説明

架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子、その製造方法、人造大理石用組成物及び人造大理石

【課題】成型時の不飽和ポリエステル樹脂の収縮を抑制でき、外観が良好で、透明性に優れた人造大理石が得られる架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー及び架橋性モノマーを含むモノマー混合物から得られる架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子であり、前記架橋性モノマーが、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部に対して、0.15〜0.40重量部使用され、前記架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子が、110〜220μmの平均粒子径を有し、前記架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子のTHFでの溶出成分量が15〜60重量%であり、前記溶出成分が、25000〜150000の重量平均分子量を有することを特徴とする架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子、その製造方法、人造大理石用組成物及び人造大理石に関する。更に詳しくは、本発明は、人造大理石の成形時の収縮を抑制し、良好な透明性及び表面状態が得られる架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子、その製造方法、人造大理石用組成物及び人造大理石に関する。
【背景技術】
【0002】
天然大理石は、その資源が限られ、値段が高いため、人造大理石がその代わりとして使用されている。人造大理石の製造技術としては、種々の方法が報告されている。
特開平5−330884号公報(特許文献1)には、人造大理石用不飽和ポリエステル樹脂組成物が記載されている、具体的には、その組成物は、不飽和ポリエステル、無機充填材、硬化剤、及びスチレンとメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの架橋共重合体粒子からなり、架橋共重合体粒子は、架橋密度が0.5〜10%で、屈折率が1.50〜1.57であるとされている。この組成物を人造大理石の製造に用いることで、透明性が高く、クラックのない人造大理石が得られるとされている。
【0003】
また、特開2000−129107号公報(特許文献2)には、低収縮性不飽和ポリエステル樹脂組成物が記載され、この組成物は人造大理石の原料として使用できると記載されている。具体的には、その組成物は、不飽和ポリエステルと、架橋ポリスチレン及び非架橋ポリスチレンとを含み、両ポリスチレンが不飽和ポリエステル樹脂に対して特定の範囲で含有されている。
更に、特開昭62−148558号公報(特許文献3)には、不飽和ポリエステル樹脂組成物が記載されている。具体的には、その組成物は、不飽和ポリエステル、重合性モノマー、重合性モノマーに対して易溶性でない物質を表面に有する低収縮剤からなっている。
【0004】
また、特開平6−016707号公報(特許文献4)には、不飽和ポリエステル樹脂組成物が記載されている。具体的には、その組成物は、不飽和ポリエステル樹脂と低収縮剤とからなる。低収縮剤は、スチレン系及び/又はアクリル系のビニルモノマー、架橋剤、重合開始剤、水性溶媒及び懸濁剤を、特定の条件で攪拌することにより得られる架橋重合体粒子である。
【0005】
【特許文献1】特開平5−330884号公報
【特許文献2】特開2000−129107号公報
【特許文献3】特開昭62−148558号公報
【特許文献4】特開平6−016707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開平5−330884号公報の実施例では、40μm以下の粒子径の架橋共重合体粒子が得られている。この程度の粒子径であれば、粒子の膨潤性の不良に由来する外観不良を目視で確認することができない。しかしながら、110μm以上の粒子だと外観不良が観察される。この公報において、架橋性単体に基づく架橋密度を0.5〜10%で調整すると、110μm以上の粒子において、十分な膨潤性を確保することは困難である。また、架橋度を下げると膨潤性が上がるが、その結果、不飽和ポリエステルへの溶解が多くなり、透明性の低下や色むらといった別の外観不良が引き起こされる。
特開2000−129107号公報では、架橋ポリスチレン及び非架橋ポリスチレンの2種類を混合する必要があり製造工程が煩雑である。
【0007】
特開昭62−148558号公報では、易溶性でない物質で表面に粒子を修飾することにより、粒子成分の溶出を抑えている。しかし、修飾工程が煩雑である。
特開平6−016707号公報では、粒子の製造に特殊な機械が必要とされ、一般的な懸濁重合設備で重合することが困難である。
