説明

架橋性フィルム状接着剤

本発明は、次の成分(A)及び(B)並びに所望による他の添加剤及び/又は補助剤を含有する2成分結合剤系に関する:(A)少なくとも1個のマイケル受容体基及び少なくとも1個のマイケル供与体基を有する少なくとも1種のポリマーであって、1000〜1000000g/molの数平均分子量(M)を有する該ポリマー、及び
(B)マイケル反応を触媒する化合物。本発明は、該結合剤系から製造される2成分系接着剤、注型材料及び被覆材料にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイケル反応によって架橋可能な結合剤系であって、接着剤の結合剤系として使用可能な該結合剤系に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤において使用される2成分結合剤系は一般的に知られている。例えば、2成分系のポリウレタン接着剤が実用上有用であることは実証されている。しかしながら、このようなポリウレタン接着剤には、その製造方法に起因して、揮発性の低分子量イソシアネート成分が未架橋接着剤中に含まれるという欠点がある。この種のイソシアネート成分は、適切に取り扱われない場合には、健康に有害な影響をもたらすことが知られている。このため、架橋系としてイソシアネート基を必要としない接着剤を開発するために多くの研究がなされている。例えば、特許文献1には、接着剤用結合剤系であって、一方の成分が反応性アミノ基を含有し、他方の成分が反応性基として環状カーボネートを含有する該結合剤系が記載されている。
【0003】
別の化学反応はマイケル付加反応であり、この反応には、反応性基としてマイケル供与体が含まれ、また、第2官能基としてマイケル受容体が含まれる。このタイプの系は、例えば、特許文献2に記載されている。この文献においては、多官能性のα,β−不飽和カルボン酸エステル及びポリマー性のβ−ジカルボニル化合物を第2成分として含有する組成物が記載されている。この場合、ポリマーとしては、ポリエステル又はポリエステルアミンが記載されている。
【0004】
特許文献3にも、例えば、ポリマーに基づく結合剤混合物が記載されている。該混合物中の第1成分はα,β−不飽和カルボニル基を有しており、また、第2成分は複数のマロン酸エステル基を有している。この場合、該混合物は、マイケル付加反応を誘発する第3成分として、触媒を含有する。
【0005】
さらに、特許文献4には、多数のマイケル受容体を有するポリマーを第1成分中に存在させると共に、多数のマイケル供与体を有するポリマーを第2成分中に存在させた2成分系が記載されている。この場合、弱塩基性触媒を最終的な結合剤混合物中に含有させなければならない。
【0006】
さらにまた、特許文献5には、マイケル架橋性結合剤系が開示されている。この場合、少なくとも1種の多官能性マイケル供与体、少なくとも1種のマイケル受容体及び強塩基性触媒を含有する混合物層によって支持体が被覆され、次いで、被覆された支持体へ別の支持体が接合される。
【0007】
従来技術による組成物は、いずれも複数のマイケル供与体基を含むポリマー又はオリゴマーを含有する。上記文献においては、第2成分として複数のマイケル受容体基を含むポリマー又はオリゴマーが記載されている。従って、この種の結合剤系は、異なる成分中に両方の反応性ポリマーを存在させた2成分系である。十分な架橋を保証するためには、予め決定される混合比が維持されなければならない。この混合比は、反応成分の官能価によって左右される。正確な混合には細心の注意を必要とする。さらに、多くの場合、この種の組成物の反応性は乏しく、このため、特殊な触媒を使用しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許公報DE10 2004 035542号
【特許文献2】欧州特許公報EP1283235号
【特許文献3】欧州特許公報EP0808860号
【特許文献4】欧州特許公報EP1593727号
【特許文献5】欧州特許公報EP1435383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、多数の適用分野(例えば、異なる材料製の硬質又は軟質の支持体用接着剤、及び構成部材又は塗面用の注型樹脂等の分野)に適した結合剤系であって、両方の架橋性基が1つの成分中に存在すると共に、触媒混合物を第2成分として使用することによって当該混合物の架橋反応が保証される該結合剤系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、下記の成分(A)及び(B)並びに所望による付加的な添加剤及び/又は補助剤を含有する2成分結合剤系によって解決された:
