説明

椅子

【課題】背凭れを後傾位置から起立位置に戻す際の背凭れの急激な回動を緩和することにより、着座者の不快感を解消することができ、さらに、背凭れを起立位置から後傾位置へ回動させる際にも、背凭れの急激な回動を緩和できるようにした、使い心地のよい椅子を提供する。
【解決手段】椅子の下部構成体である支基6に対して、背凭れ9を、ほぼ垂直をなす起立位置と、後方に傾斜した後傾位置との間を回動可能として支持し、かつ背凭れ9を、付勢手段により、起立位置に向けて常時付勢するようにした椅子において、支基6に、背凭れ9が後傾位置から起立位置へ回動する際に、背凭れ9に抵抗力を付与する抵抗力付与手段Eを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れが、ほぼ垂直をなす起立位置と、後方に傾斜した後傾位置との間を回動可能であり、かつ背凭れを、付勢手段により、起立位置に向けて常時付勢するようにした椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の椅子としては、背凭れを、ばね(ガススプリング等)により、起立位置に向けて常時付勢するようにしたものがある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−87615号公報
【特許文献2】特公平2−24527号公報
【特許文献3】実公平4−746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1〜3に記載されている椅子のように、背凭れの付勢手段として、ロック付きガススプリングを用いたものにおいては、背凭れを、後傾位置でロックした状態から、ガススプリングのロックを解除すると、背凭れが勢いよく起立位置に復帰回動させられ、着座者に不快感を与えるおそれがある。
【0005】
また、背凭れを起立位置に向けて付勢するばねの強さが強い場合は、体重の軽い人が背凭れに凭れたとき、背凭れが後傾し難かったり、背凭れを起立位置に戻す際に、背凭れが急激に回動し、着座者に不快感を与えるおそれがある。
【0006】
ばねの強さを弱く設定すると、体重の重い人が背凭れに凭れたとき、背凭れが急激に後傾位置へ回動し、着座者に不快感を与えたり、背凭れを起立位置に戻す際に、背凭れが戻り難いという問題がある。
【0007】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、背凭れを後傾位置から起立位置に戻す際の背凭れの急激な回動を緩和することにより、着座者の不快感を解消することができ、さらに、背凭れを起立位置から後傾位置へ回動させる際にも、背凭れの急激な回動を緩和できるようにした、使い心地のよい椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 椅子の下部構成体または座に対して、背凭れを、ほぼ垂直をなす起立位置と、後方に傾斜した後傾位置との間を回動可能として支持し、かつ前記背凭れを、付勢手段により、起立位置に向けて常時付勢するようにした椅子において、前記下部構成体または座に、背凭れが後傾位置から起立位置へ回動する際に、背凭れに抵抗力を付与する抵抗力付与手段を設ける。
【0009】
このような構成とすると、背凭れを後傾位置から起立位置に戻す際に、抵抗力付与手段により、背凭れの回動に抵抗力が付与され、背凭れが急激に回動することがなくなり、着座者の背中が背凭れにより押されたり、背凭れが着座者の背中に当接したりして、着座者に不快感を与えることを解消することができる。
【0010】
(2) 上記(1)項において、抵抗力付与手段を、背凭れの後傾位置から起立位置への回動時の回動モーメントの大きさに基づいて、付与する抵抗力を、回動モーメントが大きいほど大となるように自動的に調整する機能を備えるものとする。
【0011】
このような構成とすると、背凭れの後傾位置から起立位置への回動時の回動モーメントの大きさに基づいて、抵抗力付与手段から付与される抵抗力が、回動モーメントが大きいほど大となるように自動的に調整されるので、背凭れは、回動モーメントが大きいときも、小さいときも、ほぼ同様の速度で起立位置へ復帰回動することができる。
したがって、着座者が後傾姿勢から起立姿勢に戻る際に、着座者がゆっくりと起立姿勢に戻ろうとするときは、抵抗力付与手段から付与される抵抗力は小となり、背凭れによるアシスト力が強まるので、使い心地がよい。
【0012】
(3) 上記(1)または(2)項において、抵抗力付与手段を、背凭れが起立位置から後傾位置へ回動する際にも、背凭れに抵抗力を付与するものとする。
【0013】
このような構成とすると、背凭れが起立位置から後傾位置へ回動する際にも、抵抗力付与手段から背凭れの回動に抵抗力が付与され、背凭れの急激な回動を防止することができ、使い心地をよくすることができる。
【0014】
(4) 上記(3)項において、抵抗力付与手段を、背凭れの起立位置から後傾位置への回動時の回動モーメントの大きさに基づいても、付与する抵抗力を、回動モーメントが大きいほど大となるように自動的に調整する機能を備えるものとする。
【0015】
このような構成とすると、体重の大きい人が背凭れに凭れる際や、勢いよく背凭れに凭れる際には、背凭れに作用する回動モーメントが大となるので、抵抗力付与手段から大きな抵抗力が背凭れの回動に付与され、背凭れは急激に回動することなく、適度の速度で、起立位置から後傾位置へ回動し、着座者は円滑かつ快適に背凭れに凭れることができる。
また、体重の小さい子供等が背凭れに凭れる際や、ゆっくりと背凭れに凭れる際には、背凭れに作用する回動モーメントは小さく、抵抗力付与手段からは小さな抵抗力しか背凭れの回動に付与されず、背凭れは、軽快かつ円滑に起立位置から後傾位置へ回動することができ、着座者は円滑かつ快適に背凭れに凭れることができる。