加えて、上記いずれの公報も、100μm以下の小粒子に関しており、そのような小粒子は、濾過工程、洗浄工程及び乾燥工程が非常に繁雑で生産性が悪いという課題がある。また、上記いずれの公報でも、110μm以上の大粒子の検討は行われていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かくして本発明によれば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー及び架橋性モノマーを含むモノマー混合物から得られる架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子であり、前記架橋性モノマーが、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部に対して、0.15〜0.40重量部使用され、前記架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子が、110〜220μmの平均粒子径を有し、前記架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子のTHFでの溶出成分量が15〜60重量%であり、前記溶出成分が、25000〜150000の重量平均分子量を有することを特徴とする架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子と不飽和ポリエステル樹脂とを含むことを特徴とする人造大理石用組成物が提供される。
【0009】
更に、本発明によれば、上記架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子と不飽和ポリエステル樹脂とに由来する成分を含むことを特徴とする人造大理石が提供される。
また更に、本発明によれば、上記架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子の製造方法であって、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー及び架橋性モノマーを含むモノマー混合物を、重合開始剤の存在下で、懸濁重合させることにより架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子を得ることを特徴とする架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子を人造大理石の成型に使用すれば、成型時の不飽和ポリエステル樹脂の収縮を抑制でき、外観が良好で、透明性に優れた人造大理石を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子)
人造大理石を作製する際、その収縮を防止するため、不飽和ポリエステル樹脂に一般的には非架橋の熱可塑性樹脂(ポリスチレン)粒子が低収縮化剤として添加されている。熱可塑性樹脂粒子を用いることにより収縮防止には効果があるが、添加することにより成型品の色むらや透明性の低下(白濁)といった外観不良が起こるといった問題がある。そこで外観不良の問題を解決するために、低収縮化剤として架橋ポリスチレン粒子の開発が行われてきた。
【0012】
しかし、架橋ポリスチレン粒子を添加することにより色むらは防止できるが、十分な低収縮効果を出すためには多量に添加する必要がある。また、この架橋ポリスチレン粒子には、一般的には、1〜100μm程度の粒子が使用されているが、このような粒子を製造するには、微粉体であるが故、一般的な懸濁重合設備で重合することが困難であり、濾過工程、洗浄工程及び乾燥工程が非常に繁雑で生産性が悪いという課題がある。
【0013】
一般的な懸濁重合設備で100μm以上の粒子の製造は比較的容易ではある。しかし、100μm以上の架橋ポリスチレン粒子を使用したとき、これまでに検討されてきた条件では粒子径が大きいために、架橋ポリスチレン粒子によって表面平滑性が損なわれ、外観不良になるという課題がある。また、100μm以上の粒子を機械的に粉砕し微粉末にする方法があるが、新たな工程が必要である上に粒度の管理が困難である。
また、1〜100μmと粒子径が小さいとその粒子による光の散乱により、透明性が低下するという課題もある。
【0014】
そこで、本発明の発明者は、研究を進めた結果、
(1)架橋性モノマーが、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部に対して、0.15〜0.40重量部使用され
(2)架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子が、110〜220μmの平均粒子径を有し、
(3)架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子のTHFでの溶出成分量が15〜60重量%であり
(4)溶出成分が、25000〜150000の重量平均分子量を有する
架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子(単に、架橋共重合体粒子とも称する)を使用するとき、外観不良を起こすことなく透明性の高い人造大理石が得られることを見い出し、本発明に到っている。(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0015】
架橋性モノマーを0.40重量部より多くすることにより、人造大理石を構成する不飽和ポリエステル樹脂への架橋共重合体粒子溶解を抑制できる。しかし、架橋度が高くなると不飽和ポリエステル樹脂で十分に膨潤せず、低収縮効果が下がる上に膨潤不足のため、人造大理石に粒子由来の巣(粒子抜けによるブツブツ)ができ外観が損なわれてしまう。反対に0.15重量部より少なくすると膨潤はするが、不飽和ポリエステル樹脂への溶解量が多くなってしまい、その溶解した成分により色むらがおこり外観が不良や透明性が損なわれる。より好ましい、架橋性モノマーの量は、0.20〜0.30重量%である。
