説明

椅子型マッサージ機

【課題】 1基の駆動源によって、被施療者のリラックスした姿勢を維持したまま、背凭れ部と座部のリクライニングを行ない、且つリクライニング中に衝撃や衝撃音が発生することのない椅子型マッサージ機を提供する。
【解決手段】 リンク機構でもって、背凭れ部20を起立状態から傾倒状態まで揺動させるときに、座部30前端が途中までは上昇してその後下降する構成とし、リンク機構を構成するリンク片55,57同士を接続する枢軸74と、該枢軸の外周に嵌めこまれ、両リンク片の枢軸の周囲の相対する面同士に対して、枢軸方向の互いに反発し合う力を与える弾性体(90)とを具え、弾性体により、両リンク片の枢軸と直行する方向の動きに規制を与えて、座部前端が上昇から下降に転ずる際の枢軸周りのがたつきを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れ部と座部をリクライニング可能な椅子型マッサージ機に関するものであり、具体的には、1基の駆動源によって、被施療者のリラックスした姿勢を維持したまま、背凭れ部と座部のリクライニングを行なうことができる椅子型マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マッサージ手段を具えた背凭れ部及び座部をリクライニング可能とした椅子型マッサージ機が知られている。例えば、特許文献1では、背凭れ部及び座部に夫々独立した駆動源を具えたリクライニング機構を有し、背凭れ部及び座部を夫々独立してリクライニング可能としている。
【特許文献1】特開2003−289975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背凭れ部及び座部に夫々独立した駆動源を配備すると、リクライニング機構が大型化、複雑化し、これに伴って、椅子型マッサージ機が大型化、制御等の複雑化を招く。また、複数の駆動源を具えたリクライニング機構の場合、各駆動源のバラツキや、駆動源に加わる負荷の違い等によって、背凭れ部と座部を同期して目標角度まで到達させることが難しく、一方が目標角度まで到達した後に、遅れて他方が目標角度に到達するような不自然な動きとなることがある。
【0004】
そこで出願人は、1基の駆動源によって、背凭れ部と座部がリクライニングできるマッサージ機を既に提案している(特願2007−187887)。このマッサージ機は、背凭れ部を起立状態から中間状態を介して傾倒状態まで揺動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで揺動する際には、座部前端が上昇するよう傾倒させ、背凭れ部が中間状態から傾倒状態まで移動する際には、上昇した座部前端を下げるよう傾倒させるようにしている。
【0005】
従ってこのマッサージ機では、リクライニング機構の駆動源を1基とすることで、リクライニング機構が大型化、複雑化することはなく、また、バラツキのない安定したリクライニング動作を行なうことができるのであるが、座部の前端が、上昇から下降に転ずるとき、リンク機構のがたつきに基づいて、「カック」という衝撃が使用者に伝わり、また「カッチ」という衝撃音が発生するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、1基の駆動源によって、被施療者のリラックスした姿勢を維持したまま、背凭れ部と座部のリクライニングを行なうことができると共に、リクライニング中に衝撃や衝撃音が発生することのない椅子型マッサージ機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に記載の椅子型マッサージ機は、
被施療者の背中の当たる背凭れ部と、被施療者が腰掛ける座部と、背凭れ部及び座部を揺動させるリクライニング機構とを具える椅子型マッサージ機において、
リクライニング機構は、1基の駆動源を具え、該駆動源は、リンク機構を介して背凭れ部及び座部に連繋されており、
リンク機構は、駆動源を動作させることで、背凭れ部を起立状態から中間状態を介して傾倒状態まで揺動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで揺動する際には、座部前端が上昇するよう傾倒させ、背凭れ部が中間状態から傾倒状態まで移動する際には、上昇した座部前端を下げるよう傾倒させる構成とし、
さらにリンク機構を構成するリンク片同士を接続する枢軸と、該枢軸の外周に嵌めこまれ、両リンク片の枢軸の周囲の相対する面同士に対して、枢軸方向の互いに反発し合う力を与える弾性体とを具え、
