説明

栄養濃縮物を含有するフレキシブル培地バッグ

主コンパートメントと、使用時に放出されるまで栄養濃縮物を含有する格納場所とを含んでなるバッグなどの培地容器が開示されている。格納場所は、易壊シールまたは水反応性材料を含んでなるシールで画定された分離コンパートメントを含んでなることができる。易壊シールまたは水反応性材料を含んでなる小袋も格納場所に適している。水反応性材料を含んでなるマトリックスおよびコーティングも適している。粉砕および/または溶解することができるカプセルが使用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主コンパートメントと、使用時に放出されるまで栄養濃縮物を含有する格納場所とを含んでなる培地バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物は、食品および環境中に非常に低い濃度で存在するので測定することが困難であるが、それでも著しい健康上のリスクを引き起こし得る。微生物学者は、液体培地中でサンプルをインキュベートし、サルモネラ(Salmonella)属、リステリア(Listeria)属、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、クロストリジウム(Clostridium)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、および大腸菌(Escherichia)属に含まれるものなどの病原性微生物を検出して試験を実施する。同様の種類の試験は、血液、脊髄液、医療装置、および様々な種類の工業材料などの普通は無菌であることが期待されるサンプル中の微生物の存在を検出するために実行される。
【0003】
微生物濃度を測定可能なレベルにまで増大させるために、分析サンプルは、生物体集団の成長を可能にする栄養培地と混合される。この成長は、(1)栄養物およびサンプルが緊密に混合されるようにこれらを均質化する段階と、(2)サンプルおよび栄養物が標的生物体の成長を促進する温度により長い期間さらされる段階の2段階で実施することができる。この第2の段階中に、栄養培地内に追加の添加剤が導入されて、非標的生物体に不利な成長環境を形成してもよい。これらの2つの段階は、食品産業では「サンプル濃縮」と呼ばれる。
【0004】
特許文献1は、サンプルを培養した後、標的細菌DNAを単離および検出することによって、食品サンプルなどの複雑なサンプル混合物中の特定の標的細菌を検出する方法を開示している。標的DNAはPCR増幅プロトコルにより増幅され、検出はゲル電気泳動または蛍光手段によって達成される。
【0005】
歴史的には、サンプル濃縮はビンなどの剛性の閉鎖容器内で行われてきたが、現在好ましいアプローチは、フレキシブルなプラスチックバッグ内で濃縮を実行することであり、これは、「ホモジナイザーバッグ」または「ストマッカー(Stomacher)(登録商標)バッグ」と呼ばれることが多い。これらのバッグは、機械がバッグおよびその内容物を機械的に操作することができ、それによりサンプルの均質化が実施されるという点で硬い壁の容器よりも利点がある。典型的なホモジナイザー機は、サンプルを粉砕して培地と混合する往復式パドルを有する。
【0006】
実施において、微生物学者または試験室の技術者は、種々の標的微生物に対して種々の組成を有する無菌液体培養溶液および緩衝希釈溶液などの多数の異なる濃縮培地を調製する。培地の調製および滅菌は、当業者にはよく知られている。大量の培地および添加剤を調製することができ、より少ない量が、個々の分析のためにホモジナイザーバッグ内に移動される。各試験室における培地の調製は、特に測定および移動操作において費用がかかるとともに大きな労働力を要し、そして間違いが生じやすい。培地調製、滅菌、貯蔵およびホモジナイザーバッグへの導入というこの方法は、食品および環境試験業界では煩わしいと考えられている。
【0007】
そのため、予め充填および予め滅菌された剛性容器が製造された。これによって、試験室では試験サンプルが届いたらこれらを容器内に単に導入するという仕事だけが残される。例えば、特許文献2を参照されたい。
【0008】
しかしながら、液体培養溶液の輸送は、フレキシブルバッグ中の場合でも、溶液の重量および体積のために望ましくない。また、希釈、体積、栄養物のプロファイルおよび/またはその他の因子に関して、食品および環境試験業界で必要とされる様々な種類の分析は、多くの異なる培地を必要とし得る。様々な種類の培地は、製造および販売のための予備充填バッグの過度に複雑な目録をもたらし得る。従って、測定済みの栄養濃縮物を有するホモジナイザーバッグを提供し、試験室において使用する時点でこれに純水を添加できることが望ましいであろう。あるいは、栄養濃縮物および水がバッグを使用するときまで分離コンパートメントに含有される予備充填ホモジナイザーバッグを提供することが望ましいこともある。また、使用するときまで栄養物が「ブロス」中ではなく無菌パッケージ中に含有されるバッグの提供は、その意図される使用よりも前にバッグ内に偶発的に入る微生物の成長の機会を最小限にする。さらに、いくつかの場合には、様々な栄養成分を溶液中に一緒に貯蔵することが望ましくなく、使用時に混合されることが要求されることもある。栄養培地の成分が長期間互いに適合性でない場合には、最終栄養培地の成分をそれぞれが含有する多数のコンパートメントが望ましい。
【0009】
例えば、特許文献3、特許文献4、および特許文献5において、易壊シールを有するフレキシブルポーチが開示されている。
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,312,930号明細書
【特許文献2】米国特許第6,379,949号明細書
【特許文献3】米国特許第4,602,910号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/118710号明細書
【特許文献5】国際公開第91/07503号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(a)第1のポリマーフィルムシートと、(b)第2のポリマーフィルムシートと、(c)バッグ内の少なくとも1つの格納場所と、場合により(d)1つもしくはそれ以上の追加の格納場所とを含んでなる培地バッグなどの容器を含み、第2のシートは第1のシート上に重ね合わせられ、前記第1および第2のポリマーフィルムシートは、直接的にあるいは第3の介在ポリマーフィルムによって間接的に互いに密封され、従って、閉鎖されたバッグの形態で主コンパートメントを封入する密封外周部を画定することができ、前記少なくとも1つの場所は栄養濃縮物を含有し、使用時に栄養濃縮物を放出して栄養培地を構成することができ、前記追加の場所のそれぞれは、栄養濃縮物の放出の次のステップで放出され得る添加剤を含有することができる。
【0012】
また本発明は、上記で開示した容器を用いて、サンプル中に存在することが疑われる特定の標的細菌の存在を決定するために使用することができる方法も含む。該方法は、サンプルを容器内に挿入し、栄養濃縮物をその格納場所から放出して培地を構成し、サンプルを培地中でインキュベートして濃縮された複雑なサンプル混合物を形成せしめ、そして複雑なサンプル混合物中の標的細菌の存在を検出することを含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
バッグ内の格納場所の第1の実施形態は、閉鎖バッグの外周部の内部に少なくとも1つの易壊(frangible)シールを含んでなることができ、該易壊シールは閉鎖バッグを分離コンパートメントに分割し、栄養濃縮物は分離コンパートメントの1つの中に含有され、閉鎖バッグの密封外周部のシール強度は、分離コンパートメントの少なくとも1つに閉じ込められた流体の圧縮に耐えるのに十分であり、そして易壊シールのシール強度は、分離コンパートメントの少なくとも1つに閉じ込められた流体の圧縮に耐えるのに不十分であり、従って十分に持続した圧縮の後、流体は栄養濃縮物と混ざり合うことができる。
【0014】
持続した圧縮は、手による圧縮(すなわち、ユーザーが手で押してバッグを圧搾することによる)、あるいはホモジナイザー機のパドルなどによるバッグの機械的な圧縮によって達成することができる。好ましくは、易壊シールは、このようなホモジナイザー機のパドルで容易に圧縮できるようにバッグ内に配置される。
【0015】
第2の実施形態では、バッグ内の格納場所は、栄養濃縮物が含有される小袋(すなわち、小さい閉鎖されたポーチ)を含んでなり、該小袋は少なくとも1つの易壊シールを含んでなり、該易壊シールのシール強度は、主コンパートメントに閉じ込められた流体の圧縮に耐えるのに不十分であり、従って、十分に持続した圧縮の後、流体は栄養濃縮物と混ざり合うことができる。好ましくは、該小袋は、ホモジナイザー機のパドルによって容易に圧縮できるような位置に固定されてバッグ内に組み込まれる。
【0016】
易壊シールを含んでなる実施形態では、使用時には、流体(例えば、純水および/または滅菌水)が主コンパートメントに添加され、バッグが再密封されて流体を含有し、そして流体が圧縮されるのを可能にする。あるいは、使用する前の貯蔵および輸送の間、流体は主コンパートメント内に含有されてもよい。
【0017】
もう1つの実施形態では、バッグ内の格納場所は、栄養濃縮物が含有されるフレキシブルフィルムの小袋を含んでなり、該小袋の少なくとも一部は、水反応性のポリマー材料を含んでなる。