【0016】
平均粒子径が110μm未満だと、架橋共重合体粒子の個数が相対的に多くなるため、人造大理石の透明性が低下することがある。220μmより大きいと、大きいがために成型後に粒子抜けが起こり、表面にブツブツが出、表面平滑性が低下することがある。より好ましい平均粒子径は、120〜170μmである。
溶出成分量が15重量%未満だと、不飽和ポリエステル樹脂で十分に膨潤せず、低収縮効果が下がる上に膨潤不足のため、人造大理石に粒子由来の巣(粒子抜けによるブツブツ)ができ外観が損なわれてしまう。60重量%より多くすると膨潤はするが、不飽和ポリエステル樹脂への溶解量が多くなってしまい、その溶解した成分により色むらがおこり外観が不良や透明性が損なわれる。より好ましい、溶出成分量は、20〜40重量%である。
【0017】
溶出成分の重量平均分子量が25000未満だと、人造大理石の透明性が低下することがある。150000より大きいと、人造大理石の透明性が低下することがあると共に、不飽和ポリエステル樹脂との混練時の粘度が高くなり作業性が損なわれることがある。より好ましい重量平均分子量は、50000〜80000である。
スチレン系モノマーとしては、スチレンの他、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。これらは1種又は複数種組み合わせて使用できる。
【0018】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸の誘導体、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸プロポキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸メトキシジエチレングリコール、アクリル酸エトキシジエチレングリコール、アクリル酸メトキシエチレングリコール、アクリル酸ブトキシトリエチレングリコール、アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、アクリル酸フェノキシテトラエチレングリコール、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ジシクロペンテニル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸N−ビニル−2−ピロリドン、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、あるいはメタクリル酸、メタクリル酸の誘導体、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸プロポキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸エトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシエチレングリコール、メタクリル酸ブトキシトリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシジプロピレングリコール、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェノキシジエチレングリコール、メタクリル酸フェノキシテトラエチレングリコール、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸N−ビニル−2−ピロリドン、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル等が挙げられる。これらは1種又は複数種組み合わせて使用できる。
【0019】
架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,5−ペンタンジオールメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは1種又は複数種組み合わせて使用できる。
【0020】
上記スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー及び架橋性モノマーを含むモノマー混合物が、更に他のモノマーを含んでいてもよい。そのような他のモノマーとしては、酢酸ビニル、塩化ビニル、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステル、トリアリールイソシアヌレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル系モノマーの使用割合は、スチレン系モノマー100重量部に対して、5〜50重量部であることが好ましい。50重量部より多い及び5重量部より少ない場合、人造大理石に使用される不飽和ポリエステル樹脂との屈折率差が大きくなり、外観が損なわれる場合がある。より好ましい使用割合は、30〜40重量部である。なお、架橋性モノマーの使用割合は、上記している。
【0021】
