説明

板状茶色系顔料

【課題】レピドクロサイト型板状チタン酸を用いた顔料及びそれを含有する化粧料を提供する。
【解決手段】所定比のKCO、LiCO、Ti0、FeCL等の主原料とKMoO、NaCl、KCl等のフラックスを混合し900℃から1100℃で数時間反応させた後、フラックス成分を洗浄して得られた化学式K3x+yLiTi2−x−yFe(但し、0.2≦x≦0.3、0.05≦y≦0.5)の板状茶色系顔料を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状茶色系顔料及びそれを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料には種々の着色顔料が使われている。例えば、色むらが無く、滑り性の良い酸化鉄を被覆した板状硫酸バリウム(特許文献1:特開2000−265154号公報)、紫外線遮蔽効果に優れ、展着性、配向性、隠蔽性に優れた金属化合物を低結晶性のシリカにより内包して複合化した粒子(特許文献2:特開平11−11927号公報)、使用時に色調のくすみ等がなく、色調の鮮明さを維持できるフッ素化合物で表面処理した着色料(特許文献3:特開平3−246210号公報)、白色顔料と有色顔料の色分かれ防止を改善した鉄含有二酸化チタン(特許文献4:特開平7−69636号公報)等が使用されている。
一方、レピドクロサイト型板状チタン酸に関して発明者等は研究開発を継続して実施しており、紫外線遮蔽効果に優れ、滑り性の良いレピドクロサイト型板状チタン酸として特許文献5(特開2006−316107号公報)、光輝性顔料として特許文献6(特開2008−162971号公報)を提案している。また、製造方法として特許文献7、8(特許第3062497号公報、特許第4091337号公報)が知られている。レピドクロサイト型板状チタン酸について、着色顔料としての応用はなされていない。
【特許文献1】特開2000−265154号公報
【特許文献2】特開平11−11927号公報
【特許文献3】特開平3−246210号公報
【特許文献4】特開平7−69636号公報
【特許文献5】特開2006−316107号公報
【特許文献6】特開2008−162971号公報
【特許文献7】特許第3062497号公報
【特許文献8】特許第4091337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レピドクロサイト型板状チタン酸を用いた顔料及びそれを含有する化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を備えている。
(1)化学式K3x+yLiTi2−x−yFe(但し、0.2≦x≦0.3、0.05≦y≦0.5)の板状茶色系顔料。
(2)色調がL*a*b*表色系においてa*=4〜15、b*=15〜26であることを特徴とする(1)に記載の板状茶色系顔料。
(3)粒子の平均厚みが0.1μm〜1μm、平均長径が10〜100μmであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の板状茶色系顔料。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の板状茶色系顔料を含有する化粧料。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載の板状茶色系顔料を含有する粉末化粧料。
【発明の効果】
【0005】
紫外線遮蔽効果を有し、滑り性に優れ、光沢性に優れ、濡れによる色調変化が少ないレピドクロサイト型板状チタン酸を用いた顔料が実現できた。そして、それを含有する化粧料を提供することできる。色は茶色系である。
本発明の顔料は、化学式K3x+yLiTi2−x−yFe(但し、0.2≦x≦0.3、0.05≦y≦0.5)のレピドクロサイト型板状チタン酸結晶粒子が有用な板状茶色系顔料である。L*a*b*表色系においてa*=4〜15、b*=15〜26である着色顔料を提供できる。平均厚みが0.1μm〜1μm、平均長径が10〜100μmであって、滑らかで優れた滑り性を発揮することができる。
このような顔料は、紫外線遮蔽性が良好で、濡れによる色変化が少なく、皮膚塗布性能が良好であるので、化粧料用顔料として優れており、粉末化粧料として適している。正常な肌色を現す着色顔料として配合することが適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の板状茶色系顔料はレピドクロサイト型板状チタン酸結晶粒子であり、次の化学式で表される。K3x+yLiTi2−x−yFe(但し、0.2≦x≦0.3、0.05≦y≦0.5)。
本発明の板状茶色系顔料は薄茶色〜濃茶色であり、色調がL*a*b*表色系においてa*=4〜15、b*=15〜26であることが好ましい。
本発明の板状茶色系顔料は平均厚みが0.1μm〜1μm、平均長径が10〜100μmであることが好ましい。
本発明の板状茶色系顔料の径の測定は以下の方法による。走査型電子顕微鏡観察により、その粒子の板状面における最長部分の長さの平均値を平均長径、その粒子の厚み方向の最長さの平均値を平均厚みとした。
本発明の板状茶色系顔料は、例えば所定比のKCO,LiCO,TiO,FeCl,等の主原料とフラックスとして例えばK2MoO4,NaCl,KCl等を混合し900℃から1100℃で数時間反応させた後、フラックス成分を洗浄して得ることができるが、より安定した形状の粒子を形成するためには、好ましくはKClをフラックスとするのがよい。
