説明

栄養製品を調製するためのカプセル、装置、および方法

カプセル(1A、1B)に液体を供給するように構成される装置において栄養製品を調製するためのカプセルであって、供給される液体と組合せて栄養製品を調製するための栄養組成(14)を収容する1以上の隔室(13)と、液体に含まれる混入物を除去するように構成されるフィルタ(18、20)とを有するカプセルにおいて、フィルタ膜(20)を通過せずにカプセル(1A、1B)の外部から隔室(13)に気体を導入できるようにカプセル上またはカプセル内に配置される、選択的に開放可能な気体入口(34)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養原料を収容すると共に、原料を液体と混合して栄養製品を衛生的に調製するためのカプセルに関する。カプセルは、カプセルに供給される液体を濾過して液体に含まれる不要な組成を除去するためのフィルタを収容する。本発明は、より具体的に、特殊調製粉乳などの栄養原料と混合して栄養製品を調製するためのカプセルに液体を供給する装置に挿入されるカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
栄養組成は、例えば、特殊調製粉乳、または幼児、病人、高齢者、栄養失調者、もしくは競技者のための液体栄養食品とすることができる。食品組成は、乳製品類の液体、スープ、コーヒー、または茶飲料とすることができる。これらの組成は、温水または周囲水(ambient water)などの液体の追加により、カプセルに収容される原料から調製される。液体は、微生物、固体粒子などの不要な混入物を含む場合がある。これらの不要な混入物は、液体が原料と混合される前に、液体から除去されるべきである。
【0003】
よって、簡便かつ安全な方法で、特殊調製粉乳または他の食品組成などの栄養組成を調製可能なカプセルが必要とされる。
【0004】
国際公開第2006/077259号パンフレットは、単位用量の組成を濃縮形態で収容するカートリッジに水などの液体を導入して一杯分の栄養組成を調製する方法を開示している。ここで、水は、水由来の病原体を除去し、または死滅させるために、カートリッジへの導入前に処理される。この処理は、例えば、予熱、濾過、または水への紫外線の照射でもよい。
【0005】
国際公開第2008/012314号パンフレットは、ディスペンサに挿入されるカプセルから栄養組成を調製するためのフィルタの利用により水を処理する原理を示唆する装置に関する。
【0006】
国際公開第2009/092629号パンフレット、および2009年3月31日出願の09156782.6は、抗菌性フィルタを統合するカプセルを記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
課題は、カプセルの内容物(供給される液体と原料の混合物)が完全に排出されない場合があることである。特に、カプセルへの液体の供給が停止してカプセルの内圧が低下すると、もはや液体内容物を排出することができない。特に、カプセル内に空気が存在せず、液体内容物を排出する孔が小さすぎると、カプセルの内容物を排出することができない。不完全な送出には、特に、液体中での原料の不適当な溶解/分散、流出を大幅に遮蔽または低減する部分的な減圧の形成、カプセル出口の不十分な開口などに関連して、他の理由がある。カプセルの内容物が十分に排出されないと、1回分の栄養がカプセルから適切に送出されず、栄養上および/または水和作用上の問題を引き起こす可能性がある。
【0008】
よって、カプセルに収容される特定目的量の栄養組成を送出して、乳児または小児に対する各カプセルの食事を完全に確保する必要性がある。課題は、カプセルのフィルタが、排出動作中にカプセルに注入される加圧気体(圧縮空気など)に対して過剰な抵抗を作り出す場合があるということである。結果として、気体の圧力は、カプセルの内容物を適切に排出するには不十分となることがあり、システムの複雑度およびコストに影響を及ぼす過剰な気体圧が要求される。また、過剰な圧力の気体がフィルタを通じて押し出されてフィルタが損傷する場合があり、この場合、カプセルからの汚染のない栄養送出がもはや保証されなくなる。
【0009】
液体を濾過した後、特に、カプセルの内容物を排出するときに、装置とカプセルの衛生的な接触を確保する必要性もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、カプセルに液体を供給するように構成される装置において栄養製品を調製するためのカプセルであって、供給される液体と組合せて栄養製品を調製するための栄養組成を収容する1以上の隔室と、液体に含まれる混入物を除去するように構成されるフィルタとを有するカプセルに関し、このカプセルは、フィルタ膜を通過せずにカプセルの外部から隔室に気体を導入できるようにカプセル上またはカプセル内に配置される、選択的に開放可能な気体入口を備える。
