説明

柱継手構造

【課題】上下一対の筒状柱部材の端部間をネジ結合部材を用いて接合する場合の作業性の悪化や、接合状態の信頼性の悪化を防止することができる柱継手構造を提供する。
【解決手段】筒状に形成され互いに対向する端面同士が突合わせて接合される上側柱部材16と下側柱部材18との間にわたって、柱部材16,18の肉厚部の内側及び外側それぞれの面に接触して配置された内側接合板12及び外側接合板14肉厚部のがネジ結合部材26,30により締結され、上側柱部材16における接合板12,14より上方の肉厚部、及び/又は、下側柱部材18における接合板12,14より下方の肉厚部に、柱部材16,18の内側空間と外側空間とを連通する作業用孔40が形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の柱部材の上下端部同士を上下方向に接合する柱継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1の従来技術として、図12,13に示すような、仮組立て用の各所定長さの仮設板部材2,4を使用して、四角鋼管等の角筒状の上側柱部材6と下側柱部材8の端部同士を溶接で上下方向に接合する柱継手構造があった(例えば、特許文献1の図11等に記載の従来例参照)。
【0003】
図12,13に示す2つの仮設板部材2の上方の1つは、上側柱部材6下端部の周部4面すべてに、その各幅中心線に沿ってその側辺部が溶接により接合され、下方の仮設板部材2は、下側柱部材8上端部の周部4面すべてにその各幅中心線に沿ってその側辺部が溶接により接合される。
【0004】
そして、上側柱部材6と下側柱部材8の上下方向の端部同士を突き合わせて、柱部材6,8それぞれに接合した2枚の仮設板部材2の片面に1枚、又は両面に2枚の仮設板部材4を重ねて配置し、仮設板部材2,4間をボルトとナットで締め付けて互いを固定する(図13参照)。このようにして、柱部材6,8相互間の水平方向の位置合せをする仮組立てが終わったら、同図に示すように、柱部材6,8間を溶接Wで接合するようになっていた。
【0005】
また、第2の従来技術として、四角鋼管等の角筒状の上側柱部材と下側柱部材の上下方向の端部同士を接合するのに、上側柱部材と下側柱部材における筒状の肉厚部の内側と外側それぞれに内側接合板と外側接合板を配置し、ネジ結合部材により、これら内側接合板と外側接合板における上側半分の長さ部分同士が上側柱部材の下端部の肉厚部を挟み込み、下側半分の長さ部分同士が下側柱部材の上端部の肉厚部を挟み込むようになっている継手構造があった(例えば、特許文献1の図1,3,5等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−127142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記第1の従来技術においては、その施工現場で行なう溶接作業は風や雨などの天候の影響を受け易いと共に、溶接作業には熟練した溶接技能者を必要とし、かつ溶接作業後に溶接部の検査も必要となるという問題があった。
【0008】
また、上記第1の従来技術においては、仮組立て用の仮設板部材2,4が必要となり、それらは柱部材6,8の外側に大きく突出するため、柱部材6,8間の溶接後に溶断して除去しなければならないという問題があった。
【0009】
一方、上記第2の従来技術によれば、上記第1の従来技術の問題点を解決することはできるかもしれないが、上側柱部材と下側柱部材の端面同士を突合わせた後には、その肉厚部の内側に作業者の手や工具を入れることができなくなってしまうため、柱部材の肉厚部の内側と外側それぞれに配置される内側接合板と外側接合板とをネジ結合部材で締結する作業を、柱部材の肉厚部の外側だけから行なわざるを得ないため、その作業性の悪化や、ひいては柱部材同士の接合状態の信頼性を悪化させるという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、上下一対の筒状柱部材の端部間をネジ結合部材を用いて接合する場合の作業性の悪化や、接合状態の信頼性の悪化を防止することができる柱継手構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明による柱継手構造は、
筒状に形成され互いに対向する端面同士が突合わせて接合される上側柱部材と下側柱部材との間にわたって、柱部材の肉厚部の内側及び外側それぞれの面に接触して配置された内側接合板及び外側接合板の肉厚部がネジ結合部材により締結され、
