説明

棚、棚板および塵埃の捕捉方法

【課題】 クリーンルームで行われる半導体製造プロセス等において、棚に運搬容器を保管する際に塵埃が発生し、また他のエリアで運搬容器に付着した塵埃が落下して、同じ棚に保管されている他の運搬容器に付着する可能性があった。
【解決手段】 棚10は、クリーンルームで用いられるものであり、少なくとも1段の棚板11を有する。各棚板11は、所定の間隔Gをあけて上下に対向配置された上板部12と下板部13とを有している。上板部12は、空気を通過させる複数の開口部14を有している。下板部13は、少なくとも上板部12の開口部14に対向する部分に、塵埃を捕捉する塵埃捕捉部(粘着マット15)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体の製造プロセスなど、クリーンルームで行われる製造プロセスで使用される棚およびその棚板、並びに、棚に運搬容器を載置する際に発生する(または他のエリアから持ち込まれる)塵埃を捕捉する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体製品(例えばウエハ)などの電子部品の製造は、空気清浄度が管理されたクリーンルーム内で行われる。
【0003】
クリーンルーム内では、製品を収納する運搬容器(例えばウエハキャリア)を保管するため、棚(作業台も含む)が用いられる。棚は、例えば複数段の棚板を備えており、その棚板の上に運搬容器が載置される。
【0004】
ここで、運搬容器の外側に塵埃が付着すると、運搬容器の蓋を開けた際に、製品に塵埃が付着する可能性がある。例えばウエハに塵埃が付着すると、塵埃がマスクとなって回路パターンの形成不良や配線間のショートを生じ、また、塵埃上に絶縁膜が形成されることにより絶縁膜の膜厚の不均一を生じ、また、真空下で塵埃からアウトガスが発生することにより配線膜の変色を生じるなど、さまざまな製品不良につながる可能性がある。
【0005】
塵埃を除去するため、運搬容器を自動洗浄するコンテナ洗浄部を設けた保管棚が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−201506号公報(段落0035〜0039、図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術では、運搬容器の自動洗浄のための大掛かりなシステムが必要になるため、導入コストが高く、製造コストの上昇の原因となる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、製品への塵埃の付着を抑制することが可能な棚、棚板、および塵埃の捕捉方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る棚は、クリーンルームで用いられる棚であって、少なくとも1段の棚板を備え、各棚板が、所定の間隔をあけて上下に対向配置された上板部と下板部とを有し、上板部は、空気を通過させる複数の開口部を有し、下板部は、少なくとも上板部の複数の開口部に対向する部分に、塵埃を捕捉する塵埃捕捉部を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る棚板は、クリーンルームで用いられる棚の少なくとも1段を構成する棚板であって、所定の間隔をあけて上下に対向配置された上板部と下板部とを有し、上板部は、空気を通過させる複数の開口部を有し、下板部は、少なくとも上板部の複数の開口部に対向する部分に、塵埃を捕捉する塵埃捕捉部を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る塵埃の捕捉方法は、クリーンルームにおいて、少なくとも1段の棚板を有する棚であって、各棚板が、所定の間隔をあけて上下に対向配置された上板部と下板部とを有し、上板部が、空気を通過させる複数の開口部を有し、下板部が、少なくとも上板部の複数の開口部に対向する部分に、塵埃を捕捉する塵埃捕捉部を有する棚を用い、棚板に、製品を収納した運搬容器を載置し、塵埃捕捉部により、運搬容器から落下した塵埃を捕捉することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下板部の塵埃捕捉部によって塵埃を捕捉することができるため、運搬容器に塵埃が付着することを防止できる。そのため、運搬容器から更に製品に塵埃が付着することを防止し、製品不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の関連技術における棚の構成を示す斜視図である。
