説明

検出信号伝送装置

【課題】高い加工精度を必要とする部品や、その取り付け精密を必要とすることがなく、高いS/N比で超音波信号の検出、伝送を可能とする。
【解決手段】ドレッサヘッド41には、超音波を検出する超音波センサ21を設けると共に、超音波センサ21の検出信号をディジタル信号に変換し、無線変調するよう構成された信号変換送信回路23と、この信号変換送信回路23により無線変調された信号が印加される信号送信用アンテナ26を設ける一方、ドレッサヘッド41の近傍には、信号送信用アンテナ26により放射された信号を受信する信号受信用アンテナ34と、この信号受信用アンテナ26により得られた受信信号の復調を行う信号受信ヘッド35が設けられており、復調された信号は、制御部31を介して所定の信号形式のディジタル信号又はアナログ信号として出力されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレッサ作業や、工作物の加工などの際に生ずる超音波信号を、例えば、工具の位置制御などのために検出し、伝送するための装置に係り、特に、耐ノイズ性の向上、信頼性の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、例えば、研削加工措置における研削砥石と加工物との接触の際に生ずる超音波の検出を可能とした装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、かかる特許文献1には、研削砥石に圧電素子を取着すると共に、この圧電素子に直列に第1のコイルを接続する一方、この第1のコイルの中心軸上に第2のコイルを対向配置し、第1のコイルと第2のコイル間の電磁結合によって、圧電素子により検出された超音波信号を第2のコイル側に得ることができるようにしたものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第446849号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来装置においては、圧電素子の出力信号を第1のコイルへ直接印加し、第2のコイルとの電磁結合によって第2のコイルに圧電素子の出力信号に応じた誘導信号を得るようにした構成であるため、外部の電気的なノイズの影響を極めて受け易く、高いS/N比が確保できないという問題がある。
また、第1のコイルに印加される圧電素子の出力信号のレベルは、微弱であるため、第2のコイルに充分な誘導起電力を得るには、第1のコイルと第2コイルとを微少間隔で接近させて、しかも、精度の高い同軸度で配置する必要がある。そのため、寸法誤差の極力小さな部品加工が必要とされ、装置の高価格化を招くという問題があった。
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、高い部品加工精度や、その取り付けの精度を必要とすることなく高いS/N比で超音波信号の検出ができる検出信号伝送装置を提供するものである。
また、本発明の他の目的は、回転体からの超音波検出のために回転体に取着される部品の摩耗が殆どなく、ぞれに伴い定期的な交換を必要とすることがない検出信号伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る検出信号伝送装置は、
回転体において発生した超音波を検出、伝送する検出信号伝送装置であって、
前記回転体に、前記超音波を検出する超音波センサを設けると共に、当該超音波センサの検出信号をディジタル信号に変換すると共に、無線変調するよう構成されてた第1の電子回路と、前記第1の電子回路により無線変調された信号が印加される信号送信用アンテナを設ける一方、
前記回転体の近傍には、前記信号送信用アンテナにより放射された信号を受信する信号受信用アンテナと、当該信号受信用アンテナにより得られた受信信号の復調を行う第2の電子回路を設けてなるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、超音波センサの出力信号を、伝送路へ出力する前に、超音波センサが設けられたところで即座にディジタル信号に変換して、無線伝送するような構成とすることにより、従来に比して検出された超音波信号のS/N比を格段に向上することができる。
また、従来と異なり、回転体の回転速度を規制するようなスリップリングのような部品を用いることなく検出された超音波を回転体の外部へ伝送できるような構成とすることにより、回転体の高速化が容易となるばかりでなく、スリップリングのように回転体の高速化に伴い摩耗や損傷が増え、頻繁な交換を必要とするような部品を必要としないので、信頼性の高い検出信号伝送装置を提供することができる。
