説明

植物苗の短期育成用具および育成方法、定植用植物苗セット、並びに植苗方法

【課題】筒体内の育成材料中に長尺根を短期に成長させる植物苗の育成工程において、筒体内の育成材料の状態と植物苗の成長中の根の先端位置を随時に確認することのできる植物苗の短期育成用具および育成方法、定植用植物苗セット、並びに植苗方法を提供する。
【解決手段】筒体の側面の一部が長手方向に切り欠かれた筒体本体と、該筒体本体の切り欠かれた開口部を塞ぐ透明蓋材と、前記透明蓋材により開口部が塞がれた筒体本体内に充填されている前記植物苗用の育成材料とを有してなり、前記筒体本体内に充填されている育成材料が、前記筒体本体の上部開口部内側に固定する植物苗の根の下方への成長速度を増大させることを可能にする硬度に調整されてなる短期育成用具を用いる。前記筒体本体内に仕切壁を設け、この仕切壁を植物苗の根が乗り越えていることを前記透明蓋材を通して観察して根の成長状態を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物苗を短期に育成することのできる育成用具、該用具を用いた短期育成方法、定植用植物苗セット、および前記植物苗セットを用いた植苗方法に関するものである。本発明は、さらに詳しくは、定植地として、例えば、乾燥地、土壌表層が凍結した寒冷地、土壌表層に塩類が集積した塩類集積地などの植物の育成が困難な地域においても植物苗を順調かつ短期に育成することのできる短期育成用具、該用具を用いた短期育成方法、定植用植物苗セット、および前記植物苗セットを用いた植苗方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、乾燥地における地中の含水分は、緑化容易な他の地帯における含水分に比べて非常に少ない。例えば、アフリカのナイジェリアで2000年に土壌中の含水比を土壌深度について測定した結果では、土壌表面はほとんど含水分がないのに較べ、深さ30cm以上には比較的安定した含水量が認められた。したがって、乾燥地における植物の生き残りは、この安定した含水量のある深さの層へ根を如何に早く到達することができるか否かによって決まる。
【0003】
また、世界に広く分布する塩類集積土壌では、土壌の比較的浅い部分(表面〜20cmないし30cmの深さまで)には塩分が多く含まれていることが、しばしばであり、その部分の含水分が植物育成を可能にする量であっても、その塩分により、育成が阻害されてしまう。
【0004】
従来、前述のような乾燥地帯に植物を育成させるための技術として、例えば、図9に示すような構造体(特許文献1)や、図10に示すような構造体(特許文献2)を用いることが提案されている。
【0005】
図9に示す構造体を用いた植物の育成方法は、次のようである。すなわち、掘削して形成した所要の断面積と深さとを有する空所X内に外筒部材1を装着し、該外筒部材1内に保水材入りの土壌S1を充填したのち、その中央部に形成した空隙内に保水材入りの植生用の土壌S2を充填した内筒部材2を配置し、各土壌S1,S2に灌水を行い、内在する保水材に充分な水分を保持させたのち、内筒部材2内の土壌S2に播種又は苗の植付けをし、外筒部材1によって土壌S1中の水分の外筒部材1外への流出を遮断すると共に、前記土壌S1によって内筒部材2内の土壌S2を地熱から断熱し、当該土壌の冷却化と乾燥を防止して湿潤状態を保持しながら植物を成育させる。
【0006】
また、前記乾燥および塩分対策としては、耐乾性および耐塩性を有する植物種を選択的に用いることによって、定着率を高める努力が行われている。さらに、塩分が多く乾燥した土壌の地域であっても、近くに豊富な水源がある場合には、その水を用いて、土壌中から塩分を洗い流すことも試みられている。
【0007】
また、育成植物の形態として、苗を使用する場合、現在、その苗は、ポット栽培、露地栽培により生産している。
【0008】
図10の構造体は、生分解可能な素材で形成された円筒状の外層5と、保水性と吸水性を備えた円筒状の中間層6と、肥料を混ぜた土壌からなる内層7とによって構成されている。上記中間層6の上面ならびに下面は前記外層5と同じ材料で形成された円盤形の薄い上蓋8ならびに下蓋9によって被覆保護されている。
【0009】
図10の構造体を用いて、乾燥地や砂丘、砂漠等に、植物を成長させる方法は、まず、砂漠等の砂地の底部の伏流水を有する土壌基盤に到達する長さまで複数連結し、砂地をボーリングして埋め込み、種もしくは苗木を内層7に植え込む。苗木定着後、根が土壌基盤に達するまで約30日に一度の割合で約1リットルの注水を行う。
【0010】
【特許文献1】特開2000−032840号公報
【特許文献2】特許第3811801号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献1に記載の技術を用いることで、高い保水性と、高温による根の伸長阻害を抑制することができる。しかしながら、前記特許文献1に記載の技術には、複雑な構造体や培地への保水材の補充作業等の煩雑さがあるため、一連の操作性に多大な労力が要求される。また、点滴灌漑等により植物への継続的な水分供給を行わなくてはならないため、少ないとはいえ蒸発による水の損失が起きる等、さらなる改善点が存在する。
【0012】
また、塩分に強い植物種を用いる乾燥地緑化対策も、現実的には、塩分濃度が高すぎて、塩分に強い植物種を用いても、生物障害等が起こる可能性が高く、その地に定着させることが難しい。
【0013】
また、豊富な水源が近くにある場合に用いられる土壌中の塩分の洗浄除去方法は、乾燥地ではそのような水源が確保できないので、非現実的である。
【0014】
また、定植に使用する苗の準備方法として用いられているポット栽培、露地栽培では、育苗期間が長い。
【0015】