好ましいモノマー混合物は、スチレン及び/又はα−メチルスチレンからなるスチレン系モノマーと、メタクリル酸メチル及び/又はアクリル酸ブチルからなる(メタ)アクリル系モノマーと、ジビニルベンゼンからなる架橋性モノマーとの混合物である。このようなモノマー混合物を使用すれば、成型時の不飽和ポリエステル樹脂の収縮をより抑制でき、外観がより良好で、透明性により優れた人造大理石を提供できる。
特に、10〜90重量%のスチレンと、5〜20重量%のアクリル酸ブチルと、任意成分として0〜30重量%のメタクリル酸メチルとを含むモノマー混合物を使用することが好ましい(但し、3成分の合計は100重量%である)。このようなモノマー混合物を使用すれば、成型時の不飽和ポリエステル樹脂の収縮を特に抑制でき、外観が特に良好で、透明性に特に優れた人造大理石を提供できる。
【0022】
(架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子の製造方法)
本発明の架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子は、種々の方法により製造できる。例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー及び架橋性モノマーを含むモノマー混合物を、重合開始剤の存在下で、懸濁重合させることにより得ることができる。懸濁重合は、通常、水性媒体中で行われる。
【0023】
重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過安息香酸2−エチルヘキシル、過酸化アセチル、過酸化イソブチリル、過酸化オクタノイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジtert−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、4,4,6−トリメチルシクロヘキサノンジtert−ブチルペルオキシケタール、シクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、シクロヘキサノンジ−tert−ブチルペルオキシケタール、アセトンジ−tert−ブチルペルオキシケタール、ジイソプロピルヒドロペルオキシド等が挙げられる。重合開始剤は、モノマー混合物100重量部に対して、0.3〜5重量部の範囲で使用されることが好ましい。使用量が0.3重量部未満では、重合時間が長くなり、かつ架橋共重合体粒子の粒度分布が広くなることがある。一方、使用量が5重量部を越える場合、その使用量に見合う効果が期待できない。
【0024】
水性媒体としては、特に限定されず、水、又は水と水溶性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体は、モノマー混合物100重量部に対して、100〜400重量部の範囲で使用することが好ましく、120〜200重量部の範囲で使用することがより好ましい。
また、水性媒体には界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をいずれも使用できる。
【0025】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、コハクスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0026】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0027】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
上記界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤の添加量は、水性媒体100重量部に対して0.001〜0.05重量部とできる。
【0028】
また、架橋共重合体粒子の製造には、懸濁安定剤を用いてもよい。懸濁安定剤としては、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、酸化チタン、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、ベンガラ、カーボンブラック、ガラス、金属粉、デンプン粉、セルロース粉、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸の金属塩、ポリメタクリル酸の金属塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
重合温度は、70〜100℃であることが好ましく、更に好ましくは80〜90℃である。重合時間は、2〜9時間であることが好ましく、3〜6時間であることがより好ましい。
【0029】
また、重合は、通常、モノマー混合物の液滴が破壊されない程度の攪拌下で行われる。攪拌条件としては、例えば、攪拌羽根の周速度が150〜400rpmで規定される条件が挙げられる。
得られた架橋共重合体粒子は、例えば、吸引ろ過、遠心脱水、遠心分離、加圧脱水、水洗、乾燥等の工程を経ることで、水性媒体から単離できる。
【0030】
(人造大理石用組成物)
本発明によれば、上記架橋共重合体粒子と不飽和ポリエステル樹脂とを含む人造大理石用組成物が提供される。架橋共重合体粒子は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、5〜30重量部含まれていることが好ましい。5重量部より少ないと、成型時の不飽和ポリエステル樹脂の収縮の抑制が不十分となることがある。30重量部より多いと、粒子抜けの増加や、透明性の低下が生じることがある。