さらに、検出された超音波を無線伝送するような構成としたので、従来と異なり、送信側と受信側との間隔設定に高い精度が要求されることがなく、また、用いられる部品自体についても従来と異なり高い加工精度を必要としないので、より安価で、安定した検出信号伝送装置を提供することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図6を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における検出信号伝送装置が実現される研削加工装置の一概略構成例について、図1を参照しつつ説明する。
この研削加工装置は、後述する検出信号伝送装置が付加された点を除けば、基本的には従来から公知・周知の構成のものと同様の構成を有してなるものである。なお、図1において、検出信号伝送装置は図示を省略したものとなっている。
【0008】
本発明の実施の形態における研削加工装置は、研削加工部101とドレッサ部102とに大別されて構成されたものとなっている。
研削加工部101は、加工物5が取着される加工物保持部1と、研削砥石6が加工物5に対して移動可能に設けられる砥石保持部2とを主たる構成要素として構成されており、研削砥石6による加工物5の加工が行われるようになっている。
加工物保持部1は、図示されない設置面に対して固定された基台部に固着されて設けられた本体部3と、この本体部3において図示されないモータによって回動可能に設けられた回転側チャック4とを具備して構成されている。
【0009】
回転側チャック4は、少なくとも本体部3から突出した部分が概略中空円筒状に形成されており、その先端部分に加工物5が着脱自在に取り付けられるようになっているものである。
砥石保持部2は、研削砥石6が取着されるスライド7が次述するように設けられて構成されたものとなっている。
すなわち、まず、スライド7には、研削砥石6が取着される砥石スピンドル8が図示されないモータにより回動可能に設けられている。研削砥石6は、砥石軸9の一端側に着脱可能に取着されており、この砥石軸9の他端側が砥石スピンドル8に挿入されたものとなっている。
【0010】
スライド7は、フィードテーブル14において、切り込みモータ10の駆動により、加工物5へ移動可能に設けられているもので、フィードテーブル14は、図示されないモータがNC制御により移動制御されるようになっている。さらに、スライド7は、フィードテーブル14上で回動可能に設けられると共に、砥石スピンドル8は、スライド7上で回動可能に設けられたものとなっている。
【0011】
一方、ドレッサ部102は、ドレッサ用モータ40と、ドレッサヘッド41とを主たる構成要素として構成され、研削砥石6のドレッシングが行えるようになっている。
円盤状に形成されたドレッサヘッド41は、ドレッサ用モータ40により回転可能に設けられている。
【0012】
次に、上述した研削加工装置において実現される本発明の実施の形態における検出信号伝送装置の主に電気的な構成例について、図2を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における検出信号伝送装置は、ドレッシング作業において生じた超音波信号を検出、伝送するもので、ドレッサヘッド41に配設される後述するような電子回路への電源供給と、ドレッサヘッド41内でディジタル変換された超音波センサ(図2においては「AE−S」と表記)21の検出信号の外部への伝送を、無線を媒体として行えるよう構成されたものである。
【0013】
具体的には、まず、ドレッサヘッド41には、上述したように超音波センサ21が配置されると共に、アナログ・ディジタル変換器(図2においては「A/D」と表記)22と、信号変換送信回路(図2においては「CONV」と表記)23と、整流回路(図2においては「REC」と表記)24と、電力受信用アンテナ25と、信号送信用アンテナ26とが後述するように設けられている。なお、図2においては、電力受信用アンテナ25及び信号送信用アンテナ26は、次述する電力送信用アンテナ33及び信号受信用アンテナ34との関係を示すため便宜的にドレッサヘッド41の外に図示されているが、本発明の実施の形態においては、後述するようにドレッサヘッド41内に配置されたものとなっている。
【0014】
