説明

染毛剤及び染毛方法

【課題】泡状用途の染毛剤として良好な泡立ちや泡質の良好さが確保され、粘液状用途の染毛剤としても液の垂れ落ちを起こさない染毛剤を提供する。
【解決手段】 アルカリ剤含有の第1剤と酸化剤含有の第2剤を含み、各剤の粘液状混合物を頭髪に適用する多剤式染毛剤であって、(A)成分:特定の高級脂肪酸類を包含するイオン性界面活性剤1〜10質量%と、(B)成分:高級アルコールを含有し、両者の質量比B/Aが0.1〜3の範囲内である染毛剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は染毛剤及び染毛方法に関する。更に詳しくは、本発明は、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤を含んで構成される多剤式染毛剤であって、各剤の粘液状混合物を頭髪に適用した後に頭髪上で泡立てて染毛処理を行うことができる一方、頭髪への適用後そのまま染毛処理を行うこともできる染毛剤と、この染毛剤を用いて行う染毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化染毛剤、毛髪脱色剤、毛髪脱染剤等の染毛剤であって、クリーム状、ジェル状等の粘液状のものが提供されている。これらの染毛剤は一般的なものであって、通常、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とを含む2剤式、3剤式等の多剤式に構成され、その各剤の混合物を櫛やブラシ等を用いて頭髪に適用し、染毛を行うものである。
【0003】
このような染毛剤は、高粘度であるため、例えば30分程度に及ぶ染毛処理時間中の液の垂れ落ちを有効に防止できる反面、頭髪全体にムラなく適用することが難しい。特に使用者自身の後頭部等は、鏡を利用しても染毛剤の均一な塗布操作が難しい。そのため、粘液状の染毛剤を頭髪の全体染めに用いる場合には、染め残しや染めムラを生じ易い。その意味では、粘液状の染毛剤は頭髪の根元部分や生え際等の特定部分に対する部分染めに適した染毛剤であると言うことができる。
【0004】
これに対して、例えば下記の特許文献1や特許文献2に開示されるような、多剤式染毛剤の各剤の混合物をエアゾール式あるいはノンエアゾール式のフォーマー容器で泡状に吐出して毛髪に適用する泡沫状染毛剤も提供されている。これらの染毛剤では、吐出した泡を手で揉み込むようにして頭髪全体に均等に行き渡らせることができる。従って、頭髪の全体染めに適した染毛剤であると言うことができる。
【0005】
更に、例えば下記の特許文献3に開示されるような、染毛剤を頭髪に適用した後に頭髪上で泡立てて染毛処理を行うものも知られている。又、下記の特許文献4には、多剤式染毛剤組成物をスポンジ等の柔軟性多孔質材料を含む構造体に含浸させ、スポンジ等を揉むようにして泡立て、この泡状染毛剤を毛髪に適用する頭髪染色方法が開示されている。これらの染毛剤によれば、フォーマー容器を用いずに染毛剤を泡状として、頭髪を染毛処理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−136818号公報
【特許文献2】特開2008−291020号公報
【特許文献3】特開平9−278637号公報
【特許文献4】特開2010−215576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(従来技術の第1の問題点)
ところで、特許文献1や特許文献2に開示されたフォーマー容器を用いる泡沫状染毛剤は、頭髪の全体染めに適した染毛剤であるとは言え、染毛剤の各剤を混合し泡状に吐出するためにフォーマー容器を必要とし、そのためのコストアップが避けられない。
【0008】
一方、特許文献3等に開示された染毛剤は、頭髪に適用後に泡立てるものであるためフォーマー容器を必要としないが、染毛剤を頭髪上で泡立てた際の泡の良好な生成や、泡質の良好さが十分に配慮されているとは言えない。
【0009】
特許文献4の発明は、その段落0003に記載するように、「染毛剤を頭髪上で泡立てて染毛する方式は、垂れ落ちや泡立ての問題から実現困難である」との認識に立脚する。しかし、その課題解決手段は、染毛剤を含浸させたスポンジ等を揉むようにして泡立て、これを頭髪に適用するという迂遠な方法であって、別途に泡立て用の道具を必要とし、面倒かつ効率が悪い。
【0010】
即ち、特許文献1〜特許文献4に係る従来の染毛剤は、フォーマー容器又はそれに代わる泡立て用の道具を必要とする点でコスト高若しくは面倒であり、それらの道具等を要しない場合でも、泡立ちや泡質の良好さが十分に配慮されてはいない。
【0011】
(従来技術の第2の問題点)
従来のクリーム状、ジェル状等の粘液状染毛剤は、泡立てて頭髪に適用することは想定していないし、従って当然ながら、泡立ちを確保できるような成分配合の設計にもなっていない。
【0012】
逆に、特許文献1〜特許文献4に係る染毛剤は、もっぱら泡沫状として頭髪に適用するものである。特許文献4では、その段落0008において「部分染めにも全頭染めにも対応できる」旨の記載があるが、これは「泡沫状の染毛剤として部分染めにも全頭染めにも対応できる」という意味で記載されているに過ぎない。従って、特許文献1〜特許文献4に係る染毛剤は、頭髪に適用後、泡立てることなくそのまま染毛処理を行うことは予定していないし、当然ながら、そのような使用に要求される好適な粘度は考慮されていない。
【0013】