前記上側柱部材における前記接合板より上方の肉厚部、及び/又は、前記下側柱部材における前記接合板より下方の肉厚部に、柱部材の内側空間と外側空間とを連通する作業用孔が形成されたことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明による柱継手構造は、
前記上側柱部材における前記接合板の上方の肉厚部、及び/又は、前記下側柱部材における前記接合板の下方の肉厚部を貫通して補強部材が設けられ、
前記作業用孔が前記補強部材に形成されることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明による柱継手構造は、
前記ネジ結合部材が、その長さ方向における両端部のいずれか一方に、その締め付け作業の際に所定の締め付けトルクに達したときに除去されるピンテールを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明による柱継手構造は、
前記内側接合板に、前記ネジ結合部材の共回りを防止する共回り防止用溝が形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明による柱継手構造は、
前記上側柱部材及び前記下側柱部材が角筒状に形成され、
前記内側接合板及び前記外側接合板が、前記柱部材の肉厚部の内側の面及び外側の面の少なくともいずれかの面において互いに水平方向に離れて複数配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明の柱継手構造によれば、
筒状に形成され互いに対向する端面同士が突合わせて接合される上側柱部材と下側柱部材との間にわたって、柱部材の肉厚部の内側及び外側それぞれの面に接触して配置された内側接合板及び外側接合板の肉厚部がネジ結合部材により締結され、
前記上側柱部材における前記接合板より上方の肉厚部、及び/又は、前記下側柱部材における前記接合板より下方の肉厚部に、柱部材の内側空間と外側空間とを連通する作業用孔が形成されたことにより、
上下一対の筒状柱部材の端部間をネジ結合部材を用いて接合する場合の作業性の悪化や、接合状態の信頼性の悪化を防止することができる。
【0017】
また、本発明の柱継手構造によれば、
前記上側柱部材における前記接合板の上方の肉厚部、及び/又は、前記下側柱部材における前記接合板の下方の肉厚部を貫通して補強部材が設けられ、
前記作業用孔が前記補強部材に形成されることにより、
前記作業用孔を形成したことによる柱部材の強度低下を防止することができる。
【0018】
また、本発明の柱継手構造によれば、
前記ネジ結合部材が、その長さ方向における両端部のいずれか一方に、その締め付け作業の際に所定の締め付けトルクに達したときに除去されるピンテールを備えたことにより、
上記ネジ結合部材の締め付けトルクを適切に管理することができる。
【0019】
また、本発明の柱継手構造によれば、
前記内側接合板に、前記ネジ結合部材の共回りを防止する共回り防止用溝が形成されていることにより、
上記ネジ結合部材の締め付け作業を確実に行なうことができる。
【0020】
また、本発明の柱継手構造によれば、
前記上側柱部材及び前記下側柱部材が角筒状に形成され、
前記内側接合板及び前記外側接合板が、前記柱部材の肉厚部の内側の面及び外側の面の少なくともいずれかの面において互いに水平方向に離れて複数配置されていることにより、
上記内側接合板及び上記外側接合板を、上記柱部材の肉厚を形成する平面における部分的な凸部を避けてその平面に密着するように配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る柱継手構造10を示す側面図である。
【図2】図1における柱継手構造10のA−A線断面矢視図である。
【図3】図1における柱継手構造10のB−B線断面矢視図である。
【図4】上側・下側柱部材16,18の接合前の状態を示す斜視図である。
【図5】柱継手構造10の組立手順を説明する側面断面図である。
【図6】柱継手構造10の組立手順を説明する側面断面図である。
【図7】図6中の柱継手構造10におけるナット30へボルト26を締め付けるのに用いる締め付け工具44の先端部分を拡大して示す側面断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る柱継手構造50を示す側面断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る柱継手構造60を示す側面図である。
