説明

梁の貫通部構造

【課題】 外壁の梁の貫通部における開口の閉塞が簡易になし得る梁の貫通部構造を提供する。
【解決手段】 外壁における梁2の貫通部構造Kであって、梁2の貫通部に水平開閉式シャッター機構30を備えてなるもので、水平開閉式シャッター機構30が、外壁パネル10をパネルフレーム20に接合するアンカーナットNにスライド可能に支持された、シャッターが閉の際にフランジ2a,2bを格納するフランジ格納溝44を有するシャッター部材40を備えてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は梁の貫通部構造に関する。さらに詳しくは、外壁における梁の貫通部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、戸建住宅や集合住宅においては、建屋の外周にバルコニーや廊下を設けるため、梁の端部を外壁を貫通させて建屋外に突出させることがなされている。この梁が外壁を貫通する箇所においては、鉄骨や外壁パネルに製作誤差や施工誤差が生じても梁の貫通に支障のないよう、図12および図13に示すように、相当の裕度を設けて開口100が形成されている。
【0003】
そのため、梁110を貫通させた後にこの開口100を塞ぐ必要が生じている。この開口100の閉塞は、従来、開口100周縁と梁110とを利用してラスを張り、そのラスを利用してモルタルを塗ったり、あるいはロックウールを詰めたりすることによりなされている。
【0004】
しかしながら、かかる閉塞手法は、作業工数および工種の増加、それによる職種の増加、ならびに工期の長期化およびコストの上昇を招来しているという問題がある。とりわけ、集合住宅においては、梁110が外壁Wを貫通する箇所が多いところから、この問題は顕著なものとなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、外壁の梁の貫通部における開口の閉塞が簡易になし得る梁の貫通部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の梁の貫通部構造は、外壁における梁の貫通部構造であって、梁の貫通部に水平開閉式シャッター機構を備えてなることを特徴とする。
【0007】
本発明の梁の貫通部構造においては、水平開閉式シャッター機構が、外壁パネルをパネルフレームに接合するアンカー部材にスライド可能に支持されたシャッター部材を備えてなるのが好ましい。
【0008】
また、本発明の梁の貫通部構造においては、シャッター部材が、シャッターが閉じられたときに梁の水平要素を格納する格納溝を有してなるのが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の梁の貫通部構造においては、シャッター部材をベースに用いて開口部の仕舞、例えば充填材の充填がなされるのが好ましい。その場合、仕舞を外装する仕舞外装材を備えてなるのがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外壁パネルの据付後にシャッターを閉じるという簡易な作業により、外壁における梁の貫通部の閉塞がなし得るという優れた効果が得られる。また、本発明の好ましい形態によれば、シャッター部材をベースに用いて梁の貫通部における外壁の仕様に応じた仕舞がなし得るという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
実施形態1
本発明の実施形態1に係る梁の貫通部構造(以下、単に貫通部構造という)を図1および図2に示す。なお、この実施形態では梁はH型鋼とされている。
【0013】
貫通部構造Kは、図1および図2に示すように、開口部1が形成された外壁パネル10と、そのパネル10を支持するパネルフレーム20との間に、開口部1を閉塞する水平開閉式シャッター機構30を備えてなるものとされる。
【0014】
このシャッター機構30は、具体的には、左右対称とされて開口部1に梁2を挟んで対向配置された一対のシャッター部材40R,40Lを備えてなるものとされる。
【0015】
図3に、右側シャッター部材40Rを斜視図で示す。なお、左側シャッター部材40Lは、右側シャッター部材40Rと左右対称とされているので、その図示説明は省略する。
【0016】
右側シャッター部材40Rは、図3に示すように、平板状のシャッター本体41と、シャッター本体41の梁側端部を外方(外壁パネル10側)に起立させてなる接合部42とを備えてなるものとされる。ここで、シャッター部材40の素材としては、一般的には鋼板とされるが、耐火構造が必要とされる箇所でなければ、プラスチック板やアクリル樹脂板とすることもできる。
【0017】
シャッター本体41には、外壁パネル10をパネルフレーム20に接合するアンカーナット(アンカー部材)(図4参照)Nに嵌装されシャッター本体41をアンカーナットNに水平スライド可能に支持させる所要数(図示例では2個)の長孔43と、シャッターが閉じられたときに梁2の右側の上下フランジ(水平要素)2a,2bを格納するフランジ格納溝44とが設けられている。
【0018】
接合部42には、このフランジ格納溝44と連通させられているフランジ進入切欠45と、梁2の外方つまり上フランジ2aの上方および下フランジ2bの下方にボルト挿通孔46とが設けられている。
【0019】
次に、図1、図2および図5を参照しながら、かかる構成とされているシャッター機構30を備えた貫通部構造Kによる梁2の貫通部の閉塞について説明する。
【0020】
