説明

染色サンプルにおける光吸収のカラー表示型単色光吸収定量法

吸収検出システムが提供される。このシステムは、複数の単色光源(201)をおよび複数の単色光光源から光を複数波長に分離するための分離器を備える。複数の検出器(209,210,211)は、単一波長の光受けて、生物学的サンプル(202)における光吸収を測定する。例えば、本発明は、吸収検出システムであって、複数の単色光源;該複数の単色光源からの光を複数の波長に分離するための分離器;および複数の検出器であって、該複数の検出器の各々が単一波長の光を受けて生物学的サンプルにおける光の吸収を測定する、複数の検出器を備える、吸収検出システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー走査型サイトメトリーに関し、より具体的には、有彩色素(chromatic dye)、蛍光色素または他の色素で染色された組織サンプルまたは細胞サンプルの分析のための多色レーザー吸収を利用する、画像化システムおよび画像化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー走査型サイトメトリー(Laser scanning cytometry;LSC)は、1個以上のレーザービームを分析対象面(代表的には細胞または組織を代表的には含む)に沿って走査する技術である。光電子増倍管およびフォトダイオードを使用して、サンプルから発した蛍光ならびに検査レーザー光(interrogating laser light)における変化を検出するために使用される。これらの検出器の出力はデジタル化され、コンピュータ制御された顕微鏡載物台が同期して移動することで、走査される標本のその領域の画像として処理され得る検出器出力のコンピュータメモリアレイの集積することを可能にする。このメモリアレイは、その画像におけるピクセル領域とスライドにおける物理的な領域との間で一対一対応が存在せず、その代わり、サイズ可変型評価領域が、そのピクセル位置を中心に置かれる点において、カメラによる画像とは異なる。このアレイ「イメージ(画像)」は、目的の事象を同定するための多くの方法によってセグメント化される。定量データは、事象の各々について計算され、複数の特徴からなる(multi−feature)データは、代表的な分析では数多くの事象の各々について分析される。
【0003】
米国特許第5,072,382号および同第5,107,422号は、レーザー走査型サイトメータの一般的な走査について記載している。米国特許第6,002,788号は、レーザー光の散乱、光損失および吸収の測定に関してその詳細を記載する。上述の特許の各々は、本明細書において参考として援用される。
【0004】
光の散乱および吸収もまた、フォトダイオード検出器を使用するLSCシステムにより測定され得る。このような型のシステムである場合、ブロッカーバー(blocker bar)が、レーザービームと検出器との間に配置されている。細胞または他の対象物がそのレーザービームと相互作用すると、対象物によって散乱された光はブロッカーバーを通過して、検出器に衝突し、信号を増大させる。その得られた画像には、暗いバックグラウンド中に、細胞または対象物が存在する明るい領域が存在する。このタイプの光散乱は、フローサイトメトリーに使用される光散乱に類似しており、しばしば、細胞をはじめに同定するのに使用される。光散乱測定のバリエーションは、高度な形態学的な細部までの細胞の明視野像を取得するために使用され得る。これは、ブロッカーバーの位置を変更してどの時点においても検出器に衝突するようにレーザービームの位置を割り当てることにより達成される。どの時点でも検出器に衝突したレーザー部分により生じた信号は、基準信号としての役割を果たす。細胞および他の対象物が、そのレーザービームと相互作用する場合、その中の構造が、光の散乱および/または吸収がおこし、基準信号の強度を調節する(このようなLSCおよびシステムの例は、米国特許第6,002,788号に記載されている)。
【0005】
レーザー光測定の別のバリエーションは、「光損失モード」である。このバリエーションにおいて、ブロッカーバーは使用されない。そのレーザービームは、連続的に検出器 に衝突して、高い基準信号を生成する。対象物がそのビームと相互作用したときに、そのビーム信号強度は低下する。屈折させ得る対象物(例えば、ビーズおよび球状細胞)は、その検出器から離れるように光を屈折させ、有彩色素により染色された対象物(例えば、組織片内にある細胞)は、レーザー光を吸収する。両方の場合において、明視野像が生成されて、対象物が暗くなる。これらの画像は、多くの場合において、デジタル反転され、その結果、蛍光に基づく分析と類似の様式でその画像が分析され得る。(このようなLSC およびこのようなシステムは、共有に係る米国特許出願第11/040,183号(本明細書中で参考として援用される)において記載されており、この米国特許出願第11/040,183号は、「Method and Device for Interrogating Samples Using laser scanning cytometry and Other Techniques」と題され、2005年1月21日に出願されたものである)。
【0006】
ほとんどのレーザー走査型サイトメータは、広範な蛍光色素を励起させるための複数のレーザーを備えている。多くの場合、この分析は、多重化した様式で行われ、はじめに、走査領域はある色のレーザーで走査され、次いで、その同じ領域が、第二の色のレーザーで走査される。両方の走査結果によるデータが重ね合わせ処理され、その画像が交換可能なものとなる(複数のレーザーを使用するLSCシステムの例は、米国特許第5,885,840号(これは、本明細書中で参考として援用される)において記載されている。)。
【0007】
複数レーザー型LSCシステムに従う場合、各々の走査経路に関して、レーザーの散乱の結果または吸収結果が取得され得る。有彩色素は、その電磁スペクトルにおける異なる部分で光を吸収し、検査波長(interrogating wavelength)およびその色素の吸収スペクトル応答が、その色素にそれにとって特徴的な色を与える。使用されるレーザーの各々に関して、サンプルを染色するのに使用される様々な色素ごとに異なる吸収のビームが存在する。標準的なiCyte(登録商標)LSCシステム(Compucyte Corporation(Cambridge, Massachusetts)製)では、青色レーザー吸収は、図IAおよびIBにおいて示されているように、赤色レーザー吸収を使用することで得られ得る。
【0008】
上述のように、カラー表示(multi−color)型蛍光技術が、フローサイトメトリー分析の領域の多くえ開発された。リサーチグレードの機器は、組み合わせた複数の励起レーザーおよび分離バンドフィルタに接続された光電子増倍管を使用して個々細胞における蛍光を12色まで測定する能力がある。カラー表示蛍光分析を実施するに当たり出くわす問題の1つは、スペクトルの重なり合いであって、ある色素の蛍光発光スペクトルが、数個の検出器により測定される帯域まで広がるのである。干渉性の色素の検出器から信号の割合をとって、定量している信号からそれを差し引くことにより上述のスペクトルの重なりを補正し得る補償(Compensation)技術が開発されている。
【0009】