【0018】
別の実施形態では、バッグ内の格納場所は、栄養濃縮物が混入された水反応性ポリマー材料のマトリックスを含んでなる、粉末、顆粒、ペレット、シート、プラーク(plaque)などを含んでなる。格納場所は、栄養濃縮物に施された水反応性ポリマー材料のコーティングを含んでなってもよい。栄養濃縮物は、水反応性ポリマー材料でコーティングされる前は粉末または粒状形態でよい。あるいは、栄養培地は、水反応性ポリマー材料のコーティングを施す前に、ペレット、シート、プラークなどに形成される。もう1つの代替として、格納場所は、水反応性材料で形成されたシールにより画定されるポーチ内の分離コンパートメントである。
【0019】
水反応性ポリマーを含んでなるこれらの実施形態では、使用時に純水および/または滅菌水がホモジナイザーバッグの主コンパートメントに添加され、水反応性ポリマー材料が溶解、破裂、分散および/または分解され、栄養濃縮物が放出されて、添加された水と混ぜ合わせられる。
【0020】
さらにもう1つの実施形態では、格納場所は、均質化の過程で粉砕および/または溶解されることが可能な錠剤またはカプセルを含んでなる。該場所は、持続放出のために逐次的な方法で粉砕および/または溶解されることが可能な1つもしくはそれ以上の錠剤またはカプセルを含んでなることもできる。
【0021】
好ましくは、培地バッグは再密封可能な閉鎖部も含む。場合により、培地バッグは、バッグが充填されたときに直立できるようにするガセットベースを含んでなる。
【0022】
ここで開示される容器は、サンプルを液体培地中でインキュベートして微生物の成長を促進するために使用され得るフレキシブル容器またはバッグを指すために本明細書中では交換可能に使用される「培地バッグ」または「ホモジナイザーバッグ」であり得る。
【0023】
ホモジナイザー機は、サンプルをフレキシブルバッグ内の栄養培地とブレンドして微生物の培養を提供するための装置である。ホモジナイザー機は、バッグの外側から混練作用を提供してサンプルをブレンドする一組のパドルを含んでなる。例えば、米国特許第6,439,759号明細書を参照されたい。ホモジナイザー機は、スワード社(Seward Ltd.)からストマッカー(Stomacher)(登録商標)という商品名で市販されている。
【0024】
本発明は、使用時に内容物(例えば、栄養濃縮物)が放出されるように意図的に破裂され得る格納場所を有するホモジナイザーバッグを提供する。バッグがホモジナイザー機の内部にあるときにその内容物が放出されるように、ホモジナイザーバッグの内部に格納場所を配置することが可能である。無菌ホモジナイザーバッグが提供されるので、試験室の技術者はサンプルおよび滅菌水を添加し、バッグをその内容物と共にホモジナイザー内に入れ、そして次に均質化されたサンプルを後で回収することだけが必要とされる。
【0025】
ホモジナイザーバッグは、様々なサンプルタイプおよびサンプリング手順のためにいくつかのサイズで製造され得るが、これらは全て同じようにして操作されて均質化を達成する。すなわち、バッグは、まずある領域が機械的に圧縮され、次に別の領域が機械的に圧縮される。一方の領域が圧縮されると、他方の領域は解放される。この方法によって、サンプルおよび栄養培地は、バッグ内で前後に流動させられる。バッグ内の流動状況を作り上げる様々な機械設計が存在するが、これらは全て交互の圧縮処理を利用する。バッグ内の好気性微生物から起こり得るガスの放出のために、多くの場合、均質化の過程の少なくとも一部ではバッグは密封されず、そしてその内容物は空気にさらされる。
【0026】
栄養濃縮物を含有する格納場所(例えば、分離コンパートメントまたは小袋)は、ホモジナイザーパドルの第1の圧縮が格納場所を破裂させて栄養物を水中に放出するように配置することができる。栄養培地の成分が長期間互いに適合性でない場合、最終栄養培地の成分をそれぞれが含有する多数の格納場所がホモジナイザーの圧縮ゾーンに位置するのが望ましい。放出された栄養濃縮物は、水中に溶解および/または分散して、栄養培地を構成することができる。
【0027】
特定の微生物のためのサンプルの濃縮は、全ての微生物が成長する最初の段階と、その後の、標的生物体を除く全ての成長が概して抑制される段階とを含む。例えば、この第2の段階は、非標的生物体の成長を抑制する抗生物質などの添加剤の導入を含んでもよく、添加剤は、栄養濃縮物の放出の次のステップでその格納場所から放出される。
【0028】
栄養濃縮物の放出の次のステップで放出され得るその他の添加剤は、例えば、指示薬化合物、染料、クエンチ剤、固定液などを含むことができる。その他の第2のステップの添加剤は、微生物の抽出および/または検出のための試薬であり得る。このような試薬は純粋であり、添加剤、希釈剤が配合されるか、あるいはファージ(細菌を破壊する超顕微鏡的な、通常はウィルスの生物体)、ファージに由来する成分、抗体、ポリ−ヒスタミンまたはマルトース結合ドメインまたは他の親和性ペプチド、アプトマー(aptomer)、ビオチンまたはストレプトアビジン(streptoavidin)または他の親和性分子と組み合わせることができる。これらの配合された試薬は、液体、ゲル、ペースト、乾燥粉末、顆粒の形態、またはその他の自由流動性の形態であり得る。あるいは、これらの試薬は、粒子、特にミクロン〜ナノメートルの大きさの磁性または常磁性粒子などの固体支持体上に固定化することもできる。
【0029】
また本発明は、上記のような添加剤が栄養濃縮物の放出の次の少なくとも1つのステップで放出されるように、圧縮ゾーンよりも上に位置する少なくとも1つの追加の格納場所を有するホモジナイザーバッグも考慮する。従って、第2のステップのための添加剤は、栄養濃縮物が放出された後の時点で、その格納場所を開放することによって放出され得る。例えば、第2のステップのための添加剤は、手動圧縮または自動圧縮のいずれかによるコンパートメントまたは小袋の易壊シールの破裂によって放出させることができる。剥離性カバー、水溶性小袋、もしくは錠剤またはカプセルを有するコンパートメントなどの、第2のステップの添加剤のための他の格納場所も本発明において考慮される。
【0030】
本発明は、サンプルが培地中に容易に溶解されない状況においてもうまく作用することができる。いくつかの場合には、サンプルの良好な分配を得るために、混合物を物理的に攪拌または打ち付けることが必要かもしれない。開示される方法が使用される場合、培地およびサンプルの溶液は、必要であれば、バッグの内容物を1つの容器から別の容器に移すことなく、フレキシブルバッグの壁を通して迅速に粉砕または混練することができる。これは、望ましくない汚染物質を導入するリスクを低減する。剛性容器が使用される場合には、この状況で容器間の移動は欠点であり得る。さらに、透明バッグの使用は、培養または試験過程の任意の時点における培地およびサンプルの目視検査を可能にする。さらに、本発明の容器の使用は、予め充填されおよび予め滅菌された培地を用いることによって、再使用のためにリサイクルして供給業者に戻す必要なく試験室のコストを削減することができ、それにより、剛性容器の追加コストを削減し、廃棄材料全体の質量および体積を減少させる。
【0031】
栄養濃縮物は、微生物の成長を支援するために適切な様々な栄養物(例えば、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、糖、酸素など)を含んでなる。また、サンプルの培養および分析を容易にするために、無機塩、緩衝液、指示薬などの成分を含んでなることもできる。栄養調製物は、例えば、大豆カゼイン、チオグリコレート、ならびにブレインおよび/またはハート・インフュージョン(brain and/or heart infusion)に由来する濃縮形態で入手可能である。栄養濃縮物は通常固体であり、ダスト、粉末、顆粒などの流動可能な形態であり得る。あるいは、濃縮物は、追加のバインダーを用いて、あるいは用いずに、ペレット、シート、プラークなどに圧縮されてもよい。半固体、ペースト、ゲルまたは濃縮液の形態も、本発明のいくつかの実施形態における使用のために適切であり得る。
【0032】
バッグは、好ましくは、穿刺に耐性であり、内容物の目視検査を可能にするために透明であることが適切であり、長い貯蔵寿命を有する材料で製造される。例えば、バッグが「2つの側面を有する」バッグであり、バッグが充填されていないときには一方のシートが他方のシートの上部で平坦であるように、バッグは2枚の薄いフィルムシートを含んでなることができる。
【0033】
バッグ内の格納場所として使用されるフレキシブル培地バッグまたは小袋の側壁を作るために用いられるポリマーフィルムシートは、単層または多層ポリマーフィルムのいずれでもよい。バッグの構成に含まれるフィルムシートは、異なる構造でもよい(例えば、一方の層が透明であり、他方の層が不透明でもよい)。パッケージング技術の分野において一般に知られているようなフィルムグレードのポリマー樹脂または材料はどれでも用いることができる。多層ポリマーシートは少なくとも3つのカテゴリーの層を含むことができ、最も外側の構造または酷使層と、内側バリア層と、最も内側の層と、場合によりこれらの間の1つもしくはそれ以上の接着または結合層とが含まれるが限定はされない。バッグまたは小袋の対象とされる内容物と接触されて適合性である最も内側の層は、好ましくは、ロックアップ外周部シール(すなわち、1,500g/インチよりも大きいシール強度)と、本発明のいくつかの実施形態のための易壊シールとの両方を形成することができる。最も内側の層はヒートシール可能であり得る。
