説明

植物繊維製品およびその製造方法

本発明は、経口使用のための植物繊維製品に関し、前記製品は、少なくとも、前記製品が使用される際に製品から放出されることを目的とした少なくとも1種の添加物及び植物繊維の混合物を含む。本発明は、製品が、その製品中に分散し、少なくとも水、アルギン酸塩および添加物を含むアルギン酸塩組成物を含み、前記組成物は、アルギン酸塩マトリックスが損傷を受けていない限り、添加物の少なくとも大部分を強く保持するアルギン酸塩マトリックスを含み、アルギン酸塩マトリックスが形成されるので、使用者の口に存在する化学的および物理的環境で崩壊し、及び/または溶解することができることを特徴とする。本発明は、そのような植物繊維製品の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物繊維製品、および、かかる製品の製造方法にも関する。特に、本発明は、製品に添加される、物質、例えば、カフェイン、ニコチンおよび他の添加物の放出速度を調節することに関する。
【背景技術】
【0002】
口の粘膜を介して、使用者に対し、経口的に使用したり、物質、例えば、ニコチン及びカフェイン、を送達するために使用される際、味を感じさせることを意図した、たくさんの種々の植物繊維製品が存在する。通常、そのような製品には、タバコ、例えば、嗅ぎタバコ(ドライ(dry)またはモイスト(moist))及び噛みタバコが含まれる。しかしながら、製品が他の植物繊維に基づく、たくさんのタバコフリーの代替物が、例えばSE 529 886 (そば及びトウモロコシの繊維)、US 2007/0000506 (コーヒー及び茶)及びWO 2009/010884 (茶及び柑橘類の繊維)から、公知である。
【0003】
例えばWO 2009/010884から、官能物質または活性物質、例えば、カフェイン、ミント、シナモン、抗酸化物質及びビタミンを、そのような経口製品に添加することは公知である。
【0004】
このタイプの製品を使用すると、添加物は、比較的素早く溶解する傾向を有し、使用者の血流での吸収のために粘膜を介して利用可能となる。このような迅速な送達速度は特定の状況において有利であり得るが、時には、添加物が使用者により遅い送達速度で、しかしながらより長期間、場合により1時間以内で送達される、より遅い送達が望ましい。
【0005】
送達速度を長引かせ、制御できるようにするために、WO 2009/010884において、味覚物質及び他の物質を含むことが可能であり、かつ、例えば、特に望まれる時には使用者の歯により砕かれることが可能である、小さい、固形のカプセルを使用することが提案されている。しかしながら、これらのカプセルを具体的にどのように製剤化でき、または生産できるのかは開示されていない。
【0006】
従って、添加物の放出速度を調節する課題解決についての必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】SE 529 886
【特許文献2】US 2007/0000506
【特許文献3】WO 2009/010884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、既存の製品において達成されるよりも、添加物の放出速度のより良い調節を可能にする経口使用のための植物繊維製品を提供することである。この目的は請求項1及び12に記載の製品及び方法によって達成される。従属請求項は、本発明の有利な実施形態、発展型及び変異型を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、経口使用のための植物繊維製品に関し、前記製品は、前記製品が使用される際に製品から放出されることを目的とした少なくとも1種の添加物及び少なくとも植物繊維の混合物を含む。
【0010】
本発明に従う製品は、その製品中に分散した、少なくとも水、アルギン酸塩および添加物を含むアルギン酸塩組成物を含み、前記組成物は、アルギン酸塩マトリックスが損傷を受けていない限り、添加物の少なくとも大部分を保持するアルギン酸塩マトリックスを含み、かつ、アルギン酸塩マトリックスが形成されるので、使用者の口内に存在する化学的および物理的環境で崩壊し、及び/または溶解することができる。
【0011】
