説明

染毛剤および染毛後の後処理剤

【課題】酸化染毛剤で染色された毛髪の日光紫外線による変色を抑制することができ、仕上がった色を長期間維持することができる染毛剤および染毛後の後処理剤を提供する。
【解決手段】酸化染料を含有した染毛剤または酸化染料による染毛後の後処理剤であって、キナノキ樹皮エキス[キナ抽出物(丸善製薬製、商品名:キナ抽出液BG)]とアスコルビン酸ナトリウム(酸化防止剤)とを含有し、特に、キナノキ樹皮エキスの含有量を5.0重量%とし、アスコルビン酸ナトリウムの含有量を5.0重量%とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、染毛剤および染毛後の後処理剤に関し、特に、優れた紫外線変色抑制作用を備える染毛剤および染毛後の後処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、染毛剤は、酸化染料を主体とした二剤型の酸化染毛剤と、酸性染料を配合した酸性染毛料とが知られている。この中で、酸化染毛剤は永久染毛剤と呼ばれ、染毛剤の主流を占めている。酸化染毛剤は、染毛の主体となるパラフェニレンジアミン、硫酸トルエン−2,5−ジアミン等の染料中間体および、レゾルシン、メタアミノフェノール等のカップラーを含有する第一剤と、過酸化水素水等の酸化剤を含有する第二剤とから構成されている。なお、第一剤は中性からアルカリ性に、第二剤は酸性に、それぞれ調製されている。
【0003】
酸化染毛剤は、使用直前に第一剤と第二剤とを混合し、使用する。すなわち、酸化染毛剤は、第一剤と第二剤とが混合され、化学反応が始まった状態で毛髪に塗布されることで、毛髪を染色することができる。
具体的には、まず、中性からアルカリ性に調製された第一剤が、第二剤の酸化剤に含有されている過酸化水素等を活性化させるとともに、毛髪のキューティクルを開いて、第一剤および第二剤を毛髪内に浸透させる。さらに、第一剤および第二剤が浸透した毛髪内では、第二剤の活性化した過酸化水素等がメラニン色素を分解し、毛髪を脱色する。また、第二剤の酸化力が、第一剤の染料中間体とカップラーとを酸化重合させ、高分子を形成させて発色させる。そうすると、毛髪は、脱色と発色が同時に行なわれることにより、明るく幅広い色調に表現される。特に、洗髪等による色落ちもほとんどなく、しっかりと染色されるのである。
【特許文献1】特開平3−193722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、酸化染毛剤により染色された毛髪は、長時間日光紫外線を受けると、酸化重合して形成された高分子の一部または全部が壊れるので、変色を起こしやすい。このため、従来の酸化染毛剤は、仕上がりの色を長期間維持することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑み提案されたもので、酸化染毛剤により染色された毛髪内の、酸化重合して形成された高分子が日光紫外線によって壊されることを防ぐことにより、染色された毛髪の変色を抑制することができ、仕上がりの色を長期間維持することができる染毛剤および染毛後の後処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る染毛剤は、酸化染料を含有した染毛剤であって、キナ抽出物と酸化防止剤とを含有し、使用時のpHが7.0〜12.0であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る染毛後の後処理剤は、酸化染料による染毛後の後処理剤であって、キナ抽出物と酸化防止剤とを含有し、pHが4.0〜7.0であることを特徴とする。
【0008】
