説明

架空吊り具及びドロップケーブル

【課題】光ファイバ心線を備えたケーブル本体を出し入れ可能なシース本体を備えた架空吊り具及び当該架空吊り具を使用したドロップケーブルを提供する。
【解決手段】一対の抗張力体3の間に光ファイバ心線5を配置して備えたケーブル本体7を収納可能な架空吊り具29であって、ケーブル支持部33に連結部35を介して接続したシース本体37に、前記ケーブル本体7を収納可能な中空部39を備え、かつ前記中空部39に連通した開口部43を、前記シース本体37の長手方向に備えている。そして、前記シース本体37に複数のサブシース本体41A,41Bを備え、前記各サブシース本体41A,41Bにそれぞれ前記中空部39及び前記開口部43を備えると共に、前記各サブシース本体41A,41Bを個別に切断分離可能に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空光ファイバケーブルから加入者宅へ光ファイバケーブルを引き込むための架空吊り具及び上記架空吊り具を使用したドロップケーブルに係り、さらに詳細には、光ファイバ心線を備えたケーブル本体を引き出し可能かつ引き出し後に再び収納可能な架空吊り具及びドロップケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架空光ファイバケーブルから加入者宅へ光ファイバケーブルを引き込むためのドロップケーブルとしては、図1(A)に示すごとき構成の光ファイバケーブル1が使用されている。上記光ファイバケーブル1は、図1(A)に示すように、一対の抗張力体3の間に光ファイバ心線5を配置して備えたケーブル本体7のY軸方向の一側に、連結部(首部)9を介して大径の支持線11を備えたケーブル支持部13が一体に備えられている。より詳細には、前記一対の抗張力体3、光ファイバ心線5、支持線11はY軸方向(図1(A)において上下方向)に一列に配列してあり、かつ適宜の熱可塑性樹脂によって一体に被覆してある。そして、前記ケーブル本体7のX軸方向(図1(A)において左右方向)の両側面には、ノッチ部15が形成してある。
【0003】
上記構成の光ファイバケーブル1を各家庭に引き落とす場合には、前記光ファイバケーブル1の両端部の連結部9の一部を切り裂いて、ケーブル本体7とケーブル支持部13とを分離する。そして、前記ケーブル支持部13の一端部を電柱(図示省略)の屋外線引き留め具(図示省略)に連結固定し、ケーブル支持部13の他端部を、家屋の一部に備えた引き留め具(図示省略)に連結固定するものである。なお、光ファイバ心線5の一端部は電柱に備えられたケーブル分岐箱(図示省略)に接続され、他端部は屋内のOE変換器(図示省略)に接続されるものである。
【0004】
そして、加入者宅内においては、前記ケーブル本体7と同様の構成のインドアケーブル16(図1(B)参照)が用いられている。このインドアケーブル16は、加入者宅の外壁付近において、前記ケーブル本体7と接続されるものである。ところが、近年においては、前記ケーブル本体7を加入者宅内に直接引き込むことも行われている。
【0005】
近年、IPテレビ等が普及し、映像と情報のデータを個別に送受信する場合がある。この場合、図1(C)に示すように、ケーブル本体7内に光ファイバ心線5を2心実装した光ファイバケーブル1Aが使用され、一方の光ファイバ心線5をデータ用の端末終端装置(ONU)に接続し、他方の光ファイバ心線5を映像用の端末終端装置(ONU)に接続される。2心実装型の前記光ファイバケーブル1Aにおいては、ケーブル本体7から2本の光ファイバ心線5を引き出して接続するものであるから、図2に示すように、単心線型2心のインドアケーブル1Aにおける各光ファイバ心線5と幹線系の光ファイバケーブル14から取り出した2心とを、ドロップクロージャ17内において、融着又はメカニカルスプライス接続19を行う必要がある。
【0006】
すなわち、前記光ファイバケーブル1Aの場合には、ケーブル本体7から2本の光ファイバ心線5を個別に引き出して、加入者宅18内の映像用ONU21及びデータ用ONU23にそれぞれ接続するものであるから、図1(B)に示した単心線型1心のインドアケーブル16、もしくは単心線型1心ドロップケーブルのケーブル本体7の先端に直接取り付けることが可能な一般的な外被把持コネクタを適用することができないものである。したがって、外被把持コネクタを使用する場合に比較して接続作業に時間がかかるという問題がある。
【0007】
また、ケーブル本体7から引き出した光ファイバ心線5をそのまま扱う必要があり、慎重な作業が必要になる。さらに、図2に示すように、映像用ONU21とデータ用ONU23とが離れている場合には、断線を生じ易い光ファイバ心線5をそのまま引き回すことはできないので、前記両ONU21,23間に新たなケーブル25を接続するか、もしくは光ファイバ心線5を保護部材で覆う必要がある。