【図2】第2の関連技術における棚の構成を示す斜視図である。
【図3】第3の関連技術における棚の構成を示す斜視図である。
【図4】第4の関連技術における棚の構成を示す斜視図である。
【図5】図1に示した棚の使用状態を示す斜視図である。
【図6】運搬容器に付着した塵埃が製品に付着する様子を示す斜視図である。
【図7】運用容器と棚板との接触による発塵を抑制するための構成を示す斜視図である。
【図8】運用容器と棚板との接触による発塵を抑制するための構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における棚の構成を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における棚の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における上板部と下板部との組み合わせを説明するための模式図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態の変形例を示す斜視図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態における棚の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の各実施の形態について説明する前に、本発明の前提となる関連技術について説明する。これらの関連技術は、半導体製造プロセスなど、クリーンルームで行われる製造プロセスで用いられる棚に関する。
【0015】
図1は、第1の関連技術における棚40の構成を示す斜視図である。図1に示す棚40は、少なくとも1段(ここでは3段)のメッシュ棚板41を備えている。各メッシュ棚板41は、複数の棒状部材42を柵状(または網状)に組み合わせたものであり、隣り合う棒状部材42の間にスリット状の開口部43が形成されている。メッシュ棚板41は、上面視で略長方形であり、4本の支柱45により支持されている。
【0016】
図2は、第2の関連技術における棚50の構成を示す斜視図である。図2に示す棚50は、少なくとも1段(ここでは3段)のスノコ棚板51を備えている。各スノコ棚板51は、板状部材52の全面に亘って、互いに平行な複数のスリット状の開口部53を形成したものである。スノコ棚板51は、上面視で略長方形であり、4本の支柱55により支持されている。
【0017】
図3は、第3の関連技術における棚60の構成を示す斜視図である。図3に示す棚60は、少なくとも1段(ここでは2段)のパンチング棚板61を備えている。各パンチング棚板61は、板状部材62の全面に亘って、例えば円形の開口部63を形成したものである。パンチング棚板61は、上面視で略長方形であり、4本の支柱65により支持されている。
【0018】
図4は、第4の関連技術における棚70の構成を示す斜視図である。図4に示す棚70は、少なくとも1段(ここでは3段)のベタ棚板71を備えている。各ベタ棚板71は、板状部材に開口部を形成していないものである。ベタ棚板71は、上面視で略長方形であり、4本の支柱75により支持されている。図1〜図4に示した棚板41,51,61,71は、いずれもステンレスで形成されている。
【0019】
半導体製造が行われるクリーンルームでは、フィルタを通過させた清浄な空気(クリーンエア)を、必要なエリアにダウンフロー(F)として供給しているため、図4に示すようなベタ棚板71を使用した棚70では、ベタ棚板71の上側に気流溜まり72が生じ、ベタ棚板71の下側には気流の巻き込み73が生じる。これに対し、図1〜3に示した棚40,50,60は、空気を通過させる開口部43,53,63を有しているため、気流溜まりが生じにくいという利点がある。
【0020】
図5は、図1に示した棚40の使用状態を示す図である。ここでは、棚40の棚板41上に、製品(例えばウエハ)を収容した運搬容器1(例えばウエハキャリア)を載置して保管している。棚板41には開口部43が多数形成されているため、上段から下段にダウンフローFの空気が流れる。
【0021】