したがって、着座者の体重や着席時の勢い等が相違しても、背凭れの起立位置から後傾位置への回動速度を、互いに近づけることができる。
【0016】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、付勢手段をロック付きガススプリングとし、抵抗力付与手段を、前記ロック付きガススプリングに組み込む。
【0017】
このような構成とすると、抵抗力付与手段を、付勢手段でもあるロック付きガススプリング内に組み込むことができ、構成を簡素化できるとともに、抵抗力付与手段のための収容スペースを確保する必要がなく、椅子全体をシンプルなものとすることができる。
【0018】
(6) 上記(5)項において、抵抗力付与手段を、ロック付きガススプリングにおけるシリンダに摺動自在に嵌合されたピストンに設けられ、かつピストンによって仕切られたシリンダ内の1対の圧力室同士を連通するオリフィスと、前記ピストンに設けられ、流体室内の両圧力室内の圧力差に基づいて、前記オリフィスの開度を、前記圧力差が大きいほど小となるように制御する調整弁とを備えるものとする。
【0019】
このような構成とすると、抵抗力付与手段の構成を簡素化することができ、安価に製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、背凭れを後傾位置から起立位置に戻す際の背凭れの急激な回動を緩和することにより、着座者の不快感を解消することができ、さらに、背凭れを起立位置から後傾位置へ回動させる際にも、背凭れの急激な回動を緩和できるようにした、使い心地のよい椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態であるリクライニング椅子の正面図である。
【図2】同じく、側面図である。
【図3】主要部材の分解斜視図である。
【図4】背凭れを起立位置としたときの要部の拡大側面図である。
【図5】背凭れを後傾させたときの要部の拡大側面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿う部分平面図である。
【図7】背凭れの傾動装置の分解斜視図である。
【図8】支基の中央縦断側面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う縦断正面図である。
【図10】図9のX−X線に沿う縦断側面図である。
【図11】図8のXI−XI線に沿う横断平面図である。
【図12】図9のXII−XII線に沿う縦断側面図である。
【図13】図12のXIIIの部分拡大図である。
【図14】図8のXIVの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図14を参照して説明する。
この実施形態は、本発明を、特許文献1に記載されているリクライニング椅子と同様の椅子に適用したものであり、その従来の構成と同様の構成について説明(段落0023〜0055)した後、本発明の特有の構成について説明することとする。
【0023】
図1〜図3に示すように、このリクライニング椅子は、先端部にキャスタ1が設けられた放射状をなす5本の脚杆2を有する脚体3を備えている。脚体3の中央には、ガススプリング4を備える伸縮式の脚柱5が立設されており、脚柱5の上端には、支基6の後部が固着されている。
この脚体3、脚柱5、および支基6等により、椅子の下部構成体が形成されている。
【0024】
支基6は、前上方に向かって延出する前半部の上面が開口する平面視菱形のほぼ中空箱状の支基本体6aを有し、その前半部の上面の開口部は、着脱可能な上部カバー7により覆われている。支基本体6aの前部両側面には、左右両側方に向かって斜め上方に延出するとともに、先端部上面が支基本体6aより上方に位置するようにした左右1対の腕部6b、6bが一体的に形成されている。
【0025】
支基本体6aの前後方向のほぼ中央には、両端部に角軸部8a、8aを有する左右方向を向く枢軸8が貫通しており、支基本体6aより両側方に突出する枢軸8の両端部の角軸部8a、8aには、背凭れ9を支持する左右1対の背凭れ支持杆10、10における前方を向く下部の前端部に形成された左右方向を向く筒部10a10aが固嵌され、枢軸8と背凭れ支持杆10、10と背凭れ9とは、枢軸8の軸線を中心として、互いに一体となって支基6に対して回動しうるようになっている。
【0026】
支基6には、枢軸8および背凭れ支持杆10、10を介して、背凭れ9を起立する方向に付勢する付勢手段Aが設けられている。
図3に示すように、付勢手段Aは、枢軸8を、図2における反時計回り方向に付勢する2個のゴムトーションスプリング11、11からなる回動付勢手段B、およびその付勢力調節手段C(図7および図11参照)、並びにガススプリング12を含むガススプリングユニットDを備えている。
この付勢手段Aについては後に詳細に説明することとし、先に、リクライニング椅子全体の概略構成について簡単に説明する。
【0027】
左右のゴムトーションスプリング11、11の下面は、支基本体6aの下面に着脱可能に設けられた左右1対の下部カバー13、13により覆われている。
【0028】
図3〜図6に示すように、左右の背凭れ支持杆10、10における枢軸8より若干後方の部分には、短寸の起立腕10b、10bが上向き突設されており、各起立腕10bの上端部には、座14の両側部を支持する前後方向を向く左右1対の座受けフレーム15、15の後端部が、左右方向を向く軸16をもって、それぞれ連結されている。
【0029】
各座受けフレーム15の前部は、上面が開口する箱状をなして下方に延出し、その下端面が後下方に向かって傾斜する傾斜面17をなし、かつその傾斜面17の後端に連続して、後上方を向く起立壁18が形成されている。
各傾斜面17は、支基6における腕部6bの先端部上面に形成された後下方に向かって傾斜する傾斜受け面19に前後方向に摺動自在に載置されている。
【0030】
