説明

検査方法および検査ユニット

【課題】表面の欠陥と内部の欠陥との両方を1度に、短時間で検査でき、かつ転動体の表面の色相による制約を受けない、セラミックス製の転動体の検査方法および検査ユニットを提供すること。
【解決手段】
検査対象物である転動体1に振動を加えるための送信プローブ2と、転動体の振動波形データを受信する受信プローブ3、およびこれらのプローブを媒体として、送信する振動の信号を発生したり、受信した振動の信号を処理する処理装置4を備えている。また、転動体1には、上方より、治具5が載せられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法および検査ユニットに関し、より特定的には、転がり軸受の転動体の表面ないし内部の欠陥の有無を判定する検査方法および検査ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
機械要素のひとつである軸受は、回転や往復運動する相手部品に接して荷重を受け、軸などを支持する部品である。すなわち、軸を正確かつ滑らかに回転させるために使用される部品である。軸受は、輸送機械を始め各種機械に多用されるが、それに限らず回転する部分がある機器には必ず存在する。軸受には大きく分けて、転がり軸受と滑り軸受がある。このうち転がり軸受には、起動摩擦係数が小さく動摩擦係数との差が小さい、潤滑しやすく潤滑材の消耗が少ない、高温または低温でも比較的容易に用いられる、などの長所が多い。このため、転がり軸受は滑り軸受よりも幅広く用いられている。
【0003】
転がり軸受は、一般に軌道輪(内輪と外輪)、転動体(玉またはころ)、および保持器から構成されている。すなわち、内輪と外輪との間に数個の転動体が配置され、さらにお互いに接触しないように保持器によって一定の間隔を保ちながら円滑な転がり運動させるような構造になっている。
【0004】
近年、転がり軸受が支える軸の回転速度の高速化に伴い、軸の回転中に転がり軸受を構成している転動体および軌道輪が支持する荷重が増加している。従来、転動体は鋼で形成していたが、転がり軸受が支える軸が高速回転することに伴い転動体の公転により発生する遠心力が増大している。そこで、この遠心力を低減させるため、鋼よりも比重の小さいセラミックスを用いた転動体を適用するケースがある。
【0005】
しかし、セラミックス製の転動体を軸受に適用する上での課題は、品質保証のための検査方法である。すなわち、転動体の表面ないしは内部に、たとえば割れや傷などの欠陥が存在するか否かを検査する方法である。このような転動体の検査方法として、通常の鋼製の転動体の場合には、たとえば磁気探傷法を用いる。これは、検査対象物である転動体の表面に磁性蛍光粉を塗布し、磁性蛍光粉の付着状態の変化から、検査対象物の表面に存在する傷を探し出す方法である。測定に要する時間が短く、表面から2〜3mm程度の深さにある内部の欠陥も検出可能であることから、検査対象物が磁性体の場合には、最もよく使用されている測定方法である。
【0006】
ところが、セラミックスには磁性が存在しないため、上述した磁気探傷法を用いることができない。そこで従来より、セラミックス製の転動体の検査には蛍光浸透探傷法が用いられている。これは検査対象物の材質に関係なくほとんど全ての製品・材料の表面検査に使用される。毛細管現象を利用して幅の狭い欠陥部分に液体を浸透させ、浸透した液体を表面に吸い出すという単純な原理で探傷を行なう方法である。浸透させる液体である浸透液には赤色の染色浸透液と紫外線灯で蛍光を発する蛍光浸透液とがある。
【0007】
また、特開2003−232743号公報(特許文献1)においては、レーザ光を利用して、セラミックス製の転動体の表面の欠陥を検査している。これは、当該転動体から反射した反射光を受光部で受光し、この受光部からの出力信号を処理装置で処理した結果に基づいてセラミックス製の転動体の外観の欠陥の有無を検査する方法である。
【0008】
他に、セラミックス製の転動体を検査する方法として、超音波探傷法や、マイクロフォーカスX線法を用いる場合もある。これらは、「マイクロフォーカスX線法及び超音波探傷法によるセラミックボールの非破壊検査」(非特許文献1)にて紹介されている方法である。超音波探傷法としては、振動子を検査対象物に接触させ、超音波を直接送り込む方法と、検査対象物を水中に浸漬し、振動子の振動を水を介して伝播させる方法とがある。後者の方法では、振動子と検査対象物との接触、擦れによるノイズや振動子の損傷が発生する可能性が小さく、かつ操作速度を大きくできるという利点がある。
【0009】
また、マイクロフォーカスX線法とは、検査対象物に、直径が5〜10μmの点状のX線を照射し、検査対象物を透過したX線を測定する。点状のX線を照射するのは、X線源が大きい場合に透視像に発生する、半影と呼ばれるボケを防ぐためである。欠陥が存在すると、欠陥とセラミックスとのX線の吸収の違いから、透過するX線量に違いが生じ、フィルム上に白または黒の像となって現れる。この白と黒のコントラストから、欠陥の有無を識別する。
【特許文献1】特開2003−232743号公報
【非特許文献1】前田喜久男著、「マイクロフォーカスX線法及び超音波探傷法によるセラミックボールの非破壊検査」、NTN Technical Review No.62、1993年、p.2−12