【0008】
なお、加入者宅内において、例えばテレビやパソコン等の各端末の直前で1心の光ファイバ心線に分離し、外被把持コネクタを使用可能な光ファイバケーブルが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−209023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1に記載の光ファイバケーブルの構成は、図1(B)に示した前記インドアケーブル16を分離可能に上下に2本重ねて一体化した形態である。すなわち、2本のインドアケーブル16を分離可能に備えた構成である。したがって、分離した一方のインドアケーブル16を映像用ONU21に接続し、他方のインドアケーブル16をデータ用ONU23に接続することができる。すなわち、図2に示した前記ケーブル25を省略することができる。
【0011】
しかし、特許文献1に記載の光ファイバケーブルは、インドアケーブルに限るものであって、引き込み用のドロップケーブルとしては使用不可能な構成である。したがって、ドロップケーブルとインドアケーブルとの接続作業が必要であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、一対の抗張力体の間に光ファイバ心線を配置して備えたケーブル本体を収納可能な架空吊り具であって、ケーブル支持部に連結部を介して接続したシース本体に、前記ケーブル本体を収納可能な中空部を備え、かつ前記中空部に連通した開口部を、前記シース本体の長手方向に備えていることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記架空吊り具において、前記シース本体に複数のサブシース本体を備え、前記各サブシース本体にそれぞれ前記中空部及び前記開口部を備えると共に、前記各サブシース本体を個別に切断分離可能に備えていることを特徴とするものである。
【0014】
また、架空光ファイバケーブルから光ファイバを引き込むためのドロップケーブルであって、大径の支持線を備えたケーブル支持部に連結部を介して接続したシース本体に備えた中空部内に、一対の抗張力体の間に光ファイバ心線を配置して備えたケーブル本体を備え、前記シース本体の長手方向に備えた開口部を前記中空部に連通して備え、この開口部から前記ケーブル本体を外部へ引き出し可能に備えていることを特徴とするものである。
【0015】
また、前記ドロップケーブルにおいて、前記シース本体に、前記中空部及び開口部を備えた複数のサブシース本体を個別に切断可能に備え、前記各サブシース本体における前記各中空部内に、前記各開口部から引き出し可能にケーブル本体を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、架空吊り具に備えた中空部に対して、一対の抗張力体の間に光ファイバ心線を配置して備えたケーブル本体を、前記中空部に連通した開口部から出し入れすることができるので、前記ケーブル本体をドロップケーブルに使用することができると共に、そのままインドアケーブルとして使用することができる。したがって、ドロップケーブルとインドアケーブルとの接続作業が不要となり、光ファイバケーブルの配線作業の能率向上を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来のドロップケーブル、インドアケーブルの断面説明図である。
【図2】図1(C)に示したドロップケーブルを使用した場合の課題を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る架空吊り具及びドロップケーブルの構成を示す断面説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係るドロップケーブルを使用した場合の配線例を示した配線説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係るドロップケーブルを使用した場合の配線例を示した配線説明図である。
【図6】第2の実施形態に係る架空吊り具及びドロップケーブルの構成を示す断面説明図である。
【図7】別の実施形態に係る架空吊り具及びドロップケーブルの構成を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図3を参照するに、本発明の実施形態に係るドロップケーブル27は、架空吊り具29を備えている。この架空吊り具29は、大径の支持線31を備えたケーブル支持部33に切断分離可能な連結部(首部)35を介してシース本体37が接続してある。前記支持線31は、難燃ポリオレフィンによって被覆してあり、かつ前記連結部35及びシース本体37も難燃ポリオレフィンによって一体に構成してある。前記ケーブル支持部33、連結部35及びシース本体37は、Y軸方向(図3において上下方向)に配置してあり、かつ前記シース本体37には、中空部39を備えたサブシース本体41A,41Bが上下方向(Y軸方向)に備えられている。