支基6における腕部6bの先端部と、座受けフレーム15の前部との間には、傾斜面17が傾斜受け面19から上方に離脱するのを阻止する外れ止め手段20が設けられている。
この例では、外れ止め手段20は、傾斜面17に設けた前後方向を向く長孔21と、傾斜受け面19に突設され、かつ長孔21に摺動自在に嵌合されるとともに、長孔21の幅より大きい拡大頭部22aを有する有頭軸22とを備えるものとしてあるが、長孔21を傾斜受け面19に設け、かつ有頭軸22を傾斜面17に設けて実施してもよい。また、図示の例では、有頭軸22の軸部に相当する部分を、前後方向を向く垂直板状としてあるが、これを円形軸としてもよい。
【0031】
長孔21は、傾斜面17の前端近傍から後方に延び、後端が起立壁18より後方に開口している。起立壁18には、長孔21と連通し、かつ傾斜受け面に19突設した有頭軸22の拡大頭部22aが通過可能の開口23が設けられている。
【0032】
したがって、開口23より有頭軸22を導入させつつ、傾斜面17を傾斜受け面19に沿って後方に摺動させ、かつ各座受けフレーム15の後端部を、軸16をもって各背凭れ支持杆10に連結することにより、各座受けフレーム15を簡単かつ迅速に、支基6および背凭れ支持杆10に組み付けることができる。
【0033】
組み付け後には、背凭れ9が、ほぼ垂直をなす起立位置から後傾させられるのに連動して、各座受けフレーム15およびそれによって支持された座14は、図4に示すほぼ水平の状態から、図5に示すように、傾斜面17が傾斜受け面19に沿って摺動しつつ、後下方に向かって移動させられる。
【0034】
このときの背凭れ9と座14の動きにより、着座者の背と大腿部との間、および大腿部と下腿部との間の角度が自然に広がり、かつ下腿部が、接床した足の踝を中心として、緩やかに後傾し、着座者に無理のない快適な移動感をもたらすことができる。
また、背凭れ9を後傾位置から起立位置に移動させた際には、座14は上記と逆に移動し、このときにも、着座者に無理のない快適な移動感を与えることができる。
【0035】
なお、傾斜面17と傾斜受け面19とを、側方から見て完全な直線とすると、背凭れ9の後傾に連動して、座14が後下方に移動する際に、面接触から線接触に変わることがあるが、それらが常に広い範囲で面接触するように、傾斜面17と傾斜受け面19とを、緩やかな曲面とすることが望ましい。
【0036】
座14は、平面視ほぼ方形枠状の座フレーム14aに、例えば伸縮性繊維を用いたメッシュ地、平織り地等の布地、または合成樹脂製フィルム等からなる伸縮性を有するシート材14bを張設して形成したものよりなり、着座者が着座したとき、シート材14bが伸長して、座面中央部が着座者の臀部に沿って下方に凹入し、シート材14bの中央部が沈み込むことにより、着座者に快適な着座感を付与することができるようになっている。
【0037】
着座時に、このような座14の中央部が沈み込むことができるようにするため、左右1対の腕部6b、6bの先端部上面と両背凭れ支持杆10、10における起立腕10b、10bとにより座フレーム14aのほぼ四隅を、支基6より高く持ち上げて支持し、もって、座14の中央部下面と支基本体6aの上面との間に、座14の下面中央部が下方に撓むことができる空所24を形成してある。
【0038】
背凭れ9も、座14に合わせて、正面視ほぼ方形枠状の背凭れフレーム9aに、上記シート材14bと同様の材質の伸縮性を有するシート材9bを張設して形成されている。
【0039】
座14は、左右1対の座受けフレーム1515に、前後位置調節可能として装着されているが、そのための具体的な構成は、本発明に直接関係しないので、その詳細な図示および説明は省略する。
なお、座14の前後位置調節を行わないものにおいては、座14の後部を、軸16をもって直接左右の背凭れ支持杆10、10における起立腕10b、10bの上部に連結し、かつ座14の前部下面を、直接左右の腕部6b、6bの先端部上面に前後方向に摺動可能として装着してもよい。
【0040】
各背凭れ支持杆10には、肘掛け25が設けられているが、これも本発明に直接関係しないので、その詳細な図示および説明は省略する。
【0041】
次に、図3および図7〜図11を参照して、付勢手段Aの詳細について説明する。
図7に示すように、付勢手段Aは、支基6の下部に設けられた2個のゴムトーションスプリング11、11からなる回動付勢手段B、および支基6の上部に設けられた付勢力調節手段C、並びにガススプリング12を含むガススプリングユニットDを備えている。
【0042】
図8および図9に示すように、枢軸8の中央部には、それと直交するようにほぼ下方を向く腕部26が設けられており、その両側方には、ゴムトーションスプリング11、11が配設されている。
各ゴムトーションスプリング11は、枢軸8を芯材とし、かつ枢軸8と同心をなすようにして支基6に回り止めされた外筒27と、この外筒27と枢軸8との間に充填され、かつ枢軸8が外筒27に対して中心軸線回りに回動することにより、弾性変形して、枢軸8に復帰回動力を付与するようにしたゴム等の弾性体28とを備えている。
【0043】
各ゴムトーションスプリング11より外側方に突出する枢軸8の両側部には、上面中央に位置決め用の突起29aが設けられた軸受29、29が外嵌されている。
【0044】
支基本体6aの下部中央には、左右方向を向きかつ下面が開口する半円筒部6cが形成されており、その下面両側部には、左右方向を向きかつ上面が開口する半円筒状をなす左右1対の下部カバー13、13が、止めねじ30、30をもって取り付けられている(図10参照)。
【0045】
枢軸8とそれに外嵌された左右1対ずつのゴムトーションスプリング11、11およびその外側の軸受29、29は、左右のゴムトーションスプリング11、11が、半円筒部6cと下部カバー13、13との対向部に形成された凹部31、32内に遊嵌され、その外側の軸受29、29が半円筒部6cと下部カバー13、13とにより挾持され(図10参照)、軸受29、29よりさらに外側方に突出する枢軸8の両側部が、半円筒部6cと下部カバー13、13との両側面の対向縁に設けた半円状の切欠き33、34を挿通するようにして(図9参照)、支基6の半円筒部6cと下部カバー13、13との間に収容されている。