手順1:シャッターを開とした状態、つまり右側および左側シャッター部材40R,40Lを外壁パネル10背後に後退させた状態で外壁パネル10を据え付ける(図1参照)。
【0021】
手順2:外壁パネル10の据付完了後、シャッターを閉じ、つまり右側および左側シャッター部材40R,40Lを図1の矢符の方向にそれぞれスライドさせ、ついで両接合部42,42をボルト・ナット留めにて接合する(図2参照)。この場合、シャッターは気密性を要求されないため、両接合部42,42は当接させられる必要はない。つまり、隙間があいていてもよい。
【0022】
手順3:シャッター部材40R,40Lをベースに用いて開口部1の仕舞を行う。例えば、シャッター部材40R,40Lをベースに用いてロックウールやウレタンなどの充填材Bを開口部1に充填する(図5参照)。なお、耐火構造や防音構造が要求される箇所であれば、例えば、シャッター部材40R,40Lにアンカーを設けてモルタルを塗り込む。また、見え掛かり等の外観の見栄えが要求される箇所であれば、モルタルの上にさらにタイルを貼るようにしてもよい。
【0023】
このように、この実施形態1によれば、外壁の開口部1に水平開閉式シャッター機構30を設けてシャッターを閉じるという簡易な作業により梁2の貫通部の閉塞がなし得る。そのため、梁2の貫通部における閉塞作業に特段の職種を必要としない。また、梁2の貫通部における外壁の仕様に応じて、シャッター部材40をベースに用いてロックウールやウレタンを開口部1に充填したり、モルタルの塗り込みをしたりすることができるので、開口部1の仕舞の際に下地材の敷設をなす必要がない。そのため、工期の短縮およびコストの低減が図られる。
【0024】
実施形態2
本発明の実施形態2に係る貫通部構造を図6および7に示す。実施形態2は、実施形態1のシャッター機構30を改変してなるものであるが、実施形態2では、図7に示すように、外壁パネル10の開口部1Aは周囲が閉じた矩形孔とされる。実施形態2のその余の構成は実施形態1と同様であるために、その詳細説明は省略する。
【0025】
図6に、実施形態2の貫通部構造K1の水平断面図を示す。なお、同図(a)は、梁2上方における水平断面図(図10のM−M線断面図)であり、同図(b)は、梁2を含む水平断面図(図10のN−N線断面図)である。
【0026】
貫通部構造K1は、図6に示すように、水平開閉式シャッター機構30Aのシャッター部材50が、このシャッター部材50をベースになされる仕舞を外装するための仕舞外装材60の取付部53を有してなるものとされる。
【0027】
ここで、シャッター機構30Aにおいては、仕舞外装材60を外壁パネル10Aに係止するための係止部材61が開口部1Aに設けられるものとされる。係止部材61は、爪部61aを開口部1Aの外方に向けて取り付けられるものとされる。
【0028】
図8に、右側シャッター部材50Rを斜視図で示す。なお、左側シャッター部材50Lは、右側シャッター部材50Rと左右対称とされているので、その図示説明は省略する。
【0029】
右側シャッター部材50Rは、図8に示すように、平板状のシャッター本体51と、シャッター本体51の梁側端部を外方(外壁パネル10A側)に起立させてなる接合部52と、接合部52の外方端部をパネル側に戻すように起立させてなる取付部53とを備えてなるものとされる。
【0030】
ここで、シャッター部材50の素材としては、一般的には鋼板とされるが、耐火構造が必要とされる箇所でなければ、プラスチック板やアクリル樹脂板とすることもできる。
【0031】
シャッター本体51には、外壁パネル10をパネルフレーム20に接合するアンカーナット(アンカー部材)(図4参照)Nに嵌装されシャッター本体51をアンカーナットNに水平スライド可能に支持させる所要数(図示例では2個)の長孔54と、シャッターが閉じられたときに梁2の右側の上下フランジ(水平要素)2a,2bを格納するフランジ格納溝55とが設けられている。
【0032】
接合部52には、このフランジ格納溝55と連通させられているフランジ進入切欠56と、梁2の外方つまり上フランジ2aの上方および下フランジ2bの下方にボルト挿通孔57とが設けられている。
【0033】
取付部53には、フランジ進入切欠56の延長であるフランジ進入切欠延長部58が設けられている。
【0034】
次に、仕舞外装材60を説明する。仕舞外装材60は、図6および図10に示すように、アルミ合金板材からなる外装材本体62と、本体62の裏面に設けられ前記係止部材61の爪部61aと係合する爪係合部63と、本体62の梁側端部に設けられシャッター部材50の取付部53と接合される接合部64とを有する。
【0035】
次に、かかる構成とされているシャッター機構30Aを備えた貫通部構造K1による梁2の貫通部の閉塞および仕舞について説明する。
【0036】
手順11:シャッターを開とした状態、つまり右側および左側シャッター部材50R,50Lを外壁パネル10背後に後退させた状態で外壁パネル10Aを据え付ける(図9(a)参照)。
【0037】
手順12:外壁パネル10Aの据付完了後、シャッターを閉じ、つまり右側および左側シャッター部材50R,50Lを図9(a)、(b)の矢符の方向にそれぞれスライドさせ、ついで両接合部52,52をボルト・ナット留めにて接合する(図9(b)、(c)参照)。この場合、シャッターは気密性を要求されないため、両接合部52,52は当接させられる必要はない。つまり、隙間があいていてもよい。
【0038】
図10に、この時点における貫通部構造K1の正面図を示す。
【0039】