(A)少なくとも1個のマイケル受容体基及び少なくとも1個のマイケル供与体基を有する少なくとも1種のポリマーであって、1000〜1000000g/molの数平均分子量(M)を有する該ポリマー、及び
(B)マイケル反応を触媒する化合物。
【0011】
本発明は、マイケル付加反応によって架橋する接着剤を用いて軟質支持体を接合させる方法にも関する。さらに、本発明は、マイケル付加反応によって架橋する結合剤系に基づく2成分系接着剤にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「接着剤基材ポリマー」は、接着剤の重要な性質、例えば、接着力、引張り接着強さ及び温度挙動等を決定する熱可塑性合成ポリマーを意味する。この種のポリマーとしては、下記のものが例示される:熱可塑性エラストマー;エチレン−ビニルアセテート、SIS、SBS、SEBSコポリマーのようなポリマー;ポリオレフィン、例えば、非晶質又は半結晶性ポリオレフィン、特に、プロピレン又はエチレンのホモポリマー又はコポリマー、反応性又は非反応性の線状又は分枝状の熱可塑性ポリウレタン;ポリアミド樹脂、コポリアミド、例えば、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、シリコーン及びポリ(メタ)アクリレート。この種のポリマーは、さらに反応し得る官能基、例えば、OH基、NH基、NCO基、SH基及びCOOH基を有しているべきである。
【0013】
本発明による官能基化された成分(A)の結合剤の製造原料となる基材ポリマーは、特に、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ビニルエステルに基づくコポリマー、シリコーン又はこれらの任意の混合物である。この種の基材ポリマーは、マイケル供与体基又はマイケル受容体基を形成するように変性できる前述の官能基を有しているべきである。あるいは、この種の基材ポリマーは、製造された時点において、本発明に必要なマイケル官能基の1つを保有する。
【0014】
マイケル供与体として作用する「官能基」は、1個又は2個のCH−酸性水素原子を有する基を意味する。このような官能基は次の構造を有する:Z−CHR−Z’(式中、Z及びZ’は、相互に独立して、電子吸引性置換基、例えば、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、酸無水物基、ニトリル基、ニトロ基、スルホキシド基又はスルホン基を示し、RはZ、H又はC1〜C3−アルキル基を示す)。これらの官能基は、基Z及び/又は基Z’を介してポリマー鎖と結合する。
【0015】
この種の基は、例えば、次の化合物から誘導される化合物中に存在する:β−ジカルボニル化合物、例えば、アセト酢酸エステル、マロン酸ジエステル又はこれらに対応するアミド、ジケトン又はメタントリカルボン酸エステル;α−シアノ−カルボニル誘導体、例えば、シアノ酢酸又はα−シアノケト誘導体;ビス−シアノメチレン誘導体、例えば、マロノニトリル;α−スルホキシド基を有するカルボニル誘導体、例えば、スルホ酢酸又はこれに対応するアミド。マイケル供与体活性を有するこの種の適当な化合物としては、次のものが例示される:マロン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル及びジペンチルエステル;アセト酢酸のメチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル及びペンチルエステル;N−置換アセトアミド;メタントリカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル及びブチルエステル。
【0016】
本発明によれば、ポリマー中には少なくとも1個のマイケル供与体基が存在しなければならないが、複数の基が存在していてもよい。酸性CH−基の量に基づくCH−当量は、一般的には、100〜5000、好ましくは200〜2000g/molである。マイケル供与体基の数は、分子量と所望の架橋密度によって左右される。1つの実施態様においては、ポリマー鎖は2〜10個、特に5個までのマイケル供与体基を有する。