頭髪に適用後に泡立てて染毛処理する染毛剤(以下、この用途に用いる染毛剤を「泡状用途の染毛剤」とも呼ぶ)も一定の粘性を持つ場合があるが、その場合には、頭髪への適用後、泡立てるまでのごく短時間に垂れ落ちを防止できれば足りる。これに対して、通常のクリーム状、ジェル状等の一般的な染毛剤(以下、この用途に用いる染毛剤を「粘液状用途の染毛剤」とも呼ぶ)では、例えば30分程度の比較的長い染毛処理時間にわたって垂れ落ちを防止する必要がある。即ち、泡状用途の染毛剤と、粘液状用途の染毛剤とでは、要求される粘性のレベルが明らかに異なる。
【0014】
ところで、部分染めに好適な粘液状用途の染毛剤と、全体染めに好適な泡状用途の染毛剤とは、実際には相互に関連して用いられる場合も多い。例えば、特定の染毛機会には泡状用途の染毛剤を用いて頭髪の全体染めを行い、次の染毛機会には粘液状用途の染毛剤を用いて頭髪の根元部分の部分染めのみを行いたい場合もある。
【0015】
このような場合において、単一の染毛剤であって、全体染め用の泡状用途の染毛剤としても、部分染め用の粘液状用途の染毛剤としても好適に利用できる、いわば「2WAY型」の良好な染毛剤があれば、それらの各用途の染毛剤をそれぞれに準備しておく場合に比較して、単一の染毛剤を準備しておけば済むから、非常に便利かつ経済的である。
【0016】
しかし、前記特許文献4の段落0003でも指摘するように、このような染毛剤には、頭髪に適用する際に30分程度の染毛処理時間にわたって液の垂れ落ちを起こさない高い粘度を備え、そのような高粘度であっても頭髪上で泡立てる際には良好な泡質の泡を生成するという難しい要求を伴う。更に、このような要求に対応するための配合成分が消泡作用を示したり、泡質を悪化させたりするという不具合も回避する必要がある。このような要求に対応できる2WAY型の染毛剤は、未だ提供されていない。
【0017】
(本発明の課題)
そこで本発明は、各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、頭髪上で泡立てて染毛処理を行う多剤式染毛剤(泡状用途の染毛剤)であって、良好な泡立ちや泡質の良好さが確保されるものを提供することを、解決すべき第1の課題とする。
【0018】
又、本発明は、上記のような多剤式染毛剤であって、各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後そのまま染毛処理を行うこともでき(粘液状用途の染毛剤)、その際に液の垂れ落ちを起こさないものを提供することを、解決すべき第2の課題とする。
【0019】
更に本発明は、これらの多剤式染毛剤を用いることで可能となる、泡状用途の染毛剤としての使用と、粘液状用途の染毛剤としての使用との2WAY型の染毛方法を提供することを、解決すべき第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤を含んで構成され、各剤の粘液状混合物を頭髪に適用する多剤式染毛剤であって、下記(A)成分及び(B)成分を含有し、これら両成分の含有量の質量比B/Aが0.1〜3の範囲内である、染毛剤である。
【0021】
(A)成分:1〜10質量%のイオン性界面活性剤(但し、ラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの塩以外の高級脂肪酸及びそれらの塩は、(A)成分から除外される。)
(B)成分:高級アルコール
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る染毛剤が下記(1)及び(2)の一方又は双方の染毛処理に用いるものである、染毛剤である。
【0022】
(1)前記各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、頭髪上で泡立てて染毛処理を行う。
【0023】
(2)前記各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、そのまま染毛処理を行う。
【0024】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る染毛剤において、(B)成分の90質量%以上が直鎖型高級アルコールである、染毛剤である。
【0025】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る染毛剤が、更に下記(C)成分を含有する、染毛剤である。
【0026】
(C)糖系の非イオン性界面活性剤、HLBが12以上20未満の非イオン性界面活性剤及びアミド化合物である非イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種。
【0027】
この第4発明において、「HLB」とは、親水親油バランス:Hydrophile-Lipophile Balanceの略称であって、一般的に、界面活性剤の分子が持つ親水性と親油性の相対的な強さを表すパラメーターであり、HLBの値が大きいほど親水性が強く、HLBの値が小さいほど親油性が強い。HLBの値は公知の Griffin の式から算出される。
【0028】
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、第1発明〜第4発明のいずれかに記載の染毛剤を用いて、下記(3)及び(4)の一方又は双方の染毛処理を行う、染毛方法である。
【0029】
(3)染毛剤の各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、頭髪上で泡立てて染毛処理を行う。
【0030】
(4)染毛剤の各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、そのまま染毛処理を行う。
【発明の効果】
【0031】