【図10】図9における柱継手構造60のC−C線断面矢視図である。
【図11】図10における柱継手構造60のD−D線断面矢視図である。
【図12】従来の接合構造の一部断面分解側面図である。
【図13】従来の接合構造の一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による柱継手構造を実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1から図7は、本発明の第1の実施の形態に係る柱継手構造10について説明するために参照する図である。
【0023】
本実施の形態に係る柱継手構造10は、図4に示すように、角筒状に形成された上側柱部材16の下端部と下側柱部材18の上端部間を接合するのに用いられる。上側柱部材16の下端部における、この上側柱部材16の略正方形の断面形状の4つの各辺に沿った周面それぞれには、その肉厚部を貫通するボルト用貫通孔20が4つずつ形成されている。また、下側柱部材18の上端部における4つの各辺に沿った周面それぞれにも、同じボルト用貫通孔20が4つずつ形成されている。
【0024】
柱継手構造10は、図1から図3に示すように、内側接合板12と外側接合板14を4枚ずつ備えている。この内側接合板12と外側接合板14は、圧延鋼板から切り出して製作されるが、鍛造又は鋳造等により製作してもよい。内側接合板12の共回り防止用溝32以外の部分は、外側接合板14よりも厚く形成されている。
【0025】
内側接合板12と外側接合板14は、上側柱部材16及び下側柱部材18の肉厚部の内側及び外側それぞれに接触するように配置されていることにより、その上側半分の長さ部分同士が、上側柱部材16の下端部の肉厚部を挟み込み、下側半分の長さ部分同士が、下側柱部材18の上端部の肉厚部を挟み込むようになっている。
【0026】
また、内側接合板12、外側接合板14のそれぞれには、図2に示すように、上側柱部材16及び下側柱部材18のボルト用貫通孔20に対応する位置に、ボルト用貫通孔22,24が形成されている。このように同一軸線上に並んだボルト用貫通孔22,20,24には、外側接合板14のボルト用貫通孔24側から、ボルト26のオネジ部が挿し込まれている。ボルト26の軸部の頭部側には、座金28が嵌合している。
【0027】
そして、内側接合板12と外側接合板14、及びこれらに挟み込まれる上側柱部材16と下側柱部材18の肉厚部は、ボルト26のオネジ部にナット30が堅くネジ結合することにより、互いに固定されている。
【0028】
ボルト26は、ナット30との締め付け作業を完全に終了する前の段階においては、図5及び図6に示すように、その頭部における軸部とは反対側の面から軸方向に突出して形成されるピンテール34を備えているが、後述するように、このピンテール34は上記締め付け作業の終了直後に除去されるようになっている。
【0029】
ナット30は、図3に示すように、その形状が、円形状からその両側部を平行に切り欠いた形状に形成されている。このようなナット30の形状の2本の平行直線部を共に二面切欠き部と呼ぶこととする。また、この平行な二面切欠き部間の幅はXとする。
【0030】
内側接合板12には、図2及び図3に示すように、ボルト26とナット30の締め付け作業時に、ナット30がボルト26と一緒に回転してしまうのを防止する、共回り防止用溝32が形成されている。
【0031】
共回り防止用溝32は、内側接合板12の厚さ方向に深さを有し、図3中、上下方向に長さが伸びるように形成されている。また共回り防止用溝32は、その開口幅Wが、ナット30の円弧部分の直径よりも寸法が小さく、二面切欠き部間の幅Xよりも寸法が大きく設定されている。
【0032】
上側柱部材16には、接合板12,14より上方の位置であって、その略正方形の断面形状(図2参照)の4つの各辺に沿った周面のうちの、互いに対向する2つの周面のそれぞれに、図1及び図3に示すように、その肉厚部を貫通する円形の貫通孔36が形成されている。
【0033】
この貫通孔36には、円盤状の補強部材38の後述するボス部38aが上側柱部材16の肉厚部を貫通して嵌合している。補強部材38は、図3に示すように、上側柱部材16の外面側にボス部38aが形成され、上側柱部材16の内面側に、ボス部38aよりも大きい径のフランジ部38bが形成されている。