前記特許文献2に開示の構造体は、植物の種子や苗にとって定着が困難な乾燥地等の砂地に直接埋め込まれる。埋め込まれた後に内層7に植物の種または苗が植え込まれる。そして、構造体の上から注水して、植物苗に水分を補給する。内層7は、肥料を混ぜた土壌であり、水分を含むことによって、植物への養分と水分の補給源となる。
【0016】
本発明者らの実験によれば、前記特許文献2に開示の構造体および植物の定着方法を用いて植物を成長させた場合、砂地の表面から30cm以上の深さにある伏流水に到るまで、植物の根を成長させることはできなかった。その原因を探求したところ、植物の苗が植え付けられる内層7が肥料を含み、かつ十分な水分を与えられるため、植物は、この内層7から養分および水分を得るために分岐した短い根が多数発生するだけで、30cm以上の下方に位置する伏流水に達するまでの長尺な根が成長しないことが判明した。したがって、この特許文献2に開示の構造体および植物の定着方法によれば、乾燥地に植物を定着させることが難しく、可能であったとしても、定着に長期間を要し、その間、常に注水を絶やすことができず、定着までに要する注水量が膨大なものになり、コスト面で定植事業は破綻せざるを得ない。
【0017】
これに対して、本発明者らは、乾燥地や寒冷地や表層塩類集積地域などの土壌表層の水分が利用し難い(植物育成に必要な水分を確保しにくい)定植地において現地の土壌に順調に植苗することができ、かつ定植地において積極的に人工的に水分を補給しなくとも、苗を確実に定着させ、成長させることのできる技術を確立すべく、鋭意、実験、検討を重ねた。
【0018】
その結果、砂漠などの実際の定植地に植え付ける前に、定植地とは別の適当な環境下において、図11、12に示すように、前記定植地の地下含水層に到達可能な長さを有する筒体10の上部開口部10a内側に植物苗11を固定するとともに、前記筒体10の内側に前記植物苗11の根の下方への成長速度を増大させることを可能にする硬度で人工土壌等の育成材料12を充填し、前記植物苗11の根の前記筒体10下方への成長を促進させることにより、長尺な根11aを有する植物苗11を得ることできることが知見された。前記育成材料12の硬度としては、育成後の前記植物苗を定着させようとする定植地の土壌硬度以下に設定すれば良く、好ましくは、育成材料12は筒体10の内壁10bから脱落しない範囲内で可能な限り低密度に充填させる程良い。そして、水分補給は、育成材料12の上部からの注水によると、植物の根は下方に長く伸びる必要性を感知しないので、筒体10の下端部分のみを水中に間欠的に漬けることによって植物苗11に根を下方に伸ばす必要性を感知させる負荷を与えれば、それにより長尺根11aの成長を実現できることも判明した。また、筒体10内の育成材料12に筒体10の上方から注水を行うと、筒体10内に低密度に充填されていた育成材料が脱落しやすくなるので、かかる点からも筒体10下部から筒体10の材料および育成材料の吸水性を利用した水分補充が好ましいことが確認された。
【0019】
前述のようにして、筒体10の下端に到り、さらに筒体10下端からさらに下方に長尺根11aが伸びるようになるまで、長尺根11aが成長したなら、この長尺根11aを有する植物苗を、その成長を支えた筒体10とともに、定植地に搬送し、その筒体10とともに定植地のボーリング穴(地下含水層に到達)に挿入し、埋め込む。この埋め込んだ時点で、筒体10内に収容されている植物苗11の長尺根11aは、植物の生育に適した地下水に即時的に接触し、水分を吸収し始めることになる。その結果、植え付けた植物の定着率が大幅に向上し、しかも、地表からの注水もほとんど不要となるので、その後の植物生育のためのコストも大幅に低減することができる。
【0020】
本発明者らは、育成材料を所定の硬度にて充填させてなる筒体(短期育成用具)と、該筒体内にて長尺な根を成長させた植物苗と前記筒体とを一体にしたものを、植物苗セットとして流通させることにより、砂漠等の定植地へ、植物苗に損傷を与えることなく、搬送でき、定植地への植物の植え付け(植苗)も、簡易に行うことができ、定着率も格段に向上させることができることを、中規模生産レベルにて、確認することができた。
【0021】
かかる一連の技術、すなわち、定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得るための植物根の短期育成用具、育成方法、植物苗セット、および植苗方法を、確立した後、本発明者らは、さらに、かかる技術における育成工程について改良すべき点を検討することになった。
【0022】
その結果、育成工程において、植物苗の根の成長端が筒体内のどこに位置しているか、そして育成材料に脱落や偏り等の充填不良が発生していないかどうかを随時に知ることができれば、潅水する位置、潅水の間隔、潅水の量を最適化することができ、そして根が損傷を受ける前に育成材料の再調整を実施し、植物苗の生産における不良率を大幅に低減可能であることが知見された。
