説明

検査装置、および検査方法

【課題】試料の高さ方向のばらつきを検査する。
【解決手段】試料29を保持するホルダ211と、ホルダ211に保持された試料29帯電処理する帯電制御部23と、ホルダ211に保持された試料29に電圧を印加するリターディング電源24と、リターディング電源24により電圧が印加された試料29に向けて電子線を照射して、試料29の表面近傍で引き戻されたミラー電子を結像させる電子光学系20と、ミラー電子を結像させることで得られたミラー画像を画像処理する画像処理部27と、を有する。画像処理部27は、ミラー電子を結像させることで得られたミラー画像と、予め用意された標準品のミラー画像との差に応じた情報を、試料29の高さ方向のばらつきとして出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置等の試料の高さばらつきを検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造ラインにおいて、工程の途中で回路パターンの状態を計測する技術が知られている。この技術は、製造の歩留り向上、品質管理に不可欠な技術として位置付けられている。回路パターンの状態を計測する技術の一つに、回路パターンの寸法を計測する測長SEM(Scanning Electron Microscopy)がある。測長SEMは、SEM特有の高い分解能と深い焦点深度とを利用して、回路パターンの横方向(回路パターンの面内方向)の寸法測定を行い、サブnmの測定精度を実現している。
【0003】
また、回路パターンの状態を計測する技術の一つに、回路パターンの電気特性不良を検出するミラープロジェクション式検査装置がある(例えば特許文献1)。ミラープロジェクション式検査装置は、面状の電子線を半導体ウエハに照射して、電圧が印加された半導体ウエハの回路パターンの表面近傍で反発して引き戻された電子(以下、ミラー電子と呼ぶ)をレンズにより結像し、この撮像画像(以下、ミラー画像と呼ぶ)を観察する。回路パターンの電気特性不良箇所は、電気特性正常箇所と異なる帯電をする。このため、電気特性不良箇所近傍で引き戻されたミラー電子は、電気特性正常箇所で引き戻されたミラー電子と異なる軌道を描き結像する。したがって、このミラー画像を観察することで、電気特性不良箇所を検出することが可能である。
【0004】
また、回路パターンの状態を計測する技術の一つに、回路パターンの高さ方向形状を測定するAFM(Atomic Force Microscopy)がある。AFMは先端曲率がサブμmの細い針を用いて被検査物の表面を走査し、針の高さ方向の移動量を走査に同期させ画像化することで、被検査物の高さ方向の形状を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願平11-108864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
AFMによれば被検査物の高さ方向のばらつきを検出することができる。しかし、AFMの測定精度は、針の走査速度に大きく依存し、走査速度を上げると精度が落ちる。このため、被検査物の高さ方向のばらつきを広範囲に亘り高精度に検出しようとすると、多くの時間を要する。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は被検査物の高さ方向のばらつきを検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、被検査物の帯電状態が均一になるように必要に応じて帯電制御処理を行い、ミラープロジェクション方式を用いて、この帯電状態が均一の被検査物の表面近傍で反発して引き戻されたミラー電子をレンズにより結像し、このミラー画像を観察する。
【0009】
例えば、本発明は、試料の高さ方向のばらつきを検査する検査装置であって、
試料を保持する保持手段と、 前記保持手段に保持された試料を帯電処理する帯電処理手段と、
前記保持手段に保持された試料に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記電圧印加手段により電圧が印加された試料に向けて電子線を照射して、試料の表面近傍で引き戻されたミラー電子を結像させる電子光学系と、
前記ミラー電子を結像させることで得られたミラー画像を画像処理する画像処理手段と、を有し、
前記画像処理手段は、
前記ミラー電子を結像させることで得られたミラー画像と、予め用意された標準品のミラー画像との差に応じた情報を、試料の高さ方向のばらつきとして出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被検査物の表面に高低差がある場合、互いに高さの異なる箇所近傍で引き戻されたミラー電子は、互いに異なる軌道を描き、高低差に応じた異なる焦点位置で結像する。したがって、このミラー画像を観察することで、高低差を検出することが可能である。そこで、予め用意しておいた標準品のミラー画像が示す高低差と、被検査物のミラー画像が示す高低差とを比較することで、被検査物の高さ方向のばらつきを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(A)、図1(B)は、ミラー電子の半導体ウエハの回路パターン近傍での軌跡を模式的に示した図である。
【図2】図2は本発明の第1実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の概略図である。
【図3】図3は本発明の第1実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の検査レシピ作成処理を説明するためのフロー図である。
【図4】図4はフィルタパターンの作成処理を説明するためのフロー図である。
【図5】図5は図3に示す検査レシピ作成処理においてコンソール端末28が表示するレシピ作成GUI画面の一例を示す図であり、図5(A)は高さばらつき検査用テンプレートとしてフィルタパターンを登録する場合のGUI画面例を示しており、図5(B)は高さばらつき検査用テンプレートとして参照パターンを登録する場合のGUI画面例を示している。
【図6】図6は本発明の第1実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の高さバラツキの検出処理を説明するためのフロー図である。
【図7】図7はフィルタパターン方法を説明するためのフロー図である。
【図8】図8は参照パターン方法を説明するためのフロー図である。
【図9】図9は図6に示す高さばらつき検査処理においてコンソール端末28が表示する検査結果GUI画面の一例を示す図であり、図9(A)はフィルタパターン方法による検査結果GUI画面例を示しており、図9(B)は参照パターン方法による検査結果GUI画面例を示している。
【図10】図10(A)は高さ補正用標準品の一例の概略図(正面図および底面図)であり、図10(B)は高さ補正用標準品を構成する標準試料52の一例の概略図(正面図、底面図、および側面図)である。
【図11】図11は本発明の第2実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の電子光学系補正量算出処理を説明するためのフロー図である。
【図12】図12は図11に示す電子光学系補正量算出処理においてコンソール端末28が表示する光学系調節用GUI画面の一例を示す図である。
【図13】図13は本発明の第3実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の概略図である。
【図14】図14(A)は本発明の第3実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の高さバラツキの検査処理を説明するためのフロー図であり、図14(B)は本発明の第3実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置のAFMを用いた高低差のレビュー処理を説明するためのフロー図である。
【図15】図15はレビュー場所のミラー画像および測定結果を模式的に表した図である。
【図16】図16は図14(A)、(B)に示す処理においてコンソール端末28が表示するレビューGUI画面の一例を示す図である。
【図17】図17は半導体装置製造プロセスの一例を示す図である。
【図18】図18は検査結果のデータ管理において、コンソール端末28が表示するデータ管理GUI画面の一例を示す図であり、図18(A)は一つ検査結果をデータ解析するためのGUI画面であり、図18(B)は同一工程の検査結果を統計的に解析するためのGUI画面である
【発明を実施するための形態】
【0012】
<原理>
発明の実施形態の説明に先立ち、ミラープロジェクション方式を用いて被検査物の高低差を検出する原理を説明する。
【0013】
図1(A)、図1(B)は、ミラー電子の半導体ウエハの回路パターン近傍での軌跡を模式的に示した図である。図1(A)は、半導体ウエハ製造のコンタクト工程で発生する回路パターンの電気特性不良近傍でのミラー電子の軌跡を示しており、図1(B)は、高低差を持つ回路パターン近傍でのミラー電子の軌跡を示している。
【0014】
図1(A)に示すように、例えば回路パターンの電気特性正常部分10が0Vに帯電し、電気特性不良部分11が-1Vに帯電すると、電気特性不良部分11近傍の等電位面12aが湾曲する。その結果、電気特性不良部分11近傍で跳ね返されるミラー電子13aは、電気特性正常部分10近傍で跳ね返されるミラー電子13bと異なる軌跡を描き、ミラー電子13bと高さ方向に異なる焦点位置に結像される。
【0015】
同様に、図1(B)に示すように、回路パターンの高低差14に応じて等電位面12bが湾曲するため、ミラー電子13cは、回路パターンの高低差14に応じてそれぞれ異なる軌跡を描き、高さ方向に異なる焦点位置に結像される。
【0016】
そこで、本発明では、回路パターンの帯電状態が均一となるように(電気特性正常部分および電気特性不良部分が同じ帯電状態となるように)、必要に応じて被検査物に帯電処理を行う。その上で、ミラープロジェクション方式を用いて被検査物のミラー画像を観察することで、被検査物の高低差を検出する。
【0017】
<第1実施形態>
図2は本発明の第1実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の概略図である。
【0018】
図示するように、本実施形態のミラープロジェクション式検査装置2は、電子光学系20と、試料(半導体ウエハ)29が置かれる試料室21と、帯電制御部23と、ステージ制御部24と、電子光学系制御部25と、システム制御部26と、画像処理部27と、オペレータからの指示を受付けたり、オペレータに情報を表示したりするためのコンソール端末28と、を有する。
【0019】
電子光学系20は、照射光学系201と、結像光学系202と、投影光学系203と、を有する。電子光学系20は、図示していない真空排気装置により常に真空排気された雰囲気内に置かれる。
【0020】
照射光学系201は、電子源2011と、コンデンサレンズ2012と、絞り2013と、を有する。結像光学系202は、ビームセパレータ2021と、対物レンズ2022と、を有する。投影光学系203は、中間レンズ2031と、投影レンズ2032と、検出器2033と、を有する。
【0021】
電子源2011より放出された電子線は、コンデンサレンズ2012により収束され、所望の照射領域となるように絞り2013で軌道が制限される。その後、ビームセパレータ2021周辺に位置する対物レンズ2022の焦点面に焦点を作る。対物レンズ2022の焦点面は、対物レンズ2022の励磁と、後述するリターディングによる静電レンズの作用によって決まる。この焦点面で焦点を作ることにより、ビームセパレータ2021により偏向された電子線は、対物レンズ2022を介して、照射方向が試料29の表面に垂直な面状の電子線となる。
【0022】
試料29は、ステージ制御部24の後述するリターディング電源242により、電子線の加速電圧より僅かに高い負の電位が印加される。このため、試料29の表面近傍には、試料29の表面に形成された回路パターンの形状および帯電状態が反映された電界が形成される。この電界が減速手段として機能し、電子線の大部分が試料29に衝突する前に引き戻され、試料29の回路パターンの形状および帯電状態に応じた方向に、試料29の回路パターンの形状および帯電状態に応じた強度を持って移動するミラー電子となる。
