検出装置および認証装置
【課題】 参照信号の調整を要することなく特性のバラツキを補償する。
【解決手段】 検出装置100は、対象物の表面との距離に応じたレベルの検出信号Sdを各々が生成する複数のセンサ回路Uと、各センサ回路Uを選択して検出信号Sdを出力させる選択回路20と、レジスタ31に記憶された参照値Rに応じたレベルの参照信号Srefを生成するD/A変換回路32と、各センサ回路Uから出力される検出信号SdとD/A変換回路32が生成した参照信号Srefとのレベルの大小に応じた検出データDを生成する比較器35とを有する。CPU41は、比較器35が生成した複数の検出データに対する所定の演算によって空間周波数Fを算定し、この空間周波数Fに基づいてレジスタ31の参照値Rを更新する。
【解決手段】 検出装置100は、対象物の表面との距離に応じたレベルの検出信号Sdを各々が生成する複数のセンサ回路Uと、各センサ回路Uを選択して検出信号Sdを出力させる選択回路20と、レジスタ31に記憶された参照値Rに応じたレベルの参照信号Srefを生成するD/A変換回路32と、各センサ回路Uから出力される検出信号SdとD/A変換回路32が生成した参照信号Srefとのレベルの大小に応じた検出データDを生成する比較器35とを有する。CPU41は、比較器35が生成した複数の検出データに対する所定の演算によって空間周波数Fを算定し、この空間周波数Fに基づいてレジスタ31の参照値Rを更新する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹凸を有する対象物の表面形状を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の手指の指紋など微細な凹凸を有する対象物の表面形状を検出する技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、対象物との接触面に沿って多数のセンサ回路がマトリクス状に配列された検出装置が開示されている。各センサ回路は、接触面に近接または接触した対象物との距離に応じたレベルの検出信号を出力する。この構成においては、各センサ回路から出力された検出信号と外部から供給される信号(以下「参照信号」という)とのレベルの大小に応じて2値のデータを出力する比較回路が配設され、この比較回路から出力されるデータを解析することによって対象物の表面形状が特定される。
【特許文献1】特開2004−317353号公報(段落0025)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、検出信号を生成するセンサ回路やこの検出信号と参照信号とを比較する比較回路といった各部を構成するスイッチング素子の電気的な特性(特に閾値電圧)には検出装置ごとにバラツキがある。したがって、各検出装置において均質な検出を実現するためには、検出装置による検出の結果を確認しながら利用者が参照信号のレベルを調整するという煩雑な作業が必要となる。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、検出装置の各部の特性にバラツキが存在する場合であっても参照信号の調整といった煩雑な作業を要することなく均質な検出を実現するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明に係る検出装置は、対象物の表面との距離に応じたレベルの検出信号を各々が生成する複数のセンサ回路を面状に配列してなるセンサ群と、各センサ回路を選択して当該センサ回路から検出信号を出力させる選択手段と、参照値のデジタルデータを記憶する記憶手段(例えば実施形態におけるレジスタ31)と、参照値に対応したレベルの参照信号を記憶手段に記憶されたデジタルデータから生成するD/A(Digital to Analog)変換回路と、選択手段が選択したセンサ回路から出力される検出信号とD/A変換回路が生成した参照信号とのレベルの大小に応じた検出データをセンサ回路ごとに順次に生成する生成手段(例えば実施形態における比較器35)と、生成手段が生成した複数の検出データについて所定の演算を実行する演算手段と、記憶手段に記憶されたデジタルデータを演算手段によって算定された演算値に基づいて更新する更新手段と、生成手段が生成した検出データに応じて出力処理を実行する出力手段とを具備する。
【0005】
この構成によれば、各センサ回路が出力した検出信号から生成された検出データに基づいて参照値のデジタルデータが更新されるから、検出装置ごとに各部(特にセンサ回路や生成回路やD/A変換回路)の特性のバラツキがある場合であっても、参照値の調整といった煩雑な作業を利用者に要求することなく、そのバラツキを補償した均質な検出を実現することができる。
【0006】
なお、本発明の検出装置を構成する各手段(特に生成手段、演算手段、更新手段および出力手段)は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置がプログラムを実行することによって実現される。この演算処理装置は、所定のクロック信号に同期して動作する装置であってもよいし、クロック信号に対して非同期に動作する装置であってもよい。もっとも、検出装置の各手段は、各々の処理に専用されるDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェアによっても実現される。
【0007】
本発明の望ましい態様においては、センサ群のうち選択手段による選択の対象となる領域を当該選択手段に指定する手段であって、センサ群の第1領域を指定する第1処理(例えば実施形態における予備スキャン処理)と、第1領域よりも広い第2領域を指定する第2処理(例えば実施形態における本スキャン処理)とを実行する指定手段が設けられ、選択手段は、指定手段によって指定された領域に属する各センサ回路を選択して当該センサ回路から検出信号を出力させ、出力手段は、第2処理が実行されたときに生成手段が生成した検出データに応じて出力処理を実行する一方、第1処理が実行されたときに生成手段が生成した検出データについては出力処理を実行しない。なお、この態様の具体例は第1実施形態として後述される。
【0008】
この態様によれば、第2処理にて指定される第2領域(実施形態における検出領域A0)よりも狭い第1領域(実施形態における対象領域A1)の各センサ回路に対応した検出データに応じて参照値が更新されるから、参照値を調整するための第1処理においても総てのセンサ回路が対象とされる構成と比較して、演算処理の負荷を軽減することができる。
なお、第1処理に際して指定手段が指定する第1領域は固定的に選定された領域であってもよいが、指定手段が第1処理を複数回にわたって実行する構成においては、ある回の第1処理にて指定する第1領域(例えば図6に示される対象領域A1[a])と他の回の第1処理にて指定する第1領域(例えば図6に示される対象領域A1[b])とを異ならせる構成としてもよい。
【0009】
さらに望ましい態様において、演算手段は、第1処理が実行されたときに生成手段が生成した検出データについて所定の演算を実行する一方、第2処理が実行されたときに生成手段が生成した検出データについては所定の演算を実行しない。この態様によれば、第1処理および第2処理の双方において演算手段が所定の演算を実行する構成と比較して、演算手段による処理の負荷をさらに軽減することができる。
【0010】
また、本発明の他の態様において、演算手段は、センサ群を構成する総てのセンサ回路からの検出信号に応じて生成された複数の検出データのうち特定の領域に属する各センサ回路に対応した検出データについて所定の演算を実行する。なお、この態様の具体例は第2実施形態として後述される。この態様によれば、総てのセンサ回路に対応した検出データを対象として所定の演算が実行される構成と比較して演算の対象となる検出データの個数が削減されるから、演算手段による演算の付加を軽減することができる。
なお、所定の演算の対象となる領域は予め固定的に選定された領域であってもよいが、選択手段が総てのセンサ回路の選択を複数回にわたって実行する構成(すなわち対象物の表面形状を複数回にわたって実行する構成)においては、ある回の選択に伴なって所定の演算の対象として選定する領域(例えば図6の対象領域A1[a])と他の回の選択に伴なって所定の演算の対象として選定する領域(例えば図6の対象領域A1[b])とを異ならせる構成としてもよい。
【0011】
本発明における演算手段は、例えば、各センサ回路に対応する検出データをセンサ群における各センサ回路の配列に従って配列してなる画像(第1値の検出データを黒色の階調とし第2値の検出データを白色の階調としたラスタ画像)の空間周波数を算定する。ただし、所定の演算の内容はこれに限られない。例えば、生成手段が、検出信号のレベルが参照信号のレベルよりも大であるときに第1値の検出データを生成するとともに検出信号のレベルが参照信号のレベルよりも小であるときに第2値の検出データを生成する構成においては、演算手段が、各々がセンサ回路からの検出信号に応じて生成された複数の検出データのうち第1値である検出データの総数と第2値である検出データの総数との比率を算定する構成としてもよい。この構成によれば、空間周波数を算定する構成と比較して、演算手段による演算の付加を軽減することができる。なお、本態様において「第1値」および「第2値」のみが特定されているとは言っても、検出データの取り得る数値を2値のみに限定する趣旨ではない。
【0012】
本発明の出力手段によって出力される情報は任意である。例えば、検出データが出力手段によって外部に出力される構成としてもよいし(後述する第1実施形態)、検出データから生成されたプロファイルデータが出力手段によって外部に出力される構成としてもよい(例えば図8に示される態様)。また、検出データから生成されたプロファイルデータと予め登録されたプロファイルデータとの相関値が出力手段から外部に出力される構成(例えば図9に示される態様)や、この相関値に基づく認証の結果が出力手段から外部に出力される構成も採用される。
【0013】
本発明に係る検出装置は、典型的には人間の手指の指紋を検出するための手段として利用される。この種の検出装置は、本人認証を実行する認証装置に好適に利用される。この認証装置は、本発明に係る検出装置と、検出装置の出力手段から出力された情報に基づいて認証処理を実行する認証手段とを具備する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<A:第1実施形態>
<検出装置の構成>
図1は、本実施形態に係る検出装置の構成を示すブロック図である。この検出装置100は、外部に露出する平面(以下「検出面」という)に接触または近接する対象物の表面形状を検出するための装置である。同図に示されるように、検出装置100は、複数のセンサ回路Uを略矩形の領域(以下「検出領域」という)A0内にマトリクス状に配列してなるセンサ群10と、このセンサ群10の各センサ回路Uを動作させるための選択回路20と、各センサ回路Uから出力された信号(以下「検出信号」という)Sdを処理する検出回路30と、検出装置100の各部の動作を制御する制御装置40と、この検出装置100による検出の結果を外部に出力するためのインタフェース51およびこれに接続された出力端子52とを有する。以上に説明した各部は、板材101の表面に形成されたスイッチング素子を含んで構成される。このスイッチング素子は、例えば、低温ポリシリコンからなる半導体層を備えた薄膜トランジスタである。板材101は、ガラスなどの材料からなる硬質の部材であってもよいし(SOG(System On Glass))、プラスチックなどの材料からなる可撓性の部材であってもよい(SOP(System On Plastic))。
【0015】
選択回路20と検出回路30とインタフェース51とは、バス45を介して制御装置40に接続される。この制御装置40は、プログラムの実行によって種々の手段として機能するCPU41と、このCPU41が実行するプログラムやその実行に際して使用される各種のデータを不揮発的に記憶するROM(Read Only Memory)42と、CPU41によって作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)43とを有する。
【0016】
検出領域A0には、X方向に延在するM本の行線11と、X方向に直交するY方向に延在するN本の列線12と、各列線12と対をなすようにY方向に延在して検出回路30に接続されたN本の出力線13とが形成される(MおよびNはともに自然数)。センサ群10の各センサ回路Uは行線11と列線12との交差に対応して配置される。したがって、これらのセンサ回路Uは、X方向およびY方向にわたって縦M行×横N列のマトリクス状に配列する。各センサ回路Uは、検出面に接触または近接した対象物との距離に応じたレベルの検出信号Sdを生成する回路である。N本の出力線13は検出回路30における比較器35の入力端に対して共通に接続される。