前記弾性体により、両リンク片の枢軸と直行する方向の動きに規制を与えて、座部前端が上昇から下降に転ずる際の枢軸周りのがたつきを防止したものである。
【0008】
また本発明の請求項2に記載の椅子型マッサージ機は、
被施療者の背中の当たる背凭れ部と、被施療者が腰掛ける座部と、背凭れ部及び座部を揺動させるリクライニング機構とを具える椅子型マッサージ機において、
リクライニング機構は、1基の駆動源を具え、該駆動源は、背凭れ部又は座部の一方に連繋され、駆動源が連繋された背凭れ部又は座部を揺動可能に支持しており、
背凭れ部と座部は、関節部を有するリンク機構により接続され、該リンク機構中の関節部は、ガイドレールに沿って移動可能である構成を有しており、
該ガイドレールは、駆動源を動作させることで、背凭れ部又は座部の揺動に連繋して、リンク機構の前記関節部がガイドレールに沿って移動することで、背凭れ部を起立状態から中間状態を介して傾倒状態まで揺動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで揺動する際には、座部前端が上昇するよう傾倒させ、背凭れ部が中間状態から傾倒状態まで移動する際には、上昇した座部前端を下げるように傾倒させる屈曲形状のガイド面を有する構成とし、
さらに前記関節部を構成するリンク片同士を接続する枢軸と、該枢軸の外周に嵌めこまれ、両リンク片の枢軸の周囲の相対する面同士に対して、枢軸方向の互いに反発し合う力を与える弾性体とを具え、
前記弾性体により、両リンク片の枢軸と直行する方向の動きに規制を与えて、座部前端が上昇から下降に転ずる際の枢軸周りのがたつきを防止したものである。
【0009】
また本発明の請求項3に記載の椅子型マッサージ機は、
ベース部に、被施療者の背中の当たる背凭れ部と、被施療者が腰掛ける座部と、背凭れ部及び座部を揺動させるリクライニング機構とを具える椅子型マッサージ機において、
リクライニング機構は、1基の駆動源を具え、該駆動源は、背凭れ部又は座部の一方に連繋され、駆動源が連繋された背凭れ部又は座部を揺動可能に支持しており、
駆動源が連繋された背凭れ部又は座部には、リンク片の一端が枢支されており、該リンク片の他端は、ベース部に枢支されたカム体であって、該カム体の一部が、駆動源の連繋されていない背凭れ部又は座部に当接するカム面を有するカム体に枢支された構成を有しており、
前記カム面は、駆動源を動作させることで、リンク片を介して、カム体を回転させることで、背凭れ部を起立状態から中間状態を介して傾倒状態まで揺動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで揺動する際には、座部前端が上昇するよう傾倒させ、背凭れ部が中間状態から傾倒状態まで移動する際には、上昇した座部前端を下げるように傾倒させる形状とし、
さらに前記リンク片の他端と前記カム体とを接続する枢軸と、該枢軸の外周に嵌めこまれ、リンク片及びカム体の枢軸の周囲の相対する面同士に対して、枢軸方向の互いに反発し合う力を与える弾性体とを具え、
前記弾性体により、リンク片及びカム体の枢軸と直行する方向の動きに規制を与えて、座部前端が上昇から下降に転ずる際の枢軸周りのがたつきを防止したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至請求項3の発明の何れの椅子型マッサージ機においても、リクライニング機構の駆動源を1基とすることで、リクライニング機構が大型化、複雑化することはなく、また、バラツキのない安定したリクライニング動作を行なうことができる。
【0011】
また、背凭れ部が起立状態から中間状態まで揺動する際には、座部前端が上昇し、背凭れ部が中間状態から傾倒状態まで移動する際には、上昇した座部前端を下げているので、被施療者のリラックスした姿勢を維持したまま、背凭れ部と座部のリクライニングを行なうことができる。
【0012】
さらに、座部前端が上昇から下降に転ずる際の枢軸周りのがたつきを防止して、リクライニング中にリンク機構のがたつきによる衝撃や衝撃音が発生することはなく、気持ち良く使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の椅子型マッサージ機(10)の3つの基本形態について、図面を参照しながら説明を行なう。
〈基本形態1〉