第1発明の多剤式染毛剤は、その各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、頭髪上で泡立てて染毛処理を行うことができ、その際に、良好な泡立ち及び泡質の良好さが確保される。その理由は、(A)成分として特定の高級脂肪酸等を除くイオン性界面活性剤を1〜10質量%配合し、(B)成分として高級アルコールを配合すると共に、(A)成分と(B)成分の含有量の質量比B/Aを0.1〜3の範囲内としている点にある。
【0032】
(A)成分は主として良好な泡立ち及び泡質と粘液状混合物の粘度に関与する。(A)成分の配合量が1質量%未満であると良好な泡立ちが得られず、その配合量が10質量%を超えると十分な粘度が得られない。
【0033】
なお、(A)成分に代えて非イオン性界面活性剤を配合しても、上記の効果は確保されない。又、イオン性界面活性剤の1種である高級脂肪酸の内、ラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの塩以外の高級脂肪酸及びそれらの塩を(A)成分に代えて配合しても、上記の効果は確保されない。
【0034】
(B)成分は主として各剤の粘液状混合物の粘度に関与するが、一定の消泡作用も示す。(B)成分の配合により、上記の泡状用途の染毛剤としての特徴を損なうことなく、粘液状用途の染毛剤としての好適な粘度が実現される。(B)成分の配合量の絶対値は本発明の効果を直接には左右しないが、(B)成分の(A)成分に対する含有量の質量比B/Aは、本発明の効果を左右する。即ち、質量比B/Aが0.1未満であると十分な粘度が得られず、各剤の粘液状混合物を頭髪に適用して粘液状用途の染毛剤として用いる際に、液の垂れ落ちを起こす。質量比B/Aが3を超えると、(B)成分の消泡作用によって、泡状用途の染毛剤として用いる際の良好な泡質が得られない。
【0035】
第2発明によれば、上記の第1発明の効果に基づき、本発明の染毛剤を、(1)に規定する泡状用途の染毛剤として用い、及び/又は、(2)に規定する粘液状用途の染毛剤として用いる用途が提供される。
【0036】
第3発明に規定するように、本発明の染毛剤において、(B)成分の90質量%以上が直鎖型の高級アルコールであることが、染毛剤の好適な粘度及び良好な泡質のために、特に好ましい。
【0037】
第4発明に規定するように、本発明の染毛剤において、更に(C)成分として糖系の非イオン性界面活性剤、HLBが12以上20未満の非イオン性界面活性剤及びアミド化合物である非イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種を含有することが、染毛剤の良好な泡質及び好適な粘度の実現のために、特に好ましい。
【0038】
第5発明によれば、上記の第1発明の効果に基づき、本発明の染毛剤を、(3)に規定する泡状用途の染毛剤として用いる染毛方法、及び/又は、(4)に規定する粘液状用途の染毛剤として用いる染毛方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0040】
〔染毛剤〕
本発明に係る染毛剤は、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤を含んで構成され、各剤の粘液状混合物を頭髪に適用する多剤式染毛剤である。
【0041】
ここにおいて「多剤式染毛剤」とは、上記の第1剤及び第2剤から構成される染毛剤の他、例えば上記の第1剤及び第2剤に加えて酸化助剤を含有する第3剤も付加された多剤式染毛剤のような、3剤式以上の染毛剤も包含される。又、「染毛剤」とは、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤を含んで構成される限りにおいて限定されず、例えば、酸化染毛剤、毛髪脱色剤、毛髪脱染剤等の染毛剤が包含される。
【0042】
本発明に係る染毛剤は、上記した第1剤に含有されるアルカリ剤、第2剤に含有される酸化剤に加え、(A)成分として1〜10質量%のイオン性界面活性剤を含有し、(B)成分として高級アルコールを含有し、かつ、(A)成分及び(B)成分の含有量の質量比B/Aが0.1〜3の範囲内であることを、必須の条件とする。
【0043】
(A)成分の含有量としては、特に、2〜8質量%の範囲内であることが好ましく、質量比B/Aとしては、特に、0.2〜2の範囲内であることが好ましい。
【0044】
なお、(A)成分、(B)成分はそれぞれ、多剤式染毛剤における第1剤、第2剤等の任意の1つの剤のみに配合されていても良いし、異なる2以上の剤に分散して配合されていても良い。(A)成分と(B)成分が同じ剤に配合されていても良いし、異なる剤に配合されていても良い。(A)成分、(B)成分以外の後述する各成分についても、特段の明記がある場合を除き、多剤式染毛剤における任意の1つの剤のみに配合されていても良いし、異なる2以上の剤に分散して配合されていても良い。
【0045】
一般的には、高級脂肪酸及びこれらの塩もイオン性界面活性剤の1種であるが、それらの内、本発明の(A)成分としては、ラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの塩のみが包含される。それ以外の高級脂肪酸やその塩は本発明の(A)成分としての効果を奏しないので、(A)成分には包含されない。ここでいう「包含されない」とは、「染毛剤の成分として含有されても構わないが、(A)成分には算入されない」という意味である。なお、高級脂肪酸に該当しない脂肪酸、即ち炭素数が10未満である脂肪酸やその塩も本発明の(A)成分ではない。
【0046】
又、(A)成分の「1〜10質量%」という含有量は、多剤式染毛剤における各剤の混合時における質量%数を意味する。本願明細書において、他の成分についての含有量を示す質量%数も、特段のことわりがない限り、各剤の混合時における質量%数を意味する。