【0031】
不飽和ポリエステル樹脂としては、酸成分とアルコール成分との重合体が挙げられる。酸成分としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸又はその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の多塩基酸が挙げられる。一方、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジピロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール、トリメチロールプロパン等のトリオールが挙げられる。
【0032】
また、組成物には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、アクリル酸又はメタクリル酸の低級アルキルエステル、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート等が含まれていてもよい。
更に、組成物には、必要に応じて、ガラス繊維、炭酸カルシウム、アルミナ等の充填剤、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の増粘剤、各種有機過酸化物等の硬化触媒、ステアリン酸のような離型剤、各種染料及び顔料等の着色剤等が添加されていてもよい。
【0033】
(人造大理石)
上記人造大理石用組成物を硬化処理に付すことで人造大理石が得られる。
人造大理石は、例えば、所定の金型内に、上記組成物を充填し、金型を加熱及び加圧する方法で成形できる。成形条件としては、例えば、60〜150℃の成形温度、3〜30分間の成形時間、20〜100kg/cm2の成形圧力の条件が挙げられる。
人造大理石の形状は、特に限定されず、使用用途に応じて適宜決定できる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(重量平均分子量の測定)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、重量平均分子量を測定する。その測定方法は次の通りである。なお、重量平均分子量はポリスチレン(PS)換算重量平均分子量を意味する。
測定装置:東ソー社製 GPC HLC−8020
ガードカラム:TOSOH TSKguardcolumn HHR(S)×1(7.5mmID×7.5cm)
カラム:TOSOH TSK−GEL GMHHR−H(S)×3(7.8mmID×30cm)
【0035】
測定条件:カラム温度(40℃)、移動相(一級THF/45℃)
S.PUMP/R.PUMP流量(0.8/0.5mL/min)
RI温度(35℃)、INLET温度(35℃)
測定時間(55min)、検出器(UV254nm、RI)
測定方法:試料50mgを10mL一級THF(移動相)で一晩放置して溶解し、0.45μm又は0.20μmのフィルターで濾過する。
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製、商品名「shodex」重量平均分子量:1030000と、東ソー社製、重量平均分子量:5480000、3840000、355000、102000、37900、9100、2630、495
【0036】
(溶出成分量の測定)
架橋共重合体粒子1gをTHF40mlで一晩静置し溶出させた。次に、ろ紙(ADVANTEC No.101 185mm)で濾過した後、100℃で1時間乾燥しデシケーターで放冷した。放冷後全重量からろ紙重量を引いて、溶出しなかった試料重量(a)を算出し、架橋共重合体粒子の初期重量(b)〔1g〕から、下記式により溶出成分量(重量%)を求めた。
溶出成分量(重量%)=100−(a)/(b)×100
【0037】
(平均粒子径の測定)
・大粒径(140μmより大きい)の範囲の場合
140μmより大きい平均粒子径は、JIS標準ふるい目開き0.50mm(30メッシュ)、目開き0.425mm(36メッシュ)、目開き0.355mm(42メッシュ)、目開き0.300mm(50メッシュ)、目開き0.250mm(60メッシュ)、目開き0.212mm(70メッシュ)、目開き0.180mm(83メッシュ)、目開き0.150mm(100メッシュ)、目開き0.125mm(120メッシュ)、目開き0.106mm(140メッシュ)、PASS、で分級し、累積重量分布曲線を基にして累積重量が50%となる粒径(メディアン径)を平均粒子径とする。
・小粒径(80〜140μm)の範囲の場合
80〜140μmの平均粒子径は、マルチサイザーII(ベックマンコールター社製)で測定した値である。測定方法はCoulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、400μmアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。
【0038】