【0034】
ボス部38aは、その軸線回りの円周面が、上側柱部材16の内面側の径よりも上側柱部材16の外面側の径が小さくなるように傾斜して形成されている。また、補強部材38には、図1及び図3に示すように、その平面形状の中央部に厚さ方向に貫通する作業用孔40が形成されている。
【0035】
補強部材38は、図3に示すように、そのボス部38aの傾斜した円周面が、上側柱部材16の貫通孔36内に内側から嵌入した状態で、このボス部38aの傾斜した円周面と貫通孔36の円周面との間に溶接部41が形成されるように、溶接により固定されている。
【0036】
また、補強部材38の作業用孔40は、そのボス部38a側の開口部が、円板状の蓋部材42により塞がれている。蓋部材42は、図1及び図3に示すように、その円周方向に互いに等間隔で離れて配置され、その厚さ方向に貫通する4つのボルト孔が形成されている。
【0037】
このボルト孔に対応して補強部材38にネジ孔92が形成され、蓋部材42の4つのボルト孔に挿入された4本のボルト90のオネジ部が、補強部材38の4つのネジ孔92にネジ結合することにより、蓋部材42は補強部材38に固定されている。
【0038】
また、下側柱部材18には、その略正方形の断面形状の4つの各辺に沿った内外周面のうちの、接合板12,14の下側であって、互いに対向する2つの周面のそれぞれの、上側柱部材16と下側柱部材18の接合面に関して上側柱部材16の貫通孔36との対称位置に同じ貫通孔36が形成されている。この下側柱部材18の貫通孔36にも、上記した補強部材38が同じ向きに固定されており、その作業用孔40も蓋部材42により塞がれている。
【0039】
補強部材38の作業用孔40を蓋部材42で塞ぐ作業は、後述するように、上側柱部材16と下側柱部材18を接合する作業が終った段階で行なわれ、それまでは作業用孔40は開放されている。一方、各柱部材16,18の貫通孔36それぞれに補強部材38を溶接する作業は、各柱部材16,18が設置現場に搬入される前にそれを製作する工場内で完了している。
【0040】
次に、柱継手構造10の上側柱部材16と下側柱部材18の接合作業の手順について説明する。
まず、図5に示すように、内側接合板12と外側接合板14それぞれの下端部を、ボルト26とナット30のネジ結合により、下側柱部材18上端部の内外両面側に取り付ける。
【0041】
この段階においては、ボルト26とナット30の締め付けを緩くしておくことにより、内側接合板12と外側接合板14の上端部間の間隔が下端部間の間隔よりも広がった状態にしておく。これにより、内側接合板12と外側接合板14の上端部間の隙間に、上側柱部材16下端部の肉厚部を挿し込み易くしておく。
【0042】
次に、内側接合板12と外側接合板14の上端部間の隙間に、上側柱部材16下端部の肉厚部を挿し込み、図6に示すように、上側柱部材16と下側柱部材18の端面同士を突き合わせるように配置した後、ボルト26とナット30を締め付けることにより、内側接合板12と外側接合板14との間に上側柱部材16の下端部の肉厚部を挟んで固定する。
【0043】
この段階において、外側接合板14、上側柱部材16の下端部の肉厚部、及び内側接合板12の各ボルト用貫通孔24,20,22(図2参照)を貫通したボルト26のオネジ部にナット30をネジ結合させる作業は、図6に示すように、上側柱部材16と下側柱部材18のそれぞれに固定した補強部材38の開放されている作業用孔40から、作業者の手を柱部材16,18の内側に入り込ませてナット30を回転しないように抑え、外側のボルト26頭部を回転させることにより行なうことができる。
【0044】
このとき作業者は、ナット30を共回り防止用溝32に嵌め込んだ状態で抑えておくようにする。この作業は、内側接合板12、下側柱部材18の上端部、及び外側接合板14との間についても、締め付けを緩い状態から固い状態にしていく作業と共に行なう。
【0045】
ボルト26とナット30の最終的な締め付け作業は、図7に示すように、シャーレンチのような六角凹部を有する締め付け工具44を用いて行なう。この締め付け工具44としては、ボルト26の頭部に係合する管状ソケット46と、ピンテール34に多数の溝を介して係合する内部ソケット48を備えた工具を用いる。管状ソケット46と内部ソケット48は、同軸上に配置され、同期回転したり、互いに独立して回転することができるようになっている。
【0046】
締め付け工具44は、初めのうちは内部ソケット48と管状ソケット46が同期回転してボルト26を締め付けるようになっている。そして、ボルト26の頭部を締め付ける管状ソケット46の締め付けトルクが所定の大きさに達してボルト26を回転できなくなった後に、内部ソケット48だけが独立して回転を続けることにより、ピンテール34をボルト26の頭部から捩じ切って除去するようになっている。
【0047】
このようにしてボルト26とナット30の締め付け作業を完了したら、図1及び図3に示すように、各柱部材16,18の補強部材38に蓋部材42を取り付けることにより、作業用孔40を塞ぐようになっている。
【0048】
このような本実施の形態によれば、筒状の柱部材16,18の上下の端部間をボルト26とナット30の締め付けにより接合するに際して、上側柱部材16と下側柱部材18それぞれに形成した作業用孔40から、作業者の手や工具等を柱部材16,18の内側に入り込ませて作業することができるので、使用するボルト26とナット30の締め付けによる接合作業におけるその作業性の悪化を防止することができると共に、柱部材同士の接合状態の信頼性の悪化を防止することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、作業用孔40が、柱部材16,18に直接貫通して形成されないで、柱部材16,18より大きな肉厚を有する補強部材38に形成されていると共に、補強部材38に蓋部材42を取り付けることにより、作業用孔40を形成したことによる柱部材16,18の肉厚部の強度低下を防止することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、ボルト26の頭部がピンテール34を備え、その締め付け作業時において所定の締め付けトルクを越えたときにピンテール34を除去するようになっているので、このボルト26の締め付けトルクを適切に管理することができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、内側接合板12に、ナット30がボルト26と一緒に回転してしまうのを防止する共回り防止用溝32が形成されているので、筒状の柱部材16,18の外側からのボルト26のナット30への締め付け作業を容易にすることができる。
【0052】
次に、図8は、本発明の第2の実施の形態に係る柱継手構造50について説明するために参照する図である。
【0053】
本実施の形態に係る柱継手構造50は、図8に示すように、前記第1の実施の形態で用いたボルト26及びナット30の代わりに、ボルト52及び六角ナット54を用いている。また、前記第1の実施の形態で備えていた内側接合板12の代わりに、内側接合板56を備えている。
【0054】
内側接合板56は、図8に示すように、その共回り防止用溝58の開口幅Wが、ボルト52の六角形の頭部における対角線方向の長さX1よりも短く形成され、二面幅の長さX2よりも長く形成されている。
【0055】
またボルト52は、そのオネジ部の先端部が、上側柱部材16及び下側柱部材18の内側の内側接合板56側から外側に向かって、各部材の各ボルト孔に挿し込まれ、外側接合板14の外側で六角ナット54とネジ結合している。
【0056】
ボルト52は、そのオネジ部先端にピンテール34を備えている。図8にはボルト52からピンテール34が除去される前の状態が示されているが、このピンテール34は、以下のような六角ナット54の締め付け作業が終わってから除去される。
【0057】
六角ナット54の締め付け作業は、前記第1の実施の形態で用いた締め付け工具44とは異なる不図示の締め付け工具を用いて行なわれる。すなわちこの締め付け工具は、初めのうちはボルト52のピンテール34に係合する内部ソケットが回転しない状態で、六角ナット54に係合する管状ソケットだけが回転することにより、六角ナット54を締め付けるようになっている。
【0058】
そして、六角ナット54を締め付ける管状ソケットの締め付けトルクが所定の大きさに達して六角ナット54を回転できなくなった後で、内部ソケットが回転を開始して続行することにより、ボルト52のオネジ先端部からピンテール34を捩じ切って除去するようになっている。
【0059】
このような第2の実施の形態によれば、やはり作業用孔40から作業者の手や工具等を柱部材16,18の内側に入り込ませて作業することができる等により、前記第1の実施の形態と同様の効果を奏するようにすることができる。