【0023】
ミラー電子は、対物レンズ2022によって収束され、ビームセパレータ2021で投影光学系203の光軸に合うように偏向される。その後、中間レンズ2031、投影レンズ2032によって検出器2033上に、試料29の表面の局部的な帯電状態の変化および高低差を表す像を結像させる。ここで、電子源2011は、放出電子のエネルギー幅が狭いものが好ましい。試料29の表面に形成された電界のどの等電位面で電子が引き戻されるかが試料29に入射する電子のエネルギーで決まるため、放出電子のエネルギー幅が存在すると異なる等電位面で引き戻されたミラー電子が結像してしまう。これにより、画像の分解能が劣化してしまう。検出器2033は、例えばTDI(Time Delay Integration)センサあるいはCCD(Charge Coupled Devices)センサで構成され、検出面上に結像された像を高速に取得し、これをミラー電子の量に応じた電気信号に変換して画像処理部27に送信する。
【0024】
試料室21には、試料29を載せるホルダ211と、電子線の入射方向に対して垂直方向に試料29を移動させるステージ212と、モータ等のステージ駆動装置244と、光学顕微鏡213と、を有する。
【0025】
ホルダ211は、ホルダ211およびホルダ211に載置された試料29にリターディング電圧を印加できるように、ステージ212と電気絶縁されている。ホルダ211には、図示していない高圧用フィードスルーを介して、試料室21の外部(ステージ制御部24)に配置されたリターディング電源242から出力されるリターディング電圧が印加される。また、試料室21は、その内部が電子光学系20と同様に、図示していない真空排気装置により常に真空排気されている。
【0026】
光学顕微鏡213は、ホルダ211に載置された試料29内の所望の場所を探したり、検査レシピを作成したりする場合に用いられる。
【0027】
帯電制御部23は、ホルダ211に載置された試料29の帯電状態を計測し、この帯電状態が均一となるように試料29を帯電処理する。帯電処理は、試料29近傍に配置された帯電制御電極231に電位を印加することにより実施する。また、試料の帯電状態は、帯電制御電極231に流れる電流値を測定して計測する。この処理を行うことにより、他の電子線装置等で試料29の表面に形成された電界から帯電状態の不均一に起因する電界の歪みを取り除くことができ、後述する高さばらつき検査処理で試料29の表面の高低差による電界の歪みのみを検出することが可能となる。なお、試料29の帯電状態の計測には、表面電位計等を利用してもよい。
【0028】
ステージ制御部24は、主制御装置241と、リターディング電源242と、ステージ位置測定装置243と、を有する。
【0029】
主制御装置241は、システム制御部26からステージ移動に関する制御信号を受信し、この受信した制御信号に基づいて、ステージ位置測定装置243が測定したステージ212の位置を基準として、ステージ駆動装置244を制御しステージ212を移動させる。その結果、ステージ212上に載置されたホルダ211は、電子線の入射角に対して垂直方向に移動し、ホルダ211上に載置された試料29の所望の領域のミラー画像を取得することができる。また、主制御装置241は、ステージ位置測定装置243で測定したステージ212、帯電制御部23、光学顕微鏡213、および電子光学系20の位置を、システム制御部26に送信する。なお、システム制御部26は、主制御装置241から受け取ったステージ212、帯電制御部23、光学顕微鏡213、および電子光学系20の位置に基づいて、ホルダ211上に載置された試料29の所望の領域が帯電制御部23、光学顕微鏡213、および電子光学系20のいずれかの真下にくるように、ステージ212を移動させるための制御信号を生成し、これを主制御装置241に送信する。これにより、主制御装置241は、ホルダ211上に載置された試料29の所望の領域を帯電制御部23、光学顕微鏡213、および電子光学系20のいずれかの真下にくるように移動させることができる。
【0030】
電子光学系制御部25は、主制御装置251と、照射光学系制御装置252と、投影光学系制御装置253と、を有する。
【0031】
主制御装置251は、システム制御部26から電子線照射に関する制御信号を受信し、この受信した制御信号に基づいて、照射光学系制御装置252に照射光学系201、結像光学系202の各部位(電子源2011、レンズ2012、2022、ビームセパレータ2021、図示していない非点補正器、偏向器等)を制御させ、ミラー電子5が所望のコントラストで結像されるように、試料29に向けて電子線を照射させる。これと共に、ステージ制御部24のリターディング電源242を制御する。また、システム制御部26からミラー画像の撮像に関する制御信号を受信し、この受信した制御信号に基づいて、投影光学系制御装置253に投影光学系203の各部位(レンズ2031、2032、検出器2033)を制御させ、試料29の近傍で引き戻されたミラー電子を検出する。
【0032】
画像処理部27は、画像形成装置271と、画像処理演算装置272とを有する。
【0033】
画像形成装置271は、投影光学系203の検出器2033で検出されたミラー電子の強度に対応する信号を、ステージ制御部24の主制御装置241から送られてくるステージ212の座標信号に同期させて取り込む。そして、取り込んだ信号をAD変換して画像処理演算装置272に伝送する。画像処理演算装置272は、画像形成装置271から受信した信号が表すミラー画像から高さ方向のばらつきを抽出する画像処理を行い、その結果を、必要に応じてミラー画像と共に、システム制御部26に送信する。
【0034】
システム制御部26は、コンソール端末28を介して受付けたユーザの指示に従い、ステージ212を移動させるための制御信号を生成しステージ制御部24に送信すると共に、帯電制御部23に、ホルダ211に載置された試料29の帯電状態が均一となるように試料29の帯電処理を行わせる。また、画像処理部27から受信した高さばらつきの検出結果あるいはミラー画像および高さばらつきの検出結果を、コンソール端末28の表示画面に表示して、オペレータに提示する。
【0035】
上記構成のミラープロジェクション式検査装置において、帯電制御部23、ステージ制御部24、および電子光学系制御部25は、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積ロジックICによりハード的に実現されるものでもよいし、あるいは、DSP(Digital Signal Process
or)などの計算機によりソフトウエア的に実現されるものでもよい。また、システム制御部26、画像処理部27、およびコンソール端末28には、CPU、メモリ、HDD等の外部記憶装置、CD-ROMやDVD-ROM等の可搬性を有する記憶媒体409から情報を読み出す読取装置、キーボードやマウスなどの入力装置、ディスプレイなどの出力装置、通信回線を介して相手装置と通信を行なうための通信装置、およびこれらの各装置を接続するバスを備えた一般的なコンピュータにおいて、CPUがメモリ上にロードされた所定のプログラムを実行することにより実現することができる。
【0036】
次に、上記構成のミラープロジェクション式検査装置の動作について説明する。上記構成のミラープロジェクション式検査装置の動作は、試料29の高さばらつきを検査するために必要な情報(電子光学系20のアラインメント情報、帯電制御装置23の帯電制御情報、および高さばらつき検出のための標準とする試料29の高低差情報)を含んで構成される検査レシピの作成処理と、検査レシピを用いた試料29の高さバラツキの検出処理と、の2つに分類できる。
【0037】
図3は本発明の第1実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の検査レシピ作成処理を説明するためのフロー図である。
【0038】
システム制御部26は、コンソール端末28を介してオペレータより、測長する試料29の基本情報の入力を受付ける(S101)。試料29が半導体ウェハである場合、半導体ウェハの品種、製造工程の名称等が基本情報に相当する。システム制御部26は、この基本情報を、これから作成する検査レシピを管理するために、メモリ等に記憶する。
【0039】
次に、システム制御部26は、コンソール端末28を介してオペレータより、測長する試料29の回路パターンのレイアウト情報の入力を受付け、これをS101で受付けた試料29の基本情報に対応付けてメモリ等に登録する(S102)。ここで、回路パターンのレイアウト情報は、オペレータが光学顕微鏡213で得られた光学画像を確認しながら、コンソール端末28に入力してもよいし、あるいは、試料29のCADデータに記述されている寸法を元に作成し、コンソール端末28に入力してもよい。
【0040】
次に、システム制御部26は、コンソール端末28を介してオペレータより、測長する試料29に対する帯電制御処理の実施の要否を受付ける(S103)。ここで、帯電制御処理の要否は、オペレータが判断して設定する。しかし、S101で受付けた試料29の基本情報から自動的に判断して設定することも可能である。自動的に判断する方法には2種類ある。一つは、メモリ等に記憶されている、過去に作成された同じ基本情報を持つ試料29の検査レシピを参照し、この検査レシピに記述されている帯電制御処理の要否が「要」ならば、今回も帯電制御処理が必要であると判断する。もう一つは、試料の基本情報ごとに帯電制御処理の要否を示した対応表データを予めメモリ等に記憶しておき、この対応表データを使って帯電制御処理の要否を判断する。例えば試料29が半導体ウェハの場合、ウェハ表面の構造および材料が工程の名称に反映される。そこで、工程の名称ごとに帯電制御処理の要否を示す対応表データを作成し、メモリ等に記憶する。システム制御部26は、その対応表データから基本情報と同じ名称に対応付けられている帯電制御処理の要否に従い判断する。
【0041】
さて、システム制御部26は、帯電制御処理が不要ならば(S104でNO)、S107に進む。一方、必要ならば(S104でYES)、システム制御部26は、コンソール端末28を介してオペレータより、帯電制御処理に用いる設定電圧の入力を受付け、これをS101で受付けた試料29の基本情報に対応付けてメモリ等に登録し(S105)、S106に進む。ここで、設定電圧は、試料29の全体に亘り帯電状態が均一となるように、つまり、「回路パターンに帯電ムラが発生しない」且つ「高さバラつきの計測時の弊害となるパターンに依存した帯電コントラストが発生しない」ように決定される。撮像において回路パターンに電子が入射しないミラープロジェクション式検査装置では、除電処理により大部分の試料29の帯電状態を均一にすることができる。
【0042】
S106において、システム制御部26は、ホルダ211に載置された試料29の標準品(高さばらつき判定の基準となる試料)に、S105でこの試料29の基本情報に対応付けて登録した設定電圧を印加して、この試料29の標準品の帯電制御処理を行う。その後、S107に進む。
【0043】
S107において、システム制御部26は、ステージ212の座標と、ホルダ211に載置されている試料29の回路パターンの座標との位置関係を調節するアラインメント工程に用いるアラインメント用テンプレートの登録処理を行う。本実施形態では、光学画像を使って大まかにアラインメントを行い(第1アラインメント工程)、その後、ミラー画像を使って詳細にアラインメントを行う(第2のアラインメント工程)。そこで、システム制御部26は、コンソール端末28を介してオペレータより受付けた指示に従い、予め撮像された試料29の標準品の光学画像を入手し、これを第1アラインメント用テンプレートとして、S101で受付けた試料29の基本情報に対応付けてメモリ等に登録する。同様に、予め撮像された試料29の標準品のミラー画像を入手し、これを第2アラインメント用テンプレートとして、S101で受付けた試料29の基本情報に対応付けてメモリ等に登録する。
【0044】