【0023】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、その課題は、筒体内の育成材料中に長尺根を短期に成長させる植物苗の育成工程において、筒体内の育成材料の状態と植物苗の成長中の根の先端位置を随時に確認することのできる植物苗の短期育成用具および育成方法、定植用植物苗セット、並びに植苗方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項[1]に記載の植物苗の短期育成用具は、定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得るための植物苗の短期育成用具であって、筒体の側面の一部が長手方向に切り欠かれた筒体本体と、該筒体本体の切り欠かれた開口部を塞ぐ透明蓋材と、前記透明蓋材により開口部が塞がれた筒体本体内に充填されている前記植物苗用の育成材料とを有してなり、前記筒体本体内に充填されている育成材料が、前記筒体本体の上部開口部内側に固定する植物苗の根の下方への成長速度を増大させることを可能にする硬度に調整されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項[2]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項1に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体本体が半割形状であり、その半割の開口部を前記透明蓋材が塞いでいることを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項[3]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項1または2に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体本体内に複数の仕切壁が前記透明蓋材との間に所定の間隙を持つとともに長手方向に所定の間隔を置いて取り付けられていることを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項[4]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記育成材料の硬度が、育成後の前記植物苗を定着させようとする定植地の土壌硬度以下であることを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項[5]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記育成材料が、土壌、砂、礫、土壌代替物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0029】
本発明の請求項[6]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が透水性を有することを特徴とする。
【0030】
本発明の請求項[7]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が保水性を有することを特徴とする。
【0031】
本発明の請求項[8]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が通気性を有することを特徴とする。
【0032】
本発明の請求項[9]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が生分解性材料から構成されていることを特徴とする。
【0033】
本発明の請求項[10]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得るための植物苗の短期育成用具であって、開口側を重ね合わすと一続きの筒体を構成する2つの樋状の半割筒体が少なくとも2つ互いの側縁を屈折可能に連結してなる半割連結体と、この半割連結体のそれぞれの半割筒体内に充填されている前記植物苗用育成材料と、前記半割連結体を所定角度傾斜させて固定する傾斜固定手段と、前記半割連結体の開口部を開閉自在に覆う透明蓋材とを有してなり、前記半割連結体内に充填されている育成材料が、前記半割連結体のいずれか一方の半割筒体の上端内側に固定する植物苗の根の下方への成長速度を増大させることを可能にする硬度に調整されていることを特徴とする。
【0034】
本発明の請求項[11]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項10に記載の植物苗の短期育成用具において、前記半割連結体が偶数の複数個の半割筒体から構成されていることを特徴とする。
【0035】
本発明の請求項[12]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項10または11に記載の植物苗の短期育成用具において、前記半割筒体内に複数の仕切壁が前記透明蓋材との間に所定の間隙を持つとともに長手方向に所定の間隔を置いて取り付けられていることを特徴とする。
【0036】
本発明の請求項[13]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項10〜12のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記傾斜固定手段が前記半割連結体の下部側面全体を支える傾斜面を有することを特徴とする。
【0037】
本発明の請求項[14]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項10〜13のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記育成材料の硬度が、育成後の前記植物苗を定着させようとする定植地の土壌硬度以下であることを特徴とする。
【0038】
本発明の請求項[15]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項10〜14のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記育成材料が、土壌、砂、礫、土壌代替物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0039】