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した各検査方法はいずれも、以下に述べる問題点を抱えている。まず、磁気探傷法については上述のとおり、セラミックスのような磁性の存在しない材質の検査対象物には用いることができない。次に、蛍光浸透探傷法については、検査に用いる浸透液は蛍光を発するので、検査対象物の表面の欠陥の有無の検査には適しているが、内部の欠陥の有無が検出できないという問題がある。また、レーザ光を利用した検査方法においては、たとえば窒化珪素などのセラミックス材料を検査対象物とする場合には、焼結によって窒化珪素特有の色むらが表面に発生するため、これが検査精度を低下させることがある。さらに、超音波探傷法についても、振動子の振動を水を介して伝播させる方法は、検査対象物の内部の欠陥の検出は容易にできるが、表面の欠陥の検出は難しい。仮に表面の欠陥の検出が可能だったとしても、表面の欠陥と内部の欠陥とを1度に検出することはできず、別個に2度検査する必要が生じる。そのため、測定対象物1個あたり約5〜10分と、多くの測定時間を要する。また、マイクロフォーカスX線法は、検査対象物の表面の欠陥も、内部の欠陥も両方とも検出可能ではあるが、この方法についてもやはり、表面の欠陥と内部の欠陥とを1度に検出することはできない。また、マイクロフォーカスX線法の場合、特にフィルムを用いた検査方法では、1方向の撮影を行なうのに、撮影の露出、現像などに20〜30分と、かなりの時間を要し、処理速度が遅いという問題がある。次に示す表1は、上述した各検査方法における問題点を一覧表にまとめたものである。表中、○は実施可能であること、もしくは特に問題が存在しないことを示し、×は実施不可能であること、もしくは問題があることを示す。また、−は(表面/内部欠陥を一度に検出の項にて)表面欠陥/内部欠陥のいずれかが検出不可のため対象外としていることを示す。
【0011】
【表1】

【0012】
本発明は、上述した各検査方法が抱える問題点を解決するために鑑みなされたものである。すなわちその目的は、セラミックス製の転動体の高精度な検査が可能であり、表面の欠陥と内部の欠陥との両方を1度に、短時間で検査でき、かつ転動体の表面の色相による制約を受けない、転動体の検査方法および検査ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に従った検査方法では、以下の各工程を実施する。まず、検査対象物である転動体に連続的に周波数を変化させた振動を加え、振動波形データを出力させる工程を実施する。転動体が良品、不良品それぞれの場合における既知の振動波形に基づいて決定された判定基準と、先の工程で出力された振動波形データとを比較する工程を実施する。また、その比較の結果から、転動体における欠陥の有無を判定する工程を実施する。
【0014】
また、上述した比較する工程では、既知の振動波形において出力される判断基準としての共振周波数と、振動波形データにおいて出力される共振周波数とを比較する。
【0015】
また、上述した検査方法は、データの比較を行なう判定基準を事前に決定する工程をさらに備え、判定基準を事前に決定する工程には、複数個の良品の振動波形データを出力させる工程と、複数個の不良品の振動波形データを出力させる工程と、良品、不良品それぞれの振動波形データから良品、不良品それぞれの振動波形を決定する工程とを含む。
【0016】
以上の、物体に振動を加え、その振動の共振のデータに基づいて、転動体における欠陥の有無を判定する方法を用いることにより、たとえばセラミックスなどの磁性を持たない材質の転動体の検査が可能であり、かつ、転動体の表面の欠陥と内部の欠陥との両方を1度に短時間で、かつ転動体の表面の色相による制約を受けずに検査することができる。
【0017】
また、上述した検査方法において、振動波形データを出力させる工程では、転動体に接触した送信プローブにより、転動体に連続的に周波数を変化させた振動を加える工程と、転動体に接触した受信プローブにより、振動を加えられた転動体からの振動を受信する工程とを含む。そして、振動を加える工程および振動を受信する工程では、転動体を送信プローブと受信プローブとに接触させる方向に荷重が加えられている。また、その荷重の大きさをF(N)、転動体の質量をm(g)とすると、
500×m(−1/16)≦F≦1000×m(−1/64)
という関係式を満足する。
【0018】
また、上述した検査方法において、振動波形データを出力させる工程では、自重を荷重として用いるための治具を転動体に上方から載せることにより、転動体を送信プローブと受信プローブとに接触させるように、治具を介して荷重を加える方法を用いる。また、転動体を送信プローブと受信プローブとに接触させるように、転動体に接触した治具を押圧する押圧部材を用いて一定以上の荷重を加える方法を用いる。
【0019】
以上の、転動体に対して、治具や押圧部材を用いて、送信プローブと受信プローブとに接触する方向に一定以上の荷重を加えることにより、転動体を、送信プローブと受信プローブとに確実に接触させることができる。このことにより、送信プローブから発振される振動が確実に転動体に伝わり、かつ、転動体の振動の情報を受信プローブに確実に伝え、高精度な検査を行なうことが可能となる。
【0020】