次に、システム制御部26は、コンソール端末28を介してオペレータより受付けた指示に従い、ステージ制御部24を制御してステージ212を移動させ、試料29のアラインメント(第1アラインメント、第2アラインメント)を行う場所の位置座標をS101で受付けた試料29の基本情報に対応付けてメモリ等に登録する(S108)。ここで、ステージ212の座標と、ホルダ211に載置されている試料29(回路パターン)の座標との位置関係を正確に調節するためには最低2つの場所でアラインメントを実行する必要がある。そこで、本実施形態では、上記のS107において、第1アラインメント用、第2アラインメント用2つのテンプレート(光学画像、ミラー画像)を登録し、S108において、アラインメントに用いる画像を取得するための最低2カ所の異なる試料29上の座標を、第1アラインメント用、第2アラインメント用それぞれについて2つずつ登録しておく。当然ながら、第1アラインメント用、第2アラインメント用の画像を取得する位置座標は、テンプレート画像を取得した位置座標とは異なる必要がある。
【0045】
次に、システム制御部26は、ステージ制御部24を制御して、S108で登録された2カ所の位置座標にステージ212を移動させ、光学顕微鏡213および検出器2033で、アラインメント用の画像をそれぞれ撮像する。そして、得られた画像(光学画像、ミラー画像)を、S107で試料29の基本情報に対応付けて登録したアラインメント用テンプレートと比較することにより、アラインメントを行う(S109)。なお、アラインメント用画像の取得は、位置座標を登録するステップS108で実行してもよい。その場合は、得られた画像を、アラインメント画像用のインデックスと対応づけてメモリに格納しておき、ステップS109で画像を呼びだしてアラインメントを実行する。
【0046】
具体的には、先ず、システム制御部26は、第1アラインメント工程を行う。コンソール端末28を介してオペレータより受付けた指示に従い、S107で登録した第1アラインメント用テンプレートの中から第1アラインメント用テンプレートを一つ選択すると共に、S109で撮像した2つ(或いは複数)の光学画像の中のいずれかの画像を選択する。そして、選択した第1アラインメント用テンプレートおよび光学画像をコンソール端末28に表示する。オペレータは、コンソール端末28に表示された第1アラインメント用テンプレートと光学画像とを比較し、両者のずれ(例えば回路パターンのエッジ部分等の特徴点のずれ)を観察する。この処理を、S109で取得した全ての光学画像について行い、かつ、第1アラインメント用テンプレートの全てについて行う。その結果得られたずれ量はコンソール端末28に入力する。システム制御部26は、コンソール端末28を介してオペレータより受付けたずれ量を、試料29の回路パターンの座標にステージ212の座標を合わせるための第1アラインメント量(オフセット量)として、S101で受付けた試料29の基本情報に対応付けてシステム制御部26に登録する。
【0047】
次に、システム制御部26は、第2アラインメント工程を行う。コンソール端末28を介してオペレータより受付けた指示に従い、S107で登録した第2アラインメント用テンプレートの中から第2アラインメント用テンプレートを一つ選択すると共に、S109で撮像した2つ(或いは複数)のミラー画像の中のいずれかの画像を選択する。そして、選択した第2アラインメント用テンプレートおよびミラー画像をコンソール端末28に表示する。このとき、試料29の回路パターンの座標に第1アラインメント量を反映させて、ミラー画像を表示する。オペレータは、コンソール端末28に表示された第2アラインメント用テンプレートとミラー画像とを比較し、両者のずれ(例えば回路パターンのエッジ部分等の特徴点のずれ)を観察する。この処理を、S109で取得した全ての光学画像について行い、かつ第2アラインメント用テンプレートの全てについて行う。結果得られたずれ量はコンソール端末28に入力する。システム制御部26は、コンソール端末28を介してオペレータより受付けたずれ量を、試料29の回路パターンの座標にステージ212の座標を合わせるための第2アラインメント量(オフセット量)として、S101で受付けた試料29の基本情報に対応付けてシステム制御部26に登録する。
【0048】
上述のアラインメント終了後、システム制御部26は、試料29の回路パターンの測定場所を検索するために用いる測定場所検索用テンプレートの登録処理を行う(S110)。本実施形態では、測定場所検索用テンプレートとして、予め低倍で撮像した測定場所のミラー画像およびこの測定場所のステージ212の座標を、コンソール端末28を介してオペレータより受付け、これをS101で受付けた試料29の基本情報に対応付けてメモリ等に登録する。ここで、ウェハ検査装置の場合には、低倍とは、ウェハ上に形成された回路パターンの繰り返し単位、例えば、露光ショット、ダイ、メモリマットなどの場所が、ウェハ上で特定できる程度の倍率を意味する。現時点の半導体ウェハにおいては、回路パターンの繰り返し単位は50μm〜200μm程度の大きさであり、取得画像の倍率で言えば500倍〜2000倍程度である。
【0049】
次に、システム制御部26は、試料29上に形成された回路パターンの測定場所における高さばらつきを検査するための高さばらつき検査用テンプレートの登録処理を行う(S111)。具体的には、試料29の基本情報に対応付けらて登録されている第1アラインメント量および第2アラインメント量を用いてステージ212の座標を補正する。次に、この補正されたステージ212の座標を用いてステージ制御部24を制御し、S110で試料29の基本情報に対応付けて登録したいずれかの測定場所検索用テンプレートの測定場所にステージ212を移動させ、電子光学系制御部25を制御して、電子光学系20に低倍のミラー画像を撮像させる。それから、撮像したミラー画像とテンプレートのミラー画像とのパターンマッチングを行い、測定場所のステージ212の座標を決定する。次に、電子光学系制御部25を制御して、決定した座標により特定される測定場所のミラー画像を撮像する。このミラー画像は高さばらつきを検査する際に用いるミラー画像の撮像倍率と略同じ撮像倍率とする。そして、撮像したミラー画像から、この測定場所での高さばらつき検査用テンプレートを作成し、試料29の基本情報に対応付けてメモリ等に登録する。なお、高さばらつき検査用テンプレート作成処理の詳細は後述する。
【0050】
さて、システム制御部26は、コンソール端末28を介してオペレータに高さばらつき検査用テンプレートの登録を続行するか否かを問い合わせ、続行する場合(S112でNO)はS110に戻り、続行しない場合(S112でYES)、つまり全ての測定場所での高さばらつき検査用テンプレートの登録が終了した場合は、このフローを終了する。
【0051】
以上により、試料29の検査レシピ情報が、この試料29の基本情報に対応付けられてメモリ等に登録される。
【0052】
次に、高さばらつき検査用テンプレートの作成処理(図3のS111)を説明する。高さばらつき検査用テンプレートの作成処理には、試料29の標準品のミラー画像から高低差に関する情報をフィルタリングするためのフィルタパターンを作成する処理(フィルタパターン作成処理)と、試料29の標準品のミラー画像から検査試料29のミラー画像と比較するための参照パターンを作成する処理(参照パターン作成処理)とがある。以下、フィルタパターン作成処理および参照パターン作成処理のそれぞれについて説明する。
【0053】
先ず、フィルタパターン作成処理について説明する。
【0054】
図4はフィルタパターンの作成処理を説明するためのフロー図である。
【0055】
先ず、画像処理部27は、投影光学系203の検出器2033で検出されたミラー電子の強度に対応する信号を、ステージ制御部24の主制御装置241から送られてくるステージ212の座標信号に同期させて取り込む。そして、取り込んだ信号をAD変換してミラー画像を生成する(S1111)。試料29の標準品は、高さばらつきが極力小さいものが好ましい。高さばらつきが大きい試料29でミラー画像を取得すると、基準となるフィルタパターンの特性が悪くなり、後の高さばらつきの測定精度が悪くなる。
【0056】
次に、画像処理部27は、ミラー画像から周期性の高い2n×2nの画素サイズの領域(トリミングウインドウ)を選択してフーリエ変換(高速フーリエ変換)を行い、フーリエ変換画像を生成する(S1112)。そして、生成したフーリエ変換画像をシステム制御部26に送信する。システム制御部26は、画像処理部27から受信したフーリエ変換画像をコンソール端末28に表示する。
【0057】
次に、システム制御部26は、コンソール端末28を介してオペレータより、フーリエ変換画像を元に作成されたフィルタパターンを受け付ける。オペレータは、コンソール端末28に表示されたフーリエ変換画像を必要に応じて拡大し、元のミラー画像の周期性に起因したスポット301を確認する(S1113)。次に、オペレータは、マウス等のポインティングデバイスを用いてスポットの一つ一つを選択する。コンソール端末28は、オペレータにより選択されたスポット各々をマスクするフィルタパターンを生成し(S1114)、システム制御部26に送信する。ここで、マスクのサイズが大きすぎると、後述する逆フーリエ変換の際に高さばらつき情報が消失してしまう可能性がある。このため、コンソール端末28に、一つのスポットを隠すマスクのサイズを用途に応じて複数取り揃えておくことが好ましい。そして、微妙な高さばらつきを高精度に測定したい場合には小さなマスクを使用し、突出した高さばらつきのみ抽出したい場合には大きなマスクを使用するとよい。フーリエ変換画像中に確認できるスポットの全てにマスクをかけて逆フーリエ変換を行うことで、試料29の標準品が持つ高低差の周期成分(検査対象の回路パターンが本来持つ高さの周期成分)を除去することができる。
【0058】
次に、システム制御部26は、コンソール端末28より受け付けたフィルタパターンを画像処理部27に送信する。画像処理部27は、システム制御部26から受信したフィルタパターンとフーリエ変換画像とを合成して、フーリエ変換画像をマスクする(S1115)。そして、マスクされたフーリエ変換画像を逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換画像をシステム制御部26に送信する(S1116)。システム制御部26は、画像処理部27から受信した逆フーリエ変換画像をコンソール端末28に表示する。試料29の標準品が持つ高低差の周期成分(検査対象の回路パターンが本来持つ高さの周期成分)を除去できている場合、逆フーリエ変換画像はのっぺりした(均一な)画像となる。そこで、オペレータは、逆フーリエ変換画像のコントラストを評価し、その評価結果から上記のフィルタパターンを登録するか否かを判断する。そして、その判断結果をコンソール端末28に入力する。システム制御部26は、コンソール端末2に入力された判断結果がフィルタパターンの登録である場合、上記のフィルタパターンを試料29の基本情報に対応付けてメモリ等に登録する。一方、フィルタパターンを作り直す場合は、S1114に戻る。
【0059】
次に、参照パターン作成処理について説明する。
【0060】
参照パターンには、ミラー画像そのものと、ミラー画像のフーリエ変画像に含まれている回路パターンの周期成分のみを逆フーリエ変換して生成された逆フーリエ変換画像と、がある。
【0061】
参照パターンがミラー画像そのものである場合、画像処理部27は、投影光学系203の検出器2033で検出されたミラー電子の強度に対応する信号を、ステージ制御部24の主制御装置241から送られてくるステージ212の座標信号に同期させて取り込む。そして、取り込んだ信号をAD変換してミラー画像を生成し、これをシステム制御部26に送信する。システム制御部26は、画像処理部27から受信したミラー画像を参照パターンとして、試料29の基本情報に対応付けてメモリ等に登録する。
【0062】
一方、参照パターンが逆フーリエ変換画像である場合、画像処理部27は、生成したミラー画像をフーリエ変換し、フーリエ変換画像をフィルタリングして回路パターンの周期成分を抽出し、抽出した回路パターンの周期成分を逆フーリエ変換する。そして、この逆フーリエ変換画像をシステム制御部25に送信する。システム制御部26は、画像処理部27から受信した逆フーリエ変換画像を参照パターンとして、試料29の基本情報に対応付けてメモリ等に登録する。