一方、ドレッサヘッド41の近傍には、制御部(図2においては「CONT」と表記)31と、電力送信ヘッド(図2においては「PW−TX」と表記)32と、電力送信用アンテナ33と、信号受信用アンテナ34と、信号受信ヘッド(図2においては「RX」と表記)35などが次述するように配設されたものとなっている。
【0015】
超音波センサ21は、例えば、圧電素子を用いた公知・周知のものである。
かかる超音波センサ21は、アナログ・ディジタル変換器22が接続されており、超音波センサ21によって得られたドレッサヘッド41と研削砥石6との接触により生じた超音波の検出信号が、直接ディジタル信号に変換されて、次述する信号変換送信回路23へ出力されるようになっている。
【0016】
信号変換送信回路23は、アナログ・ディジタル変換器22から入力されたディジタル信号を、無線送信に適する所定の信号形式に変換すると共に、無線変調を行い信号送信用アンテナ26へ出力するものである。ここで、所定の信号形式は、例えば、シリアルフォーマットなどが好適であるが、特定の信号形式に限定される必要はなく、任意に設定されるべきものである。
【0017】
また、無線変調は、ディジタル振幅変調、ディジタル位相変調など公知・周知の変調方式でよく、いずれの変調方式を選択するかは任意である。なお、本発明の実施の形態においては、送信用の無線周波数としては3MHz帯の周波数が用いられたものとなっている。
信号変換装置回路23において、上述のように適宜な変調がなされた搬送波出力は、信号送信用アンテナ26に供給されることとなる。
本発明の実施の形態における信号送信用アンテナ26は、複数回巻回された円形コイルを用いたものであるが、勿論、このようなものに限定される必要はなく、他の形状等のアンテナであってもよいものである。
【0018】
整流回路24は、電力受信用アンテナ25によって受信された電力供給信号を整流し、上述したアナログ・ディジタル変換器22及び信号変換送信回路23へ電源供給を行うものである。なお、整流回路24には、例えば、比較的容量値の大きなコンデンサ(図示せず)を、アナログ・ディジタル変換器22及び信号変換送信回路23への電源供給ライン(図示せず)に並列接続して設け、このコンデンサを電源供給のためにいわゆるフローティング状態で使用するようにすると、後述する電力送信ヘッド32による電力送信を常時行う必要が無くなり、好適である。
本発明の実施の形態における電力受信用アンテナ25は、信号送信用アンテナ26同様、複数回巻回された円形コイルを用いたものであるが、勿論、このようなものに限定される必要はなく、他の形状等のアンテナであってもよいものである。
【0019】
一方、ドレッサヘッド41の近傍に配設された制御部31は、公知・周知の構成を有するマイクロコンピュータ(図2にいては「CPU」と表記)36を中心に構成されたもので、後述する電力送信ヘッド32や信号受信ヘッド35の動作制御や、入力された信号の信号形式の変換等を行うものである。かかる制御部31は、研削加工装置の適宜な位置に設けられた直流電源(図2においては「DC POWER」と表記)39の電源供給を受けて動作するようになっている。
【0020】
信号受信ヘッド35は、信号受信用アンテナ34によって受信された信号、即ち、先に説明した信号送信用アンテナ26を介して信号変換送信回路23から出力された信号の復調、信号レベルの変換などを行うものである。なお、ここでの復調、信号レベルの変換のための回路自体は、通信機器などで通常に用いられる公知・周囲の構成のものであるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0021】
信号受信ヘッド35の出力信号は、制御部31を介して、ディジタルシリアル出力回路(図2においては「RS232C」と表記)37とアナログ出力回路(図2においては「ANALOG」と表記)38へ、それぞれ出力されるようになっている。
【0022】
ここで、ディジタルシリアル出力回路37は、信号受信ヘッド35で復調された超音波センサ21の検出信号としてのシリアルディジタルデータを公知・周知のインターフェイス規格であるRSCー232Cによって出力するための回路である。また、アナログ出力回路38は、信号受信ヘッド35で復調された超音波センサ21の検出信号としてのシリアルディジタルデータを所定のアナログ電圧に変換して出力するための回路である。
なお、これらディジタルシリアル出力回路37、アナログ出力回路38の出力信号は、図示されない制御装置による研削砥石6の位置制御などに供されることとなる。