特に、上記染毛剤または上記染毛後の後処理剤における、キナ抽出物および酸化防止剤において、キナ抽出物の含有量が0.01〜20重量%であり、酸化防止剤の含有量が0.01〜10重量%であることが好ましい。また、さらに好ましくは、キナ抽出物の含有量が0.1〜5.0重量%であり、前記酸化防止剤の含有量が0.1〜5.0重量%である。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、まず、酸化染料を含有した染毛剤に、キナ抽出物と酸化防止剤とを含有させたので、キナ抽出物および酸化防止剤が相乗効果を発揮することで、酸化染料の酸化重合して形成された高分子の一部または全部が、日光紫外線によって壊れることを防ぎ、染色された毛髪が変色することを抑制することができる。また、本発明に係る染毛剤の使用時のpHを7.0〜12.0の中性からアルカリ性としたので、毛髪のキューティクルを開いて、効率よく毛髪内にキナ抽出物および酸化防止剤を浸透させることができるため、酸化染料の酸化重合して形成された高分子の一部または全部が、日光紫外線によって壊れることを防ぎ、染色された毛髪が変色することを効果的に抑制することが可能となる。したがって、仕上がりの色を長期間維持することができる。
【0010】
さらに、酸化染料による染毛後の後処理剤に、キナ抽出物と酸化防止剤とを含有させたので、キナ抽出物および酸化防止剤が相乗効果を発揮することで、酸化染料の酸化重合して形成された高分子の一部または全部が、日光紫外線によって壊れることを防ぎ、染色された毛髪が変色することを抑制することができる。また、本発明に係る染毛後の後処理剤は、pHを4.0〜7.0とし、毛髪を傷めることなのない弱酸性から中性に調製したので、毛髪を傷めることなく、染色された毛髪が変色することを抑制することができる。したがって、染毛された毛髪を傷めることなく、仕上がりの色を長期間維持することができる。
【0011】
また、本発明に係る染毛剤または染毛後の後処理剤における、キナ抽出物および酸化防止剤において、キナ抽出物の含有量を0.01〜20重量%、酸化防止剤の含有量を0.01〜10重量%としたので、効果的に、酸化染料の酸化重合して形成された高分子の一部または全部が、日光紫外線によって壊れることを防ぎ、染色された毛髪が変色することを抑制することができる。特に、キナ抽出物の含有量を0.1〜5.0重量%とし、酸化防止剤の含有量が0.1〜5.0重量%とすると、その効果は顕著となる。すなわち、キナ抽出物および酸化防止剤を含有することによる不安定化の懸念をすることなく、本発明に係る染毛剤または染毛後の後処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る染毛剤は、酸化染料を含有した染毛剤であって、キナ抽出物、例えば、キナノキ樹皮エキス(丸善製薬製、商品名:キナ抽出液BG)と酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸ナトリウムとを含有し、使用時のpHを7.0〜12.0に調製したものである。特に、本発明に係る染毛剤に含有させたキナノキ樹皮エキスの含有量が、0.01〜20重量%、例えば、5.0重量%に、アスコルビン酸ナトリウムの含有量が、0.01〜10重量%、例えば、5.0重量%にそれぞれ調製されている。
【0013】
まず、本発明に係る染毛剤では、セタノール5.0重量%、ミリスチン酸イソプロピル1.0重量%、蜜蝋2.0重量%、ポリオキシエチレンオレイルアルコール2.0重量%、ラウリル硫酸ナトリウム1.0重量%、強アンモニア水7.0重量%、パラフェニレンジアミン1.0重量%、レゾルシン0.3重量%、メタアミノフェノール0.5重量%からなる酸化染毛剤の基本組成に、適量の香料を加え、さらに、キナノキ樹皮エキス5.0重量%およびアスコルビン酸ナトリウム5.0重量%を含有させて第一剤が作製される。さらに、第二剤として、リン酸でpH3.0に調製した過酸化水素5.8重量%水溶液が作製される。
【0014】
また、本発明に係る染毛後の後処理剤は、酸化染料による染毛後の後処理剤であって、キナ抽出物、例えば、キナノキ樹皮エキス(丸善製薬製、商品名:キナ抽出液BG)と酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸ナトリウムとを含有し、pHを4.0〜7.0、例えば、PH5.5に調製したものである。特に、本発明に係る染毛後の後処理剤に含有させたキナノキ樹皮エキスの含有量が、0.01〜20重量%、例えば、5.0重量%に、アスコルビン酸ナトリウムの含有量が、0.01〜10重量%、例えば、5.0重量%にそれぞれ調製されている。
【0015】