【0034】
最も外側の構造または酷使層は、ポリエチレン、または配向ポリエステル、または配向ポリプロピレンであり得るが、配向ナイロンを含むこともできる。この層は、好ましくは、リバース印刷可能であり、バッグは多層構造の厚さ全体を通して密封されるので、バッグおよびコンパートメントを作るために使用されるシーリング温度による影響を受けないのが有利である。この層の厚さは、バッグの剛性を調節するように選択することができ、約10〜約60μm、好ましくは約50μmの範囲でよい。
【0035】
内側層は、バッグ内部の生成物に潜在的に影響を与え得る大気条件(酸素、湿度、光など)に依存して、1つもしくはそれ以上のバリア層を含むことができる。バリア層は、金属化配向ポリプロピレン(PP)、アルミニウム箔、配向ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ナイロンまたは二軸配向ナイロン、これらのブレンドまたは複合体、ならびにこれらの関連コポリマーであり得る。バリア層の厚さは、生成物の感度および所望される貯蔵寿命に依存するであろう。
【0036】
パッケージの最も内側の層はシーラントである。シーラントは、内容物の効力に対して最低の効果を有し、生成物による影響を受けず、そしてシーリング条件(液滴、グリース、ダストなど)に耐えるように選択される。最も外側の層の外観がシーリング過程で影響されず、シーリングバーのジョーにくっつかないように、シーラントは、最も外側の層の融解温度よりも実質的に低い温度でそれ自体に結合(密封)することができる樹脂でよい。バッグまたは小袋において使用されるシーラントは、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセンポリエチレン、またはエチレンと酢酸ビニルまたはアクリル酸メチルとのコポリマー、または場合によりアイオノマー化(すなわち、Na、Zn、Mg、またはLiなどの金属イオンで部分的に中和)されたエチレンとアクリル酸(EAA)またはメタクリル酸(EMAA)とのコポリマーなどのエチレンコポリマーを含むことができる。またシーラントは、ポリプロピレンコポリマーを含むことができる。シーラント層は、25〜100μmの厚さであり得る。本発明のいくつかの実施形態のためには、シーラントは、好ましくは、バッグの圧縮によって破裂してはじける易壊シールを形成する。
【0037】
バッグの製造において使用されるポリマーフィルムシートの製造の間、場合により、機能層同士の間に同時押出可能な接着剤が使用されて、層を互いに接着して、構造の完全性を提供する。これらには、無水マレイン酸またはマレイン酸などの不飽和カルボン酸基で変性またはグラフト化されたエチレンまたはプロピレンのポリマーおよびコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。また、さらなる厚さ(特定の用途のために消費者が所望する場合)を提供するために、ポリオレフィンのバルク層またはバッグの製造中に切り取られた多層フィルムの細かい残物が多層構造内に取り込まれてもよい。
【0038】
いくつかの場合には、構造層、バリア層および/またはシーラント層の機能は、単一のポリマー層内に兼ね備えられてもよい。注目すべきは、バッグにおいて使用されるフィルムがポリエチレンの単層を含んでなる本発明の培地バッグである。また、バッグにおいて使用されるフィルムがナイロンの外側層およびのエチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)の内側層を含んでなるバッグも注目すべきである。バッグ構成のための他の適切な多層材料には、
PET/接着剤/LLDPE;ナイロン/接着剤/LLDPE、
ナイロン/PVDC/接着剤/LLDPE
が含まれる(最も外側の層から最も内側の層へ)が含まれる。
【0039】
易壊シール
易壊シールを含んでなる実施形態では、好ましくは流体を閉じ込めるコンパートメント内で約0.5psig(あるいは、約2.0psig)から約12psigもの圧力の増大を生じるように持続して圧縮されたときに、フレキシブルフィルム層は易壊シールにおいて層間剥離する。
【0040】
易壊シールは、約130〜約5,000、または約400g/インチ〜約2500グラム/インチ、または1,000〜2,000g/インチのシール強度を有し得る。従って、流体を閉じ込める分離コンパートメント内で約0.5psig〜約10psigの圧力の増大を生じるように持続して圧縮されたときに易壊シールの全長のいくらかまたは全部に約1,500〜約10,000グラム/インチの間のシール破断力がかけられるようにバッグを設計することができ、そして最も好ましくは、液体飲料または流体を閉じ込める分離コンパートメント内で約0.5psig〜約5psig圧力の増大を生じるように持続して手で圧縮されたときに易壊シールの全長のいくらかまたは全部に約400〜約6,000グラム/インチの間のシール破断力がかけられるようにバッグを設計することができる。しかしながら、持続する圧力の上昇が12psig、またはそれよりも高い圧力に達する機械用途のためには、さらにより高いシール強度およびシール破断力を考慮することができる。
【0041】
易壊シールは、ヒートシールが異なる温度で形成されるときに異なるシール強度を有する界面剥離シーリングを受ける樹脂から製造された最も内側のシーラント層をそれぞれが有する2枚の重ね合わせられたポリマーフィルムの多層シートをヒートシールすることによって形成することができる。このような樹脂には、メタロセンPEを含むポリエチレン(PE)と、ポリブチレン(PB)またはポリプロピレンとのブレンド(そのホモポリマーまたはコポリマーを含む)(集合的に、PE/PBブレンド、PE/PPブレンド)、そしてポリプロピレンと、ポリブチレンとのブレンド(PP/PBブレンド)またはエチレンメタクリル酸とのブレンド(PP/EMAAブレンド)またはスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックターポリマーとのブレンド(PP/SEBSブレンド)などの1つもしくはそれ以上のポリオレフィンのブレンドが含まれる。あるいは、易壊シールは、シール領域において最も内側の層をシーラントでゾーンコーティングすることによって、またはアイオノマー、部分的に中和されたエチレンアクリル酸コポリマーまたはエチレンメタクリル酸コポリマーと、エチレンコポリマーなどの2つの異種シーリング表面をヒートシールすることによって作ることができる。最も内側のシーラント層として特に好ましいのは、その他のブレンドがあまり信頼できず、そしてゾーンコーティングがより高価であるため、アイオノマーと、ポリプロピレンα−オレフィンコポリマーとのブレンド(PP/PBコポリマーとブレンドされたEAAまたはEMAAアイオノマー)である。広いヒートシール温度範囲にわたって予測可能な剥離強度を示すこのようなアイオノマーとPPコポリマーとのブレンドは、米国特許第4,550,141号明細書および米国特許第4,539,263号明細書に開示されている。フレキシブル多重コンパートメント培地バッグにおいて使用される場合、これらのポリマーブレンドは、(a)80〜93重量%のエチレン/酸アイオノマー(アイオノマーはジポリマーまたはターポリマーでよく、エチレン/酸アイオノマーの少なくとも50重量%はエチレンコモノマーから誘導され、通常8重量%よりも多くが酸コモノマーから誘導され、酸の中和度は5〜45%である)と、(b)20〜7重量%のプロピレン/α−オレフィンコポリマー(α−オレフィンコモノマーはコポリマーの1〜12重量%を含んでなる)とのブレンドであるポリマーフィルムのそれぞれの内側表面を含む。
【0042】
米国特許第4,550,141号明細書に開示されるように、最も内側のシーラント層を構成するブレンドとして使用されるEMAAアイオノマーおよびプロピレン/エチレンコポリマーの選択および量は、易壊シールの製造において使用される界面「ヒートシール」温度の関数として、易壊シールの剥離強度を部分的に決定する。また、約5重量%から約20重量%までのPP/E(3%E)コポリマーと、EMAAアイオノマー(15%MAA、Znで22%中和)とのブレンドの使用も開示されている。さらに示されるように、より低いPP/Eコポリマー負荷(例えば、8%)では、約90〜120℃の温度範囲にわって約800〜1070g/インチのシール強度であるヒートシールプラトーの開始は、PP/Eコポリマー負荷の増大(例えば、20%)の関数として、約80〜140℃の温度範囲にわたって約130〜400g/インチのシール強度であるヒートシールプラトーまで進行する。この情報、または代替のシーラントブレンドに関して当業者により測定された同様のデータを用いて、易壊シールを製造するためのヒートシール温度の選択と共に、最も内側のシーラント層の組成を選択して、例えば、予測可能な所望される破裂時の剥離力の範囲を有する易壊シールを生じることができる。
【0043】
また易壊シールは、第1のポリマーフィルムシートを第2のポリマーフィルムシートにヒートシールすることによって製造することができ、易壊ヒートシールにおけるポリマーフィルムの少なくとも一方そして好ましくは両方の内側表面は、(a)主成分としての酸変性エチレンビニルEVAコポリマーまたは酸変性エチレンアクリル酸メチル(EMA)コポリマーと、(b)微量成分としての部分的に中和されたエチレン酸アイオノマーとのブレンドである。
【0044】