【0007】
本発明の板状茶色系顔料は、油剤や水へのなじみを向上させたり、化粧料に耐水性、耐油性を付与したりするために一般油剤処理、金属石鹸処理、シリコン化合物処理、アルキルリン酸処理、パーフルオロアルキル基を有する化合物処理、アミノ酸処理、レシチン処理、コラーゲン処理等の表面処理をしてから用いてもよい。
【0008】
本発明の化粧料には、植物油のような油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子のような高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤、等を含有させることができる。ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0009】
油脂類として、例えば、ツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、モクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類が挙げられる。炭化水素類として、例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
高級脂肪酸として、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
【0010】
高級アルコールとして、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
シリコンとして、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、環状ポリシロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0011】
アニオン界面活性剤として、例えば、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸、スルホコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤として、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
両性界面活性剤として、例えば、アルキルベタイン、アミドベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
非イオン界面活性剤として、例えば、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体が挙げられる。
【0012】
防腐剤として、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン等を挙げることができる。
金属イオン封鎖剤として、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を挙げることができる。
高分子として、例えば、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、デキストラン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、メチルセルロース、メチルハイドロキシプロピルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL等)等のビニル系高分子、等を挙げることができる。
増粘剤として、カラギーナン、トラガカントガム、クインスシード、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、CMC、ハイドロキシエチルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト等を挙げることができる。
粉末成分として、例えば、タルク、カオリン、雲母、シリカ、ゼオライト、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、セルロース粉末、無機白色顔料、無機赤色系顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ等のパール顔料、赤色201号、赤色202号等の有機顔料を挙げることができる。
【0013】
紫外線吸収剤として、例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2,4−ジハイドロキシベンゾフェノン、等を挙げることができる。
紫外線遮断剤として、例えば、酸化チタン、タルク、カルミン、ベントナイト、カオリン、酸化亜鉛等を挙げることができる。
保湿剤として、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0014】
薬効成分として、例えば、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB類、ピリドキシン塩酸塩等のB類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD、コレカルシフェロール等のビタミンD類、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類を挙げることができる。