【0047】
(B)成分である高級アルコールとは、主に脂肪族の高級アルコール、特に脂肪族の直鎖型高級アルコールであるが、これらに限定されない。高級アルコールとしては、炭素数が10以上のアルコールが好ましく、特に炭素数が12〜22のアルコールが好ましい。(B)成分である高級アルコールとしては、その90質量%以上が直鎖型高級アルコールであるものが特に好ましい。染毛剤における(B)成分の含有量は、前記の質量比B/Aが0.1〜3の範囲内である限りにおいて特段に限定されないが、例えば0.2〜15質量%とすることができる。
【0048】
更に、本発明に係る染毛剤は、各剤の混合物が粘液状である。「粘液状」とは、染毛剤を粘液状用途の染毛剤として使用する際に、頭髪に適用した混合物が、必要な染毛処理時間(3〜60分程度、通常は例えば30分程度)にわたって液の垂れ落ちを起こさない程度の粘度を備える液状であることをいう。「粘液状」の形態としては、例えばジェル状、クリーム状等を挙げることができる。本発明の染毛剤においては各剤の混合物が粘液状であることが必要であって、混合前の各剤は粘液状であっても良いし、各剤の内の一部の剤が非粘性の液状あるいは粉末状であっても良い。
【0049】
本発明に係る染毛剤は、上記の成分の他に、更に、(C)成分として糖系の非イオン性界面活性剤、HLBが12以上20未満の非イオン性界面活性剤及びアミド化合物である非イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。(C)成分としては、特に、糖系の非イオン性界面活性剤が好ましい。染毛剤における(C)成分の含有量は特段に限定されないが、例えば0.01〜5質量%とすることができる。
【0050】
〔染毛剤の用途あるいは使用方法〕
本発明の染毛剤は下記(a)及び(b)の一方又は双方の染毛処理に用いることができ、あるいは、本発明の染毛剤を用いて下記(a)及び(b)の一方又は双方の染毛処理を行うという染毛方法を実施することができる。
【0051】
(a)多剤式染毛剤の各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、頭髪上で泡立てて染毛処理を行う。即ち、泡状用途の染毛剤としての使用である。この場合、各剤の粘液状混合物は、頭髪に適用後、通常は直ちに頭髪上で泡立てる。泡立てた後、3〜60分程度放置して染毛処理を行う。
【0052】
(b)多剤式染毛剤の各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、そのまま染毛処理を行う。即ち、粘液状用途の染毛剤としての使用である。この場合、各剤の粘液状混合物は、頭髪に適用後、そのまま3〜60分程度放置して染毛処理を行う。
【0053】
上記において、「一方の染毛処理を行う」とは、本発明の染毛剤を、その特性を利用して用途又は使用方法を任意に選択し、もっぱら泡状用途の染毛剤としての処理に利用するか、又はもっぱら粘液状用途の染毛剤としての処理に利用することをいう。又、「双方の染毛処理を行う」とは、本発明の染毛剤を、その特性を利用して、泡状用途の染毛剤及び粘液状用途の染毛剤としての処理に利用することをいう。後者の場合、同じ包装又は容器に収容された染毛剤を染毛の機会があるごとに両用途に使い分けるという利用の態様もあり、同じ染毛の機会においてその染毛剤を頭髪の所定の部分に応じて同時に両用途に使い分けるという利用の態様も可能である。
【0054】
〔染毛剤の主要成分〕
((A)成分)
(A)成分は、1種又は2種以上のイオン性界面活性剤である。イオン性界面活性剤には、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が包含される。アニオン性界面活性剤には、高級脂肪酸及びその塩が包含される。
【0055】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(ベヘントリモニウムクロリド)、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が例示される。
【0056】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(以下、「POE」という)ラウリル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸アンモニウム、POEステアリル硫酸ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルリン酸及びその塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩類、N−ラウロイルメチル−β−アラニン塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルグルタミン酸塩等の他、高級脂肪酸であるラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの高級脂肪酸の塩が例示される。
【0057】
なお、上記以外の高級脂肪酸であるパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等や、それらの高級脂肪酸の塩は(A)成分ではないが、本発明の染毛剤に含有されても構わない。
【0058】