【0011】
このような構成の結果として、カプセルの内容物を、気体入口を通じて隔室に供給される気体の圧力により排出することができる。同時に、気体は、その圧力がフィルタにより過度に低下しないようにフィルタを迂回する。結果として、カプセルは、栄養液体を適切に排出することができる。
【0012】
より具体的に、気体入口は、開放形態で所定の大きさを有し、カプセルの剛壁に設けられる。
【0013】
気体入口は、穿孔可能な膜により密封され、または脆弱な閉鎖部を有することが好ましい。穿孔可能な膜は、アルミニウム箔、気体バリアを備えるプラスチック箔、またはこれらの組合せとすることができる。例えば、脆弱な閉鎖部は、気体孔を密封して閉鎖する脆弱なプラスチックタブとすることができる。
【0014】
出口ノズルは、フィルタの下流に配置され、隔室と連通することが好ましい。ノズルは、1以上の小さな開口を備えてもよい。開口は、液体と接触する原料の溶解を促進する高速の液体ジェットを隔室に提供するように構成される。
【0015】
また、気体入口を開放するときの接触の可能性は、濾過済み液体に留まるので、開口手段など外部装置の接触部品を十分に清潔に維持する。
【0016】
気体入口は、フィルタ膜の下流に配置されて隔室と連通する液体導管に連なる。実際に、合理的な構成は、複雑化を避け、より簡素な設計をもたらすように、気体入口を液体導管と連通させることにある。液体導管は、隔室と連通する出口ノズルの上流に配置されることが好ましい。
【0017】
しかし、変形例では、気体入口は、液体導管から離間して配置され、液体導管に連ならずに隔室と直接連通することができる。例えば、気体入口は、液体導管と平行する導管など、液体導管とは別個の導管により隔室と連通する。例えば、気体入口は、カプセルのフランジ状リムに形成される窪み、凹部、または開口であり、穿孔可能または脆弱な膜により閉鎖されることが好ましい。
【0018】
好適な形態では、フィルタは、相対的に硬質なケースに囲まれる可撓性の微多孔膜を有する相対的に硬質なフィルタユニットとして形成される。ユニットは、耐圧性であり、取扱いが容易であることが好ましい。よって、ケースは、カプセルの製造中および飲料の調製中の両方で、衝撃、圧力、引っ掻き、曲げなどに対して膜を保護する。ケースは、互いに溶着されると共に、フィルタをフィルタの周囲で締め付け、および/または溶着する2つの半ケースから形成することができる。これらの要素は、クリップおよび/または超音波溶接により関連付けることができる。これらの要素は、カプセルに注入される液体の圧力による曲げに抵抗するのに十分に硬質である。これらの要素は、PP、PA、PE、PA/PP、PVC、PS、PEEK、PLAその他の食品グレードのポリマ、もしくは澱粉由来の材料、またはこれらの組合せから作られる。
【0019】
フィルタユニットは、カプセルの軸方向に沿う投影面で見て、原料を収容する隔室の断面よりも小さな断面の濾過面を有することが好ましい。フィルタユニットの小型化は、カプセルの隔室の実質的に外にユニットを配置することを可能にすることで、その撓みを低減し、外部の液体供給装置により加えられる圧力の取扱いを良好にする。また、より少ない包装および濾過材料が有利に使用される。
【0020】
カプセル、特にカプセルのフィルタユニットの容易な組立てのために、カプセルは、第1の隔室の境界を定める本体を有し、本体は、隔室の上流に配置されるフィルタ受け座を有する。フィルタ受け座は、好ましくはカプセル内の所定位置に、フィルタユニットを格納する機能を果たす。
【0021】
要素の数を有利に低減し、カプセルの複雑度を低減してカプセルを形成するために、第1の隔室およびフィルタユニットは、同一の上部膜により閉鎖および密封されることも好ましい。
【0022】
隔室に収容される栄養原料は、濃縮液、ペースト、ゲル、もしくは粉末、またはこれらの組合せの形とすることができる。
【0023】
栄養原料は、特殊調製粉乳、成長用フォーミュラ、ガム、成人用栄養フォーミュラ、乳製品由来の原料、料理組成、または蛋白質、脂質、炭水化物、微量栄養素、繊維、もしくはこれらの組合せを含む他の適当な栄養食品であることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、1以上の隔室に原料を収容するカプセルから栄養組成を送出する方法であって、隔室に液体を供給して、原料により組成を形成すると共にカプセルを通じて組成を放出する方法に関し、この方法は、フィルタを通じて液体を濾過して液体に含まれる混入物を除去し、続いてカプセルの隔室に気体を供給することを含む。
【0025】