具体的には、ポリオキシエチレンセチルエーテル0.2重量%、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液(NALCO製)6.0重量%、シリコンエマルジョン(東レ・ダウコーニング製)1.0重量%、安息香酸ナトリウム0.2重量%、エデト酸四ナトリウム四水塩0.05重量%、クエン酸三ナトリウム0.02重量%、キナノキ樹皮エキス(丸善製薬製、商品名:キナ抽出液BG)5.0重量%およびアスコルビン酸5.0重量%を含有している。
【0016】
ここで、キナ抽出物は、上記キナノキ樹脂エキス(丸善製薬製、商品名:キナ抽出液BG)のほか、適宜のキナ抽出物を用いればよい。さらに、酸化防止剤は、還元力を有するものであればよく、例えば、天然型ビタミンC、アスコルビン酸もしくはその塩並びにそれらの誘導体、亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム)、システインなどを用いることができる。
【0017】
なお、アスコルビン酸の塩並びにそれらの誘導体とは、例えば、リン酸−L−アスコルビン酸マグネシウム、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸ヒドロキシプロリンリン酸エステル、 5−o−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩、L−アスコルビン酸リン酸エステルカリウム塩、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩、L−アスコルビン酸リン酸エステルカルシウム塩、L−アスコルビン酸リン酸エステルアルミニウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステルナトリウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステルカリウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステルマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステルカルシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステルアルミニウム塩、L−アスコルビン酸ナトリウム塩、L−アスコルビン酸カリウム塩、L−アスコルビン酸マグネシウム塩、L−アスコルビン酸カルシウム塩、L−アスコルビン酸アルミニウム塩、6−o−α−D−ガラクトピラノシル−L−アスコルビン酸、2−o−β−D−ガラクトピラノシル−L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩、L−アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステルナトリウム塩、6−o−アシルアスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩、6−o−アシルアスコルビン酸リン酸エステルアンモニウム塩、6−o−アシルアスコルビン酸リン酸エステルイソプロパノールアミン塩、3−o−イソプロピル−L−アスコルビン酸、6−o−アルキルアスコルビン酸リン酸エステルカリウム塩、6−o−アルキルアスコルビン酸リン酸エステルカルシウム塩、6−o−アルキルアスコルビン酸リン酸エステルバリウム塩、6−o−アルキルアスコルビン酸リン酸エステルアンモニウム塩、6−o−アルキルアスコルビン酸リン酸エステルモノエタノールアミン塩、6−o−アルキルアスコルビン酸リン酸エステルジエタノールアミン塩、6−o−アルキルアスコルビン酸リン酸エステルトリエタノールアミン塩、6−o−アルキルアスコルビン酸リン酸エステルモノイソプロパノールアミン塩、6−o−アルキルアスコルビン酸リン酸エステルジイソプロパノールアミン塩、6−o−アルキルアスコルビン酸リン酸エステルトリイソプロパノールアミン塩、3−o−グリコシル−L−アスコルビン酸、6−o−β−D−ガラクトピラノシル−L−アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸コレステロールエステル、パルミチン酸−L−アスコルビル、イソパルミチン酸−L−アスコルビル、ジパルミチン酸−L−アスコルビル、ジイソパルミチン酸−L−アスコルビル、ステアリン酸−L−アスコルビル、イソステアリン酸−L−アスコルビル、ジステアリン酸−L−アスコルビル、ジイソステアリン酸−L−アスコルビル、ミリスチン酸−L−アスコルビル、イソミリスチン酸−L−アスコルビル、ジミリスチン酸−L−アスコルビル、ジイソミリスチン酸−L−アスコルビル、2−エチルヘキサン酸−L−アスコルビル、ジ−2−エチルヘキサン酸−L−アスコルビル、オレイン酸−L−アスコルビン酸、2−o−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸、2−o−α−D−マルトシル−L−アスコルビン酸、2−o−α−D−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸、3−o−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸、2−o−α−D−マルトシル−L−アスコルビン酸、2−o−α−D−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸テトライソパルミチン酸エステル、 L−アスコルビン酸テトララウリン酸エステル、L−アスコルビン酸テトラ−2−エチルヘキサン酸エステル、L−アスコルビン酸テトラオレイン酸エステル、5,6−イソプロピリデン−L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸レチノールエステル、L−アスコルビン酸−DL−トコフェロールリン酸エステル、L−3−o−エチルアスコルビン酸、L−アスコルビン酸トリステアレート、L−アスコルビン酸トリパルミテート、L−アスコルビン酸トリオレート、L−アスコルビン酸トリリン酸エステル、2−o−アスコルビルシンナメート、2−o−アスコルビルフェルレート、2−o−アスコルビルカフェーエート、2−o−アスコルビルシナペート、2−o−[6−パルミトイルアスコルビル]−4’− アセトキシフェルレート、DL−α−トコフェロール−2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステル、アスコルビン酸イノシトール結合誘導体、アスコルビン酸リンアミド誘導体、アスコルビン酸アルブチン結合体、アスコルビルホスホリルコレステロール、クロマニルアスコルビン酸誘導体、アスコルビン酸シアル酸誘導体、等をいう。
【0018】
また、本発明に係る染毛剤におけるキナ抽出物および酸化防止剤は、第一剤に含有させてもよく、第二剤に含有させてもよい。ただし、キナ抽出物および酸化防止剤は、第一剤に含有させる染料中間体、カップラー等が、使用前に外気等により酸化されることを防止することができるので、第一剤に含有させることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明に係る染毛剤および染毛後の後処理剤の剤形は、ローション状、クリーム状、泡状、スプレー状等の様々な形態で用いることが可能である。泡状にする際には、LPG、DME、ヘキサン等の各種噴射剤を配合すればよく、これらのガスを使わずに泡状(ノンガスフォーム)にしてもよい。
【0020】
なお、本発明に係る染毛剤または染毛後の後処理剤に含有させるキナ抽出物の含有量は、0.01〜20重量%であればよく、好ましくは、0.1〜5.0重量%である。キナ抽出物の含有量が0.01重量%未満となると、十分に変色防止効果を発揮しなくなるので、好ましくない。また、キナ抽出物の含有量が20重量%を超えると、本発明に係る染毛剤または染毛後の後処理剤の安定性に影響を与える恐れがあるので、好ましくない。そして、キナ抽出物の含有量が0.1〜5.0重量%である場合に、変色防止効果および安定性の効果が最も優れている。
また、酸化防止剤の含有量は、0.01〜10重量%であればよく、好ましくは、0.1〜5.0重量%である。酸化防止剤の含有量が0.01重量%未満となると、十分な抗酸化作用を得られないので、好ましくなく、10重量%を超えると、本発明に係る染毛剤または染毛後の後処理剤の安定性に影響を与える恐れがあるので、好ましくない。そして、酸化防止剤の含有量が0.1〜5.0重量%である場合に、抗酸化作用、変色防止効果および安定性の効果が最も優れている。