まず、椅子型マッサージ機(10)の全体構成の概略について説明する。図1に示すように、椅子型マッサージ機(10)は、床面に載置されるベース部(12)に、被施療者の腰掛ける座部(30)と、背中の当たる背凭れ部(20)を軸支(90)して構成され、後述するリクライニング機構(40)によって揺動可能となっている。
【0014】
背凭れ部(20)は、背凭れ部フレーム(22)の外周にクッション(23)等を装着して構成され、内部には、被施療者の肩、背中、腰等をマッサージするマッサージ手段(24)が昇降ユニット(25)によって昇降可能に配備される。
【0015】
座部(30)は、座部フレーム(32)の外周にクッション(33)等を装着して構成され、必要に応じて、内部にエアバッグ等のマッサージ手段(図示せず)が配備される。座部(30)の先端には、被施療者の脚を載せる脚部(38)を装着することができ、図1では、座部(30)と脚部(38)を一体に形成しているが、別体にして、脚部(38)をふくらはぎや足先をマッサージする足用マッサージユニットとしてもよいし、脚部(38)は座部(30)に対して揺動可能な構成とすることもできる。
【0016】
リクライニング機構(40)は、駆動源(42)とリンク機構(50)を具える。本発明では、リクライニング機構(40)は、1基の駆動源(42)によって、背凭れ部(20)と座部(30)の両方をリクライニング可能に動作させることを特徴としており、さらに、背凭れ部(20)と座部(30)は、被施療者がリラックスした姿勢を維持しつつ、リクライニングを行なうことができるようにしている。
【0017】
ここで、被施療者がリラックスした姿勢とは、被施療者が座部(30)に腰掛けて、背凭れ部(20)に背中を当てた状態で、背凭れ部(20)を後傾させる際に、被施療者の身体に負担が掛からない、即ち、局部的に力が掛かったり無理な姿勢とならない状態を意味する。背凭れ部(20)を後傾させる際に、座部(30)を傾動させることなく、単に背凭れ部(20)のみを傾動させると、背凭れ部(20)の後傾の際に、被施療者の腹筋や腰に無理な力が掛かり、マッサージ効果を減退させることがある。
【0018】
そこで、本発明では、被施療者がリラックスした状態を維持したまま、リクライニングを行なうことができるように、背凭れ部(20)と座部(30)は、背凭れ部(20)の後傾角度に応じて、以下の「リラックス角度」を保持するようにリクライニングする。
【0019】
まず、背凭れ部(20)が起立している状態(以下「起立状態」)では、座部(30)は、床面に対して座部(30)の前端が後端に比べて僅かに上向きになるように傾いている。これにより、被施療者は、座部(30)に深く腰掛けることができ、リラックスすることができる。
【0020】
この起立状態から、背凭れ部(20)を後傾させるにつれて、座部(30)は、座部(30)の前端が上昇するように傾倒される。これにより、被施療者は、特に腹筋に力を入れることなく、背凭れ部(20)の後傾に追従することができ、リラックス状態を維持できる。背凭れ部(20)の後傾角度が最大後傾角度の略中間に達したとき(以下「中間状態」)、座部(30)の前端が最も上昇して座部(30)が最も傾いた状態となる。
【0021】
中間状態から背凭れ部(20)がさらに後傾したときには、座部(30)の前端が下がるように傾倒して、背凭れ部(20)が最大後傾角度に達したときには(以下「後傾状態」)、座部(30)は、起立状態と同様の角度まで戻ることで、背凭れ部(20)と座部(30)がほぼフラットな状態になる。中間状態を過ぎた後では、被施療者の身体は、背中が背凭れ部(20)に十分密着しており、重心が背凭れ部(20)側に移動しているから、座部(30)の角度を床面とほぼ平行に近い位置まで戻しても、被施療者の身体に無理な力は作用せず、リラックスした状態を維持したまま、座部(30)と背凭れ部(20)をフラットな状態に移行できる。このように、一連のリラックスした状態の角度を「リラックス角度」という。
【0022】
上記のように、背凭れ部(20)の傾倒角度に応じて、座部(30)の傾倒角度を調節することで、被施療者の身体に無理な力が作用せず、リラックスした姿勢を維持できるから、引き続いて行なわれるマッサージの効果を可及的に高めることができる。なお、背凭れ部(20)と座部(30)がフラットな状態から、起立状態に戻る際には、上記とは逆の動作が行なわれ、同様に、被施療者はリラックスした姿勢を維持したまま、背凭れ部(20)及び座部(30)を起立状態に戻すことができ、施されたマッサージ効果が、背凭れ部(20)及び座部(30)のリクライニングによって消失又は低減してしまうこともない。