そのため、作業者が運搬容器1を棚板41上に載置する際には、運搬容器1と棚板41との接触により発生する塵埃、および作業者自身が発生する塵埃(以下、これらをまとめて、運搬容器1の取り扱い時に発生する塵埃と称する)、並びに他のエリアから運搬容器1に付着して持ち込まれた塵埃(いずれも符号3で示す)が、棚板41の開口部43を通過して、符号81で示すように下段の棚板41上の運搬容器1に降りかかる可能性がある。
【0022】
また、取り扱い中の運搬容器1の真下に他の運搬容器1が無い場合でも、運搬容器1の取り扱い時に発生した塵埃3や、他のエリアから運搬容器1に付着して持ち込まれた塵埃3は、クリーンルームの床(グレーチング101)等に設置されているプレフィルタ102で捕捉されるまでの間は、クリーンルーム内で漂い、作業者や台車103などの移動に伴う気流の乱れ104によって巻き上がるため、符号82で示すように、運搬容器1に付着する可能性がある。
【0023】
ここでは、図1の棚40について説明したが、図2および図3の棚50,60についても、同様のことが言える。
【0024】
このようにして運搬容器1に付着した塵埃3は、図6に模式的に示すように、運搬容器1の蓋1Aを開けた際に、運搬容器1内の製品2(ウエハ)に付着する可能性がある。製品2に塵埃3が付着すると、後工程において、塵埃3がマスクとなって回路パターンの形成不良や配線間のショートを生じ、また、塵埃3上に絶縁膜が形成されることにより絶縁膜の膜厚の不均一を生じ、また、真空下で塵埃3からアウトガスが発生することにより配線膜の変色を生じるなど、さまざま製品不良につながる可能性がある。
【0025】
図7および図8は、運用容器1と棚板との接触による発塵を抑制するための構成を示す。図7に示す構成は、図4に示した棚70の棚板71上に、運搬容器1との接触により発塵を生じにくい材質で形成された板(またはシート)76を敷いたものである。
【0026】
図8に示す構成は、図1に示した棚40のメッシュ棚板41に、運搬容器1との接触面積を少なくして発塵量を減少させるためのコマ46を置いたものである。コマ46は、例えば、運搬容器1の下面の4隅に配置される。
【0027】
また、棚板の上に溜まった塵埃3を、ワイパーやセントラルクリーナ方式(屋外排気)の真空掃除機などを使用して定期的に除去することも考えられる。
【0028】
このような構成(図7,8)は、運搬容器1と棚板41,71との接触による発塵量を減少させることはできるが、塵埃3の発生自体を防止することはできない。また、棚板上に溜まった塵埃3を真空掃除機などで除去したとしても、塵埃3のない清浄な状態を維持することは難しい。そのため、塵埃3が製品2に付着することによる上述した各問題を解消するには至らない。
【0029】
以上を踏まえ、本発明の各実施の形態について、以下に説明する。
【0030】
第1の実施の形態.
図9は、本発明の第1の実施の形態における棚10を示す斜視図である。図9に示す棚10は、製品を収納した運搬容器1を載置するための棚板11を備えている。ここでは、上下に3段の棚板11を備えているが、段数は任意であり、1段であってもよい。各棚板11は、上面視で略長方形であり、4本の支柱17によって支持されている。各棚板11は、所定の間隔をあけて上下に対向配置された上板部12と下板部13とを有している。
【0031】
上板部12は、ここでは、複数の棒状部材12bを組み合わせたメッシュ棚板とする。メッシュ棚板12の隣り合う棒状部材12bの間に、スリット状の開口部12aが形成される。但し、メッシュ棚板の代わりに、スリット状の開口部を有するスノコ棚板や(図2参照)、円形の開口部を有するパンチング棚板(図3参照)などを用いてもよい。
【0032】
上板部12は、その上に、所定の数(図9の例では3個)の運搬容器1を保持するものである。そのため、上板部12は、運搬容器1を支持するのに十分な強度を有し、なお且つ、運搬容器1との接触による発塵ができるだけ少ない材質で構成される。
【0033】
運搬容器1の材質がポリプロピレンである場合、上板部12をポリテトラフルオロエチレン(テフロン:登録商標)で構成すると、運搬容器1と上板部12との接触による発塵は殆ど発生しないが、静電対策を施す必要がある。一方、上板部12を運搬容器1と同様の静電対策品のポリプロピレンで構成すると、テフロンで構成した場合より発塵はあるが、接触による帯電が生じにくい。また、発塵抑制の観点から、上板部12は、運搬容器1との接触部の面粗さが滑らかで、角がない形状であることが好ましい。
