説明

棒状ワークの加工方法及びその装置

【課題】棒状ワークに二筋の溝部を迅速に切削することができるとともに、切削精度を向上することができる棒状ワークの切削装置を提供する。
【解決手段】床面にコラム22を介して軸受23を設け、該軸受23に回転支持軸24を介してインデックステーブル25を、鉛直軸線の周りで旋回可能に装着する。前記インデックステーブル25にワークWとしてのニードルバルブ10をクランプするクランプ機構31を設ける。前記インデックステーブル25の上下方向から切削機構部11の回転工具14,15を接近させて前記ニードルバルブ10の小径部10d及び鍔部10eの外周面に接触させ、ニードルバルブ10に二筋の溝部10fを同時に切削する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状ワークの外周面に二筋の溝を迅速に加工することができる棒状ワークの加工方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状ワークとして、例えば、電磁弁等に用いられる細い棒状のニードルバルブ10は、図18に示すように形成されている。このニードルバルブ10は、円柱状のバルブ本体10aと、該バルブ本体10aの一端部に形成された鍔部10bと、前記バルブ本体10aの他端部に一体に形成された先端ほど小径のテーパ部10cと、該テーパ部10cの先端部に一体に連結された円柱状の小径部10dと、該小径部10dの先端部に一体形成された鍔部10eとを備えている。前記小径部10d及び鍔部10eには、180°隔てて二筋の溝部10fが形成されている。
【0003】
上記ニードルバルブ10の溝部10fを形成する装置として、図19に示すものが提案されている。この切削装置は、ワーク支持テーブル91の上面にニードルバルブ10のクランプ機構92を装着し、該クランプ機構92の左右一対のクランプ爪93,94によって、ニードルバルブ10の外周面の二箇所を左右方向からクランプする。このクランプ状態で、小径部10d及び鍔部10eの外周面の一箇所に回転工具14を上方から接触させることによって溝部10fを切削するようになっている。
【0004】
一方、棒状ワークの研削盤として、特許文献1に開示されたものが提案されている。この研削盤は、棒状ワークの両端部を主軸台によって把持した状態で回転させ、棒状ワークの両側方から一対の回転砥石を接近させて、ワークの外周面を研削するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−254333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、図19に示す切削装置においては、二筋の溝部10fを切削する場合、溝部10fの一方を切削した後、クランプ機構92によるニードルバルブ10のクランプを解除する。その後、ニードルバルブ10をその中心軸線を中心に180度回転した状態で、ニードルバルブ10を前記クランプ機構92によって再度クランプし、回転工具14によって他方の溝部10fの切削加工を行うことになる。結局、二回に分けて溝部10fを加工しなければならず、作業能率を向上することができないという問題があった。
【0007】
又、回転工具14がニードルバルブ10の一箇所に当接するため、ニードルバルブ10が変形し易く、このため、ニードルバルブ10が変形して、加工精度が低下する虞があった。さらに、ニードルバルブ10を再度クランプする際に、ニードルバルブ10が適正位置にクランプされるとは限らず、二筋の溝部10fの加工精度が低下する虞があった。
【0008】
一方、特許文献1に開示された研削盤は、棒状ワークの軸線と、回転砥石の軸線とが平行になっているので、棒状ワークの外周面に対し、その軸線と平行となる溝部(図18の溝部10f参照)を形成することはできない。
【0009】
この発明の目的は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、棒状ワークの外周面の二箇所に二筋の溝部を迅速に加工することができるとともに、加工精度を向上することができる棒状ワークの加工方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ワーク把持機構によって棒状ワークの外周面を把持した状態で、前記棒状ワークの外周面の二箇所に、円盤状の一対の回転工具の外周面を互いに反対方向から接近させて、棒状ワークに同時に該ワークの軸線方向に沿って延びる二筋の溝を切り込むことを