【0023】
リクライニング機構(40)に用いられる1基の駆動源(42)として、図1に示すように、1基のアクチュエータを例示することができる。アクチュエータは、ベース部(12)の略中央から前方上向きに立設された固定フレーム(51)の上端部に一端が連繋されており、他端は、背凭れ部(20)の下端に連繋されている。上記椅子型マッサージ機(10)において、アクチュエータを縮めると、背凭れ部(20)は、軸支部(90)を支点として下端が前方に引っ張られ、背凭れ部(20)自体は例えば、図2及び図3に示すように後傾する。
【0024】
リンク機構(50)は、複数のリンク片(53)(55)(57)を組み合わせて構成することができる。図1では、リンク機構(50)は、ベース部(12)の略中央に枢軸(91)にて枢支された第1リンク片(53)、該第1リンク片(53)の自由端に近い位置と背凭れ部(20)の下端に枢軸(92)(93)にて枢支されこれらを連繋するよう第2リンク片(55)、第1リンク片(53)の自由端側先端と座部(30)の下面に突設されたブラケット(35)に枢軸(94)(95)にて枢支され、これらを連繋する第3リンク片(57)から形成されている。
【0025】
本実施例では、背凭れ部(20)と座部(30)のリラックス角度を維持して傾動し、且つ、図1の起立状態と、図3の後傾状態で座部(30)の高さがほぼ同じになるようにしている。そのため、第1リンク片(53)と第3リンク片(57)が、図1と図3では左右対称となるような動きをする。その動きをさせるために、背凭れ部(20)に連動した第2リンク片(55)のストロークが定められる。駆動源(42)であるアクチュエータのストロークが十分に長い場合は、第2リンク片(55)の第1リンク片(53)との枢軸(92)の位置を、第1リンク片(53)と第3リンク片(57)の連結軸(94)側へ近づけることができ、極端な場合、軸(92)(94)を共通化することができる。
【0026】
また、第3リンク片(57)と座部(30)との連結軸(95)の位置を変えることで、座部(30)の前端の最高高さを調節できる(軸(90)へ近づくほど、高くすることが可能となる)。
【0027】
上記構成のリクライニング機構(40)において、駆動源(42)を作動させ、背凭れ部(20)が図1の起立状態から後傾を開始すると、第2リンク片(55)が前方に押し出され、第1リンク片(53)は、ベース部(12)との枢支点(91)を中心に前方に傾き、第3リンク片(57)を前方に押し出す。その結果、座部(30)は、軸支部(90)を中心に前端が上昇するよう揺動する。
【0028】
背凭れ部(20)が図2に示すように、起立状態から中間状態(図1の起立状態と図3の後傾状態との略中間の状態)まで後傾すると、リンク機構(50)は、第1リンク片(53)と第3リンク片(57)が直線状態となり、座部(30)前端の上昇が最大となる。
【0029】
従って、駆動源(42)をさらに作動させると、図2の中間状態から背凭れ部(20)が後傾し、第2リンク片(55)が前方に押し出され、第1リンク片(53)は、ベース部(12)との枢支点(91)を中心にさらに前方に傾く。これにより、第3リンク片(57)は後傾し、上昇していた座部(30)の前端を下げる方向に引っ張り、図3に示すように、背凭れ部(20)と座部(30)は、フラットな状態まで移行する。
【0030】
上記のように、駆動源(42)を作動させて、背凭れ部(20)を後傾させることにより、背凭れ部(20)と座部(30)のリラックス角度が維持された状態で、座部(30)も傾動するため、被施療者の身体に無理な力が作用することなく、被施療者を座部(30)に腰掛けた状態から、寝転んだ状態まで移行させることができる。背凭れ部(20)と座部(30)がフラットになった状態で、マッサージ手段により種々のマッサージを施すことで、効果の高いマッサージを行なうことができる。
【0031】
駆動源(42)を逆方向に作動、即ち、図示の実施例では、アクチュエータを伸ばすことで、背凭れ部(20)と座部(30)は、上記と逆の動作を行ない、リラックス角度を維持した状態で、起立状態に戻すことができる。
【0032】
なお、リンク機構(50)の各リンク片(53)(55)(57)の長さ、枢支点(91)(92)(93)(94)(95)の位置を変えることで、異なるリラックス角度で背凭れ部(20)及び座部(30)を傾動させることもできる。
【0033】
〈基本形態2〉