具体的には、粒子0.3gを0.1%ノニオン性界面活性剤溶液10ml中にタッチミキサー及び超音波を用いて予備分散させる。予備分散液を、これを本体備え付けの、ISOTON II(ベックマンコールター社製:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、攪拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次に、マルチサイザーII本体にアパチャーサイズを400μm、Currentを3200、Gainを1、Polarityを+と入力(アパチャーサイズ等は必要に応じて変更して入力可能である)してmanualで測定を行う。測定中はビーカー底に粒子が沈降をしない程度に攪拌しておき、粒子を1万個測定した点で測定を終了する。平均粒子径は、この測定値の平均値であり、体積平均粒子径を意味する。
【0039】
(実施例1)
内容積5Lのオートクレーブ中の水2000gに、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウムを10.0g、ネオゲンSL−200(第一工業製薬社製アルキルベンゼンスルホン酸塩)を1.3g入れ分散させた。これに、予め調整しておいたスチレン(以下Stと略記する)1020.8g、メタクリル酸メチル(以下、MMAと略記する)400g、アクリル酸ブチル(以下、BAと略記する)160g、α−メチルスチレン(以下、α−MSと略記する)15.2g、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼン(以下、DVBと略記する)4g、過酸化ベンゾイル(以下、BPOと略記する)15.3gを溶解させた混合液を入れた。次いで、85℃に加熱して、290rpmで攪拌しながら、85℃で5時間、続いて110℃で3時間重合させた。ここで得られた粒子を塩酸にて処理し、洗浄濾過した後、乾燥することで架橋共重合体粒子を得た。平均粒子径は156μmであった。
【0040】
得られた架橋共重合体粒子15重量部、不飽和ポリエステル樹脂(ジャパンコンポジット社製ポリホープ N−38B)100重量部、水酸化アルミニウム(アルコア化成社製B−325)250重量部、ガラス繊維35重量部、硬化剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ社製トリゴノックスR−350)1.25重量部、ステアリン酸7.5重量部をニーダーにて20分混練した。次いで、混練物を、45℃で24時間熟成(静置)後、150℃の金型にて成型を行い、金型から取り出して人造大理石を得た。
【0041】
(実施例2)
架橋共重合体粒子製造時の攪拌機の回転数を315rpmにして架橋共重合体粒子を製造したこと以外は実施例1と同様にして人造大理石を得た。
(実施例3)
架橋共重合体粒子製造時の攪拌機の回転数を250rpmにして架橋共重合体粒子を製造したこと以外は実施例1と同様にして人造大理石を得た。
(実施例4〜8)
スチレン(St)、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸ブチル(BA)、BPO、DVBの値をそれぞれ変えて架橋共重合体粒子を製造したこと以外は実施例1と同様にして人造大理石を得た。
【0042】
(比較例1)
架橋共重合体粒子製造時の攪拌機の回転数を230rpmにして架橋共重合体粒子を製造したこと以外は実施例1と同様にして人造大理石を得た。
(比較例2)
架橋共重合体粒子製造時の攪拌機の回転数を360rpmにして架橋共重合体粒子を製造したこと以外は実施例1と同様にして人造大理石を得た。
(比較例3〜7)
スチレン(St)、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸ブチル(BA)、BPO、DVBの値をそれぞれ変えて架橋共重合体粒子(比較例3は非架橋共重合体粒子)を製造したこと以外は実施例1と同様にして人造大理石を得た。
(比較例8)
人造大理石の成型の際、架橋共重合体粒子を入れないこと以外は実施例1と同様にして人造大理石を得た。
表1に架橋共重合体粒子の製造に使用した原料の配合割合、架橋共重合体粒子の平均粒子径及び重量平均分子量(Mw)を示す。なお、実施例2及び比較例2は、小粒径の平均粒子径の測定方法で測定し、それ以外は大粒径の平均粒子径の測定方法で測定した。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例及び比較例で得られた人造大理石を以下の方法により評価した。
(人造大理石の評価方法)
(透明性)
得られた人造大理石を目視判定した。架橋共重合体粒子(低収縮化剤)を使用していない人造大理石(比較例8)と比較して、ほとんど差が見られない場合を◎、透明性が良好なものを○、透明性が著しく低下し白濁がひどい場合を×とした。
(表面状態、色むら)
得られた人造大理石について表面状態、色むらを目視判定した。架橋共重合体粒子を使用していない人造大理石(比較例8)と比較して、ほとんど差が見られない場合を◎、僅かではあるが、ブツブツが見られるものを○、表面にブツブツ等があり表面平滑性が悪い、色むらがある場合は×とした。
(低収縮性)
得られた人造大理石の反りを観察した。架橋共重合体粒子を使用することにより反りが改善されている場合を○、架橋共重合体粒子を使用していない人造大理石(比較例8)の反り等と同等レベル、又は改善の効果が出ておらず、反りがある場合を×とした。
評価結果を表2に示す。表2では架橋共重合体粒子の配合量も併せて示す。
【0045】
【表2】

【0046】
上記表2から以下のことが分かる。
(架橋性モノマーの量について)