あるいは、易壊シールは、第1のポリマーフィルムシートを第2のポリマーフィルムシートにヒートシールすることによって製造することができ、易壊ヒートシールにおけるポリマーフィルムの少なくとも一方そして好ましくは両方の内側表面は、(a)主成分としての部分的に中和されたエチレン酸アイオノマーまたはエチレン酸コポリマーと、(b)微量成分としてのポリブテン−1ホモポリマーまたはコポリマーとのブレンドである。
【0045】
また易壊シールは、第1のポリマーフィルムシートを第2のポリマーフィルムシートにヒートシールすることによって製造することができ、易壊ヒートシールにおけるポリマーフィルムの少なくとも一方そして好ましくは両方の内側表面は、(a)主成分としてのメタロセンポリエチレンと、(b)微量成分としてのポリプロピレンまたはポリブテン−1ホモポリマーまたはコポリマーとのブレンドである。
【0046】
このようなポリマー系およびブレンドは、米国デラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)(デュポン(DuPont))から、商品名アピール(Appeel)(登録商標)、バイネル(Bynel)(登録商標)、エルバックス(Elvax)(登録商標)、ニュクレル(Nucrel)(登録商標)およびサーリン(Surlyn)(登録商標)のシーラントとして市販されている。この場合も、スリップ剤、アンチブロッキング剤、および/またはチルロール(chill role)離型剤などを例として含むがこれらに限定されない様々な添加剤が使用されることが多い。これらの酸変性EVAおよびEMA系ブレンドを様々な他のポリマーフィルム層と併用すると、ヒートシール強度は、選択的に、300g/インチ〜3,000g/インチまでの範囲であり、3,000g/インチを超えるロックアップヒートシール強度を有することができる。
【0047】
あるいは、易壊シールは、バッグを形成するフィルムのシート間に結合されたセパレータストリップを用いて調製されてもよい。これらのストリップは、バッグが圧縮されたときにフィルムシートの一方からまたは両方から層間剥離し、それにより、コンパートメントの内容物が放出される。例えば、米国特許出願公開第2004/0247813号明細書(メルトブローンマイクロファイバーを含んでなるストリップを開示する)を参照されたい。
【0048】
易壊シールに沿った力は易壊シールの形状(曲率)によって大きく影響を受け、この力の大きさは、バッグを圧搾することにより生じる圧力の関数でもある。易壊シール設計における鋭い点または頂点の存在は、本質的に直線の易壊シールと比較して、その点の頂点においてより高い力の集中を提供し、すなわち、破裂の位置を調節するために使用することができるシール破断力を生じるのに十分であり、より強い易壊シール(すなわち、より高いシール強度)の使用も可能にする。同様に、滑らかに湾曲した易壊シール形状は、易壊シールの直線形状よりも所与の圧力上昇において高い剥離力を提供し、この増大した力の局在化も提供するが、v型の頂点形状ほどではない。易壊シールの物理的な曲率および形は、易壊シールのシール強度を選択的に超えるために力を集中する手段になり得る。従って、シール強度を選択的に超えるための力集中手段(force concentrating means)は、直線の易壊シールからの意図的なずれを本質的に含む広範囲の等価物を有する。力集中手段を有すれば、より高い易壊シール強度を用いることができ、従って最も強い易壊シールでも破裂が保証される。比較的長い距離にわたってより低い力を集中させて破裂させると、分離コンパートメントの内容物(または培地バッグの主コンパートメントへの小袋の内容物)のより良好、より容易および/またはより迅速な混合を保証できるかもしれない。さらに、易壊シールは、従来の輸送および顧客の取扱いに破裂することなく耐えるのに十分強いことが必要とされる。滑らかに湾曲した易壊シール(滑らかな曲線形状)は、これらの3つの因子の中で最良のバランスを提供することができる。
【0049】
易壊シールのシール強度を選択的に超えるための少なくとも1つの力集中手段を含有する易壊シールを製造するために、様々な代替方法が考えられる。好ましくは、易壊シールの形状および/または曲率は、バッグが圧縮または圧搾される際に形成される力を集中するように用いられるべきである。しかしながら、ヒートシール樹脂のゾーンコーティングが使用される場合、シール強度を選択的に超えるために力を集中する手段(曲率を伴うまたは伴わない)として、易壊シールに沿ったゾーンコーティングなどの幅の意図的な減少が用いられてもよい。また、易壊シールをヒートシールするために用いられる(加熱した)バーの形状および/または可変幅も、本発明において有用な力集中手段を生じるように用いることができる。易壊シールのシール強度を選択的に超えるための力集中手段を含有する易壊シールを作るために、時間−温度シーリング法を用いることもできる。例えば、限定のためではないが、異なるヒートシールバーで反復的および/または多重に打ち当てることによって可変シール強度を有する易壊シールを生じることができ、これは次に、易壊シールのシール強度を選択的に超えるための特許請求される力集中手段の等価構造としての機能を果たす。
【0050】
水反応性材料
別の実施形態では、格納場所は、水反応性材料を含んでなる。水反応性材料は、水と接触したときに溶解、破裂、分散および/または分解して、その中に含有される栄養濃縮物が水中に放出されて液体培地を形成できるようにする材料を意味する。好ましくは、材料は、水溶性ポリマー材料などのように水溶性である。
【0051】
小袋は、好ましくは、水溶性フィルムから製造される。小袋は、互いに密封される2枚の重ねられた水溶性フィルムのシートから製造されてもよい。あるいは、小袋は、水反応性でないフィルムシートに密封された水溶性フィルムシートを含んでなることもできる。これは、あるいは、ホモジナイザーバッグを形成するシート間にシーリングするための延長タブを有する小袋の調製においても有用であり、延長タブは水反応性でないフィルムを含んでなる。小袋は、溶解してバッグ内容物を放出する可溶性シールを有してもよい。
【0052】
これらの実施形態のために有用な水溶性フィルムは、少なくとも50%、少なくとも75%、またはさらに少なくとも95%である水中の溶解度を有する。溶解度は以下のように決定することができる。50グラム±0.1gの材料が既知の重量の400mlビーカーに添加され、245ml±1mlの蒸留水が添加される。これは600rpmに設定されたマグネティックスターラー上で30分間激しく攪拌される。次に、混合物は既知の細孔サイズ(通常、50μm未満)を有する折り畳み定性焼結ガラスフィルタでろ過されて、不溶性材料が除去される。任意の従来の方法によって水は、集められたろ液から乾燥除去され、ポリマー残渣の重量が決定される(これは、溶解または分散された画分である)。次に、%溶解度または分散度を計算することができる。
【0053】
好ましい材料は、例えばフィルムまたはシート状に形成されたポリマーなどのポリマー材料のフィルムである。フィルムは、例えば、当該技術分野において知られているように、ポリマー材料のキャスティング、ブロー成形、押出またはブロー押出によって得ることができる。好ましいポリマー、コポリマーまたはその誘導体は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリカルボン酸および塩、ポリアミノ酸またはペプチド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、デンプンを含む多糖類およびゼラチン、キサンタム(xanthum)およびカラガム(carragum)などの天然ガムから選択される。ポリマーは、ポリアクリレートおよび水溶性アクリレートコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレートでよく、さらにより好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマーおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。ポリマーは、任意の重量平均分子量、好ましくは約1000〜1,000,000、またはさらに10,000〜300,000、またはさらに15,000〜200,000またはさらに20,000〜150,000の重量平均分子量を有することができる。
【0054】
ポリマーの混合物を使用することもできる。これは、格納場所の機械および/または溶解特性を、その用途および要求される必要性に応じて調節するために有益であろう。例えば、1つのポリマー材料はもう1つのポリマー材料よりも高い水溶性を有する。そして/または1つのポリマー材料はもう1つのポリマー材料よりも高い機械強度を有する。異なる重量平均分子量を有するポリマーの混合物、例えば、10,000〜40,000、好ましくは約20,000の重量平均分子量のポリビニルアルコール(PVA)またはそのコポリマーと、約100,000〜300,000、好ましくは約150,000の重量平均分子量を有するPVAまたはそのコポリマーとの混合物を用いるのが好ましいこともある。
【0055】
また、材料が水溶性であるべき場合には、例えば、ポリ乳酸およびポリビニルアルコールを混合することによって得られ、通常1〜35重量%のポリ乳酸およびおよそ65重量%〜99重量%のポリビニルアルコールを含んでなるポリ乳酸およびポリビニルアルコールなどの加水分解で分解可能であり水溶性のポリマーブレンドを含んでなるポリマーブレンド組成物も有用である。