本発明の方法によれば、気体は、フィルタを通過せずに、隔室と連通する導管を通じてカプセルの外部から隔室に供給される。
【0026】
気体は、隔室と連通する出口ノズルの上流に位置する気体入口から供給されることがより好ましい。出口ノズルは、隔室に注入される液体の通路の機能を果たしてもよい。出口ノズルは、原料と密接に混合するために高速で隔室に液体を進入させる。出口ノズルは、それによって隔室に気体を供給する機能を果たしてもよい。
【0027】
代替的に、ノズルは、隔室に気体を供給するためだけのノズルでもよい。気体入口に導入され、または気体入口を通じて導入される気体は、装置の気体注入部を介して導入されることが好ましい。気体が隔室の上流およびフィルタの下流に導入されるので、栄養液体による気体注入部の汚染リスクが低減する。実際、気体注入部は、濾過済み液体、つまり精製済み液体とだけ接触し、出口ノズルを介した栄養液体の逆流リスクも低減する。
【0028】
気体の供給は、カプセルの液体が排出されるまで少なくとも実行されることが好ましい。固形物の完全な排出は、カプセル内の原料の溶解に依存して変化する場合がある。供給される液体中で全ての固形物が適切に溶解する場合、カプセルの全ての内容物を気体フラッシュにより適切に排出することができる。
【0029】
本方法は、カプセル内に液体が実質的に存在しないときに、そのサイズを低減するように、カプセルを圧縮する次の動作を包含してもよい。
【0030】
特に、圧縮は、液体供給装置のピストンまたは圧縮ジョーにより機械的に起動されてもよい。ピストンまたは圧縮ジョーは、カプセルに作用して原料隔室のサイズを低減する。
【0031】
また、本発明は、栄養組成を調製するためのカプセルに液体を供給する装置であって、液体注入部を備える装置に関し、この装置は、カプセルに気体を注入する気体注入部を備え、気体注入部が、カプセルの液体入口から離隔する気体入口を通じてカプセルに気体が供給されるように、液体注入部から独立して離隔する。
【0032】
装置の想定される形態では、装置は、液体入口の開放の後に生じる気体入口の開放を制御する手段を備える。このような気体および液体入口の制御手段は、液体注入部に選択的に作用すると共に、異なる動作で気体注入部に選択的に作用するカム手段により得ることができる。特に、カム手段は、液体注入部に作用するカムの第1の部分と、気体注入部に作用するカムの第2の部分とを備えてもよい。
【0033】
代替的に、制御手段は、独立しているが協調的な方法で、これらの注入部を機械的および/または流体圧的に駆動する個別のアクチュエータとすることもできる。注入部を駆動する動作は、栄養製品の調製サイクル中に液体および気体アクチュエータを順次に起動する電子コントローラにより制御することができる。
【0034】
好適な方法では、液体注入部は、1以上の穿孔要素と、液体入口を介して液体供給部からカプセルに液体を供給する液体導管とを備える。
【0035】
気体注入部は、液体注入部の穿孔要素とは異なる1以上の穿孔要素と、気体入口を介して気体供給部からカプセルに気体を供給する気体導管とを備える。
【0036】
気体供給部は、貯蔵気体もしくは加圧気体でもよく、または空気ポンプなどの加圧気体形成手段でもよい。
【0037】
添付図面は、最適な形態を説明するために与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好適な形態に係るカプセルの上面斜視図である。
【図2】図1のカプセルの底面斜視図である。
【図3】図1のカプセルの側面図である。
【図4】図3のカプセルの線Aに沿って示す断面図である。
【図5】図1のカプセルの組立て前の様々な要素を示す分解断面図である。
【図6】図1のカプセルのフィルタユニットの拡大斜視断面図である。
【図7】図6のフィルタユニットの分解図である。
【図8】図6のフィルタユニットの底面図である。
【図9】図8のフィルタユニットの線Eに沿って示す拡大断面図である。
【図10】図6のフィルタユニットの溶着組立体の詳細断面図である。
【図11】フィルタユニットのケースのフィルタ膜接続部の他の詳細断面図である。
【図12】フィルタユニットの入口の他の詳細断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係るカプセルを、明確化のために上部膜を取り除いて示す上面斜視図である。
【図14】図13のカプセルの断面斜視図である。
【図15】液体入口を開放して液体を供給する前に本発明のカプセルが挿入される本発明の液体供給装置の斜視図である。
【図16】液体入口を開放する前の本発明の液体供給装置を異なる角度で示す斜視図である。
【図17】液体入口を開放する前の図15の装置を、液体注入部を通る平面に沿って示す断面図である。