【0017】
次に、図2は、ひとつのセンサ回路Uの構成を示す回路図である。同図に示される検出用電極15は、検出面と平行に配列された導電性の膜体であり、その表面は図示しない誘電体によって覆われている。この検出用電極15は、検出面に接近した対象物の表面に誘電体を挟んで対向する。したがって、検出用電極15と対象物と両者間に挟まれた誘電体とによって検出用容量Cdが構成される。この検出用容量Cdの静電容量は検出用電極15と対象物の表面との距離に応じて変動する。一方、基準容量Crefは、接続点Nにて検出用電極15に接続された電極と列線12に接続された電極とを対向させた容量である。接続点Nの電位は、対象物と列線12との電位差を基準容量Crefの静電容量と検出用容量Cdの静電容量とに応じて分割した電位となる。
【0018】
接続点Nには増幅用トランジスタTr1のゲート電極が接続される。この増幅用トランジスタTr1は、接続点Nの電位の変動を増幅して検出信号Sdを生成するためのスイッチング素子であり、そのソース電極は電源の低位側の電位が供給される電源線16に接続される。一方、増幅用トランジスタTr1のドレイン電極は列選択トランジスタTr2のソース電極に接続される。この列選択トランジスタTr2は、ゲート電極が列線12に接続されるとともにドレイン電極が行選択トランジスタTr3のソース電極に接続されたスイッチング素子である。行選択トランジスタTr3のゲート電極は行線11に接続され、そのドレイン電極は出力線13に接続される。
【0019】
図1に示される選択回路20は、センサ群10の各センサ回路Uを選択してそのセンサ回路Uから出力線13に検出信号Sdを出力させるための手段であり、M本の行線11の各々に接続された行選択回路21とN本の列線12の各々に接続された列選択回路22とを含む。このうち行選択回路21は、CPU41による制御のもとに何れかの行線11を択一的に選択し、この選択した行線11に行選択トランジスタTr3をオン状態とする電位を印加するとともにそれ以外の行線11に行選択トランジスタTr3をオフ状態とする電位を印加する。一方、列選択回路22は、CPU41による制御のもとに何れかの列線12を択一的に選択し、ここで選択した列線12に列選択トランジスタTr2をオン状態とする電位を印加するとともにそれ以外の列線12に列選択トランジスタTr2をオフ状態とする電位を印加する。以上の構成のもと、行選択回路21によって選択された行線11と列選択回路22によって選択された列線12との交差に対応するセンサ回路Uによって生成された検出信号Sdが出力線13に順次に出力される。したがって、センサ群10から検出回路30に入力される検出信号Sdは、選択回路20によって各センサ回路Uが選択される周期に同期して、各センサ回路Uにおける検出用容量Cdの静電容量に応じたレベル(すなわち各センサ回路Uの検出用電極15とこれに対向する対象物の表面との距離に応じたレベル)に随時に変動する。なお、ここでは各センサ回路Uが点順次に選択される構成を例示するが、センサ群10の各行ごとにセンサ回路Uが選択される構成(線順次)や、センサ群10の総てのセンサ回路Uが同時に選択される構成(面順次)としてもよい。以下では、選択回路20によって各センサ回路Uを順次に選択する動作を「スキャン」と表記する。
【0020】
次に、検出回路30の構成を説明する。図1に示される比較器35は、センサ群10の各センサ回路Uから順次に供給される検出信号Sdのレベルと参照信号Srefのレベルとを比較し、その比較の結果に応じた1ビットのデータ(以下「検出データ」という)Dをセンサ回路Uごとに生成する手段である。さらに詳述すると、比較器35は、検出信号Sdのレベルが参照信号Srefのレベルよりも大である場合には検出データDとして数値“1”を出力する一方、検出信号Sdのレベルが参照信号Srefのレベルよりも小である場合には検出データDとして数値“0”を出力する。こうしてセンサ回路Uごとに順次に生成された検出データDはバッファ36に格納される。そして、バッファ36に格納された検出データDは、CPU41によって順次に読み出されてRAM43に格納される。このRAM43には、縦M行×横N列のセンサ回路Uに対応した検出データDがその配列の順番に格納される「M×N」ビットの記憶領域Arが画定される。
【0021】
図1に示されるレジスタ31とD/A変換回路(DAC)32とローパスフィルタ(LPF)33とは、比較器35に供給される参照信号Srefを生成するための手段である。このうちレジスタ31は、参照信号Srefのレベル(以下「参照値」という)Rを表すデジタルデータを記憶する。一方、D/A変換回路32は、レジスタ31に記憶された参照値Rに対応したレベルのアナログ信号である参照信号Srefを生成する。このD/A変換回路32から出力された参照信号Srefはローパスフィルタ33によって高周波成分(例えばノイズ成分)が除去されたうえで比較器35に供給される。なお、D/A変換回路32から出力される参照信号Srefのノイズが問題とならないのであれば、ローパスフィルタ33を省略することもできる。
【0022】
本実施形態において実行されるセンサ回路Uのスキャンには、予備スキャン処理と本スキャン処理とがある。このうち予備スキャン処理は、図3に示されるように、総てのセンサ回路Uを包含する検出領域A0のうち特定の領域(以下「対象領域」という)A1に属する各センサ回路Uを選択的にスキャンしてその各々に対応する検出データDを取得する処理である。一方、本スキャン処理は、検出領域A0に属する総てのセンサ回路Uをスキャンしてその各々に対応する検出データD(「M×N」ビット)を取得する処理である。
【0023】
予備スキャン処理は、D/A変換回路32によって生成される参照信号Srefのレベルを調整するために実行される。すなわち、本実施形態においては、予備スキャン処理にて生成された検出データDに基づいて、レジスタ31に記憶された参照値Rが更新され、この結果として参照信号Srefのレベルが調整されるようになっている。このような予備スキャン処理を本スキャン処理に先立って実行することにより、本スキャン処理にて使用される参照信号Srefを検出装置100の特性(例えば各部を構成する薄膜トランジスタの閾値電圧)に応じたレベルに調整することができる。なお、本実施形態における予備スキャン処理は参照信号Srefのレベルの調整を目的として実行されるから、この予備スキャン処理によって得られた検出データDは対象物の表面の形状の特定には使用されない。一方、本スキャン処理によって得られた総てのセンサ回路Uに対応する検出データDは、インタフェース51を介して出力端子52から外部に出力される。こうして出力された検出データDを解析することによって対象物の表面形状が特定される。
【0024】
図1に示されるように、ROM42には、以上に説明した予備スキャン処理や本スキャン処理を実行するためのプログラムのほか、このプログラムの実行に際して使用される種々のデータが記憶されている。ROM42に記憶されるデータとしては、例えば、図3に示されるように対象領域A1の対角点の座標([Xa1,Ya1]および[Xa2,Ya2])および本スキャン処理の対象となる検出領域A0の対角点の座標([Xb1,Yb1]および[Xb2,Xb2])や、参照値Rの初期値R0を示すデータ、さらには予備スキャン処理の結果に基づいてレジスタ31の参照値Rの補正値Aを特定するためのテーブルTBLなどがある。なお、ROM42による記憶の内容については検出装置100の動作の説明に際して詳述する。
【0025】
<検出装置100の動作>
図示しない入力装置への操作によってプログラムの起動が指示されると、CPU41は、ROM42に記憶されたプログラムをRAM43に読み込んでこれを順次に実行する。図4は、このプログラムの内容を示すフローチャートである。
【0026】
同図に示されるように、CPU41はまず、ROM42に記憶されている参照信号Srefのレベルの初期値R0をRAM43に変数Rとして格納したうえで(ステップSa1)、スキャンを開始すべきタイミングが到来するまで待機する(ステップSa2)。ステップSa2において、CPU41は、例えば、図示しない入力装置への操作に応じて外部の機器からスキャンの開始の指示が入力された場合や、検出面に対する対象物の接近が所定のセンサによって検出された場合に、スキャンを開始すべきタイミングが到来したと判定する。
【0027】
スキャンを開始すべきタイミングが到来すると、CPU41は、ROM42に記憶されている対象領域A1の座標をRAM43に格納する(ステップSa3)。さらに、CPU41は、その時点でRAM43に格納されている変数Rをレジスタ31に設定する(ステップSa4)。これにより、D/A変換回路32からローパスフィルタ33を介して比較器35に入力される参照信号Srefは変数Rに応じたレベルとなる。
【0028】
続いて、CPU41は、ステップSa3にてRAM43に格納した対象領域A1の座標を選択回路20に出力することによって当該選択回路20に予備スキャン処理を実行させる(ステップSa5)。行選択回路21は、CPU41によって指定された座標「Ya1」から座標「Ya2」までの領域に属する各行線11を順番に選択する。一方、列選択回路22は、行選択回路21がひとつの行線11を選択する各期間内に、CPU41によって指定された座標「Xa1」から座標「Xa2」までの領域に属する各列線12を順番に選択する。この結果、対象領域A1の各センサ回路Uによって生成された検出信号Sdが比較器35に対して順次に供給される。そして、比較器35は、この検出信号Sdとローパスフィルタ33から供給される参照信号Srefとのレベルの大小に応じて検出データDを生成して順次にバッファ36に出力する。CPU41は、こうしてバッファ36に格納される検出データDを読み出してRAM43の記憶領域Arに格納していく(ステップSa6)。
【0029】
対象領域A1に属する総てのセンサ回路Uについて検出データDの抽出が完了すると、CPU41は、ステップSa6にてRAM43に転送された対象領域A1の検出データDに所定の演算を実行することによって空間周波数Fを算定する(ステップSa7)。より具体的には、CPU41は、対象領域A1に属する各センサ回路Uに対応した検出データDを各々の配列に従って配列してなる画像(すなわち検出データD“1”が黒色の画素とされ検出データD“0”が白色の画素とされた画像)の空間周波数Fを算定する。
【0030】
図1に示されるように、ROM42には、空間周波数Fの最適値F0が予め記憶されている。CPU41は、ステップSa7にて算定した空間周波数FとROM42に格納された最適値F0との差分値ΔFを算定する(ステップSa8)。また、ROM42には、この差分値ΔFの許容値Bが予め記憶されている。CPU41は、ステップSa8にて算定された差分値ΔFがROM42に格納された許容値Bよりも小であるか否かを判定する(ステップSa9)。すなわち、CPU41は、ステップSa8およびステップSa9において、対象領域A1の各センサ回路Uから取得した検出データDに基づいて算定された空間周波数Fが、最適値F0を含む所定の範囲に収まっているか否かを判定する。
【0031】
ここで、ステップSa7にて算定される空間周波数Fと最適値F0との差分値ΔFは、実際にD/A変換回路32によって生成された参照信号Srefのレベルが検出装置100の特性に適合したレベルから離れているほど大きい数値となる。そこで、CPU41は、ステップSa9において差分値ΔFが許容値Bよりも大きいと判定すると、RAM43に格納された変数Rを更新するための処理を実行する(ステップSa10)。すなわち、CPU41は、第1に、ROM42に格納されたテーブルTBLを参照することによって差分値ΔFに応じた補正値Aを選定し、第2に、RAM43に格納された変数Rに補正値Aを加算する。図5に示されるように、テーブルTBLは、差分値ΔFと補正値Aとが対応付けられたテーブルである。ステップSa10において、CPU41は、ステップSa8にて算定した差分値ΔFをテーブルTBLから検索し、ここで検索された差分値ΔFに対応する補正値Aを変数Rに加算されるべき数値として特定する。以上の処理を実行すると、CPU41は、ステップSa4に処理を移行して新たな変数Rをレジスタ31に設定する。この結果、D/A変換回路32から比較器35に供給される参照信号Srefは、ステップSa10における更新後の新たな変数Rに応じたレベルに調整される。ステップSa4からステップSa10までの処理は、差分値ΔFが許容値Bよりも小さい数値となるまで繰り返される。
【0032】