また、上述した自重を荷重として用いるための、転動体に上方から載せる治具は、検査時に転動体に対向して接触する表面の曲率の値が転動体の曲率以下である曲面か、もしくは平面である。これにより、治具の転動体に対する位置精度を高めることができる。つまり、治具の自重による荷重は、転動体が送信プローブおよび受信プローブに均等に接触した状態を保たせることが可能となる。このため、より高精度な検査を行なうことが可能となる。
【0021】
さらに、上述した振動波形データを出力させる工程では、治具と転動体との間に、緩衝材を挟んで荷重を加える方法を用いることもできる。また、荷重を加えるために用いる治具は、転動体と接触する部位において、緩衝材が配置されている。これは、治具を転動体に直接接触させず、治具が転動体と接触する部位においては、両者の間に緩衝材を宛がうということである。このような方法をとることにより、治具の転動体に対する位置精度を高めることができる。つまり、治具の自重による荷重は、転動体が送信プローブおよび受信プローブに均等に接触した状態を保たせることが可能となる。このため、より高精度な検査を行なうことが可能となる。
【0022】
また、本発明における検査ユニットは、転動体の表面ないし内部の欠陥の有無を判定する検査ユニットであって、転動体に連続的に周波数を変化させた振動を加える送信プローブと、振動を受信する受信プローブと、転動体を送信プローブと受信プローブとに接触させる方向に一定以上の荷重を加える治具と、制御部とを備える。そしてその制御部は、転動体に連続的に周波数を変化させた振動を加えたときに出力される振動波形データと、転動体が良品、不良品それぞれの場合における既知の振動波形に基づいて決定された判定基準とを比較することにより、転動体における欠陥の有無を判定する。
【0023】
上述のように、本発明における検査ユニットは、治具の自重が、検査対象物である転動体に、振動を加える送信プローブおよび、転動体の振動の情報を伝える受信プローブを接触させる。その結果、転動体に加えられた振動の共振などの波形データが高精度に受信プローブに伝わり、転動体における欠陥の有無に関して高精度な検査を行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明における検査方法および検査ユニットを用いれば、たとえばセラミックス製の転動体の表面および内部の両方の欠陥の有無を同時に、短時間で検査することが可能である。かつ、転動体の表面の色相による制約を受けない高精度な検査が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の各図面において、同一の機能を果たす部位には同一の参照番号が付されており、その説明は、特に必要がなければ繰り返さない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における、転動体の検査ユニットを示す概略図である。また、図2は、本発明の実施の形態1における、転動体の検査方法を示すフローチャートである。以下、これらの図面を用いて本発明の実施の形態1について説明する。
【0027】
図1に示した転動体の検査ユニットは、たとえばセラミックス製の転動体1の表面または内部の欠陥の有無を判定する検査を行なうためのユニットである。そのユニットは、検査対象物である転動体1に振動を加えるための送信プローブ2と、転動体の振動波形データを受信する受信プローブ3、およびこれらのプローブを媒体として、送信する振動の信号を発生したり、受信した振動の信号を処理する制御部としての処理装置4を備えている。処理装置4には、記憶部10と演算部11とが内蔵されており、これらはそれぞれ、コンピュータのメモリおよびCPUの役割を果たすものである。また、転動体1には、上方より、治具5が載せられている。
【0028】
ここで、図1に示した検査ユニットの各構成要素の役割について説明する。処理装置4に内蔵される演算部11は、転動体1が共振現象を起こす共振周波数を探るため、連続的に周波数を変化させた振動を発生するための電気信号を送信プローブ2に送り出す役割を持つ。そして送信プローブ2は、処理装置4から発生した電気信号に基づき機械的振動を発生させ、その機械的振動を転動体1に加える役割を持つ。転動体1には送信プローブ2から、連続的に周波数を変化させた機械的振動が加えられ、そのうちある周波数の機械的振動により転動体1は振動が大きくなり、理論的には無限大の振動を起こすという、共振現象を起こす。この共振現象を起こすときの機械的振動の周波数を共振周波数と呼び、これは検査対象物である転動体1の材質および形状によって決まる固有の値である。この共振周波数のデータを含む、転動体1の振動波形データを受信する役割を持つのが受信プローブ3であり、受信プローブ3から処理装置4に、振動波形データの信号が返される。処理装置4における記憶部10に、受信プローブ3から送信された振動波形データが記憶される。また、当該記憶部10には、処理装置4の演算部11において実行される制御プログラムや、後述する判定に用いる判定基準のデータなどが記憶されている。そして処理装置4を構成する記憶部10および演算部11にて、信号の処理ないし、転動体1が良品であるか否かの判定が行なわれる。なお、このように転動体1に機械的振動を与える際、転動体1が送信プローブ2もしくは受信プローブ3と接触していなければ、機械的振動の信号を、送信プローブ2から転動体1、転動体1から受信プローブ3へと、精度よく伝えることができない。そこで、これを精度よく伝えるため、転動体1は、送信プローブ2および受信プローブ3と接触させておく必要がある。そのために、転動体1の上方には、直方体状の治具5が載せられている。このことにより、治具5の自重を利用して転動体1を送信プローブ2および受信プローブ3に接触させることができる。なお、治具5の形状は上述した直方体状以外の任意の形状を採用することができる。