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、イミダゾリン、アミドベタイン、カルボベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、アミドスルホベタイン、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が例示される。
【0059】
((B)成分)
(B)成分は、1種又は2種以上の高級アルコールである。高級アルコールの種類は必ずしも限定されないが、脂肪族の高級アルコール、特に脂肪族の直鎖型高級アルコールが好ましく、具体的には、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等が例示される。
【0060】
((C)成分)
(C)成分は、糖系の非イオン性界面活性剤、HLBが12以上20未満の非イオン性界面活性剤及びアミド化合物である非イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種である。具体的にはこれらの中でも、糖系の非イオン性界面活性剤が好ましい。糖系の非イオン性界面活性剤として、具体的には、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ラウリルグルコシド、アルキル(8〜16)グルコシド等のアルキルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等のショ糖脂肪酸エステル等が例示される。HLBが12以上20未満の非イオン性界面活性剤として、具体的には、POE(9)ラウリルエーテル、POE(9)トリデシルエーテル、POE(7)ラウリルエーテル、POE(10)セチルエーテル、POE(10)ステアリルエーテル、POE(10)オレイルエーテル、POE(15)セチルエーテル、POE(21)ラウリルエーテル、POE(150)ステアリルエーテル、POE(20)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(40)セチルエーテル、POE(20)ステアリルエーテル、POE(30)ベヘニルエーテル、POE(150)ベヘニルエーテル、POE(40)オレイルエーテル、POE(45)オレイルエーテル、POE(50)オレイルエーテル、POE(60)セチルステアリルジエーテル、POE(100)硬化ヒマシ油、POE(20)POP(4)セチルエーテル等が例示される。アミド化合物である非イオン性界面活性剤として、具体的には、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等のアルキロールアミド、POEステアリン酸アミド等のPOE脂肪酸アミド等が例示される。これらはその1種類を単独で用いても良いが、その2種類以上を併用しても良い。
【0061】
((C)成分以外の非イオン性界面活性剤)
なお、(C)成分以外の非イオン性界面活性剤は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、染毛剤に含有されても構わない。
【0062】
(C)成分以外の非イオン性界面活性剤としては、上記した(C)成分の範囲に属するものを除き、下記のものが例示される。
【0063】
1.POEアルキルエーテル
2.POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル。
【0064】
3.モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン等のPOEソルビタン脂肪酸エステル。
【0065】
4.モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン等のPOEグリセリルモノ脂肪酸エステル。
【0066】
5.テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ等のPOEソルビトール脂肪酸エステル。
【0067】
6.POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油。
【0068】
7.モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール。
【0069】
8.親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン等の高級脂肪酸グリセリンエステル。
【0070】
9.POEラノリン、POEラノリンアルコール、POEソルビトールラノリン等のラノリン誘導体。
【0071】
10.ジメチルラウリルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシド。
【0072】
11.レシチン誘導体水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン等。
【0073】
12.POE・ポリオキシプロピレン(以下POPと略す)セチルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル。
【0074】
(その他の主要成分)
本発明に係る染毛剤は、例えば酸化染毛剤、毛髪脱色剤、毛髪脱染剤等であって、いずれもアルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤を含んで構成される。
【0075】