一方、ステップSa9において差分値ΔFが許容値Bよりも小であると判定すると、CPU41は、検出領域A0の全体を対象とした本スキャン処理が実行されるように各部を制御する。すなわち、CPU41はまず、ROM42に格納された検出領域A0の座標をRAM43に格納し(ステップSa11)、この座標を指定することによって選択回路20に本スキャン処理を実行させる(ステップSa12)。行選択回路21は、CPU41によって指定された座標「Yb1(第1行目)」から座標「Yb2(第M行目)」までの各行線11を順番に選択する。一方、列選択回路22は、CPU41によって指定された座標「Xb1(第1列目)」から座標「Xb2(第n列目)」までの各列線12を、1本の行線11が選択されるたびに順番に選択する。この結果、センサ群10の総てのセンサ回路Uにて生成された検出信号Sdが順番に比較器35に供給され、その各々に対応する検出データDが比較器35によって生成されてバッファ36に格納される。CPU41は、こうしてバッファ36に格納される検出データD(「M×N」ビット)を順次にRAM43の記憶領域Arに転送する(ステップSa13)。
【0033】
以上の手順によって本スキャン処理が完了すると、CPU41は、ステップSa13にてRAM43の記憶領域Arに格納した「M×N」ビットの検出データDを順次にインタフェース51から出力端子52に出力する(ステップSa14)。一方、この出力端子52に接続された外部の機器は、検出装置100から検出データDを順次に受信し、これらの検出データDを解析することによって対象物の表面形状を特定する。
【0034】
さらに、CPU41は、プログラムを終了すべきか否かを判定する(ステップSa15)。例えば、CPU41は、図示しない入力装置への操作に応じてスキャンの終了の指示が入力された場合にステップSa15にて「Yes」と判定する。ここで「Yes」と判定すると、CPU41は、プログラムの実行を終了する。一方、プログラムを終了すべきでないと判定した場合(ステップSa15:No)、CPU41は、ステップSa2に処理を移行して再びスキャンの開始のタイミングが到来するまで(例えば前回とは別個の対象物が検出の対象とされるまで)待機する。
【0035】
以上に説明したように、本実施形態によれば、予備スキャン処理の結果に基づいて参照信号Srefが検出装置100の特性に適合したレベルに調整されるから、検出装置100ごとに電気的な特性の個体差がある場合であっても、その個体差の影響を補償した均質な検出を実現することができる。さらに、この構成によれば、参照信号Srefのレベルの調整といった煩雑な作業を利用者が実行する必要はない。
【0036】
また、本実施形態においては、板材101の表面に形成された薄膜トランジスタによって検出装置100の各部が構成されるから装置の小型化が図られる。したがって、本実施形態の検出装置100は、携帯電話機やカード型の機器など利用者によって携帯されるタイプの機器に特に好適であると言える。ところで、この種の薄膜トランジスタ(特に低温ポリシリコンを半導体層としたトランジスタ)は、いわゆるバルクトランジスタと比較すると、スイッチング素子としての性能(特に電子移動度)に劣り、その特性のバラツキも大きいという問題がある。このような事情を考慮すると、各部の電気的な特性のバラツキを補償することができる本実施形態は、図1に示したように薄膜トランジスタをスイッチング素子として利用した構成のもとで特に有効であると言える。
【0037】
加えて、本実施形態においては、検出領域A0よりも狭い対象領域A1に対する予備スキャン処理によって参照信号Srefのレベルの基準となる検出データDが抽出される。したがって、予備スキャン処理に際しても検出領域A0の全域を対象とした処理が実行される構成と比較して、予備スキャン処理に要する時間を短縮することができ、さらには検出データDから空間周波数Fを算定する処理の負荷を軽減することができる。
【0038】
<他の態様>
第1実施形態においては以下の各態様を採用することもできる。
【0039】
(1)本実施形態においては、予備スキャン処理が実施される対象領域A1が検出領域A0よりも狭い領域とされた構成を例示したが、例えばCPU41の処理の能力に余裕がある場合には、予備スキャン処理においても検出領域A0の全域を対象として検出データDが抽出される構成としてもよい。
【0040】
(2)本実施形態においては、予め固定的に選定された対象領域A1が予備スキャン処理の対象とされる構成を例示したが、この予備スキャン処理の対象となる領域が適宜に変更される構成としてもよい。この構成においては、例えば、各々の形態(位置や形状)が相違する複数の領域の対角点の座標が予めROM42に格納され、CPU41は、これらの領域の何れかを対象領域A1として選定したうえで予備スキャン処理を実行する。例えば、CPU41は、ある回の予備スキャン処理においては図6の対象領域A1[a]を対象として予備スキャン処理が実行されるように各部を制御する一方、他の回の予備スキャン処理においては図6の対象領域A1[b]を対象として予備スキャン処理が実行されるように各部を制御する。この構成によれば、検出領域A0のうち特定の領域のセンサ回路Uに特性のバラツキが偏在しているような場合であっても、このバラツキが補償されるように参照信号Srefのレベルを調整することができる。
【0041】
(3)本実施形態においては、本スキャン処理が実行されるたびにその直前に予備スキャン処理が実行される構成を例示したが、本スキャン処理と予備スキャン処理との関係はこれに限られない。例えば、複数回の本スキャン処理が実行されるたびに予備スキャン処理が1回だけ実行される構成としてもよい。また、検出装置100の出荷前に1回だけ予備スキャン処理が実行される構成としてもよい。もっとも、第1実施形態のように予備スキャン処理が検出装置100の出荷後にも随時に実行される構成とすれば、検出装置100の各部の特性が経時的に変化した場合であっても、参照信号Srefをこの変化後の特性に合致したレベルに調整することができる。
【0042】
(4)本実施形態においては差分値ΔFが許容値Bを下回るまで予備スキャン処理および変数Rの更新が繰り返される構成を例示したが、ステップSa9において差分値ΔFが許容値Bを下回ると判定された場合に、変数R(あるいはレジスタ31に格納された参照値R)が1回だけ補正される構成としてもよい。
【0043】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、参照信号Srefを調整するための予備スキャン処理が本スキャン処理(すなわち外部への出力の対象となる検出データDを抽出する処理)とは別個に実施される構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、本スキャン処理にて抽出された検出データDに基づいて、次回の本スキャン処理にて使用される参照信号Srefのレベルが調整されるようになっている。なお、本実施形態のうち第1実施形態と同様の要素については共通の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
<検出装置100の動作>
図7は、本実施形態においてCPU41が実行するプログラムの内容を示すフローチャートである。同図に示されるように、プログラムを開始すると、CPU41は、図4のステップSa1およびステップSa2と同様に、ROM42に格納された初期値R0をRAM43に変数Rとして格納したうえで(ステップSb1)、スキャンを開始すべきタイミングまで待機する(ステップSb2)。そして、スキャンを開始するタイミングが到来すると、CPU41は、RAM43に格納された変数Rを参照値Rとしてレジスタ31に設定する(ステップSb3)。
【0045】
次いで、CPU41は、図4のステップSa12と同様の手順により、選択回路20に対して本スキャン処理の実行を指示する(ステップSb4)。さらに、CPU41は、この本スキャン処理の結果としてバッファ36に格納された検出データDをRAM43の記憶領域Arに順次に転送する(ステップSb5)。これによって記憶領域Arには、総てのセンサ回路Uに対応した「M×N」ビットの検出データDがその配列に従って格納される。続いて、CPU41は、図4のステップSa14と同様の手順により、これらの検出データDを順次に読み出して出力端子52に出力する(ステップSb6)。
【0046】
次に、CPU41は、ステップSb5でRAM43に格納した検出データDのうち対象領域A1に属する各センサ回路Uに対応した検出データDから空間周波数Fを算定する(ステップSb7)。なお、対象領域A1に属する各センサ回路Uの検出データDは、ROM42に格納された対象領域A1の座標から特定される。さらに、CPU41は、ステップSb7にて算定した空間周波数FとROM42に格納された最適値F0との差分値ΔFを算定したうえで(ステップSb8)、この差分値ΔFがROM42に格納された許容値Bよりも小であるか否かを判定する(ステップSb9)。そして、差分値ΔFが許容値Bよりも大であると判定した場合(すなわち参照信号Srefが検出装置100の特性に適合しないレベルである場合)、CPU41は、図4のステップSa10と同様の手順により、差分値ΔFに応じてテーブルTBLから特定される補正値AをRAM43の変数Rに加算する(ステップSb10)。これに対し、差分値ΔFが許容値Bよりも小であると判定した場合(すなわち参照信号Srefのレベルが最適なレベルを含む所定の範囲内に収まっている場合)、CPU41は、ステップSb10を経ることなくステップSb11に処理を移行する。
【0047】
ステップSb11において、CPU41は、図4のステップSa15と同様にプログラムの終了の可否を判定する。このステップSb11において未だプログラムを終了しないと判定すると、CPU41は、ステップSb2に処理を移行する。前回の本スキャン処理における参照信号Srefのレベルが適切でない場合であっても、ステップSb10において変数Rは補正されているから、その直後の本スキャン処理においては、前回の本スキャン処理時のレベルよりも適切なレベルの参照信号Srefに基づいて検出データDを取得することができる。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態においては、参照信号Srefのレベルがその直前の検出の結果に基づいて調整されるから、第1実施形態と同様の効果が奏される。加えて、本実施形態においては、対象物について検出データDを取得するために1回の本スキャン処理のみを実行すれば足りるから、本スキャン処理に加えて予備スキャン処理が必要である第1実施形態の構成と比較して、CPU41の処理負荷を軽減することができるという利点がある。
【0049】
<他の態様>
第2実施形態においては以下の各態様を採用することもできる。
【0050】
(1)本実施形態においては、検出領域A0よりも狭い対象領域A1に対応した検出データDに基づいて空間周波数Fが算定される構成を例示したが、検出領域A0の全域に対応した検出データD(「M×N」ビット)に所定の演算を実行することによって空間周波数Fが算定される構成としてもよい。
【0051】
(2)本実施形態においては、予め固定的に選定された対象領域A1が空間周波数Fの算定の対象とされる構成を例示したが、この算定の対象となる領域が適宜に変更される構成としてもよい。すなわち、例えば、各々の形態(位置や形状)が相違する複数の領域の対角点の座標が予めROM42に格納された構成のもと、CPU41は、ステップSb7において、これらの領域の何れかを対象領域A1として選定したうえで空間周波数Fを算定する。例えば、CPU41は、ある回の本スキャン処理を実行するときのステップSb7で図6の対象領域A1[a]の各検出データDから空間周波数Fを算定する一方、他の回の本スキャン処理を実行するときのステップSb7で図6の対象領域A1[b]の各検出データDから空間周波数Fを算定するといった具合である。
【0052】
(3)本実施形態においては、本スキャン処理が実行されるたびに空間周波数Fの算定およびこれに基づく変数Rの更新が実行される構成を例示したが、例えば、複数回の本スキャン処理のうち1回の本スキャン処理においてのみこれらの処理が実行される構成としてもよい。また、検出データDを出力する処理と変数Rを更新するための処理の順序は任意である。例えば、ステップSb7からステップSb10までの各処理の実行後にステップSb6の出力処理が実行される構成としてもよい。
【0053】
<C:変形例>
各実施形態に対しては様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0054】
(1)変形例1
各実施形態においては、図4のステップSa14や図7のステップSb6の出力処理にて検出データDが出力端子52から外部に出力される構成を例示したが、出力処理の内容はこれに限られない。例えば出力処理を以下の内容としてもよい。
【0055】
(a) 第1の態様