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、棒状ワークの外周面を把持するワーク把持機構を備え、棒状ワークの外周面の二箇所に二筋の溝を同時に加工するための二つの円盤状の回転工具をワークを介して互いの反対側に配置し、前記回転工具の軸線は互いに平行をなし、該軸線は前記棒状ワークの軸線と直角をなしていることを要旨とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記ワーク把持機構は、インデックステーブル上の三箇所に設けられ、インデックステーブルの割り出しに伴って、各ワーク把持機構は、ワークの搬入位置、加工位置及び搬出位置に順次割り付けられるように構成されていることを要旨とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、ワーク把持機構は、上下方向に開口するようにインデックステーブルに形成された貫通孔内に設けられ、この貫通孔の上下の開口から回転工具がワークに向かって進入されるように構成されていることを要旨とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記貫通孔は、インデックステーブルの外周面に開放され、貫通孔の開放部がブラケットにより閉塞され、前記貫通孔が形成され、前記ブラケットの内面には、ワークの外周面の片側をクランプするための第1クランプ部材が装着され、前記貫通孔の内面には、前記第1クランプ部材と対向するように第2クランプ部材が支持されていることを要旨とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項において、前記インデックステーブルに隣接するようにワーク搬送装置を設けるとともに、インデックステーブルとワーク搬送装置との間にはアームをその中間部において旋回可能に配設し、該アームの両端部にはワークを着脱可能に保持する保持機構を設け、その保持機構の着脱動作及びアームの旋回動作により前記ワーク搬送装置の搬入ステーションにある未加工ワークを前記インデックステーブルの搬入位置にある把持機構に受け渡すとともに、インデックステーブルの搬出位置にある把持機構に把持された加工済みワークをワーク搬送装置の搬出ステーションに受け渡す搬出動作が行われるようにしたことを要旨とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記アームの保持機構は、ワークをインデックステーブルの搬入位置にある把持機構に搬入する際に、ワークをシフトして、ワークの一端部をインデックステーブルに設けた位置規制部材に当接させて位置決めするためのシフト機構が設けられていることを要旨とする。
【0017】
(作用)
この発明は、ワーク把持機構によって棒状ワークの外周面を所定位置に把持した状態で、前記棒状ワークの外周面の二箇所が二つの回転工具によってそれぞれ同時に加工される。このため、短時間でワークを加工することができる。又、ワークの二箇所がワークを介して互いの反対側に位置する二つの回転工具によって保持されるので、棒状ワークが変形することはなく、加工精度が向上する。しかも、ワークの持ち換えが不要であるため、加工位置の精度も向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、棒状ワークの二箇所に二筋の溝部を迅速に加工することができるとともに、加工精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明を切削加工システムに具体化した一実施形態を示す左側面図。
【図2】ワーク搬入出装置の斜視図。
【図3】ワーク搬入出装置の正面図。
【図4】ワーク位置切換機構の平面図。
【図5】(a)(b)は、搬出位置にあるクランプ機構の動作を説明するための部分拡大平面図、(c)(d)は、搬入位置にあるクランプ機構の動作を説明するための部分拡大平面図。
【図6】図4の1−1線における拡大断面図。
【図7】図4の2−2線における拡大断面図。
【図8】搬入用クランプ機構の拡大平面図。
【図9】ワーク位置切換機構とアームとの関係を示す平面図。
【図10】ワーク位置切換機構とアームとの関係を示す平面図。
【図11】ワークの搬入搬出動作の第1の工程を説明するための斜視図。
【図12】ワークの搬入搬出動作の第2の工程を説明するための斜視図。
【図13】ワークの搬入搬出動作の第3の工程を説明するための斜視図。
【図14】ワークの搬入搬出動作の第4の工程を説明するための斜視図