【0056】
ポリマーは、60%〜98%、または80%〜90%でフィルム中に存在し、加水分解され、材料の溶解を改善することができる、そして/またはフィルム中の水を含む可塑剤のレベルは、溶解が必要に応じて調整されるように変更される。
【0057】
また、フィルム中のポリマーのレベルが少なくとも60%であるPVAフィルムも好ましい。このようなフィルムは、米国インディアナ州ゲーリーのクリス−クラフト・インダストリアル・プロダクツ(Chris−Craft Industrial Products)により販売されるように商品名M8630またはCXP4087で知られているフィルムと同様の特性を有するPVAポリマーを含んでなることができる。実例には、材料M8630および/またはCXP4087そのものも含まれる。その他の例のPVAフィルムは、日本国愛知県のアイセロ化学株式会社(Aicello Chemical Co.,Ltd.)から、「ソルブロン(Solublon)PT30」および「ソルブロン(Solublon)KA40」で入手可能である。
【0058】
可塑剤は、水、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、およびこれらの混合物を含むことができる。その他の添加剤は、安定剤、分解剤などであり得る。
【0059】
小袋は、本明細書において示されるように伸縮性の材料で製造することができる。これによって、90体積%よりも多く充填されたとき、またはさらに95体積%、またはさらに100%、またはさらに過剰充填されたときに、開いている小袋を閉じることが容易になる。緊密なパッキングおよび取扱い中の内部の栄養濃縮物の固定を保証するために、例えば、小袋が閉鎖された後(追加的な)ヘッドスペースが形成できないことを保証するために、材料は好ましくは弾性である。好ましい伸縮性材料は、約1〜約20ニュートンの力が1cmの幅のフィルム片に加えられたときに材料片の元の長さと、伸長による破裂の直前の長さとを比較して決定されるように、少なくとも150%、少なくとも200%、または少なくとも400%の最大伸長度を有する。好ましくは、材料は、約2〜約12ニュートン、または約3〜約8ニュートンの力が使用されたときに、上記のような伸長度を有するようなものである。例えば、10cmの長さおよび1cmの幅および40μmの厚さを有するフィルム片は、破裂する時点まで応力を増大させて長さ方向に伸長される。破裂直前の伸びの程度は、長さを連続的に測定することによって決定することができ、伸長度を計算することができる。例えば、9.2ニュートンの力で伸長された10cmの元の長さを有するフィルム片は、破断の直前に52cmであり、520%の最大伸長度を有する。
【0060】
このようなフィルム片(10cm×1cm×40ミクロン)を200%の程度まで伸長するための力は、上記で開示した範囲内であり得る。これは、小袋の形成または小袋の閉鎖後にフィルム内に残存する弾性力が、栄養濃縮物を小袋内にきつく詰め込むのに十分高い(しかし、真空形成または熱形成などの真空の使用を伴う方法で小袋が製造される場合に、妥当な深さの真空モールド内にフィルムを延伸できないほどは高くない)ことを保証することができる。伸縮性材料は、閉鎖された小袋として存在しないときに測定される伸長度によって定義される。しかしながら、材料は、小袋を形成または閉鎖するときに伸長され得る。これは、例えば、伸長する前に材料、例えばフィルム上にグリッドを印刷した後、小袋を形成することによって見ることができ、グリッドの正方形が細長くなり、従って伸長されていることが分かる。
【0061】
伸縮性材料の弾性は、「弾性回復」として定義することができる。これは、上記に示したように材料を例えば200%の伸びまで伸長し、伸長力を解放した後の材料の長さを測定することによって決定することができる。例えば、長さ10cmおよび幅1cmおよび厚さ40μmのフィルム片は、2.8ニュートンの力で長さ方向に20cm(200%の伸び)まで伸長され(上記のとおり)、そして次に力が除去される。フィルムは12cmの長さまではね返り、これは80%弾性回復を示す。小袋材料は、約20%〜約100%、約50%〜約100%、約60%〜約100%、約75%〜約100%、または約80%〜約100%の弾性回復を有することができる。
【0062】
伸長度は、形成および閉鎖の過程のために小袋全体を通して不均一であり得る。例えば、フィルムがモールド内に位置決めされ、真空形成によって開いた小袋が形成される場合、モールド底部のフィルムの一部は、閉鎖地点から最も遠くに離れて、上部におけるよりも伸長され得る。伸縮性、弾性、またはその両方の材料を用いる場合、伸長作用は材料を不均一に伸長し、不均一な厚さを有する小袋が得られる。これは、培地バッグに添加された水中における小袋の溶解/分解または分散を調節できるようにし得る。伸長された材料で形成された小袋の厚さの変化が、10〜1000%、20%〜600%、40%〜500%、または60%〜400%であるように、材料を伸長することができる。これは、例えば適切なマイクロメーターの使用などの任意の方法によって測定することができる。
【0063】
水反応性ポリマーを含んでなる別の実施形態は、使用するときまで空気および外来的な微生物にさらされないように栄養濃縮固形物を封入または包囲する水反応性材料のマトリックスまたはコーティングを含む。もう1つの別の実施形態は、水反応性材料から形成されるシールによって画定されるバッグの分離コンパートメントを含んでなる。これらの実施形態のための水反応性材料は、水溶性フィルムについて既に記載した材料を含んでなることができる。
【0064】
好ましくは、水反応性の小袋、マトリックス、コーティングまたはシールは、サンプル培養物の調製中に水と接触したらほとんど即座に栄養濃縮物を放出し始める。例えば、小袋は、水と接触してから約1秒〜約120秒、または約5秒〜約60秒後に濃縮物を放出し始める。
【0065】
バッグアセンブリ
本発明のバッグまたは小袋を調製するために使用されるポリマーフィルムのシート(すなわち、いわゆる「ウェブストック」)は、単層または多層キャスティング、ブローイングフィルム、押出積層、および接着積層ならびにこれらの組み合わせなどの当該技術分野において一般に知られている方法の任意の組み合わせを用いて製造することができる。フィルムの製造またはバッグの形成のいずれかを容易にするために必要であれば、スリップ剤(アミドワックスなど)、アンチブロッキング剤(シリカなど)、および酸化防止剤(ヒンダードフェノールなど)を例として含むがこれらに限定されない当該技術分野において一般に知られている加工助剤がウェブストック内に取り込まれてもよい。バッグは、ウェブストックの別々の断片を切断およびヒートシールするか、あるいは折り畳みおよびヒートシールを切断と組み合わせるかのいずれかによって、ウェブストックから形成される。本発明は、第1のポリマーフィルムシートおよび第2のポリマーフィルムシートを含んでなると定義されるが、単一のフィルムウェブそのものが折り畳まれて2枚の重なるシートを提供してもよいし、あるいはチューブの2つの重なる部分が2枚のフィルムシートの等価物を提供するようにフィルムのチューブが形成されてもよい。バッグのヒートシールされた外周部は、当該技術分野において一般に知られており実施されているように、第1および第2のポリマーフィルムシートを重ね合わせてから互いに直接的にヒートシールするか、または介在する第3のポリマーフィルムの使用により間接的にヒートシールすることによって得ることができる。
【0066】
日本国京都府のトタニ技研工業株式会社(Totani Corporation)または米国バージニア州ゴードンスビルのクロックナー・バーレルト社(Klockner Barlelt Co.)によって製造されるようなバッグまたはバッグ製造装置を使用することができる。
【0067】
バッグは、望ましくは、外周部のまわりに完全に密閉を提供して、使用前はバッグ内部およびその内容物を完全に封入するようなやり方で調製される。外周部の完全なシールは、バッグの内部を無菌状態に維持することができる。バッグは使用時に上部の外周部シールの下側を切断または破いて開放され、試験サンプルおよび培地を構成するために必要とされる水(バッグ内にまだ提供されていなければ)が導入される。場合により、バッグは、培養サンプルを添加するのにバッグの開放を容易にするための案内手段を含んでなる。このような案内手段は上部シール付近でバッグに取り入れられた少なくとも1つの切欠き、穿孔またはこれらの組み合わせを含んでなる。
【0068】
バッグは、「ジッパー」または「ジッパーで閉じる」閉鎖部の形態の再密封可能な開放部およびバッグを密封するその他の方法など、再密封可能な閉鎖部を上部シール付近に有することができる。バッグの「ジッパーで閉じる」閉鎖部は、培養のためにサンプルをバッグに添加する際にバックの便利な開放および再密封を可能にする。
【0069】
バッグを再密封する別の方法は、「ジッパーで閉じる」閉鎖部の代わりに閉鎖ワイヤを使用することである。閉鎖ワイヤは、一方のシートの上部に結合され、閉鎖ワイヤは、バッグの幅を超える長さを有する。サンプルが添加された後にバッグを再密封するために、サンプル挿入のための開放部を含むバックの上縁部は一緒に平らにされ、次に閉鎖ワイヤのまわりに巻かれる。次に、巻かれた部分が巻き戻るのを防止するためにその部分に閉鎖ワイヤの端部が巻きつけられる。
【0070】