このような製品の有利な効果は、製品が使用される際にアルギン酸塩マトリックスが徐々に崩壊し、及び/または溶解することであり、それは、添加物が徐々に口内で放出されることを意味する。かかる態様で、特定の期間にわたって活性物質の放出が生じるように活性物質の放出が調節される。添加物が使用者により吸収されることを意図した活性物質、例えばカフェインまたはニコチンである場合、製品から粘膜を介した使用者の血流への活性物質の好ましい送達は、マトリックスが溶解し/崩壊し続ける限り、達成可能である。添加物が味覚物質から成る場合、前記味覚物質は、使用者の口腔に対して長期間にわたって送達され、これは、味覚がより長時間維持され得ることを意味する。例えば、アルギン酸塩の種類(1種または複数)またはその/それらの組成物における相対量を変化させることによって、添加物の送達速度が経時的に変化するように改変し、製造さえできるような態様で、アルギン酸塩マトリックスを製剤化したり、または調製することが可能である。
【0012】
本発明に従う製品のさらなる有利な効果は、結合した添加物の放出まで、アルギン酸塩組成物/アルギン酸塩マトリックスが、添加物(1種または複数)に対する保護的な被覆として存在することである。これは、例えば、酸化-感受性物質が酸化剤と接触することから防護されることを意味する。このような酸化剤は、例えば、植物繊維に由来しており、または、後者の(前)処理の間に添加可能である。保護的な被覆は、それが、添加物の局所的な環境における適当なpHを維持することも可能であることを意味する。pHは、また、植物繊維に由来する物質またはそれらの処理によっても影響され得る。抗酸化物質及び/またはpH緩衝物質を、例えば、本発明に従うアルギン酸塩組成物に含めることにより、保護的な被覆中に存在する活性物質のさらなる保護を提供することが可能である。
【0013】
アルギン酸の塩である、アルギン酸塩は、市販されている周知の物質である。それは、例えば、食料品や同様の製品、例えば、本明細書に関係するタイプの植物繊維製品、の製造における増粘剤及びゲル化剤として使用される。
【0014】
語句「経口使用」は、通常の使用において、嗅ぎタバコ製品(moist snuff products)が通常使用されるのと同じ態様で、使用者の口腔におけるどこか、例えば唇の下に配置される、製品を意味する。
【0015】
語句「前記製品が使用される際に製品から放出されることを目的とした添加物」は、植物繊維に由来し得る全ての物質に加えて、製品に添加される物質または剤(agent)を意味する。本発明に従う製品に好適な植物繊維は、製品が使用される際にも放出されるテイン、カフェインまたはニコチンなどの物質を含んでよい。該語句は、また、口の粘膜を介して使用者により飲み込まれるかまたは吸収されるべき味を感じさせる目的で使用される時に製品から放出されることを特に目的とする物質を意味するものとも理解される。
【0016】
語句「アルギン酸塩マトリックス」は、水に溶解した時にアルギン酸塩が形成するネットワーク(network)を意味する。アルギン酸塩マトリックスは溶液/混合物の形態であり、その粘度と溶解の迅速性は、一般に、例えば、アルギン酸塩の種類、アルギン酸塩/水の比率、温度などで変化する。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、製品は使用者の口内の粘膜を介して使用者に物質を送達できるように適合され、加えて、前記少なくとも1種の添加物は、活性物質、例えば、カフェイン、であり、製品が使用される際に口内で粘膜を介して吸収され得る。
【0018】
語句「口内で粘膜を介して吸収され得る活性物質」は、まず、経口粘膜を介して使用者の血流への送達を可能とするそれらの物質を意味する。次に、用語「活性物質」は、吸収された後、使用者に有意な効果を与えるそういった物質、例えば、中枢神経系に刺激作用を有する物質、活力を与える効果、解熱作用若しくは鎮痛作用を有する物質、または体に有用な物質、例えば、ビタミン、抗酸化物質及び鉱物、を意味するものと理解される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つの活性物質は、以下のカテゴリーのいずれかに属する1種以上の物質を含む:API(活性医薬原体)、食品添加物、天然薬剤(natural medicament)または天然に存在する物質であってヒトに効果を有し得るもの。このような物質の例は、カフェイン、ニコチン、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、バイオペリン(bioperin)、Q10、セレニウム、グルタチオン、リポ酸(liponic acid)、葉酸、朝鮮人参、花粉抽出物、抗酸化物質、鉱物、パラセタモール、アセチルサリチル酸、ロディオラロゼア(Russian root)及びイワベンケイなどである。