【図15】ワークの搬入搬出動作の第5の工程を説明するための斜視図
【図16】ワークの搬入搬出動作の第6の工程を説明するための斜視図
【図17】ワークの搬入搬出動作、加工動作のタイミングチャート。
【図18】ニードルバルブの斜視図。
【図19】従来の加工機のワークの搬入搬出装置を示す略体平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をワーク切削システムに具体化した一実施形態を図1〜図18に従って説明する。
最初に、切削対象である棒状のワークWについて説明する。このワークWとして、この実施形態では、図18に示すニードルバルブ10を対象としている。そして、このワーク切削システムにおいては、図6及び図7に示すように、インデックステーブル25に設けたクランプ機構31によりバルブ本体10aをクランプした状態で、前記鍔部10eに加工機としての切削機構部11の上下一対の回転工具14,15を接触させることによって、同時に前記溝部10fを切削加工するように構成されている。
【0021】
次に、図1〜図3に基づいて、ワーク切削システムの概略構成について説明する。前記切削機構部11の前方には、前記回転工具14,15によって加工される未加工ワークWを保持するインデックステーブル25を備えたワーク位置切換機構21が配設されている。このインデックステーブル25には、図1に示すようにワークWをクランプする把持機構としての三つのクランプ機構31が設けられ、インデックステーブル25が旋回動作されることによって、前記各クランプ機構31がワークWの搬入位置P1、加工位置P2及び搬出位置P3の順に割り出されるようになっている。前記ワーク位置切換機構21の側方には、ワークWを搬送するワーク搬送装置41が装設されている。このワーク搬送装置41には、未加工ワークWの搬入ステーションS1が設けられるとともに、加工済みワークWの搬出ステーションS2が設けられる。前記ワーク位置切換機構21及びワーク搬送装置41の上方には、前記搬入ステーションS1にある未加工ワークWを、前記インデックステーブル25の搬入位置P1にあるクランプ機構31に搬入する動作と、インデックステーブル25の搬出位置P3にあるクランプ機構31にクランプされている加工済みワークWを受け取って、前記ワーク搬送装置41の搬出ステーションS2に搬出する動作とを、同期して行うためのワーク搬入出装置51が装着されている。
【0022】
次に、前述した切削機構部11、ワーク位置切換機構21、ワーク搬送装置41及びワーク搬入出装置51について順次説明する。
(切削機構部11)
図1に示す上下一対のモータ12,13は、図示しない機台に装設され、該モータ12,13の回転軸には、円盤状の回転工具14,15が取り付けられている。前記回転工具14,15は、第1昇降機構18及び第2昇降機構19によって、それぞれ昇降されるようになっている。
【0023】
前記各回転工具14,15の外周面には、図7に示すように、インデックステーブル25によって加工位置P2に移動されたワークWとしてのニードルバルブ10の小径部10d及び鍔部10eの外周面の上部及び下部に溝部10fを同時に切削加工するための切削部14a,15aが形成されている。
(ワーク位置切換機構21)
図2に示すように、床面に立設されたコラム22の上端部には、インデックステーブル25がその回転支持軸24において、軸受23を介して鉛直軸線の周りで旋回するように支持されている。前記軸受23の下部には、前記回転支持軸24を回転させるためのモータ26及び減速機27が装着されている。図1及び図4に示すように、インデックステーブル25のテーブル本体30には、上下方向に貫通する収容凹部30aが三箇所に、120°の間隔に形成され、各収容凹部30aには、ワークWをクランプするためのワーク把持機構としてのクランプ機構31が装着されている。各クランプ機構31は、インデックステーブル25の割り出しにより、前述したように、未加工ワークWの搬入位置P1、加工位置P2及び加工済みワークWの搬出位置P3に順次位置されるようになっている。次に、クランプ機構31の構成について説明する。
【0024】