【0063】
図5は、図3に示す検査レシピ作成処理においてコンソール端末28が表示するレシピ作成GUI画面の一例を示す図である。図5(A)は高さばらつき検査用テンプレートとしてフィルタパターンを登録する場合のGUI画面例を示しており、図5(B)は高さばらつき検査用テンプレートとして参照パターンを登録する場合のGUI画面例を示している。
【0064】
図5(A)、(B)に示すように、高さばらつき検査用テンプレートの登録用GUI画面は、試料29(例えば半導体ウエハ)上に形成された回路パターンのレイアウトを表示するためのレイアウト表示窓41と、高さばらつきの抽出方法および計測方法を指定するための画像処理指定欄42と、ミラー画像および高さばらつき検査用テンプレートを含む各種画像を表示するための取得画像表示窓43と、高さばらつきを抽出し計測する際の画像処理パラメータを設定するためのパラメータ設定欄44と、を有する。
【0065】
レイアウト表示窓41は、回路パターンの測定場所の指定に用いられる。オペレータは、マウス等のポインティングデバイスを操作してポインタ45を操作し、回路パターンの測定場所を指定すると、コンソール端末28は、ポインタ45で指定された測定場所の情報をシステム制御部26に送信する。システム制御部26は、ステージ制御部24、光学顕微鏡213、および画像処理部27を制御し、ポインタ45で指定された測定場所の光学画像の画像データを取得し、これをコンソール端末28に送信する。コンソール端末28は、レイアウト表示子窓46に取得した光学画像の画像データを表示する。コンソール端末28は、取得画像表示窓43にミラー画像が表示されていない場合、この表示子窓46をアクティブにし、リアルタイムで光学画像を更新する。オペレータは、光学画像上の所望の領域をポインタ45で指定することで測定場所(計測領域)を登録することができる。なお、大小様々なパターンについて所望の領域が光学画像から指定できるよう、表示子窓46に表示される光学画像の倍率は変更することができる。登録された測定場所は、コンソール端末28により、レイアウト表示窓41上に、登録順を示すID番号と共にマーカ47で表示される。
【0066】
画像処理指定欄42は、高さばらつきの抽出方法および計測方法を指定するためチェックボックスを有する。本実施形態では、高さばらつきの抽出方法として、高速フーリエ変換方法(上述のフィルタパターン作成処理)および差画像方法(上述の参照パターン作成処理)のいずれかを指定できる。また、高さばらつきの計測方法として、ヒストグラム方法および面積比率方法のいずれかを指定できる。図5(A)は、高さばらつきの抽出方法として高速フーリエ変換方法が指定され、高さばらつきの計測方法としてヒストグラム方法が指定されている場合を、そして、図5(B)は、高さばらつきの抽出方法として差画像方法が指定され、高さばらつきの計測方法として面積比率方法が指定されている場合を例示している。なお、高さばらつきの計測方法については後述する。
【0067】
取得画像表示窓43には、測定場所の高さばらつき検査用テンプレートを作成する際にオペレータが参照する画像が表示される。高さばらつきの抽出方法として高速フーリエ変換方法が指定されている場合は、図5(A)に示すように、ミラー画像、ミラー画像のフーリエ変換画像、フーリエ変換画像をトリミングするためのトリミングウインドウ431、フィルタパターン、およびフーリエ変換画像をフィルタパターンでマスクして逆フーリエ変換した逆フーリエ変換画像が表示される。また、高さばらつきの抽出方法として差画像方法が指定されている場合は、図5(B)に示すように、ミラー画像(参照パターン)のみ、あるいは、ミラー画像、ミラー画像のフーリエ変換画像、およびフーリエ変換画像から抽出した周期的成分を逆フーリエ変換した逆フーリエ変換画像(参照パターン)が表示される。取得画像表示窓43の下部には、光学画像およびミラー画像の切替ボタンがあり、切替ボタンにより光学画像が選択されている場合は、レイアウト表示子窓46に表示される光学画像がリアルタイムで更新される。一方、切替ボタンによりミラー画像が選択されている場合は、取得画像表示窓43内のミラー画像がリアルタイムで更新される。
【0068】
高さばらつきの抽出方法として高速フーリエ変換方法が指定されている場合、パラメータ設定欄44は、図5(A)に示すように、画像処理(「FFT]、「IFFT」、「取消」、および「登録」のいずれか)の指定を受け付ける指定ボタン441と、フィルタパターンを作成する際に使用するフィルタパターン作成ウインドウ442と、取得画像表示窓43に表示するフィルタパターンのマスクのサイズを指定するための指定ボタン443と、取得画像表示窓43に表示されている逆FFT変換画像のヒストグラムを表示するヒストグラム表示窓444と、を有する。コンソール端末28は、取得画像表示窓43に表示されているトリミングウインドウ431内のFFT変換画像を拡大して、フィルタパターン作成ウインドウ442に表示する。このトリミングウインドウ431は、オペレータの操作により任意の位置に動かすことができる。指定ボタン443は、オペレータがプルダウンすることによりそのサイズを段階的に指定できる。オペレータによりトリミングウインドウ431内の任意の箇所がポインタ45で選択されると、コンソール端末28は、FFT変換画像の選択された箇所にマスクを設定し、このマスクをフィルタパターン作成ウインドウ442内に追加する。また、コンソール端末28は、指定ボタン441によりIFFTが選択されると、フィルタパターン作成ウインドウ442に表示されているフィルタパターンを取得画像表示窓43に表示すると共に、このフィルタパターンをIFFTの指示と共にシステム制御部26に送信する。そして、システム制御部26より受け取った逆FFT変換画像を取得画像表示窓43に表示すると共に、その周波数成分のヒストグラムをヒストグラム表示窓444に表示する。また、コンソール端末28は、指定ボタン441により登録が選択された場合、フィルタパターン作成ウインドウ442に表示されているフィルタパターンを高さばらつき検査用テンプレートとしてシステム制御部26に送信する。一方、指定ボタン441により取消が選択された場合は、取得画像表示窓43に表示されているフィルタパターンおよび逆FFT変換画像をクリアすると共に、フィルタパターン作成ウインドウ442およびヒストグラム表示窓444の内容をクリアする。
【0069】
高さばらつきの抽出方法として差画像方法が指定されている場合、パラメータ設定欄44は、図5(B)に示すように、画像処理(「取消」、および「登録」のいずれか)の指定を受け付ける指定ボタン445と、差画像の2値化に用いる閾値を設定するためのスライダ446と、を有する。コンソール端末28は、指定ボタン445により登録が選択された場合は、取得画像表示窓43に表示されている参照パターンを高さばらつき検査用テンプレートとして、スライダ446で設定された2値化の閾値と共に、システム制御部26に送信する。一方、指定ボタン445により取消が選択された場合は、取得画像表示窓43に表示されているミラー画像をクリアする。
【0070】
図6は本発明の第1実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の高さバラツキの検出処理を説明するためのフロー図である。
【0071】
システム制御部26は、コンソール端末28を介してオペレータより、測長する試料29の基本情報の入力を受付けると、この基本情報に対応付けられてメモリ等に記憶されている検査レシピを読み出す(S201)。次に、システム制御部26は、読み出した検査レシピに帯電制御処理の設定電圧が含まれているか否かを調べることで、帯電制御処理の要否を判断する(S202)。帯電制御処理が不要と判断した場合は(S203でNO)、S206に進む。一方、帯電制御処理が必要と判断した場合は(S203でYES)、検査レシピから帯電制御処理の設定電圧を読出す(S204)。それから、システム制御
部26は、帯電制御部23を制御することで、ホルダ211に載置された試料29にこの設定電圧を印加して、この試料29に対して帯電制御処理を行う。その後、S206に進む。
【0072】
S206において、システム制御部26は、検査レシピからアラインメント量(第1アラインメント量および第2アラインメント量)を読み出す。そして、このアラインメント量を用いてステージ212の座標を補正し、アラインメントを行う(S207)。なお、ここでいうアラインメントとは、レシピに格納されたアラインメント量分だけ、ステージ位置にオフセット量を加える制御を意味する。
【0073】
上述のアラインメント終了後、システム制御部26は、試料29上に形成された回路パターンの測定場所を検索するために用いる測定場所検索用テンプレートを、検査レシピから読み出す(S208)。次に、システム制御部26は、アラインメントされたステージ212の座標を用いてステージ制御部24を制御して、S208で読み出した測定場所検索用テンプレートの測定場所にステージ212を移動させ、電子光学系制御部25を制御して、電子光学系20に低倍のミラー画像を撮像させる。それから、撮像したミラー画像と測定場所検索用テンプレートとのパターンマッチングを行い、測定場所のステージ212の座標を決定する(S209)。
【0074】
次に、システム制御部26は、S208で読み出した測定場所検索用テンプレートと同じ測定場所の高さばらつきを検査するための高さばらつき検査用テンプレートを、検査レシピから読み出す(S210)。それから、電子光学系制御部25を制御して、S209で決定された測定場所で高さばらつき検査用のミラー画像を撮像させる。そして、撮像したミラー画像と高さばらつき検査用テンプレートとを用いて、S209で決定された測定場所の高さばらつきを検査する(S211)。なお、高さばらつき検査処理の詳細は後述する。
【0075】
さて、システム制御部26は、検査レシピに登録されている全ての測定場所検索用テンプレートを用いて高さばらつきの検査を実施したか否か判定する。高さばらつき検査に用いていない測定場所検索用テンプレートがあるならば(S212でNO)、S208に戻ってこの測定場所検索用テンプレートを読み出す。一方、全ての測定場所検索用テンプレートを高さばらつき検査に用いたならば(S212でYES)、このフローを終了する。
【0076】
以上により、試料29の高さばらつきが検査される。
【0077】
次に、高さばらつき検査処理(図6のS211)を説明する。高さばらつき検査処理には、高さばらつき検査用テンプレートとしてフィルタパターンを用いるフィルタパターン方法と、参照パターンを用いる参照パターン方法とがある。以下、フィルタパターン方法および参照パターン方法のそれぞれについて説明する。
【0078】
図7は、フィルタパターン方法を説明するためのフロー図である。
【0079】
先ず、画像処理部27は、投影光学系203の検出器2033で検出されたミラー電子の強度に対応する信号を、ステージ制御部24の主制御装置241から送られてくるステージ212の座標信号に同期させて取り込む。そして、取り込んだ信号をAD変換してミラー画像を生成する(S2111)。次に、画像処理部27は、生成したミラー画像にフーリエ変換(高速フーリエ変換)を行い、フーリエ変換画像を生成する(S2112)。そして、生成したフーリエ変換画像を、システム制御部26から受信したフィルタパターンと合成して、フーリエ変換画像をマスクする(S2113)。そして、マスクされたフーリエ変換画像を逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換画像を生成する(S2114)。それから、画像処理部27は、逆フーリエ変換画像に対してスペクトル解析処理を実施し、その結果を示すヒストグラム分布データを生成する(S2115)。次に、画像処理部27は、ミラー画像、逆フーリエ変換画像、およびヒストグラム分布データをシステム制御部26に送信する。システム制御部26は、画像処理部27から受信したこれらのデータをコンソール端末28に送信する。試料29の標準品に対して、試料29の回路パターンの高さばらつきが小さい場合は、逆フーリエ変換画像はのっぺりした(均一な)画像となり、ヒストグラム分布データの幅が小さくなる。一方、試料29の標準品に対して、試料29の回路パターンの高さばらつきが大きい場合は、逆フーリエ変換画像はざらついた(不均一な)画像となり、ヒストグラム分布データの幅が大きくなる。したがって、オペレータは、ヒストグラム分布データの幅(例えば半値幅(頻度の半値における周波数成分の幅)で表すことができる)を確認することで試料29の高さばらつきの程度を確認することができる。なお、コンソール端末28がヒストグラム分布データの幅を計測し、これを高さばらつきデータとして表示してもよい。