【0019】
前記各サブシース本体41A,41BのX軸方向(図3において左右方向)の側面には、前記中空部39に連通した拡開可能な開口部43がZ軸方向(図3において紙面に垂直な方向)に長く形成してある。前記各サブシース本体41A,41Bは、両方の境界部分に形成した切込み45の部分において切断分離可能である。そして、前記各サブシース本体41A,41Bに切断分離したとき、各サブシース本体41A,41BにおけるX、Y方向の外形寸法が、前述した従来のインドアケーブル16の外形寸法と一致する構成である。すなわち、各サブシース本体41A,41BのX軸方向の外形寸法は2.0mmであって、Y軸方向の外形寸法は3.1mmである。
【0020】
前記各サブシース本体41A,41Bにおける前記中空部39内には、拡開することのできる前記開口部43から細径コア47が出し入れ可能に収納してある。この細径コア47は、前記インドアケーブル15と同様の構成であって、Z軸方向に長い一対の抗張力体3の間に光ファイバ心線5を配置したケーブル本体7を備え、かつこのケーブル本体7のX軸方向の両側面にそれぞれ分離用のノッチ部15を備えた構成である。ただし、前記細径コア47の外形寸法は前記インドアケーブル16の外形寸法(3.1mm×2.0mm)よりも小さく、Y軸方向の外形寸法は2.0mmで、X軸方向の外形寸法は1.6mmである。なお、上記細径コア47において、前記抗張力体3はアラミド繊維、もしくは鋼線からなり、ケーブル本体7は難燃性ポリオレフィンからなるものである。そして、前記中空部39の形状寸法は、前記細径コア47の形状寸法に対応した形状寸法に形成してある。
【0021】
上記説明より理解されるように、架空吊り具29におけるシース本体37に備えた各サブシース本体41A,41Bの各中空部39に対して細径コア47を、開口部43を介して出し入れ可能であるから、ドロップケーブル27としては、1本の細径コア47を備えた場合と、2本の細径コア47を備えた場合とに使用することも可能である。なお、各中空部39内に細径コア47を収納した状態においては、各中空部39の軸心と細径コア47に備えた光ファイバ心線5は一致した状態にあるものである。
【0022】
前記構成のドロップケーブル27を用いて加入者宅へ光ファイバを引き落とすには、図4に概念的、概略的かつドロップケーブル27の状態を理解し易いように切断端面図で示すように、各サブシース本体41A,41Bにおける中空部39内に適宜長さの細径コア47をそれぞれ収納した状態において、ドロップケーブル27における両端部の連結部35を当該ドロップケーブル27の長手方向(Z軸方向)に切り裂く。そして、ケーブル支持部33における支持線31の両端部にそれぞれ吊り具49を連結し、一方の吊り具49を電柱51の掛け具53に掛ける。そして、他方の吊り具49を、加入者宅Hの適宜位置に引っ掛ける。
【0023】
上述のように、電柱51と加入者宅Hとの間にケーブル支持部33を張り渡した状態において、シース本体37の一端側におけるサブシース本体41A,41Bを、切込み45の部分において別個に(個別に)切断分離すると共に、図4に示すように、各サブシース本体41A,41Bから細径コア47の一端部が突出した状態にする。そして、前記各サブシース本体41A,41Bの一端部を、クロージャ55に備えたグリッパー57の間に挟み込む。一方、細径コア47の一端部に一般的な外被把持コネクタ59をそれぞれ取り付け、前記クロージャ55内のアダプタ(図示省略)に差し込んで、架空ケーブル(図示省略)と接続する。そして、前記加入者宅Hの壁を貫通した前記各サブシース本体41A,41Bの端部から長く突出した各細径コア47は、外被把持コネクタ59を介してそれぞれ別個のONUにそれぞれ接続される。
【0024】
上記構成より理解されるように、前記ドロップケーブル27においては、細径コア47の一端部を外部のクロージャ55に接続した状態において、加入者宅のONUに直接接続することができるものである。換言すれば、一般的なドロップケーブルとインドアケーブルとを兼ねるものであり、別個のドロップケーブルとインドアケーブルとを接続するための接続作業が不要である。したがって、配線作業の能率向上を図ることができ、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【0025】