本発明の請求項[16]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項10〜15のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が透水性を有することを特徴とする。
【0040】
本発明の請求項[17]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項10〜16のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が保水性を有することを特徴とする。
【0041】
本発明の請求項[18]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項10〜17のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が通気性を有することを特徴とする。
【0042】
本発明の請求項[19]に記載の植物苗の短期育成用具は、前記請求項10〜18のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が生分解性材料から構成されていることを特徴とする。
【0043】
本発明の請求項[20]に記載の植物苗の短期育成方法は、前記請求項1〜9のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具を用いて定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得る植物苗の短期育成方法であって、前記透明蓋材により開口部を塞がれてなる筒体本体の上部開口部内側の育成材料中に植物苗を固定し、前記植物苗の根を前記筒体本体の下方へ成長させることにより、前記長尺な根を有する植物苗を得ることを特徴とする。
【0044】
本発明の請求項[21]に記載の植物苗の短期育成方法は、前記請求項20に記載の植物苗の短期育成方法において、前記透明蓋材を通して筒体本体内の育成材料および成長中の根の状態を観察することを特徴とする。
【0045】
本発明の請求項[22]に記載の植物苗の短期育成方法は、前記請求項3に記載の植物苗の短期育成用具を用いて定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得る植物苗の短期育成方法であって、前記筒体本体内に設けた仕切壁を植物苗の根が乗り越えていることを前記透明蓋材を通して観察して根の成長状態を確認することを特徴とする。
【0046】
本発明の請求項[23]に記載の植物苗の短期育成方法は、前記請求項10〜19のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具を用いて定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得る植物苗の短期育成方法であって、前記半割連結体を構成している複数の半割筒体の一つ置きに、その上端内側の育成材料中に植物苗を固定し、前記植物苗の根を前記筒体下方へ成長させることにより、前記長尺な根を有する植物苗を得ることを特徴とする。
【0047】
本発明の請求項[24]に記載の植物苗の短期育成方法は、前記請求項23に記載の植物苗の短期育成方法において、前記透明蓋材を通して半割筒体内の育成材料および成長中の根の状態を観察することを特徴とする。
【0048】
本発明の請求項[25]に記載の植物苗の短期育成方法は、前記請求項12に記載の植物苗の短期育成用具を用いて定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得る植物苗の短期育成方法であって、前記半割筒体内に設けた仕切壁を植物苗の根が乗り越えていることを前記透明蓋材を通して観察して根の成長状態を確認することを特徴とする。
【0049】
本発明の請求項[26]に記載の植物苗の短期育成方法は、前記請求項23〜25のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成方法において、前記傾斜固定手段により所定角度傾斜して固定された半割連結体を固定状態のまま該半割連結体の上側面を開放し、内部の育成材料に直接水分を供給することを特徴とする。
【0050】
本発明の請求項[27]に記載の定植用植物苗セットは、前記請求項1〜9のいずれか1項に記載の短期育成用具に該短期育成用具の下端に至る長尺な根を有する植物苗が収容されてなる。
【0051】
本発明の請求項[28]に記載の定植用植物苗セットは、前記請求項10〜19のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具を構成する半割連結体の多数の半割筒体を、育成材料と長尺に成長した根を有する植物苗とを内部に有する半割筒体と該植物苗を有する半割筒体に隣接する育成材料のみを内部に有する半割筒体とを一組として個々に切り離し、前記植物苗を有する半割筒体と育成材料のみを収容する半割筒体とをそれらの屈折可能な連結部を中心に折り合わせることにより一続きの筒体として得られた定植用植物苗セット。
【0052】
本発明の請求項[29]に記載の定植用植物苗セットは、前記請求項28に記載の定植用植物苗セットにおいて、前記長尺な根を有する植物苗が前記請求項23〜26のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成方法により育成されたものであることを特徴とする。
【0053】
本発明の請求項[30]に記載の定植地における植苗方法は、前記定植地の地中に縦穴を植物が生育するために必要な品質および量の水を有する含水層に至るまで掘削し、該縦穴に、前記請求項27〜29のいずれか1項に記載の定植用植物苗セットを埋め込むことによって、定植地に植苗することを特徴とする。