上記基本形態1では、リクライニング機構(40)にリンク機構(50)を具備することで、背凭れ部(20)と座部(30)のリクライニングを行なったが、本基本形態2では、第1リンク片(53)に代えて、ガイドレール(60)を具備することで、上記と同様の動作を実現したものである。なお、説明をわかりやすくするために、駆動源(42)は図示していないが、基本形態1と同様に、アクチュエータ等が背凭れ部(20)を傾動させるために配備される。また、クッション等も図示省略している。
【0034】
基本形態1における第2リンク片(55)及び第3リンク片(57)は、枢軸(74)で連結され、且つ枢軸(74)に軸支されたローラ(72)を有し、屈曲可能な関節部(70)にて接続され、ベース部(12)に立設されたガイドレール(60)上を移動可能となっている。ローラ(72)及びガイドレール(60)は、ローラ(72)が脱線することなく移動できるように、一方を凹形状、即ち溝を刻設し、他方を該凹形状に嵌まる凸形状とすることが望ましい。
【0035】
第2リンク片(55)と第3リンク片(57)の長さは、ガイドレール(60)の位置や座部(30)の前端の高さなどによって適宜定めることができる。関節部(70)に配備されたローラ(72)は、樹脂製とすることができる。
【0036】
ガイドレール(60)は、上記リラックス角度を維持した状態で背凭れ部(20)と座部(30)とを傾動できるように、ローラ(72)と当接するガイド面(62)が屈曲形状を有している。
【0037】
図4の詳細図A等に示すように、ガイド面(62)は、起立状態から中間状態まで移行する間は、座部(30)の前端が上昇する方向に傾動可能となるように、前方に向けて上向きに傾斜している。これにより、背凭れ部(20)を起立状態から後傾させると、ローラ(72)が第2リンク片(55)に押されて、図5及び図6に示すように、ガイド面(62)に沿って前方上向きに移動し、第3リンク片(57)が座部(30)の前方を押し上げる。
【0038】
ガイド面(62)の屈曲形状を座部(30)と背凭れ部(20)の揺動中心である軸(90)を中心とする凹円弧形状(64)とすることで、背凭れ部(20)と座部(30)のリラックス角度を106°に維持したまま、座部(30)が水平面に対し約30°に傾くまで背凭れ部(20)と座部(30)を傾動させることができる。これは、背凭れ部(20)を好みの角度まで倒して読書する場合に適している。
【0039】
図7に示すように、背凭れ部(20)及び座部(30)が中間状態近傍まで達した位置で、ガイド面(62)は前記凹円弧形状(64)から凸円弧形状(65)に移行し、さらに前方は、下向きに傾斜形状(66)としている。これにより、中間状態からさらに背凭れ部(20)を後傾させることによって、前端が上昇していた座部(30)は、第3リンク片(57)が後ろ向きに傾くことで、下方に引っ張られ、図8に示すように、背凭れ部(20)と座部(30)をフラットな状態となるまで移行させることができる。
【0040】
上記の如く、ガイドレール(60)を用いることで、背凭れ部(20)と座部(30)とのリラックス角度を、被施療者がリラックスした姿勢を維持できるように調整することができる。なお、ガイド面(62)の形状は、本実施例に限定されるものではなく、所望するリラックス角度に応じて適宜変更することができる。
【0041】
〈基本形態3〉
本形態は、カム(80)を用いて、リラックス角度を調整可能としたものである。なお、説明をわかりやすくするために、駆動源(42)は図示していないが、実施例1と同様に、アクチュエータ等が背凭れ部(20)を傾動させるために配備される。また、クッション等も図示省略している。
【0042】
リクライニング機構(40)は、ベース部(12)から突設された支持ブラケット(84)にカム(80)が偏心した状態で枢支されており、該カム(80)と背凭れ部(20)は、第2リンク片(55)によって連繋されている。
【0043】
カム(80)は、例えば、図9に示すように、周面が略楕円形状のカム面(82)を有しており、該カム面(82)の長軸の異なる位置に支持ブラケット(84)及び第2リンク片(55)が枢軸(97)(98)にて枢支されている。
【0044】
座部(30)は、下面から突設されたブラケット(35)に、カム面(82)と当接可能となるようにローラ(87)が軸支されており、該ローラ(87)は、カム面(82)上を転動する。
【0045】