生物学の分野において、組織分析はしばしば有彩色素で染色された組織の切片を使用して実施される。このような技術は、多くの場合、病理検査学、薬物発見、バイオマーカー発見、および組織分析に基づいた薬物安全手続とともに利用される。有彩色素は、明視野顕微鏡に関連する技術によって検査され、有彩色素により染色されたサンプルを評価する方法は、(1)染色強度および染色された細胞数を含む種々の因子に基づく、手作業によるスコア付け(0〜+++);および(2)サンプルのデジタル式光学顕微鏡により取得した画像を使用する自動画像分析技術(光学密度測定が計量指標として使用される)が挙げられる。
【0010】
組織切片の定量分析を行う場合の本質的な問題の1つは、組織が本来的に異質成分からなるものであり、内因的であるかまたは調製に関連する様々なレベルの自己蛍光を含むということである。自己蛍光は、蛍光分析を干渉することが知られている。自己蛍光に対する補正は、スペクトルの重なり合いの補正とは違う別個のプロセスである。複数の波長によるレーザー励起を利用する場合の蛍光に関連する自己蛍光の干渉に対して補正するための方法は、当該分野で公知である(例えば、Lee,M.,Luther,E.(2004).「Using virtual channels to perform 補償 and correct background autofluoresence in laser scanning cytometry.」ISAC XXII International Congress.Cytometry Part A 59A(I): 27−73を参照のこと)。
【0011】
カラーカメラのRGBまたはHSL値を色素の等価なものに変換するための方法もまた記載されている。例えば、米国特許第6,819,787号(Stoneらに発行)およびRuifrokら,Comparison of Quantification of Histochemical Staining by Hue− Saturation−Intensity (HIS) Transformation and Color−Deconvolution.Applied Immunohistochemistry and Molecular Morphology,vol.11(1),pp.85−91,March 2003などを参照のこと。しかし、これらの方法は、広帯域スペクトルの光が光源として使用されるという不利な点を有しており、評価される蛍光色素のスペクトル特徴の制御が難しくなる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に従う場合、吸収検出システムは、複数の単色光源およびこの複数の単色光源からの光を複数の波長に分離するための分離器を備える。複数の検出器の各々は、単一波長の光を受けて生物学的サンプルにおける光の吸収を測定する。この単色光源は、色素を含む生物学的サンプルに指向された光を生成し得ることで、光がそのサンプル中を通過して、そのサンプル中を通過した光を分離器が分離し得る。
【0013】
関連する実施形態に従う場合、単色光源うちの少なくとも1つはレーザーであり得る。さらに、その複数の単色光源の各々からの光のビームがそのサンプルにより受け取られることで、そのビームは同軸となる。その分離器は、単色光源による光を受けるためのビーム分割ミラーを備え得る。同様に、この分離器は、そのビーム分割ミラーからの光を受けるためのバンドバスフィルタを備え得る。さらに、この分離器としては、プリズムが挙げられ得る。他の関連する実施形態において、少なくとも1つの検出器としては、フォトダイオードが挙げられ得、そして/または少なくとも1つの検出器としては、光電子増倍管が挙げられ得る。
【0014】
さらに別の関連した実施形態に従う場合、少なくとも1つの単色光源による光のビームが、ビーム分割ミラーにより二部分に分割され得る。この二部分は、2つの分離検出器により受け取られ得、そして/またはその2つの分離検出器は、異なる信号捕捉特性(acquisition characteristics)を有し得る。この捕捉特性としては、吸収および低角光散乱が挙げられる。
【0015】
さらに関連した実施形態に従う場合、少なくとも1つの検出器からの信号は、複数の単色光源のうちの少なくとも1つにより生成される光の波長と一致するようにフィルターがかけられる。さらに別の関連した実施形態に従う場合、このシステムは互いに直角になるように方向付けられており、その偏光フィルターの各々は、上述の二部分のうちの1つを受け取り得る。上述の2つの検出器は、直交偏波(orthogonal polarization)状態を測定し得る。別の関連する実施形態において、その波長の単色光源は、その色素により吸収される波長に対応し得る。
【0016】
本発明の別の実施形態に従う場合、光吸収を検出するための方法は、生物学的サンプルを含む表面に光の複数の単色ビームを指向する工程およびその表面で受け取られた光を複数の波長の光に分離する工程を含み得る。単一波長の光が、複数の検出器の各々に指向され、そのサンプルにおける光の吸収を測定する。
【0017】
関連する実施形態に従う場合、上述の表面に光の複数の単色ビームを指向する工程は、その表面に少なくとも1つのレーザービームを指向することを含み得、そして/またはその表面に光の複数の単色ビームを指向する工程は、その表面によって受け取られたときにそのビームが同軸上にあるようにその表面に対してビームを指向することを含み得る。その表面で受け取られた光を分離する工程は、ミラーにて光を受け取ることを含み得る。
【0018】
別の関連する実施形態において、この方法は、そのミラーから光を複数のバンドパスフィルタで受け取ることをさらに含み得る。他の関連する実施形態において、上述の表面で受け取られた光を分離する工程は、プリズムでその光を受け取ることを含み得、そして/または単一波長の光を検出する工程は、複数のフォトダイオードの各々および/または光電子増倍管で単一波長の光を検出する工程を含み得る。
【0019】
さらに関連した実施形態に従う場合、光において少なくとも1つの単色ビームは、二部分に分離され得て、そして/またはこの二部分は、2つの分離検出器によって受け取られ得る。この2つの分離検出器は、異なる信号捕捉特性を有し得る。この異なる信号捕捉特性としては、吸収および低角光散乱が挙げられ得る。さらに、この二部分は、2つの偏光フィルターにより受け取られ得る。この偏光フィルターは、互いに対して直角に方向付けら得、そして、上述の2つの検出器は、直交偏波状態を検出する。
【0020】
さらに別の関連した実施形態に従う場合、その表面に光の複数の単色ビームを指向する工程は、光のN個の単色ビームをその表面に指向すること含み得、そのサンプルにおける光の吸収を測定するために複数の検出器の各々において単一波長の光を検出することは、そのサンプル中のN個の色素の吸収を測定するためにその複数の検出器の各々で単一波長の光を検出する工程を包含し得る。N個の色素の各々は、光のN個の単色ビームの各々から光の一部を吸収し得、各色素と光の所定の単色ビームのいずれかとの間の1対1の対応が確立され得る。1対1対応を確立することは、1以上の波長で光を吸収するN個の色素のいずれかに起因する吸収における重なり合いを代数学的補償することを包含し、この重なり合いを代数学的補償することは、N元連立方程式系を解くことを含む。
【0021】