【0020】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記少なくとも1種の添加物は味覚物質である。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記アルギン酸塩は1価の陽イオンのアルギン酸の塩を含む。好ましくは、前記アルギン酸塩は冷水に可溶である。かかるアルギン酸塩は、適切な安定性を有するアルギン酸塩マトリックスの形成を可能にし、また、単純な生産工程を可能にする。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記アルギン酸塩は、異なる溶解もしくは分解特性を有する、少なくとも2つの異なる種類のアルギン酸塩を含む。典型的には、異なる種類のアルギン酸塩は溶解した状態で異なる粘度を有する。かかるアルギン酸塩の組み合わせを使用して、特有の放出カーブを示すアルギン酸塩マトリックスを形成することができ、ここで、例えば、より粘性の少ないアルギン酸塩は相対的に高い初期放出を可能にする一方で、より粘性の高いアルギン酸塩は、より長期間、多かれ少なかれ、連続して放出を継続することを可能にする。従って、この場合、アルギン酸塩マトリックスは2種以上の種類のアルギン酸塩から成る。
【0023】
本発明の別の好ましい実施形態において、植物繊維は1種以上の以下の植物:茶、コーヒー、タバコ、ココア、トウモロコシ(maize)、ハーブ、イエルバ・マテ(yerba mate)及びセルロースに基づく。茶の繊維は、好ましくは、かなりの割合を占める。さらに、好ましくは、植物繊維は、例えば、粉砕及びふるいわけをした後に、主に0.1〜0.9 mmの範囲にある粒度分布を示し、好ましくは、植物繊維は、水蒸気処理される。植物繊維のかかる処理により、例えば、焼くことができる(baked)といった、有利な製品が製造される。
【0024】
本発明は、経口使用のための植物繊維製品の製造方法にも関し、以下の工程:製品中に含まれる植物繊維及び他の成分を混合することを含む。本発明に従う方法は、以下の工程を含むことをも特徴とする:(i) 少なくとも水、アルギン酸塩、及び製品が使用される際に前記製品から放出されることを目的とした少なくとも1種の添加物を含む、アルギン酸塩組成物を混合する工程であって、前記組成物は、アルギン酸塩マトリックスが損傷を受けていない限り、添加物の少なくとも大部分を保持するアルギン酸塩マトリックスを少なくとも部分的に形成し、かつ、アルギン酸塩マトリックスが形成されるので、使用者の口内に存在する化学的および物理的環境中で崩壊し、及び/または溶解することができる、工程、及び(ii)植物繊維を前記アルギン酸塩組成物と混合する工程。
【0025】
好ましい実施形態
本発明に従う製品は、典型的には、水、処理された植物繊維、及び味覚物質の形での1種以上の添加物、及び1種以上の添加された活性物質、例えば、カフェインを含む。添加された活性物質とは別に、植物は、当然のことながら、植物繊維に由来する活性物質を含んでよい。植物は着色剤を含んでもよい。
【0026】
植物繊維は、通常、製品の主要な成分を構成し、かつ、とりわけ、製品にその構造を与える。植物繊維は、本明細書に関する製品の種類に対して、多くの異なる態様で処理され得ることは周知である。
【0027】
本明細書に記載される好ましい例において、植物繊維は茶繊維からなる。これらは、嗅ぎタバコが製造される態様に類似して、適切には(前)処理される。この処理の主な特徴は以下の方法による工程によって記載されてよい:
【0028】
A) 乾燥し、磨砕し、および篩にかける(screening)工程。茶繊維の適切な粒子サイズ及び粒度分布は、主として0.1〜0.9 mmであり、平均値は約0.5 mmである。
B) 水及び塩の添加の工程。
C) 加熱し、水蒸気圧入し(injection of steam)、および混合する工程。
D) 冷却する工程。
E) 例えば、炭酸ナトリウム、保存料、味覚物質、保湿剤及び結合剤の添加の工程。
【0029】
かかる態様で処理される茶繊維は、バラバラの(loose)形態での嗅ぎタバコのような部分中に圧縮可能な焼成可能な(bakeable)製品を提供する。
【0030】
好ましくは、工程Eの後に、中間的な貯蔵段階及び完成品が形成される段階が続く。この最終段階は、バラバラの形態で、または、ひとつまみの嗅ぎタバコのような、一人前の分量の小袋入りの形態のいずれかで箱中に製品の適切な包装をする工程を含む。最終製品の別の適切な形態は、使用の際により容易く消費可能であるように、適切には、幾分軟化されたトローチ剤/錠剤に圧縮される。完成品は、フィルム様の形態を有してもよい。
【0031】
