによる吸音率の優劣は、周波数によって異なる。したがって、背面空気層300を場所によって異なる厚さにし、複数の背面空気層300の厚さを用意することにより、より好ましい吸音特性を得ることが可能である。
【0054】
図7は、本実施の形態の変形例1に係る板状吸音部材の形状を示す概略斜視図であり、図1に対応するものである。図1と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0055】
図7に示すように、板状吸音部材100の非接触領域120は、低領域120−1と、低領域120−1よりも隆起した高領域120−2とを有する。例えば、低領域120−1は、背面空気層300の厚さを10mmとする領域であり、高領域120−2は、背面空気層300の厚さを15mmとする領域である。このような板状吸音部材100によれば、単一の背面空気層300の厚さでは得られない吸音特性を、1つの部材で得ることができる。
【0056】
(変形例2)
非接触領域120の外縁部分の形状を複雑化したり、個々の非接触領域120の面積を小さくすることにより、非接触領域120の強度を向上させることができる。また、非接触領域120による膜吸音の特性は、非接触領域120の形状や大きさによって異なる。したがって、形状や大きさが異なる非接触領域120を複数用意することにより、より好ましい吸音特性を得ることが可能である。
【0057】
図8は、本実施の形態の変形例2に係る板状吸音部材の形状を示す概略斜視図であり、図1に対応するものである。図1と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0058】
図8に示すように、板状吸音部材100の非接触領域120は、小さい矩形領域120−3と、大きい円形領域120−4とを有する。このような板状吸音部材100によれば、各非接触領域120の強度を向上させることができ、更に、単一の非接触領域120では得られない吸音特性を、1つの部材で得ることができる。
【0059】
(変形例3)
板状吸音部材の立体形状を、装置部や部品の形状に合わせることにより、既存のスペースを有効活用する形で吸音を行うことができる。本変形例は、上述の吸着型酸素濃縮器のコンプレッサを覆うケースの内壁に取り付けられる板状吸音部材の例である。
【0060】
図9〜図11は、本実施の形態の変形例3に係る板状吸音部材の形状を示す概略斜視図であり、図7および図8に対応するものである。図7および図8と同一部分には同一符号を付し、これに付いての説明を省略する。また、図12は、図9に示す板状吸音部材のケースへの取付例を示す概略斜視図である。
【0061】
図9に示す板状吸音部材100aは、コンプレッサの軸方向に平行な側面に取り付けるための板状吸音部材である。図10に示す板状吸音部材100bは、コンプレッサの軸方向に直交する側面に取り付けるための板状吸音部材である。図11に示す板状吸音部材100cは、コンプレッサを挟んで板状吸音部材100aに対向する側の側面取り付けるための板状吸音部材である。
【0062】
板状吸音部材100a〜100cは、コンプレッサの外形に沿った形状の接触領域110または低領域120−1を有している。各板状吸音部材100a〜100cは、図12に示す板状吸音部材100aのように、コンプレッサ400を覆うケース500の内壁のうち、対応する位置および向きで取り付けられる。これにより、コンプレッサ400とケース500との隙間に、高領域120−2および低領域120−1を配置することができ、既存のスペースを有効活用して、吸音を行うことができる。
【0063】
なお、以上説明した実施の形態では、取付面200が矩形平面である場合について説明したが、取付面200は他の形状であってもよい。この場合には、板状吸音部材100の形状のうち、接触領域110の形状を取付面200の形状に合わせ、非接触領域120の形状を取付面200から所望の距離となるように設定すればよい。また、取付面200が平面以外の立体形状である場合には、板状吸音部材100を平面形状とすることも可能である。
【0064】
また、複数の板状吸音部材100の組み合わせにより1つの背面空気層300が形成するように、個々の板状吸音部材100の立体形状を設定してもよい。
【0065】
また、板状吸音部材100の取付面200への固定の形態は、各種形態を採用することができる。例えば、取付面200の縁に枠を設け、この枠に、板状吸音部材100の端部を差し込むようにしてもよい。また、接着剤を用いて接触領域110を取付面200に接着させるようにしてもよい。
【0066】
また、1つの板状吸音部材100または複数の板状吸音部材100を組み合わせた部材を、筐体の内面の形状に嵌る形状としてもよい。この場合には、取付面200への連結部材を省略または簡略化することが可能となる。
【0067】
また、取付面200に対して3点以上の点で接触するように構成されている場合には、より少ない接触領域110の面積で、板状吸音部材100を取付面200に対して固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態に係る板状吸音部材の形状を示す概略斜視図
【図2】本実施の形態に係る板状吸音部材の断面形状を示す断面図
【図3】本実施の形態に係る板状吸音部材の生産方法の一例を示す図