あるいは、バッグは、その上側縁部を一緒に巻き、まかれた部分をスプリングクランプでクリッピングすることによって再閉鎖することができる。サンプルが添加された後にバッグを再密封する代替方法は、ヒートシーリングなどによって単に上側縁部を一緒に結合して、気密シールを形成することを伴う。
【0071】
バッグは、栄養濃縮物の導入の前に部分的に組み立てることができる(すなわち、栄養濃縮物の導入の前にバッグアセンブリにおけるできるだけ多くの操作が達成される)。例えば、外周部シールの下側または底部において開放部を通って栄養濃縮物のための格納場所がバッグ内に導入される前に上部の外周部シールと任意で再密封可能な閉鎖部とが適切な位置にある「ブランク」バッグを組み立てるのが望ましいこともある。部分的なアセンブリは、異なる試験に特異的な栄養濃縮物および任意の添加剤のパッケージでカスタマイズ可能な非特異的ブランクバッグを生じることができる。
【0072】
バッグは、実行される試験に応じて様々なサイズで調製され得る。実例のホモジナイザーバッグは、約18cm(7インチ)幅および29cm(11.5インチ)の高さであり得る。バッグは、適切なホモジナイザー機内に配置される際、キャビネットドアまたはクランプによって、バッグの底部よりも約24cm(9.5インチ)上部の圧力点で保持される。パドルにより影響されるバッグの領域(圧縮ゾーン)は、バッグの底部よりも約19cm(7.5インチ)上部まで広がる。普通の使用においては、圧力点と圧縮ゾーンの間のバッグ領域は通常圧縮を受けない。
【0073】
いくつかの実施形態では、栄養濃縮物は、以下に開示されるように、外周部シールの開放部から分離コンパートメント内に導入され、次にバッグは密封される。別の実施形態では、小袋などの格納場所は、バッグの形成とは別の操作で調製され得る。これらの場合、格納場所は、バッグを密封する前に、外周部シールの開放部からバッグ内に挿入される。
【0074】
1つもしくはそれ以上の易壊コンパートメントは、バッグの形成中または形成後のいずれかで設置することができる。上記で開示したように、易壊コンパートメントは、重ねたシートを、ロックアップ外周部シールを提供するために必要とされる温度よりも低い温度でヒートシールすることによって形成することができる。易壊シールは、外周部シール上の2地点の間に広がることができ、易壊シールおよび外周部シールのその2地点間の部分により分離コンパートメントが画定される。外周部シールの一部は密封されないままであり、栄養濃縮物を導入するための開放部を提供する。栄養濃縮物が分離コンパートメント内に導入された後、外周部シールの開放部は密封されて閉鎖コンパートメントを提供する。同様に、分離コンパートメントは、バッグを形成する一方のシートの内側表面上に水反応性材料をゾーン印刷して、それを、バッグを形成する他方のシートの内側表面に密封することによって画定することができる。ホモジナイザー機のパドルにより容易に圧縮できるようなバッグ領域(上記の実例のバッグでは、バッグの底部と底部よりも約19cm(7.5インチ)上部との間の領域、好ましくはバッグの底部〜底部よりも約8cm(3インチ)上部の間の領域)において、易壊コンパートメントをバッグ内に取り込むことができる。
【0075】
栄養濃縮物を含有する小袋は、外周部シールの開放部からバッグ内に挿入することができる。小袋は、バッグ内部に軽く保持されてもよく、例えば、ホモジナイザー機のパドルにより容易に圧縮できるようなバッグ領域において固定されてバック内に取り込まれる。小袋は、その位置を固定するために、ヒートシールする前にバッグの外周部において第1のポリマーフィルムシートと第2のポリマーフィルムシートの間に挿入することができる少なくとも1つの延長タブと共に調製することもできる。例えば、延長タブは、底部シールまたは側面シールにおいてウェブストックのシート間に密封することができる。あるいは、小袋の両端部の延長タブは、小袋がバッグ幅に広がるように両側面シールの一部において密封することができる。小袋をバッグに固定するその他の方法は、接着剤の使用を含むことができる。
【0076】
例えば、シート、ペレット、顆粒およびカプセルなどのその他の実施形態では、格納場所は、バッグの外周部の開放部をヒートシールする前に、単にバッグ内に挿入するだけでよい。シート、ペレットなどは、場合により、例えばホットメルト接着剤によってバッグ内部の特定の位置に接着されてもよい。
【0077】
また、易壊シールまたは水反応性材料のいずれかを含んでなり、栄養濃縮物の成分をそれぞれが有する多数の小袋またはコンパートメントが、ポリマー材料のストリップ内に取り込まれてもよい。ホモジナイザー機のパドルによる圧縮を可能にするバッグ領域においてストリップがバッグ幅に広がるように、小袋またはコンパートメントのストリップは、各側面シールの一部に密封することができる。
【0078】
上記に開示されたように、バッグは、添加剤のための1つもしくはそれ以上の追加の格納場所を含んでなってもよい。これらの場所は、圧縮ゾーンよりも上のバッグ領域(上記で開示される実例のバッグでは、底部よりも約19cm上部〜底部から約24cmの間の領域)に位置することができ、これらは栄養培地構成ステップの次の第2のステップにおいて添加されることが可能である。これらの場所は、圧縮ゾーンよりも上方のバッグの上端部に近い各側面シールの一部において密封することができるポリマー材料のストリップ内に取り込むことができる。
【0079】
本発明はガセットバッグも含み、これは、外部支持体がなくてもバッグが単独で立つことを可能にするガセット(ひだのある)ベースを有するものである。ガセットバッグは、バッグが充填されていないときには一方が他方に重なっているパッケージングフィルムの少なくとも2枚のシートを含んでなることができる。同じまたは異なるシートの下側の部分または領域は互いに結合されて閉鎖され、ガセットベースを形成する。例えば、一方のシートは不透明であり、場合によりグラフィック要素を有してもよく、もう1枚のシートは透明でバッグの内容物の視覚化を可能にしてもよい。特定の形態のスタンドアップバッグは、パーケージングフィルムの3枚のシートを含んでなり、そのうちの1枚はバッグの底部を形成してガセットが付けられ、2枚はバッグの側面を形成する。シートは、バッグの底部の2つの継ぎ目と、側面の外周部の継ぎ目とによって互いに接合される。継ぎ目は、バックが直立できるように十分な剛性をバッグに提供する。充填後、構成された液体培地がバッグの両面に外側方向への圧力を加え、互いに離れるように側面を押す。バックの基部では、底部またはガセットが広がる。ガセットは液体保持容器の床部を画定するとともに、バッグの側面の外側への動きも抑制する。下側の側面縁部はガセットの開放により強化され、バッグが鉛直配置で任意の平らな表面上にあることができるようにする安定な基部を画定する。バックが閉鎖されると、場所から場所へ移動することが容易であり、同じ構成の他のバッグと共に、棚の上、または箱の中に置くことができる。
【0080】
任意的なメッシュバッグが、培地バッグの内部に入れられてもよい。メッシュバッグは、培地および培地中の微生物がその壁を通過できるようにするが、同時に微粒子物質のためのフィルターの役割を果たすメッシュタイプの布または類似の材料で作ることができる。メッシュバッグは、バッグ内容物を取り出すために血清用ピペットが使用される場合にピペットが詰まらないように粒子をろ過することができる。場合により、ピペットサックがバッグの内壁の1つに取り付けられてもよい。サックの上端部は、ピペットを受け入れるために開放されており、下端部は閉じている。例えば、使用時に、ピペットはサック内に挿入され得、培地は、ろ過媒体としてのピペットサックの内側から吸引され得る。開示したばかりのこととの関連で、ろ過媒体として使用するのに適した材料はどれもピペットサックとして使用することができる。
【0081】
バッグの滅菌
バッグおよび栄養濃縮物の滅菌は、厳密な条件下、クリーンルームで行われる。滅菌された濃縮物は、上記で開示したように、分離コンパートメント内、あるいは小袋内に含有されてバッグ内に配置することができる。バッグは、121℃の温度、15psiの圧力および100%蒸気のオートクレーブ内などの当業者には既知の手段によって滅菌することができる。また、バッグおよび/または小袋は、当業者にはよく知られた従来の手順である照射法によって滅菌されてもよい。
【0082】
非無菌栄養濃縮物は非無菌バッグ内に導入することができ、次に、単一のユニットとして両方に照射処理が施される。ガンマ線または電子放射線はこのユニットも無菌にすることができる。汚染物質は、これらの汚染物質を完全に殺すために放射線量が増大されず、培養のために次に使用される際に培地中の1つもしくはそれ以上の栄養物が所望の微生物の成長を支援できなくしない限りは、放射線処理の前に著しいレベルにまで成長させられないことが好ましい。滅菌前のこれらの汚染物質の過剰成長は、滅菌によって除去することができない毒性廃棄生成物の形成および蓄積をもたらすことがあるが、それでもやはり、培養中の微生物の成長を制限または防止し得る。汚染物質の予備滅菌成長の制御は、汚染物質の成長を制限するために、充填後の短時間の滅菌(例えば、48時間)または冷凍を含むことができる。
【0083】
滅菌に必要とされる放射線量は当業者にはよく知られており、バッグの材料および培地のタイプに依存し得る。例えば、汚染物質を殺すためには2.5Mradのガンマ放射線量で十分であろう。15〜30kGyの範囲のガンマ放射線を用いることができる。
【0084】