【0080】
図8は、参照パターン方法を説明するためのフロー図である。
【0081】
先ず、画像処理部27は、投影光学系203の検出器2033で検出されたミラー電子の強度に対応する信号を、ステージ制御部24の主制御装置241から送られてくるステージ212の座標信号に同期させて取り込む。そして、取り込んだ信号をAD変換してミラー画像を生成する(S2211)。次に、画像処理部27は、生成したミラー画像と参照パターンとの差画像(ミラー画像-参照パターン)を生成する(S2212)。そして、差画像を構成する各画素の輝度値を所定の閾値で2値化処理する(S2213)。それから、画像処理部27は、ミラー画像、差画像、および2値化画像をシステム制御部26に送信する。システム制御部26は、画像処理部27から受信したこれらのデータをコンソール端末28に送信する。試料29の標準品に対して、試料29の回路パターンの高さばらつきが小さい場合は、2値化画像はのっぺりした(均一な)画像となり、黒領域(または白領域)の白領域(または黒領域)に対する面積比率が小さくなる。一方、試料29の標準品に対して、試料29の回路パターンの高さばらつきが大きい場合、2値化画像はざらついた(不均一な)画像となり、黒領域(または白領域)の白領域(または黒領域)に対する面積比率が大きくなる。したがって、オペレータは、2値化画像における黒領域(または白領域)の白領域(または黒領域)に対する面積比率を確認することで試料29の高さばらつきの程度を確認することができる。なお、コンソール端末28が白画素(または黒画素)数に対する黒画素(または白画素)数の割合を計測し、これを高さばらつきデータとして表示してもよい。
【0082】
図9は、図6に示す高さばらつき検査処理においてコンソール端末28が表示する検査結果GUI画面の一例を示す図である。図9(A)はフィルタパターン方法による検査結果GUI画面例を示しており、図9(B)は参照パターン方法による検査結果GUI画面例を示している。
【0083】
図9(A)、(B)に示すように、検査結果GUI画面は、試料29(例えば半導体ウエハ)の回路パターンのレイアウトを表示するためのレイアウト表示窓51と、検査レシピで指定されている高さばらつきの抽出方法および計測方法を表示するための画像処理方法表示欄52と、処理の状況を表示する処理状況表示窓53と、進捗状況を表示する結果表示窓54と、を有する。
【0084】
レイアウト表示窓51には、試料29のどの領域を計測しているかがリアルタイムで表示される。システム制御部26は、図6のS209で設定した試料29の測定位置の情報をコンソール端末28に送信する。コンソール端末28は、レイアウト表示窓51において、測定場所にマーカ511を表示する。なお、検査開始に先立って、システム制御部26が試料29の全ての測定位置をコンソール端末28に送信し、コンソール端末28が、システム制御部26から予め受け取った全ての測定位置と、リアルタイムで送られてくる測定中の測定位置とを用いて、測定済領域512と、測定予定領域513とを識別できるように例えば色分け表示してもよい。
【0085】
画像処理方法表示欄52には、検査レシピで指定されている高さばらつきの抽出方法および計測方法が表示される。本実施形態では、高さばらつきの抽出方法として、高速フーリエ変換方法(上述のフィルタパターン方法)および差画像方法(上述の参照パターン方法)のいずれかが表示される。また、高さばらつきの計測方法として、ヒストグラム方法および面積比率方法のいずれかが表示される。図9(A)は、高さばらつきの抽出方法として高速フーリエ変換方法が検査レシピで指定され、高さばらつきの計測方法としてヒストグラム方法が検査レシピで指定されている場合を、そして、図9(B)は、高さばらつきの抽出方法として差画像方法が検査レシピで指定され、高さばらつきの計測方法として面積比率方法が検査レシピで指定されている場合を例示している。
【0086】
処理状況表示窓53には、高さばらつき検査で取得された画像および検査結果の統計値が表示される。高さばらつきの抽出方法として高速フーリエ変換方法が検査レシピで指定されている場合は、図9(A)に示すように、ミラー画像、ミラー画像のフーリエ変換画像をフィルタパターンでマスクして逆フーリエ変換した逆フーリエ変換画像、逆フーリエ変換画像のヒストグラム、および、測定済領域のヒストグラムから得られる高さばらつきデータ(例えばヒストグラムの半値幅)の平均値が表示される。また、高さばらつきの抽出方法として差画像方法が検査レシピで指定されている場合は、図9(B)に示すように、ミラー画像、ミラー画像と参照パターンとの差画像、差画像の2値化画像、および、測定済領域の2値化画像から得られる高さばらつきデータ(例えば白領域(あるいは黒領域)の黒領域(あるいは白領域)に対する面積比率)の平均値が表示される。
【0087】
そして、結果表示窓54には、計測日時、検査レシピのファイル名、検査結果の保存ファイル名、計測の進行状況等が表示される。また、結果表示窓54には、検査の開始および中止をオペレータから受け付けるための指定ボタン541が設けられている。オペレータは、指定ボタン541を操作することで随時、計測を中断、再開することができる。
【0088】
以上、本発明の第1実施形態について説明した。
【0089】
試料29の回路パターンに高低差がある場合、高さの異なる箇所近傍で引き戻されたミラー電子は、互いに異なる軌道を描き、高低差に応じた異なる焦点位置で結像する。したがって、このミラー画像を観察することで、高低差を検出することが可能である。本実施形態によれば、予め用意しておいた標準品の撮像画像(フィルタパターン、参照パターン)が示す高低差と、被検査物の撮像画像が示す高低差とを比較することにより、試料29の高さ方向のばらつきを検出できる。
【0090】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態では、上記の第1実施形態において、試料29の回路パターンの高低差以外の高さ方向の変動(例えば半導体ウェハの反り等による巨視的な高さ変動)が、高さばらつき検査結果に影響しないように補正する。
【0091】
本実施形態のミラープロジェクション式検査装置は、図2に示す第1実施形態において、試料29とは別にホルダ211上に載置された高さ補正用標準品と、ホルダ211に載置された試料29および高さ補正用標準品の高さを計測する高さセンサと、を設けたものである。
【0092】
高さセンサは、試料29および高さ補正用標準品の面内でミラープロジェクション式検査装置が検出可能な欠陥領域よりも低い解像度である数μm〜数mmの領域の平均的な高さを計測できるようにしてある。これにより、試料29の巨視的な高さ変動(例えば半導体ウエハの数100μm程度の反り)を検出できる。このような高さセンサには、例えば光学式高さ検査装置(Zセンサ)等を用いることができる。
【0093】
図10(A)は高さ補正用標準品の一例の概略図(正面図および底面図)である。図示するように、高さ補正用標準品は、表面に複数の段差50が設けられており、各段差面51には、標準試料52が設けられている。ホルダ211の基準点から各標準試料52までの高さは、高さ補正用標準品のホルダ211への取り付け時に高精度に測定されている。この例では、3つの標準試料52を異なる段差面51に配置しているが、標準試料52の数は当然、この数に限定されない。
【0094】
図10(B)は高さ補正用標準品を構成する標準試料52の一例の概略図(正面図、底面図、および側面図)である。図示するように、標準試料52は、大きさおよび高さの異なる試料片53がマトリックス状に配置されて構成されている。この例では、行毎に同じ大きさの試料片53を配置し、そして、列毎に同じ高さの試料片53を配置している。なお、異なる大きさの試料片53を用意したのは、同じ高さであっても大きさが異なると、電子光学系20のフォーカス条件が異なってくるからである。試料片53の大きさは例えば試料29が半導体ウエハの場合、半導体プロセスのデザインルールに合わせてもよい。
【0095】
次に、上述の高さ補正用標準品を用いた電子光学系20の補正量算出処理を説明する。
【0096】
図11は本発明の第2実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の電子光学系補正量算出処理を説明するためのフロー図である。
【0097】
先ず、システム制御部26は、帯電制御部23、ステージ制御部24、電子光学系制御部25、および画像処理部27を制御し、基準となる標準試料52の試料片53のうち、任意の大きさを持つ試料片53の各々についてミラー画像を撮像する(S301)。
【0098】
なお、ミラー画像は、対物レンズ2022の励磁を調整することにより、欠陥のコントラスト、大きさを任意に変更することができる。したがって、オペレータは、標準試料52の所望の高低差が強調されるように対物レンズ2022の励磁を調整することができる。つまり、同じ大きさの試料片53毎に、試料片53の高さに応じてミラー画像のコントラストが連続的に変化するよう対物レンズ2022の励磁を調整することができる。例えば、回路パターンのハーフピッチが100nmの半導体ウエハを試料29とする場合、大きさ100nmの試料片53が、その高さに応じてミラー画像のコントラストが連続的に変化するように、対物レンズ2022の励磁を調整することが好ましい。
【0099】
次に、システム制御部26は、同じ大きさを持つ試料片53各々のミラー画像を画像処理部27から受信し、これらのミラー画像を、ミラー画像撮像の光学条件、予めメモリ等に登録されている基準となる標準試料52の高さ情報、および試料片53の大きさ情報に対応付けて登録する(S302)。
【0100】
次に、システム制御部26は、帯電制御部23、ステージ制御部24、電子光学系制御部25、および画像処理部27を制御し、基準とする標準試料52と同じ光学条件で、S301で撮像した試料片53と同じ大きさを持つ試料片53各々のミラー画像を撮像する(S303)。そして、撮像したミラー画像を画像処理部27から受信すると、これらの試料片53のミラー画像と、S303で登録した基準とする標準試料52の試料片53各々のミラー画像とを、コンソール端末28に送信する。コンソール端末28は、これらのミラー画像を表示して、オペレータに光学条件の調整の必要性を判断させる(S304〜S308)。先ず、オペレータは、基準とする標準試料52のミラー画像と、比較対象の標準試料52のミラー画像とのコントラストを比較する。両者が異なる場合は(S304でNo)、中間レンズ2031の励磁を調整する(S305)。システム制御部26は、調整後の光学条件でミラー画像を撮像し(S308)、S304に戻る。この処理を、両者のコントラストが同じようになるまで繰り返す。
【0101】
次に、オペレータは、基準とする標準試料52のミラー画像と、比較対象の標準試料52のミラー画像との倍率、回転を比較する。両者が異なる場合は(S306でNo)、投影レンズ2032の励磁を調整する(S307)。システム制御部26は、調整後の光学条件でミラー画像を撮像し(S308)、S304に戻る。この処理を、両者の倍率、回転が同じようになるまで繰り返す。
【0102】
そして、コントラスト、倍率、回転のすべてにおいて、比較対象の標準試料52のミラー画像が基準とする標準試料52のミラー画像と同じようになったならば(S304、S306で共にYES)、そのときの光学条件を、予めメモリ等に登録されている比較対象の標準試料52の高さ情報および試料片53の大きさ情報に対応付けて登録する(S309)。
【0103】
次に、システム制御部26は、全ての標準試料52について、光学条件の登録が終了したならば(S310でYES)、このフローを終了する。終了していないならば(S310でNO)、S303に戻って処理を続ける。