【0017】
マイケル受容体として作用する官能基は、不飽和二重結合を有すると共に、少なくとも1個の電子吸引性置換基をα−位に有する官能基を意味する。特に、この種の官能基は次に挙げるものである:α,β−不飽和アルデヒド又はケトンのようなα,β−不飽和カルボニル化合物、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、クロトン酸誘導体、イタコン酸誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、シトラコン酸誘導体、桂皮酸誘導体、α−スルホン酸又はホスホン酸置換不飽和化合物、例えば、ビニルスルホン酸誘導体、ビニルホスホン酸誘導体、又はニトロ−スチレン誘導体。
【0018】
本発明によれば、ポリマー中には少なくとも1個のマイケル受容体基が存在しなければならない。しかしながら、2〜10個、特に5個までのマイケル受容体基がポリマー構造中へ反応によって組み込まれてもよい。これらの基は異なるマイケル受容体基であってもよいが、好ましくは同じ官能基である。
【0019】
本発明において適当なポリマーは分子中に少なくとも1個のマイケル受容体基と少なくとも1個のマイケル供与体基を有していなければならない。1つの実施態様においては、該ポリマーが1個の末端マイケル受容体基又は1個のマイケル供与体基を有すると共に、ポリマー鎖に沿って、対応する相補的な供与体基/受容体基が配置される。別の実施態様においては、該ポリマーが1個の末端マイケル受容体基又はマイケル供与体基を有すると共に、ポリマー鎖中の1個又は複数個のブロック内に付加的な相補基が配置される。この場合、官能基はポリマー鎖中で直接的に反応するか、又はポリマー構造中において側鎖として反応する。さらに別の実施態様においては、該ポリマーは、各々の場合において、ポリマー鎖の末端に1個の異なる相補基を有する。マイケル受容体基とマイケル供与体の総数は≧2にすべきである。
【0020】
好ましくは、この種のポリマーは線状にすべきであるが、分枝状ポリマー又は星状ポリマーを部分的に導入してもよい。この実施態様においては、ポリマー鎖の分枝の末端をマイケル受容体基及び/又はマイケル供与体基によって官能基化させることができる。
【0021】
上記のポリマーの分子量(GPCによって測定される数平均分子量:M)は1000〜1000000g/mol、特に2500〜100000g/molである。溶剤を含まない系においては、分子量は、好ましくは50000g/molまでにすべきであり、また、溶解系における分子量の下限は10000g/molよりも高くすることができる。軟質架橋ポリマーを得るためには、ポリマー鎖中の反応性官能基は広い間隔で配置させるべきである。この理由から、末端が相補的に官能基化されたポリマーであって、個々の官能基又は該官能基のブロックを有する該ポリマーが好ましい。出来るだけ硬質な架橋ポリマーを得るためには、ポリマー鎖中の官能基は相互に近接して配置させるべきである。
【0022】
本発明において適したポリマーは、自体既知の方法によって製造することができる。本発明の1つの実施態様においては、合成された段階で適当なマイケル官能基(例えば、不飽和エステル基、アミド基又はβ−ジカルボニル基等)を有しているポリマーが含まれる。適当なポリマーの別の製造法においては、前述の基材ポリマーが使用される。この製造法に使用する基材ポリマーは反応性官能基を保有していなければならない。この種の基材ポリマーは、官能基、マイケル供与体基又はマイケル受容体基を有する低分子量化合物(分子量:500未満)を用いて処理される。反応させる成分を選択することによって、ポリマーはマイケル反応性基と選択的に反応させることができる。この場合、当該反応条件下においては、同時に存在することがあるマイケル供与体基とマイケル受容体基との間の反応は起こらないということに注意しなければならない。
【0023】