適切には、完成した植物繊維製品は、一人前の分量の小袋中、製品に対して、約40〜60%、好ましくは45〜48%の水分含量を有し、焼成可能なバラバラの製品(loose product)に対して50〜54%の水分含量を有する。
【0032】
本発明に従う製品の好ましい実施形態に関する製剤例及びその製造に関する好ましい方法の例を以下に記載する。
【0033】
段階1〜2に従って製造されるアルギン酸塩組成物は、以下、植物繊維を処理する工程における工程B及び/または工程Eに適切には添加される。熱感受性物質は工程Eに適切には添加される。
【0034】
製剤:
10重量部の(前処理された)茶繊維
10重量部の水
2重量部のProtanal(登録商標)LFR 5/60 (FMC BioPolymer)アルギネート
0.1〜0.5重量部のグリセロール
約0.3重量部のカフェイン
約0.5重量部のビタミンB12
(望ましい味覚強度に従った量での)ベルガモット
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態において、カフェイン、ビタミンB12及びベルガモットを除き、代わりに、約0.01重量部のニコチン及び(望ましい味覚強度に従った量での)甘草が含められる。本発明の別の好ましい実施形態において、0.5重量部のアセチルサリチル酸及び(望ましい味覚強度に従った量での)ペパーミントが、代わりに含められる。様々な実施形態を組み合わせ、特定の味覚物質または活性物質を除き、及び/または、他の活性物質及び味覚物質とともに変異例を作り出すことも可能である。
【0036】
製品中の材料の相対量は、もちろん、変化し得る。例えば、活性な添加物の量を、実際の製品についての一人前の分量(portion size)の全重量に従って、適切な分量(portion amount)を含有できるように調整可能である。典型的な植物繊維製品の全重量は約1〜2 gである。一般に、任意の添加物質の適切な分量は以下のとおりである:カフェイン約50 mg; ビタミンB12 約10〜100 mg; ニコチン 約1〜3 mg; 及びアセチルサリチル酸 約100 mg。
【0037】
アルギン酸塩マトリックスが安定な態様で存在できるように、添加物の全量は、アルギン酸塩の重量の約75 %を通常超えるべきではなく、好ましくは、アルギン酸塩の重量の50 %を超えるべきではない。このことは、例えば、アルギン酸塩の種類及び物質の種類に応じて、活性物質が前述の一般的に適切な分量に相当するものよりも少量で添加されるべきであることを意味し得る。
【0038】
方法:
1. 水及びグリセロール、活性物質及び(前記処方に従った)味覚物質を含む水溶液の調製。
2. 水溶液へのアルギン酸塩の添加。均質な(均一に混合された)水溶液/アルギン酸塩組成物を得るための混合。
3. 前処理された茶繊維へのアルギン酸塩組成物の添加。
4. 十分に混合された植物繊維製品を得るための混合。
【0039】
工程1において、その目的は成分を溶解させることである。特定の物質、例えば、ニコチン及びパラセタモールが完全に溶解できるようにpH調整が必要であろう。粘膜による特定の活性物質の吸収を促進するために、pH調整はまた重要であろう。とりわけ、グリセロールは、溶解性を増加させる特性を有するが、また、完成品の稠度(consistency)を改善する特性をも有する。
【0040】
工程2において、アルギン酸塩が適切に溶解できるように、アルギン酸塩を相対的にゆっくりと添加し、かつかなり激しく混合物を攪拌することが重要である。場合により30〜60分までの間攪拌することが必要であろう。添加される活性物質が温度感受性ではないことを条件として、約50℃までの温度増加を採用することによって、アルギン酸塩の溶解を促進することが可能である。一般的に、室温で操作するのが最良である。
【0041】
アルギン酸塩は、一般に、異なる長さ及び種類の多糖分子及び多糖分子の陰性基を相殺する異なる種類の陽イオンからなる。前記の例では、冷水に可溶な低粘度のアルギン酸ナトリウムである、Protanal 5/60が使用される。冷水に可溶なという表現は、アルギン酸塩が室温で水に完全に溶解していることを意味する。
【0042】
アルギン酸塩が水に溶解するとマトリックスが形成され、すなわち、アルギン酸塩分子が水分子に結合するのみならず互いに結合するネットワークが形成され、それにより溶液の粘度が増加する。水に溶解している物質、例えば、添加される活性物質は、とりわけ、静電気力及び立体障害がマトリックスから離れることを防止するので、より強く保持される。
【0043】