酸化染毛剤は第1剤中のアルカリ剤により毛髪を膨潤させて酸化染料中間体と第2剤中の酸化剤を毛髪内部に浸透させ、併せてアルカリ剤に基づくpH変化により酸化剤の作用を促進し、酸化剤により毛髪に含まれるメラニンを分解・脱色すると共に、第1剤に配合された酸化染料中間体を酸化重合させ発色させる。毛髪脱色剤は上記の酸化染毛剤における第1剤に酸化染料中間体を含有せず、メラニンの分解・脱色のみを行う。毛髪脱染剤は毛髪脱色剤の組成において更に酸化助剤として各種の過硫酸塩を配合し、毛髪中に存在する酸化染料中間体の重合体の分解・脱色も行う。酸化染料中間体は主要中間体からなり、あるいは主要中間体とカプラーからなる。酸化染毛剤には、染毛色調を調整するため、更に直接染料を配合することがある。
【0076】
アルカリ剤としては、アンモニア、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)、アンモニウム塩、有機アミン類(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、グアニジン等)、無機アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)及びそれらの塩等が例示される。
【0077】
酸化剤としては、臭素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化物等。過酸化物としては、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が例示される。
【0078】
酸化染料中間体の内、主要中間体としては、主としてo−又はp−のフェニレンジアミン類あるいはアミノフェノール類である着色染料先駆物質が挙げられ、具体的にはp−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン(p−トルイレンジアミン)、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール及びそれらの塩類等が例示される。塩類としては、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が例示される。
【0079】
カプラーとしては、主としてm−のジアミン類、アミノフェノール類又はジフェノール類が挙げられ、具体的にはレゾルシン、カテコール、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸、ハイドロキノン、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、3,3’−イミノジフェニール、1,5−ジヒドロキシナフタレンおよびタンニン酸及びそれらの塩等が例示される。
【0080】
直接染料としては、各種の酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料、天然染料、分散染料等が挙げられる。
【0081】
〔染毛剤におけるその他の成分〕
本発明に係る染毛剤には、上記の各成分の他に、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、この種の染毛剤に配合されることがある各種の成分を適当量加えることができる。そのような成分の幾つかの例を以下に述べる。
【0082】
(油性成分)
油性成分としては、前記した(A)成分の1種としての高級脂肪酸、(B)成分である高級アルコールを除き、油脂、炭化水素、ロウ類、アルキルグリセリルエーテル、エステル類、シリコーン類等が例示される。
【0083】
油脂としては、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油等が例示される。炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が例示される。ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等が例示される。アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)等が例示される。エステル類としては、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、オクタン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等が例示される。シリコーン類としては、メチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、各種の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が例示される。
【0084】
(多価アルコール)
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類や、グリセリン、ジグリセリン等のグリセリン類等が例示される。
【0085】
(ペプチド、アミノ酸系成分)
ペプチド、アミノ酸系成分としては、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、フィブロイン、シルク、カゼイン、ゼラチン等の動物系蛋白質、コムギ、オオムギ、カラスムギ、ダイズ、アーモンド等の植物から得られるタンパク質、これらのタンパク質を酸、アルカリ、酵素等により加水分解したもの、等が例示される。
【0086】
(高分子化合物)
高分子化合物としては、カチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン等が例示される。
【0087】