【0046】
左右の下部カバー13、13の間を通って垂下する腕部26の下端部には、前上方を向くガススプリング12の後下端部が、左右方向を向く軸35をもって連結されている。
ガススプリング12の前上端部は、ヘッドカバー36および左右方向を向く軸37をもって、支基本体6aの前端中央部に連結されている。
ガススプリング12は、その前端部に設けた操作ノブ38を作動位置に押動すると、内部のガス圧(または内蔵した補助ばね)の付勢力により、伸長するように付勢されつつ、伸縮が可能となり、また操作ノブ38を不作動位置に復帰させると、伸縮が不能となるようにしたものであり、その具体的に内部構造については後述する。
【0047】
ヘッドカバー36内には、右方の背凭れ支持杆10の起立腕10bの中間部に枢着した外側方を向く操作レバー39に、可撓性のアウターチューブ40内を挿通するワイヤ41を介して連結された作動レバー42が設けられており、操作レバー39を外上方に引き上げることにより、作動レバー42が操作ノブ38を作動位置に押動し、操作レバー39から手を離すと、操作ノブ38の不作動位置への復帰力により、作動レバー42および操作レバー39が、元の不作動位置へ復帰させられるようになっている。なお、操作レバー39に、不作動位置への復帰回動用のばね(図示略)を設けてもよい。アウターチューブ40は、その一端が背凭れ支持杆10の起立腕10bの内面に、また他端がヘッドカバー36にそれぞれ止着され、その中を挿通するワイヤ41が軸線方向に円滑に移動するようにしている。
【0048】
ガススプリング12と、腕部26、軸35、37、ヘッドカバー36等とにより、ガススプリングユニットDが形成されている。このガススプリングユニットDは、操作ノブ38が作動位置に位置しているときは、回動付勢手段Bの付勢力を助勢する作用をし、また操作ノブ38を不作動位置とすることにより、背凭れ9を任意の傾斜角度で無段階的に停止させることができる。
【0049】
図11に示すように、回動付勢手段Bの初期付勢力を調節する付勢力調節手段Cは、支基本体6aの上部ほぼ中央に回転自在に枢支され、中央に近い左右両側部に順ねじ部43と逆ねじ部44とを有し、かつ支基本体6aから外側方に突出した、この例では左方の端部に操作ハンドル45が設けられた左右方向を向く操作軸46と、順ねじ部43と逆ねじ部44とに螺合する雌ねじ孔47、48を有する左右1対の移動駒49、50と、後端部(基端部)が、左右のゴムトーションスプリング11、11の外筒27、27の外周部同士を連結する左右方向を向く軸51に連結された前方を向く連結杆52と、後端部が各移動駒49、50に上下方向を向く軸53をもって連結され、かつ前端部が連結杆52の前端部(先端部)に連結され、操作軸46の回転に連動して、互いに平面視ハ字状をなして、開閉することにより、連結杆52を前後方向に移動させて、左右の外筒27、27をその中心軸線回りに回動させるようにした1対のリンク54、55とを備えている。
【0050】
この例では、連結杆52の前端部を、支基本体6aに前後方向に摺動可能として支持させ、かつ連結杆52における前方を向く基片52aの前端部に、側面視後向コ字状をなす側方突出部52bを設け、この側方突出部52bと基片52aとの内隅部に、各リンク54、55の前端を、垂直軸線まわりに回動可能として単に当接させるだけとしてある。
このような構成としても、ゴムトーションスプリング11、11の付勢力が、連結杆52を常時後方に引くように作用しており、しかも平面視ハ字状をなす左右1対のリンク54、55の前端同士は、それらの後端同士より常に内方に位置するようにしてあるので、左右のリンク54、55の前端が側方突出部52bと基片52aとの内隅部から外側方に外れることはない。
【0051】
しかし、各リンク54、55の前端部を、各リンク54、55の後端部を各移動駒49、50に連結する上下方向を向く軸53と平行の軸(図示略)をもって、連結杆52の先端部に枢着してもよい。
【0052】
かくして、操作ハンドル45により操作軸46を回転させると、1対の移動駒49、50が互いに遠近移動し、それに伴ってハ字状をなす1対のリンク54、55が互いに開閉して、連結杆52が後方および前方に移動させられ、それによって外筒27、27が枢軸まわりに回動させられ、回動付勢手段Bの所期付勢力、それに伴って背凭れ9の付勢力全体の強さが弱められたり、強められたりする。
【0053】
このときの操作ハンドル45の操作は、着座者が、着座姿勢のまま、座14の右側部下方に手を伸ばすことによって簡単に行うことができる。
また、この例では、1対の移動駒49、50が互いに近づき、かつハ字状をなす1対のリンク54、55が互いに閉じる方向に移動することにより、回動付勢手段Bの付勢力が強まるように設定してあるので、操作軸46の1回転当たりの連結杆52の前方への移動量が漸次減少し、背凭れの所期付勢力が大となっても、操作軸の回転抵抗は増大することがなく、操作ハンドルを常時軽力で操作することができる。
【0054】
左方の背凭れ支持杆10の起立腕10bの中間部には、右方の背凭れ支持杆10の起立腕10bの中間部に設けた操作レバー39と同様の操作レバー56が、前後方向を向く軸線回りに回動可能として装着されている。
この操作レバー56は、可撓性のアウターチューブ57内を挿通するワイヤ58を介して、支基6の後部に設けた脚柱5のガススプリング4操作用の作動レバー(図示略)に連結され、操作レバー56を外上方に回動させることにより、ガススプリング4の操作ノブ(図示略)を作動位置まで押動して、脚柱5を自由に伸縮できるようにし、また操作レバー56を内下方に復帰回動させることにより、ガススプリング4の操作ノブ(図示略)を不作動位置まで復帰させて、脚柱5をそのときの伸縮状態で無段階的に停止させることができるようになっている。