【発明の効果】
【0054】
本発明にかかる植物苗の短期育成用具、短期育成方法、定植用植物苗セット、および定植地における植苗方法よれば、育成工程において、植物苗の根の成長端が筒体内のどこに位置しているか、そして育成材料に脱落や偏り等の充填不良が発生していないかどうかを随時に知ることができる。その結果、本発明によれば、内部に植物苗を成長させている筒体における潅水すべき最適な位置を随時に特定することができ、その潅水の時期、潅水の量を最適化することができ、さらに育成材料の充填状態に異常がある場合には、根が損傷を受ける前に育成材料の再調整を行うことができる。これらにより、植物苗の生産における不良率を大幅に低減し、砂漠などの良質な含水土壌層が深部にある定植地に適した長尺根を有する植物苗を短期に効率的に生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下に、本発明にかかる植物苗の短期育成用具および育成方法、定植用植物苗セット、並びに定植地における植苗方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0056】
図1は、本発明の実施例1を説明するためのもので、本発明にかかる植物苗の短期育成用具の構成を示す図である。この短期育成用具の使用目的は、第1に、乾燥地などの植物の育成が困難とされている地域において、地表から比較的浅い地層では、塩分が存在していることが多く、また、塩が含まれた水分を用いて灌漑を実施した場合には塩類集積が生じており、植物成長に必要な水分量は地中深くの土壌層に至らないと得られないため、そのような土壌層に到達可能な長尺な根を有する植物苗を育成することにある。第2に、植物苗を育成する筒体内の育成材料の状態、植物苗の根の成長先端位置を随時に確認することを可能とすることにある。
【0057】
その目的のために、この実施例1の短期育成用具20は、筒状部材の側面の一部が長手方向に切り欠かれた筒体本体21と、該筒体本体21の切り欠かれた開口部を塞ぐ透明蓋材22と、前記透明蓋材22により開口部が塞がれた筒体本体21内に充填されている植物苗用の育成材料12とを有してなる。
【0058】
前記筒体本体21内には、図2に示すように、複数の仕切壁23が前記透明蓋材22との間に所定の間隙を持つとともに長手方向に所定の間隔を置いて取り付けられている。
【0059】
前記筒体本体21内には、育成材料12が、該筒体本体21の上部開口部内側に固定する植物苗11の根の下方への成長速度を増大させることを可能にする硬度を維持するような密度に充填されている。この育成材料12の筒体10内での硬度は、定植地の土壌硬度以下に調整されている。硬度を周知の乾燥密度で表すと、ダイズでは、定植土壌硬度が1.5Mg・m-3の場合、土壌硬度を1.35Mg・m-3に調整すれば、根の下方への伸長速度を(定植土壌硬度(=1.5Mg・m-3)の場合に比べて)2倍以上に増大させることができ、土壌硬度を0.5Mg・m-3以下に調整すれば、根の下方への伸長速度を(定植土壌硬度(=1.5Mg・m-3)の場合に比べて)5倍以上に増大させることができる。すなわち、この育成材料12の筒体10内での硬度は、できるだけ低い方が好ましい。
【0060】
前記育成材料12の硬度をできるだけ低くすると言う目的に対して、筒体本体21内に設けられている仕切壁23が育成材料12を保持する役目を果たしている。すなわち、仕切壁23により育成材料12の充填密度を低くしても育成材料12の脱落が防止でき、育成材料12の硬度を低くすると言う目的を達することができる。
【0061】
また、植物苗11の長尺根11aは成長して仕切壁23に近づくと、その仕切壁23を回避してさらに成長するために仕切壁23と透明蓋材22との間の間隙に向かって成長し、この間隙を通ってさらに下方に向かって伸びていく。したがって、透明蓋材22を介して筒体本体21内の仕切壁23が設けられている部分を観察すれば、長尺根11aの成長先端位置を随時に確認することができる。また、透明蓋材22によって、筒体本体21内の育成材料12状態を常に観察することができるので、育成材料12が脱落して、根の成長が阻害されるような事態を事前に知ることができ、適切な再調整処理を施すことが可能となる。
【0062】
なお、前記実施例1では、筒体本体21を半割形状としたが、完全筒体を2〜3割長さ方向に切り欠いた、言うなれば、筒体を八割、七割残した形状とし、その長手方向の切り欠き開放部を蓋材にて開閉自在に塞ぐ構造も、本発明の他の実施例として可能である。
【実施例2】
【0063】
本発明の実施例2を図3〜図5に示す。この実施例2の短期育成用具30の特徴は、図に示すように、開口側を重ね合わすと一続きの筒体を構成する2つの樋状の半割筒体33a、33bが少なくとも2つ互いの側縁を屈折可能に連結してなる半割連結体33と、この半割連結体33のそれぞれの半割筒体33a、33b内に充填されている植物苗用育成材料12と、前記半割連結体33を所定角度傾斜させて固定する傾斜固定手段31と、前記半割連結体33の開口部を開閉自在に覆う透明蓋材34とを有してなる点にある。
【0064】
前記半割連結体33は、生産性を上げるために多数の半割筒体33a、33bとから構成することが望ましい。その数は、33a、33bを一組として設けることが重要であり、総数は偶数となる。
【0065】
また、前記各半割筒体33a、33b内には複数の仕切壁35が前記透明蓋材34との間に所定の間隙を持つとともに長手方向に所定の間隔を置いて取り付けられている。
【0066】