カチオン化セルロースとしては、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる4級アンモニウム塩の重合体(ポリクオタニウム-10、例えばレオガードG、同GP;ライオン社)、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体(ポリクオタニウム-4、例えばセルコートH-100;ナショナルスターチアンドケミカル社)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等が例示される。
【0088】
ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体としては、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合体(ポリクオタニウム-6、例えばマーコート100;Nalco社)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22、例えばマーコート280;Nalco社)、アクリル酸/ジアリル第四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-39、例えばマーコートプラス3331;Nalco社)等が例示される。
【0089】
4級化ポリビニルピロリドンとしては、ビニルピロリドン(VP)とメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体と硫酸ジエチルから得られる4級アンモニウム塩(ポリクオタニウム-11、例えばガフコート734、同755;アイエスピー・ジャパン社)等が例示される。
【0090】
その他、高分子化合物としては、カルボキシビニルポリマー等のアニオン性ポリマー、水溶性ポリマー等が例示される。水溶性ポリマーの具体例としては、アラビアガム、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、デンプン、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物性高分子、デキストラン、プルラン等の微生物系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸系高分子、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジウム等が例示される。
【0091】
(pH緩衝成分)
pH緩衝成分は、無機酸又は有機酸である酸成分と、無機アルカリ又は有機アルカリであるアルカリ成分とからなる。特に、有機酸と有機アルカリからなるものが好ましい。
【0092】
有機酸としては、ヒドロキシカルボン酸(グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等)、ジカルボン酸(コハク酸等)が例示される。
【0093】
有機アルカリとしては、モルフォリン等の揮発性アルカリ成分、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン類、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のアミノアルコール類、L−アルギニン、L−リジン、L−ヒスチジン等の塩基性アミノ酸が例示される。
【0094】
(カチオン性化合物)
カチオン性化合物としては、酸中和型の第三級アミドアミンが例示される。
【0095】
(上記以外の任意的配合成分)
本発明の染毛剤は、上記以外にも、水、メチルパラベン、フェノキシエタノール等の防腐剤、EDTA−2Na等のキレート剤、セラミド類、ビタミン類、植物抽出物、紫外線吸収剤、香料等を任意に含有することができる。
【実施例】
【0096】
以下に本発明の実施例及び比較例を説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施例及び比較例によって限定されない。
【0097】
〔酸化染毛剤の第1剤及び第2剤〕
末尾の表1に示す例1〜例5に係る酸化染毛剤の第1剤、及び末尾の表2に示す例1〜例9に係る酸化染毛剤の第2剤を、それぞれ調製した。表1に示す第1剤の成分名中、「ミリスチン酸K」とあるのは、ミリスチン酸のカリウム塩である。これらの第1剤及び第2剤は、常法に従い、いずれもクリーム状又はジェル状に調製した。表1、2において成分の組成を示す数値の単位は「質量%」であるが、これらの数値は、第1剤又は第2剤中の質量%数であって、第1剤及び第2剤の混合時における質量%数ではない。
【0098】
〔実施例及び比較例に係る酸化染毛剤〕
表1に示す例1〜例5に係る第1剤と表2に示す例1〜例9に係る第2剤の内から、表3の「第1剤」、「第2剤」の欄にそれぞれ示す特定の例番号に係る第1剤と第2剤を選択して組合わせることにより、表3の実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例5に示す2剤式の酸化染毛剤を構成した。これらの実施例及び比較例について、以下に述べるように第1剤:第2剤=1:3の質量比で混合した際の混合液における、(A)成分の含有量(質量%)を表3の「A」の欄に、(B)成分の含有量(質量%)を表3の「B」の欄に、両者の含有量の質量比B/Aを表3の「B/A」の欄に、それぞれ示す。
【0099】
〔実施例及び比較例に係る酸化染毛剤の評価〕
(垂れ落ち難さの評価)
実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例5に示す酸化染毛剤について、それぞれの第1剤の1質量部と第2剤の3質量部とを混合してクリーム状又はジェル状の混合物とし、この混合物をそれぞれ同量、評価用のウィッグに均一に塗布した。そして、40℃の条件下、塗布してから30分間にわたり、ウィッグからの垂れ落ち難さを経時的に観察し、評価した。従って、この評価は、酸化染毛剤を粘液状用途の染毛剤として用いる場合における評価である。