【実施例】
【0021】
以下、本発明に係る染毛剤について、いくつかの実施形態を例示して説明する。
【0022】
(実施例1)
本実施例1では、まず、セタノール5.0重量%、ミリスチン酸イソプロピル1.0重量%、蜜蝋2.0重量%、ポリオキシエチレンオレイルアルコール2.0重量%、ラウリル硫酸ナトリウム1.0重量%、強アンモニア水7.0重量%、パラフェニレンジアミン1.0重量%、レゾルシン0.3重量%、メタアミノフェノール0.5重量%からなる酸化染毛剤の基本組成と、キナノキ樹皮エキス(丸善製薬製、商品名:キナ抽出液BG)5.0重量%およびアスコルビン酸5.0重量%とを含有し、これらの含有成分がそれぞれ上記の重量%になるように精製水を加えて調製した第一剤を作製した。また、適量の香料を加えた。
【0023】
さらに、第二剤として、リン酸でpH3.0に調製した過酸化水素5.8重量%水溶液を作製した。
【0024】
次に、上記第一剤および第二剤を重量比1:1にて混合し、pHが7.0〜12.0であることを確認した後、毛束の染色を行い、この染色した毛束を紫外線殺菌器(タカラベルモント製、EX−UV100)に入れて二時間放置した。そして、毛束の紫外線による変色が、本発明に係る染毛剤によってどれだけ抑制されたのか(紫外線変色抑制効果)を、目視および色差〔分光測色計(コニカミノルタ社製、CM−3600d)〕にて、紫外線殺菌器に入れる前と紫外線殺菌器に入れて二時間放置した後とを測定して評価した。
【0025】
(実施例2)
本実施例2は、実施例1における染毛剤の第一剤の組成に関し、アスコルビン酸をアスコルビン酸ナトリウムに変更したものである。
【0026】
(実施例3)
本実施例3は、実施例1における染毛剤の第一剤の組成に関し、アスコルビン酸を無水亜硫酸ナトリウムに変更したものである。
【0027】
(実施例4)
本実施例4は、実施例1における染毛剤の第一剤の組成に関し、アスコルビン酸をL−システインに変更したものである。
【0028】
上記実施例1〜4に係る染毛剤の、紫外線変色抑制効果を評価した結果を下記[表1]に示す。なお、[表1]に、実施例1における染毛剤からアスコルビン酸のみを除いた例(比較例1)、実施例1における染毛剤からキナ抽出物のみを除いた例(比較例2)、実施例2における染毛剤からキナ抽出物のみを除いた例(比較例3)、実施例3における染毛剤からキナ抽出物のみを除いた例(比較例4)、実施例4における染毛剤からキナ抽出物のみを除いた例(比較例5)を示し、実施例1〜4に係る染毛剤の紫外線変色抑制効果と比較例1〜5の紫外線変色抑制効果とを、比較して示している。
【0029】
【表1】

【0030】
以上のように、実施例1〜4に係る染毛剤には、いずれも紫外線変色を抑制する優れた効果が見いだされた。
【0031】
すなわち、本発明に係る染毛剤は、キナ抽出物および酸化防止剤が相乗効果を発揮することで、酸化染料の酸化重合して形成された高分子の一部または全部が、日光紫外線によって壊れることを防ぎ、染色された毛髪が変色することを抑制することができる。さらに、使用時のpHを7.0〜12.0としたので、効率よく毛髪内部にキナ抽出物および酸化防止剤を浸透させることができ、酸化染料の酸化重合して形成された高分子の一部または全部が壊れることを防ぎ、染色された毛髪が変色することを効果的に抑制することが可能となる。したがって、仕上がりの色を長期間維持することができる。
【0032】
以下、本発明に係る染毛後の後処理剤について、いくつかの実施形態を例示して説明する。
【0033】
(実施例5)
本実施例5では、染毛後の後処理剤を、ポリオキシエチレンセチルエーテル0.2重量%、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液(NALCO製)6.0重量%、シリコンエマルジョン(東レ・ダウコーニング製)1.0重量%、安息香酸ナトリウム0.2重量%、エデト酸四ナトリウム四水塩0.05重量%、クエン酸三ナトリウム0.02重量%、キナノキ樹皮エキス(丸善製薬製、商品名:キナ抽出液BG)5.0重量%およびアスコルビン酸5.0重量%を含有し、これらの含有成分がそれぞれ上記の重量%になるように精製水を加えて調製した。また、適量の乳酸(50%)および香料を加えた。なお、pHは、5.5に調製した。