アルギン酸塩が溶解する時に生み出される粘度は、主に、アルギン酸塩の種類(1種または複数)(例えば、いわゆるG(グルロン酸)及びM(マンヌロン酸)ブロックの平均分子長及び割合)、アルギン酸塩の濃度及び温度に依存する。
【0044】
アルギン酸塩組成物の粘度は、結合物質を強く保持するために、アルギン酸塩マトリックスの能力の良好な評価尺度である:粘度がより高いと、通常、物質はよりしっかりと結合する。
【0045】
アルギン酸塩が水に溶解する際に形成される組成物は溶液の形態にあるといわれているが、粘度が相対的に高くてもよいので、組成物は必ずしも溶液と通常関連するこれらの特性、例えば液体のように注げる能力を示さない
【0046】
前記工程2の後、通常の条件下で、すなわち、植物繊維製品が使用される前に、例えば、マトリックスを崩壊さえ得、または溶解させ得るさらなる物質が添加されない時には、溶液/組成物の粘度は、物質がアルギン酸塩マトリックス中で強く結合するのに十分に高く、(それにより、組成物が植物繊維製品中に分散される際に製品中に強く結合するのに十分に高い)。同時に、かかる例における粘度は十分に低いので、アルギン酸塩組成物が製造工程中に送り出されるのを可能にし、植物繊維との単純で効果的な混合を可能にする。さらに、組成物の粘度が十分に低いので、製品が使用される際(以下を参照)にマトリックスから適切な速度で結合物質が放出されるのを可能にする。より高い粘度では、溶液/マトリックスは、植物繊維と混合する間に、完全に分散されることが可能なように、力学的にばらばらにされなければならないであろう。あまりに高すぎる粘度は、製品が使用される際に特定の結合物質の放出を妨げるか、または著しく大幅に遅らせ得る。
【0047】
工程1における活性物質は水溶液に添加され、かつ分散されるために、そして、この溶液(もっと粘性のある形態においてでさえ)は植物繊維とより後の工程で混合され、それにより製品中に分散されるがゆえに、活性物質は、それらが相対的に非常に少ない割合しか占めていないという事実にも関わらず、最終的な植物繊維製品中に均質に分散され得る。乾燥形態中への少量の活性物質の良好な分散を達成することは、より著しく困難である。
【0048】
工程4で完全に混合された製品混合物が形成されるように、アルギン酸塩組成物は茶繊維と工程3で組み合わされる。アルギン酸塩マトリックスとそれ中に結合する物質を含む組成物は、それによって、線維の層の形態にある、及び/またはより小さい単離された単位(「液滴(droplet)」)の形態にある植物繊維製品中に分散する。
【0049】
植物繊維製品が何らかの特定の作用、例えば、蒸発、温度上昇、または大量の水もしくは他の液体の添加にさらされない限り、結合した物質はアルギン酸塩マトリックス中に強く保持される。製品が適切な態様で、例えば、気密に、低温状態かつ日光から保護されて保存されることを条件として、結合した物質は場合により1〜3年までの間、マトリックス中に強く保持され得る。
【0050】
例えば噛みタバコが使用される態様で唇下において製品が使用者により口内に配置される時には、使用者の口内に存在する化学的及び物理的環境がアルギン酸塩マトリックスの崩壊及び/または溶解を引き起こすので、条件はこの場合完全に異なる。特に、これは唾液の存在によるものであって、唾液の水分含量がマトリックスを溶解させる溶媒量を増加させるように作用し、さらには、アルギン酸塩マトリックスの多糖類をより小さい、より容易く溶解される成分に崩壊させるアミラーゼを含むことによる。さらに、例えば冷却貯蔵場所と比較して、口内の比較的高い温度がマトリックスの崩壊及び溶解に寄与する。
【0051】
このようにして、マトリックスは次第に溶解し、及び/または崩壊し、経時的に、既に結合した物質の放出を引き起こす。マトリックス中に最早結合していない活性物質は、多くは唾液を介して、口内の粘膜と接触し、かかる態様で使用者の血流中に移行する。このようにして、活性物質は、また、ある期間にわたって吸収される。マトリックスから放出される味覚物質に関して、これらは口内に移行して味覚を生み出す。このようにして、味覚物質がマトリックス中に結合していない場合よりも長い期間、製品は味を与える。
【0052】
アルギン酸塩組成物、すなわち、とりわけアルギン酸塩マトリックスを適合させることにより、全放出時間を適合させ得、かつ、添加物質(単数または複数)の放出曲線が適切な形態で与えられる。重要なパラメーターは粘度であり、それは、例えば、組成物中の水の量との関連でアルギン酸塩の量を変化させ、アルギン酸塩の種類を変化させ、及び異なるアルギン酸塩の相対量を変化させることにより適合され得る。アルギン酸塩組成物は、それが添加され、植物繊維と混合された後、例えば植物繊維製品を蒸発にさらすことによって適合されてもよい。蒸発により水分含量が減り、それは、例えば、アルギン酸塩マトリックスの粘度に影響を与える。