別の関連した実施形態に従う場合、N個の色素のうち少なくとも1つは、オフカラー色素を含み得、1つの波長で光を吸収する、N色素のうちのいずれかのものに起因する吸収における重なり合いを代数学的に補償するための工程は、第一の波長で吸収を測定すること;第二の波長で吸収を測定すること;その第二の波長で得た測定値に対する上述の第一の波長で得た測定値の比を、その第二の波長で得た測定値に乗算して、補償係数を生成すること;ならびにこの第一の波長で得た測定値から補償係数を差し引くことを包含する、方法。複数の検出器の各々で単一波長の光を検出することは、N個までの検出器で単一波長の光を検出すること、そして、N個までの検出器で単一波長の光を検出することは、N個までの検出器で単一波長の光を同時に検出することを含み得る。
【0022】
さらに関連した実施形態に従う場合、サンプルにおける色素の吸収を測定するための単一波長の光を検出する工程は、そのサンプルにより発せられた蛍光および/または自己蛍光を検出することを包含し得、そして、この方法は、蛍光および/または自己蛍光による信号を使用して上述のサンプルにおける色素の吸収を定量することをさらに包含し得る。
【0023】
なおさらに関連した実施形態に従う場合、ビームがブランク表面に衝突したときの強度の変化に従って生成した信号が測定され得、ピクセル単位の補正ルックアップテーブルが作成され得る。そのビームがブランク表面に衝突したときに生じた信号と関連した値は、そのビームがサンプルに衝突したときに生じる強度変化を補償するために使用され得る。強度の変化に従って生成された信号検出することは、検出した信号に関連する値を含むピクセル単位のルックアップテーブルを作成することを含む。単色光のビームの強度における変化に従って生成された信号を検出することは、強度における系として光学的に誘導された変化を検出することを含む。
【0024】
本発明の別の実施形態に従う場合、生物学的サンプル(例えば、有彩色素により染色されたサンプル)での光吸収を定量するための方法は、そのサンプルに光のビームを衝突させる工程およびそのサンプルによるビームの干渉に起因する光損失の量を測定して、第一の信号を生成する工程を包含する。そのサンプルにより発せられた蛍光の量が測定され、第二の信号が生成される。この第二の信号を使用することで、上述の第一の信号を補正してそのサンプルにおける色素に起因する光損失の量を定量する。関連する実施形態に従う場合、そのサンプルで発した蛍光量を測定する工程は、サンプルにより発せられる自己蛍光の量を測定することを含み得、そして/またはそのサンプルで発した蛍光量を測定する工程は、サンプルにより発せられる緑色蛍光の量を測定することを含み得る。そのサンプルに光のビームを衝突させる工程は、光のレーザービームの少なくとも1つをそのサンプルに衝突させる工程を包含し得る。
【0025】
本発明のさらなる実施形態に従う場合、生物学的サンプルにおける吸光度を定量するための装置は、サンプルに衝突するための光のビームを生成するための光源を備える。検出器は、そのサンプルによるビームへの干渉に起因する光損失の量を検出し、第一の信号を生成する。光電子増倍管は、そのサンプルで発した蛍光量を検出し、第二の信号を生成する。この第一の信号および第二の信号に関するデータは、プロセッサで受信され、第二の信号に関するデータは、サンプル中の色素による光損失の量を定量するために使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(具体的な実施形態の詳細な説明)
光吸収は、色(カラー)が発するプロセスであり、RGB(赤色;緑色;青色)は、所定の系において利用することが可能な色を記述する。赤色、緑色および青色は、原色であり、これらの色の組合せから、任意の他の色が生成される。三色の吸収のためのシステムは、カラーマップにおいて多くの色を網羅するという利点を供与し、そのために、本発明の実施形態に従うような三色吸収システムが、設計された。
【0027】
上述したように、レーザー走査技術は、蛍光色素についてマーカーの染色量を信頼性高く計算し得る定量技術である。同じ原理が、吸収測定に対しても成立する。事象をセグメント化して(あるいは、他のサンプリング法を使用することで)、その構成要素の各々に関する染色量が定量され得る。レーザー照射の変動に関して、得られた検出器測定アレイ(画像)を補正するための方法が本明細書中に記載されている。
【0028】
吸光度および蛍光の測定ならびにこれらの組みあわせたものを測定することは、その領域に重なり合いがある場合にこれらが使用されると、分析ツールとして有用である。一般的に、蛍光色素は、有彩色素よりも定量的なデータを生成し得ると考えられているが、有彩色素がずっと視覚化されやすい。有彩色素は、蛍光色素よりも汎用的に使用され、これは部分的には歴史的な理由があるが、有彩色素がその読み出しのためのそれほど費用のかからず耐久性があり広くうけ入れられている機器のみを必要とするためである。多くの保存用物質は、有彩色素によって染色された切片およびサンプルの形態で存在する。有彩色素によって染色された切片およびサンプルにおける染色を定量する必要がある。
【0029】
例えば、毒物病理学における領域において、しばしば大規模研究が行われるが、その結果は、非常に費用のかかる薬物発見のプロセスではきわめて密接な関係を有している。実験による研究において何らかの不都合が生じた場合、この結果は調べられ、再分析される必要がある。しばしば、もとの研究による物質が、有彩色素染色されたスライドの形態である場合があり、したがって、吸光度分析する能力が必要である。したがって、自動化した組織分析が病理学的診断のために有用である場合に用途がある。
【0030】
本発明の一実施形態に従う場合、一連のスライドが自動的に走査されて、病理学者による荒い調べ方では取り逃がしていたような重要な事象を検出することが可能である。この流れにおいて、まず、そのスライドはその機器により走査されて後に、定量的なデータに基づくことで、目的の事象が自動的に測定される。分析の第二段階で、病理学者は、実際に判断を行う。ここで、その機器は、予め同定してある目的の細胞または対象物を、病理学者が判断できるように顕微鏡で観察するにあたり適切な位置に置かれる。
【0031】
以下でさらに詳細に議論するように、スペクトルの重なり合いもまた、多色吸収分析(multiple−color absorption analysis)を実施する際にでくわす問題の1つである。しかし、蛍光の場合のように、その有彩色素は、光の特定の波長により「活性化」される。これらの応答は、この吸収の場合、色素のスペクトル特徴および入射波長の関数であるが、所定の機器設定にとって一定であり、2つの検出域において検出される色素の量の比もまた、一定である。この比により、ある検出器におけるチャネル(channel)において生成した信号の何パーセントが、別の検出器のチャネルで測定されることが意図された色素に由来するものなのかが決定されえる。
【0032】
図2は、本発明の1つの実施形態に従った場合のカラー表示型レーザー吸収検出システムのブロック図である。この実施形態に従う場合、三色のレーザー吸収の同時測定が実施される。三色を同時に測定することは、異なる三色のレーザーによるビームが生物学的サンプルにより受け取られ、そのビームが互いに同軸上にあるように配置されたレーザー(または、他の単色光源)を利用することによって実現される。
【0033】