マイケル供与体基は、例えば、マロン酸、アセト酢酸又はアセト酢酸アミドのOH基含有エステルを、基材ポリマー中に存在するカルボキシル基又はエステル基を用いてエステル交換することによって組み込むことが出来る。別の可能な反応法、例えば、イソシアネートで官能基化されたβ−ジカルボニル化合物を、ポリマー構造中に存在するOH基、SH基又はNH基と反応させる方法も知られている。マイケル供与体基を有する官能基化ポリマーは、ウレタン基又は尿素基を形成させることによって得られる。同様に、アミドを形成 させることにより、ポリマー鎖上のカルボキシル基又はエステル基の反応から、アミンで官能基化されたβ−ジカルボニル誘導体を得ることができる。この場合、アミノ基との時期尚早の反応を回避するために、ポリマーはマイケル受容体基を有していてはならないということに留意すべきである。
【0024】
本発明において好ましい方法は、H−活性中心、例えば、ポリマー上に存在するOH、NH及びCOOH等をジイソシアネートと反応させる方法である。この場合、基材ポリマーは、NCO基を有する中間生成物として得られる。該中間体生成物は、さらなる単離処理に付すことなく、例えば、ヒドロキシ又はアミンで官能基化されたβ−ジカルボニル化合物又は前述の化合物を用いる第2反応工程において反応させることができる。次いで、所定量のマイケル供与体基を有するポリマーが得られる。
【0025】
特定の実施態様によれば、NCO−末端反応生成物が基材ポリマーから得られる。次いで、該反応生成物は、引用式(式中、RはHを示す)で示される化合物に相当するさらなる官能基化処理に付されないマイケル供与体化合物、例えば、マロン酸のジエステル又はアセト酢酸のエステル等と反応させる。得られるポリマーは、本発明において適当なマイケル供与体基として反応することができるアミド基含有CH−酸性メチン基を含む。
【0026】
類似の反応手順により、マイケル受容体基を基材ポリマー中へ組み入れることができる。例えば、α,β−不飽和カルボン酸のヒドロキシ−置換アルキルエステル又は不飽和カルボン酸のヒドロキシ−置換アルキルアミドは、該ポリマーのカルボキシル基又はエステル基とエステル交換させることができる。別の実施方法においては、前述のように、基材ポリマーのOH基、NH基、SH基又は類似の官能基をジイソシアネートと反応させる。次いで、得られる生成物は、付加的な反応工程において、OH基又はSH基が置換したα,β−不飽和活性化二重結合を有する低分子量化合物(例えば、先に例示したこの種の化合物等)と反応させる。
【0027】
一般的な反応手順は、当業者には既知の事項であって、さらなる詳細な説明は不要である。所望により、これらの反応は、反応中にポリマー鎖の分解がもたらされないような昇温又は特殊な触媒を採用することによって促進させることができる。合成手順は、時期尚早の架橋反応がおこらないように選定される。逆の反応性を示すマイケル基を同時に有する適当な官能基化ポリマーを製造することができる。
【0028】
本発明によれば、マイケル反応を触媒する化合物は、成分Bとして存在しなければならない。該成分は、ルイス塩基又はブレンステッド塩基の形態の触媒から成る。この場合、後者の共役酸は、少なくとも10のpKaを有する。特に、これらの触媒はアミン含有塩基又はアミン不含塩基である。アミン不含塩基としては、次のようなアルカリ金属の水酸化物又はアルコキシド等が例示される:LiOH、NaOH、KOH、NaH、KH、CaH、Naメトキシド、Naエトキシド、Kメトキシド、カリウムt−ブトキシド、炭酸カリウム、炭酸カルシウム又はこれらの類似化合物。
【0029】
ルイス塩基は特に適当であることが判明した。この種のルイス塩基としては下記の群から選択されるものが例示される:
脂環式アミン、例えばジアザビシクロオクタン(DABCO)、脂肪族第三アミン、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジイソプロピルアミン又はN−ブチルジエタノールアミン、並びにアミジン、例えばジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、及びグアニジン、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、ピリジン誘導体、例えば2,3,4−ビニルピリジン又はアミン含有アクリレートコポリマー、例えば2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジエチルアミノエチルアクリレート又は3−ジメチルアミノプロピルアクリレート。
【0030】