架橋性モノマー量が0.15〜0.40重量部の範囲内の実施例では、透明性、表面状態&色むら、低収縮性の観点がいずれも優れている。
比較例3では、非架橋共重合体粒子を使用しているため、全ての粒子が、比較例4では、架橋性モノマーの成分が微量であるため、架橋共重合体粒子のほとんどが、不飽和ポリエステル樹脂に溶解してしまい、透明性が著しく低下している。比較例5では、架橋性モノマー成分が多いため、低収縮化剤が十分に膨潤せず、その結果、低収縮の効果がでていない。また、粒子抜けがおこり、表面平滑性が損なわれている。
【0047】
(溶出成分の分子量について)
溶出成分の重量平均分子量が25000〜150000の範囲内の実施例では、透明性、表面状態&色むら、低収縮性の観点がいずれも優れている。
比較例6では溶出成分の分子量が低いため、透明性が低下し白濁している。比較例7では、溶出する成分の分子量が高いため色むらが発生している。
【0048】
(平均粒子径について)
平均粒子径が110〜220μmの範囲内の実施例では、透明性、表面状態&色むら、低収縮性の観点がいずれも優れている。
比較例2では平均粒子径が小さいため、低収縮化剤として用いる架橋共重合体粒子の個数が多くなり透明性が低下している。比較例1では平均粒子径が大きいため、粒子抜けが起こった際、抜け痕が目立ち、外観が非常に損なわれている。
【0049】
(まとめ)
以上から、今までは生産が容易な110μm以上の架橋共重合体粒子では、透明性や樹脂浮き等により表面状態が低下するため、人造大理石への使用は困難であった。しかし、本発明によれば、110〜220μmの範囲でも、人造大理石の透明性を維持しつつ、大粒子による表面状態の低下を防止できる。また、架橋共重合体粒子から溶出する成分による透明性、色むらの低下は、架橋性モノマーを0.15〜0.40重量部の範囲とし、重量平均分子量を25000〜150000の範囲とすることにより低減できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー及び架橋性モノマーを含むモノマー混合物から得られる架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子であり、前記架橋性モノマーが、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部に対して、0.15〜0.40重量部使用され、前記架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子が、110〜220μmの平均粒子径を有し、前記架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子のTHFでの溶出成分量が15〜60重量%であり、前記溶出成分が、25000〜150000の重量平均分子量を有することを特徴とする架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子。
【請求項2】
前記平均粒子径が、120〜170μmの範囲である請求項1に記載の架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子。
【請求項3】
前記架橋性モノマー剤の非存在下で、前記スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとを重合させて得られる重合体が、50000〜80000の範囲の重量平均分子量を有する請求項1又は2に記載の架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子。
【請求項4】
前記スチレン系モノマーが、スチレンであり、前記(メタ)アクリル系モノマーが、アクリル酸ブチルと任意にメタクリル酸メチルとからなり、前記スチレン、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸メチルが、それぞれ10〜90重量%、5〜20重量%及び0〜30重量%(但し、3モノマー合計で100重量%である)の範囲で使用される請求項1〜3のいずれか1つに記載の架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子と不飽和ポリエステル樹脂とを含むことを特徴とする人造大理石用組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子と不飽和ポリエステル樹脂とに由来する成分を含むことを特徴とする人造大理石。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子の製造方法であって、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー及び架橋性モノマーを含むモノマー混合物を、重合開始剤の存在下で、懸濁重合させることにより架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子を得ることを特徴とする架橋スチレン−(メタ)アクリル系共重合体粒子の製造方法。

【公開番号】特開2009−242626(P2009−242626A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91548(P2008−91548)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】