【0055】
付勢手段Aは、枢軸8に、背凭れ9が起立する方向の回動力を付与する回動付勢手段Bと、枢軸8より直交する方向に延出する腕部26の先端部と支基6とに各端部が連結され、一端に設けた操作ノブ38を作動位置に移動させることにより伸縮可能となり、かつ操作ノブ38を不作動位置に復帰させることにより、伸縮不能となるようにしたガススプリング12とを備えているので、回動付勢手段Bにより、背凭れ9を起立する方向に向けて強力に付勢することができるとともに、ガススプリング12により、背凭れ9を、任意の傾斜角度で無段階的に停止させることができる。
また、ガススプリング12の操作ノブ38を作動位置としたときは、ガススプリング12の付勢力により、回動付勢手段Bの付勢力を助勢することができるので、回動付勢手段Bを付勢力の小さい小型のものとすることができる。
【0056】
本発明によると、以上の構成に、次のような構成要素を付加している。
すなわち、下部構成体の一部である支基6のいずれか一方の側面に、ディスクダンパーとした第1抵抗力付与手段Eを設け、支基6のいずれか他方の側面に、ロータリーダンパーとした第2抵抗力付与手段Fを設け、さらに、ガススプリング12を、第3抵抗力付与手段Gを備えるものとしてある。
【0057】
第1抵抗力付与手段Eであるディスクダンパーは、背凭れ9が起立する方向と後傾する方向の両方向への枢軸8の回動に対して、同様の抵抗力を付与するようにした両方向作用型の公知のものとしてある。
【0058】
第2抵抗力付与手段Fであるロータリーダンパーは、図9、図12、および図13に示すように、支基6の側面に固着され、かつ内部に、1対の内向き突起61a、61aにより区画された1対の円弧状の流体室62、62を備えるケーシング61と、ケーシング61内における流体室62、62の曲率中心部に回動自在に設けられ、かつ枢軸8の角軸部8aが相対回転不能として嵌挿され、背凭れ9と一体となって回動するロータ63と、このロータ63の外周に突設され、かつ各流体室62、62内において回動する1対のベーン64、64と、各ベーン64に設けられ、かつベーン64によって仕切られた流体室62内の1対の圧力室62a、62b同士を連通するオリフィス65と、各ベーン64に設けられ、圧力室62a内の圧力P1と圧力室62b内の圧力P2との圧力差P2−P1に基づいて、オリフィス65の開度を、上記圧力差P2−P1が大きいほど小となるように制御する調整弁66とを備えるものとしてある。
【0059】
調整弁66は、図13に示す例では、各ベーン64におけるオリフィス65の一方の開口縁部に、基端部が固定ねじ67をもって止着され、かつ遊端に向かって、オリフィス65が開口する各ベーン64の側面から、所要の角度をもって漸次離れる多角形状をなす、全体としてはほぼ円弧状の板ばね68からなるものとしてある。
【0060】
この調整弁66によると、背凭れ9が後傾位置に位置しており、背凭れ9に外力が作用していないときは、板ばね68は、図13に実線で示すように、遊端部がベーン64の側面から最も離れ、オリフィス65を全開したa位置に位置しているが、背凭れ9が後傾位置から起立位置に向かって回動する際には、それに連動して、ロータ63が図12における時計回りに回動し、各流体室62における圧力室62b内の圧力P2が圧力室62a内の圧力P1より大となり、例えばオイルまたはエアー等の作動流体がオリフィス65を通って、圧力室62bから圧力室62aへ流れ、そのときの各流体室62における圧力室62b内の圧力P2と圧力室62a内の圧力P1との圧力差P2−P1が大となるにつれて、板ばね68は、図13に2点鎖線で示すb、c、dの各位置のように、漸次ベーン64の側面に接近し、その基端寄りの部分で、オリフィス65の開口を漸次段階的に狭め、最終的にd位置に到達することにより、オリフィス65を全閉する。
【0061】
そのときのベーン64に掛かる抵抗力は、背凭れ9の後傾位置から起立位置への回動に対する第2抵抗力付与手段Fからの抵抗力となり、その抵抗力は、背凭れ9に作用する回動モーメントが大となるにつれて、またそれに伴って、圧力室62bと圧力室62aとの圧力差P2−P1が大となり、板ばね68が、図13に示すa位置から、漸次b、c、d位置へ移行するにつれて、大となる。
【0062】
なお、板ばね68が上記d位置に達したとき、オリフィス65の開口を完全に閉塞しないようにするため、オリフィス65よりさらに小径の孔(図示略)を、板ばね68に設けておくのが好ましい。
【0063】
また、板ばね68の形状を、多角形状ではなく、なだらかな円弧状としておくことにより、オリフィス65の開口を、段階的ではなく、無段階的に開閉制御することができる。
【0064】
背凭れ9が起立位置から後傾位置へ回動する際には、それに連動して、ロータ63が図12における反時計回りに回動し、各流体室62における圧力室62a内の圧力P1が圧力室62b内の圧力P2より大となり、作動流体がオリフィス65を通って、圧力室62aから圧力室62bへ流れるが、このときは、オリフィス65を通る作動流体の流れは、調整弁66である板ばね68に妨げられることがないため、第2抵抗力付与手段Fからは、背凭れ9の起立位置から後傾位置への回動に対して、背凭れ9が後傾位置から起立位置へ回動する際に付与される際の最小の抵抗力と同等の抵抗力が、第2抵抗力付与手段Fから背凭れ9の回動に付与される。
【0065】
第2抵抗力付与手段Fを、このようなロータリダンパーとしたことにより、背凭れ9を後傾位置から起立位置に戻す際に、背凭れ9の回動に抵抗力が付与され、背凭れ9が急激に回動することがなくなり、着座者の背中が背凭れ9により押されたり、背凭れ9が着座者の背中に当接したりして、着座者に不快感を与えることを解消することができる。
【0066】