さらに、アルキル又はアリール置換ホスファン、例えばトリブチルホスファン、トリフェニルホスファン、トリス−p−トリルホスファン、メチルジフェニルホスファン、並びにヒドロキシ官能基化ホスファン及びアミノ官能基化ホスファン等も例示される。また、塩基性イオン交換樹脂も適当である。
【0031】
成分Bは1種又は複数種の触媒から構成させることができるが、該成分は、該触媒と均質な混合物を形成することができる付加的な助剤を含有していてもよい。成分Aと成分Bとの混合物の調製に際して該混合物の取扱が簡便におこなわれるようにするために、不活性な助剤を成分Bへ添加する態様が好ましい。
【0032】
成分Aと成分Bから、本発明による2成分の結合剤(bonding agent)系が得られる。付加的な成分と混合することによって、該結合剤系から、例えば2成分系接着剤(adhesive)が調製される。従って、成分Aと成分Bの一方又は両方の成分は、前述の成分のほかに、別の助剤又は添加剤を含有することができる。この種の付加的な成分としては、可塑剤、付加的な不活性バインダー、樹脂、柔軟剤、ワックス、定着剤、顔料/充填剤、粘度調整剤、所望による溶剤、均展剤及び安定剤が例示される。この種の成分は一般的に知られているものである。これらの助剤は、結合剤系の用途に応じて選択される。
【0033】
可塑剤は、本発明による接着剤のさらなる成分とすることができる。好ましくは、このような可塑剤は粘度又は柔軟性を調整するために使用され、その使用濃度は、一般的には、0〜25重量%、好ましくは2〜15重量%である。適当な可塑剤としては、次のものが例示される:医療用ホワイト油、ナフテン系鉱油、ポリイソプレン、ポリブテン及びポリプロピレンのオリゴマー、水素化ポリイソプレン及び/又はポリブタジエンのオリゴマー、安息香酸エステル、フタレート、アジペート、植物油又は動物油及びこれらの誘導体。ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール又はポリメチレングリコールも適当である。
【0034】
安定剤は、接着剤組成物の加工中の分解から保護する。安定剤としては、特に酸化防止剤又は光安定剤が例示される。ホットメルト接着剤へ添加される安定剤の量は、通常は3重量%までであり、好ましくは約0.1〜1重量%である。
【0035】
さらに、本発明による接着剤は定着剤を含有することができる。定着剤は、支持体(substrate)に対する接着剤の接着力を改良する成分である。特に、定着剤は、湿り大気の影響下での接着層(adhesive bond)の老化挙動を改良するために使用される。定着剤は、接着剤の湿潤性及び接着力に対してもその作用を及ぼす。
【0036】
その他の種類の添加剤、例えば、顔料、着色剤、安定剤、ワックス及び定着剤等は当業者には既知である。この種の添加剤は市販品として市販されており、当業者であれば、必要な特性に応じてこれらの市販品を適宜選択することができる。この場合、この種の添加剤はポリマー混合物と相溶性を示すものであることに留意すべきである。
【0037】
この種の添加剤は上記の成分の一方又は両方に含有させることができる。この種の物質が結合剤又は触媒と反応しないことに留意すべきである。この種の添加剤は、良好な加工性をもたらすという観点から選択されるべきである。両性分が類似の粘度を示す態様が有利である。
【0038】
本発明による結合剤系又は該系から調製される接着剤又はその他の製品は、成分B中の触媒を成分Aと混合させることによって架橋する。この架橋反応は、バッチ法によって実施することができ、また、連続法の採用によっておこなうこともできる。この架橋反応は昇温によって促進させることができる。
【0039】
本発明による結合剤系は種々の用途に適している。例えば、低粘性接着剤を製造するために使用することができる。この用途に対しては、官能基化ポリマーを有機溶剤に溶解させることができる。この場合、実質的には、100℃までの昇温によって任意に蒸発させることができる揮発性溶剤が対象となる。なお、前記の添加剤を含有させることができる。
【0040】