【0053】
処理された植物繊維はアルギン酸塩組成物に影響を与える物質を含んでよい。例えば、特定の物質がアルギン酸塩マトリックスに対して特別の効果を有し得る。さらに、例えば、pH及び水分含量は、植物繊維混合物中で、線維の種類及び処理工程に応じて変化してよく、それらはアルギン酸塩組成物に影響を与え得る。アルギン酸塩組成物は特定の状況に対して適切に適合される。
【0054】
より大きな製品は、例えば、より長い拡散時間へとつながるので、強く保持された物質の放出時間は、また、口内に配置される製品のサイズにもとりわけ依存する。本発明の記載される実施形態に従って、典型的な使用者及び製品の典型的なサイズ、すなわち、通常の嗅ぎタバコひとつまみ分と大体同じ、に関して、約30〜60分の全放出時間が得られ、換言すると、製品は、製品が口内に配置された時から約30〜60分の間、使用者に活性物質及び/または味覚物質を送達する。
【0055】
本発明に従う植物繊維は、特定のアルギン酸塩組成物に含まれるものに加えて、当然に、さらなる量の水、アルギン酸塩及び物質を含むことが可能であることは言うまでもない。アルギン酸塩が植物繊維製品中に含まれるものとして特に適切であり、それは、アルギン酸塩が、粘膜に対して治療作用を有し、さらに、製品のベーキング(baking)能力に対して積極的に貢献するからであることが、本明細書に記述される。さらに、アルギン酸塩はトローチ/錠剤の形態で製品により軟質な外観を与えるのに適切である。治療効果を有するアルギン酸塩は、ベーキング能力を促進し、並びに/または、アルギン酸塩組成物から誘導され得る、及び/もしくは、さらなる添加されるアルギン酸塩から誘導され得る柔軟剤として作用する。
【0056】
上述されるようにアルギン酸塩マトリックスに結合することによって製品に添加されるのに適切な活性物質の例は、好ましくは、以下のカテゴリーのいずれかに属するものである:ヒトに対して効果を有し(プラセボ効果も有し)得る、API(活性医薬原体)、食品添加物、天然薬剤及び天然に存在する物質。このような物質の特定例としては、カフェイン、ニコチン、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンE、バイオペリン、Q10、セレニウム、グルタチオン、リポ酸、葉酸、朝鮮人参、花粉抽出物、抗酸化物質、鉱物、パラセタモール、アセチルサリチル酸、ロディオラロゼア(Russian root)及びイワベンケイなどである。従って、活性物質とは、使用者に対して有意な(感知できる)効果を有するこれらの物質、例えば、中枢神経刺激薬として作用する物質、栄養を与える効果を有する物質、解熱剤または鎮痛剤、または体に有用な物質、例えば、ビタミン、抗酸化物質及び鉱物を意味するものと理解される。
【0057】
上述するように、アルギン酸塩マトリックスへの結合を介した、製品への添加に適切な味覚物質の例は、甘草、ミント、ベルガモット、アニシード、柑橘類化合物、ニワトコ(elder)などである。
【0058】
アルギン酸塩組成物の粘度に関して、一般的に、粘度が増加すると、硬くて、難溶性の化合物/混合物が形成される能力もまた増加すると言われている。より低い粘度は混合物のより素早い湿潤及びより素早い溶解を意味する。結合能力及び水の保持能力は粘度の関数なので、より高い粘度の混合物を溶解させるにはより多くの液体が必要とされる。Gブロック及びMブロックの割合もまた溶解/分解時間に影響を与える。より高い割合のGブロックは溶解及び粘膜に対する接着を加速させる。より長い多糖類はより高い粘度及びより難溶性の混合物を産生する。これらはまた、それらの溶解のためにより多くの唾液を必要とする。より短い多糖類はより低い粘度を生み出し、より少量の唾液とより容易に溶解する。
【0059】
多糖類は正の電荷を有する塩の形態にある。さらに、多糖に沿って部分電荷及び官能基/部位が存在し、それらは、イオン結合、ファンデルワールス力及び双極子結合を介して、物質がこれらの官能部位に結合することを可能にする。さらに、多糖類間の純粋に力学的な結合は物質がマトリックス中強く保持されることを意味する。
【0060】
力学的な機能は、また、アルギン酸塩組成物の粘度にも寄与する。より長い立体的な分子はより容易に互いに結合し、他の溶媒及び取り入れられている物質とともに力学的及び化学的な結合によって強く保持される。
【0061】