【0029】
治具5は、転動体1を送信プローブ2および受信プローブ3に接触させるように上方から荷重を加えるために配置するものである。したがって治具5の土台の材質としては、比重が大きく、転動体1に対して十分な荷重を与えうる材質が好ましく、たとえば鉄や鋼などが考えられる。しかし、たとえばセラミックス製の転動体1を検査する場合、転動体1と治具5とが互いに力を及ぼしあい反発して、転動体1と送信プローブ2および受信プローブ3が高精度に接触できなくなる可能性を排除する必要がある。そこで、治具5の、転動体1に対向して接触する部分については、より柔軟な材質にしておくことが好ましい。これにより、治具5から転動体1に加える荷重を、転動体1の1点ではなく、転動体1の表面のうち、緩衝材8と接触する部分全体から均等に加えることができる。すなわち、治具の自重による荷重は、転動体1を送信プローブ2および受信プローブ3に均等に接触させた状態を保たせることが可能となる。このため、より高精度な検査を行なうことが可能となる。
【0030】
例として、治具5の、転動体1に対向して接触する表面については、その材質をたとえばスチロール樹脂、ナイロン、ABS樹脂、ポリカーボネート、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの合成樹脂で形成することが好ましいが、これらに限るものではなく、転動体1と治具5との反発力を吸収するに足る、任意の柔軟な材質を使用できる。また、治具5全体の材質として、比重の大きいたとえば鉄や鋼の代わりに、上述したスチロール樹脂、ナイロン、ABS樹脂、ポリカーボネート、PEEKなどの合成樹脂を使用してもよい。
【0031】
なお、上述した治具5を用いて荷重を加えることが好ましいのは、検査対象物である転動体1の振動波形データを出力させるため、転動体1に連続的に周波数を変化させた振動を加える工程を行なうときと、転動体1に接触した受信プローブにより、振動を加えられた転動体1からの振動を受信する工程を行なうときである。逆に言えば、上述した検査ユニットは、実際にたとえば転動体1の検査を行なうために振動を与えるとき以外は、必ずしも転動体1が治具5と送信プローブ2と受信プローブ3との3箇所に常時接触する構造となっている必要はない。
【0032】
次に、本発明の実施の形態1における転動体の検査方法について説明する。図2に示すようにまず、下準備として、荷重を加える工程(S00)を実施する。具体的には、たとえば図1に示すように検査対象物である転動体1に送信プローブ2と受信プローブ3とを接触させ、さらに当該送信プローブ2および受信プローブ3に転動体1が確実に接触するように、治具5を転動体1に接触させる。治具5により転動体1は、送信プローブ2および受信プローブ3側に向けて押圧される。これは特に、セラミックス製の転動体のように、検査対象物が非常に軽量である場合に必要な工程である。セラミックス製の転動体のように、非常に軽量な検査対象物を検査する場合は、その自重だけでは、機械的振動を加えた際に、振動を加える送信プローブ2と受信プローブ3とに密着できない。その結果、機械的振動の信号が、送信プローブ2から転動体1、転動体1から受信プローブ3へと、精度よく伝えることができず、検査精度に支障をきたすことがある。そこで、これを精度よく伝えるため、転動体1を送信プローブ2および受信プローブ3と接触させるための治具5を転動体1の上方に配置する。これにより、治具5の自重を利用して転動体1を送信プローブ2および受信プローブ3に接触させる。なお、種々の試験結果から、治具5が転動体1に与える荷重(治具5の自重)の範囲を一般化すると、荷重の大きさをF(N)、転動体1の質量をm(g)とすれば
500×m(−1/16)≦F≦1000×m(−1/64)
という関係式を満足するように荷重を与えることが好ましい。したがって、たとえば鋼製の転動体1を検査する場合などで、鋼の自重により、上述の数式を満たす場合には、治具5による上方からの荷重は必要ないこともある。なお、上述の数式はあくまで目安であり、上方から加える荷重については、実際に検査を行なう転動体1を用いて、若干の試行錯誤が必要となることもある。たとえば、直径約10mm(質量1.5g)の窒化珪素製の転動体の場合、実際の検査においては、50g重以上の荷重が適当であった。
【0033】
次に、振動波形データを出力させる工程(S10)を実施する。具体的には、図1に示すように検査対象物である転動体1を検査ユニットにセットした状態で、処理装置4に内蔵されている演算部11から連続的に周波数を変化させた振動を発生するための電気信号を送信プローブ2に送り出す。そして送信プローブ2にて電気信号に基づき機械的振動を発生させ、その機械的振動を転動体1に加える。転動体1に連続的に周波数を変化させた機械的信号を与えるため、送信プローブ2は機械的振動の周波数をSWEEPさせながら(連続的に変化させながら)機械的振動を送る。すると、連続的に変化させた機械的振動の周波数のうち、ある周波数のところで、転動体1は共振を起こすことになるが、共振を起こした共振周波数を含め、SWEEPさせた全周波数に対する転動体1の振動の出力データを受信プローブ3にて受信し、これを処理装置4に返信する。