【0034】
一方、下板部13は、支持板14の表面に、塵埃3を捕捉するための粘着マット15(塵埃捕捉部)を設けたものである。支持板14は、粘着マット15を支持する強度を有するものであれば、ベタ棚板であってもよく、また、メッシュ棚板、スノコ棚板、あるいはパンチング棚板であってもよい。なお、支持板を使用しない場合には、板部12の裏側に直接粘着マットを貼り付けてもよい。
【0035】
粘着マット15は、塵埃3を効果的に捕捉できるよう、例えば180gf/25mm±40g程度の粘着力を有することが好ましい。また、運搬容器1に静電気の影響を及ぼさないように、粘着マット15の表面抵抗が例えば10〜1010Ω程度であることが好ましい。このような粘着マット15としては、例えば、一般にクリーンルームの床などに敷いて用いられる静電対策用の粘着マットを利用することができる。
【0036】
具体的には、粘着マット15は、例えば、ポリエチレンフィルムに水系の接着剤(2エチルヘキシル・アクリル酸塩30%、ブチル・アクリル酸塩9%、酢酸ビニル3%および水)を塗布したものを、複数層(例えば30〜40層)重ね合わせたものを用いることができる。各フィルム(すなわち1層分)の厚さは、例えば50μmである。
【0037】
このような粘着マット15はフィルムを一枚ずつ剥がすことができるため、塵埃3の堆積状況に応じて、最上層のフィルムを剥がし、新しいフィルムを露出させて使用することができる。
【0038】
粘着マット15は、最下層のフィルムが両面に粘着性を有しており、下面の保護フィルムを剥がすことで、支持板14上に固定することができる。なお、粘着マット15の30〜40層を数枚ずつに分けて使用する場合には、両面テープやセロファンテープを用いて支持板14に固定してもよい。あるいは、エラストマー樹脂などの両面接着シートを用いれば、同じ両面接着シートを繰り返し利用することができる。
【0039】
なお、粘着マット15は、塵埃3を捕捉できるものであればよく、上記の静電対策用の粘着マットに限定されるものではない。また、接着剤として、例えばトルエンを使用しているものであってもよい。
【0040】
上板部12と下板部13の間隔Gは、短い方が好ましい。塵埃3が浮遊してから粘着マット15で捕捉するまでの時間が短くなり、気流の乱れの影響を受けにくくなるためである。
【0041】
図9に示す例では、粘着マット15を、下板部13の支持板14上に前方(矢印Aで示す方向)から挿入するが、この場合には、上板部12と下板部13との間隔Gは、例えば3cm程度が好ましい。一方、下板部13の支持板14が棚10から引き出し可能に構成されている場合には、支持板14を引き出した状態で粘着マット15を取り付けることができるため、間隔Gは3cmよりも狭くてもよい。
【0042】
棚10が配置されるクリーンルームでは、例えば風速0.3m/秒のダウンフロー(F)が形成されており、塵埃3を落下させて、クリーンルームの床に配設されたプレフィルタ102(図5)で捕捉するようになっている。
【0043】
そのため、作業者が運搬容器1を棚板11の上板部12に載置する際に、運搬容器1と上板部12との接触により発生する塵埃3、および作業者自身が発生する塵埃3(これらをまとめて、運搬容器1の取り扱い時に発生する塵埃と称する)、並びに他のエリアから運搬容器1に付着して持ち込まれた塵埃3が落下する。しかしながら、本実施の形態では、上板部12の開口部12aから落下した塵埃3は、下板部13の粘着マット15の表面に捕捉される。そのため、下段の運搬容器1に塵埃3が降りかかることが防止される。
【0044】
また、粘着マット15に捕捉された塵埃3は、粘着マット15の粘着力により移動しにくいため、作業者や台車103(図5)などの移動に伴う気流の乱れ104(図5)の影響を受ける塵埃3は、運搬容器1から落下してから粘着マット15に捕捉されるまでの僅かな量の塵埃3(すなわち間隔Gの区間を落下している塵埃3)のみである。そのため、気流の乱れによって塵埃3が運搬容器1や製品2に付着する可能性が大幅に低減する。
【0045】
このように運搬容器1への塵埃3の付着を防止することができるため、運搬容器1に付着した塵埃3が更に製品2に付着して生じる製品不良(回路パターンの形成不良、配線間のショート、絶縁膜厚の不均一等)を防止することができる。
【0046】