図2の実施形態に従う場合、カラー表示型(multiple−color)レーザー吸収検出システムは、1以上のレーザービーム201(この場合、異なる三色のビームが上述のように同軸上に配置される)を備え、顕微鏡スライド202上にある標本を通るように焦点調節光学素子 (例えば、対物レンズ212)により誘導される。このビームは、1以上のミラー(この場合、3つのミラー203、204および205)に衝突する。ミラー203〜205の各々は、このビームをバンドパスフィルタ206〜208へとリダイレクトすることで、例えば、それぞれ、440 nm、532nm、および633nmなる、青色レーザー波長、緑色レーザー波長、赤色レーザー波長を提供する。まとめると、三色のレーザーは、図4に示された色度図の三角形401に囲まれた有色範囲を与える。フィルター処理されたビームの各々は、独自の光検出器に入射するものである。3つの検出器209〜211によって、スペクトルとして別個のデータを同時に取得することが可能となる。この3つの検出器209〜211の各々は、フォトダイオードからなる。CCDデバイス、デジタルカメラ、または当該分野で公知である他の装置のような他の検出デバイスもまた使用され得る。本発明の一実施形態に従う場合、3つのレーザーの全ては、サンプルに同時に衝突する。3つのレーザーの全てを用いて同時に走査することにより、3つの有彩色の単一経路検出が可能となり、分析時間が非常に短縮される。
【0034】
図3は、本発明の別の実施形態による多色レーザー(または他の単色光)吸収検出システムのブロック図である。この実施形態に従う場合、ミラー203〜205およびバンドパスフィルタ206〜208ではなく、プリズム301を使用して、光の波長を空間的に分離するために使用する。次いで、上に記載したような検出器302〜304が、分離した波長の各々を検出するために位置づけられている。図5Aは、使用される個々の検出器に関する図2および図3の多色レーザー吸収システムに従って生成された画像を示す実例である。図5Bは、図2および図3の多色レーザー吸収システムに従って生成したコンポジットカラー(composite color)画像を示す。
【0035】
図6は、本発明の別の実施形態に従う場合の二色成分型単色光複数吸収モード検出システムブロック図である。図6に示されるように、レーザービーム601は、顕微鏡スライド602状の標本を通過するように焦点調節光学素子 (例えば、対物レンズ606)によって誘導される。そのビームはビーム分割ミラーミラー603に衝突することで、透過(transmitted)ビームおよび反射ビームを生成する。この2種のビームは、独自の光検出器604および605に指向される。光検出器604および605の各々は独立して操作されて、「光損失」(吸収、散乱、および反射の組合せ)信号または「陰影(shaded relief)(前方散乱)」信号、あるいはこれらの2種のモードの中間のものを生成する。この「光損失」モードにおいて、その受けた信号は、光検出器に集められ、その光検出器は、その検出器に指向されたレーザービームの全てを捕捉する。上述の「陰影」モードにおいて、受けた信号は、その光検出器の縁に衝突して、その光検出器は、検出器に対して指向されたレーザービームの一部を細くする。その検出器に指向されたレーザービームの一部はコンピュータソフトウェアにより制御される。この2つのフォトダイオードモードにおける独立した調節によって、サンプル吸収信号およびサンプル散乱信号(コントラストおよび画質が改善されている)の同時収集処理(定量処理が改善している)を可能にする。図7Aおよび7Bは、それぞれ、上述の「光損失」モードおよび「陰影」モードを使用して得られた画像を表示する。
【0036】
本発明のシステムは、コンピュータにより操作される。例えば、ソフトウェアは、とりわけ、走査回数を決定し得る。本発明に関するソフトウェアは、1以上のレーザーを3回までの連続的な走査を行う能力を提供する。これは、ユーザがその吸収とともに蛍光マーカーを同時に定量することを望むような例において所望され得る。レーザーと色素の相互作用が一定であるので、そのコンポジット信号は補償され、調節され、また補正され得る。本発明の一実施形態に従う場合、本システムに関連するソフトウェアは、スペクトルの重なり合いを補償する。スペクトルの重なり合いの補償は、蛍光レーザー走査型サイトメトリー像において使用される様式と類似する様式で実施される。2種の色素について補正するための一般式は、
(補正された色素1の値)=(未補正の色素1の値)−(補正係数をかけた色素2の値)であり、ここで、この補正係数は、機器の設定の組み合わせにより経験的に決定される。
【0037】
上述の図7Aおよび7Bに示されたように、その赤色および緑色の反転された散乱の補償処理画像が生成され、これは、蛍光に基づく技術を吸収法に転用することが可能であることを示すものである。実際上の関係において、これにより、LSCに基づいた技術を細胞事象のセグメント化のために使用してそのサンプルを評価および分析することが可能となる。蛍光に基づくレーザー走査型サイトメトリー分析のために開発された技術を使用して分析を容易にするために、その画像は所謂「仮想チャネル(virtual channel)」において反転され、そのバックグラウンドレベルは黒色であり、その吸収信号が白となる。
【0038】
図8は、カラー表示型(multiple−color)単色光吸収検出システムに従って得た重なり合う吸収スペクトルの説明図である。図8において、2つの色素であって、赤色および青色であるものは、異なっているが重なり合っている吸収スペクトルを有する。両方の色素が、両方のレーザーからの光のうちいくらかの量を吸収するので、各検出器において生成された信号は、コンポジット信号である。この色素の相互作用は、実質的に一定であるので、波長802での赤色色素信号のみの寄与を生成するために、その赤色成分(red channel)におけるコンポジット信号は、青色色素の吸収によって生じた信号と経験的導き出した増倍率を乗算することにより補償され得る。この係数は、波長801における青色色素の吸光度と波長802における赤色色素の吸光度との比に対応する。これによって、その検出したコンポジット信号から差し引かれた、中間信号が与えられ、このコンポジット信号から青色色素の成分は除かれる。その残った信号は、補償された赤色信号であり、波長802での検出で存在している赤色色素信号に対応する。同じプロセスを、青色成分におけるコンポジット信号にも適用して、波長801での青色色素のみの寄与を生成する。実際上は、そのプロセスは、レーザー走査画像のレベルで適用される。
【0039】
図9A〜9Eは、スペクトルの重なり合いを補償する前後に生成した画像の実例である。図9Aは、組織片の青色吸光度を示している。その白色領域は、特定の抗体染色部である。図9Bおよび9Cは、それぞれ、同じスキャン領域の緑色吸光度および赤色吸光度を示し、ここで、抗体信号の一部がにじみ出ている。補償が図6に関連して記載された方法を使用して適用された後において、図9Dは、その緑色吸光度を示しており、そして、図9Eは、その赤色吸光度を示している。対照的に、図10は、分析に関連するフォトダイオード検出器の各々についてのレーザー吸収の量を定量するためのこれまでに開示された方法に従って要素をサンプリングする応用例を示す。
【0040】