図8に示されるように、図4のステップSa14や図7のステップSb6において出力処理を開始すると、CPU41はまず、その時点においてRAM43の記憶領域Arに格納されている検出データDに基づいて、対象物の表面の形状における特徴的な部分(以下「特徴点」という)を抽出する(ステップSc1)。この特徴点は、例えば、人間の手指における指紋の分岐点や端点である。さらに、CPU41は、ステップSc1にて抽出した特徴点の位置とその特徴点での形状とをベクトルの形式で表現するデータ(以下「プロファイルデータ」という)を生成する(ステップSc2)。そして、CPU41は、このプロファイルデータをインタフェース51および出力端子52から外部に出力する(ステップSc3)。
【0056】
(b) 第2の態様
本態様においては、特定の対象物の表面の形状(例えば検出装置100の利用者や所有者の指紋の形状)から抽出されたプロファイルデータ(以下「登録プロファイルデータ」という)が予めROM42に格納されている。図9に示されるように、出力処理を開始すると、CPU41は、図8のステップSc1およびステップSc2と同様の手順によって、その時点で実際に検出の対象とされている対象物のプロファイルデータを生成する(ステップSd1およびステップSd2)。次いで、CPU41は、ステップSd2にて生成したプロファイルデータとROM42に記憶されている登録プロファイルデータとを比較することによって双方の相関値(類似の程度を示す数値)を算定し(ステップSd3)、この相関値をインタフェース51および出力端子52から外部に出力する(ステップSd4)。
【0057】
(c) 第3の態様
本態様においては、相関値の閾値が予めROM42に格納されている。図9のステップSd1ないしステップSd4の手順によって相関値を算定すると、CPU41は、ここで算定した相関値とROM42に格納された相関値とを比較し、この比較の結果を表すデータ(例えば相関の有無を表すデータ)をインタフェース51および出力端子52から外部に出力する。
【0058】
(2)変形例2
各実施形態においては、図4のステップSa7や図7のステップSb7で検出データDに応じた空間周波数Fが算定される構成を例示したが、ここで実行される演算の内容は適宜に変更される。例えば、対象領域A1に属する複数のセンサ回路Uに対応する検出データDのうち数値が“1”であるデータの総数(検出データDを配列してなる画像のうち黒色の画素の総数)と、数値が“0”であるデータの総数(検出データDを配列してなる画像のうち白色の画素の総数)との比率を算定してもよい。この構成によれば、各実施形態のように空間周波数Fを算定する構成と比較して、演算による負荷を低減することができる。このように、本発明において検出データDについて実行される演算は、複数の検出データDの内容に応じた数値が算定される内容であれば足りる。
【0059】
また、各実施形態においては、空間周波数Fとその最適値F0との差分値ΔFが許容値Bと比較されることによって参照値Rの更新の可否が判定される構成を例示したが、例えば、CPU41によって算定された空間周波数Fが所定の範囲内の数値であるか否かに応じて参照値Rの更新の可否が判別される構成としてもよい。すなわち、本発明においては、所定の演算(各実施形態においては空間周波数Fを算定する演算)によって算定された数値に応じて参照値Rが更新される構成であればよい。
【0060】
(3)変形例3
各実施形態においては、図4のステップSa10や図7のステップSb10でテーブルTBLに基づいて補正値Aが特定される構成を例示したが、この補正値Aの算定の方法は任意である。例えば、検出データDに基づいて算定された空間周波数Fや差分値ΔFに所定の演算を施すことによって補正値Aが算定される構成としてもよい。すなわち、本発明においては、検出データDから算定された演算値に応じて参照値Rが更新される構成であれば足り、その更新後の数値を特定する方法の如何は不問である。
【0061】
(4)変形例4
各実施形態においては、検出用容量Cdと基準容量Crefとの接続点Nの電位を検出することによって対象物の表面との距離に応じた検出信号Sdが生成される構成を例示したが、この検出信号Sdを生成するための構成は任意に変更される。例えば、対象物に向けて光線を照射する発光素子(例えばLED(Light Emitting Diode))とこの対象物の表面における反射光を受光する受光素子(例えばCCD(Charge Coupled Device)素子)とをセンサ回路Uに設け、受光量に応じたレベルの検出信号Sdを受光素子が生成する構成(すなわち対象物の表面形状を光学的に読み取る構成)としてもよい。すなわち、本発明は、対象物との距離に応じたレベルの検出信号を生成する手段(センサ回路)を備えていれば足り、その方法が電気的であるか光学的であるかは不問である。
【0062】
(5)変形例5
各実施形態においては、CPU41によって実行されるプログラムやその実行に際して使用される各種のデータを記憶したROM42が検出装置100に搭載された構成を例示したが、これらのプログラムやデータが外部から検出装置100に供給される構成としてもよい。また、CPU41は、クロックに同期して処理を実行するタイプの演算装置であってもよいし、クロックに対して非同期にて処理を実行するタイプの演算装置であってもよい。
【0063】
(6)変形例6
各実施形態に係る検出装置は、特定の処理を要求してきた利用者が当該処理について資格を有する者であるか否かを認証(本人認証)するための認証装置に好適に採用される。この認証装置は、例えば第1実施形態に係る検出装置100に加えて、検出装置100から出力された検出データDに基づいて認証処理(例えば図8に例示した処理)を実行する手段を備える。認証装置の典型例としては、電子商取引に先立って本人認証を実行する装置や、コンピュータの起動に先立って本人認証を実行する装置などがある。また、この種の認証をCPU41に実行させれば、ICカードやキャッシュカード、クレジットカード、身分証明書といった様々なカード型の媒体に認証装置を搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1実施形態に係る検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ひとつのセンサ回路の構成を示す回路図である。
【図3】対象領域について説明するための平面図である。
【図4】CPUによって実行されるプログラムの内容を示すフローチャートである。
【図5】補正値を算定するためのテーブルの内容を示す説明図である。
【図6】変形例における検出領域と対象領域との関係を示す平面図である。
【図7】第2実施形態においてCPUが実行するプログラムの内容を示すフローチャートである。
【図8】出力処理の他の態様を示すフローチャートである。
【図9】出力処理の他の態様を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
D……検出装置、10……センサ群、U……センサ回路、11……行線、12……列線、13……出力線、20……選択回路、21……行選択回路、22……列選択回路、30……検出回路、31……レジスタ、32……D/A変換回路、33……ローパスフィルタ、35……比較器、36……バッファ、40……制御装置、41……CPU、42……ROM、43……RAM、52……出力端子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹凸を有する対象物の表面形状を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の手指の指紋など微細な凹凸を有する対象物の表面形状を検出する技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、対象物との接触面に沿って多数のセンサ回路がマトリクス状に配列された検出装置が開示されている。各センサ回路は、接触面に近接または接触した対象物との距離に応じたレベルの検出信号を出力する。この構成においては、各センサ回路から出力された検出信号と外部から供給される信号(以下「参照信号」という)とのレベルの大小に応じて2値のデータを出力する比較回路が配設され、この比較回路から出力されるデータを解析することによって対象物の表面形状が特定される。
【特許文献1】特開2004−317353号公報(段落0025)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、検出信号を生成するセンサ回路やこの検出信号と参照信号とを比較する比較回路といった各部を構成するスイッチング素子の電気的な特性(特に閾値電圧)には検出装置ごとにバラツキがある。したがって、各検出装置において均質な検出を実現するためには、検出装置による検出の結果を確認しながら利用者が参照信号のレベルを調整するという煩雑な作業が必要となる。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、検出装置の各部の特性にバラツキが存在する場合であっても参照信号の調整といった煩雑な作業を要することなく均質な検出を実現するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明に係る検出装置は、対象物の表面との距離に応じたレベルの検出信号を各々が生成する複数のセンサ回路を面状に配列してなるセンサ群と、各センサ回路を選択して当該センサ回路から検出信号を出力させる選択手段と、参照値のデジタルデータを記憶する記憶手段(例えば実施形態におけるレジスタ31)と、参照値に対応したレベルの参照信号を記憶手段に記憶されたデジタルデータから生成するD/A(Digital to Analog)変換回路と、選択手段が選択したセンサ回路から出力される検出信号とD/A変換回路が生成した参照信号とのレベルの大小に応じた検出データをセンサ回路ごとに順次に生成する生成手段(例えば実施形態における比較器35)と、生成手段が生成した複数の検出データについて所定の演算を実行する演算手段と、記憶手段に記憶されたデジタルデータを演算手段によって算定された演算値に基づいて更新する更新手段と、生成手段が生成した検出データに応じて出力処理を実行する出力手段とを具備する。
【0005】
この構成によれば、各センサ回路が出力した検出信号から生成された検出データに基づいて参照値のデジタルデータが更新されるから、検出装置ごとに各部(特にセンサ回路や生成回路やD/A変換回路)の特性のバラツキがある場合であっても、参照値の調整といった煩雑な作業を利用者に要求することなく、そのバラツキを補償した均質な検出を実現することができる。
【0006】
なお、本発明の検出装置を構成する各手段(特に生成手段、演算手段、更新手段および出力手段)は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置がプログラムを実行することによって実現される。この演算処理装置は、所定のクロック信号に同期して動作する装置であってもよいし、クロック信号に対して非同期に動作する装置であってもよい。もっとも、検出装置の各手段は、各々の処理に専用されるDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェアによっても実現される。
【0007】
本発明の望ましい態様においては、センサ群のうち選択手段による選択の対象となる領域を当該選択手段に指定する手段であって、センサ群の第1領域を指定する第1処理(例えば実施形態における予備スキャン処理)と、第1領域よりも広い第2領域を指定する第2処理(例えば実施形態における本スキャン処理)とを実行する指定手段が設けられ、選択手段は、指定手段によって指定された領域に属する各センサ回路を選択して当該センサ回路から検出信号を出力させ、出力手段は、第2処理が実行されたときに生成手段が生成した検出データに応じて出力処理を実行する一方、第1処理が実行されたときに生成手段が生成した検出データについては出力処理を実行しない。なお、この態様の具体例は第1実施形態として後述される。
【0008】
この態様によれば、第2処理にて指定される第2領域(実施形態における検出領域A0)よりも狭い第1領域(実施形態における対象領域A1)の各センサ回路に対応した検出データに応じて参照値が更新されるから、参照値を調整するための第1処理においても総てのセンサ回路が対象とされる構成と比較して、演算処理の負荷を軽減することができる。
なお、第1処理に際して指定手段が指定する第1領域は固定的に選定された領域であってもよいが、指定手段が第1処理を複数回にわたって実行する構成においては、ある回の第1処理にて指定する第1領域(例えば図6に示される対象領域A1[a])と他の回の第1処理にて指定する第1領域(例えば図6に示される対象領域A1[b])とを異ならせる構成としてもよい。
【0009】
さらに望ましい態様において、演算手段は、第1処理が実行されたときに生成手段が生成した検出データについて所定の演算を実行する一方、第2処理が実行されたときに生成手段が生成した検出データについては所定の演算を実行しない。この態様によれば、第1処理および第2処理の双方において演算手段が所定の演算を実行する構成と比較して、演算手段による処理の負荷をさらに軽減することができる。