図4に示すように、前記収容凹部30aの外側開放部を閉鎖するように前記テーブル本体30の外周面に取り付けられたブラケット34には、第1クランプ部材としての固定クランプ部材35が支持されている。この固定クランプ部材35には、図7に示すようにニードルバルブ10のバルブ本体10aの外周面の片側をクランプするためのクランプ溝35bが形成されている。図4に示すように、前記テーブル本体30にはその収容凹部30aと対応するように、クランプ用シリンダ36が取り付けられている。該クランプ用シリンダ36のピストンロッド37には、前記固定クランプ部材35と対向するように第2クランプ部材としての可動クランプ部材38が連結されている。該可動クランプ部材38には、図7に示すようにニードルバルブ10のバルブ本体10aの外周面の他側をクランプするためのクランプ溝38bが形成されている。図4に示すように、前記収容凹部30aの内面には、ニードルバルブ10の軸方向の位置を規制するための位置規制部材39が取り付けられている。なお、前記収容凹部30aの前記位置規制部材39と反対側の側面には、ワークWにクーラントを供給するための供給ノズル(図示略)が設けられている。
【0025】
図1に示すように、前記回転工具14,15の回転軸線O14,O15は、同一の鉛直面内において、互いに平行に設定されている。図1の部分拡大図(円内)に示すように、前記クランプ機構31によってニードルバルブ10が把持されて加工位置P2に割り出された状態において、該ニードルバルブ10の中心軸線O10(紙面直交方向)と、前記回転軸線O14,O15とが直角をなすように設定されている。そして、回転工具14,15の外周の切削部14a,15aによって、ニードルバルブ10の小径部10d及び鍔部10eに前記中心軸線O10に沿う二筋の溝部10fが180°を隔てて切削されるようにしている。
(ワーク搬送装置41)
図1に示すように、床面には複数本の支柱を介して支持板42が配設されている。該支持板42の上面には複数のブラケット43を介して、ローラ44が回転可能に支持され、両ローラ44間にはモータを備えた駆動機構46によって間欠的に周回されるコンベアベルト45が掛装されている。前記コンベアベルト45の外側面には、ワークWを保持するための複数のパレット47が等間隔をおいて載置されている。前記パレット47は、ニードルバルブ10の両端部を保持する保持溝48aを有する保持具48を備えている。前記支持板42には、ストッパピン49を出し入れさせる一対のアクチュエータ50が図示しないブラケットを介して支持されている。そして、前記コンベアベルト45のパレット47が搬入ステーションS1及び搬出ステーションS2に停止されると、各パレット47をステーションS1及びS2に位置決めするため前記アクチュエータ50によってストッパピン49がコンベアベルト45の上方に突出されるようになっている。
(ワーク搬入出装置51)
図1及び図3に示すように、床面に立設された支柱52の上端部には、水平支持板53が支持され、該水平支持板53には、昇降用シリンダ57が固定されている。昇降用シリンダ57のピストンロッド58の下端には昇降部材56が固定されている。該昇降部材56は案内ロッド55により上下方向の往復動が案内される。
【0026】
図3に示すように、前記昇降部材56の下面には、ロータリシリンダよりなる旋回用シリンダ61が取り付けられ、その旋回軸62には、二方タイプのアーム63の中間部が連結されている。前記アーム63の一方の先端部下面には、前記ワーク搬送装置41の搬入ステーションS1にあるパレット47に保持された未加工ワークWを受け取って、前記インデックステーブル25の搬入位置P1にあるクランプ機構31に搬入するための搬入用保持機構としての搬入用クランプ機構64が装着されている。一方、前記アーム63の他方の先端部下面には、インデックステーブル25の搬出位置P3にあるクランプ機構31にクランプされている加工済みワークWを受け取って、前記ワーク搬送装置41の搬出ステーションS2のパレット47に搬出するための搬出用クランプ機構65が装着されている。前記昇降部材56には、第1及び第2ストッパ66,67が取り付けられ、前記アーム63の上面には、第1及び第2位置決め部材68,69が立設されている。そして、前記第1ストッパ66に第1位置決め部材68が当接することにより、搬入用クランプ機構64が搬入ステーションS1のパレット47と対応する上方に位置規制される。第2ストッパ67に第2位置決め部材69が当接することにより、搬出用クランプ機構65が搬出ステーションS2のパレット47と対応する上方に位置規制される。
【0027】
前記搬入用クランプ機構64及び搬出用クランプ機構65は、同一の構成である。
前記アーム63の先端部下面には、図8に示すようにスライドテーブル71が装着されている。このスライドテーブル71は、アーム63の下面に取り付けられたテーブル本体72と、該テーブル本体72に二本の案内ロッド73を介して往復動可能に装着された可動テーブル74とによって構成されている。