図11A〜11Eは、補償を利用する場合および補償を利用しない場合において得られた分析データを示す。図11Aは、青色吸光度ヒストグラムを示し、これは、緑色、赤色、および黄色に特定の信号をともなうものである。緑色(図11B)および赤色(図11C)のヒストグラムにおいて、そのスペクトルの重なり合いは、その青色ピークからの緑色ピークおよび黄色ピークのオフセットとして示されます。緑色補償ヒストグラム(図11D)および赤色補償ヒストグラム(図11E)において、全てのピークが正しい関係位置を占めている。図12は、補正された赤色レーザー吸収の走査領域(スキャン領域)を示しており、ヘマトキシリンで染色された個々の核が、サンプル中の色素と重なり合うことによって干渉されることなく、セグメント化され得る。
【0041】
本発明の実施形態に従う場合、N個の異なる色素の吸収は、異なる波長のN個の単色光源を利用することによって定量され得る。色素の各々は、その光源のうち少なくとも1つからの光の一部を吸収し得る。この様式において、1対1の関係性は、色素の各々と所定の光源との間に確立され得る。定量は、1以上の波長で光を所定の色素が吸収する場合に生じる吸収における重なり合いの代数学的補償処理により達成され得る。このような代数学的補償処理は、N元連立方程式系を解くことにより実施され、ここで、Nは、吸収が定量される色素の数である。
【0042】
オフカラー(off−color)色素(特定のレーザー波長にとって最適ではないが、そのレーザー波長に対して最適な別の色素の測定を干渉するのに十分吸収を提供してしまう色素)に関する補償係数が、第一の波長(これは最適な波長に対応する)でそのオフカラー色素の吸光度を測定し、第二の波長(最適なものに満たない波長に対応する)でオフカラー色素の吸光度を測定することによって決定される。この吸光度の比は、乗数としてサンプル分析における第二の波長で取得された信号(または測定値)に適用される。この乗算から得た結果を、第一の波長で特定された測定値から差し引いて、正確な信号を生成する。(Nまでの)複数の吸収測定が、各々の単色光源に対して1つの検出器としてN個までの異なる検出器を同時に使用することによってなされる。
【0043】
以下でさらに詳細に議論するが、染色されたサンプル(例えば、有彩色素により染色されたサンプル)から発した蛍光は、サンプル中の色素に起因する光損失の量を正確に定量化する目的で吸収信号を補正するために使用され得る。染色されたサンプルから発する自己蛍光もまた、サンプル中の色素(上述の例に従う場合、有彩色素)に起因する光損失の量を正確に定量化する目的で吸収信号を補正するために使用され得る。さらに、カラー表示型単色光吸収検出器で測定されるような、走査軸に沿ったレーザービームの強度の変化(例えば、系として光学的に導入された変化)は、ブランク標的を通過するビームによる応答を測定してピクセル単位の補正ルックアップテーブルを作成することによって
補償され得る。このピクセル単位の補正ルックアップテーブルによる値は、走査により取得した生のピクセル値に対して適用されて、強度変化を補正する。この補正されたデータは、分析およびその系により生成された画像に適用される。
【0044】
上述の補償プロセスが連続様式で複数のチャネルにおいて繰り返され得ることであることを留意すべきである。
【0045】
(画像に対する補正)
(自己蛍光補正)
組織自己蛍光は、定量的な有彩色素(または他の色素あるいは吸収性物質)分析を干渉する、レーザー走査に基づく組織分析におけるこのような干渉を補正するための方法および装置が本明細書中で提供される。これらの方法および装置は、他のサンプルタイプに対しても利用可能であり、このサンプルタイプとしては、細胞学的標本またはさらに非生物学的標本が挙げられえる。さらに、この方法は、サンプル中で存在する蛍光色素によって生じた有彩色素(または他の色素)定量の干渉を補正するために拡張され得る。レーザーに基づくシステムおよび光電子増倍管を利用する方法が本明細書中で例示されるが、種々の範囲の電磁スペクトルの光を放出するレーザーまたは他の光源を伴うカメラに基づくシステムについても利用可能である。
【0046】
以下により詳細に説明されるように、光(例えば、レーザーまたはレーザー放出ダイオードにより生成される単色光)の吸収が定量され得る。
【0047】
図13は、有彩色素に関連するレーザー光損失を例示するブロック図である。組織切片または他のサンプルにおける有彩色素の発現量は、検査レーザー(または他の光)ビームの光損失を測定することにより定量される。この測定システムは、レーザービーム1301がサンプルを含まないキャリアプラットフォームを通過した後のレーザービーム1301に対する基準信号を確立することによって較正される。この基準信号は、1302で示されるように高いレベルで設定される。有彩色素で標識された実体1305がレーザービーム1307の経路上にある場合、レーザー光が吸収されて、そして、検出器1309(代表的にはフォトダイオード)に衝突するレーザー光の量の低減が生じる。その信号変化は、1311で示されるように、光損失として参照され、レーザー経路にある有彩色素の量を定量するための計量指標として使用される。
【0048】
図14は、蛍光色素に関連するレーザー光損失を例示するブロック図である。ここで、レーザー光損失は、レーザービーム1407の経路にある蛍光性または自己蛍光性の粒子1405により生成される。検出器1309で衝突するレーザー光の量が低減され、この低減によって、1303で示されたレベルから1411で示されたレベルにまで電圧変化が生じる。
【0049】
図15は、本発明の実施形態に従う場合における、測定された緑色蛍光が使用されてその基準電圧レベルを復元する方法を例示するブロック図である。本発明の実施形態に従い場合、レーザービーム1507の経路にある粒子1505により発生された緑蛍蛍光の量は、光電子増倍管1515を使用して測定される。発せられた蛍光の量は、蛍光に変換されることでレーザービーム1507から損失した光の量の指標である。コンピュータソフトウェアまたはアナログ電子回路1513 (これは、電圧信号を変化させる演算増幅器(オペアンプ)のような標準的な素子を含み得る)を使用することでフォトダイオード検出器に対して補正係数を適用して基準1511を基準1503まで復元して有彩色素に基づく光損失を測定する。
【0050】
(自己蛍光補正)
(例示的な手順)
以下に続く技術は、以下の1)〜4)の理論に基づく:1)緑色自己蛍光は、青色光損失が得られるのと同時に検出される;2)緑色自己蛍光を生じさせるために、励起488nmレーザー光を緑色光の変換が存在する;3)緑色蛍光に変換されたレーザー光は失われ青色散乱用の検出器に入る;および4)これにより、特定の青色レーザー吸収の人為的な高度の測定が提供される。このアーチファクトを補正するために、その緑色蛍光信号(またはそれに基づいて調節された信号)は、反転された青色光損失信号から差し引かれ得る。その反転された信号から緑色蛍光信号を差し引きことは、数学的には、それに非反転信号を加算することに等しい。したがって、実際上、補正係数が反転した青色光損失信号に加算されて、蛍光として消失したレーザー光の量を補償するのである。
【0051】
その方法を例示するために、特異的な抗原に対する抗体で染色して、有彩色素ジアミノベンジジンで発色させた組織切片は、レーザー走査サイトメータで分析される。このスライドは、染色されていないもの(染色におけるバンクグラウンドレベルのみを提示する)、または様々な量の特定の染色したものいずれかの群に分離される。DAB染色の量を定量することは、この特殊な実験の目的であった。
【0052】