【0034】
続いて、振動波形データを比較する工程(S20)を行なう。具体的には、本検査を行なう前に予め蓄積させておいた、検査を行なおうとする転動体1と同じ材質の転動体1が良品、不良品それぞれの場合における、上述した機械的振動を与えて出力させた振動波形データおよび共振周波数から決定された、良品か不良品かを決定するための判定基準と、今回検査を行なおうとする転動体1の振動波形データおよび共振周波数とを比較する工程である。
【0035】
検査を行なおうとする転動体1と同じ材質の転動体1が良品、不良品それぞれの場合における振動波形データは、処理装置4の記憶部10に蓄積されている。この予め蓄積された良品および不良品の振動波形データに基づいて決定された、良品か不良品かを決定する判定基準と、今回の検査にて出力された振動波形データとを、処理装置4にて演算処理により比較する。
【0036】
そして、欠陥の有無を判定する工程(S30)へと進む。具体的には、検査対象物の材質ごとに蓄積された振動波形データに含有される共振ピークの振幅またはピークの周波数に対し、今回検査を行ない出力させた振動波形データにおけるピークが共振に基づくものか否かを、ピークの振幅または周波数から判定するための判定基準である閾値を予め決定し、処理装置4の記憶部10に記憶させておく。そして、処理装置4の演算部11にて、今回の検査にて出力された振動波形データ中におけるピークの振幅が共振に基づくピークか否か、蓄積された閾値を基準に自動的に判定する。共振に基づくピークであれば、次にそのピークの周波数の、良品、不良品それぞれの共振周波数との差を調べる。そして、測定した振動波形データのピークの周波数と、良品の共振周波数との差の値が予め決定していた閾値以下である場合には、測定した転動体は良品であると判断する。つまり、蓄積された閾値を基準に、今回検査した転動体1が良品か否かを自動的に判定する。
【0037】
上述のとおり、検査対象物が良品か不良品かを判定するためには、予め処理装置4に判定基準を記憶させておく必要がある。したがって本発明の実施の形態1の検査方法には、実際の検査対象物を検査する工程の他に、事前準備として、実際の検査対象物である転動体1と同じ材質の転動体が良品であるか不良品であるかを決定するための判定基準を決定する工程が存在する。図3は、図2のフローチャートで示した工程を行なうための比較用の判定基準となるデータを事前に決定する工程を示すフローチャートである。
【0038】
図3に示すように、まず、良品の振動波形データを出力させる工程(S21)を行なう。具体的には、今回検査を行なう転動体1と同じ材質、同じ大きさの転動体1の良品サンプル複数個に対して、図2の振動波形データを出力させる工程(S10)と同じ要領にて、振動波形データを出力させる。ここで、極力振動波形データを蓄積するサンプルのN数を多くとることが好ましい。これにより、検査結果のエラーが発生する可能性を小さくすることができる。そして、出力させた振動波形データは、処理装置4の記憶部10に蓄積させておく。
【0039】
次に、不良品の振動波形データを出力させる工程(S22)を行なう。具体的には、先の工程(S21)と同様に、今回検査を行なう転動体1と同じ材質、同じ大きさの転動体1の表面にたとえば傷などを施した不良品サンプル複数個に対して、図2の振動波形データを出力させる工程(S10)と同じ要領にて、振動波形データを出力させる。ここで、極力振動波形データを蓄積するサンプルのN数を多くとることが好ましい。これにより、検査結果のエラーが発生する可能性を小さくすることができる。振動波形データの中でも特に検査対象物が共振現象を起こす共振周波数は、検査対象物に傷や空孔などの欠陥があれば、欠陥がない状態の共振周波数と異なったものになり、共振ピークの振幅などの信号も異なったものとなる。そして、出力させた振動波形データは、処理装置4の記憶部10に蓄積させておく。
【0040】
続いて、良品/不良品の波形パターンを決定する工程(S23)を行なう。これは、先の工程(S21)および工程(S22)にて処理装置4の記憶部10に蓄積させた、複数個の良品および不良品の振動波形データを元に、処理装置4の演算部11にて分析処理する工程である。多くのN数の良品および不良品のそれぞれのデータを分析することにより、たとえば良品の場合の共振周波数や共振ピークの振幅などの数値の傾向を分析する。そしてその分析結果を元に、検査対象物を良品、あるいは不良品と判定するための共振周波数や共振ピークの値の閾値を演算部11にて決定し、記憶部10に記憶させる。以上の工程を踏むことにより、良品/不良品の判定基準を決定することができる。そして以上の手順で予め決定し記憶部10に記憶された、良品/不良品の判定基準を元に、実際の検査対象物に対して自動的に良品/不良品の判定が行なわれる。
【0041】
本発明の実施の形態1の説明には、検査対象物として、セラミックス製の転動体1を挙げているが、本発明における検査ユニットは、原理的には、固体であれば、セラミックス材料に限らず検査可能である。また、形状についても、転動体1のような球状に限定されず、たとえば立方体状や直方体状など、球状以外の形状の検査対象物に応用することも可能である。
【0042】