【0010】
また、本発明の他の態様において、演算手段は、センサ群を構成する総てのセンサ回路からの検出信号に応じて生成された複数の検出データのうち特定の領域に属する各センサ回路に対応した検出データについて所定の演算を実行する。なお、この態様の具体例は第2実施形態として後述される。この態様によれば、総てのセンサ回路に対応した検出データを対象として所定の演算が実行される構成と比較して演算の対象となる検出データの個数が削減されるから、演算手段による演算の付加を軽減することができる。
なお、所定の演算の対象となる領域は予め固定的に選定された領域であってもよいが、選択手段が総てのセンサ回路の選択を複数回にわたって実行する構成(すなわち対象物の表面形状を複数回にわたって実行する構成)においては、ある回の選択に伴なって所定の演算の対象として選定する領域(例えば図6の対象領域A1[a])と他の回の選択に伴なって所定の演算の対象として選定する領域(例えば図6の対象領域A1[b])とを異ならせる構成としてもよい。
【0011】
本発明における演算手段は、例えば、各センサ回路に対応する検出データをセンサ群における各センサ回路の配列に従って配列してなる画像(第1値の検出データを黒色の階調とし第2値の検出データを白色の階調としたラスタ画像)の空間周波数を算定する。ただし、所定の演算の内容はこれに限られない。例えば、生成手段が、検出信号のレベルが参照信号のレベルよりも大であるときに第1値の検出データを生成するとともに検出信号のレベルが参照信号のレベルよりも小であるときに第2値の検出データを生成する構成においては、演算手段が、各々がセンサ回路からの検出信号に応じて生成された複数の検出データのうち第1値である検出データの総数と第2値である検出データの総数との比率を算定する構成としてもよい。この構成によれば、空間周波数を算定する構成と比較して、演算手段による演算の付加を軽減することができる。なお、本態様において「第1値」および「第2値」のみが特定されているとは言っても、検出データの取り得る数値を2値のみに限定する趣旨ではない。
【0012】
本発明の出力手段によって出力される情報は任意である。例えば、検出データが出力手段によって外部に出力される構成としてもよいし(後述する第1実施形態)、検出データから生成されたプロファイルデータが出力手段によって外部に出力される構成としてもよい(例えば図8に示される態様)。また、検出データから生成されたプロファイルデータと予め登録されたプロファイルデータとの相関値が出力手段から外部に出力される構成(例えば図9に示される態様)や、この相関値に基づく認証の結果が出力手段から外部に出力される構成も採用される。
【0013】
本発明に係る検出装置は、典型的には人間の手指の指紋を検出するための手段として利用される。この種の検出装置は、本人認証を実行する認証装置に好適に利用される。この認証装置は、本発明に係る検出装置と、検出装置の出力手段から出力された情報に基づいて認証処理を実行する認証手段とを具備する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<A:第1実施形態>
<検出装置の構成>
図1は、本実施形態に係る検出装置の構成を示すブロック図である。この検出装置100は、外部に露出する平面(以下「検出面」という)に接触または近接する対象物の表面形状を検出するための装置である。同図に示されるように、検出装置100は、複数のセンサ回路Uを略矩形の領域(以下「検出領域」という)A0内にマトリクス状に配列してなるセンサ群10と、このセンサ群10の各センサ回路Uを動作させるための選択回路20と、各センサ回路Uから出力された信号(以下「検出信号」という)Sdを処理する検出回路30と、検出装置100の各部の動作を制御する制御装置40と、この検出装置100による検出の結果を外部に出力するためのインタフェース51およびこれに接続された出力端子52とを有する。以上に説明した各部は、板材101の表面に形成されたスイッチング素子を含んで構成される。このスイッチング素子は、例えば、低温ポリシリコンからなる半導体層を備えた薄膜トランジスタである。板材101は、ガラスなどの材料からなる硬質の部材であってもよいし(SOG(System On Glass))、プラスチックなどの材料からなる可撓性の部材であってもよい(SOP(System On Plastic))。
【0015】
選択回路20と検出回路30とインタフェース51とは、バス45を介して制御装置40に接続される。この制御装置40は、プログラムの実行によって種々の手段として機能するCPU41と、このCPU41が実行するプログラムやその実行に際して使用される各種のデータを不揮発的に記憶するROM(Read Only Memory)42と、CPU41によって作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)43とを有する。
【0016】
検出領域A0には、X方向に延在するM本の行線11と、X方向に直交するY方向に延在するN本の列線12と、各列線12と対をなすようにY方向に延在して検出回路30に接続されたN本の出力線13とが形成される(MおよびNはともに自然数)。センサ群10の各センサ回路Uは行線11と列線12との交差に対応して配置される。したがって、これらのセンサ回路Uは、X方向およびY方向にわたって縦M行×横N列のマトリクス状に配列する。各センサ回路Uは、検出面に接触または近接した対象物との距離に応じたレベルの検出信号Sdを生成する回路である。N本の出力線13は検出回路30における比較器35の入力端に対して共通に接続される。
【0017】
次に、図2は、ひとつのセンサ回路Uの構成を示す回路図である。同図に示される検出用電極15は、検出面と平行に配列された導電性の膜体であり、その表面は図示しない誘電体によって覆われている。この検出用電極15は、検出面に接近した対象物の表面に誘電体を挟んで対向する。したがって、検出用電極15と対象物と両者間に挟まれた誘電体とによって検出用容量Cdが構成される。この検出用容量Cdの静電容量は検出用電極15と対象物の表面との距離に応じて変動する。一方、基準容量Crefは、接続点Nにて検出用電極15に接続された電極と列線12に接続された電極とを対向させた容量である。接続点Nの電位は、対象物と列線12との電位差を基準容量Crefの静電容量と検出用容量Cdの静電容量とに応じて分割した電位となる。
【0018】
接続点Nには増幅用トランジスタTr1のゲート電極が接続される。この増幅用トランジスタTr1は、接続点Nの電位の変動を増幅して検出信号Sdを生成するためのスイッチング素子であり、そのソース電極は電源の低位側の電位が供給される電源線16に接続される。一方、増幅用トランジスタTr1のドレイン電極は列選択トランジスタTr2のソース電極に接続される。この列選択トランジスタTr2は、ゲート電極が列線12に接続されるとともにドレイン電極が行選択トランジスタTr3のソース電極に接続されたスイッチング素子である。行選択トランジスタTr3のゲート電極は行線11に接続され、そのドレイン電極は出力線13に接続される。
【0019】
図1に示される選択回路20は、センサ群10の各センサ回路Uを選択してそのセンサ回路Uから出力線13に検出信号Sdを出力させるための手段であり、M本の行線11の各々に接続された行選択回路21とN本の列線12の各々に接続された列選択回路22とを含む。このうち行選択回路21は、CPU41による制御のもとに何れかの行線11を択一的に選択し、この選択した行線11に行選択トランジスタTr3をオン状態とする電位を印加するとともにそれ以外の行線11に行選択トランジスタTr3をオフ状態とする電位を印加する。一方、列選択回路22は、CPU41による制御のもとに何れかの列線12を択一的に選択し、ここで選択した列線12に列選択トランジスタTr2をオン状態とする電位を印加するとともにそれ以外の列線12に列選択トランジスタTr2をオフ状態とする電位を印加する。以上の構成のもと、行選択回路21によって選択された行線11と列選択回路22によって選択された列線12との交差に対応するセンサ回路Uによって生成された検出信号Sdが出力線13に順次に出力される。したがって、センサ群10から検出回路30に入力される検出信号Sdは、選択回路20によって各センサ回路Uが選択される周期に同期して、各センサ回路Uにおける検出用容量Cdの静電容量に応じたレベル(すなわち各センサ回路Uの検出用電極15とこれに対向する対象物の表面との距離に応じたレベル)に随時に変動する。なお、ここでは各センサ回路Uが点順次に選択される構成を例示するが、センサ群10の各行ごとにセンサ回路Uが選択される構成(線順次)や、センサ群10の総てのセンサ回路Uが同時に選択される構成(面順次)としてもよい。以下では、選択回路20によって各センサ回路Uを順次に選択する動作を「スキャン」と表記する。
【0020】
次に、検出回路30の構成を説明する。図1に示される比較器35は、センサ群10の各センサ回路Uから順次に供給される検出信号Sdのレベルと参照信号Srefのレベルとを比較し、その比較の結果に応じた1ビットのデータ(以下「検出データ」という)Dをセンサ回路Uごとに生成する手段である。さらに詳述すると、比較器35は、検出信号Sdのレベルが参照信号Srefのレベルよりも大である場合には検出データDとして数値“1”を出力する一方、検出信号Sdのレベルが参照信号Srefのレベルよりも小である場合には検出データDとして数値“0”を出力する。こうしてセンサ回路Uごとに順次に生成された検出データDはバッファ36に格納される。そして、バッファ36に格納された検出データDは、CPU41によって順次に読み出されてRAM43に格納される。このRAM43には、縦M行×横N列のセンサ回路Uに対応した検出データDがその配列の順番に格納される「M×N」ビットの記憶領域Arが画定される。
【0021】
図1に示されるレジスタ31とD/A変換回路(DAC)32とローパスフィルタ(LPF)33とは、比較器35に供給される参照信号Srefを生成するための手段である。このうちレジスタ31は、参照信号Srefのレベル(以下「参照値」という)Rを表すデジタルデータを記憶する。一方、D/A変換回路32は、レジスタ31に記憶された参照値Rに対応したレベルのアナログ信号である参照信号Srefを生成する。このD/A変換回路32から出力された参照信号Srefはローパスフィルタ33によって高周波成分(例えばノイズ成分)が除去されたうえで比較器35に供給される。なお、D/A変換回路32から出力される参照信号Srefのノイズが問題とならないのであれば、ローパスフィルタ33を省略することもできる。
【0022】
本実施形態において実行されるセンサ回路Uのスキャンには、予備スキャン処理と本スキャン処理とがある。このうち予備スキャン処理は、図3に示されるように、総てのセンサ回路Uを包含する検出領域A0のうち特定の領域(以下「対象領域」という)A1に属する各センサ回路Uを選択的にスキャンしてその各々に対応する検出データDを取得する処理である。一方、本スキャン処理は、検出領域A0に属する総てのセンサ回路Uをスキャンしてその各々に対応する検出データD(「M×N」ビット)を取得する処理である。
【0023】
予備スキャン処理は、D/A変換回路32によって生成される参照信号Srefのレベルを調整するために実行される。すなわち、本実施形態においては、予備スキャン処理にて生成された検出データDに基づいて、レジスタ31に記憶された参照値Rが更新され、この結果として参照信号Srefのレベルが調整されるようになっている。このような予備スキャン処理を本スキャン処理に先立って実行することにより、本スキャン処理にて使用される参照信号Srefを検出装置100の特性(例えば各部を構成する薄膜トランジスタの閾値電圧)に応じたレベルに調整することができる。なお、本実施形態における予備スキャン処理は参照信号Srefのレベルの調整を目的として実行されるから、この予備スキャン処理によって得られた検出データDは対象物の表面の形状の特定には使用されない。一方、本スキャン処理によって得られた総てのセンサ回路Uに対応する検出データDは、インタフェース51を介して出力端子52から外部に出力される。こうして出力された検出データDを解析することによって対象物の表面形状が特定される。
【0024】
図1に示されるように、ROM42には、以上に説明した予備スキャン処理や本スキャン処理を実行するためのプログラムのほか、このプログラムの実行に際して使用される種々のデータが記憶されている。ROM42に記憶されるデータとしては、例えば、図3に示されるように対象領域A1の対角点の座標([Xa1,Ya1]および[Xa2,Ya2])および本スキャン処理の対象となる検出領域A0の対角点の座標([Xb1,Yb1]および[Xb2,Xb2])や、参照値Rの初期値R0を示すデータ、さらには予備スキャン処理の結果に基づいてレジスタ31の参照値Rの補正値Aを特定するためのテーブルTBLなどがある。なお、ROM42による記憶の内容については検出装置100の動作の説明に際して詳述する。