プラセンタエキス、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ブナの木エキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、γ−オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等を挙げることができる。
さらに、カミツレエキス、パセリエキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、コメヌカエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物を挙げることができる。
【実施例1】
【0015】
TiO:3.4054g、LiCO:0.24g、KCO:1.355g、KCl:5g、FeCl・4H0:0.34gを秤量し、乳鉢を用いて、約10分間混合した。1000℃で5時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約1時間攪拌した。得られた粉体を濾別し、粉体を80℃の温水でさらに約15分間攪拌した。粉体を濾別し、150℃で1時間乾燥した。得られた板状茶色系顔料の組成式はK0.835Li0.256Ti1.677Fe0.067である。
【実施例2】
【0016】
TiO:6.81g、LiCO:0.48g、KCO:2.71g、KCl:11.388g、Fe(NO・9H0:1.388gを秤量し、乳鉢を用いて、約30分間混合した。950℃で5時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約3時間攪拌した。得られた粉体を濾別し、150℃で1時間乾燥した。得られた板状茶色系顔料の組成式はK0.835Li0.256Ti1.677Fe0.067である。
【実施例3】
【0017】
TiO:6.81g、LiCO:0.48g、KCO:2.71g、KCl:11.388g、Fe(NO・9H0:1.388gを秤量し、乳鉢を用いて、約30分間混合した。1100℃で5時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約3時間攪拌した。得られた粉体を濾別し、150℃で1時間乾燥した。得られた板状茶色系顔料の組成式はK0.835Li0.256Ti1.677Fe0.067である。
【実施例4】
【0018】
TiO:3.405g、LiCO:0.24g、KCO:1.355g、KCl:5.6068g、Fe(CHCOCHCOCH:0.6068gを秤量し、乳鉢を用いて、約30分間混合した。950℃で5時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約3時間攪拌した。得られた粉体を濾別し、150℃で1時間乾燥した。得られた板状茶色系顔料の組成式はK0.835Li0.256Ti1.677Fe0.067である。
【実施例5】
【0019】
TiO:3.405g、LiCO:0.24g、KCO:1.355g、KCl:5.6068g、Fe(CHCOCHCOCH:0.6068gを秤量し、乳鉢を用いて、約30分間混合した。1100℃で5時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約3時間攪拌した。得られた粉体を濾別し、150℃で1時間乾燥した。得られた板状茶色系顔料の組成式はK0.835Li0.256Ti1.677Fe0.067である。
【実施例6】
【0020】
TiO:3.405g、LiCO:0.24g、KCO:1.355g、KCl:6.7278g、Fe(CHCOCHCOCH:1.7278gを秤量し、乳鉢を用いて、約30分間混合した。950℃で5時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約1時間攪拌した。得られた粉体を濾別し、150℃で1時間乾燥した。得られた板状茶色系顔料の組成式はK0.90Li0.24Ti1.58Fe0.18である。
【実施例7】
【0021】
TiO:3.405g、LiCO:0.24g、KCO:1.355g、KCl:9.1965g、Fe(CHCOCHCOCH:4.1965gを秤量し、乳鉢を用いて、約30分間混合した。950℃で5時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約1時間攪拌した。得られた粉体を濾別し、150℃で1時間乾燥した。得られた板状茶色系顔料の組成式はK1.02Li0.21Ti1.40Fe0.39である。
【実施例8】
【0022】
TiO2:136.2g、Li2CO3:9.6g、K2CO3:54.2g、KCl:215.8g、赤酸化鉄(α-Fe2O3、純分:Fe2O3として99.2%):15.8gを秤量し、撹拌混合機にて20分間混合し、ハンマーミルを用いて粉砕した。950℃で3時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約1時間撹拌した。得られた粉体を濾別し、130℃で12時間乾燥した。得られた板状茶色系顔料の組成はK0.90Li0.24Ti1.58Fe0.18O4である。
【実施例9】
【0023】