図16に示されるように、組織切片(または他の細胞サンプル)1601は、光損失に寄与する、蛍光性成分および有彩性成分(それぞれ、1603および1605)を含み得る。従って、レーザー走査型サイトメトリーにより分析される場合、これらの組織切片は、光損失および緑色蛍光の両方を示す。この蛍光は、組織の自己蛍光により生じた。電圧1611により示される光損失は、組織内の有彩性実体および蛍光性実体のいずれかにより生じ得る。自己蛍光性成分に起因した光損失はこの例においては目的のものではない。なぜならば、この損失は、アッセイの感度を害するからである。
【0053】
図17に示されるように、光電子増倍管1715は、図16のシステムに導入されて、緑色蛍光の量を測定する。この光電子増倍管1715は、コンピュータ補正アルゴリズム1713の入力として使用し、光損失信号に対する自己蛍光の効果を、分析系から効率的に除くことにより、その信号1711が、染色されたサンプルによる光の吸収に起因した光損失を示すようにした。
【0054】
補正アルゴリズムの効力は、図18および図19に示されている実験データのグラフにおいて示されている。5つの群のスライドから得た分析結果が、図18において補正なしのデータとして示されており、補正したデータとして図19に示されている。赤枠1801および1901がバックグラウンドレベルコントロール群を囲んで指摘するものであり、緑色の枠1803および1903が、特定の有効色素染色を発現する群を囲んで指摘するものである。図18および図19のグラフから理解され得るように、バックグラウンド染色に対する特定信号の比率は、補正した群におい非常に上昇している。
【0055】
図20は、生物学的サンプルでの光吸収を定量するための方法を例示する流れ図である。この実施形態に従う場合、光のビームがサンプルに衝突する(2001)そのサンプルによるビームの干渉に起因する光損失の量が測定されて、第一の信号が生成される(2002)そのサンプルにより発せられた蛍光の量もまた測定されて、第二の信号が生成される(2003)その第二の信号が使用されて(2004)上述の第一の信号が補正され、サンプルにおける有彩色素に起因する光損失を定量する。
【0056】
上述した例では、自己蛍光について補正しているが、同様のストラテジーが使用されて、光損失信号に対する蛍光色素の効果について補正した。さらに、上述の方法は、組織切片以外のサンプルに対して適用され得る。さらに、この方法は、カメラに基づくシステムに対しても適用可能である。
【0057】
(入力信号に対する補正)
(ピクセル単位補正)
走査光学素子の性質のために、レーザービームの強度は、それがY方向(または垂直方向)でその標本に沿って走査するにつれて、変化する。蛍光測定についてのこの変化に対する補正は、走査領域の全体に及ぶ複数の位置で存在する較正用粒子の強度を経験的に測定することを包含する。蛍光に基づく分析に従う場合、粒子の蛍光強度の平均は、可能なY軸上の位置の各々について計算される。これらの計算した値は、ルックアップテーブルに記憶される。その後の画像取得において、その検出器値は、補正係数が乗じられ、バックグラウンド補正データが得られる(例えば、米国特許第5,885,840号を参照のこと)。
【0058】
光散乱吸収測定に関して、これと同じ原理が適用されるが、較正原理を使用する代わりに、ブランク顕微鏡スライドが使用される。この光検出器は、その機器の作業範囲において信号を与えるように設定され、通常は、吸収検出限界付近で設定されて、レーザー総裁が得られる。図21は、生物学的サンプルにおける光吸収に関連する入力信号を補正するための方法を例示するフローチャートである。この実施形態に従う場合、そのビームがブランク表面に衝突すると、強度の変化に従って生成された信号が測定される(2101)。走査線に沿った各々のピクセルに関する値を、レーザー走査の群に亘って平均化して、ピクセル単位の補正ルックアップテーブル(per−pixel correction lookup table)が生成され(2102)、そのブランク表面にビームが衝突したときの信号に関する値を使用して(2103)、そのビームがそのサンプルに衝突する際に生じる強度変化を補償する。その後の画像取得において、その検出器の値に補正係数が乗算されて、バックグラウンド補正データが得られる。この補正データは、定量データの精度を向上させて視覚化および画像表示における分析を得るために利用可能である。図22Aおよび図22Bは、それぞれ、ピクセル単位の補正した前後で生成した光吸収画像の実例である。
【0059】
上述した好ましい実施形態に対する種々の変化および改変もまた、当業者にとって明らかであるものと理解されるべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、かつ本発明によって奏される利益を損なうことなく、改変が行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
本願発明の前述の特徴は、図面の簡単な説明に言及されるような添付の図面を参照しつつ、以下の発明の詳細な説明を参照することでより容易に理解される。
【図1】図IAおよびIBは、従来型LSCシステムにより生成した画像の実例であり、このレーザー吸収は、異なる励起波長で連続的に走査して測定した。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に従う場合のカラー表示型単色光吸収検出システムのブロック図であり、三色のレーザー吸収の同時測定が採用されている。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態に従う場合のカラー表示型単色光吸収検出システムのブロック図である。
【図4】図4は、 図2および図3に記載のシステムにより生成した色度図の例である。
【図5A】図5Aおよび5Bは、図2および図3に記載のカラー表示型単色光吸収システムにより生成した画像の実例であり、個々の色成分(color channel)画像として、または合成カラー画像のいずれかである。
【図5B】図5Aおよび5Bは、図2および図3に記載のカラー表示型単色光吸収システムにより生成した画像の実例であり、個々の色成分(color channel)画像として、または合成カラー画像のいずれかである。
【図6】図6は、本発明の別の実施形態に従う場合の二色成分型単色光複数吸収モード検出システムのブロック図である。
【図7】図7Aおよび7Bは、図6の検出システムを使用して生成される画像の実例である。
【図8】図8は、カラー表示型レーザー吸収検出システにおいて使用した有彩色素に関する重なり合った吸収スペクトルであり、分析に用いた単色光の波長を示した。
【図9】図9A〜9Eは、使用される3つの検出器に関して未補償走査画像、ならびにその緑色成分および赤色成分へのDABクロモゲンのスペクトルの重なり合いに対する補償を示す画像の例示である。
【図10】図10は、これまでに開示された、補正走査画像から定量データを取得するための構成要素をランダムサンプリングことの適用例である。
【図11】図11A〜11Eは、使用された3つの検出器についての未補償データのランダムサンプリングのヒストグラム、ならびに緑色成分および赤色成分へのDABクロモゲンの重なりあいについて補償されたデータのヒストグラムの例示である。
【図12】図12は、細胞核を使用して、これまでは不可能であった補償された画像において事象をセグメント化する画像の本発明の実施形態の実例である。