【0104】
図12は、図11に示す電子光学系補正量算出処理においてコンソール端末28が表示する光学系調節用GUI画面の一例を示す図である。
【0105】
図12に示すように、光学系調節用GUI画面は、ホルダ211の大まかな位置を示すレイアウト表示窓61と、基準とする標準試料52および調整対象の標準試料52の画像を表示する試料画像表示窓62と、電子光学系20のパラメータを設定するためのパラメータ調整欄63と、標準試料52の画像モードの切替指示を受け付ける画像モード指示受付欄64と、調整対象の標準試料52の高さ、標準片53の大きさ、および電子光学系20のパラメータ設定値を表示すると共に、これらを登録するための登録指示受付欄65と、を有する。
【0106】
レイアウト表示窓61は、標準試料51の指定に用いられる。オペレータは、マウス等のポインティングデバイスを操作してポインタ66を操作し、基準とする標準試料52の測定場所を指定すると、コンソール端末28は、ポインタ66で指定された測定場所をシステム制御部26に送信する。システム制御部26は、ステージ制御部24、光学顕微鏡213、および画像処理部27を制御し、ポインタ66で指定された測定場所の光学画像あるいはミラー画像を取得し、これをコンソール端末28に送信する。コンソール端末28は、試料画像表示窓62に、取得した基準とする標準試料52の画像データを表示する。同様に、オペレータは、マウス等のポインティングデバイスを操作してポインタ66を操作し、調整対象の標準試料52の測定場所を指定すると、コンソール端末28は、ポインタ66で指定された測定場所をシステム制御部26に送信する。システム制御部26は、ステージ制御部24、光学顕微鏡213、および画像処理部27を制御し、ポインタ66で指定された測定場所の光学画像あるいはミラー画像を取得し、これをコンソール端末28に送信する。コンソール端末28は、試料画像表示窓62に、取得した調整対象の標準試料52の画像データを表示する。
【0107】
試料画像表示窓62には、基準とする標準試料52の画像データと、調整対象の標準試料52の画像データとが並べて表示される。電子光学系20のパラメータ調整時には、調整対象の標準試料52の画像データが、パラメータ調整欄63でのパラメータ設定値が更新される毎に更新される。
【0108】
パラメータ調整欄63は、電子光学系20の各種レンズのパラメータを調整するためのスケールバーを有する。オペレータがマウス等のポインティングデバイスを操作してスケールバーを操作すると、コンソール端末28は、スケールバーが示す電子光学系20の各種レンズのパラメータ値をシステム制御部26に送信する。システム制御部28はコンソール端末28から受け取ったパラメータ値を電子光学系制御部25に送信して、電子光学系制御部25に電子光学系20を調整させる。これにより、調整対象の標準試料52の画像データが調整される。オペレータはこのスケールバーを調整しながら、調整対象の標準
試料52の画像データが基準となる標準試料52の画像データと同じになるよう調整することができる。
【0109】
画像モード指示受付欄64は、光学画像を選択するための焦点ボタンと、ミラー画像を選択するための焦点ボタンと、電子光学系20の調整を受け付けるためのワブラボタンと、を有する。オペレータがマウス等のポインティングデバイスを操作して光学画像を選択するための焦点ボタンを操作すると、コンソール端末28は、光学画像取得指示をシステム制御部26に送信する。これを受けてシステム制御部28は、光学顕微鏡213を制御して光学顕微鏡213に光学画像を撮像させる。この光学画像は画像処理部27を介してシステム制御部26に送信され、システム制御部26からコンソール端末28へ送信される。また、オペレータがマウス等のポインティングデバイスを操作してミラー画像を選択するための焦点ボタンを操作すると、コンソール端末28は、ミラー画像取得指示をシステム制御部26に送信する。これを受けてシステム制御部28は、電子光学系20を制御して電子光学系20にミラー画像を撮像させる。このミラー画像は画像処理部27を介してシステム制御部26に送信され、システム制御部26からコンソール端末28へ送信される。また、オペレータがマウス等のポインティングデバイスを操作してワブラボタンを操作すると、コンソール端末28は、パラメータ調整欄63をアクティブにして、オペレータから電子光学系20のパラメータの調節を受付可能とする。
【0110】
登録指示受付欄65は、調整対象の標準試料52の高さ、標準片53の大きさ、および電子光学系20のパラメータ設定値を表示するための今回値ボタンと、1つ前に登録した電子光学系20のパラメータ設定値を表示するための前回値ボタンと、調整対象の標準試料52の高さ、標準片53の大きさ、および電子光学系20のパラメータ設定値を登録するための保存ボタンと、を有する。オペレータがマウス等のポインティングデバイスを操作して保存ボタンを操作すると、コンソール端末28は、調整対象の標準試料52の高さ、標準片53の大きさ、および電子光学系20のパラメータ設定値(光学条件)をシステム制御部26に送信する。これを受けてシステム制御部28は、これらの情報を巨視的な高さ変動の補正情報としてメモリ等に記憶する。
【0111】
次に、本実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の検査レシピ作成処理、高さばらつき検出処理について説明する。
【0112】
本実施形態の検査レシピ作成処理は、図3に示す第1実施形態の検査レシピ作成処理のS111(高さばらつき検査用テンプレート受付・登録処理)において、高さセンサにより試料29の高さが測定され、システム制御部26が、電子光学系制御部25に、この高さおよび試料29の回路パターンの大きさに対応付けられてメモリ等に登録されている光学条件を用いて電子光学系20を制御させ、ミラー画像を撮像させる。その他は、図3に示す第1実施形態の検査レシピ作成処理と同様である。
【0113】
また、本実施形態の高さばらつき検出処理は、図6に示す第1実施形態の高さばらつき検出処理のS211(高さばらつき検査)において、高さセンサにより試料29の高さが測定され、システム制御部26が、電子光学系制御部25に、この高さおよび試料29の回路パターンの大きさに対応付けられてメモリ等に登録されている光学条件を用いて電子光学系20を制御させ、ミラー画像を撮像させる。その他は、図6に示す第1実施形態の高さばらつき検出処理と同様である。
【0114】
以上、本発明の第2実施形態について説明した。
【0115】
本実施形態によれば、上記の第1実施形態の効果に加え、試料29の回路パターンの高低差以外の高さ方向の変動(例えば半導体ウェハの反り等による巨視的な高さ変動)が、高さばらつき検査結果に影響しないように補正することができる。
【0116】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態を説明する。本実施形態では、上記の第1実施形態または第2実施形態において、試料29の回路パターンの高低差をAFMを用いて測定できるようにしている。
【0117】
図13は本発明の第3実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の概略図である。図示するように、本実施形態のミラープロジェクション式検査装置は、図2に示す第1実施形態、あるいは第2実施形態において、AFM用資料室31を追加したものである。
【0118】
試料室31には、AFM32と、試料29を載せるホルダ33と、AFM32の針に対して垂直方向に試料29を移動させるステージ34と、AFM用光学顕微鏡35と、試料29をホルダ211からホルダ33へ搬送する搬送部(不図示)と、ステージ34を制御するステージ制御部(不図示)と、を有する。なお、試料室31は、試料室21と異なり、真空排気されている必要はない。資料室31内は大気環境でもよい。
【0119】
AFM32は、先端曲率がサブμmの細い針を用いて被検査物の表面を走査し、針の高さ方向の移動量を走査に同期させ画像化することで、被検査物の高さ方向の形状を測定する。AFM32には、既存の装置を用いることができる。AFM用光学顕微鏡35は、AFM32による測定箇所を探索するのに用いられる。
【0120】
次に、本発明の第3実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の検査処理について説明する。本実施形態のミラープロジェクション式検査装置の検査処理は、ミラー画像を用いた高さばらつきの検査処理と、AFMを用いた高低差のレビュー処理とに分けることができる。
【0121】
図14(A)は本発明の第3実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置の高さバラツキの検査処理を説明するためのフロー図であり、図14(B)は本発明の第3実施形態が適用されたミラープロジェクション式検査装置のAFMを用いた高低差のレビュー処理を説明するためのフロー図である。
【0122】
図14(A)を用いて、高さバラツキの検査処理を説明する。先ず、試料29が図示していない搬送部によって試料室21に搬入され、ホルダ211上に載置される(S401)。システム制御部26は、図6に示すフローを実施して、試料29の高さばらつきを検査する(S402)。そして、検査結果をコンソール端末28に出力すると共に、コンソール端末28を介してオペレータからAFMによるレビューの要否を受け付ける(S403)。
【0123】
コンソール端末28から受け取ったAFMによるレビューの要否が「要」の場合(S403でYES)、システム制御部26はコンソール端末28を介してオペレータから試料29のレビュー場所の指定(例えばレビュー場所のミラー画像の指定)を受け付ける(S404)。それから、試料29は、図示していない搬送部によって試料室21から試料室31へ搬送される(S405)。
【0124】
一方、コンソール端末28から受け取ったAFMによるレビューの要否が「否」の場合(S403でNO)、残りの試料29があるならば(S406でYES)、S401に戻る。ないならば(S406でNO)、このフローを終了する。
【0125】
図14(B)を用いて、高低差のレビュー処理を説明する。先ず、試料29が図示していない搬送部によって試料室31に搬入され、ホルダ33上に載置される(S411)。システム制御部26は、図示していないステージ制御部を制御してステージ34を移動させることにより、AFM32に試料29のS404で受け付けたレビュー場所の高低差を測定させる。そして、測定結果を、図14(A)のフローで取得したレビュー場所のミラー画像と共に、コンソール端末28に送信する。これを受けて、コンソール端末28は、レビュー場所のミラー画像および測定結果を表示する(S412)。なお、ステージ212の座標系と、ステージ34の座標系とは、予め対応関係がとれているものとする。
【0126】
ここで、ステージ212の座標系とステージ34の座標系との対応関係の調整について説明する。
【0127】
ミラープロジェクション方式による高さばらつき検査では、ステージ212とホルダ211に載置された試料29との座標補正、および光学顕微鏡213と電子光学系20との座標補正が行われる。ステージ212とホルダ211に載置された試料29との座標補正は、試料29をホルダ211に載置する際に発生する位置ズレを補正することが目的であり、上記のアラインメント処理で座標補正値(dxiopt,dyiopt)が計測される。この処理はホルダ211に試料29を載置する都度行う必要がある。一方、光学顕微鏡213と電子光学系20との座標補正は、光学顕微鏡213と電子光学系20との相対的な距離を計測することが目的であり、試料29を交換する都度ごとに行う必要はない。この相対的な距離の計測は、光学顕微鏡213および電子光学系20の調整時に行う測定である。ステージ212とホルダ211に載置された試料29との座標補正値(dxiopt,dyiopt)は試料29の検査レシピファイルの一部として、また、光学顕微鏡213と電子光学系20との座標補正値(dxins,dyins)は、ミラープロジェクション式検査装置の調整データとして、システム制御部26のメモリ等に個別に記憶される。