【0060】
次に、図9から図11は、本発明の第3の実施の形態に係る柱継手構造60について説明するために参照する図である。
【0061】
本実施の形態に係る柱継手構造60は、図9及び図11に示すように、上側柱部材62と下側柱部材64を接合している。上側柱部材62には、図9におけるC−C線断面図を示す図10に示すように、その四角枠状の断面形状における同図中の上下方向に伸びる左側の一辺の中央部に、溶接継ぎ目80が形成されている。
【0062】
この溶接継ぎ目80は、図10におけるD−D線断面図を示す図11に示すように、上側柱部材62の図中上下方向の長さ全体に渡って形成されている。また、下側柱部材64にも同様の溶接継ぎ目80が形成されている。この溶接継ぎ目80は、上側柱部材62及び下側柱部材64の素材となった板材が、その製造工程において板材からプレス成形法により角管状に形成される最後に合せ目を溶接することにより形成され、上側柱部材62及び下側柱部材64の内外周両面に盛上がる溶接肉盛が残ったものである。
【0063】
柱継手構造60は、図10に示すように、内側接合板66と外側接合板68を8枚ずつ備えている。内側接合板66と外側接合板68のそれぞれは、上側柱部材62及び下側柱部材64の略四角枠状の断面形状における各辺に2枚ずつ水平方向に間隔を置いて、上下方向に平行に並んで配置されている。内側接合板66と外側接合板68は、上側柱部材62及び下側柱部材64の肉厚部を挟んで互いに対向して配置されている。
【0064】
このような本実施の形態によれば、やはり前記第1の実施の形態と同様の効果を有すると共に、図10に示すように、内側接合板66と外側接合板68のそれぞれが、上側柱部材62及び下側柱部材64の略四角枠状の断面形状における各辺に沿う各周面に2枚ずつ、互いに水平方向に離れて配置されていることにより、これら内側接合板66と外側接合板68が、上側柱部材62及び下側柱部材64の内外周両面に盛上がった、溶接継ぎ目80の溶接肉盛の上に乗り上げることを防止して、上側柱部材62及び下側柱部材64の溶接継ぎ目80が無い肉厚部の内外周両面に密着するように配置することができる。
【0065】
なお、前記第1の実施の形態においては、柱部材16,18の内側空間と外側空間とを連通させるのに、各柱部材16,18における4つの周面のうちの2つの周面に1つずつ作業用孔40を設けたが、4つの周面のうちの1つ、又は3つ、或いは4つの周面すべてに1つずつ作業用孔40を設けるようにしてもよい。また、互いに接合する上側柱部材16と下側柱部材18のうちのいずれか一方だけに作業用孔40を設けるようにしてもよい。
【0066】
また、前記第1の実施の形態においては、上側柱部材16及び下側柱部材18に設けられた補強部材38に作業用孔40が形成されていたが、補強部材38を固定しないで柱部材16,18に直接形成した貫通孔36を作業用孔として用いるようにしてもよい。
【0067】
また、前記第1の実施の形態においては、二面切欠き部を有するナット30を用いていたが、この代わりに前記第2の実施の形態で用いた六角ナット54を同様の態様で用いるようにしてもよい。
【0068】
この場合には、図3に示す内側接合板66の共回り防止用溝32は、その開口幅が、六角ナット54における六角形状の対角方向の長さよりも小さく、かつ、六角形状の二面幅よりも大きくなるように形成することはいうまでもない。
【0069】
また、前記第1及び3の実施の形態においては、ナット30は、その形状が、円形状からその両側部を平行に切り欠いた二面切欠き部を有するように形成されていたが、ナット30は、このような二面切欠き部を有するように形成されてさえいれば、前記第1及び3の実施の形態のような形状のものに限定されない。
【0070】
また、前記実施の形態においては、内側接合板12,56,66に共回り防止用溝32,58が形成されていたが、この共回り防止用溝32,58を形成しないようになっていてもよい。
【0071】
また、前記実施の形態においては、ボルト26の頭部やボルト52のオネジ先端部にピンテール34が設けられていたが、このようなピンテール34を設けないようにしてもよい。
【0072】
また、前記実施の形態においては、補強部材38、及びその作業用孔40、並びに蓋部材42のそれぞれが円形状に形成されていたが、作業者の手または工具等が通り抜けることができるようにさえなっていれば、これらは円形状以外の他の形状となるように形成されていてもよい。
【0073】