以上のように、本発明の実施の形態1は、検査対象物の機械的振動による共振を利用した検査方法(共振検査法)により、検査を行なっている。この共振検査法を用いると、検査対象物である転動体1の、表面および内部の両方の欠陥の有無を同時に、しかも非常に短時間で検査することが可能である。また、検査対象物の機械的振動をデータとするため、たとえば検査対象物の表面の色むらなどの色相は検査の結果に影響を与えない。
【0043】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における、転動体の検査ユニットを示す概略図である。本発明の実施の形態2における検査ユニットは、転動体1の上方より荷重を加える手段として、治具5を介して、天井から転動体1に向かう方向に設置したバネ6を利用している。つまり、転動体1を送信プローブ2と受信プローブ3とに確実に接触させるために、転動体1に接触した治具を押圧する押圧部材としてバネ6を用いている。以上の点においてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、検査ユニットの他の各構成要素および検査方法については、全て本発明の実施の形態1に準ずる。なお、バネ6を固定する部材は、上述のような天井に限らず、他の架台などバネ6の一方端を固定できれば任意の部材を用いることができる。
【0044】
先の図2(フローチャート)中の荷重を加える工程(S00)において、転動体1を送信プローブ2および受信プローブ3に接触させるように荷重を加える方法は、先の本発明の実施の形態1のように、自重を荷重として用いるための治具を転動体1の上方から載せる方法でもよい。しかし、たとえば治具5として自重が軽く、上述した数式を満たすに足りない荷重しか加えることができない治具を用いた場合は、本発明の実施の形態2のように、転動体1に接触した治具5を押圧する押圧部材としてのバネ6を用いて、荷重を治具5に対して補助的に加える方法を用いる。これにより、治具5の自重とバネ6の縮みによる弾性力との和が、上述した数式を満たす大きさになるような荷重を転動体1に対して加えることができる。
【0045】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における、転動体の検査ユニットを示す概略図である。本発明の実施の形態3における検査ユニットは、転動体1の上方より荷重を加える手段として用いる治具7の形状が、先の本発明の実施の形態1における治具5の形状(直方体状)とは異なる。以上の点においてのみ、実施の形態1と異なる。すなわち、検査ユニットの他の各構成要素および検査方法については、全て本発明の実施の形態1に準ずる。
【0046】
治具5の自重を荷重として用いることにより、転動体1を送信プローブ2および受信プローブ3に接触させるが、このとき転動体1の位置が送信プローブ2および受信プローブ3の中央となることが必要である。すなわち、送信プローブ2および受信プローブ3の位置が、転動体1の位置に対して互いに対称になる必要がある。転動体1の位置が精度よく配置されていると、治具5による荷重は、転動体1から送信プローブ2および受信プローブ3の両方に一様に加えることができる。したがって、転動体1の、送信プローブ2および受信プローブ3に対する位置を留意することが重要となる。ところで転動体1は検査実施時には機械的な振動を加えられることになる。このため、転動体1は治具5に対してランダムに動きやすく、結果、転動体1の位置が治具5に対してずれを起こしやすい。しかし、治具5による荷重を、転動体1から送信プローブ2および受信プローブ3の両方に一様に加えることにより、転動体1が両方のプローブに均等に接触することが必要である。
【0047】
そこで、転動体1が振動を起こしてもその位置がプローブに対して大きくずれる現象を抑制するために、本発明の実施の形態3においては、荷重を加える治具7を、図5のように転動体1に対向して接触する表面が転動体1の表面に沿った方向に曲率を持つ形状としている。治具7をこのような形状にすることにより、転動体1が振動を起こした際に、治具7に対してその位置がずれる可能性が小さくなる。したがって、転動体1が常に治具7の表面をなす曲面に包み込まれた状態となり、治具7に対する位置精度を高めることができる。その結果、転動体1の、送信プローブ2および受信プローブ3に対する位置精度を高めることができる。そのため、治具7の自重による荷重は、転動体1を送信プローブ2および受信プローブ3に均等に接触させた状態を保つことが可能となる。
【0048】
なお、治具7の転動体1に対向して接触する表面が持つ曲率は、図5に示すように、転動体1の表面の曲率以下であることが好ましい。曲率が小さくなり、0となった状態が、表面が平面となった状態であり、本発明の実施の形態1に示す治具5の状態であるといえる。曲率0から、転動体1の表面の曲率以下となるように、治具7の転動体1に対向して接触する表面が持つ曲率を大きくするほど、さらに好ましい。治具7の転動体1に対向して接触する表面が持つ曲率が、転動体1の表面の曲率と等しくなるように設計すると、転動体1は治具7に対してほとんど位置をずらすことができなくなるため、さらに好ましいといえる。
【0049】
また、治具7に対して、本発明の実施の形態2に示す要領でバネ6(図4参照)を設置し、治具7の自重とバネ6の弾性力とを利用して転動体1を送信プローブ2および受信プローブ3とに接触させる構造としてもよい。