【0028】
前記テーブル本体72の一側面に取り付けられた雌ネジ体81,82には、ストップボルト83,84が所定の間隔をおいて互いに対向するように螺合されている。前記可動テーブル74の一側面には、前記ストップボルト83,84の間に位置するように位置決め用のブロック85が取り付けられている。ストップボルト83、84及びブロック85によって、前記可動テーブル74の移動ストロークが設定される。
【0029】
図2及び図3に示すように、前記可動テーブル74の下面には、クランプ用シリンダ88が連結され、該クランプ用シリンダ88の下端部には、ニードルバルブ10のバルブ本体10aをクランプするための一対の開閉可能なクランプアーム89が装着されている。
【0030】
この実施形態においては、前記クランプアーム89によりクランプされたニードルバルブ10を、図8に示すように、その軸線方向と交差する斜め方向にシフトさせるためのシフト機構90が前記スライドテーブル71によって構成されている。
【0031】
図1及び図9に示すように、前記第1ストッパ66に第1位置決め部材68が接触し、前記アーム63がその回動位置にある状態においては、搬入用クランプ機構64側のクランプアーム89が搬入ステーションS1のパレット47の真上に位置するようにしている。又、前記搬出用クランプ機構65側のクランプアーム89が搬出位置P3にある加工済みニードルバルブ10の真上に位置するようにしている。そして、前記アーム63が図9において鉛直軸線Oを中心に時計回り方向に旋回されて、前記第2ストッパ67に第2位置決め部材69が当接されると、図10に示すように、搬入用クランプ機構64側のクランプアーム89が搬入位置P1にあるクランプ機構31の真上に位置するように、搬出用クランプ機構65側のクランプアーム89が搬出ステーションS2のパレット47の真上に位置するようにしている。
(ワーク切削システムの動作)
次に、前記のように構成されたワーク切削システムの動作について説明する。
【0032】
図1及び図9において、インデックステーブル25の搬入位置P1のクランプ機構31には、ニードルバルブ10が存在せず、加工位置P2にあるクランプ機構31に未加工ニードルバルブ10が保持され、搬出位置P3にあるクランプ機構31によって加工済みニードルバルブ10が保持されている状態を示す。このとき、搬入ステーションS1に未加工ニードルバルブ10を保持したパレット47がストッパピン49によって位置決めされ、搬出ステーションS2に空状態のパレット47がストッパピン49によって位置決めされている。さらに、搬入用クランプ機構64のアンクランプ状態のクランプアーム89が前記搬入用パレット47の上方の退避位置に保持されるとともに、搬出用クランプ機構65のアンクランプ状態のクランプアーム89がクランプ機構31から上方向に離隔した退避位置に保持されている。
【0033】
この状態において、切削機構部11の回転工具14,15が互いに接近する方向に移動され、図6及び図7に示すようにニードルバルブ10の小径部10d及び鍔部10eの外周面が上下二方向から切削され、溝部10fが形成される。
【0034】
そして、加工位置P2において、ニードルバルブ10の切削加工が行われている間に、以下に示す第1〜第6の工程によって、未加工ワークWの搬入動作と、加工済みワークWの搬出動作が行われる。
(第1の工程)
未加工ニードルバルブ10の加工中、昇降用シリンダ57が作動され、図11に示すようにアーム63が図1の位置から搬入用クランプ機構64及び搬出用クランプ機構65とともに下降される。すると、前記パレット47に保持されていた未加工のニードルバルブ10の位置に搬入用クランプ機構64側の非クランプ状態のクランプアーム89が移動される。又、図5(a)に実線で示すように、搬出用クランプ機構65側の非クランプ状態のクランプアーム89が加工済みニードルバルブ10の位置に移動される。この状態で、両クランプ用シリンダ88が同時に作動されてクランプアーム89により加工済みニードルバルブ10のバルブ本体10a及び未加工ニードルバルブ10のバルブ本体10aがクランプされる。その後、図5(b)に示すように、搬出位置P3のクランプ機構31の可動クランプ部材38が固定クランプ部材35から離隔されて、加工済みニードルバルブ10のクランプ状態が解除される。さらに、クランプアーム89及びニードルバルブ10は、図9に示すシフト機構90のスライドテーブル71が作動されることによって、図5(b)において矢印方向にシフトされ、ニードルバルブ10の一端面が位置規制部材39から離隔される。