前記構成の半割連結体33を傾斜状態で支持固定する傾斜固定手段31は、傾斜板32を有しており、この傾斜板32の傾斜面によって前記半割連結体33の下部側面全体を支えて、半割連結体33が湾曲したり、屈曲してしまうことを防止している。この傾斜板32の傾斜角度は、30度〜75度に設定されている。傾斜角度を下限値である30度以下とすると、植物苗11の根の下方への伸長が鈍化され始める。また、傾斜角度を上限値である75度以上とすると、内部の育成材料が脱落しやすくなるので好ましくない。
【0067】
この半割連結体33を構成する材料としては、透水性、保水性、および通気性を有する材料が好ましい。このような材料としては、無機および有機物の多孔性材料が使用可能である。無機多孔性材料としては、汚泥乾燥粒子を焼結して得られた多孔性焼結体などが挙げられ、有機多孔性材料としては、合成樹脂の硬質発泡体などが挙げられる。また、この半割連結体33は、後述するように、植物苗11を実際に植苗する際に、植物苗11とともに土中に放置されるので、経時的に分解し、土壌の一部となる生分解性の材料が好ましい。これは、環境を保全するためでもあり、植物苗11が太く成長する場合の束縛とならないようにするためでもある。
【0068】
前記育成材料12は、植物苗11の根に水分と、酸素を供給可能とするために、透水性、保水性、および通気性を有する材料から構成する。そのような材料としては、土壌、砂、礫、バーミキュライト、パーライト、スポンジ状の合成樹脂などが挙げられる。
【0069】
前記透明蓋材34としては、透明なプラスチック材料から構成された透明板状部材、透明シート状部材、透明フィルム部材のいずれかを用いることができる。半割連結体33は傾斜固定手段31によって傾斜状態に固定されており、内部の育成材料12は安定的に保持されているので、前記透明蓋材34は、主に育成材料12の水分蒸発を防止するために、半割連結体33上に載置するだけの簡易な取り付け方法でよい。
【0070】
この実施例2の短期育成用具30を用いて定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得る植物苗の短期育成方法は、前記半割連結体33を構成している複数の半割筒体33a、33b・・・・・の一つ置きに、その上端内側の育成材料12中に植物苗11を固定し、前記植物苗11の根を前記下方へ成長させることにより、長尺な根を有する植物苗を得ることを特徴とする。
【0071】
この短期育成方法では前記透明蓋材を通して半割筒体内の育成材料および成長中の根の状態を観察することができる。その場合、植物苗11を植えた方の半割筒体33b内に設けた仕切壁35を植物苗11の根11aが乗り越えていることを前記透明蓋材34を通して観察することになる。
【0072】
この実施例2の短期育成用具30を用いた植物苗の短期育成方法では、前記傾斜固定手段31により所定角度傾斜して固定された半割連結体33を固定状態のまま該半割連結体33を覆っていた透明蓋材34を一時的に外して上側面を開放し、内部の育成材料12に直接水分を供給することができる。
【0073】
このようにして各半割筒体33b内の植物苗11の長尺根11aが各半割筒体33bの下端にまで達したら、半割連結体33を構成している多数の半割筒体33a、33bを、育成材料12と長尺に成長した根11aを有する植物苗11とを内部に有する半割筒体33bと該植物苗を有する半割筒体33bに隣接する育成材料12のみを内部に有する半割筒体33aとを一組として個々に切り離なす。この切り離し箇所は、図4および図5において示すと、Cで示す箇所になる。
【0074】
前記切り離した後は、図6に示すように、半割筒体33aと半割筒体33bとが一組になった最小単位の半割連結体が得られる。そこで、前記植物苗を有する半割筒体33bと育成材料のみを収容する半割筒体33aとをそれらの屈折可能な連結部を中心に折り合わせる。その結果、図7に示すような一続きの筒体がえられるので、これを定植用植物苗セット36として流通させることができる。
【実施例3】
【0075】
この実施例3では、本発明の短期育成用具を用いた植苗方法の一例(図8)を示す。この実施例3では、前記実施例2に示した構成の定植用植物苗セット36を用いる場合を説明するが、実施例1の定植用植物苗セットを用いても同様に実施することができる。
【0076】
植物苗セット36を定植地40に搬送したら、まず、図8に示すように、乾燥地等の定植地40の地中に植物苗セット36の筒径と同径の縦穴41を植物が育成するために十分な良質水分を含んだ土壌層42に至るまで掘削する。
【0077】
次に、該縦穴41に、前述の植物苗セット36を挿入する。続いて、空隙に現地の土壌を補う。これにより、図8に示すように、定植地の土壌中に植物苗11の植え付けが完了する。この状態で、植物苗11の長尺根11aは、育成材料12と半割筒体33a,33bとに保護されて、その先端を土壌深部の良質な含水土壌層42内に挿入され、水分に接触される。
【0078】
前記半割筒体33a、33bを生分解性材料から構成しておけば、経時的に徐々に分解し、現地の土壌と一体化していく。その期間中に長尺根11aは含水土壌層42から良質な水分を吸収して、さらに成長し、この定植地において、植物苗11本体の成長を支えるに到る。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかる植物苗の短期育成用具、短期育成方法、定植用植物苗セット、および定植地における植苗方法は、長尺な根を有する植物苗(深根苗)を短期に効率的に育成することができる。しかも、その育成中における育成材料の状態、植物苗の根の成長状態を随時に観察することができ、育成条件を常に最適化することができ、良質な長尺根を有する植物苗を大量生産することができる。すなわち、本発明により、深根苗を短期間で育成(節水)、量産することが可能となり、かつ定着率を高めることが可能であることから、乾燥地などの植物の育成が困難な地域の緑化を容易かつ大規模に実施することができ、食糧問題や、二酸化炭素の固定という観点から地球温暖化防止等の環境問題にも貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の短期育成用具の第1の実施例を示す側面構成図である。