また、背凭れ9の後傾位置から起立位置への回動時の回動モーメントの大きさに基づいて、第2抵抗力付与手段Fから付与される抵抗力が、回動モーメントが大きいほど大となるように自動的に調整されるので、背凭れ9は、回動モーメントが大きいときも、小さいときも、ほぼ同様の速度で起立位置へ復帰回動することができる。
したがって、着座者が後傾姿勢から起立姿勢に戻る際に、着座者がゆっくりと起立姿勢に戻ろうとするときは、第2抵抗力付与手段Fから付与される抵抗力は小となり、背凭れ9によるアシスト力が強まるので、使い心地がよい。
【0067】
さらに、背凭れ9が起立位置から後傾位置へ回動する際にも、第2抵抗力付与手段Fから背凭れ9の回動に抵抗力が付与され、背凭れ9の急激な回動を防止することができ、使い心地をよくすることができる。
【0068】
図13に2点鎖線で示すように、各ベーン64におけるオリフィス65の他方の開口縁部にも、一方の開口縁部における調整弁66と同様の調整弁66'を設け、作動流体がオリフィス65を通って、圧力室62aから圧力室62bへ流れる際にも、圧力室62a内の圧力P1が圧力室62b内の圧力P2より大となるほど、オリフィス65の開度を狭めて、第2抵抗力付与手段Fから背凭れ9の起立位置から後傾位置への回動に大きな抵抗力が付与されるようにしてもよい。
【0069】
そうすることによって、体重の大きい人が背凭れ9に凭れる際や、勢いよく背凭れに凭れる際には、背凭れ9に作用する回動モーメントが大となり、第2抵抗力付与手段Fから大きな抵抗力が背凭れ9の回動に付与され、背凭れ9は急激に回動することなく、適度の速度で、起立位置から後傾位置へ回動し、着座者は円滑かつ快適に背凭れに凭れることができる。
【0070】
また、体重の小さい子供等が背凭れ9に凭れる際や、ゆっくりと背凭れ9に凭れる際には、背凭れ9に作用する回動モーメントは小さく、第2抵抗力付与手段Fからは小さな抵抗力しか背凭れ9の回動に付与されず、背凭れ9は、軽快かつ円滑に起立位置から後傾位置へ回動することができ、着座者は円滑かつ快適に背凭れ9に凭れることができる。
したがって、着座者の体重や着席時の勢い等が相違しても、背凭れ9の起立位置から後傾位置への回動速度を、互いに近づけることができる。
【0071】
図8および図14に示すように、ガススプリング12は、枢軸8と一体となって回動する腕部26の下端部に、軸35をもって基端部が枢着され、かつ内部に流体室72を備える前上方を向くシリンダ71と、このシリンダ71内に軸線方向に摺動自在に嵌合され、かつシリンダ71の流体室72内の基端部寄りに、圧縮ガスを封入した第1圧力室72aを区画するフリーピストン73と、シリンダ71内におけるフリーピストン73よりシリンダ71の遊端部寄りに軸線方向に摺動自在に嵌合され、かつ第1圧力室72aより前方のシリンダ71の流体室72内を、オイル等の作動流体を封入した第2圧力室72bと第3圧力室72cとに区画する作動ピストン74と、後端が作動ピストン74と一体的に連接され、かつシリンダ71の前端部を貫通して、前上方に延出し、前端部がヘッドカバー36に固着されたピストンロッド75と、作動ピストン74とピストンロッド75との中心に設けられた貫通孔76内に摺動自在に設けられ、第2圧力室72b内に位置する基端部に拡径頭部77aが形成され、中間部に縮径部77bが形成され、かつピストンロッド75から前方に突出する先端部が操作ノブ38をなす操作ロッド77と、内端が貫通孔76内における操作ロッド77の縮径部77bに常時対向する部分に開口し、かつ外端が内端よりピストンロッド75の遊端寄りの外周面に開口するように、ピストンロッド75の中心軸線に対して傾斜するようにして、ピストンロッド75に設けられたオリフィス78とを備えている。
【0072】
操作ロッド77における縮径部77bの後端から拡径頭部77aまでの部分は、貫通孔76とオリフィス78とを介して、第2圧力室72bと第3圧力室72cとを連通させたり遮断したりするための弁体77cをなしており、この弁体77cは、操作ノブ38を押し込むことにより、開弁し、操作ノブ38の押し込み力を解除すると、第2圧力室72b内の作動流体の圧力により、操作ロッド77全体が前方に押し出されて、閉弁するようになっている。
【0073】
ピストンロッド75の外周面におけるオリフィス78の開口縁部には、浅い凹入部79が設けられ、ここには、圧力室72b内の圧力P3と圧力室72c内の圧力P4との圧力差P4−P3に基づいて、オリフィス78の開度を、上記圧力差P4−P3が大きいほど小となるように制御する調整弁80が設けられている。
この調整弁80とオリフィス78とにより、ガススプリング12内における第3抵抗力付与手段Gが形成されている。
【0074】
調整弁80は、第2抵抗力付与手段Fであるロータリダンパーにおける調整弁66と同様に、凹入部79内におけるオリフィス78の開口縁部に基端部が止着され、かつ基端部から遊端に向かって、ピストンロッド75の外周面から所要の角度をもって漸次離れる多角形状をなす、全体としてはほぼ円弧状をなす板ばね81からなるものとしてあり、調整弁66と同様に作用するようにしてある。
【0075】
すなわち、背凭れ9が後傾位置に位置しており、背凭れ9に外力が作用しておらず、かつ弁体77cが閉弁している状態では、圧力室72c内と、弁体77cによって閉塞された貫通孔76内とは、オリフィス78によって連通されて、互いに等圧となっており、この状態では、板ばね81は、図14に実線で示すように、遊端部がピストンロッド75の外周面から最も離れ、オリフィス78を全開したa位置に位置している。
【0076】
この状態から、操作ノブ38を押し込んで、弁体77cを開弁すると、第2圧力室72bと第3圧力室72cとが、貫通孔76とオリフィス78とを介して、互いに連通し、作動ピストン74とピストンロッド75とは、シリンダ71に対して長手方向に摺動可能となる。
【0077】