【0023】
次に、電力受信用アンテナ25及び信号送信用アンテナ26並びに電力送信用アンテナ33及び信号受信用アンテナ34を中心とした具体的な配設例について、図3乃至図5を参照しつつ説明する。
図3は、電力受信用アンテナ25及び信号送信用アンテナ26並びに電力送信用アンテナ33及び信号受信用アンテナ34を中心とした全体的な配置構成を、図4は、特に、電力受信用アンテナ25、信号送信用アンテナ26及び電力送信用アンテナ33の配設部分を、それぞれ模式的に表したものである。
【0024】
この構成例においては、ドレッサヘッド41が回動される回動軸45側の保持部材41bが、部品収納空間を円環状に有するものとなっており、その内部に、電力受信用アンテナ25と信号送信用アンテナ26と共に、先のアナログ・ディジタル変換器22、信号変換送信回路23及び整流回路24が設けられるドレッサヘッド用回路基板51が配設されている(図3及び図4参照)。なお、超音波センサ21は、ドレッサヘッド41内において、ドレッサ本体41aに当接するように設けられている。
【0025】
この構成例における電力受信用アンテナ25及び信号送信用アンテナ26は、それぞれ大きさは異なるが、その構成は基本的に同様なものとなっている。すなわち、電力受信用アンテナ25及び信号送信用アンテナ26は、全体が円環状で、且つ、コイル巻装用の段部がそれぞれ形成された電力受信用コア部材25a、信号送信用コア部材26aと、コイル巻装用の段部にそれぞれコイル巻き線が巻回されてなる電力受信用コイル25b、信号送信用コイル26bとから構成されたものとなっている(図4参照)。
【0026】
本発明の実施の形態においては、電力受信用アンテナ25が信号送信用アンテナ26より若干大きなものとなっている。そして、電力受信用アンテナ25と信号送信用アンテナ26は、積層されるようにして、電力受信用アンテナ25が回動軸45側に、信号送信用アンテナ26がドレッサ本体側41aに、それぞれ位置するように配設されたものとなっている(図3及び図4参照)。
【0027】
一方、ドレッサヘッド41を回動駆動するためのモータ(図示せず)などが収納されるケーシング46のドレッサヘッド41側に臨む適宜な位置には、電力送信ヘッド用収納ケース52が設けられ、その内部に、電力送信用アンテナ33と電力送信ヘッド32の電子回路が搭載される送信ヘッド用回路基板53が収納されたものとなっている(図3及び図4参照)。なお、電力送信ヘッド用収納ケース52には、電力送信用アンテナ33から放射される所定周波数の電磁波に対して充分な透過率を有し、電磁波に対する遮蔽効果の無い部材を用いることが好ましい。
【0028】
本発明の実施の形態における電力送信用アンテナ33は、他のアンテナ同様、電力送信用コア部材33aと、この電力送信用コア部材33aに巻装された電力送信用コイル33bとから構成されたものとなっている。電力送信用コア部材33aは、磁性材からなる基部54aに巻装用柱状部54bが一体に突出形成されてなるものである(図4参照)。そして、基部54aは、ドレッサヘッド41側から見た平面形状が、矩形の下辺部分、すなわち、ドレッサヘッド41に最も近い部分が円弧状に切り欠かれた形状を有するものとなっている(図5参照)。これは、電力送信用ヘッド収納ケース52がドレッサヘッド41の外周縁の極近傍に配置されているために、電力送信ヘッド用収納ケース52の下側部分、すなわち、ドレッサヘッド41に臨む部分がドレッサヘッド41の周縁に沿うように円弧状に形成されている(図示せず)ことに対応させたためである。
【0029】
また、電力送信ヘッド用収納ケース52の近傍には、信号受信ヘッド用収納ケース55が、ケーシング46の適宜な位置に固設されており、信号受信ヘッド35を構成する電子回路が搭載される受信ヘッド用回路基板56と共に、信号受信用アンテナ34が収納されている(図3参照)。
本発明の実施の形態における信号受信用アンテナ34は、外観形状がほぼ角柱状に形成された信号受信用コア部材34aに信号受信用コイル34bが巻装されて構成されたものとなっている。
【0030】
なお、信号受信ヘッド用収納ケース55には、電力送信ヘッド用収納ケース52同様、信号受信用アンテナ34によって受信される所定周波数の電磁波に対して十分な透過率を有し、電磁波に対する遮蔽効果の無い部材を用いるのが好ましい。
【0031】
本発明の実施の形態においては、このように、電力送信用アンテナ33と電力受信用アンテナ25、また、信号送信用アンテナ26と信号受信用アンテナ34が、それぞれ比較的接近して配置されているため、通常の電磁波の伝搬による信号の送受信と共に、アンテナ相互の電磁的結合による信号の送受信も同時になされるものとなっている。