なお、粘着マット15上に塵埃3が堆積すると、その塵埃3の上に落下した塵埃3は粘着マット15で捕捉されずに飛散する可能性があるため、定期的に粘着マット15の最上層のフィルムを剥がし、次のフィルムを露出させる必要がある。このメンテナンス周期は、使用する環境(発塵量)や、粘着マット15上の塵埃3の付着状況に応じて決定する。
【0047】
また、粘着マット15は空気を通過させないため、粘着マット15の上下に気流溜まり18が発生する可能性があるが、塵埃3は粘着マット15に捕捉されるため、気流溜まりによって塵埃3が浮遊することが防止される。
【0048】
また、作業時に発生する塵埃3は、通常は感知(例えば視認)できないが、粘着マット15を設けることにより、付着した塵埃3が視認できるようになる。そのため、「塵埃の見える化」が可能になり、作業者の発塵に対する認識を向上させることができる。また、通常状態での塵埃の付着量を把握することで、これよりも多い量の塵埃の付着が見られた場合に、何らかの異常の可能性を検知することができる。また、粘着マット15に捕捉された塵埃3は、発塵の対策や改善のための調査用サンプルとして活用することができる。
【0049】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、棚板11を、上板部12と下板部13とで構成すると共に、上板部12に空気を通過させる開口部12aを設け、下板部13に粘着マット15(塵埃保持部)を設けたため、運搬容器1の取り扱い時に発生した塵埃3や、他のエリアから運搬容器1に付着して持ち込まれた塵埃3を、粘着マット15で捕捉することができる。その結果、運搬容器1(および運搬容器1に収納された製品2)への塵埃3の付着を防止することができ、製品不良の低減に資することができる。
【0050】
なお、ここでは、塵埃3を捕捉するために粘着マット15を用いたが、粘着マット15に限らず、塵埃3を吸着等により捕捉できるものであればよい。
【0051】
また、ここでは、下板部13の全面に粘着マット15を設けたが、下板部13のうち、上板部12の開口部12aに対向する部分にのみ部分的に粘着マット15を設けてもよい。このような構成であっても、上板部12の開口部12aから落下した塵埃3を捕捉することができる。
【0052】
また、粘着マット15の代わりに、プレフィルタのように、空気を通過させて塵埃3を捕捉する構造を有するものを用いてもよい。風速0.3m/秒のダウンフローにより落下する塵埃3を捕捉する場合、プレフィルタは、例えば孔径が数十μm〜数百μmの細孔を有し、5mm程度の厚みを有していればよい。プレフィルタは、塵埃3を捕捉することができるだけでなく、空気を通過させるため、気流溜まり18(図9)が生じにくいという利点がある。
【0053】
第2の実施の形態.
図10は、本発明の第2の実施形態における棚20を示す斜視図である。棚20は、製品を収納した運搬容器1を載置するための棚板21を備えている。ここでは、上下に2段の棚板21を備えているが、段数は任意であり、1段であってもよい。各棚板21は、上板部22と下板部23とで構成されている。また、各棚板21は、上面視で略長方形であり、4本の支柱27によって支持されている。
【0054】
上板部22は、板状部材の全面に亘って、例えば円形の開口部24を形成したパンチング棚板で形成されており、運搬容器1を支持するのに十分な強度を有している。一方、下板部23も、板状部材の全面に亘って、例えば円形の開口部25を形成したパンチング棚板で形成されている。但し、下板部23の開口部25は、上板部22の開口部24に対してずれた位置に形成されている。そのため、上板部22の開口部24から落下した塵埃3は、下板部23の開口部25以外の部分26に当接して、そこに留まる。この下板部23の開口部25以外の部分26(上板部22の開口部23に対向する部分)が、第2の実施の形態における塵埃捕捉部を構成する。
【0055】
図11は、上板部22と下板部23との組み合わせを説明するための模式図である。上板部22および下板部23は、図11(A)に示すように、互いに同じ直径の開口部24,25を同じ配列パターンで形成したものである。例えば、上板部22を、下板部23に対して相対的に180度回転させることにより、図11(C)に示すように、上板部22の開口部24の位置と下板部23の開口部25の位置とがずれた配置が得られる。
【0056】