また、前記第3の実施の形態においては、上側柱部材62と下側柱部材64との間に、その各4つの周面ごとに2枚ずつの内側接合板66と外側接合板68を配置するようになっていたが、図11に示す溶接継ぎ目80を有する面以外の3つの面には、これらを1枚ずつ配置するようになっていてもよい。
【0074】
また、前記第3の実施の形態においては、上側及び下側柱部材62,64がプレス成形法により角管状に形成されるため、その柱部材62,64の内外周両面に溶接肉盛が残るので、柱部材62,64の内外周両面の内側及び外側接合板66,68を共に水平方向に離れた2枚のものを用いたが、柱部材62,64がロール成形法により角管状に形成される場合は、柱部材の外側の溶接肉盛は機械加工で除去して、柱部材の内側のみに溶接肉盛が残るので、その場合は柱部材の外側には1枚の接合板を設けて、柱部材の内側だけ2枚の水平方向に離れた接合板を設けるようにしてもよい。
【0075】
また、前記実施の形態においては、角管状の柱部材同士を接合する柱継手構造10,50,60に対して本発明を適用する場合について説明したが、本発明は、角管状以外の他の管状の柱部材同士を接合する柱継手構造に対しても適用することができる。例えば、本発明は、円管状や多角管状の柱部材同士を接合する柱継手構造に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
2,4 仮設板部材
6 上側柱部材
8 下側柱部材
10 柱継手構造
12 内側接合板
14 外側接合板
16 上側柱部材
18 下側柱部材
20,22,24 ボルト用貫通孔
26 ボルト
28 座金
30 ナット
32 共回り防止用溝
34 ピンテール
36 貫通孔
38 補強部材
38a ボス部
38b フランジ部
40 作業用孔
41 溶接部
42 蓋部材
44 締め付け工具
46 管状ソケット
48 内部ソケット
50 柱継手構造
52 六角頭付きボルト
54 六角ナット
56 内側接合板
58 共回り防止用溝
60 柱継手構造
62 上側柱部材
64 下側柱部材
66 内側接合板
68 外側接合板
80 溶接継ぎ目
90 ボルト
92 ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され互いに対向する端面同士が突合わせて接合される上側柱部材と下側柱部材との間にわたって、柱部材の肉厚部の内側及び外側それぞれの面に接触して配置された内側接合板及び外側接合板の肉厚部がネジ結合部材により締結され、
前記上側柱部材における前記接合板より上方の肉厚部、及び/又は、前記下側柱部材における前記接合板より下方の肉厚部に、柱部材の内側空間と外側空間とを連通する作業用孔が形成された
ことを特徴とする柱継手構造。
【請求項2】
前記上側柱部材における前記接合板の上方の肉厚部、及び/又は、前記下側柱部材における前記接合板の下方の肉厚部を貫通して補強部材が設けられ、
前記作業用孔が前記補強部材に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の柱継手構造。
【請求項3】
前記ネジ結合部材が、その長さ方向における両端部のいずれか一方に、その締め付け作業の際に所定の締め付けトルクに達したときに除去されるピンテールを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の柱継手構造。
【請求項4】
前記内側接合板に、前記ネジ結合部材の共回りを防止する共回り防止用溝が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の柱継手構造。
【請求項5】
前記上側柱部材及び前記下側柱部材が角筒状に形成され、
前記内側接合板及び前記外側接合板が、前記柱部材の肉厚部の内側の面及び外側の面の少なくともいずれかの面において互いに水平方向に離れて複数配置されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の柱継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−52483(P2011−52483A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203586(P2009−203586)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【Fターム(参考)】