【0025】
<検出装置100の動作>
図示しない入力装置への操作によってプログラムの起動が指示されると、CPU41は、ROM42に記憶されたプログラムをRAM43に読み込んでこれを順次に実行する。図4は、このプログラムの内容を示すフローチャートである。
【0026】
同図に示されるように、CPU41はまず、ROM42に記憶されている参照信号Srefのレベルの初期値R0をRAM43に変数Rとして格納したうえで(ステップSa1)、スキャンを開始すべきタイミングが到来するまで待機する(ステップSa2)。ステップSa2において、CPU41は、例えば、図示しない入力装置への操作に応じて外部の機器からスキャンの開始の指示が入力された場合や、検出面に対する対象物の接近が所定のセンサによって検出された場合に、スキャンを開始すべきタイミングが到来したと判定する。
【0027】
スキャンを開始すべきタイミングが到来すると、CPU41は、ROM42に記憶されている対象領域A1の座標をRAM43に格納する(ステップSa3)。さらに、CPU41は、その時点でRAM43に格納されている変数Rをレジスタ31に設定する(ステップSa4)。これにより、D/A変換回路32からローパスフィルタ33を介して比較器35に入力される参照信号Srefは変数Rに応じたレベルとなる。
【0028】
続いて、CPU41は、ステップSa3にてRAM43に格納した対象領域A1の座標を選択回路20に出力することによって当該選択回路20に予備スキャン処理を実行させる(ステップSa5)。行選択回路21は、CPU41によって指定された座標「Ya1」から座標「Ya2」までの領域に属する各行線11を順番に選択する。一方、列選択回路22は、行選択回路21がひとつの行線11を選択する各期間内に、CPU41によって指定された座標「Xa1」から座標「Xa2」までの領域に属する各列線12を順番に選択する。この結果、対象領域A1の各センサ回路Uによって生成された検出信号Sdが比較器35に対して順次に供給される。そして、比較器35は、この検出信号Sdとローパスフィルタ33から供給される参照信号Srefとのレベルの大小に応じて検出データDを生成して順次にバッファ36に出力する。CPU41は、こうしてバッファ36に格納される検出データDを読み出してRAM43の記憶領域Arに格納していく(ステップSa6)。
【0029】
対象領域A1に属する総てのセンサ回路Uについて検出データDの抽出が完了すると、CPU41は、ステップSa6にてRAM43に転送された対象領域A1の検出データDに所定の演算を実行することによって空間周波数Fを算定する(ステップSa7)。より具体的には、CPU41は、対象領域A1に属する各センサ回路Uに対応した検出データDを各々の配列に従って配列してなる画像(すなわち検出データD“1”が黒色の画素とされ検出データD“0”が白色の画素とされた画像)の空間周波数Fを算定する。
【0030】
図1に示されるように、ROM42には、空間周波数Fの最適値F0が予め記憶されている。CPU41は、ステップSa7にて算定した空間周波数FとROM42に格納された最適値F0との差分値ΔFを算定する(ステップSa8)。また、ROM42には、この差分値ΔFの許容値Bが予め記憶されている。CPU41は、ステップSa8にて算定された差分値ΔFがROM42に格納された許容値Bよりも小であるか否かを判定する(ステップSa9)。すなわち、CPU41は、ステップSa8およびステップSa9において、対象領域A1の各センサ回路Uから取得した検出データDに基づいて算定された空間周波数Fが、最適値F0を含む所定の範囲に収まっているか否かを判定する。
【0031】
ここで、ステップSa7にて算定される空間周波数Fと最適値F0との差分値ΔFは、実際にD/A変換回路32によって生成された参照信号Srefのレベルが検出装置100の特性に適合したレベルから離れているほど大きい数値となる。そこで、CPU41は、ステップSa9において差分値ΔFが許容値Bよりも大きいと判定すると、RAM43に格納された変数Rを更新するための処理を実行する(ステップSa10)。すなわち、CPU41は、第1に、ROM42に格納されたテーブルTBLを参照することによって差分値ΔFに応じた補正値Aを選定し、第2に、RAM43に格納された変数Rに補正値Aを加算する。図5に示されるように、テーブルTBLは、差分値ΔFと補正値Aとが対応付けられたテーブルである。ステップSa10において、CPU41は、ステップSa8にて算定した差分値ΔFをテーブルTBLから検索し、ここで検索された差分値ΔFに対応する補正値Aを変数Rに加算されるべき数値として特定する。以上の処理を実行すると、CPU41は、ステップSa4に処理を移行して新たな変数Rをレジスタ31に設定する。この結果、D/A変換回路32から比較器35に供給される参照信号Srefは、ステップSa10における更新後の新たな変数Rに応じたレベルに調整される。ステップSa4からステップSa10までの処理は、差分値ΔFが許容値Bよりも小さい数値となるまで繰り返される。
【0032】
一方、ステップSa9において差分値ΔFが許容値Bよりも小であると判定すると、CPU41は、検出領域A0の全体を対象とした本スキャン処理が実行されるように各部を制御する。すなわち、CPU41はまず、ROM42に格納された検出領域A0の座標をRAM43に格納し(ステップSa11)、この座標を指定することによって選択回路20に本スキャン処理を実行させる(ステップSa12)。行選択回路21は、CPU41によって指定された座標「Yb1(第1行目)」から座標「Yb2(第M行目)」までの各行線11を順番に選択する。一方、列選択回路22は、CPU41によって指定された座標「Xb1(第1列目)」から座標「Xb2(第n列目)」までの各列線12を、1本の行線11が選択されるたびに順番に選択する。この結果、センサ群10の総てのセンサ回路Uにて生成された検出信号Sdが順番に比較器35に供給され、その各々に対応する検出データDが比較器35によって生成されてバッファ36に格納される。CPU41は、こうしてバッファ36に格納される検出データD(「M×N」ビット)を順次にRAM43の記憶領域Arに転送する(ステップSa13)。
【0033】
以上の手順によって本スキャン処理が完了すると、CPU41は、ステップSa13にてRAM43の記憶領域Arに格納した「M×N」ビットの検出データDを順次にインタフェース51から出力端子52に出力する(ステップSa14)。一方、この出力端子52に接続された外部の機器は、検出装置100から検出データDを順次に受信し、これらの検出データDを解析することによって対象物の表面形状を特定する。
【0034】
さらに、CPU41は、プログラムを終了すべきか否かを判定する(ステップSa15)。例えば、CPU41は、図示しない入力装置への操作に応じてスキャンの終了の指示が入力された場合にステップSa15にて「Yes」と判定する。ここで「Yes」と判定すると、CPU41は、プログラムの実行を終了する。一方、プログラムを終了すべきでないと判定した場合(ステップSa15:No)、CPU41は、ステップSa2に処理を移行して再びスキャンの開始のタイミングが到来するまで(例えば前回とは別個の対象物が検出の対象とされるまで)待機する。
【0035】
以上に説明したように、本実施形態によれば、予備スキャン処理の結果に基づいて参照信号Srefが検出装置100の特性に適合したレベルに調整されるから、検出装置100ごとに電気的な特性の個体差がある場合であっても、その個体差の影響を補償した均質な検出を実現することができる。さらに、この構成によれば、参照信号Srefのレベルの調整といった煩雑な作業を利用者が実行する必要はない。
【0036】
また、本実施形態においては、板材101の表面に形成された薄膜トランジスタによって検出装置100の各部が構成されるから装置の小型化が図られる。したがって、本実施形態の検出装置100は、携帯電話機やカード型の機器など利用者によって携帯されるタイプの機器に特に好適であると言える。ところで、この種の薄膜トランジスタ(特に低温ポリシリコンを半導体層としたトランジスタ)は、いわゆるバルクトランジスタと比較すると、スイッチング素子としての性能(特に電子移動度)に劣り、その特性のバラツキも大きいという問題がある。このような事情を考慮すると、各部の電気的な特性のバラツキを補償することができる本実施形態は、図1に示したように薄膜トランジスタをスイッチング素子として利用した構成のもとで特に有効であると言える。
【0037】
加えて、本実施形態においては、検出領域A0よりも狭い対象領域A1に対する予備スキャン処理によって参照信号Srefのレベルの基準となる検出データDが抽出される。したがって、予備スキャン処理に際しても検出領域A0の全域を対象とした処理が実行される構成と比較して、予備スキャン処理に要する時間を短縮することができ、さらには検出データDから空間周波数Fを算定する処理の負荷を軽減することができる。
【0038】
<他の態様>
第1実施形態においては以下の各態様を採用することもできる。
【0039】
(1)本実施形態においては、予備スキャン処理が実施される対象領域A1が検出領域A0よりも狭い領域とされた構成を例示したが、例えばCPU41の処理の能力に余裕がある場合には、予備スキャン処理においても検出領域A0の全域を対象として検出データDが抽出される構成としてもよい。
【0040】
(2)本実施形態においては、予め固定的に選定された対象領域A1が予備スキャン処理の対象とされる構成を例示したが、この予備スキャン処理の対象となる領域が適宜に変更される構成としてもよい。この構成においては、例えば、各々の形態(位置や形状)が相違する複数の領域の対角点の座標が予めROM42に格納され、CPU41は、これらの領域の何れかを対象領域A1として選定したうえで予備スキャン処理を実行する。例えば、CPU41は、ある回の予備スキャン処理においては図6の対象領域A1[a]を対象として予備スキャン処理が実行されるように各部を制御する一方、他の回の予備スキャン処理においては図6の対象領域A1[b]を対象として予備スキャン処理が実行されるように各部を制御する。この構成によれば、検出領域A0のうち特定の領域のセンサ回路Uに特性のバラツキが偏在しているような場合であっても、このバラツキが補償されるように参照信号Srefのレベルを調整することができる。
【0041】
(3)本実施形態においては、本スキャン処理が実行されるたびにその直前に予備スキャン処理が実行される構成を例示したが、本スキャン処理と予備スキャン処理との関係はこれに限られない。例えば、複数回の本スキャン処理が実行されるたびに予備スキャン処理が1回だけ実行される構成としてもよい。また、検出装置100の出荷前に1回だけ予備スキャン処理が実行される構成としてもよい。もっとも、第1実施形態のように予備スキャン処理が検出装置100の出荷後にも随時に実行される構成とすれば、検出装置100の各部の特性が経時的に変化した場合であっても、参照信号Srefをこの変化後の特性に合致したレベルに調整することができる。
【0042】
(4)本実施形態においては差分値ΔFが許容値Bを下回るまで予備スキャン処理および変数Rの更新が繰り返される構成を例示したが、ステップSa9において差分値ΔFが許容値Bを下回ると判定された場合に、変数R(あるいはレジスタ31に格納された参照値R)が1回だけ補正される構成としてもよい。
【0043】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態においては、参照信号Srefを調整するための予備スキャン処理が本スキャン処理(すなわち外部への出力の対象となる検出データDを抽出する処理)とは別個に実施される構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、本スキャン処理にて抽出された検出データDに基づいて、次回の本スキャン処理にて使用される参照信号Srefのレベルが調整されるようになっている。なお、本実施形態のうち第1実施形態と同様の要素については共通の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
<検出装置100の動作>
図7は、本実施形態においてCPU41が実行するプログラムの内容を示すフローチャートである。同図に示されるように、プログラムを開始すると、CPU41は、図4のステップSa1およびステップSa2と同様に、ROM42に格納された初期値R0をRAM43に変数Rとして格納したうえで(ステップSb1)、スキャンを開始すべきタイミングまで待機する(ステップSb2)。そして、スキャンを開始するタイミングが到来すると、CPU41は、RAM43に格納された変数Rを参照値Rとしてレジスタ31に設定する(ステップSb3)。