【0050】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4における、転動体の検査ユニットを示す概略図である。本発明の実施の形態4における検査ユニットは、転動体1の上方より荷重を加える手段として用いる治具5と転動体1との間に、緩衝材8を挟んで治具5の自重を荷重として加えている。以上の点においてのみ、実施の形態1と異なる。すなわち、検査ユニットの他の各構成要素および検査方法については、全て本発明の実施の形態1に準ずる。
【0051】
治具5は、転動体1が送信プローブ2および受信プローブ3に対して接触するように荷重を加えるために配置するものである。したがって治具5の土台の材質としては、比重が大きく、転動体1に対して十分な荷重を与えうる材質が好ましく、たとえば鉄や鋼などが考えられる。しかし、たとえばセラミックス製の転動体1を検査する場合、転動体1と治具5とが互いに力を及ぼしあい反発して、転動体1と送信プローブ2および受信プローブ3が高精度に接触できなくなる可能性を排除する必要がある。そこで、より柔軟な材料で形成された緩衝材8を、治具5と転動体1との間に挟むことが好ましい。これにより、治具5から転動体1に加える荷重を、転動体1の1点ではなく、転動体1の表面のうち、緩衝材8と接触する部分全体から均等に加えることができる。すなわち、治具の自重による荷重は、転動体1を送信プローブ2および受信プローブ3に均等に接触させた状態を保つことが可能となる。このため、より高精度な検査を行なうことが可能となる。
【0052】
緩衝材8の材質としては、治具5の荷重に耐えうる程度の強度を持ち、転動体1に対して加えた力を吸収する柔軟性を持つ材質が適している。具体的には、たとえばスチロール樹脂、ナイロン、ABS樹脂、ポリカーボネート、PEEKなどの合成樹脂を用いることが好ましいが、これらに限るものではなく、転動体1と治具5との反発力を吸収するに足る、任意の柔軟な材質を使用できる。なお、この緩衝材8の形状は、直方体状でもよいが、本発明の実施の形態3における治具7と同様に、緩衝材8が転動体1に対向して接触する表面が転動体1の表面に沿った方向に曲率を持つ形状とすることがさらに好ましい。この曲率についても、本発明の実施の形態3における治具7と同様に、転動体1の表面の曲率以下であることが好ましい。曲率が小さくなり、0となった状態が、表面が平面となった状態であり、本発明の実施の形態1に示す治具5の状態であるといえる。曲率0から、転動体1の表面の曲率以下となるように、治具7の緩衝材8に対向して接触する表面が持つ曲率を大きくするほど、さらに好ましい。治具7の転動体1に対向して接触する表面が持つ曲率が、転動体1の表面の曲率と等しくなるように設計すると、転動体1は緩衝材8に対してほとんど位置をずらすことができなくなるため、さらに好ましいといえる。
【0053】
また、治具5に対して、本発明の実施の形態2に示す要領でバネ6(図4参照)を設置し、治具5の自重とバネ6の弾性力とを利用して転動体1を送信プローブ2および受信プローブ3とに接触させ、その上で治具5と転動体1との間に緩衝材8を挟む構造としてもよい。また、本発明の実施の形態3に示す要領で、治具5の代わりに、転動体1に対向して接触する表面が転動体1の表面に沿った方向に曲率を持つ形状を持つ治具7を使用し、治具7と転動体1との間に緩衝材8を挟む構成としてもよい。
【実施例1】
【0054】
本発明の実施の形態4に則った検査ユニットにて、共振検査法を用いて、直径約10mmのセラミックス(窒化珪素)製の転動体1の検査を行なった。本実施例1においては、治具5として、鋼製であり、重さが50gの錘を使用することにより、転動体1が送信プローブ2および受信プローブ3に均一に接触するように荷重を加えた。治具5が硬質なため、治具5とセラミックス製転動体1との間にポリスチロール樹脂を緩衝材8として挟んだ。さらに、この緩衝材8は、転動体1に対向して接触する表面が転動体1の表面に沿った方向に曲率を持つ形状とした。すると、転動体1の位置精度が向上し、転動体1の表面および内部の欠陥が安定して高精度に検出できるようになった。
【0055】
セラミックス(窒化珪素)製の転動体1の検査は、良品10個および不良品3個のサンプルに対して行なった。なお、ここで不良品とは、たとえば微細な介在物が内部に混入したサンプルや、微小な表面欠陥を含んだサンプルなどである。
これらのサンプルに対し、良品/不良品を、100%正確に判定した。その検出に要した時間はサンプル1個あたり1秒以下と、従来方法に比べ極めて短時間であった。先の表1に示すように、たとえば超音波探傷法では約5〜10分を要する。また、マイクロフォーカスX線法では約90分を要している。これは上述したとおり1方向の撮影に20〜30分かかるため、3方向の撮影には約90分を要するということである。検査対象物の表面であれ、内部であれ、欠陥が存在すれば、共振周波数などの振動波形データが、良品とは異なったものとなる。その良品とのデータの変化を元に、良品もしくは不良品の判定を行なうため、表面欠陥と内部欠陥の区別なく、極めて短時間で判定することが可能である。