【図4】本実施の形態に係る板状吸音部材の生産方法の他の例を示す図
【図5】本実施の形態における実験に用いられた板状吸音部材の外形を示す図
【図6】本実施の形態における吸音効果に関する実験データを示す図
【図7】本実施の形態の変形例1に係る板状吸音部材の形状を示す概略斜視図
【図8】本実施の形態の変形例2に係る板状吸音部材の形状を示す概略斜視図
【図9】本実施の形態の変形例3に係る板状吸音部材の形状を示す第1の概略斜視図
【図10】本実施の形態の変形例3に係る板状吸音部材の形状を示す第2の概略斜視図
【図11】本実施の形態の変形例3に係る板状吸音部材の形状を示す第3の概略斜視図
【図12】本実施の形態の変形例3に係る板状吸音部材の取付例を示す概略斜視図
【符号の説明】
【0069】
100 板状吸音部材
101 複合ボ−ド
110 接触領域
111 孔
120 非接触領域
130 母材層
131 ポリエステル繊維不織布
140 膜層
141 高分子フィルム
151 凸型の金型
152 凹型の金型
200 取付面
300 背面空気層
400 コンプレッサ
500 ケース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の表面に固定される板状吸音部材であって、
高分子繊維から成る不織布の母材層と高分子フィルムの膜層とから構成され、前記表面に固定されたときに前記表面との間に空間を形成する立体形状を有する、
板状吸音部材。
【請求項2】
前記母材層は、高分子繊維から成る不織布を圧縮した素材であり、前記膜層は、前記高分子フィルムを前記母材層の表面に熱融着した素材である、
請求項1記載の板状吸音部材。
【請求項3】
前記表面に固定されたときに前記表面に対して3点以上の点または所定面積以上の面積で接触する接触領域と、前記構造体の表面に固定されたときに前記表面と接触しない非接触領域とを有する、
請求項1記載の板状吸音部材。
【請求項4】
前記立体形状によって形成される前記空間は、前記非接触領域と前記表面との間で閉じられる空間である、
請求項3記載の板状吸音部材。
【請求項5】
前記立体形状によって形成される前記空間の厚さは、一定である、
請求項1記載の板状吸音部材。
【請求項6】
前記立体形状によって形成される前記空間の厚さは、場所によって異なる、
請求項1記載の板状吸音部材。
【請求項7】
構造体の表面に固定される板状吸音部材を生産するための板状吸音部材生産方法であって、
高分子繊維から成る不織布の表面または内部に高分子フィルムを配置する積層工程と、
前記不織布および前記高分子フィルムを、前記立体形状に一体的に成型する成型工程と、を有する、
板状吸音部材生産方法。
【請求項8】
前記積層工程は、
前記不織布の表面に高分子フィルムを配置し、
前記成型工程は、
前記不織布および前記高分子フィルムに対して熱加圧処理を行うことにより、前記不織布を圧縮した素材から成る母材層の表面に前記高分子フィルムの膜層が熱融着された板状複合部材を生成する板状複合部材生成工程と、
前記板状複合部材を、前記表面に固定されたときに前記表面との間に空間を形成する立体形状に立体成型する立体成型工程と、を有する、
請求項7記載の板状吸音部材生産方法。
【請求項9】
前記立体成型は、真空成型により行う、
請求項8記載の板状吸音部材生産方法。
【請求項10】
前記立体成型は、熱加圧成型により行う、
請求項8記載の板状吸音部材生産方法。
【請求項11】
前記積層工程は、
前記不織布の表面に高分子フィルムを配置し、
前記成型工程は、
前記不織布および前記高分子フィルムに対して熱加圧立体成型を行うことにより、前記不織布を圧縮した素材から成る母材層の表面に前記高分子フィルムの膜層が熱融着された板状吸音部材を生成する、
請求項7記載の板状吸音部材生産方法。
【請求項12】
前記不織布は、縦配向である、
請求項7記載の板状吸音部材生産方法。
【請求項13】
前記板状吸音部材の立体形状は、前記表面に固定されたときに前記表面に対して3点以上の点または所定面積以上の面積で接触する接触領域と、前記表面に固定されたときに前記表面と接触しない非接触領域とを有する形状である、
請求項7記載の板状吸音部材生産方法。
【請求項14】
前記板状吸音部材の立体形状によって形成される前記空間は、前記板状吸音部材が前記構造体の表面に固定されたときに前記非接触領域と前記表面との間で閉じられる空間である、
請求項13記載の板状吸音部材生産方法。
【請求項15】
前記立体形状によって形成される前記空間の厚さは、一定である、
請求項13記載の板状吸音部材生産方法。
【請求項16】
前記立体形状によって形成される前記空間の厚さは、場所によって異なる、
請求項13記載の板状吸音部材生産方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−122606(P2010−122606A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298132(P2008−298132)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【出願人】(595122187)ブリヂストンケービージー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】