(第2の工程)
次に、前記昇降用シリンダ57の作動により、アーム63等が上昇され、図12に示すように、未加工ニードルバルブ10及び加工済みニードルバルブ10が上方の所定位置に移動される。
(第3の工程)
前記旋回用シリンダ61の作動により、アーム63等が図12において矢印方向に旋回される。このため、図13に示すように、搬入用クランプ機構64によって保持されている未加工ニードルバルブ10が非クランプ状態のクランプ機構31の上方の所定位置に移動されるとともに、搬出用クランプ機構65によって保持されている加工済みニードルバルブ10が搬出ステーションS2にある搬出用パレット47の上方の所定位置に移動される。
(第4の工程)
前記昇降用シリンダ57の作動により、アーム63等が下降され、図14に示すように搬入用クランプ機構64側の未加工ニードルバルブ10がクランプ機構31のアンクランプ状態〔図5(c)参照〕の固定クランプ部材35及び可動クランプ部材38の間に移動されるとともに、搬出用クランプ機構65側の加工済みニードルバルブ10が搬出ステーションS2のパレット47に移動される。そして、クランプ用シリンダ88が作動されて、クランプアーム89による加工済みニードルバルブ10のクランプ状態が解除され、搬出用パレット47によって加工済みニードルバルブ10が保持される。
【0035】
一方、前記クランプ機構31の固定クランプ部材35及び可動クランプ部材38の間に移動された未加工ワークWは、図5(c)に実線で示すように、位置規制部材39から離隔した位置に保持された状態となる。従って、この状態において、シフト機構90のスライドテーブル71の可動テーブル74が作動されて、クランプアーム89及びニードルバルブ10が矢印で示す傾斜方向にシフトされる。すると、図5(d)に示すように、ニードルバルブ10がクランプアーム89との間の滑りを伴いながら位置規制部材39によって停止される。この状態において、前記クランプ用シリンダ36が作動されて可動クランプ部材38が固定クランプ部材35に向かって前進され、クランプ溝35b,38bによってニードルバルブ10のバルブ本体10aの外周面がクランプされる。さらに、クランプ用シリンダ88が作動されて、図5(d)の二点鎖線で示すようにクランプアーム89がアンクランプ状態となり、ニードルバルブ10のクランプ機構31への搬入が完了する。
(第5の工程)
前記昇降用シリンダ57が動作されると、図15に示すようにアーム63等が上昇される。
(第6の工程)
次に、図15に示す旋回用シリンダ61の作動により、アーム63等が矢印方向に旋回され、図16に示すように、第1ストッパ66に第1位置決め部材68が当接されて、アーム63等が退避位置に停止される。
【0036】
図16に示すように、第6の工程において、アクチュエータ50が作動されてストッパピン49が側方の退避位置に移動されるとともに、ワーク搬送装置41の駆動機構46が作動されて、コンベアベルト45が1ピッチ分周回動作される。そして、搬入ステーションS1にある空状態の搬入用パレット47が搬出ステーションS2へ移動されるとともに、搬出ステーションS2にある加工済みワークWを保持した搬出用パレット47が下流側に搬送され、未加工ワークWを保持した別のパレット47が搬入ステーションS1に移動されて、停止される。そして、その停止に先立ってアクチュエータ50が作動されて、ストッパピン49が突出される。従って、各該パレット47が位置決めされた状態で停止される。このようにして、次の未加工及び加工済みワークWの搬入出動作に備えられる。
(割り出し動作)
上述した第6の工程の終了後に、ワーク位置切換機構21のインデックステーブル25が旋回され、搬入位置P1の未加工ニードルバルブ10が加工位置P2に移動されるとともに、加工位置P2の加工済みニードルバルブ10が搬出位置P3に移動される。その後、パレット47とインデックステーブル25との間で、ワークWの入れ換えが行われる。
(加工動作)
上述したワークWの入れ換え動作が行われている間に、切削機構部11の回転工具14,15が互いに接近する方向に移動され、図6及び図7に示すようにニードルバルブ10の小径部10d及び鍔部10eの外周面が上下二方向から切削され、溝部10fが形成される。(図17のタイミングチャート参照)
(実施形態の効果)
上記実施形態のワーク切削システムによれば、以下のような効果を得ることができる。
【0037】