このとき、背凭れ9は、主として回動付勢手段Bの付勢力により、後傾位置から起立位置に向けて回動させられ、それに伴って、作動ピストン74とピストンロッド75とが、シリンダ71に対して前方に相対的に移動し、圧力室72c内の作動流体が、オリフィス78と貫通孔76とを通って、圧力室72bへ流れる。
【0078】
圧力室72c内の圧力P4と圧力室72b内の圧力P3との圧力差P4−P3が大となるにつれて、板ばね81は、図14に2点鎖線で示すb、c、dの各位置のように、漸次ピストンロッド75の外側面に接近し、その基端部寄りの部分で、オリフィス78の開口を漸次段階的に狭め、最終的にd位置に到達することにより、オリフィス78を全閉する。
【0079】
そのときの作動ピストン74およびピストンロッド75に掛かる抵抗力は、背凭れ9の後傾位置から起立位置への回動に対する第3抵抗力付与手段Gからの抵抗力となり、その抵抗力は、背凭れ9に作用する回動モーメントが大となるにつれて、またそれに伴って、圧力室72cと圧力室62bとの圧力差P4−P3が大となり、板ばね81が、図14に示すa位置から、漸次b、c、d位置へ移行するにつれて、大となる。
【0080】
なお、板ばね81が上記d位置に達したとき、オリフィス78の開口を完全に閉塞しないようにするため、オリフィス78よりさらに小径の孔(図示略)を、板ばね81に設けておくのが好ましい。
【0081】
また、板ばね81の形状を、多角形状ではなく、なだらかな円弧状としておくことにより、オリフィス78の開口を、段階的ではなく、無段階的に開閉制御することができる。
【0082】
背凭れ9が、起立位置か、または任意の傾斜位置で停止している状態で、作動レバー42が不作動位置へ復帰させられると、操作ロッド77が、第2圧力室72b内の作動流体の圧力により、前方に押し出されて、弁体76cが閉弁し、第2圧力室72bと第3圧力室72cとの連通が遮断され、ガススプリング12はロック状態となり、背凭れ9はその位置にロックされる。
【0083】
操作ノブ38を押し込んで、弁体77cを開弁した後、背凭れ9を起立位置から後傾位置へ回動すると、作動ピストン74とピストンロッド75とが、シリンダ71内を後方に向かって摺動する。
【0084】
このとき、圧力室72b内の作動流体が、貫通孔76とオリフィス78とを通って、圧力室72cへ流れるが、このときは、オリフィス78を通る作動流体の流れは、調整弁80である板ばね81に妨げられることがないため、第3抵抗力付与手段Gからは、背凭れ9の起立位置から後傾位置への回動に対して、背凭れ9が後傾位置から起立位置へ回動する際に付与される際の最小の抵抗力と同等の抵抗力が、第3抵抗力付与手段Gから背凭れ9の回動に付与される。
【0085】
ガススプリング12を、このような第3抵抗力付与手段Gを備えるロック機能付きのものとしたことにより、ロック機能を解除して、背凭れ9を後傾位置から起立位置に戻す際に、背凭れ9の回動に抵抗力が付与され、背凭れ9が急激に回動することがなくなり、着座者の背中が背凭れ9により押されたり、背凭れ9が着座者の背中に当接したりして、着座者に不快感を与えることを解消することができる。
【0086】
また、背凭れ9の後傾位置から起立位置への回動時の回動モーメントの大きさに基づいて、第3抵抗力付与手段Gから付与される抵抗力が、上記回動モーメントが大きいほど大となるように自動的に調整されるので、背凭れ9は、回動モーメントが大きいときも、小さいときも、ほぼ同様の速度で起立位置へ復帰回動することができる。
したがって、着座者が後傾姿勢から起立姿勢に戻る際に、着座者がゆっくりと起立姿勢に戻ろうとするときは、第3抵抗力付与手段Gから付与される抵抗力は小となり、背凭れ9によるアシスト力が強まるので、使い心地がよい。
【0087】
さらに、背凭れ9が起立位置から後傾位置へ回動する際にも、第3抵抗力付与手段Gから背凭れ9の回動に抵抗力が付与され、背凭れ9の急激な回動を防止することができ、使い心地をよくすることができる。
【0088】
図14に2点鎖線で示すように、ピストンロッド75の内面におけるオリフィス78の開口縁部にも、上記凹入部79と同様の浅い凹入部79'を設け、ここに、上記調整弁80と同様の調整弁80'を設け、作動流体がオリフィス78を通って、圧力室72bから圧力室72cへ流れる際にも、圧力室72b内の圧力P3が圧力室72c内の圧力P4より大となるほど、オリフィス65の開度を狭めて、第3抵抗力付与手段Gから背凭れ9の起立位置から後傾位置への回動に大きな抵抗力が付与されるようにしてもよい。
【0089】
そうすることによって、体重の大きい人が背凭れ9に凭れる際や、勢いよく背凭れに凭れる際には、背凭れ9に作用する回動モーメントが大となり、第3抵抗力付与手段Gから大きな抵抗力が背凭れ9の回動に付与され、背凭れ9は急激に回動することなく、適度の速度で、起立位置から後傾位置へ回動し、着座者は円滑かつ快適に背凭れに凭れることができる。
【0090】
また、体重の小さい子供等が背凭れ9に凭れる際や、ゆっくりと背凭れ9に凭れる際には、背凭れ9に作用する回動モーメントは小さく、第3抵抗力付与手段Gからは小さな抵抗力しか背凭れ9の回動に付与されず、背凭れ9は、軽快かつ円滑に起立位置から後傾位置へ回動することができ、着座者は円滑かつ快適に背凭れ9に凭れることができる。
したがって、着座者の体重や着席時の勢い等が相違しても、背凭れ9の起立位置から後傾位置への回動速度を、互いに近づけることができる。
【0091】
なお、板ばね81が上記d位置に達したとき、オリフィス78の開口を完全に閉塞しないようにするため、オリフィス78よりさらに小径の孔(図示略)を、板ばね81に設けておくのが好ましい。
【0092】
また、板ばね81の形状を、多角形状ではなく、なだらかな円弧状としておくことにより、オリフィス78の開口を、段階的ではなく、無段階的に開閉制御することができる。
【0093】