TiO2:136.2g、Li2CO3:9.6g、K2CO3:54.2g、KCl:217.7g、黄酸化鉄(α-FeOOH、純分:Fe2O3として88.9%):17.7gを秤量し、撹拌混合機にて20分間混合し、ハンマーミルを用いて粉砕した。950℃で3時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約1時間撹拌した。得られた粉体を濾別し、130℃で12時間乾燥した。得られた板状茶色系顔料の組成はK0.90Li0.24Ti1.58Fe0.18O4である。
【実施例10】
【0024】
TiO2:136.2g、Li2CO3:9.6g、K2CO3:54.2g、KCl:215.7g、黒酸化鉄((FeO)x(Fe2O3)y、純分:Fe2O3として99.8%):15.7gを秤量し、撹拌混合機にて20分間混合し、ハンマーミルを用いて粉砕した。950℃で3時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約1時間撹拌した。得られた粉体を濾別し、130℃で12時間乾燥した。得られた板状茶色系顔料の組成はK0.90Li0.24Ti1.58Fe0.18O4である。
【0025】
〔比較例1〕鉄を含有しない板状チタン酸
TiO:5.675g、LiCO:0.40g、KCO:2.26g、KCl:8.35gを秤量し、乳鉢を用いて、約30分間混合した。1000℃で3時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約1時間攪拌した。得られた粉体を濾別し、150℃で1時間乾燥した。得られた板状チタン酸の組成式はK0.81Li0.27Ti1.73である。
【0026】
〔比較例2〕鉄の換わりにクロムを含有させた顔料
TiO:3.4054g、LiCO:0.24g、KCO:1.355g、KCl:5g、Cr(NO・9H0:0.69gを秤量し、乳鉢を用いて、約10分間混合した。1000℃で5時間焼成し、80℃の温水中に焼成物を投入し、約1時間攪拌した。得られた粉体を濾別し、粉体を80℃の温水でさらに約15分間攪拌した。粉体を濾別し、150℃で1時間乾燥した。得られた顔料の組成式はK0.835Li0.256Ti1.677Cr0.067である。
【0027】
実施例1〜10の板状茶色系顔料の平均長径、平均厚みを走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、いずれも平均厚みが0.1μm〜1μm、平均長径が10〜100μmの範囲内であった。
【0028】
色調の目視評価
実施例1〜10の板状茶色系顔料は薄茶色〜濃茶色であった。一方、比較例1の板状チタン酸及び比較例2の鉄に換えてクロムを含有する顔料は白色であり、着色顔料としては不適であった。
【0029】
分光測色計による色調測定
実施例2,7の板状茶色系顔料の色調を分光測色計により測定した。
装置:コニカミノルタ社製CM−2600d
試料調製方法:3M社製Scotch透明美色(粘着テープ)24mm×35mを5cm切り取り、実施例2、7の板状茶色系顔料を起毛パフで粘着テープ面に均一に塗布した。
結果:結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

SCI:正反射光を含む、SCE:正反射光除去
【0031】
実施例2、7のa*、b*の範囲は、測定モードSCIの値を下限とし、測定モードSCEの値を上限とすると、a*=4〜15、b*=15〜26の範囲であった。
【0032】
なめらかさの官能評価
実施例1と比較例1,2のなめらかさを官能評価した。
顔料を肌の上に乗せ、顔料を延ばしたときの滑らかさを以下の基準により評価した。
○:とても滑らかである。
△:滑らかであるが少しざらつく。
×:ざらつく。
結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例1、比較例1は滑らかであったが、比較例2はざらついた。実施例1、比較例1、2の走査型電子顕微鏡写真を図1〜3に示す。図1,2は滑らかな板状結晶であるが、図3には針状結晶が含まれており、その結果、比較例2の顔料はざらつくものと考えられる。
【0035】
濡れによる色調変化の評価
実施例2,7の板状茶色系顔料と、色調を類似させた混合顔料について、スクワランで濡らす前後の色調を測定し、濡れによる色調変化を測定した。
まず、顔料の色調を前記「分光測色計による色調測定」に記載した方法で測定した(濡れ前)。
次いで、顔料にスクワランを滴下し、流動性が出てきたところで滴下を止めた。その状態で測色した(濡れ後)。
尚、測定モードは「SCE」とした。
実施例2と実施例2に類似の色調の混合顔料の測定結果を表3に、実施例7と実施例7に類似の色調の混合顔料の測定結果を表4に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
表3、表4において、混合顔料の成分は以下の通りである。
タルク :浅田製粉製タルクJA−46R
黄酸化鉄 :チタン工業製LL−XLO
ベンガラ :チタン工業製R−516−L
硫酸Ba :堺化学工業製板状硫酸バリウムH−LF
黒酸化鉄 :チタン工業製BL−100
【0039】
表3、表4に示したとおり、実施例2、7の板状茶色系顔料は、色調を類似させた混合顔料と比べて、スクワランによる濡れの前後での色調変化が小さいことがわかる。
【0040】
紫外線遮蔽効果
実施例2と比較例1の紫外線遮蔽効果を比較した。紫外線はUVBとUVAの境界波長である320nmで測定した。