【0100】
それらの評価結果は8段階にランク分けした。即ち「放置中、クリーム又はジェルが頭髪上で流れることなく、垂れ落ちが全く見られなかった」場合の評価を「◎」、「放置中、クリーム又はジェルが頭髪上でわずかに流れたが、垂れ落ちが見られなかった」場合の評価を「◎〜○」、「放置中、クリーム又はジェルが頭髪上で流れたが、垂れ落ちが見られなかった」場合の評価を「○」、「30分以内にクリーム又はジェルがわずかに垂れ落ちた」場合の評価を「○〜△」、「30分以内にクリーム又はジェルが垂れ落ちた」場合の評価を「△」、「15分以内にクリーム又はジェルが垂れ落ちた」場合の評価を「△〜×」、「5分以内にクリーム又はジェルが垂れ落ちた」場合の評価を「×」、「塗布直後からクリーム又はジェルが垂れ落ちた」場合の評価を「××」とした。
【0101】
実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例5に係る酸化染毛剤についての垂れ落ち難さの評価結果を、表3の「液ダレ」の欄に示す。
【0102】
(泡質の評価)
実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例5に示す酸化染毛剤について、上記の「垂れ落ち難さの評価」の場合と同じ質量比で調製した第1剤と第2剤の混合物を、それぞれ同量、評価用のウィッグに均一に塗布した。そして直ちに、ウィッグ上で揉みこんで泡立てた。その際の泡のキメ細かさ、嵩高さを観察することにより、泡質を評価した。従って、この評価は、酸化染毛剤を泡状用途の染毛剤として用いる場合における評価である。
【0103】
それらの評価結果は8段階にランク分けした。即ち「非常に泡立ち易く、泡が全く消えない」場合の評価を「◎」、「非常に泡立ち易く、泡がほとんど消えない。又は泡立ち易く、泡が全く消えない」場合の評価を「◎〜○」、「泡立ち易く、泡がほとんど消えない」場合の評価を「○」、「泡立ち易く、泡がわずかに消える、又はやや泡立ち易く、泡がほとんど消えない」場合の評価を「○〜△」、「やや泡立ち難く、泡がわずかに消える」場合の評価を「△」、「やや泡立ち難く、泡が消える、又は泡立ち難く、泡がわずかに消える」場合の評価を「△〜×」、「泡立ち難く、泡が消える」場合の評価を「×」、「泡立たない」場合の評価を「××」とした。
【0104】
実施例1〜実施例8、比較例1〜比較例5に係る酸化染毛剤についての泡質の評価結果を、表3の「泡質」の欄に示す。仮に高級脂肪酸であるステアリン酸を(A)成分に算入するとした場合、比較例5に係る1剤/2剤混合液の(A)成分含有量は1.325質量%となり、質量比A/Bの値も含めて本発明の実施例に該当することになる。しかし実際には、ステアリン酸は本発明の(A)成分ではなく、評価結果においても「泡質」の評価が大きく劣る。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によって、泡状用途の染毛剤として良好な泡立ちや泡質の良好さが確保され、粘液状用途の染毛剤としても液の垂れ落ちを起こさない染毛剤が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤を含んで構成され、各剤の粘液状混合物を頭髪に適用する多剤式染毛剤であって、下記(A)成分及び(B)成分を含有し、これら両成分の含有量の質量比B/Aが0.1〜3の範囲内であることを特徴とする染毛剤。
(A)成分:1〜10質量%のイオン性界面活性剤(但し、ラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの塩以外の高級脂肪酸及びそれらの塩は、(A)成分から除外される。)
(B)成分:高級アルコール
【請求項2】
前記染毛剤が下記(1)及び(2)の一方又は双方の染毛処理に用いるものであることを特徴とする請求項1に記載の染毛剤。
(1)前記各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、頭髪上で泡立てて染毛処理を行う。
(2)前記各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、そのまま染毛処理を行う。
【請求項3】
前記染毛剤において、(B)成分の90質量%以上が直鎖型高級アルコールであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の染毛剤。
【請求項4】
前記染毛剤が、更に下記(C)成分を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の染毛剤。
(C)糖系の非イオン性界面活性剤、HLBが12以上20未満の非イオン性界面活性剤及びアミド化合物である非イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の染毛剤を用いて、下記(3)及び(4)の一方又は双方の染毛処理を行うことを特徴とする染毛方法。
(3)染毛剤の各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、頭髪上で泡立てて染毛処理を行う。
(4)染毛剤の各剤の粘液状混合物を頭髪に適用後、そのまま染毛処理を行う。

【公開番号】特開2012−162465(P2012−162465A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22085(P2011−22085)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】