【0056】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、転動体における欠陥の有無を短時間で高精度に検査する技術として特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1における、転動体の検査ユニットを示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1における、転動体の検査方法を示すフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートで示した工程を行なうための比較用の判定基準となるデータを事前に決定する工程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2における、転動体の検査ユニットを示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態3における、転動体の検査ユニットを示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態4における、転動体の検査ユニットを示す概略図である。
【符号の説明】
【0059】
1 転動体、2 送信プローブ、3 受信プローブ、4 処理装置、5 治具、6 バネ、7 治具、8 緩衝材、10 記憶部、11 演算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体の表面ないし内部の欠陥の有無を判定する検査方法であって、
前記転動体に連続的に周波数を変化させた振動を加え、振動波形データを出力させる工程と、
前記転動体が良品、不良品それぞれの場合における既知の振動波形に基づいて決定された判断基準と、前記振動波形データとを比較する工程と、
前記比較の結果から、前記転動体における欠陥の有無を判定する工程とを備える、検査方法。
【請求項2】
前記比較する工程では、前記既知の振動波形において出力される前記判断基準としての共振周波数と、前記振動波形データにおいて出力される共振周波数とを比較する、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記判定基準を事前に決定する工程をさらに備え、
前記判定基準を事前に決定する工程には、
複数個の良品の振動波形データを出力させる工程と、
複数個の不良品の振動波形データを出力させる工程と、
前記良品、不良品それぞれの振動波形データから良品、不良品それぞれの前記振動波形を決定する工程とを含む、請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記振動波形データを出力させる工程は、
前記転動体に接触した送信プローブにより、前記転動体に連続的に周波数を変化させた振動を加える工程と、
前記転動体に接触した受信プローブにより、前記振動を加えられた前記転動体からの振動を受信する工程とを含み、
前記振動を加える工程および前記振動を受信する工程では、前記転動体を前記送信プローブと前記受信プローブとに接触させる方向に荷重が加えられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項5】
前記荷重の大きさをF(N)、前記転動体の質量をm(g)とすると、
500×m(−1/16)≦F≦1000×m(−1/64)
という関係式を満足する、請求項4に記載の検査方法。
【請求項6】
前記振動波形データを出力させる工程では、
自重を荷重として用いるための治具を前記転動体に上方から載せることにより、前記転動体を前記送信プローブと前記受信プローブとに接触させるように、前記治具を介して前記荷重を加える、請求項4または5に記載の検査方法。
【請求項7】
前記振動波形データを出力させる工程では、
前記転動体を前記送信プローブと前記受信プローブとに接触させるように、前記転動体に接触した治具を押圧する押圧部材を用いて前記荷重を加える、請求項4または5に記載の検査方法。
【請求項8】
前記治具において、検査時に前記転動体に対向して接触する表面の形状は、曲率の値が前記転動体の曲率以下である曲面か、もしくは平面である、請求項6または7に記載の検査方法。
【請求項9】
前記振動波形データを出力させる工程では、
前記治具と前記転動体との間に、緩衝材を挟んで前記荷重を加える、請求項6〜8のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項10】
前記治具は、前記転動体と接触する部位において、緩衝材が配置されている、請求項6〜8のいずれか1項に記載の検査方法。
【請求項11】
転動体の表面ないし内部の欠陥の有無を判定する検査ユニットであって、
前記転動体に連続的に周波数を変化させた振動を加える送信プローブと、
前記振動を受信する受信プローブと、
前記転動体を前記送信プローブと前記受信プローブとに接触させる方向に一定以上の荷重を加える治具と、
制御部とを備え、
前記制御部では、前記転動体に連続的に周波数を変化させた振動を加えたときに出力される振動波形データと、前記転動体が良品、不良品それぞれの場合における既知の振動波形に基づいて決定された判断基準とを比較することにより、前記転動体における欠陥の有無を判定する、検査ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−186423(P2009−186423A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29305(P2008−29305)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】