別の実施態様は、溶剤を含有しない接着剤である。この場合、ポリマーの粘度は、前記の添加剤の混合が可能になるように十分に低くする。さらに、この種の混合物中へ低分子量のマイケル反応性オリゴマーを添加することも可能である。このようなオリゴマーは反応性希釈剤として作用し、結合剤混合物の粘度に影響を及ぼすことができる。この種の反応性低分子量成分としては、マイケル供与体として作用するβ−ジカルボニルエステル及び低分子量多価アルコールとマロン酸とのエステルが例示される。しかしながら、α,β−不飽和カルボン酸エステルを反応させることができ、該エステルは、付加的な低粘性マイケル受容体として作用する。ここで使用する「低分子量」という用語は、150〜1500g/molの範囲の分子量、特に800g/molまでの分子量を有する化合物を意味する。
【0041】
本発明の別の対象は、前記の結合剤系に基づく注型用樹脂である。この種の注型用樹脂はポンプを用いて送出される。即ち、該樹脂は、少なくとも高粘性の混合物でなければならない。この場合、前述の添加剤又は微細に分散された顔料を含有させることができる。
【0042】
上記の混合物は種々の用途に使用することができる。例えば、該混合物を用いて接着剤、例えば、フィルム状接着剤、貼り合わせ用接着剤、構造用接着剤及び紙用接着剤等を製造することができる。さらに、この種の組成物は注型用樹脂としても使用することができる。本発明によるポリマー混合物の別の特定の実施態様は、コーティング(coating)としての使用である。該ポリマー混合物は金型内コーティングとして使用することができる。また、該ポリマー混合物は、適用後に架橋可能な適当なコーティングとして支持体の表面上に適用される。
【0043】
本発明による結合剤系は、接着剤、特に2成分系の包装用又は貼り合わせ用接着剤を製造するために特に適している。
【0044】
本発明による接着剤は優れた接着力を発揮する。該接着剤は、移動性の揮発性イソシアネート及びイソシアネートの分解生成物(例えば、アミン等)を含有しないという利点を有する。適当な付加的原料が選択されるならば、この種の接着剤を、食品の包装又は医薬品の包装のために適した接着剤として使用することができる。
【0045】
本発明による適当な接着剤を含む接着層は軟質である。該接着層は多数の異なるフィルム、例えば、PEフィルム、PPフィルム、ポリアミドフィルム及びPETフィルム等を接着させる。添加剤の選択によって、無色又は透明な着色剤を確実に調製することができる。薄層においては、該接着層は接着力の高い複合フィルムを形成し、該複合フィルムは、低温での冷却時又は加温時においても高い接着力を発揮する。
【0046】
実施例1
末端にOH基を有するマロネート含有ポリエステル
ジエチルマロネート(32g)とネオペンチルグリコール(173g)を混合し、該混合物を、不活性ガス(窒素ガス)雰囲気下において、150℃まで加熱した。30分後、チタンテトライソプロポキシド(0.2g)を添加し、該混合物を均質化した。留去された凝縮物を捕集して除去した。蒸留の終了後、系内の圧力を650 mbar まで低下させ、さらに段階的に10 mbar まで低下させた、
【0047】
生成物の粘度は200mPas(100℃での測定値)であり、ヒドロキシル価は91であった。
【0048】
上記のポリエステル(195g)をMDI(59.4g)と撹拌下で混合し、最高温度が100℃になる条件下で1時間保持した。次いで、安定剤(BHT;0.25g)と2−ヒドロキシエチルアクリレート(16.4g)を添加した。昇温下において、撹拌処理を4時間続行した。
【0049】
得られた生成物の粘度は6400mPas(100℃での測定値)であった。粘度測定は、円錐プレート粘度計を用いておこなった(DIN−53229)。
【0050】
得られたポリマーを酢酸エチルに溶解させることによって成分A(固形分:35%)を調製した。
【0051】
成分Bとして、1,5−ジアザビシクロ−(4,3,0)−ノン−5−エンの10%濃厚溶液(溶媒:酢酸エチル)を調製した。
【0052】
触媒(固形分:0.1重量%)を成分Aへ添加して混合し、該混合物をポリマーフィルム上へフィルムとして流延させ、このポリマーフィルムを室温下での架橋処理に24時間付すことによって、弾性フィルムを形成させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)及び(B)並びに所望による付加的な添加剤及び/又は補助剤を含有する2成分結合剤系:
(A)少なくとも1個のマイケル受容体基及び少なくとも1個のマイケル供与体基を有する少なくとも1種のポリマーであって、1000〜1000000g/molの数平均分子量(M)を有する該ポリマー、及び
(B)マイケル反応を触媒する化合物。
【請求項2】