【図13】図13は、有彩色素に関連するレーザー光損失を例示するブロック図である。
【図14】図14は、蛍光色素に関連するレーザー光損失を例示するブロック図である。;
【図15】図15は、本発明の実施形態に従う場合における、測定された緑色蛍光が使用されてその基準電圧レベルを復元する方法を例示するブロック図である。
【図16】図16は、光損失に寄与し得る蛍光成分および有彩成分の両方を有する組織切片を例示するブロック図である。
【図17】図17は、緑色蛍光の測定が、有彩色における(chromatic)光損失図16の光損失信号を補正するために使用される本発明の別の実施形態に従う方法を例示するブロック図である。
【図18】図18は、補正していない光損失信号を示すデータセットにおける信号雑音比を示す図である。
【図19】図19は、本発明の実施形態に従って補正された光損失信号を示すデータセットにおける信号雑音比の増大を示す図である。
【図20】図20は、生物学的サンプルでの光吸収を定量するための方法を例示するためのフローチャートである。
【図21】図21は、生物学的サンプルにおける光吸収に関連する入力信号を補正するための方法を例示するフローチャートである。
【図22】図22Aおよび22Bは、それぞれ、ピクセル単位補正が適用された前後の光吸収画像の実例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収検出システムであって、該システムは、
複数の単色光源;
該複数の単色光源からの光を複数の波長に分離するための分離器;および
複数の検出器であって、該複数の検出器の各々が単一波長の光を受けて生物学的サンプルにおける光の吸収を測定する、複数の検出器
を備える、吸収検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記単色光源が色素を含むサンプルに指向させた光を生成して、光が該サンプルを透過する、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記分離器が、前記サンプルを透過した光を分離する、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、少なくとも1つの単色光源 は、レーザーである、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記複数の単色光源の各々からの光のビームが、前記サンプルにより受け取られ、該ビームが同軸となる、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、前記分離器が、前記単色光源からの光を受けるためのビーム分割ミラーを備える、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、前記分離器が、前記ビーム分割ミラーからの光を受けるためのバンドバスフィルタを備える、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記分離器が、プリズムを備える、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、少なくとも1つの検出器が、フォトダイオードを備える、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、少なくとも1つの検出器が光電子増倍管を備える、システム。
【請求項11】
請求項6または7のいずれかに記載のシステムであって、少なくとも1つの単色光源による光のビームは、前記ビーム分割ミラーにより二部分に分割される、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、前記二部分は2つの分離検出器により受けられる、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記2つの分離検出器は、異なる信号捕捉特性を有する、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、前記捕捉特性が吸収および低角光散乱を含む、システム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムであって、少なくとも1つの検出器からの信号が、複数の単色光源のうちの少なくとも1つにより生成された光の波長に一致するようにフィルターをかける、システム。
【請求項16】
請求項11に記載のシステムであって、互いに直角に方向付けられた2つの偏光フィルターを備えており、該偏光フィルターの各々は、前記二部分のうちの1つを受け取る、システム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムであって、前記2つの検出器が直交偏波状態を測定する、システム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムであって、前記単色光源の波長が前記色素により吸収される波長に対応する、システム。
【請求項19】
光吸収を検出するための方法であって、該方法は、生物学的サンプルを含む表面に光の複数の単色ビームを指向する工程;該表面で受け取られた光を複数の波長の光に分離する工程;および複数の検出器の各々で単一波長の光を検出して、該サンプルにおける光の吸収を測定する工程を包含する、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記表面に光の複数の単色ビームを指向する工程は、該表面に少なくとも1つのレーザービームを指向することを包含する、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、前記表面に光の複数の単色ビームを指向する工程は、該ビームが前記表面により受けられたときに同軸上になるように該表面にビームを指向する工程を包含する、方法。
【請求項22】
請求項19に記載の方法であって、前記表面で受け取られた光を分離する工程は、ミラーで前記光を受け取る工程を包含する、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、複数のバンドパスフィルタで前記ミラーから光を受ける工程をさらに包含する、方法。
【請求項24】
請求項19に記載の方法であって、前記表面で受け取られた光を分離する工程は、プリズムで光を受け取る工程を包含する、方法。
【請求項25】
請求項19に記載の方法であって、単一波長の光を検出する工程は、複数のフォトダイオードの各々で単一波長の光を検出する工程を含む、方法。
【請求項26】
請求項19に記載の方法であって、単一波長の光を検出する工程が、前記複数の光電子増倍管の各々で単一波長の光を検出する工程を含む、方法。
【請求項27】