【図18】液体入口を開放した後の図15の装置を、液体注入部を通る平面に沿って示す断面図である。
【図19】気体入口を開放する前の図15の装置を、気体注入部を通る平面に沿って示す断面図である。
【図20】気体入口を開放した後の図15の装置、気体注入部を通る平面に沿って示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
好適な例としてのみ示される図1から図3を参照して、本発明の第1の形態に係るカプセルの一般的側面が説明される。カプセル1Aは、後述するように、一般に、栄養原料を受容する本体2と、フィルタ技術と、製品送出技術とを備える。カプセルは、本体に形成されるカップ3を有し、カップは、本体のフランジ状リム5に封着される液体不浸透性の上部膜または箔4により閉鎖される。膜4は、単に液体不浸透性でもよく、最も好ましくは液体および気体不浸透性である。特に、膜は、EVOHおよび/またはアルミニウムなどの気体バリアを備える多層とすることができる。詳細を後述するように、上部膜は、薄膜ポリマおよび/またはアルミニウムなどの穿孔可能な材料で作られ、一方で液体抽出部6により液体を供給可能にし、他方で気体注入部7によりカプセルに気体を供給可能にする。
【0040】
カップ3の底8は、カプセルから液体栄養組成/製品を送出するための製品出口9を備える。製品出口9は、哺乳瓶、グラス、またはカップなどの受容器へ液組成を流す1以上の開口を備えてもよい。製品出口9は、短導管10によりカップの底から延長されてもよい。短導管は、液体流を方向付けると共に、受容器の周辺を汚しうる液体の側方放射を低減する。
【0041】
カプセルの本体は、カプセルに供給される液体を濾過するフィルタを受容する張り出し部11により上側で延長される。図2に示すように、カプセルは、液体供給装置の位置センサと協働可能な立体コード構造12をさらに備えてもよい。立体コード構造は、装置に挿入されるカプセルの種類を識別し、例えば、適量の液体を供給し、温度、流量などを変更することで、カプセルの種類に調製サイクルを合わせるために用いられる。
【0042】
図4および図5を考慮すると、カプセルは、カップ3の底および側壁から形成されて栄養原料14を収容する隔室13をカップに備える。隔室の容量は、そこに注入される液体の量に応じて変更されてもよい。一般に、原料と液体を混合して組成を形成する混合ボウルとしての機能を隔室が果たすために、大量の液体には大きな容量が好ましい。
【0043】
カプセルは、供給される液体とカプセルの隔室に収容される原料との適当な相互作用を確保すると共に、装置に対する栄養液体の接触を低減し、好ましくは回避する製品送出システム15を備えてもよい。特定の形態では、製品送出システムは、隔室の液圧が十分な値に達すると、組成送出用の1以上の孔をカプセルを通じて開放するように設計される。このため、カップの底8は、通常時に液体製品出口9から隔室13を隔てる下部膜17を穿孔するように戦略的に配置される穿孔要素16を備える。下部膜は、典型的に、アルミニウムおよび/またはポリマで作られる液密性の穿孔可能な薄膜である。膜は、カップの底端に密着される。例えば、膜は、30ミクロンのアルミニウム箔である。このような製品送出システムを備えるカプセルは、ここに参照により組み込まれる2009年3月16日出願の欧州国際特許出願で説明されている。製品送出システムは、異なるように設計することができる点に注意されたい。例えば、それは、孔または溝を備える単純なバルブとすることができ、バルブは、通常時に閉じており、隔室に供給される液体により形成される圧力によって開く。他の変形では、それは、製品フィルタを形成する多孔壁とすることもできる。
【0044】
本発明のカプセルは、さらに、隔室に供給される液体の濾過を確保するように設計される。進入する液体を濾過する原理は、送出される組成に進入する水などの液体の品質を完全に制御する要件に本質的に関連付けられる。水は、液体供給装置の水タンクから来る周囲水を加熱することで、摂氏約35〜40℃の供給温度で供給される。濾過は、水加熱動作により殺されていない、バクテリア、酵母、カビ、ひいてはウイルスなどの微生物を含む混入物を除去するように行われることがより好ましい。このため、解決策は、外部保護ケース19と、1以上のフィルタ媒体、特にフィルタ膜20とを備える耐圧性で取扱い可能な形式のフィルタユニット18をカプセルの所定の領域に挿入することである。フィルタユニット18は、フィルタ膜よりも硬いという意味で硬質であることが好ましく、注入部から来る液体の液圧およびカプセルに対する液体供給装置の密封係合による密封圧の作用により生じる顕著な撓みに抵抗する。フィルタユニットは、個別の接続手段を必要とせずにカプセルにフィルタ技術を配置することを容易にする利点を有し、フィルタ膜の損傷リスクを低減する。