また、前記ドロップケーブル27においては、シース本体37に備えた各サブシース本体41A,41Bには、各中空部39に対して細径コア47を出し入れ可能な開口部43を備えているので、図5に示すように、各サブシース本体41A,41Bの適正な途中から細径コア47をそれぞれ別個に引き出して、それぞれ別個のONUに接続することができる。したがって、例えば映像用ONUとデータ用ONUとがそれぞれ別個の部屋においてあるような場合であっても容易に対応することができる。そして、上記構成においては、引き落としの必要がなくなった細径コア47は元のサブシース本体における中空部39内に再び収納可能なものである。
【0026】
図6は第2の実施形態に係るドロップケーブル27Aを示すもので、前記ドロップケーブル27における各構成要素と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして重複した説明は省略する。この実施形態に係るドロップケーブル27Aは、細径コア47Aとして、Y軸方向及びX軸方向の寸法が共に2.0mmの細径コアを対象としたものである。したがって、中空部39の寸法は細径コア47Aに対応した形状寸法に形成してある。そして、サブシース本体41A,41BのY軸方向の寸法は同じく3.1mmであって、X軸方向の寸法は僅かに大きく2.2mmに構成してある。なお、サブシース本体41A,41Bの形状寸法が上記寸法であっても、従来の外被把持コネクタ59の許容範囲であって使用可能なものである。
【0027】
したがって、この第2の実施形態に係るドロップケーブル27Aにおいても、前述したドロップケーブル27と同様の効果を奏し得るものである。
【0028】
なお、本発明は、前述したごとき実施形態に限ることなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能なものである。例えば、図7(A)に示すように、サブシース本体41Aのみとすることも可能である。図7(B)に示すように、開口部43をサブシース本体41Aの下面に設けた構成とすることも可能である。さらには、、図7(C)に示すように、サブシース本体41Bの開口部43を下面に設けた構成とすることも可能である。すなわち、サブシース本体の数と開口部43の位置とを適宜に組合せて種々の構成とすることができるものである。
【0029】
さらに、前記説明においては、各サブシース本体41A,41Bにおける開口部43を、それぞれX軸方向の反対側の側面に備えた場合に就いて例示したが、同一側の側面に備えた構成とすることも可能である。また、開口部43を常に開いた状態にて例示したが、開口部43は常に閉じた状態にあり、中空部39から細径コア47を引き出すときに弾性変形して拡開する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 光ファイバケーブル
3 抗張力体
5 光ファイバ心線
7 ケーブル本体
9,35 連結部(首部)
11 支持線
13,33 ケーブル支持部
27 ドロップケーブル
31 支持線
37 シース本体
39 中空部
41A,41B サブシース本体
43 開口部
47 細径コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の抗張力体の間に光ファイバ心線を配置して備えたケーブル本体を収納可能な架空吊り具であって、ケーブル支持部に連結部を介して接続したシース本体に、前記ケーブル本体を収納可能な中空部を備え、かつ前記中空部に連通した開口部を、前記シース本体の長手方向に備えていることを特徴とする架空吊り具。
【請求項2】
請求項1に記載の架空吊り具において、前記シース本体に複数のサブシース本体を備え、前記各サブシース本体にそれぞれ前記中空部及び前記開口部を備えると共に、前記各サブシース本体を個別に切断分離可能に備えていることを特徴とする架空吊り具。
【請求項3】
架空光ファイバケーブルから光ファイバを引き込むためのドロップケーブルであって、大径の支持線を備えたケーブル支持部に連結部を介して接続したシース本体に備えた中空部内に、一対の抗張力体の間に光ファイバ心線を配置して備えたケーブル本体を備え、前記シース本体の長手方向に備えた開口部を前記中空部に連通して備え、この開口部から前記ケーブル本体を外部へ引き出し可能に備えていることを特徴とするドロップケーブル。
【請求項4】
請求項3に記載のドロップケーブルにおいて、前記シース本体に、前記中空部及び開口部を備えた複数のサブシース本体を個別に切断可能に備え、前記各サブシース本体における前記各中空部内に、前記各開口部から引き出し可能にケーブル本体を備えていることを特徴とするドロップケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−13783(P2012−13783A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147838(P2010−147838)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】