【0128】
AFMによる高低差の計測でも、ステージ34とホルダ33に載置された試料29との座標補正、およびAFM用光学顕微鏡35とAFM32との座標補正が行われる。ステージ34とホルダ33に載置された試料29との座標補正は、試料29をホルダ33に載置した際に発生する位置ズレを補正することが目的であり、上記のアラインメント処理と同様の処理を行うことで座標補正値(dxaopt,dyaopt)が計測される。この処理はホルダ33に試料29を搭載する都度行う必要がある。一方、AFM用光学顕微鏡35とAFM32との座標補正は、AFM用光学顕微鏡35とAFM32との相対的な距離を計測することが目的であり、試料29を交換する都度行う必要はない。この相対的な距離の計測は、AFM用光学顕微鏡213およびAFM32の調整時に行う測定である。ステージ34とホルダ33に搭載された試料29の座標補正値(dxaopt,dyaopt)は試料29の検査レシピファイルの一部として、また、AFM用光学顕微鏡35とAFM32との座標補正値(dxafm,dyafm)は、AFMの調整データとして、システム制御部26のメモリ等に個別に記憶される。
【0129】
ステージ位置測定装置241は、ステージ211の座標を(Xi+dxiopt+dxins,Yi+dyiopt+dyins)と計測する。しかし、上記の補正値(dxiopt,dyiopt)、(dxins,dyins)を保存しておくことで、ステージ241の補正座標(Xi,Yi)を算出することができる。AFMでレビューを行う場合、ステージ211の補正座標(Xi,Yi)を、ステージ34の座標(Xa,Ya)とし、上記の補正値(dxaopt,dyaopt)、(dxafm,dyafm)を用いて、ステージ34の補正座標を算出する。これにより、高さばらつき検査で検知した欠陥部
の座標に基づいてAFMでレビューを行うことが可能になる。
【0130】
さて、試料29は、レビューが終了すると、図示していない搬送部によって試料室31から搬出される(S413)。そして、S411に戻り、新しいレビュー対象の試料29が試料室31に搬入されるのを待つ(S411)。
【0131】
図15はレビュー場所のミラー画像および測定結果を模式的に表した図である。ここで、符号71はレビュー場所のミラー画像、符号72はミラー画像71中のA1-A2区間のAFMによる高低差の測定結果を示すグラフ(ラインプロファイル)、そして、符号72はミラー画像71中のB1-B2区間のAFMによる高低差の測定結果を示すグラフ(ラインプロファイル)である。ミラー画像71のコントラストは、ラインプロファイル72、73において、試料29の表面の高低差として測定される。オペレータは、この測定結果から、高さばらつき検出処理により回路パターンの高さばらつきが検出された試料29の表面の高低差を確認することができる。
【0132】
図16は図14(A)、(B)に示す処理においてコンソール端末28が表示するレビューGUI画面の一例を示す図である。図16(A)は図14(A)のS404においてレビュー条件を設定する場合のレビュー条件設定GUI画面例を示しており、図16(B)は図14(B)のS412においてレビュー結果を表示するレビュー結果表示GUI画面例を示している。
【0133】
図16(A)に示すように、レビュー条件設定GUI画面は、レビュー対象領域の位置を示すレイアウト表示窓81と、高さばらつきの抽出方法および計測方法を指定するための画像処理指定欄82と、レビュー条件を設定するためのレビュー条件設定欄83と、結果を登録するための登録設定欄84と、を有する。
【0134】
レイアウト表示窓81には、高さばらつきの検査領域811およびアラインメント場所812が表示される。画像処理指定欄82には、検査レシピ作成の際にオペレータが入力した結果がそのまま表示される。
【0135】
レビュー条件設定欄83は、レビュー時間(レビューに要する時間で許容できる最大時間)を受け付けるための入力欄と、サンプリング率(高さばらつき検査処理で検出した全ての欠陥のうちのレビューする欠陥の割合)を受け付けるための入力欄と、サンプリング方法(高さばらつき検査処理で検出した欠陥のサンプリングの仕方)と、AFMモードの指定を受け付けるための入力欄と、サンプリング数(レビュー候補の欠陥数)を受け付けるための入力欄と、レビューできる最大の欠陥数(最大レビュー点数)を表示するための表示欄と、を有する。
【0136】
ここで、最大レビュー点数は、レビュー時間、サンプリング率、およびサンプリング数により定まる。オペレータが決めたサンプリング率でレビュー候補の欠陥を全てレビューできる場合は、サンプリング数とサンプリング率との積が最大レビュー点数となる。一方、コンソール端末28は、レビュー時間以内にオペレータが決めたサンプリング率でサンプリング候補の欠陥を全てレビューできない場合、システム制御部26は、レビュー時間以内にサンプリング候補の欠陥を全てレビューできるように、サンプリング率を自動調整する。なお、サンプリング方法で「Random」を指定すると、システム制御部26は
、高さばらつき検査処理で検出した全ての欠陥の中から無作為にレビューする欠陥を決めレビューを行う。また、「特定ダイ」を指定すると、システム制御部26は、指定されたダイのみ規定の時間以内でレビューが終了するようにサンプリング率を自動調整する。更に、このサンプリング方法で指定するコマンドは、オペレータが自由に作成できるようになっている。サンプリング方法を適切に選ぶことによって、より短時間で、効果的なレビューを行うことができる。
【0137】
登録設定欄84は、高さばらつきの検査結果およびAFMによるレビュー結果の保存方法の指定を受け付けるためのチェックボタンを有する。システム制御部26は、コンソール端末28に表示されている登録設定欄84を介して、オペレータから受け付けた保存方法(データ形式)で、高さばらつきの検査結果およびAFMによるレビュー結果をメモリ等に登録する。
【0138】
図16(B)に示すように、レビュー結果表示GUI画面は、レビュー位置を示すレイアウト表示窓85と、高さばらつきの抽出方法および計測方法を指定するための画像処理指定欄86と、計測結果をリアルタイムで表示する結果表示窓87と、属性情報を表示する属性表示窓88と、を有する。
【0139】
レイアウト表示窓85には、試料29のレビュー位置851が表示される。システム制御部26は、レビュー中の位置情報をコンソール端末28に送信する。コンソール端末28は、システム制御部26から送られてきた位置情報により特定されるレビュー位置911をレイアウト表示窓85に表示する。なお、検査レシピで指定されている領域を識別できるようにレイアウト表示窓85に表示してもよい。画像処理指定欄86には、検査レシピ作成の際にオペレータが入力した結果が表示される。
【0140】
結果表示窓87は、この表示窓に表示する結果の種別を選択するための選択欄871が設けられている。この選択欄871により、オペレータは、「ミラー画像」、「逆FFT変換画像」、「光学画像」、「ヒストグラム」「AFM画像」「ラインプロファイル」の中から、任意の画像を複数選択することができる。システム制御部26は、オペレータが選択した結果を、コンソール端末28の結果表示窓87にリアルタイムで表示させる。図16(B)に示す例では、高さばらつき検査処理で取得した「逆FFT変換画像」、AFM光学顕微鏡35による「光学画像」、およびAFM33による「ラインプロファイル」の3種類の結果が表示されている。
【0141】
属性表示窓88には、レビューの実施日時、検査レシピのファイル名、検査結果の保存ファイル名、およびレビューの進行状況が表示される。これらの情報は、システム制御部26からコンソール端末28へ送信される。また、属性表示窓88は、オペレータからレビュー開始および中止の指示を受け付けるための指示ボタンが設けられている。
【0142】
以上、本発明の第3実施形態について説明した。
【0143】
本実施形態によれば、上記の第1実施形態の効果に加え、高さばらつきが検出された試料29の高低差を確認することができる。
【0144】
<第4実施形態>
本実施形態では、上記の第1乃至3実施形態のいずれかのミラープロジェクション式検査装置をインラインプロセスモニタに適用する場合について説明する。
【0145】
図17は半導体装置製造プロセスの一例を示す図である。この例では、Shallow Trench Isolation(STI)工程における基板上でのパターン形成から埋め込み後の平坦化処理までの各工程S501〜S511を簡略化して示している。本実施形態では、図17に示した半導体製造プロセス中で、パターンを形成するリソグラフィー工程(S502〜S504)と、埋め込み後の平坦化工程(S509〜S511)に、上記の第1乃至第3実施形態のいずれかのミラープロジェクション式検査装置を適用した場合を説明する。
【0146】
図17に示した半導体装置製造プロセスについて簡単に説明する。
【0147】
先ず、基板エッチングの際マスクとなるハードマスクを形成する(S501)。このハードマスクは、平坦化工程(S509〜S511)におけるChemical and Mechanical Polishing(以後、CMPと略す)処理の終点判定(ストッパー)としての役割も同時に果たす。次に、レジストを塗布した後(S502)、ステッパーを用いてパターンを露光し(S503)、現像処理によりエッチングする箇所のレジストを除去する(S504)。ここまで工程で基板表面にパターンが形成される。
【0148】
次に、レジストが除去された箇所をエッチングしてハードマスクを除去し(S505)、それから、基板のエッチングを行う(S506)。次に、酸化膜を形成した後(S507)、絶縁材料の埋め込み処理を行う(S508)。
【0149】
最後に、CMPによる平坦化処理を経てから(S509)、ウェットエッチングでハードマスクを除去し(S510)、洗浄を経て(S511)、次の工程へとウェハが進められる。
【0150】
上記の第1乃至第3実施形態のいずれかのミラープロジェクション式検査装置をリソグラフィー工程(S502〜S504)に適用する場合について説明する。
【0151】
リソグラフィー工程(S502〜S504)では、レジスト塗布時の微粒子混入(膜中異物)や、レジスト表面のスクラッチ、表面凹凸が問題となる。これらは露光の解像度劣化の原因になる。そこで、レジストを塗布した後、または現像後の工程において、上記の第1乃至第3実施形態のいずれかのミラープロジェクション式検査装置を用いて高さばらつきを検査することにより、膜中異物や表面凹凸を検知することができる。そして、検知結果をレジスト塗布の工程にフィードバックすることで半導体製造プロセスのモニタとしての機能を実現できる。
【0152】
上記の第1乃至第3実施形態のいずれかのミラープロジェクション式検査装置を平坦化工程(S509〜S511)に適用する場合について説明する。なお、本実施形態では、CMP処理による平坦化工程後の洗浄工程で、上記の第1乃至第3実施形態のいずれかのミラープロジェクション式検査装置を用いて高さばらつきを検査する場合を説明する。しかし、エッチバック等のCMP以外の平坦化工程で、上記の第1乃至第3実施形態のいずれかのミラープロジェクション式検査装置を用いて高さばらつきを検査することもできる。
【0153】
さて、洗浄工程S511では、CMP処理時に用いたスラリーの洗浄残りや、CMP処理時に発生したスクラッチ、および基板のパターン形状に起因した局所的な表面凹凸が問題となる。これらは、この後のリソグラフィー工程での解像度劣化や、完成したデバイスでの電気特性不良の原因となる。上記のリソグラフィー工程の場合と同様に、平坦化工程において、上記の第1乃至第3実施形態のいずれかのミラープロジェクション式検査装置を用いて高さばらつきを検査することにより、半導体製造プロセスの高精度な管理を実現できる。例えば、スラリー残りは洗浄工程に原因があるため、これを検知した場合は洗浄工程の見直しが必要になる。一方、スクラッチや表面凹凸はCMP処理に原因があるため、これらを検知した場合はCMP処理を見直す必要がある。
【0154】