なお、上述した本発明の実施の形態においては、アナログ・ディジタル変換器22と信号変換送信回路23とにより第1の電子回路が実現されており、また、信号受信ヘッド35により第2の電子回路が実現されたものとなっている。さらに、電力送信ヘッド32により第3の電子回路が実現されたものとなっている。
【0032】
次に、上記構成における検出信号伝送装置の全体的な動作について説明すれば、まず、ドレッサヘッド41により研削砥石6のドレッシングが行われ、そのドレッシングの状態に応じて超音波が発生すると、その超音波は、ドレッサヘッド41内に設けられた超音波センサ21により検出される。超音波センサ21からは、検出された超音波のレベルに応じたアナログ信号が出力され、同じくドレッサヘッド41内に設けられたアナログ・ディジタル変換器22に入力されて、直ちにディジタル信号に変換される。そして、アナログ・ディジタル変換器22によってディジタル信号に変換された超音波センサ21の検出信号は、信号変換送信回路23により無線変調されて信号送信用アンテナ26へ印加され、電磁波として放射されることとなる。
【0033】
信号送信用アンテナ26から放射された信号は、信号受信用アンテナ34を介して信号受信ヘッド35に入力され、信号受信ヘッド35による受信信号の復調、信号レベルの変換などが施されることとなる。
そして、信号受信ヘッド35で復調、レベル変換等がなされた信号は、制御部31へ入力されて、必要に応じて選択されたディジタルシリアル出力回路37又はアナログ出力回路38を介して外部へ出力され、例えば、研削砥石6の位置制御に供されることとなる。
【0034】
一方、電力送信ヘッド32は、制御部31によって適宜なタイミングで駆動され、所定の無線周波数の電力信号を電力送信用アンテナ33へ印加する。
これによって、電力送信用アンテナ33から電力信号が放射されて、電力受信用アンテナ25を介して整流回路24へ入力されることとなる。そして、整流回路24により得られた整流電圧は、ドレッサヘッド41内のアナログ・ディジタル変換器22や信号変換送信回路23へ電源電圧として印加される。
【0035】
上述の構成例においては、ドレッサヘッド41において超音波を検出できるようにしたが、このような構成に限定される必要はなく、例えば、砥石スピンドル8側において超音波が検出できるような構成としても好適である。
図6には、第2の構成例として砥石スピンドル8側において、超音波の検出を可能とした構成例が示されており、以下、同図を参照しつつこの構成例について説明する。なお、図1乃至図5に示された構成例と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
【0036】
この構成例における砥石スピンドル8は、スピンドルケーシング61内に軸駆動用ビルトインモータ62が内蔵され、スピンドルケーシング61の両端部近傍に設けられたベアリング11a,11bを介して砥石軸9が回動可能に支持された構成となっているもので、かかる構成自体は、公知・周知のものである。
【0037】
本発明の実施の形態においては、スピンドルケーシング61の後端側のベアリング11bとスピンドルケーシング61の後端面との間に、電力送信用アンテナ33Aを設けると共に、回転ケーシング63が設けられたものとなっている。
この構成例における電力送信用アンテナ33Aは、縦断面が略コ字状(図6参照)で、砥石軸9の端部側から見た全体外観形状が円盤状をなすように、しかも、その中央部を砥石軸9が貫通可能に形成されて、スピンドルケーシング61の後端部側に形成された凹部61aに固着されたものとなっている。なお、図を簡潔にし、理解を容易とするため、図6においては、電力送信用アンテナ33のコイルやコア部材の詳細な図示を省略している。
【0038】
また、回転ケーシング63内には、図示は省略してあるが、信号送信用アンテナ34、アナログ・ディジタル変換器22、信号変換送信回路23及び整流回路24が収納されている。
本発明の回転ケーシング63は、砥石軸9に固着されており、砥石軸9と共に回動可能に設けられたものとなっている。
また、砥石軸9の径方向における回転ケーシング63の長さは、電力送信用アンテナ33のそれに比して小さく設定されており、電力送信用アンテナ33のコ時状部分の内側に位置するように砥石軸9に固着されたものとなっている。
【0039】