上記構成の椅子型マッサージ機(10)について、背凭れ部(20)を起立状態(図9)から後傾させると、第2リンク片(55)が前方に押し出され、カム(80)を図9で時計方向に回転させる。カム(80)は、略楕円形状であるため、カム面(82)に当たるローラ(87)は、カム面(82)に沿って上向きに移動し、座部(30)の前端を上昇させる。これにより、座部(30)は、背凭れ部(20)に対して、起立状態で109°であったリラックス角度が図10乃至図12に示すように、中間状態に近づくにつれて、113°、116°、120°と広がりながら傾動する。
【0046】
背凭れ部(20)が中間状態となったときに、ローラ(87)は、カム面(82)の長軸側の頂点に到達し、座部(30)の前端が最も上昇した状態となる。この状態から、さらに背凭れ部(20)が後傾し、カム(80)が回転することで、ローラ(87)は、カム面(82)の長軸側頂点を乗り越える。これにより、上昇していた座部(30)の前端は、下向きに移動を開始し、図13に示すように、背凭れ部(20)が最も傾いたときに、背凭れ部(20)と座部(30)は、フラットな状態(図示では160°)に至る。
【0047】
本実施例において、カム面(82)の形状を変えることで、リラックス角度を種々変更することができる。
【0048】
以上の基本形態1、2、3によれば、背凭れ部(20)を駆動源(42)により傾動させ、その動きをリンク機構(50)やガイドレール(60)、カム(80)を介して、座部(30)を揺動させるようにしているが、基本形態1では、駆動源(42)を第1リンク片(53)とベース部(12)の間に設けて、駆動源(42)で第1リンク片(53)を軸(91)を中心に回動させてもよい。基本形態2では、ベース部(12)と第3リンク片(57)との間に、駆動源(42)となるアクチュエータを介在させ、第3リンク片(57)を支軸(95)を中心にして揺動させるようにしてもよい。基本形態3では、カム(80)を駆動源により回転させるようにしてもよい。
【0049】
ところで、各基本形態において、背凭れ部(20)を起立状態から中間状態を経て傾倒状態まで揺動させると、座部前端は中間状態までは上昇、その後下降に転ずる。座部の前端が、上昇から下降に転ずるとき、リンク機構のがたつきに基づいて、「カック」という衝撃が使用者に伝わり、また「カッチ」という衝撃音が発生する。
【0050】
詳述すると、例えば、基本形態1では、背凭れ部(20)が図1の起立状態から後傾を開始して座部(30)の前端が上昇しているときは、第2リンク片(55)は第1リンク片(53)を前方に押す。ところが、座部(30)の前端が最も高い位置から下降を開始するとき、瞬間的に、第1リンク片(53)が第2リンク片(55)を引っ張ることになる。また、第2リンク片(55)の一端は、枢軸(92)でもって第1リンク片(53)と連結され、他端は枢軸(93)でもって背凭れ部(20)の下端に連結されているが、これらの連結には余裕度がもたせてあり、各枢軸(92)(93)と第2リンク片(55)、第1リンク片(53)、背凭れ部(20)の下端との間には若干の隙間がある。この隙間のために、第2リンク片(55)が第1リンク片(53)を押している状態から、第1リンク片(53)より引っ張られると、第2リンク片(55)、第1リンク片(53)が枢軸(92)(93)の周りに若干動いて枢軸(92)(93)に当たり、その結果「カック」という衝撃が使用者に伝わり、また「カッチ」という衝撃音が発生する。
【0051】
基本形態2においても同様に、第2リンク片(55)の両端の関節部(70)を構成する枢軸(74)と枢軸(93)の周囲において、座部(30)の前端が最も高い位置から下降を開始するとき、衝撃や衝撃音が発生する。基本形態3においては、第2リンク片(55)の両端の枢軸(93)と枢軸(98)(カム(80)との連結部)の周囲において、座部(30)の前端が最も高い位置から下降を開始するとき、衝撃や衝撃音が発生する。
【0052】
そこで本発明では、座部(30)の前端が上昇から下降へ転ずるときの、衝撃や衝撃音の発生を防止する衝撃防止機構を具えるもので、この衝撃防止機構を、基本形態2の枢軸(74)と枢軸(93)に用いた場合について、図14、図15に基づき説明する。
【0053】