本発明は前述の実施形態に制限されず、以下の請求項によって規定される本発明の範囲内において変化可能である。例として、使用される植物繊維が茶に必ずしも基づかなくてよい。異なる種類の茶を混合させることに加えて、植物繊維を、例えば、ハーブ、ココア、コーヒー、イエルバ・マテ、トウモロコシ(maize)、セルロース及び甘草(liquorice root)を基礎にすることもまた可能である。タバコもまた使用可能である。2種以上の異なる植物由来の植物繊維の混合物を使用することもまた可能である。茶繊維に関して記載した方法は、他の植物繊維にも好適である。
【0062】
本発明のさらなる特徴として、活性物質及び/または味覚物質を従来的な態様で、換言すれば、いずれかのアルギン酸塩マトリックスに結合させることなしに、植物繊維製品に添加することが可能である。
【0063】
本発明に好適なアルギン酸塩は、一般に、冷水に溶解し、低い粘度を有する1価の陽イオンのアルギン酸塩である。前記に例示されるアルギン酸塩 LFR 5/60に対する代替物はProtanal(登録商標)LF 10/60 (FMC BioPolymer)であり、これもまたアルギン酸ナトリウム塩であるがより高い粘度を有する。より高い粘度はより長い溶解時間を必要とし、さらに、約1〜1.5時間というより長い全放出時間を生じさせる。LF 10/60を溶解させるために、通常は、アルギン酸塩の重量部あたり、より大量の水が前述の製剤に使用されるものよりも必要とされる。
【0064】
他の溶解または分解特性を有するアルギン酸塩の他の混合物を利用して、添加物の放出曲線を改変することが可能である。例えば、2重量部のLFR 5/60を1重量部のLF 10/60と混合可能であり、このアルギン酸塩混合物をアルギン酸塩組成物中に組み入れることが可能である。アルギン酸塩マトリックスにおけるこれらの割合に関して、比較的素早い初期放出を示す放出プロファイルが得られるが、これは主として、より容易に溶解するLFR 5/60の溶解によるものであり、次第に、より長い時間をかけて、より安定した状態の放出に変化するが、これは主として、LF 10/60のよりゆっくりとした溶解によるものである。LFR 5/60及びLF 10/60の割合を変化させることによって、放出プロファイルまたは放出曲線をさらに改良することが可能である。当然ながら、1種以上の他のアルギン酸塩を混合させて、溶解/放出をさらに適合させることが可能である。当然のことながら、一般に、放出プロファイル及び放出時間は、使用者の唾液の産生、製品がどのように口内に保持されるか、及びいかなる添加物が関与するか、に大いに依存する。
【0065】
2価の陽イオン、例えばCaのアルギン酸塩は、一般的に、不可逆的な溶液/マトリックス(matrices)/ゲルを形成し、それらは、典型的には、有意によりゆっくりと結合物質を放出するが、特定の物質は十分に高速で拡散により放出され得る。また、2価の陽イオンのアルギン酸塩は本発明に従って、少なくとも比較的少量で、1価の陽イオンの1種以上のアルギン酸塩と組み合わせて、製品中に使用可能である。
【0066】
さらなる方法の工程において、アルギン酸塩組成物を加熱することにより、植物繊維に添加する前にアルギン酸塩組成物を安定化することも可能である。
【0067】
例えば、胃/腸/肝臓を介した吸収と比較して、口内の粘膜を介した血中への吸収は、少なくともAPIに関して、より素早く生じ、かつ有意に、より効果的であることに注目すべきである。これは、粘膜による吸収の場合に、API投与量が肝臓代謝に応じて最大で80%まで低減可能であることを意味する。このようなより少ない用量により副作用がより少なくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも:
‐ 植物繊維;及び
‐ 植物繊維製品が使用される際に前記製品から放出されることを目的とした少なくとも1種の添加物
の混合物を含む、経口使用のための植物繊維製品であって、
前記製品はその製品中に分散した、少なくとも水、アルギン酸塩および添加物を含むアルギン酸塩組成物を含み、前記組成物は、アルギン酸塩マトリックスが損傷を受けていない限り、添加物の少なくとも大部分を保持するアルギン酸塩マトリックスを含み、かつ、アルギン酸塩マトリックスが形成されるので、使用者の口内に存在する化学的および物理的環境で崩壊し、及び/または溶解することができることを特徴とする、製品。
【請求項2】
少なくとも1種の添加物が溶解する水溶液中でアルギン酸塩マトリックスが産生される態様でアルギン酸塩組成物が調製されることを特徴とする、請求項1に記載の植物繊維製品。
【請求項3】