【0045】
抗菌目的のために、フィルタ膜は、好ましくは0.4ミクロン未満、最も好ましくは0.2ミクロン未満の孔径を有することが好ましい。それは、500ミクロン未満の厚さを有してもよく、10〜300ミクロンの厚さを有することが好ましい。膜の材料は、PES(ポリエーテルスルホン)、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリアミド、およびこれらの組合せから選択することができる。
【0046】
特に、フィルタユニットは、本体の張出し部11に形成されるフィルタ受け座21に挿入可能である。フィルタ受け座は、隔室に対して中心を外してフィルタユニットを配置するように設計される。結果として、隔室上の中心に配置する場合と比べて、液圧および装置に対する密封圧によるカプセルの撓みを低減することができる。フィルタ受け座21は、例えば、隔室の深さ(D)と比べて相対的に小さな深さ(d)のU字状の空洞でもよい。座21は、フィルタユニットの底および側壁の少なくとも一部、特に幅広部27と対応する底壁および側壁を有する。フィルタユニットは、フィルタ受け座に対する個別の接続部を必要とせずに、例えば、座および上部膜4により得られる閉鎖部への圧入によって、ユニットの相補形状により所定位置に簡単に保持される。例えば、座21の側壁は、例えば隔室の近くに、圧入によりフィルタユニットを受容するための襞または窪み(不図示)を備えてもよい。
【0047】
図4で説明するように、フィルタユニット18は、その濾過面(F)が、例えば隔室の上部開口に対応する、隔室13の口(つまり上部開口)の幅広な断面(C)の2分の1未満、好ましくは数分の1未満の大きさに寸法付けられる。また、濾過面(F)の最大部は、カプセルを軸線Aに沿う投影図で見ると、隔室13の断面(C)に対して軸方向にオフセットされる。「最大部」によって、濾過面の少なくとも60%、好ましくは85%がA方向に沿う投影で隔室の断面の外側に配置される。濾過面は、ここで、フィルタ膜のうち締め付けられる周囲30を除いた全体面としてみなされる。面の多少の重複は、許容可能であるとみなされる。解決される第1の課題は、隔室の減少、およびフィルタの撓みを良好に制御できる可能性である。解決される他の課題は、フィルタ膜の材料の低減、およびその結果としての製造コストの低減、および使用済みカプセルの環境影響の低減である。他の利点は、カプセル、特に、内容物排出後のカプセルのカップを圧縮して使用済みカプセルの保管容量を低減することができる可能性である。このため、カプセルには、カップの軸方向圧縮を促すように配置される弱線を含む側壁が設けられてもよい。
【0048】
図6から図9で説明するように、本発明のフィルタユニットは、液体をユニットに導入する入口壁22と、濾過済み液体を隔室13に送出する出口壁23とを備える。入口壁は、液体入口24を備え、出口壁は、ユニットのノズル26に形成される液体出口25を備える。液体入口24および出口25は、液体入口24が隔室13の外周外に配置され、出口25が隔室の外周内に配置されるように軸方向に離間する。好適な設計の問題として、フィルタケースは、座に配置される幅広部27を伴うラケットの形状をとることができる。幅広部は、隔室上に横方向に延びるノズル狭窄部28により延長される。出口25は、例えば0.2〜1.5mmの小さな直径を有し、ノズルを通じて発射される液体により原料の溶解および/または分散を促進する液体加圧ジェットを形成することが好ましい。出口は、離散する数個の開口から形成されてもよい。開口の数は、流速の極端な低下を避けるように少なくすべきであり、好ましくは最大1〜5である。ある形態では、ノズルに2つの平行または平行ではない出口が設けられる。ノズルの出口を通る流速は、毎秒1〜20mであることが好ましい。出口は、円形、楕円形、矩形などの異なる断面を有することができる。
【0049】
ケースには、内部隔室29にフィルタ膜20が入れられる。フィルタ膜は、液体によるフィルタの迂回を回避するように液密状態でケースにより封着されるフィルタの周囲30により上流側部および下流側部を形成する。隔室の下流側部で、フィルタ膜は、例えば多数の小ピン31から形成される支持構造によりさらに支持される。ピンは、加圧によるフィルタ膜の軸方向撓みを低減してその破損を回避するように平坦な自由端を有する。ピンは、フィルタ膜の全断面に沿って形成することが好ましい。隣接するピンは、2.5mmよりも広く離間していないことがより好ましい。支持構造の間には、膜を通じて濾過される液体を収集する多数の水路32が形成される。出口壁23は、水路32を介してフィルタ膜の下流側部とノズル26の出口25との間を流体連結する1以上の出口導管33を備える。支持構造は、フィルタの下方でケースに配置されるグリッドなど別個の要素でもよい。