第2リンク片(55)と第3リンク片(57)は断面コ字型の樋状をしており、両リンク片(55)と(57)を枢支連結すると共に、ローラ(72)を軸支する枢軸(74)の外周には、図15のように、ゴム状の弾性体(90)が嵌め込まれている。この弾性体(90)は、枢軸(74)の外周で、第2リンク片(55)と第3リンク片(57)が相対面する間に嵌めこまれている。弾性体(90)の枢軸(74)方向の自然体での長さは、第2リンク片(55)と第3リンク片(57)の相対する面間の間隔Kよりも長く、弾性体(90)は、枢軸(74)外周に嵌めこむ際に圧縮して嵌めこまれる。この結果、弾性体(90)は、第2リンク片(55)と第3リンク片(57)の相対する面同士に対して、枢軸(74)方向の互いに反発し合う力を付与している。(91)は枢軸(74)の抜け止め用eリングである。
【0054】
従って、第2リンク片(55)と第3リンク片(57)の枢軸(74)と直行する方向の動きが弾性体(90)との摩擦により規制され、座部(30)の前端が上昇から下降へ転ずるときの、第2リンク片(55)と第3リンク片(57)の枢軸(74)周りのがたつきを防止する。同様の弾性体は、枢軸(93)の外周で、第2リンク片(55)と背凭れ部(20)の背凭れフレーム(22)が相対面する間にも嵌めこまれている。
【0055】
この結果、座部(30)の前端が上昇から下降へ転ずるときの、衝撃や衝撃音の発生を防止することができる。弾性体(90)は、枢軸(74)(93)のうち、少なくとも一方の枢軸の周りにあれば同様の効果は得られる。
【0056】
以上は基本形態2の第2リンク片(55)両端の枢軸(74)(93)に衝撃防止機構を用いた例について説明したが、基本形態1においては、第2リンク片(55)両端の枢軸(92)(93)の周りに、同様の弾性体からなる衝撃防止機構を用いることにより、また、基本形態3においては、第2リンク片(55)両端の枢軸(98)(93)の周りに、同様の弾性体からなる衝撃防止機構を用いることにより、座部(30)の前端が上昇から下降へ転ずるときの、衝撃や衝撃音の発生を防止することができる。
【0057】
衝撃防止機構を構成する弾性体(90)は、図15において、枢軸(74)と各リンク片(55)(57)の僅かな隙間Sに介在させることも考えられるが、組立てにくい。この点本発明のように、上述した位置に弾性体(90)を介在させれば、弾性体(90)は枢軸の外側から嵌め込むだけなので、組み立ても簡単にできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、被施療者がリラックスした姿勢を維持したまま、1基の駆動源によって、背凭れ部と座部のリクライニングを行なうことができる椅子型マッサージ機として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の基本形態1の椅子型マッサージ機の起立状態を示している。
【図2】本発明の基本形態1の椅子型マッサージ機の中間状態を示している。
【図3】本発明の基本形態1の椅子型マッサージ機の後傾状態を示している。
【図4】本発明の基本形態2の椅子型マッサージ機の側面図及び要部拡大図である。
【図5】本発明の基本形態2の椅子型マッサージ機の側面図及び要部拡大図である。
【図6】本発明の基本形態2の椅子型マッサージ機の側面図及び要部拡大図である。
【図7】本発明の基本形態2の椅子型マッサージ機の側面図及び要部拡大図である。
【図8】本発明の基本形態2の椅子型マッサージ機の側面図及び要部拡大図である。
【図9】本発明の基本形態3の椅子型マッサージ機の側面図及び要部拡大図である。
【図10】本発明の基本形態3の椅子型マッサージ機の側面図及び要部拡大図である。
【図11】本発明の基本形態3の椅子型マッサージ機の側面図及び要部拡大図である。
【図12】本発明の基本形態3の椅子型マッサージ機の側面図及び要部拡大図である。
【図13】本発明の基本形態3の椅子型マッサージ機の側面図及び要部拡大図である。
【図14】本発明の基本形態2の椅子型マッサージ機の要部拡大側面図である。
【図15】図14において、ローラ部分を縦断面して、矢印A方向から視た図である。
【符号の説明】
【0060】
(10) 椅子型マッサージ機
(20) 背凭れ部
(30) 座部
(40) リクライニング機構
(42) 駆動源
(50) リンク機構
(53) 第1リンク片
(55) 第2リンク片
(57) 第3リンク片
(92) 枢軸
(93) 枢軸
(70) 関節部
(72) ローラ
(60) ガイドレール
(74) 枢軸
(80) カム体
(98) 枢軸
(90) 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者の背中の当たる背凭れ部と、被施療者が腰掛ける座部と、背凭れ部及び座部を揺動させるリクライニング機構とを具える椅子型マッサージ機において、