標的生物体についてのサンプルの試験
本発明は、上記で開示した培地バッグを用いて、サンプル中にあることが疑われる特定の標的細菌を決定するための方法も含む。該方法は、(1)サンプルをバッグに挿入し、(2)栄養濃縮物をその格納場所から放出して、培地を構成し、(3)サンプルを培地中でインキュベートして濃縮された複雑なサンプル混合物を形成せしめ、そして(4)サンプル混合物中の標的細菌の存在を検出することを含んでなることができる。複雑な混合物は、非選択的に濃縮された食品マトリックスを含んでなり得る。
【0085】
調製後、培地バッグは、サンプル(「培養サンプル」と呼ばれることもある)の試験のために研究所または試験施設に輸送される。培地バッグは開放され、栄養濃縮物から液体培地を構成するために必要な場合には水と共に培養サンプルがその中に挿入される。バッグは密封され、水反応性の実施形態の場合には水との反応によって、そして/あるいは手による圧縮またはホモジナイザー機による圧縮の作用によって栄養濃縮物がその格納場所から放出され、液体培地を提供する。これは次に、既知の手順およびサンプルのタイプに従ってインキュベートされる。インキュベーションの後、培養されたサンプルは、当該技術分野においてよく知られている手順に従うサンプル評価のために検査および試験される。例えば、複雑なサンプル混合物中の標的細菌の検出は、(i)標的細菌からの全標的細菌DNAを得、(ii)全標的細菌DNAを、試験複製組成物とを接触させて第1の反応混合物を形成せしめ、ポジティブコントロール複製組成物と接触させて第2の反応混合物を形成せしめ、(iii)第1および第2の反応混合物をサーモサイクリングし、それによりいずれかまたは両方(標的DNAの複数のコピーを生成するための増幅された全標的細菌DNAまたは増幅されたコントロール核酸断片)からなるDNA増幅産物を生ぜしめ、(iv)増幅産物を検出する(ここで、増幅されたコントロール核酸断片だけの存在は成功した反応を示し、標的DNAの複数コピーの存在はサンプル中の標的細菌の存在を示す)ことを含んでなることができる。例えば、増幅産物の存在は、蛍光手段、ゲル電気泳動、またはその両方によって検出することができる。
【0086】
試験複製組成物は、(a)ポリメラーゼと、(b)第1のプライマーおよび第2のプライマーからなり、各プライマーが全標的細菌DNAの一部とハイブリダイズすることができるプライマー対と、(c)DNA増幅をもたらすために必要な試薬および緩衝液とを含んでなることができる。ポジティブコントロール複製組成物は、(a)ポリメラーゼと、(b)少なくとも1つのコントロール核酸断片と、(c)コントロール核酸断片の一部とハイブリダイズすることができる単一のプライマーと、(d)DNA増幅をもたらすために必要な試薬および緩衝液とを含んでなることができる。試験複製組成物、ポジティブコントロール複製組成物、またはその両方は錠剤で提供され得る。単一のプライマーは、第1または第2のプライマーのいずれかと同一でもよい。コントロール核酸断片の数は、1〜10でよい。
【0087】
試験複製組成物、ポジティブコントロール複製組成物、またはその両方は、非対称性シアニン染料などのインターカレート剤を含んでなることができる。シアニン染料は、商品名TO−TO−1TMで入手可能なキノリニウム、1,1’−[1,3−プロパンジイルビス[(ジメチルイミニオ)−3,1−プロパンジイル]]ビス[4−[(3−メチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン(benzotaidhiazolylidene))−メチル]]−テトラヨージド、商品名YO−PRO−1TMで入手可能なキノリニウム、4−[(3−メチル−2(3H)−ベンゾオキサゾリリデン)メチル]−1−[3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]−,ジヨージド、またはこれらの2つ以上のものの組み合わせでよい。
【0088】
標的細菌は、サルモネラ属、リステリア属、大腸菌属、カンピロバクター属、クロストリジウム属、ブドウ球菌属、またはこれらの2つ以上のものの組み合わせを含むものなどの病原性細菌であり得る。
【実施例】
【0089】
以下の実施例は単に説明的なものであり、本発明の範囲に対する限定と解釈されてはならない。
【0090】
実施例1
リステリア細菌を培養するのに適切な濃縮物を作るのに適切である13.6gのデュポン・クオリコン(DuPont Qualicon)BAX(登録商標)系のリステリア用培地を、総体積を60mlにするのに十分な水中に溶解することによって、液体栄養濃縮物を調製した。栄養物の量およびタイプと、それに釣り合う水とを調整することによって、異なる体積のその他のバッチを同様に調製した。
【0091】
実施例2
メルトインデックス0.3および密度0.918g/ccのLDPEの外側層と、無水物変性PE(バイネル(Bynel)(登録商標)4104)の隣接した接着剤層と、エチレンビニルアルコール(EVOH、エバール(Eval)F101A)のバリア層と、無水物変性PE(バイネル(Bynel)(登録商標)41E687)の第2の接着剤層と、メルトフローレート7および融点135℃の11重量%のランダムポリプロピレンコポリマー、ならびに10重量%メタクリル酸および10重量%アクリル酸イソブチルを含有し酸基の17%が亜鉛で中和された89重量%のエチレンアイオノマーターポリマーの溶融ブレンドを含有する内側シーラント層とを作るために、5層ブローンフィルムラインにおいて5層同時押出ブローンフィルムを製造した。LDPEは、62rpmで動作する63.5mmのシングルスクリュー押出機において219℃で溶融させた。EVOHは、27rpmで動作する50.8mmのシングルスクリュー押出機において211℃で溶融させた。バイネル(Bynel)(登録商標)4104は、34rpmで動作する50.8mmのシングルスクリュー押出機において215℃で溶解させた。バイネル(Bynel)(登録商標)41E687は、12rpmで動作する50.8mmのシングルスクリュー押出機において196℃で溶解させた。アイオノマーは、13rpmで動作する63.5mmのシングルスクリュー押出機において223℃で溶解させた。PE層においてブローンフィルムをコロナ処理し、48ゲージ配向ポリエステル(マイラー(Mylar)(登録商標)LBT)に積層した。PE層は71ミクロンであり、接着剤層はそれぞれ8ミクロンであり、バリア層は13ミクロンであり、そして内側シーラント層は28ミクロンであった。実施例1の栄養濃縮物を2枚のフィルムシート(シーラント層が内側に面する)の間に置き、3mm幅のシールワイヤを有する115〜120ボルト、60サイクルのバートロッド(Vertrod)インパルスシーラーを用い、2秒間の滞留時間を用いてフィルムの層を互いに密封した。得られた小袋は、平らに広げたときの寸法が約8cm×4cmであり、4つ全ての側面は圧力−易壊シールを有しており、栄養濃縮物のための格納場所を提供した。
【0092】
実施例3
実施例2の小袋を含んでなるホモジナイザーバッグを開き、25グラムの食品サンプルおよび165mlの滅菌水を添加する(栄養物の製造業者により指定されるように、最終サンプル対栄養培地の比が1:9であるように、225mlである栄養培地の総体積を提供する)。往復式パドルを有するホモジナイザー機内にバッグを置いて1分間ブレンドし、それにより、易壊シールが破裂して、添加した水の中に栄養濃縮物が分散される。次に、バッグ内のサンプルを36℃で24時間インキュベートする。インキュベーションに続いて成長培地の一定分量を取り出し、酵素免疫測定法、遺伝子プローブ検出法などの迅速法手順を用いて、あるいはバクテリオロジカル・アナリティカル・マニュアル(Bacteriological Analytical Manual(FDA、第8版)、以下「BAM」において記載される伝統的な純粋培養方法によって、25グラムの食品サンプル中のこの生物体を検出するための方法の一部として、リステリア属の存在について分析する。
【0093】
大腸菌0157:H7、黄色ブドウ球菌、ネズミチフス菌、およびカンピロバクター種などの異なる病原性細菌は、適切な栄養濃縮物を用いて同様の方法でアッセイされる。
【0094】
実施例4
易壊シールにより画定される分離コンパートメント内に実施例1と同様の手順で調製される900mlの栄養濃縮物を含んでなるホモジナイザーバッグ内へ、375gの複合食品サンプルおよび2475mlの滅菌水を添加する。開放部においてバッグを巻いてクリップで密封することによってバッグを再密封し、往復式パドルを有するホモジナイザー機内に置き、パドルでバッグの側面を乱打することによって1分間ブレンドし、それにより、易壊シールが破裂して、液体中に栄養濃縮物が分散される。次に、バッグ中のサンプルを35℃で24時間インキュベートする。インキュベーションに続いて成長培地の一定分量を取り出し、酵素免疫測定法、遺伝子プローブ検出法などの迅速法手順を用いて、あるいはBAMなどのマニュアルに記載されるような伝統的な純粋培養方法によって分析する。
【0095】
実施例5
水および廃水サンプルの大腸菌型試験は、水反応性小袋内のo−ニトロフェニルベータ−D−ガラクトピラノシド(ONPG)試薬が追加され、栄養濃縮物を含有するホモジナイザーバッグに、100mlの水サンプルを添加することによって達成される。濃縮物は、水の添加により成分が正しい最終濃度になるように粉末として製造される。小袋が破裂した後栄養濃縮物が放出され、バッグ内のサンプルを35℃で24時間インキュベートする。大腸菌型細菌が存在すれば、無色のONPG化合物が黄色に変化する。