1.塗膜用試料の調製
サンプル0.2gに、ひまし油0.2gを加え、フーバーマーラーにて50回転、3回混練を行った。その溶液にクリヤラッカー((株)遠藤化学工業製)1.8gを加えて、塗膜用試料の調製を行った。
2.塗膜作成方法
上記で作成した塗膜用試料を透明ペットフィルム(パナック(株)製 ルミラー 100-T60)上に2〜3滴滴下し、塗膜作成用アプリケーター(間隔0.100mm)にて塗膜を作成した。
3.透過率の測定
上記で作成した塗膜の320nmの透過率を、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、型式:V−570型)にて測定した。
4.結果
結果を表5に示す。
【0041】
【表5】

【0042】
表5に示したとおり、実施例2の320nm透過率は62%であり、紫外線遮蔽効果が認められた。
【実施例11】
【0043】
パウダーファンデーション
成分 配合量(質量%)
1.実施例1の板状茶色系顔料 20
2.シリコン処理タルク 23.4
3.フッ素処理酸化チタン 10
4.アミノ酸処理セリサイト 25
5.シリコン処理黄酸化鉄 5
6.シリコン処理ベンガラ 2.5
7.シリコン処理黒酸化鉄 0.1
8.メチルポリシロキサン(100cst) 11
9.リンゴ酸ジイソステアリル 3
成分1〜7をヘンシェルミキサーで5分間攪拌した後、よく混合した8、9を徐々に添加し、ハンマーミルにて粉砕する。その後、中皿にプレスする。
【実施例12】
【0044】
アイシャドウ
成分 配合量(質量%)
1.実施例2の板状茶色系顔料 15
2.アミノ酸処理酸化チタン 7
3.シリコン処理マイカ 25
4.アミノ酸処理セリサイト 10
5.ナイロンパウダー 10
6.フッ素処理黄酸化鉄 5
7.フッ素処理ベンガラ 10
8.シリコン処理グンジョウ 3
9.メチルフェニルポリシロキサン 8
10.2−エチルヘキサン酸セチル 7
成分1〜8をヘンシェルミキサーで5分間攪拌した後、よく混合した9、10を徐々に添加し、ハンマーミルにて粉砕する。その後、中皿にプレスする。
【実施例13】
【0045】
クリームファンデーション
成分 配合量(質量%)
1.実施例3の板状茶色系顔料 10
2.シリコン処理酸化チタン 9.4
3.シリコン処理黄酸化鉄 5
4.シリコン処理ベンガラ 2.5
5.シリコン処理黒酸化鉄 0.1
6.シクロメチコン 30
7.メチルフェニルポリシロキサン 10
8.ジメチコンコポリオール 5
9.精製水 20
10.1,3−ブチレングリコール 5
11.グリセリン 3
成分1〜8を均一に混合する。成分8〜11を均一に混合した後、成分1〜8に添加して、乳化混合する。
【実施例14】
【0046】
サンスクリーンクリーム
成分 配合量(質量%)
1.実施例4の板状茶色系顔料 10
2.デカメチルシクロペンタシロキサン 10
3.シリコン処理微粒子酸化チタン 5
4.シリコン処理微粒子酸化亜鉛 5
5.メチルフェニルポリシロキサン 5
6.イソノナン酸イソトリデシル 5
7.ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3 1
8.ジメチコンコポリオール 1
9.ベヘニルアルコール 2
10.ポリメタクリル酸メチル 5
11.トリメチルシロキシケイ酸 1
12.1,3−ブチレングリコール 5
13.塩化ナトリウム 0.5
14.精製水 残余
A:成分2〜9を80℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分1、10、11をA成分に添加して混合する。
C:成分12〜14を80℃に加熱し、均一に混合した後、これをB成分に添加して 乳化混合して室温まで冷却する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1の走査型電子顕微鏡写真を示す図
【図2】比較例1の板状チタン酸の走査型電子顕微鏡写真を示す図
【図3】比較例2のクロム含有走査型電子顕微鏡写真を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式K3x+yLiTi2−x−yFe(但し、0.2≦x≦0.3、0.05≦y≦0.5)の板状茶色系顔料。
【請求項2】
色調がL*a*b*表色系においてa*=4〜15、b*=15〜26であることを特徴とする請求項1に記載の板状茶色系顔料。
【請求項3】
粒子の平均厚みが0.1μm〜1μm、平均長径が10〜100μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の板状茶色系顔料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の板状茶色系顔料を含有する化粧料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の板状茶色系顔料を含有する粉末化粧料。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−106123(P2010−106123A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278480(P2008−278480)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】