リクライニング機構は、1基の駆動源を具え、該駆動源は、リンク機構を介して背凭れ部及び座部に連繋されており、
リンク機構は、駆動源を動作させることで、背凭れ部を起立状態から中間状態を介して傾倒状態まで揺動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで揺動する際には、座部前端が上昇するよう傾倒させ、背凭れ部が中間状態から傾倒状態まで移動する際には、上昇した座部前端を下げるよう傾倒させる構成とし、
さらに前記リンク機構を構成するリンク片同士を接続する枢軸と、該枢軸の外周に嵌めこまれ、両リンク片の枢軸の周囲の相対する面同士に対して、枢軸方向の互いに反発し合う力を与える弾性体とを具え、
前記弾性体により、両リンク片の枢軸と直行する方向の動きに規制を与えて、座部前端が上昇から下降に転ずる際の枢軸周りのがたつきを防止したことを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
被施療者の背中の当たる背凭れ部と、被施療者が腰掛ける座部と、背凭れ部及び座部を揺動させるリクライニング機構とを具える椅子型マッサージ機において、
リクライニング機構は、1基の駆動源を具え、該駆動源は、背凭れ部又は座部の一方に連繋され、駆動源が連繋された背凭れ部又は座部を揺動可能に支持しており、
背凭れ部と座部は、関節部を有するリンク機構により接続され、該リンク機構中の関節部は、ガイドレールに沿って移動可能である構成を有しており、
該ガイドレールは、駆動源を動作させることで、背凭れ部又は座部の揺動に連繋して、リンク機構の前記関節部がガイドレールに沿って移動することで、背凭れ部を起立状態から中間状態を介して傾倒状態まで揺動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで揺動する際には、座部前端が上昇するよう傾倒させ、背凭れ部が中間状態から傾倒状態まで移動する際には、上昇した座部前端を下げるように傾倒させる屈曲形状のガイド面を有する構成とし、
さらに前記関節部を構成するリンク片同士を接続する枢軸と、該枢軸の外周に嵌めこまれ、両リンク片の枢軸の周囲の相対する面同士に対して、枢軸方向の互いに反発し合う力を与える弾性体とを具え、
前記弾性体により、両リンク片の枢軸と直行する方向の動きに規制を与えて、座部前端が上昇から下降に転ずる際の枢軸周りのがたつきを防止したことを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項3】
ベース部に、被施療者の背中の当たる背凭れ部と、被施療者が腰掛ける座部と、背凭れ部及び座部を揺動させるリクライニング機構とを具える椅子型マッサージ機において、
リクライニング機構は、1基の駆動源を具え、該駆動源は、背凭れ部又は座部の一方に連繋され、駆動源が連繋された背凭れ部又は座部を揺動可能に支持しており、
駆動源が連繋された背凭れ部又は座部には、リンク片の一端が枢支されており、該リンク片の他端は、ベース部に枢支されたカム体であって、該カム体の一部が、駆動源の連繋されていない背凭れ部又は座部に当接するカム面を有するカム体に枢支された構成を有しており、
前記カム面は、駆動源を動作させることで、リンク片を介して、カム体を回転させることで、背凭れ部を起立状態から中間状態を介して傾倒状態まで揺動させるときに、背凭れ部が起立状態から中間状態まで揺動する際には、座部前端が上昇するよう傾倒させ、背凭れ部が中間状態から傾倒状態まで移動する際には、上昇した座部前端を下げるように傾倒させる形状とし、
さらに前記リンク片の他端と前記カム体とを接続する枢軸と、該枢軸の外周に嵌めこまれ、リンク片及びカム体の枢軸の周囲の相対する面同士に対して、枢軸方向の互いに反発し合う力を与える弾性体とを具え、
前記弾性体により、リンク片及びカム体の枢軸と直行する方向の動きに規制を与えて、座部前端が上昇から下降に転ずる際の枢軸周りのがたつきを防止したことを特徴とする椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−189614(P2009−189614A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34344(P2008−34344)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】