【0096】
実施例6
水および廃水サンプルの大腸菌試験は、水反応性マトリックス中に栄養濃縮物を含んでなるシートを含有するバッグに100mlの水サンプルを添加することによって達成される。4−メチルウンベリフェリル−ベータ−D−グルクロニド(MUG)試薬が追加された栄養濃縮物(例えば、ラウリルスルファート)は、水の添加により成分が正しい最終濃度になるように調製される。水反応性マトリックスが溶解したら、濃縮物が放出され、バッグ内のサンプルを35℃で24時間インキュベートする。大腸菌細菌が存在すれば、無色のMUG化合物が蛍光性の青みがかった化合物に変化し、これは、長波(365mm)紫外線下で観察される。
【0097】
実施例7
食品会社の工場内の床、排水管、および設備などの環境表面サンプルは、大腸菌、リステリア種、およびネズミチフス菌などの微生物の存在について分析される。これらのサンプルは、無菌のスワブまたはスポンジを用いて採取される。スワブまたはスポンジは、100mlの滅菌水と一緒に、水反応性コーティングが被覆された栄養濃縮物顆粒を含有するホモジナイザーバッグに添加することができる。栄養濃縮物は、MUG(大腸菌のため)、UJVM濃縮物(リステリアのため)、または緩衝ペプトン濃縮物(サルモネラのため)と共にラウリルスルファート濃縮物を含んでなる。水反応性コーティングの溶解ならびに濃縮物およびスワブまたはスポンジの分散後に得られるブロスを35℃で18〜24時間インキュベートする。インキュベーションの後、大腸菌試験の場合には、長波(354mm)紫外線下で青みがかった蛍光性材料の存在について液体培地を観察する。あるいは、リステリアおよびサルモネラ試験の場合には、成長培地の一定分量を取り出し、酵素免疫測定法、遺伝子プローブ検出法などの迅速法手順を用いて、あるいはBAMなどのマニュアルに記載されるような伝統的な純粋培養方法によって分析する。
【0098】
実施例8
プラスチックメッシュバッグを取り込み、450mlのバターフィールドの(Butterfield’s)リン酸緩衝液を作るのに十分な無菌濃縮物が充填されたカプセルを含有するフレキシブルプラスチックバッグに、50グラムの食肉などの食品サンプルを添加する。450mlの水を添加する。サンプルが均一に分配されれば、これは食肉を1:10に希釈し得る。往復式パドルを有する機械内にバッグを入れ、1分間ブレンドし、カプセルを粉砕し、濃縮物を放出する。メッシュバッグの食肉とは反対側の希釈剤に到達することによって血清用ピペットを用いてバッグから1mlの一定分量を取り出す。これは、微粒子が血清用ピペットを詰まらせる可能性を最小限にする。混釈(pour)またはスプレッドプレート(spread plate)手順を用いて、もしくは最確数(MPN)手順を用いて定量的な分析を実行する。このような手順は、食品分析の当業者にはよく知られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1のポリマーフィルムシートと、(b)第2のポリマーフィルムシートと、(c)バッグ内の1つの格納場所と、場合により(d)1つもしくはそれ以上の追加の格納場所とを含んでなるバッグであって、第2のシートが第1のシート上に重ね合わせられ、第1のシートおよび第2のシートが直接的にあるいは介在ポリマーフィルムを介して間接的に互いに密封され、それにより、閉鎖されたバッグを形成する密封された外周部が画定され、場所が好ましくは栄養濃縮物を含んでなり、追加の場所のそれぞれが好ましくは添加剤を含んでなり、そしてバッグが、外周部のまわりで密閉されて、好ましくは再密封可能な閉鎖部を含むバッグの内部を完全に封入するバッグ。
【請求項2】
場所が閉鎖バッグを分離コンパートメントに分割する少なくとも1つの易壊シールを外周部の内部に含んでなるか、あるいは栄養濃縮物を含んでなる小袋を含んでなり、分離コンパートメントまたは小袋の1つが栄養濃縮物を含んでなり、小袋が好ましくはフレキシブルフィルムで製造され、そして小袋の少なくとも一部が水反応性ポリマー材料を含んでなり、場所が好ましくは栄養濃縮物に施された水反応性ポリマー材料のコーティングを含んでなり、そして易壊シールが好ましくは水反応性材料を含んでなる請求項1に記載のバッグ。
【請求項3】
場所が、栄養濃縮物が混入された水反応性ポリマー材料のマトリックスを含んでなる、粉末、顆粒、ペレット、シート、またはプラークを含んでなる請求項1または2に記載のバッグ。
【請求項4】
水反応性ポリマー材料のコーティングを施す前に、栄養培地がペレット、シートまたはプラーク状に形成される請求項3に記載のバッグ。
【請求項5】
場所または追加の場所の1つが均質化の過程で粉砕および/または溶解されることが可能な錠剤またはカプセルを含んでなる請求項1、2、3または4に記載のバッグ。
【請求項6】
1つの追加の場所が抗生物質を含んでなり、そして添加剤が指示薬化合物、染料、クエンチ剤、固定液、微生物の抽出または検出用の試薬、もしくはこれらの2つ以上のものの組み合わせであり、そして試薬が純粋であるか、あるいは1つもしくはそれ以上の他の添加剤、希釈剤、ファージ、ファージに由来する成分、抗体、ポリ−ヒスタミン、マルトース結合ドメイン、親和性ペプチド、アプトマー、ビオチン、ストレプトアビジン、または他の親和性分子を含んでなり、試薬が液体、ゲル、ペースト、乾燥粉末、顆粒の形態、または他の自由流動性の形態である、追加の格納場所を含んでなる請求項1、2、3、4または5に記載のバッグ。
【請求項7】
試薬が磁性粒子または常磁性粒子を含んでなる固体支持体上に固定化される請求項6に記載のバッグ。
【請求項8】
培養サンプルを添加するのにバッグの開放を容易にするための案内手段を含んでなり、案内手段が好ましくは上部シールの近くでバックに取り入れられた少なくとも1つの切欠き、穿孔またはこれらの組み合わせを含んでなる請求項1、2、3、4、5、6または7に記載のバッグ。
【請求項9】
バッグが充填されたときに直立するのを可能にするガセットベースを含んでなる請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記載のバッグ。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9に記載のバッグの使用。
【請求項11】
微生物含有サンプルをバッグ内に挿入し、栄養濃縮物を場所から放出して培地を作り、培地中のサンプルをインキュベートして、濃縮された複雑なサンプル混合物を形成せしめ、そしてサンプル混合物中の微生物を検出することを含んでなる請求項10に記載の使用。
【請求項12】
検出が、微生物から全DNAを得、全DNAを試験複製組成物と接触させて第1の反応混合物を形成せしめ、ポジティブコントロール複製組成物と接触させて第2の反応混合物を形成せしめ、第1の反応混合物および第2の反応混合物をサーモサイクリングし、それにより、DNA増幅産物を生ぜしめ、増幅産物を検出することを含んでなり、試験複製組成物がポリメラーゼ、プライマー対、および試薬を含んでなり、ポジティブコントロール複製組成物がポリメラーゼ、少なくとも1つのコントロール核酸断片、コントロール核酸断片の一部とハイブリダイズすることができる単一のプライマー、および試薬を含んでなり、試薬がDNA増幅を実施するために必要であり、そして微生物がカンピロバクター(Campylobacter)属、リステリア(Listeria)属、大腸菌(Escherichia)属、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、またはクロストリジウム(Clostridium)属を含む請求項11に記載の使用。
【請求項13】
複雑なサンプル混合物が非選択的に濃縮された食品マトリックスを含んでなり、試験複製組成物またはポジティブコントロール複製組成物が好ましくは錠剤の形態であるか、またはインターカレート剤を含んでなり、増幅産物の存在が蛍光手段によって検出され、そしてインターカレート剤が好ましくはキノリニウム、1,1’−[1,3−プロパンジイルビス[(ジメチルイミニオ)−3,1−プロパンジイル]]ビス[4−[(3−メチル−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン)メチル]]−テトラヨージド、またはキノリニウム、4−[(3−メチル−2(3H)−ベンゾオキサゾリリデン)メチル]−1−[3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]−ジヨージドを含む非対称性シアニン染料である請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
単一のプライマーが第1のプライマーまたは第2のプライマーのいずれかと同一であり、そしてコントロール核酸断片の数が1〜10である請求項11、12または13に記載の使用。

【公表番号】特表2008−536494(P2008−536494A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505414(P2008−505414)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/012240
【国際公開番号】WO2006/107843
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】