【0045】
次いで、CPU41は、図4のステップSa12と同様の手順により、選択回路20に対して本スキャン処理の実行を指示する(ステップSb4)。さらに、CPU41は、この本スキャン処理の結果としてバッファ36に格納された検出データDをRAM43の記憶領域Arに順次に転送する(ステップSb5)。これによって記憶領域Arには、総てのセンサ回路Uに対応した「M×N」ビットの検出データDがその配列に従って格納される。続いて、CPU41は、図4のステップSa14と同様の手順により、これらの検出データDを順次に読み出して出力端子52に出力する(ステップSb6)。
【0046】
次に、CPU41は、ステップSb5でRAM43に格納した検出データDのうち対象領域A1に属する各センサ回路Uに対応した検出データDから空間周波数Fを算定する(ステップSb7)。なお、対象領域A1に属する各センサ回路Uの検出データDは、ROM42に格納された対象領域A1の座標から特定される。さらに、CPU41は、ステップSb7にて算定した空間周波数FとROM42に格納された最適値F0との差分値ΔFを算定したうえで(ステップSb8)、この差分値ΔFがROM42に格納された許容値Bよりも小であるか否かを判定する(ステップSb9)。そして、差分値ΔFが許容値Bよりも大であると判定した場合(すなわち参照信号Srefが検出装置100の特性に適合しないレベルである場合)、CPU41は、図4のステップSa10と同様の手順により、差分値ΔFに応じてテーブルTBLから特定される補正値AをRAM43の変数Rに加算する(ステップSb10)。これに対し、差分値ΔFが許容値Bよりも小であると判定した場合(すなわち参照信号Srefのレベルが最適なレベルを含む所定の範囲内に収まっている場合)、CPU41は、ステップSb10を経ることなくステップSb11に処理を移行する。
【0047】
ステップSb11において、CPU41は、図4のステップSa15と同様にプログラムの終了の可否を判定する。このステップSb11において未だプログラムを終了しないと判定すると、CPU41は、ステップSb2に処理を移行する。前回の本スキャン処理における参照信号Srefのレベルが適切でない場合であっても、ステップSb10において変数Rは補正されているから、その直後の本スキャン処理においては、前回の本スキャン処理時のレベルよりも適切なレベルの参照信号Srefに基づいて検出データDを取得することができる。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態においては、参照信号Srefのレベルがその直前の検出の結果に基づいて調整されるから、第1実施形態と同様の効果が奏される。加えて、本実施形態においては、対象物について検出データDを取得するために1回の本スキャン処理のみを実行すれば足りるから、本スキャン処理に加えて予備スキャン処理が必要である第1実施形態の構成と比較して、CPU41の処理負荷を軽減することができるという利点がある。
【0049】
<他の態様>
第2実施形態においては以下の各態様を採用することもできる。
【0050】
(1)本実施形態においては、検出領域A0よりも狭い対象領域A1に対応した検出データDに基づいて空間周波数Fが算定される構成を例示したが、検出領域A0の全域に対応した検出データD(「M×N」ビット)に所定の演算を実行することによって空間周波数Fが算定される構成としてもよい。
【0051】
(2)本実施形態においては、予め固定的に選定された対象領域A1が空間周波数Fの算定の対象とされる構成を例示したが、この算定の対象となる領域が適宜に変更される構成としてもよい。すなわち、例えば、各々の形態(位置や形状)が相違する複数の領域の対角点の座標が予めROM42に格納された構成のもと、CPU41は、ステップSb7において、これらの領域の何れかを対象領域A1として選定したうえで空間周波数Fを算定する。例えば、CPU41は、ある回の本スキャン処理を実行するときのステップSb7で図6の対象領域A1[a]の各検出データDから空間周波数Fを算定する一方、他の回の本スキャン処理を実行するときのステップSb7で図6の対象領域A1[b]の各検出データDから空間周波数Fを算定するといった具合である。
【0052】
(3)本実施形態においては、本スキャン処理が実行されるたびに空間周波数Fの算定およびこれに基づく変数Rの更新が実行される構成を例示したが、例えば、複数回の本スキャン処理のうち1回の本スキャン処理においてのみこれらの処理が実行される構成としてもよい。また、検出データDを出力する処理と変数Rを更新するための処理の順序は任意である。例えば、ステップSb7からステップSb10までの各処理の実行後にステップSb6の出力処理が実行される構成としてもよい。
【0053】
<C:変形例>
各実施形態に対しては様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0054】
(1)変形例1
各実施形態においては、図4のステップSa14や図7のステップSb6の出力処理にて検出データDが出力端子52から外部に出力される構成を例示したが、出力処理の内容はこれに限られない。例えば出力処理を以下の内容としてもよい。
【0055】
(a) 第1の態様
図8に示されるように、図4のステップSa14や図7のステップSb6において出力処理を開始すると、CPU41はまず、その時点においてRAM43の記憶領域Arに格納されている検出データDに基づいて、対象物の表面の形状における特徴的な部分(以下「特徴点」という)を抽出する(ステップSc1)。この特徴点は、例えば、人間の手指における指紋の分岐点や端点である。さらに、CPU41は、ステップSc1にて抽出した特徴点の位置とその特徴点での形状とをベクトルの形式で表現するデータ(以下「プロファイルデータ」という)を生成する(ステップSc2)。そして、CPU41は、このプロファイルデータをインタフェース51および出力端子52から外部に出力する(ステップSc3)。
【0056】
(b) 第2の態様
本態様においては、特定の対象物の表面の形状(例えば検出装置100の利用者や所有者の指紋の形状)から抽出されたプロファイルデータ(以下「登録プロファイルデータ」という)が予めROM42に格納されている。図9に示されるように、出力処理を開始すると、CPU41は、図8のステップSc1およびステップSc2と同様の手順によって、その時点で実際に検出の対象とされている対象物のプロファイルデータを生成する(ステップSd1およびステップSd2)。次いで、CPU41は、ステップSd2にて生成したプロファイルデータとROM42に記憶されている登録プロファイルデータとを比較することによって双方の相関値(類似の程度を示す数値)を算定し(ステップSd3)、この相関値をインタフェース51および出力端子52から外部に出力する(ステップSd4)。
【0057】
(c) 第3の態様
本態様においては、相関値の閾値が予めROM42に格納されている。図9のステップSd1ないしステップSd4の手順によって相関値を算定すると、CPU41は、ここで算定した相関値とROM42に格納された相関値とを比較し、この比較の結果を表すデータ(例えば相関の有無を表すデータ)をインタフェース51および出力端子52から外部に出力する。
【0058】
(2)変形例2
各実施形態においては、図4のステップSa7や図7のステップSb7で検出データDに応じた空間周波数Fが算定される構成を例示したが、ここで実行される演算の内容は適宜に変更される。例えば、対象領域A1に属する複数のセンサ回路Uに対応する検出データDのうち数値が“1”であるデータの総数(検出データDを配列してなる画像のうち黒色の画素の総数)と、数値が“0”であるデータの総数(検出データDを配列してなる画像のうち白色の画素の総数)との比率を算定してもよい。この構成によれば、各実施形態のように空間周波数Fを算定する構成と比較して、演算による負荷を低減することができる。このように、本発明において検出データDについて実行される演算は、複数の検出データDの内容に応じた数値が算定される内容であれば足りる。
【0059】
また、各実施形態においては、空間周波数Fとその最適値F0との差分値ΔFが許容値Bと比較されることによって参照値Rの更新の可否が判定される構成を例示したが、例えば、CPU41によって算定された空間周波数Fが所定の範囲内の数値であるか否かに応じて参照値Rの更新の可否が判別される構成としてもよい。すなわち、本発明においては、所定の演算(各実施形態においては空間周波数Fを算定する演算)によって算定された数値に応じて参照値Rが更新される構成であればよい。
【0060】
(3)変形例3
各実施形態においては、図4のステップSa10や図7のステップSb10でテーブルTBLに基づいて補正値Aが特定される構成を例示したが、この補正値Aの算定の方法は任意である。例えば、検出データDに基づいて算定された空間周波数Fや差分値ΔFに所定の演算を施すことによって補正値Aが算定される構成としてもよい。すなわち、本発明においては、検出データDから算定された演算値に応じて参照値Rが更新される構成であれば足り、その更新後の数値を特定する方法の如何は不問である。
【0061】
(4)変形例4
各実施形態においては、検出用容量Cdと基準容量Crefとの接続点Nの電位を検出することによって対象物の表面との距離に応じた検出信号Sdが生成される構成を例示したが、この検出信号Sdを生成するための構成は任意に変更される。例えば、対象物に向けて光線を照射する発光素子(例えばLED(Light Emitting Diode))とこの対象物の表面における反射光を受光する受光素子(例えばCCD(Charge Coupled Device)素子)とをセンサ回路Uに設け、受光量に応じたレベルの検出信号Sdを受光素子が生成する構成(すなわち対象物の表面形状を光学的に読み取る構成)としてもよい。すなわち、本発明は、対象物との距離に応じたレベルの検出信号を生成する手段(センサ回路)を備えていれば足り、その方法が電気的であるか光学的であるかは不問である。
【0062】
(5)変形例5
各実施形態においては、CPU41によって実行されるプログラムやその実行に際して使用される各種のデータを記憶したROM42が検出装置100に搭載された構成を例示したが、これらのプログラムやデータが外部から検出装置100に供給される構成としてもよい。また、CPU41は、クロックに同期して処理を実行するタイプの演算装置であってもよいし、クロックに対して非同期にて処理を実行するタイプの演算装置であってもよい。
【0063】
(6)変形例6
各実施形態に係る検出装置は、特定の処理を要求してきた利用者が当該処理について資格を有する者であるか否かを認証(本人認証)するための認証装置に好適に採用される。この認証装置は、例えば第1実施形態に係る検出装置100に加えて、検出装置100から出力された検出データDに基づいて認証処理(例えば図8に例示した処理)を実行する手段を備える。認証装置の典型例としては、電子商取引に先立って本人認証を実行する装置や、コンピュータの起動に先立って本人認証を実行する装置などがある。また、この種の認証をCPU41に実行させれば、ICカードやキャッシュカード、クレジットカード、身分証明書といった様々なカード型の媒体に認証装置を搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1実施形態に係る検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ひとつのセンサ回路の構成を示す回路図である。
【図3】対象領域について説明するための平面図である。
【図4】CPUによって実行されるプログラムの内容を示すフローチャートである。
【図5】補正値を算定するためのテーブルの内容を示す説明図である。
【図6】変形例における検出領域と対象領域との関係を示す平面図である。
【図7】第2実施形態においてCPUが実行するプログラムの内容を示すフローチャートである。
【図8】出力処理の他の態様を示すフローチャートである。
【図9】出力処理の他の態様を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
D……検出装置、10……センサ群、U……センサ回路、11……行線、12……列線、13……出力線、20……選択回路、21……行選択回路、22……列選択回路、30……検出回路、31……レジスタ、32……D/A変換回路、33……ローパスフィルタ、35……比較器、36……バッファ、40……制御装置、41……CPU、42……ROM、43……RAM、52……出力端子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面との距離に応じたレベルの検出信号を各々が生成する複数のセンサ回路を面状に配列してなるセンサ群と、