【0034】
次に、任意の酸化染毛剤により染色した毛束に、上記のように調製した染毛後の後処理剤を塗布し、ドライヤーで乾燥させた。さらに、乾燥した毛束を紫外線殺菌器(タカラベルモント製、EX−UV100)に入れて二時間放置した。そして、毛束の紫外線による変色が、本発明に係る染毛後の後処理剤によってどれだけ抑制されたのか(紫外線変色抑制効果)を、紫外線殺菌器に入れる前と紫外線殺菌器に入れて二時間放置した後とを目視にて評価した。
【0035】
(実施例6)
本実施例6は、実施例5における染毛後の後処理剤の組成に関し、アスコルビン酸をアスコルビン酸ナトリウムに変更したものである。
【0036】
(実施例7)
本実施例7は、実施例5における染毛後の後処理剤の組成に関し、アスコルビン酸を無水亜硫酸ナトリウムに変更したものである。
【0037】
(実施例8)
本実施例8は、実施例5における染毛後の後処理剤の組成に関し、アスコルビン酸をL−システインに変更したものである。
【0038】
上記実施例5〜8に係る染毛後の後処理剤について、紫外線変色抑制効果を評価した結果を下記[表2]に示す。なお、[表2]に、実施例5における染毛後の後処理剤の組成からアスコルビン酸のみを除いた例(比較例6)、実施例5における染毛後の後処理剤の組成からキナ抽出物のみを除いた例(比較例7)、実施例6における染毛後の後処理剤の組成からキナ抽出物のみを除いた例(比較例8)、実施例7における染毛後の後処理剤の組成からキナ抽出物のみを除いた例(比較例9)、実施例8における染毛剤からキナ抽出物のみを除いた例(比較例10)を示し、実施例5〜8に係る染毛後の後処理剤の紫外線変色抑制効果と比較例6〜10の紫外線変色抑制効果とを比較して示している。
【0039】
【表2】

【0040】
以上のように、実施例5〜8に係る染毛後の後処理剤には、いずれも紫外線変色を抑制する優れた効果が見いだされた。
【0041】
すなわち、本発明に係る染毛後の後処理剤は、キナ抽出物および酸化防止剤が相乗効果を発揮することで、酸化染料の酸化重合して形成された高分子の一部または全部が、日光紫外線によって壊れることを防ぎ、染色された毛髪が変色することを抑制することができる。さらに、pHを4.0〜7.0の範囲内の5.5とし、毛髪を傷めることのない弱酸性に調製したので、毛髪を傷めることなく、仕上がりの色を長期間維持することができる。
【0042】
以上、本発明におけるいくつかの実施形態を詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0043】
なお、キナ抽出物やアカネ科植物の抽出物について、上記特許文献1に記載の染毛力向上の効果をはじめ、毛髪の保護、質感向上等の効果が研究されている。しかし、本発明にみられるような研究はなされていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染料を含有した染毛剤であって、キナ抽出物と酸化防止剤とを含有し、使用時のpHが7.0〜12.0であることを特徴とする染毛剤。
【請求項2】
酸化染料による染毛後の後処理剤であって、キナ抽出物と酸化防止剤とを含有し、pHが4.0〜7.0であることを特徴とする染毛後の後処理剤。
【請求項3】
請求項1に記載の染毛剤または請求項2に記載の染毛後の後処理剤における、キナ抽出物および酸化防止剤において、
前記キナ抽出物の含有量が0.01〜20重量%であり、前記酸化防止剤の含有量が0.01〜10重量%であることを特徴とする染毛剤または染毛後の後処理剤。
【請求項4】
請求項1に記載の染毛剤または請求項2に記載の染毛後の後処理剤における、キナ抽出物および酸化防止剤において、
前記キナ抽出物の含有量が0.1〜5.0重量%であり、前記酸化防止剤の含有量が0.1〜5.0重量%であることを特徴とする染毛剤または染毛後の後処理剤。

【公開番号】特開2009−46419(P2009−46419A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213385(P2007−213385)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)
【Fターム(参考)】