ポリマーの数平均分子量が1500〜100000である請求項1記載の2成分結合剤系。
【請求項3】
マイケル供与体とマイケル受容体の総数で表示されるポリマー鎖あたりの平均官能価が2以上である請求項1又は2記載の2成分結合剤系。
【請求項4】
マイケル供与体の官能価とマイケル受容体の官能価が相互に独立して2以上である請求項1から3いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項5】
マイケル供与体基又はマイケル受容体基がポリマー鎖の末端において反応する請求項1から4いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項6】
1個のマイケル供与体基及び1個のマイケル受容体基が、各々の場合において、ポリマー鎖の末端において反応する請求項1から5いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項7】
ポリマー鎖が実質的に線状である請求項1から6いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項8】
基材ポリマーが次のポリマーから選択される請求項1から7いずれかに記載の2成分結合剤系:ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、シリコーン又はビニルエステルコポリマー。
【請求項9】
マイケル供与体が、β−ジカルボニル基、α−シアノ−カルボニル誘導体、α−スルホキシド基若しくはα−スルホ基を有するカルボニル誘導体、又はビス−シアノメチレン基から選択される請求項1から8いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項10】
成分(B)がアミン基含有塩基又はアミン基不含塩基、特に揮発性又は不揮発性の有機アミン又はアミン基含有ポリマーである請求項1から9いずれかに記載の2成分結合剤系。
【請求項11】
請求項1から10いずれかに記載の2成分結合剤系を含有する2成分系接着剤。
【請求項12】
補助剤及び/又は添加剤を35重量%未満含有する請求項11記載の2成分系接着剤。
【請求項13】
有機溶剤を含有せず、また、特に水分も含有しない請求項11又は12記載の2成分系接着剤。
【請求項14】
50℃までの温度において、5000mPas未満の粘度を示す請求項11から13いずれかに記載の2成分系接着剤。
【請求項15】
成分(A)が、少なくとも2個のマイケル供与体基又はマイケル受容体基を有する低分子量化合物をさらに含有する請求項11から13いずれかに記載の2成分系接着剤。
【請求項16】
請求項11から15いずれかに記載の2成分系接着剤を第1支持体の表面へ塗布し、必要な場合には揮発性溶剤を蒸発させ、次いで該塗布表面上へ第2支持体を押圧することを含む軟質支持体の結合方法。
【請求項17】
成分(A)を第1支持体の表面上へ塗布し、成分(B)を第2支持体の表面上へ塗布し、次いで両方の塗布面を加圧下で接合させる請求項16記載の方法。
【請求項18】
接合させた支持体の複合体を25℃〜75℃の温度まで加熱する請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
成分(A)が、支持体の表面上において、貯蔵安定性層を形成する請求項16又は17記載の方法。
【請求項20】
軟質フィルム支持体を接合させるための接着剤として、請求項11から15いずれかに記載の2成分系接着剤を使用する方法。
【請求項21】
木材、金属、ガラス、紙又は類似の材質から成る支持体を接合させるための構造用接着剤として、請求項11から15いずれかに記載の2成分系接着剤を使用する方法。
【請求項22】
請求項1から10いずれかに記載の2成分接着剤系を、被覆剤又は注型樹脂を製造するために使用する方法。

【公表番号】特表2010−510364(P2010−510364A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537573(P2009−537573)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059824
【国際公開番号】WO2008/061827
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】