製品が使用者の口内の粘膜を介して使用者に物質を送達できるように適合され、前記少なくとも1種の添加物は、活性物質、例えば、カフェイン、であり、製品が使用される際に口内で粘膜を介して吸収され得ることを特徴とする、請求項1または2に記載に植物繊維製品。
【請求項4】
少なくとも1種の活性物質が、以下のカテゴリー:API(活性医薬原体)、食品添加物、天然薬剤及び天然に存在する物質であって人体に効果を有し得るもの、のいずれかに属する1種以上の物質であることを特徴とする、請求項3に記載の植物繊維製品。
【請求項5】
前記少なくとも1種の添加物が味覚物質であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の植物繊維製品。
【請求項6】
前記アルギン酸塩が1価の陽イオンのアルギン酸塩を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の植物繊維製品。
【請求項7】
前記アルギン酸塩が冷水に可溶であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の植物繊維製品。
【請求項8】
前記アルギン酸塩が異なる溶解もしくは分解特性を有する、少なくとも2つの異なる種類のアルギン酸塩を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の植物繊維製品。
【請求項9】
植物繊維が以下の植物:茶、コーヒー、タバコ、ココア、トウモロコシ、ハーブ、イエルバ・マテ及びセルロースの1種以上に基づくことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の植物繊維製品。
【請求項10】
植物繊維が主に0.1〜0.9 mmの範囲にある粒度分布を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の植物繊維製品。
【請求項11】
植物繊維が水蒸気処理されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の植物繊維製品。
【請求項12】
以下の工程:
‐ 植物繊維製品中に含まれる他の成分と植物繊維を混合する工程
を含み、以下の工程:
‐ 少なくとも水、アルギン酸塩、及び、製品が使用される際に前記製品から放出されることを目的とした少なくとも1種の添加物を含む、アルギン酸塩組成物を混合する工程であって、前記組成物は、アルギン酸塩マトリックスが損傷を受けていない限り、添加物の少なくとも大部分を保持するアルギン酸塩マトリックスを少なくとも部分的に形成し、かつ、アルギン酸塩マトリックスが形成されるので、使用者の口内に存在する化学的および物理的環境で崩壊し、及び/または溶解することができる、工程、及び
‐ 植物繊維を前記アルギン酸塩組成物と混合する工程
を含む方法であることを特徴とする、経口使用のための植物繊維製品の調製方法。
【請求項13】
アルギン酸塩組成物の混合を、アルギン酸塩が混合される前に水と混合されている、少なくとも1種の添加物とともに実施することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
植物繊維製品が使用者の口内の粘膜を介して使用者に物質を送達できるように適合されており、前記少なくとも1種の添加物は、活性物質、例えば、カフェイン、であり、前記製品が使用される際に口内で粘膜によって吸収され得ることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種の活性物質が、以下のカテゴリー:API(活性医薬原体)、食品添加物、天然薬剤及び天然に存在する物質であって人体に効果を有し得るもの、のいずれかに属する1種以上の物質であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1種の添加物が味覚物質であることを特徴とする、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−522765(P2012−522765A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503359(P2012−503359)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050354
【国際公開番号】WO2010/114445
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511237597)エクス−インターナショナル・エピエス (1)
【Fターム(参考)】