【0050】
入口壁22では、フィルタユニットは、隔室13に圧縮空気などの加圧気体を供給可能にする気体入口34を備える。気体入口は、説明するように、出口導管33と交差する、壁を通る開口とすることができる。よって、ユニットに進入する気体は、ノズル26に向かう途中でフィルタ膜20を迂回し、加圧されて隔室に進入することに注意されたい。液体入口24と気体入口34の両方は、上部膜4により閉鎖される。よって、入口は、専用の入口で膜4を穿孔することで、選択的に開放可能である。特に、上部膜4は、シール35、36(図1)により液体入口および気体入口の周りで封着される。これにより、上部膜が液体供給装置の気体注入部7により穿孔されると、穿孔部の先端は、濾過済みの液体にだけ接触して進入することができる。結果として、気体および液体入口が同一の入口である場合よりも、穿孔部の汚染の可能性が非常に低くなる。気体穿孔部は、次の調製サイクルのために清潔に維持することができる。
【0051】
フィルタケース19の構造は、変更することができる。しかし、好適な設計では、ケースは、互いに溶着され、および/または取り付けられる2つの部分37、38から形成される。図7は、下部半ケース37および上部半ケース38を伴うフィルタユニット18を示す。下部半ケース37は、上部半ケース38の円形溝/突条部に嵌めるために、内部隔室の外形を定める突出円形溝/突条部39を有する。同様に、ユニットのノズル部28は、上部半ケース38の溝/突条部42に嵌る、下部半ケースの第2の溝/突条部41により組立てられる。部分39、41と部分40、42は、それぞれにラケットの幅広部27から狭窄部28に連続部を形成することもできる。
【0052】
図10および図11で説明するように、上部および下部半ケース37、38は、フィルタ膜の周囲30を締め付けて組立てられる。部品37、38は、フィルタ膜の周囲を曲げて環状端部43で締め付けるように設計することができる。フィルタは、締め付け端部が所定位置にしっかりとフィルタを保持し、よって動作中に迂回効果をうまく避けるのに十分である場合、ケースに必ずしも溶着されなくてよい。ユニットは、よって例えば適切な溶着線44,45により溝/突条部を溶着することで、組立てることができる。フィルタを締め付けてケース部を溶着する利益は、ケースの材料との溶着適合性を気にせずに、多くの選択枝からフィルタの材料を選択できる可能性にある。他の利益は、ユニットの厚い要素の組立てを超音波溶接により簡略化し、薄い要素(つまりフィルタ膜)の損傷を避けることにある。
【0053】
図8に示すように、フィルタユニットの構造は、最適化されてもよい。例えば、フィルタユニットは、補強構造46、特に流体的/機械的な制約を考慮して、特に狭窄部28で、ユニットの剛性を維持しながら下部壁に導管を形成可能にする。例えば、補強構造は、例えば、ラケットの横方向に延びる一連のリブを形成する。もちろん、多くの様々な補強形態が可能である。特に、剛性−重量比は、コストおよび環境影響の低減を促進するように最適化されるべきである。
【0054】
図12で説明するように、入口の直上の領域47で膜4を穿孔する場合、液体入口24の開放中にフィルタ膜を損傷するリスクを低減するために、入口とフィルタ膜20の間に穿孔抵抗デフレクタ48が設けられる。デフレクタ48は、ケースの入口壁と一体に作ることができる。それは、入口開口と開口への嵌め込み部とを横切る横桁として設計することができる。よって、液体は、桁と壁の間で入口に形成される側通路49を通り過ぎてもよい。もちろん、デフレクタは、入口の軸方向Iに沿う穿孔に対する保護を形成する限り様々な形態を取ることができる。デフレクタは、フィルタと入口壁の間に介在する個別の部品とすることもできる。
【0055】
図13および図14で説明する他の実施形態では、本発明のカプセル1Bは、様々な側面で異なる。第1に、フィルタ膜20を取り付ける出口壁23を備えるフィルタユニット18が設けられる。先の実施形態とは対照的に、フィルタ膜20は、出口壁23と本体のフィルタ受け座21の底との間に配置される。ユニットの側部には、フィルタの上流で出口壁23の下に配置される下部隔室50と連通する液体入口24が設けられる。出口壁23とカプセルの本体のフランジ状リム5に密着される上部膜4(不図示)との間には、第2の上部隔室51が形成される。上部膜4が上部隔室51で崩壊し、フィルタ膜から来る流れを部分的に遮断することを避けるために、フィルタの出口壁23に数個の支持要素52が設けられる。出口壁には、上流に配置されるフィルタ膜を通じて、濾過済みの液体が適当に分布することを可能にする多数の開口53が設けられる。よって、液体入口24を通じてカプセルに供給される液体は、下部隔室50でユニットの下を流れ、フィルタ膜20を通じて上流方向に流れる。濾過済みの液体は、よって上部隔室で収集され、小出口25を備える出口ノズル26を通じて流れる。カプセル1Bの内容物を排出するために、フィルタユニットから独立して気体入口を設けることができる。特に、フランジ状リムには、フィルタユニットの傍らなどに窪みを形成することができる。原料隔室13に気体を供給するために、窪みの部位で上部膜が穿孔される。膜の穿孔は、液体供給装置の機械的要素、または加圧気体により行うことができる。もちろん、フィルタユニットには、気体入口を設けることもできる。製品送出システムは、第1の形態に記載したシステムと同一でもよい。