(1)上記実施形態では、ニードルバルブ10のバルブ本体10aをクランプして、上下一対の回転工具14,15によって、ニードルバルブ10の小径部10d及び鍔部10eに二筋の溝部10fを同時に加工するようにしたので、二回に分けて加工する切削装置と比較して、溝部10fの加工能率を向上することができるとともに、持ち直しによって、加工位置がずれるようなことを防止できて、加工位置の精度を向上できる。又、ニードルバルブ10の鍔部10e(加工部)が回転工具14,15によって180°隔てた上下方向から挟まれるようにしているため、ニードルバルブ10の変形を防止して、溝部10fの加工精度を向上することができる。
【0038】
(2)上記実施形態では、インデックステーブル25を旋回してクランプ機構31を、搬入位置P1、加工位置P2及び搬出位置P3に順次位置切り換えするようにした。又、水平支持板53に昇降用シリンダ57によって昇降動作される昇降部材56を装着し、該昇降部材56に旋回用シリンダ61によって旋回されるアーム63を装着し、該アーム63に搬入用クランプ機構64及び搬出用クランプ機構65を装着した。さらに、ワーク搬送装置41のコンベアベルト45上に設定された搬入ステーションS1及び搬出ステーションS2に搬入用パレット47及び搬出用パレット47を搬送するようにした。そして、第1〜第6の工程で述べたように、搬入ステーションS1にある未加工ワークWのインデックステーブル25の搬入位置P1への搬入動作と、インデックステーブル25の搬出位置P3にある加工済みワークWの搬出動作とを、同期して行うようにした。このため、未加工ワークW及び加工済みワークWの搬入出動作を迅速に行うことができ、ワークWの搬入出動作の作業能率を向上することができる。
【0039】
(3)上記実施形態では、テーブル本体30の外周に上下方向に貫通する収容凹部30aを設け、該収容凹部30aの外周開口部をブラケット34によって閉塞し、該ブラケット34に固定クランプ部材35を取り外し可能に装着し、前記ブラケット34に固定したクランプ用シリンダ36のピストンロッド37に前記可動クランプ部材38を取り外し可能に装着した。このため、ブラケット34をテーブル本体30から分離するとともに、ブラケット34から固定クランプ部材35を分離し、ピストンロッド37から可動クランプ部材38を分離することにより、ワークWの種類が変更になった場合に、異なる規格の固定クランプ部材35及び可動クランプ部材38と容易に交換することができる。
【0040】
(4)上記実施形態では、加工位置P2にあるワークWを回転工具14,15によって切削する作業の間において、ワーク搬入出装置51による次の未加工ワークW及び加工済みワークWの搬入出動作を行うことができるので、ワークWの切削作業能率を向上することができる。
【0041】
(5)上記実施形態では、アーム63、搬入用クランプ機構64及び搬出用クランプ機構65を一つの昇降用シリンダ57によって昇降動作させるとともに、一つの旋回用シリンダ61によって旋回動作させる構成をとっている。このため、ワーク搬入出装置51の部品点数を低減して、製造及び組付作業を容易に行い、設置スペース及びコストを低減することができる。
【0042】
(6)上記実施形態では、搬入用クランプ機構64にシフト機構90を設け、クランプアーム89にクランプされたニードルバルブ10を、その軸線と交差する斜め方向にシフトするようにした。このため、インデックステーブル25に設けた位置規制部材39にニードルバルブ10の一端面を当接して、その位置を適正な加工位置にセットすることができる。又、搬出用クランプ機構65にシフト機構90を設けたことにより、位置規制部材39に接触されたニードルバルブ10を位置規制部材39から離隔した後、ニードルバルブ10を上昇させることができるので、位置規制部材39とニードルバルブ10の摺動接触を防止して、位置規制部材39及びニードルバルブ10の損傷を回避することができる。
(別の実施形態)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0043】
・回転工具として回転工具14,15に代えて、溝部10fを切削加工するためのフライス刃を用いてもよい。
・図示しないが、前記アーム63を二つに分割し、それぞれ旋回用シリンダ61によって独立して旋回するようにしてもよい。この場合には、ワーク搬送装置41の搬入ステーションS1、搬出ステーションS2の設置位置の自由度を向上することができる。
【0044】
・図示しないが、前記アーム63に対し、スライドテーブル71を水平方向に位置調節する機構を設けて、クランプ用シリンダ88の水平面内の位置を調整できるようにしてもよい。