ここでは、上板部22および下板部23の開口部24,25の直径(内径)を5mmとし、配列ピッチを13mmとする。なお、開口部24,25の直径や配列ピッチがこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0057】
上板部22と下板部23とを同じ構成にすることで、棚板21を効率よく製造することができるため、棚20の製造コストを低減することができる。他の構成は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0058】
本実施の形態では、図10に示すように、運搬容器1の取り扱い時に発生する塵埃3や、他のエリアから運搬容器1に付着して持ち込まれた塵埃3が、上板部22の開口部24から落下すると、下板部23の開口部25以外の部分26に当接して、そこに留まる。そのため、下段の棚板21に置かれた運搬容器1に塵埃3が降りかかることが防止される。
【0059】
また、上板部22および下板部23が、空気を通過させる開口部24,25を有しているため、気流溜まり18(図9)が生じにくい。
【0060】
なお、下板部23(開口部25以外の部分26)の上には塵埃3が堆積するため、その堆積状況に応じて、真空掃除機等により除去することが好ましい。
【0061】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、棚板21を、何れも開口部を有する上板部22と下板部23とで構成し、上板部22と下板部23とを、互いの開口部24,25の位置がずれるように配置したため、運搬容器1の取り扱い時に発生した塵埃3、または他のエリアから運搬容器1に付着して持ち込まれた塵埃3を、下板部23の開口部25以外の部分26で捕捉することができる。これにより、下段の運搬容器1への塵埃3の付着を防止し、製品不良の低減に資することができる。
【0062】
なお、ここでは、上板部22および下板部23が、円形の開口部24,25を有する場合について説明したが、上板部22および下板部23の開口部の位置が互いにずれていれば、例えばスリット状の開口部であってもよい。
【0063】
変形例.
図12は、第2の実施の形態の変形例に係る棚20Aを示す斜視図である。この変形例の棚20Aでは、下板部23の開口部25の周囲に、塵埃飛散防止用の縁28が形成されている。また、下板部23の外周縁に沿って、縁29が形成されている。縁28,29の高さは、例えば1mm程度である。このように縁28,29を形成することにより、下板部23の開口部25以外の部分26上に留まった塵埃3が、気流の影響により飛散して開口部25から落下し、下段に置かれた運搬容器1に付着することが防止される。
【0064】
第3の実施の形態.
図13は、第3の実施の形態における棚30を示す斜視図である。第3の実施の形態における棚30は、第1の実施の形態で説明した粘着マットと、第2の実施の形態で説明した構成とを組み合わせたものである。
【0065】
棚30は、製品を収納した運搬容器1を載置するための棚板31を備えている。ここでは、上下に2段の棚板31を備えているが、段数は任意であり、1段であってもよい。各棚板31は、上板部32と下板部33とで構成されている。また、各棚板31は、上面視で略長方形であり、4本の支柱37によって支持されている。
【0066】
上板部32は、板状部材の全面に亘って円形の開口部34を形成したパンチング棚板で形成されており、運搬容器1を支持するのに十分な強度を有している。
【0067】
一方、下板部33は、板状部材の全面に亘って円形の開口部を形成したパンチング棚板(支持板38)の表面に、粘着マット35(塵埃捕捉部)を取り付けたものである。粘着マット35は、第1の実施の形態で説明した粘着マット15(図9)とほぼ同様であるが、粘着マット35の全面に亘って開口部36が形成されている点が異なる。粘着マット35の開口部36は、支持板38の開口部と同じ形状、同じ大きさで、なお且つ互いに重なり合うように形成されている。
【0068】
粘着マット35の開口部36は、上板部32の開口部34に対してずれた位置に形成されている。上板部33と下板部34の開口部34,36の関係は、第2の実施の形態における上板部22と下板部23の開口部24,25の関係と同様である。他の構成は、第2の実施の形態において説明したとおりである。
【0069】