【図2】本発明の短期育成用具の第1の実施例を示す断面構成図である。
【図3】本発明の短期育成用具の第2の実施例を示す一部断面視した側面構成図である。
【図4】本発明の第2の実施例の短期育成用具を構成する半割連結体の平面構成図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面構成図である。
【図6】本発明の第2の実施例の短期育成用具を構成する半割連結体の最小単位を示す断面構成図である。
【図7】本発明の第2の実施例の短期育成用具から作成した植物苗セットの断面構成図である。
【図8】乾燥地などの植物の育成が困難な地域における本発明の植苗方法を示す説明図である。
【図9】乾燥地の緑化に提案されている従来の植苗方法に用いられる構造体の構成を示す図である。
【図10】乾燥地の緑化に提案されている従来の植苗方法に用いられる他の構造体の構成を示す図である。
【図11】本発明に先立って本発明者らが開発した植物苗の短期育成用具の斜視図である。
【図12】図11の短期育成用具の構造を透視した斜視図である。
【符号の説明】
【0081】
11 植物苗
11a 長尺根
12 植物苗用の育成材料
20 短期育成用具
21 筒体本体
22 透明蓋材
23 仕切壁
30 短期育成用具
31 傾斜固定手段
32 傾斜板
33 半割連結体
33a、33b 半割筒体
34 透明蓋材
35 仕切壁
36 定植用植物苗セット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得るための植物苗の短期育成用具であって、
筒状部材の側面の一部が長手方向に切り欠かれた筒体本体と、該筒体本体の切り欠かれた開口部を塞ぐ透明蓋材と、前記透明蓋材により開口部が塞がれた筒体本体内に充填されている前記植物苗用の育成材料とを有してなり、
前記筒体本体内に充填されている育成材料が、前記筒体本体の上部開口部内側に固定する植物苗の根の下方への成長速度を増大させることを可能にする硬度に調整されていることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項2】
請求項1に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体本体が半割形状であり、その半割の開口部を前記透明蓋材が塞いでいることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体本体内に複数の仕切壁が前記透明蓋材との間に所定の間隙を持つとともに長手方向に所定の間隔を置いて取り付けられていることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記育成材料の硬度が、育成後の前記植物苗を定着させようとする定植地の土壌硬度以下であることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記育成材料が、土壌、砂、礫、土壌代替物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が透水性を有することを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が保水性を有することを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が通気性を有することを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が生分解性材料から構成されていることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項10】
定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得るための植物苗の短期育成用具であって、
開口側を重ね合わすと一続きの筒体を構成する2つの樋状の半割筒体が少なくとも2つ互いの側縁を屈折可能に連結してなる半割連結体と、この半割連結体のそれぞれの半割筒体内に充填されている前記植物苗用育成材料と、前記半割連結体を所定角度傾斜させて固定する傾斜固定手段と、前記半割連結体の開口部を開閉自在に覆う透明蓋材とを有してなり、
前記半割連結体内に充填されている育成材料が、前記半割連結体のいずれか一方の半割筒体の上端内側に固定する植物苗の根の下方への成長速度を増大させることを可能にする硬度に調整されていることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項11】
請求項10に記載の植物苗の短期育成用具において、前記半割連結体が偶数の複数個の半割筒体から構成されていることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項12】