請求項19に記載の方法であって、光の単色ビームのうちの少なくとも1つを、二部分に分離する、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記二部分は2つの分離検出器により受け取られる、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記2つの分離検出器は、異なる信号捕捉特性を有する、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、ここで、前記異なる信号捕捉特性が、吸収および低角光散乱を含む、方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法であって、前記二部分が2つの偏光フィルターにより受け取られる、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記偏光フィルターが互いに直角に方向付けられる、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記2つの検出器が直交偏波状態を測定する、方法。
【請求項34】
請求項19に記載の方法であって、前記表面に光の複数の単色ビームを指向する工程が、N個の光の単色ビームを前記表面に指向することを含み、前記サンプルにおける光の吸収を測定するために複数の検出器の各々で単一波長の光を検出する工程が、前記サンプルにおけるN個の色素の吸収を測定するために複数の検出器の各々で単一波長の光を検出することを含む、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、N個の色素の各々が、N個の光の単色ビームの各々から光の一部を吸収し、該方法は、色素の各々と所定の光の単色ビームのいずれとの間において1対1の関係性を確立する工程を包含する、方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、1対1の関係性を確立する工程が、1以上の波長で光を吸収するN個の色素のいずれかに起因する吸収での重なり合いを代数学的に補償する工程を包含する、方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、重なり合いを代数学的に補償する工程が、N元連立方程式系を解く工程を包含する、方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法であって、N個の色素のうち少なくとも1つが、オフカラー色素を含み、N個の色素のいずれかに起因する吸収での重なり合いを代数学的に補償する工程が、
第一の波長で吸収を測定すること;
第二の波長で吸収を測定すること;
該第二の波長で得た測定値に対する該第一の波長で得た測定値の比を、第二の波長で得た測定値に乗算して、補償係数を生成すること;ならびに
該第一の波長で得た測定値から該補償係数を差し引くこと
を包含する、方法。
【請求項39】
請求項34に記載の方法であって、複数の検出器の各々で単一波長の光を検出する工程が、N個までの検出器で単一波長の光を検出することを包含する、方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、N個までの検出器で単一波長の光を検出することが、N個までの検出器で単一波長の光を同時に検出する工程を包含する、方法。
【請求項41】
請求項19に記載の方法であって、前記サンプルにおける色素の吸収を測定するために単一波長の光を検出する工程が、該サンプルによって発せられた蛍光を検出することを含み、そして、さらに前記サンプルにおける色素の吸収を定量するために該蛍光により生じた信号を使用することをさらに包含する、方法。
【請求項42】
請求項19に記載の方法であって、前記サンプルにおける色素の吸収を同定するために単一波長の光を検出する工程が、該サンプルにより発さられた自己蛍光を検出することを包含し、該サンプルにおいて該色素の吸収を定量するために該自己蛍光により生成された信号を使用することをさらに包含する、方法。
【請求項43】
請求項19に記載の方法であって、前記ビームがブランク表面に衝突したときの強度の変化に従って生成された信号を測定する工程;ピクセル単位の補正ルックアップテーブルを作成する工程;および該ビームがブランク表面に衝突したときに生じた信号に関連する値を使用して該ビームが前記サンプルに衝突したときに生じる強度変化を補償する工程をさらに包含する、方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、強度の変化に従って生成された信号を検出する工程が、前記検出された信号と関連する値を含むピクセル単位のルックアップテーブルを作成する工程を包含する、方法。
【請求項45】
請求項43に記載の方法であって、単色光のビームの強度の変化に従って生成された信号を検出する工程が、前記強度において系として光学的に導入された変化を検出することを包含する、方法。
【請求項46】
生物学的サンプルでの光吸収を定量するための方法であって、該方法は、該サンプルに光のビームを衝突させる工程;該サンプルによるビームの干渉に起因する光損失の量を測定する工程;および第一の信号を生成する工程;該サンプルにより発せられた蛍光の量を測定して、第二の信号を生成する工程;ならびに該第二の信号を使用して該第一の信号を補正して、該サンプル中の色素による光損失の量を定量する工程を包含する、方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、前記サンプルで発した蛍光量を測定する工程がサンプルにより発せられる自己蛍光の量を測定することを含む、方法。
【請求項48】
請求項46に記載の方法であって、前記サンプルで発した蛍光量を測定する工程がサンプルにより発せられる緑色蛍光の量を測定することを含む、方法。
【請求項49】
請求項46に記載の方法であって、前記サンプルに光のビームを衝突させる工程は、光のレーザービームの少なくとも1つを前記サンプルに衝突させる工程を包含する、方法。
【請求項50】
生物学的サンプルにおける吸光度を定量するための装置であって、
光のビームを生成するための光源であって、該光のビームは該サンプルに衝突される、光源;
該サンプルによるビームへの干渉に起因する光損失の量を検出して第一の信号を生成するための検出器;
該サンプルで発した蛍光量を検出して第二の信号を生成するための光電子増倍管;および
該第一の信号および該第二の信号に関連するデータを受け取り、該第二の信号に関連するデータを使用してサンプル中の色素による光損失の量を定量するための演算装置;
を備える、装置。
【請求項51】
請求項50に記載の装置であって、前記光電子増倍管がサンプルにより発せられる自己蛍光の量を検出する、装置。
【請求項52】
請求項50に記載の装置であって、前記光源がレーザーを含む、装置。
【請求項53】
請求項50に記載の装置であって、前記検出器がフォトダイオードを備える、装置。
【請求項54】
請求項50に記載の装置であって、前記光電子増倍管がサンプルにおける色素により発せられる蛍光の量を検出する、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2008−509400(P2008−509400A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525064(P2007−525064)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/028068
【国際公開番号】WO2006/017811
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(500409035)コンピュサイト コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】