手順13:シャッター部材50R,50Lをベースに用いて開口部1Aの仕舞を行う。例えば、シャッター部材50R,50Lをベースに用いてロックウールやウレタンなどの充填材B1(図9(d)参照)を開口部1Aに充填する。なお、耐火構造や防音構造が要求される箇所であれば、例えば、シャッター部材50R,50Lにアンカーを設けてモルタルを塗り込む。
【0040】
手順14:係止部材61の爪部61aに仕舞外装材60の爪係合部63を係合させるように、外壁パネル10の外側面に仕舞外装材60を沿わせながらスライドさせる(図9(d)、(e)参照)。
【0041】
手順15:前記爪部61aに爪係合部63を係合させた状態で、シャッター部材50の取付部53に仕舞外装材60の接合部63を例えばビス止めにより固定する(図9(e)参照)。
【0042】
手順16:図6に示すように、仕舞外装材60と外壁パネル10Aの間隙と、右左の仕舞外装材60R,60Lの接合部分と、右左の仕舞外装材60R,60Lと梁2との接合部分とをシーリング材Cによりシーリングする。
【0043】
図11に、この時点における貫通部構造K1の正面図を示す。
【0044】
このように、実施形態2の貫通部構造K1では、シャッター機構30Aのシャッター部材50に、例えばアルミ合金板材からなる仕舞外装材60の取付部53を設けるものとしたので、仕舞外装材60を工場生産による規格化された部材とすることにより、シャッター部材のみならず見え掛かりの箇所に適用される部材についても品質のバラツキを排除することができ、外壁の梁貫通部において所望の品質を確保することが容易となる。
【0045】
ここで、仕舞外装材60は、シャッター部材50の取付部53に取り付けられるものとされているために、仕舞外装材60をシャッター部材50とともにパネルフレーム20を基準に施工することが可能となる。したがって、建物の構造躯体を基準に取り付ける場合のように、構造躯体とパネルフレーム20との間の施工誤差の影響を受けることがなく、より高い品質の施工が可能となる。
【0046】
また、仕舞外装材60をアルミ合金板材とすることによって、意匠上の自由度が大きくなるとともに仕舞外装材60の取付まではパネル工作業員により仕舞を実施することが可能となる。このため、職種の増大を避けることが可能となる。なお、仕舞外装材60を取り付けた後のシーリングについては、外壁目地等のシーリングを行うのと同時に施工することが可能であるために、職種の増大を避けることは容易である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、梁が外壁パネルから貫通している箇所の閉塞に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態1に係る梁の貫通部構造の概略図であって、シャッターが開の状態を示す。
【図2】同貫通部構造の概略図あって、シャッターが閉の状態を示す。
【図3】同貫通部構造のシャッター機構の右側シャッター部材の斜視図である。
【図4】同右側シャッター部材を外壁パネルとパネルフレームとの間にセットした状態の平面図である。
【図5】仕舞がなされた開口部の概略平面図である。
【図6】本発明の実施形態2の貫通部構造の概略図であって、シャッターが閉の状態を示す。
【図7】同貫通部構造が設けられる外壁パネルの正面図である。
【図8】同貫通部構造のシャッター機構の右側シャッター部材の斜視図である。
【図9】同貫通部構造の閉塞および仕舞の手順を示す説明図である。
【図10】同貫通部構造のシャッター機構が閉じられたときの正面図である。
【図11】同貫通部構造の仕舞がなされたときの正面図である。
【図12】従来の梁の貫通部の正面図である。
【図13】同背面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 開口部
2 梁
2a 上フランジ
2b 下フランジ
10 外壁パネル
20 パネルフレーム
30 水平開閉式シャッター機構
40、50 シャッター部材
41、51 シャッター本体
42、52 接合部
53 取付部
43、54 長孔
44、55 フランジ格納溝
45、56 フランジ進入切欠
58 フランジ進入切欠延長部
B 充填材
C シーリング材
K 梁の貫通部構造
N アンカーナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁における梁の貫通部構造であって、梁の貫通部に水平開閉式シャッター機構を備えてなることを特徴とする梁の貫通部構造。
【請求項2】
水平開閉式シャッター機構が、外壁パネルをパネルフレームに接合するアンカー部材にスライド可能に支持されたシャッター部材を備えてなることを特徴とする請求項1記載の梁の貫通部構造。
【請求項3】
シャッター部材が、シャッターが閉じられたときに梁の水平要素を格納する格納溝を有してなることを特徴とする請求項2記載の梁の貫通部構造。
【請求項4】
シャッター部材をベースに用いて開口部の仕舞がなされていることを特徴とする請求項2記載の梁の貫通部構造。
【請求項5】
仕舞が、開口部に充填材を充填することによりなされることを特徴とする請求項4記載の梁の貫通部構造。
【請求項6】
仕舞を外装する仕舞外装材を備えてなることを特徴とする請求項5記載の梁の貫通部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−299787(P2006−299787A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277092(P2005−277092)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】