請求項10または11に記載の植物苗の短期育成用具において、前記半割筒体内に複数の仕切壁が前記透明蓋材との間に所定の間隙を持つとともに長手方向に所定の間隔を置いて取り付けられていることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記傾斜固定手段が前記半割連結体の下部側面全体を支える傾斜面を有することを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記育成材料の硬度が、育成後の前記植物苗を定着させようとする定植地の土壌硬度以下であることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記育成材料が、土壌、砂、礫、土壌代替物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が透水性を有することを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が保水性を有することを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が通気性を有することを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項19】
請求項10〜18のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具において、前記筒体が生分解性材料から構成されていることを特徴とする植物苗の短期育成用具。
【請求項20】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具を用いて定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得る植物苗の短期育成方法であって、
前記透明蓋材により開口部を塞がれてなる筒体本体の上部開口部内側の育成材料中に植物苗を固定し、前記植物苗の根を前記筒体本体の下方へ成長させることにより、前記長尺な根を有する植物苗を得ることを特徴とする植物苗の短期育成方法。
【請求項21】
請求項20に記載の植物苗の短期育成方法において、前記透明蓋材を通して筒体本体内の育成材料および成長中の根の状態を観察することを特徴とする植物苗の短期育成方法。
【請求項22】
請求項3に記載の植物苗の短期育成用具を用いて定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得る植物苗の短期育成方法であって、
前記筒体本体内に設けた仕切壁を植物苗の根が乗り越えていることを前記透明蓋材を通して観察して根の成長状態を確認することを特徴とする植物苗の短期育成方法。
【請求項23】
請求項10〜19のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具を用いて定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得る植物苗の短期育成方法であって、
前記半割連結体を構成している複数の半割筒体の一つ置きに、その上端内側の育成材料中に植物苗を固定し、前記植物苗の根を前記筒体下方へ成長させることにより、前記長尺な根を有する植物苗を得ることを特徴とする植物苗の短期育成方法。
【請求項24】
請求項23に記載の植物苗の短期育成方法において、前記透明蓋材を通して半割筒体内の育成材料および成長中の根の状態を観察することを特徴とする植物苗の短期育成方法。
【請求項25】
請求項12に記載の植物苗の短期育成用具を用いて定植地に定着可能な長尺な根を有する植物苗を得る植物苗の短期育成方法であって、
前記半割筒体内に設けた仕切壁を植物苗の根が乗り越えていることを前記透明蓋材を通して観察して根の成長状態を確認することを特徴とする植物苗の短期育成方法。
【請求項26】
請求項23〜25のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成方法において、前記傾斜固定手段により所定角度傾斜して固定された半割連結体を固定状態のまま該半割連結体の上側面を開放し、内部の育成材料に直接水分を供給することを特徴とする植物苗の短期育成方法。
【請求項27】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の短期育成用具に該短期育成用具の下端に至る長尺な根を有する植物苗が収容されてなる定植用植物苗セット。
【請求項28】
請求項10〜19のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成用具を構成する半割連結体の多数の半割筒体を、育成材料と長尺に成長した根を有する植物苗とを内部に有する半割筒体と該植物苗を有する半割筒体に隣接する育成材料のみを内部に有する半割筒体とを一組として個々に切り離し、前記植物苗を有する半割筒体と育成材料のみを収容する半割筒体とをそれらの屈折可能な連結部を中心に折り合わせることにより一続きの筒体として得られた定植用植物苗セット。
【請求項29】
請求項28に記載の定植用植物苗セットにおいて、前記長尺な根を有する植物苗が前記請求項23〜26のいずれか1項に記載の植物苗の短期育成方法により育成されたものであることを特徴とする定植用植物苗セット。
【請求項30】
定植地の地中に縦穴を植物が生育するために必要な品質および量の水を有する含水層に至るまで掘削し、該縦穴に、前記請求項27〜29のいずれか1項に記載の定植用植物苗セットを埋め込むことによって、定植地に植苗することを特徴とする定植地における植苗方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−212001(P2008−212001A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50552(P2007−50552)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度文部科学省科学技術試験研究委託業務、「広域水循環予測及び対策技術の高度化」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】