また、砥石軸9の外周面の適宜な部位には、超音波センサ21が取着されたものとなっている。
そして、かかる砥石スピンドル8の後端側の近傍には、信号受信用アンテナ34が、研削加工装置の図示されない固定された部位に固設されたものとなっている。
上記構成において、検出信号伝送装置としての基本的な動作は、先に図1乃至図5に示された構成例において説明した通りであるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【0040】
本発明の実施の形態においては、ドレッサ作業において発生する超音波を検出、伝送する検出信号伝送装置を、研削加工部101とドレッサ部102とを有する研削加工装置に設けた例を示したが、専用のドレッサ装置であって同様に適用できることは勿論である。
また、ドレッサ作業において発生する超音波の検出、伝送に限定される必要はなく、工作物の研削加工において生ずる超音波についても、同様に検出、伝送する構成としても勿論よいものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態における検出信号伝送装置が実現される研削加工装置の一概略構成例を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態における検出信号伝送装置の主に電気的な構成部分の第1の構成例を示す構成図である。
【図3】本発明の電力受信用アンテナ及び信号受信用アンテナ並びに電力送信用アンテナ及び信号受信用アンテナを中心とした配置構成例を模式的に示す模式図である。
【図4】図3に示された模式図の特に電力受信用アンテナ及び信号送信用アンテナと電力送信用アンテナの配置部分を拡大して模式的に示した拡大模式図である。
【図5】図3に示された模式図における電力送信用アンテナを構成する電力送信用コア部材の正面図である。
【図6】検出信号伝送装置の第2の構成例を模式的に示す構成図である。
【符号の説明】
【0042】
6…研削砥石
8…砥石スピンドル本体
21…超音波センサ
22…アナログ・ディジタル変換器
23…信号変換送信回路
24…整流回路
4…ブラシレスモータ
25…電力受信用アンテナ
26…信号送信用アンテナ
31…制御部
32…電力送信ヘッド
33…電力送信用アンテナ
34…信号受信用アンテナ
35…信号受信ヘッド
41…ドレッサヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体において発生した超音波を検出、伝送する検出信号伝送装置であって、
前記回転体に、前記超音波を検出する超音波センサを設けると共に、当該超音波センサの検出信号をディジタル信号に変換すると共に、無線変調するよう構成された第1の電子回路と、前記第1の電子回路により無線変調された信号が印加される信号送信用アンテナを設ける一方、
前記回転体の近傍には、前記信号送信用アンテナにより放射された信号を受信する信号受信用アンテナと、当該信号受信用アンテナにより得られた受信信号の復調を行う第2の電子回路を設けたことを特徴とする検出信号伝送装置。
【請求項2】
回転体の近傍には、第1の電子回路へ電力を無線供給するための信号を発生する第3の電子回路と、当該第3の電子回路に接続される電力送信用アンテナを設ける一方、
前記回転体には、前記電力送信用アンテナから放射された信号を受信する電力受信用アンテナと、前記電力受信用アンテナにより得られた信号を整流し、前記第1の電子回路へ供給する整流回路とを設けたことを特徴とする請求項1記載の検出信号伝送装置。
【請求項3】
第1の電子回路は、アナログ・ディジタル変換器と、前記アナログ・ディジタル変換器の出力信号を、無線変調する回路とを有してなることを特徴とする請求項2記載の検出信号伝送装置。
【請求項4】
回転体は、ドレッシング作業に用いられるドレッサヘッドであることを特徴とする請求項3記載の検出信号伝送装置。
【請求項5】
回転体は、ドレッシング作業においてドレッシングされる砥石が回動自在に取着された砥石スピンドルであることを特徴とする請求項3記載の検出信号伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−41928(P2007−41928A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226750(P2005−226750)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】