【0045】
・搬入用保持機構及び搬出用保持機構として、クランプ用シリンダ88によって開閉動作されるクランプアーム89を用いたが、これに代えて、例えばワークを電磁石或いは真空吸着機構により保持するワーク保持機構を用いてもよい。
【0046】
・前記クランプ機構31に代えて、ワーク把持機構として例えば、電磁チャック、真空吸着機構あるいはその他の把持機構を用いてもよい。
・保持具48を設けることなく、各ステーションS1,S2のコンベアベルト45にワークWを直接支持するようにしてもよい。
【0047】
・搬入ステーションS1に未加工ワークWを搬入するワーク搬入機構と、搬出ステーションS2から加工済みワークを搬出するワーク搬出機構とを別々に配設してもよい。
・前記シフト機構90を省略してもよい。
【符号の説明】
【0048】
W…ワーク、P1…搬入位置、P2…加工位置、P3…搬出位置、S1…搬入ステーション、S2…搬出ステーション、14,15…回転工具、25…インデックステーブル、34,43…ブラケット、39…位置規制部材、41…ワーク搬送装置、63…アーム、90…シフト機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク把持機構によって棒状ワークの外周面を把持した状態で、前記棒状ワークの外周面の二箇所に、円盤状の一対の回転工具の外周面を互いに反対方向から接近させて、棒状ワークに同時に該ワークの軸線方向に沿って延びる二筋の溝を切り込むことを特徴とする棒状ワークの加工方法。
【請求項2】
棒状ワークの外周面を把持するワーク把持機構を備え、棒状ワークの外周面の二箇所に二筋の溝を同時に加工するための二つの円盤状の回転工具をワークを介して互いの反対側に配置し、前記回転工具の軸線は互いに平行をなし、該軸線は前記棒状ワークの軸線と直角をなしていることを特徴とする棒状ワークの加工装置。
【請求項3】
請求項2において、前記ワーク把持機構は、インデックステーブル上の三箇所に設けられ、インデックステーブルの割り出しに伴って、各ワーク把持機構は、ワークの搬入位置、加工位置及び搬出位置に順次割り付けられるように構成されている棒状ワークの加工装置。
【請求項4】
請求項3において、ワーク把持機構は、上下方向に開口するようにインデックステーブルに形成された貫通孔内に設けられ、この貫通孔の上下の開口から回転工具がワークに向かって進入されるように構成されている棒状ワークの加工装置。
【請求項5】
請求項4において、前記貫通孔は、インデックステーブルの外周面に開放され、貫通孔の開放部がブラケットにより閉塞され、前記貫通孔が形成され、前記ブラケットの内面には、ワークの外周面の片側をクランプするための第1クランプ部材が装着され、前記貫通孔の内面には、前記第1クランプ部材と対向するように第2クランプ部材が支持されていることを特徴とする棒状ワークの加工装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項において、前記インデックステーブルに隣接するようにワーク搬送装置を設けるとともに、インデックステーブルとワーク搬送装置との間にはアームをその中間部において旋回可能に配設し、該アームの両端部にはワークを着脱可能に保持する保持機構を設け、その保持機構の着脱動作及びアームの旋回動作により前記ワーク搬送装置の搬入ステーションにある未加工ワークを前記インデックステーブルの搬入位置にある把持機構に受け渡すとともに、インデックステーブルの搬出位置にある把持機構に把持された加工済みワークをワーク搬送装置の搬出ステーションに受け渡す搬出動作が行われるようにしたことを特徴とする棒状ワークの加工装置。
【請求項7】
請求項6において、前記アームの保持機構は、ワークをインデックステーブルの搬入位置にある把持機構に搬入する際に、ワークをシフトして、ワークの一端部をインデックステーブルに設けた位置規制部材に当接させて位置決めするためのシフト機構が設けられていることを特徴とする棒状ワークの加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2011−212768(P2011−212768A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81331(P2010−81331)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000152675)コマツNTC株式会社 (218)
【Fターム(参考)】