【0056】
図15から図20を参照して、説明したように栄養組成を調製するためのカプセルを受けるように構成される本発明に係る液体供給装置に集中して説明する。
【0057】
本発明の液体供給装置55は、典型的に、カプセル1を受けるように寸法を適合されるカプセルホルダ56を備える。カプセルホルダは、液体および気体供給手段を備える液体供給グループ57に適合する。液体供給グループ57は、カプセルホルダの安定した基準位置を提供するカプセルホルダ挿入ベース58を備える。カプセルホルダ56およびベース58には、特に、縦摺動方向Bに沿ってなど、ベースからの容易な組み立ておよび取り外しを可能にする相補案内手段59が設けられる
【0058】
本発明のフィルタユニット18は、液体供給装置にカプセルを挿入するときなど、利用時にカプセルに関連付けられる個別の部品でもよいことに注意されたい。例えば、フィルタユニットは、液体注入部に関連付けられ、または液体注入部に統合される部品とすることができる。
【0059】
液体供給グループ57は、液体注入部6を単独で支持する液体注入板60をさらに備える。液体注入板60は、注入部がカプセルの液体入口開口から離れて配置される第1の位置と、注入部が液体入口24の開口と係合する第2の位置とを少なくとも取ることができるように、ベース58の上部に取り付けられる軸61に沿って回転可能に配置することができる。第1の位置が図17で説明され、第2の位置が図18で説明される。注入板は、ベースの第2の軸63に沿って回転状態で取り付けられるカム機構62により第1の位置から第2の位置に移動し、第2の位置から第1の位置にも移動する。同様に、カプセルの気体入口から離れた状態を維持する第1の位置(図19)と、気体入口の開口に係合する第2の位置(図20)とを取ることができる気体注入部7が設けられる。第1の位置から第2の位置への気体注入部7の移動も、カム機構62により制御される。有利な方法では、カム機構62は、液体注入部が第1の位置から第2の位置に移動したときに、気体注入部がその第1の位置から第2の位置に移動するように、液体および気体注入部の両方の位置の制御に共用される。カム機構62は、特に、注入板に作用する1以上の第1のカム部64と、気体注入部に作用する1以上の第2のカム部65とを備える。2つのカム部は、常にそれぞれの注入部に協調的な方法で作用するように、同一のカム機構に関連付けられる。図17および図18は、板60を押すことで液体注入部6の位置を変更するように作用する第1のカム部64を示す。軸63に対して偏心面を形成するカム部64は、カプセルの方向に下側に板60を押す。注入板には、液体入口の周りに液体シールを局所的に形成するように、Oリングなどの密封手段(不図示)が関連付けられてもよい。図19および図20は、気体入口の方向に気体注入部7を押す偏心面を形成する第2のカム部65を示す。明確化のために、装置の全ての詳細、特に、液体注入板をその第1の位置に戻す弾性復帰手段と、気体注入部をその第1の位置に戻す同様な手段とは示されていない。このような弾性復帰手段は、ばねまたは均等物の形でもよい。
【0060】
異なる形態では、フィルタユニット18は、カプセルとは別個でもよく、液体供給装置の使い捨て可能な部品でもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル(1A、1B)に液体を供給するように構成される装置において栄養製品を調製するためのカプセルであって、供給される前記液体と組合せて前記栄養製品を調製するための栄養組成(14)を収容する1以上の隔室(13)と、前記液体に含まれる混入物を除去するように構成されるフィルタ(18、20)とを有するカプセルにおいて、
フィルタ膜(20)を通過せずに当該カプセル(1A、1B)の外部から前記隔室(13)に気体を導入できるように当該カプセル上または当該カプセル内に配置される、選択的に開放可能な気体入口(34)を備えることを特徴とするカプセル。
【請求項2】