さらに、調整弁60'、80'における板ばね68、81の板厚を、調整弁60、80における板ばね68、81の板厚より大としておくことにより、背凭れ9が起立位置から後傾位置へ回動する際の抵抗力を、背凭れ9が後傾位置から起立位置へ回動する際の抵抗力より大とすることができ、背凭れ9の後傾時と、起立時とに必要とする抵抗力の大きさの相違に対応することができる。
【0094】
以上から明らかなように、この実施形態によると、椅子の下部構成体である支基6に、背凭れ9が後傾位置から起立位置へ回動する際に、背凭れ9に抵抗力を付与する第1〜第3抵抗力付与手段E、F、Gを設けてあるので、背凭れ9を後傾位置から起立位置に戻す際に、第1〜第3抵抗力付与手段E、F、Gにより、背凭れ9の回動に抵抗力が付与され、背凭れ9が急激に回動することがなくなり、着座者の背中が背凭れにより押されたり、背凭れ9が着座者の背中に当接したりして、着座者に不快感を与えることを解消することができる。
【0095】
なお、本発明においては、特許請求の範囲を逸脱することなく、幾多の異なる形態での実施が可能である。
例えば、第1抵抗力付与手段Eを省略して実施したり、第2および第3抵抗力付与手段F、Gのうち、いずれか一方を省略して実施したりすることもでできる。
また、回動付勢手段Bとして、ねじりコイルばねを用いたり、単一の、または3個以上のゴムトーションスプリングを用いたりすることができる。
【0096】
さらに、本発明は、座に対して、背凭れを、ほぼ垂直をなす起立位置と、後方に傾斜した後傾位置との間を回動可能として支持し、かつ背凭れを、付勢手段により、起立位置に向けて常時付勢するようにした椅子にも適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
A 付勢手段
B 回動付勢手段
C 付勢力調節手段
D ガススプリングユニット
E 第1抵抗力付与手段(ディスクダンパー)
F 第2抵抗力付与手段(ロータリダンパー)
G 第3抵抗力付与手段
1 キャスタ
2 脚杆
3 脚体
4 ガススプリング
5 脚柱
6 支基
6a支基本体
6b腕部
6c半円筒部
7 上部カバー
8 枢軸(芯材)
8a角軸部
9 背凭れ
9a背凭れフレーム
9bシート材
10 背凭れ支持杆
10a筒部
10b起立腕
11 ゴムトーションスプリング
12 ガススプリング
13 下部カバー
14 座
14a座フレーム
14bシート材
15 座受けフレーム
16 軸
17 傾斜面
18 起立壁
19 傾斜受け面
20 外れ止め手段
21 長孔
22 有頭軸
22a拡大頭部
23 開口
24 空所
25 肘掛け
26 腕部
27 外筒
28 弾性体
29 軸受
29a突起
30 止めねじ
31、32 凹部
33、34 切欠き
35 軸
36 ヘッドカバー
37 軸
38 操作ノブ
39 操作レバー
40 アウターチューブ
41 ワイヤ
42 作動レバー
43 順ねじ部
44 逆ねじ部
45 操作ハンドル
46 操作軸
47、48 雌ねじ孔
49、50 移動駒
51 軸
52 連結杆
52a基片
52b側方突出部
53 軸
54、55 リンク
56 操作レバー
57 アウターチューブ
58 ワイヤ
61 ケーシング
61a内向き突起
62 流体室
62a、62b 圧力室
63 ロータ
64 ベーン
65 オリフィス
66、66' 調整弁
67 固定ねじ
68 板ばね
71 シリンダ
72 流体室
72a第1圧力室
72b第2圧力室
72c第3圧力室
73 フリーピストン
74 作動ピストン
75 ピストンロッド
76 貫通孔
77 操作ロッド
77a拡径頭部
77b縮径部
77c弁体
78 オリフィス
79、79' 凹入部
80、80' 調整弁
81 板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子の下部構成体または座に対して、背凭れを、ほぼ垂直をなす起立位置と、後方に傾斜した後傾位置との間を回動可能として支持し、かつ前記背凭れを、付勢手段により、起立位置に向けて常時付勢するようにした椅子において、
前記下部構成体または座に、背凭れが後傾位置から起立位置へ回動する際に、背凭れに抵抗力を付与する抵抗力付与手段を設けたことを特徴とする椅子。
【請求項2】
抵抗力付与手段を、背凭れの後傾位置から起立位置への回動時の回動モーメントの大きさに基づいて、付与する抵抗力を、回動モーメントが大きいほど大となるように自動的に調整する機能を備えるものとした請求項1記載の椅子。
【請求項3】
抵抗力付与手段を、背凭れが起立位置から後傾位置へ回動する際にも、背凭れに抵抗力を付与するものとした請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
抵抗力付与手段を、背凭れの起立位置から後傾位置への回動時の回動モーメントの大きさに基づいても、付与する抵抗力を、回動モーメントが大きいほど大となるように自動的に調整する機能を備えるものとした請求項3記載の椅子。
【請求項5】
付勢手段をロック付きガススプリングとし、抵抗力付与手段を、前記ロック付きガススプリングに組み込んだ請求項1〜4のいずれかに記載の椅子。
【請求項6】
抵抗力付与手段を、ロック付きガススプリングにおけるシリンダに摺動自在に嵌合されたピストンに設けられ、かつピストンによって仕切られたシリンダ内の1対の圧力室同士を連通するオリフィスと、前記ピストンに設けられ、流体室内の両圧力室内の圧力差に基づいて、前記オリフィスの開度を、前記圧力差が大きいほど小となるように制御する調整弁とを備えるものとした請求項5記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−252892(P2010−252892A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103851(P2009−103851)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】