本実施の形態では、運搬容器1の取り扱い時に発生した塵埃3や、運搬容器1に付着して持ち込まれた塵埃3が、上板部32の開口部34から落下すると、下板部33の粘着マット35によって捕捉されるため、下段の運搬容器1に塵埃3が降りかかることが防止される。加えて、粘着マット35の粘着力により塵埃3を捕捉することで、塵埃3の飛散防止効果をさらに向上することができる。
【0070】
また、上板部32および下板部33が、開口部34,36を有するため、気流溜まり18(図9)が生じにくい。さらに、仮に気流溜まり18(図9)が生じても、粘着マット35により塵埃3を捕捉できるため、運搬容器1や製品2への付着を防止することができる。
【0071】
なお、ここでは、上板部32および下板部33が、円形の開口部34,36を有する場合について説明したが、上板部32および下板部33の開口部の位置が互いにずれていれば、例えばスリット状の開口部であってもよい。
【0072】
上述した実施の形態1〜3では、製品2を収納した運搬容器1を保管するための棚10,20,20A,30について説明したが、本発明は、製品の組み立て等を行う作業台に適用することもできる。この場合には、作業台の作業面(上面)をなす部分を、各実施の形態で説明した上板部と下板部で構成すればよい。なお、本明細書では、作業台も含む概念として「棚」という語を使用している。
【0073】
また、上述した実施の形態1〜3は、半導体の製造プロセスに限らず、例えば、液晶やプラズマディスプレイなどの電子部品の製造プロセスにも適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 運搬容器、 1A 蓋、 2 製品、 3 塵埃、 10 棚、 11 棚板、 12 上板部、 12a 開口部、 13 下板部、 14 支持板、 15 粘着マット(塵埃捕捉部)、 17 支柱、 18 気流溜まり、 20,20A 棚、 21 棚板、 22 上板部、 23 下板部、 24,25 開口部、 26 開口部以外の部分(塵埃捕捉部)、 27 支柱、 28,29 縁、 30 棚、 31 棚板、 32 上板部、 33 下板部、 34,36 開口部、 35 粘着マット(塵埃捕捉部)、 37 支柱、 38 支持板、 101 グレーチング、 102 プレフィルタ、 103 台車、 104 気流。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルームで用いられる棚であって、
少なくとも1段の棚板を備え、
各棚板が、所定の間隔をあけて上下に対向配置された上板部と下板部とを有し、
前記上板部は、空気を通過させる複数の開口部を有し、
前記下板部は、少なくとも前記上板部の前記複数の開口部に対向する部分に、塵埃を捕捉する塵埃捕捉部を有すること
を特徴とする棚。
【請求項2】
前記棚は、半導体製造プロセスにおいて、製品を収容した運搬容器の保管に用いられることを特徴とする請求項1に記載の棚。
【請求項3】
前記塵埃捕捉部は、粘着性を有する部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の棚。
【請求項4】
前記粘着性を有する部材は、粘着マットであることを特徴とする請求項3に記載の棚。
【請求項5】
前記粘着マットは、剥離可能な複数層のフィルムを重ね合わせて構成されていることを特徴とする請求項4に記載の棚。
【請求項6】
前記塵埃捕捉部は、空気は通過させるが、塵埃を捕捉する構造を有する部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の棚。
【請求項7】
前記塵埃捕捉部は、プレフィルタであることを特徴とする請求項6に記載の棚。
【請求項8】
前記下板部は、前記上板部の複数の開口部と重なり合わない位置に形成された複数の開口部を有し、
前記下板部の前記複数の開口部以外の部分が、前記塵埃捕捉部を構成することを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の棚。
【請求項9】
前記上板部および前記下板部は、互いに同一のパターンで配列された複数の開口部を有する2つの板状部材を、相対的に180度回転させて配置したものであることを特徴とする請求項8に記載の棚。
【請求項10】
前記下板部の前記複数の開口部のそれぞれの周囲に、所定の高さの縁部を設けたことを特徴とする請求項8または9に記載の棚。
【請求項11】