前記気体入口(34、54)が、開放形態で所定の大きさを有し、当該カプセルの剛壁(23、5)に設けられることを特徴とする、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記気体入口(34、54)が、穿孔可能な膜(4)により密封され、または脆弱な閉鎖部を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のカプセル。
【請求項4】
前記気体入口(34)が、前記フィルタ膜(20)の下流に配置されて前記隔室(13)と連通する液体導管(33)に連なることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項5】
前記液体導管が、前記隔室(13)と連通する出口ノズル(26)の上流に配置されることを特徴とする、請求項4に記載のカプセル。
【請求項6】
前記気体入口(54)が、液体導管(33)から離間して配置され、前記液体導管(33)に連ならずに前記隔室(13)と直接連通することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項7】
前記フィルタユニット(18)が、当該カプセルの水平面に沿う断面であって前記原料を収容する前記隔室の断面よりも小さな断面を有することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項8】
前記フィルタが、相対的に硬質なケース(19)に囲まれる可撓性のフィルタ膜(20)を有するフィルタユニット(18)として形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項9】
前記ケース(19)が、入口壁(22)および出口壁(23)を有し、前記入口壁および前記出口壁が、内部隔室を形成し、前記内部隔室の内部に前記フィルタ膜(20)が挿入されると共に、前記内部隔室が、前記入口壁に進入する前記液体が前記出口壁(23)に向けて前記フィルタ膜を横切るように、前記ケース(19)の周囲で液体不浸透状態に密封されることを特徴とする、請求項8に記載のカプセル。
【請求項10】
前記ケースが、溶着などにより互いに接続されると共に、前記フィルタ膜(20)を前記フィルタ膜の周囲(30)で締め付け、および/または溶着する2つの半ケース(37、38)から形成されることを特徴とする、請求項9に記載のカプセル。
【請求項11】
当該カプセルが、前記隔室(13)の境界を定める本体(2)を有し、前記本体が、前記隔室(13)の上流に配置されて前記フィルタユニット(18)を格納するフィルタ受け座(21)を有することを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項12】
1以上の隔室(13)に原料を収容するカプセル(1A、1B)から栄養組成を送出する方法であって、前記隔室に液体を供給して、前記原料により組成を形成すると共に前記カプセルを通じて前記組成を放出する方法において、
フィルタ(18、20)を通じて前記液体を濾過して前記液体に含まれる混入物を除去し、
続いて前記カプセルの前記隔室に気体を供給することを含む方法。
【請求項13】
前記気体が、前記フィルタ(18、20)を通過せずに気体入口(34)を通じて前記カプセルの外部から前記隔室(13)に供給される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記気体が、前記隔室と連通する出口ノズル(26)の上流に供給される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記気体の供給が、前記カプセルの前記隔室から前記液体が排出されるまで少なくとも実行される、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
栄養組成を調製するためのカプセル(1A、1B)に液体を供給する装置(55)であって、液体注入部(6)を備える装置において、
前記カプセルに気体を注入する気体注入部(7)を備え、前記気体注入部が、前記カプセルの液体入口(24)から離隔する気体入口(34、54)を通じて前記カプセルに気体が供給されるように、前記液体注入部(6)から独立して離隔することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2012−525879(P2012−525879A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509005(P2012−509005)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056002
【国際公開番号】WO2010/128028
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】