前記各センサ回路を選択して当該センサ回路から検出信号を出力させる選択手段と、
参照値のデジタルデータを記憶する記憶手段と、
参照値に対応したレベルの参照信号を前記記憶手段に記憶されたデジタルデータから生成するD/A変換回路と、
前記選択手段が選択した前記センサ回路から出力される検出信号と前記D/A変換回路が生成した参照信号とのレベルの大小に応じた検出データをセンサ回路ごとに順次に生成する生成手段と、
前記生成手段が生成した複数の検出データについて所定の演算を実行する演算手段と、
前記記憶手段に記憶されたデジタルデータを前記演算手段によって算定された演算値に基づいて更新する更新手段と、
前記生成手段が生成した検出データに応じて出力処理を実行する出力手段と
を具備する検出装置。
【請求項2】
前記センサ群のうち前記選択手段による選択の対象となる領域を当該選択手段に指定する手段であって、前記センサ群の第1領域を指定する第1処理と、前記第1領域よりも広い第2領域を指定する第2処理とを実行する指定手段を具備し、
前記選択手段は、前記指定手段によって指定された領域に属する各センサ回路を選択して当該センサ回路から検出信号を出力させ、
前記出力手段は、前記第2処理が実行されたときに生成手段が生成した検出データに応じて出力処理を実行する一方、前記第1処理が実行されたときに前記生成手段が生成した検出データについては出力処理を実行しない
請求項1の検出装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記第1処理が実行されたときに前記生成手段が生成した検出データについて前記所定の演算を実行する一方、前記第2処理が実行されたときに前記生成手段が生成した検出データについては前記所定の演算を実行しない
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記指定手段は、前記第1処理を複数回にわたって実行し、ある回の第1処理にて指定する第1領域と他の回の第1処理にて指定する第1領域とを異ならせる
請求項2または請求項3の検出装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記センサ群を構成する総てのセンサ回路からの検出信号に応じて生成された複数の検出データのうち特定の領域に属する各センサ回路に対応した検出データについて前記所定の演算を実行する
請求項1の検出装置。
【請求項6】
前記選択手段は、前記センサ群を構成する総てのセンサ回路の選択を複数回にわたって実行し、
前記演算手段は、ある回の選択に伴なって前記所定の演算の対象として選定する領域と他の回の選択に伴なって前記所定の演算の対象として選定する領域とを異ならせる
請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記演算手段は、前記各センサ回路に対応する検出データを前記センサ群における各センサ回路の配列に従って配列してなる画像の空間周波数を算定する
請求項1の検出装置。
【請求項8】
前記生成手段は、前記検出信号のレベルが前記参照信号のレベルよりも大であるときに第1値の検出データを生成するとともに前記検出信号のレベルが前記参照信号のレベルよりも小であるときに第2値の検出データを生成し、
前記演算手段は、各々がセンサ回路からの検出信号に応じて生成された複数の検出データのうち第1値である検出データの総数と第2値である検出データの総数との比率を算定する
請求項1の検出装置。
【請求項9】
前記出力手段は、前記生成手段によって生成された検出データを出力端子から出力する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項10】
前記出力手段は、前記生成手段が生成した検出データから対象物の表面における形状の特徴点の態様を示すプロファイルデータを生成する特徴抽出手段を有し、前記特徴抽出手段が生成したプロファイルデータを出力端子から出力する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項11】
所定の対象物の表面における形状の特徴点の態様を示す登録プロファイルデータを記憶するプロファイル記憶手段を具備し、
前記出力手段は、前記生成手段が生成した検出データから対象物の表面における形状の特徴点の態様を示すプロファイルデータを生成する特徴抽出手段と、前記特徴抽出手段が生成したプロファイルデータと前記プロファイル記憶手段に記憶された登録プロファイルデータとの比較により、当該検出装置による検出の対象となった対象物の表面の形状と前記所定の対象物の表面の形状との相関値を算定する相関算定手段とを有し、前記相関算定手段が算定した相関値を出力端子から出力する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項12】
所定の対象物の表面における形状の特徴点の態様を示す登録プロファイルデータを記憶するプロファイル記憶手段を具備し、
前記出力手段は、前記生成手段が生成した検出データから対象物の表面における形状の特徴点の態様を示すプロファイルデータを生成する特徴抽出手段と、前記特徴抽出手段が生成したプロファイルデータと前記プロファイル記憶手段に記憶された登録プロファイルデータとの比較により、当該検出装置による検出の対象となった対象物の表面の形状と前記所定の対象物の表面の形状との相関値を算定する相関算定手段と、前記相関算定手段が算定した相関値と閾値とを比較する相関判定手段とを有し、前記相関判定手段による比較の結果を出力端子から出力する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項13】
少なくとも前記D/A変換回路を含む当該検出装置の要素は、基板の表面に形成された薄膜トランジスタを含む回路によって構成される
請求項1から請求項12の何れかに記載の検出装置。
【請求項14】
人間の手指の指紋を検出する請求項1から請求項13の何れかに記載の検出装置と、
前記検出装置の出力手段によって出力された情報に基づいて認証処理を実行する認証手段と
を具備する認証装置。
【請求項1】
対象物の表面との距離に応じたレベルの検出信号を各々が生成する複数のセンサ回路を面状に配列してなるセンサ群と、
前記各センサ回路を選択して当該センサ回路から検出信号を出力させる選択手段と、
参照値のデジタルデータを記憶する記憶手段と、
参照値に対応したレベルの参照信号を前記記憶手段に記憶されたデジタルデータから生成するD/A変換回路と、
前記選択手段が選択した前記センサ回路から出力される検出信号と前記D/A変換回路が生成した参照信号とのレベルの大小に応じた検出データをセンサ回路ごとに順次に生成する生成手段と、
前記生成手段が生成した複数の検出データについて所定の演算を実行する演算手段と、
前記記憶手段に記憶されたデジタルデータを前記演算手段によって算定された演算値に基づいて更新する更新手段と、
前記生成手段が生成した検出データに応じて出力処理を実行する出力手段と
を具備する検出装置。
【請求項2】
前記センサ群のうち前記選択手段による選択の対象となる領域を当該選択手段に指定する手段であって、前記センサ群の第1領域を指定する第1処理と、前記第1領域よりも広い第2領域を指定する第2処理とを実行する指定手段を具備し、
前記選択手段は、前記指定手段によって指定された領域に属する各センサ回路を選択して当該センサ回路から検出信号を出力させ、
前記出力手段は、前記第2処理が実行されたときに生成手段が生成した検出データに応じて出力処理を実行する一方、前記第1処理が実行されたときに前記生成手段が生成した検出データについては出力処理を実行しない
請求項1の検出装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記第1処理が実行されたときに前記生成手段が生成した検出データについて前記所定の演算を実行する一方、前記第2処理が実行されたときに前記生成手段が生成した検出データについては前記所定の演算を実行しない
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記指定手段は、前記第1処理を複数回にわたって実行し、ある回の第1処理にて指定する第1領域と他の回の第1処理にて指定する第1領域とを異ならせる
請求項2または請求項3の検出装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記センサ群を構成する総てのセンサ回路からの検出信号に応じて生成された複数の検出データのうち特定の領域に属する各センサ回路に対応した検出データについて前記所定の演算を実行する
請求項1の検出装置。
【請求項6】
前記選択手段は、前記センサ群を構成する総てのセンサ回路の選択を複数回にわたって実行し、
前記演算手段は、ある回の選択に伴なって前記所定の演算の対象として選定する領域と他の回の選択に伴なって前記所定の演算の対象として選定する領域とを異ならせる
請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記演算手段は、前記各センサ回路に対応する検出データを前記センサ群における各センサ回路の配列に従って配列してなる画像の空間周波数を算定する
請求項1の検出装置。
【請求項8】
前記生成手段は、前記検出信号のレベルが前記参照信号のレベルよりも大であるときに第1値の検出データを生成するとともに前記検出信号のレベルが前記参照信号のレベルよりも小であるときに第2値の検出データを生成し、
前記演算手段は、各々がセンサ回路からの検出信号に応じて生成された複数の検出データのうち第1値である検出データの総数と第2値である検出データの総数との比率を算定する
請求項1の検出装置。
【請求項9】
前記出力手段は、前記生成手段によって生成された検出データを出力端子から出力する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項10】
前記出力手段は、前記生成手段が生成した検出データから対象物の表面における形状の特徴点の態様を示すプロファイルデータを生成する特徴抽出手段を有し、前記特徴抽出手段が生成したプロファイルデータを出力端子から出力する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項11】
所定の対象物の表面における形状の特徴点の態様を示す登録プロファイルデータを記憶するプロファイル記憶手段を具備し、
前記出力手段は、前記生成手段が生成した検出データから対象物の表面における形状の特徴点の態様を示すプロファイルデータを生成する特徴抽出手段と、前記特徴抽出手段が生成したプロファイルデータと前記プロファイル記憶手段に記憶された登録プロファイルデータとの比較により、当該検出装置による検出の対象となった対象物の表面の形状と前記所定の対象物の表面の形状との相関値を算定する相関算定手段とを有し、前記相関算定手段が算定した相関値を出力端子から出力する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項12】
所定の対象物の表面における形状の特徴点の態様を示す登録プロファイルデータを記憶するプロファイル記憶手段を具備し、
前記出力手段は、前記生成手段が生成した検出データから対象物の表面における形状の特徴点の態様を示すプロファイルデータを生成する特徴抽出手段と、前記特徴抽出手段が生成したプロファイルデータと前記プロファイル記憶手段に記憶された登録プロファイルデータとの比較により、当該検出装置による検出の対象となった対象物の表面の形状と前記所定の対象物の表面の形状との相関値を算定する相関算定手段と、前記相関算定手段が算定した相関値と閾値とを比較する相関判定手段とを有し、前記相関判定手段による比較の結果を出力端子から出力する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項13】
少なくとも前記D/A変換回路を含む当該検出装置の要素は、基板の表面に形成された薄膜トランジスタを含む回路によって構成される
請求項1から請求項12の何れかに記載の検出装置。
【請求項14】
人間の手指の指紋を検出する請求項1から請求項13の何れかに記載の検出装置と、
前記検出装置の出力手段によって出力された情報に基づいて認証処理を実行する認証手段と
を具備する認証装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2006−277263(P2006−277263A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94783(P2005−94783)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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