クリーンルームで用いられる棚の少なくとも1段を構成する棚板であって、
所定の間隔をあけて上下に対向配置された上板部と下板部とを有し、
前記上板部は、空気を通過させる複数の開口部を有し、
前記下板部は、少なくとも前記上板部の前記複数の開口部に対向する部分に、塵埃を捕捉する塵埃捕捉部を有すること
を特徴とする棚板。
【請求項12】
前記棚板は、半導体製造プロセスにおいて、製品を収容した運搬容器の保管に用いられることを特徴とする請求項11に記載の棚板。
【請求項13】
前記塵埃捕捉部は、粘着性を有する部材であることを特徴とする請求項11または12に記載の棚板。
【請求項14】
前記粘着性を有する部材は、粘着マットであることを特徴とする請求項13に記載の棚板。
【請求項15】
前記粘着マットは、剥離可能な複数層のフィルムを重ね合わせて構成されていることを特徴とする請求項14に記載の棚板。
【請求項16】
前記塵埃捕捉部は、空気は通過させるが、塵埃を捕捉する構造を有する部材であることを特徴とする請求項11または12に記載の棚板。
【請求項17】
前記塵埃捕捉部は、プレフィルタであることを特徴とする請求項16に記載の棚板。
【請求項18】
前記下板部は、前記上板部の複数の開口部と重なり合わない位置に形成された複数の開口部を有し、
前記下板部の前記複数の開口部以外の部分が、前記塵埃捕捉部を構成することを特徴とする請求項11から17までのいずれか1項に記載の棚板。
【請求項19】
前記上板部および前記下板部は、互いに同一のパターンで配列された複数の開口部を有する2つの板状部材を、相対的に180度回転させて配置したものであることを特徴とする請求項18に記載の棚板。
【請求項20】
前記下板部の前記複数の開口部のそれぞれの周囲に、所定の高さの縁部を設けたことを特徴とする請求項18または19に記載の棚板。
【請求項21】
クリーンルームにおいて、
少なくとも1段の棚板を有する棚であって、各棚板が、所定の間隔をあけて上下に対向配置された上板部と下板部とを有し、前記上板部が、空気を通過させる複数の開口部を有し、前記下板部が、少なくとも前記上板部の前記複数の開口部に対向する部分に、塵埃を捕捉する塵埃捕捉部を有する棚を用い、
前記棚板に、製品を収納した運搬容器を載置し、
前記塵埃捕捉部により、前記運搬容器から落下した塵埃を捕捉すること
を特徴とする塵埃の捕捉方法。
【請求項22】
前記塵埃の捕捉方法は、半導体製造プロセスにおいて行われることを特徴とする塵埃の請求項21に記載の塵埃の捕捉方法。
【請求項23】
前記塵埃捕捉部として、粘着性を有する部材を用いることを特徴とする請求項21または22に記載の塵埃の捕捉方法。
【請求項24】
前記粘着性を有する部材として、粘着マットを用いることを特徴とする請求項23に記載の塵埃の捕捉方法。
【請求項25】
前記粘着マットとして、剥離可能な複数層のフィルムを重ね合わせたものを用いることを特徴とする請求項24に記載の塵埃の捕捉方法。
【請求項26】
前記塵埃捕捉部として、空気は通過させるが、塵埃を捕捉する構造を有する部材を用いることを特徴とする請求項21または22に記載の塵埃の捕捉方法。
【請求項27】
前記塵埃捕捉部として、プレフィルタを用いることを特徴とする請求項26に記載の塵埃の捕捉方法。
【請求項28】
前記下板部は、前記上板部の複数の開口部と重なり合わない位置に形成された複数の開口部を有し、
前記下板部の前記複数の開口部以外の部分が、前記塵埃捕捉部を構成することを特徴とする請求項21から27までのいずれか1項に記載の塵埃の捕捉方法。
【請求項29】
前記上板部および前記下板部は、互いに同一のパターンで配列された複数の開口部を有する2つの板状部材を、相対的に180度回転させて配置したものであることを特徴とする請求項28に記載の塵埃の捕捉方法。
【請求項30】
前記下板部の前記複数の開口部のそれぞれの周囲に、所定の高さの縁部を設けたことを特徴とする請求項28または29に記載の塵埃の捕捉方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−71816(P2013−71816A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212410(P2011−212410)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】