したがって、上記の第1乃至第3実施形態のいずれかのミラープロジェクション式検査装置を用いてこれらの不良を検知し、半導体製造プロセスにフィードバックすることにより、開発段階の半導体製造プロセスでは歩留りの向上を実現し、量産段階の半導体プロセスでは歩留りの劣化を早期に発見することができる。また、現在の半導体製造プロセスで用いられるレジスト材料、Low−k材料等は電子線照射による劣化が懸念されるが、ミラープロジェクション式検査装置ではウェハ表面のごく近傍で電子線を引き戻す為、材料の劣化が起こらないという利点がある。つまり、上記の第1乃至第3実施形態のいずれかのミラープロジェクション式検査装置を用いることでダメージレスインラインプロセスモニタを実現できる。
【0155】
図18は検査結果のデータ管理において、コンソール端末28が表示するデータ管理GUI画面の一例を示す図である。図18(A)は一つ検査結果をデータ解析するためのGUI画面であり、半導体製造プロセスの開発段階のように、ウェハを大量に検査するよりも、検査結果を詳細に解析して、製造プロセスの問題点を早期に発見する場合に適している。一方、図18(B)は同一工程の検査結果を統計的に解析するためのGUI画面であり、量産段階での半導体製造プロセスのプロセスモニタとして検査結果を解析するのに適している。なお、これらのデータ解析は、コンソール端末28あるいはシステム制御部26が行う。
【0156】
図18(A)に示すように、一つ検査結果をデータ解析するためのGUI画面は、検査対象領域の位置を示すレイアウト表示窓91と、検査結果を選択するための検査結果指定欄92と、レビューの結果を表示するためのレビュー結果表示窓93と、検査結果の解析結果を表示するための解析結果表示窓94と、を有する。
【0157】
レイアウト表示窓91には、検査結果である欠陥のウェハ面内分布が表示される。オペレータがレイアウト表示窓91に設けられている選択ボタンを操作して「ウェハ」および「ダイ」のどちらかを選択することで、ウェハ全体を表示したり、1つのダイを表示したり切り替えることができる。
【0158】
検査結果指定欄92は、オペレータより表示する検査結果のファイルの選択を受け付ける。検査結果指定欄92内のプルダウンボタンを選択すると過去の検査結果の一覧が表示され、オペレータは任意に検査結果を選択することができる。
【0159】
レビュー結果表示窓93には、欠陥レビューの結果が、上述のレビュー条件設定GUI画面で選択した項目と共に表示される。図18(A)では、レビュー条件として、ミラー画像の保存とAFMによるラインプロファイルが選択された場合を示している。レビュー結果表示窓93内のプルダウンボタンを選択することで、システム制御部26に保存されたレビューの結果の一覧がIDナンバーごとに表示され、オペレータはこの一覧の表示から任意に表示したい欠陥を選択することができる。
【0160】
解析結果表示窓94には、オペレータが検査結果の解析を行うのに必要な情報が表示される。図18(A)では、解析に用いる情報としてヒストグラムの半値幅と発生頻度の関係を表示している。ここで、ヒストグラム半値幅は上記のフィルタパターン方法による検査結果のヒストグラム半値幅を示しており、取得した画像領域のコントラストのバラつきを示す。また、発生頻度とは、ヒストグラム半値幅が同じ領域がどれだけあるかを示している。さらに、検査時に得られたミラー画像から、欠陥判定を行う機能を有効にしている場合、各欠陥の分布も重ねて表示される仕組みになっている。オペレータは、この解析結果表示窓94とレビュー結果表示窓93とを見ながら、欠陥判定の閾値を、グラフ上のマーカをスライドさせるか、プルダウンボタンで選択することで、任意に設定でき、その結果、欠陥発生箇所がレイアウト表示窓91内の欠陥のウェハ面内分布に反映される仕組みになっている。
【0161】
図18(B)に示すように、検査結果を統計的に解析するためのGUI画面は、検査結果のファイル構成を示すファイル構成表示窓95と、検査結果を表示するための検査結果表示窓96と、解析結果を表示するための解析結果表示窓97と、統計・解析方法を選択するための統計・解析方法選択欄98と、を有する。
【0162】
ファイル構成表示窓95には、システム制御部26のメモリ等に保存されている検査結果ファイルが階層表示される。図18(B)では、Root階層951、品種フォルダ952、工程フォルダ953のように品種、工程別にフォルダが設けられており。工程フォルダ953の下に同一品種、同一工程の検査結果ファイル954が保存されている。オペレータは、ファイル構成表示窓95から解析したい所望の検査結果ファイル954を選択することができる。図18(B)では、検査欠陥ファイル954の「A」から「D」までが選択されており、その解析結果が解析結果表示窓97に表示されている。
【0163】
検査結果表示窓96には、ファイル構成表示窓95で選択した検査結果ファイル954のうちの一つを選択するためのプルダウンボタンが設けられている。オペレータが検査結果ファイルをプルダウンボタンで選択すると、その内容が表示される。
【0164】
解析結果表示窓97には、後述する解析方法選択欄98で選択した統計・解析方法に従って、ファイル構成表示窓95で選択された検査結果ファイル954の統計・解析結果が表示される。図18(B)では、上段、下段に分離して2種類の統計・解析結果が表示されている。上段では、欠陥分類結果が検査結果ごとにテーブル表示され、下段では検査日時と欠陥分類との関係がグラフ表示されている。
【0165】
統計・解析方法選択欄98には、上記の統計・解析結果表示窓97へ表示する検査結果ファイルの統計・解析方法を指定するためのプルダウンボタン、チェックリストが設けられている。オペレータは、プルダウンボタンで統計・解析結果表示画面97の窓数を任意に決めることができる。また、結果の表示方法として、テーブル表示およびグラフ表示のいずれかをチェックボックスで選択することができる。
【0166】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0167】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。例えば、図16や図18で説明したGUI画面は、実施形態1〜4で説明した各装置に対して適用しても良い。また、上記の各実施形態で説明したGUI画面は一例に過ぎず、他の要素によりGUI画面を構成してもよい。あるいは、上記の各実施形態のミラープロジェクション式検査装置の各制御部は、1つのコンピュータシステムで実現してもよいし、あるいはまた、複数台のコンピュータシステムをネットワークで連携させることで実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0168】
20:電子光学系、21:試料室、23:帯電制御部、24:ステージ制御部、25:電子光学系制御部、26:システム制御部、27:画像処理部、28:コンソール端末、29:試料、31:試料室、32:AFM、33:ホルダ、34:ステージ、35:AFM用光学顕微鏡、201:照射光学系、202:結像光学系、203:投影光学系、211:ホルダ、212:ステージ、213:光学顕微鏡、231:帯電制御電極、241:主制御装置、242:リターディング電源、243:ステージ位置測定装置、244:ステージ駆動装置、251:主制御装置、252:照射光学系制御装置、253:投影光学
系制御装置、271:画像形成装置、272:画像処理演算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の高さ方向のばらつきを検査する検査装置であって、
試料を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された試料を帯電処理する帯電処理手段と、
前記保持手段に保持された試料に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記電圧印加手段により電圧が印加された試料に向けて電子線を照射して、試料の表面近傍で引き戻されたミラー電子を結像させる電子光学系と、
前記ミラー電子を結像させることで得られたミラー画像を画像処理する画像処理手段と、を有し、
前記画像処理手段は、
前記ミラー電子を結像させることで得られたミラー画像と、予め用意された標準品のミラー画像との差に応じた情報を、試料の高さ方向のばらつきとして出力すること
を特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記画像処理手段は、
前記ミラー電子を結像することで得られたミラー画像をフリーエ変換してフーリエ変換画像を生成する処理と、
当該フーリエ変換画像と、予め用意された、前記標準品のミラー画像のフーリエ変換画像から高低差に関する情報を除去するためのフィルタパターンとを合成して合成画像を生成する処理と、
当該合成画像を逆フーリエ変換して逆フーリエ変換画像を生成し、当該逆フーリエ変換画像を前記差に応じた情報として出力する処理と、を行うこと
を特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置であって、
前記画像処理手段は、
前記逆フーリエ変換画像のスペクトルを解析してヒストグラムを出力する処理をさらに行うこと
を特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記画像処理手段は、
前記ミラー電子を結像することで得られたミラー画像と、前記標準品のミラー画像との差分を表す差画像を生成する処理と、
前記差画像を構成する各画素を2値化して2値化画像を生成し、当該2値化画像を前記差に応じた情報として出力する処理と、を行うこと
を特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の検査装置であって、
前記画像処理手段は、
前記2値化画像を構成する白画素と黒画素との割合を計算して出力する処理をさらに行うこと
を特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の検査装置であって、
前記電子光学系の光学条件を試料の高さ情報に対応付けて記憶する記憶手段と、
前記差に応じた情報から識別可能な高さ方向のばらつきがある試料の領域よりも低い解像度で試料の高さを計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された高さに対応付けられて前記記憶手段に記憶されている光学条件を前記電子光学系に設定する設定手段と、をさらに有すること
を特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検査装置であって、
異なる高さを持つ試料片からなる高さ補正用標準品をさらに有し、
前記保持手段は、
前記高さ補正用標準品をさらに保持し、
前記記憶手段には、
前記保持手段に保持された高さ補正用標準品の各試料片のミラー画像を前記電子光学系で撮像した場合の光学情報が、各試料片に高さに対応付けられて記憶されること
を特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の検査装置であって、
前記試料を保持するAFM用保持手段と、
前記AFM用保持手段に保持された試料の高さ方向の形状を測定するAFM(Atomic Force Microscopy)と、をさらに有すること
を特徴とする検査装置。
【請求項9】
試料の高さ方向のばらつきを検査するためのコンピュータで読取り可能なプログラムであって、
前記プログラムは、コンピュータを、
電圧が印加された試料に向けて電子線を照射して、前記試料の表面近傍で引き戻されたミラー電子を結像させることで得られたミラー画像を取得する手段、および
前記ミラー電子を結像させることで得られたミラー画像と、予め用意された標準品のミラー画像との差に応じた情報を生成し、当該情報を前記試料の高さ方向のばらつきとして出力する手段として、機能させること
を特徴とするコンピュータで読取り可能なプログラム。
【請求項10】
試料の高さ方向のばらつきを検査する検査方法であって、
試料を帯電処理し、
前記帯電処理された試料に電圧を印加し、
前記電圧が印加された試料に向けて電子線を照射して、試料の表面近傍で引き戻されたミラー電子を結像させ、
前記ミラー電子を結像させることで得られたミラー画像と、予め用意された標準品のミラー画像との差に応じた情報を、試料の高さ方向のばらつきとして出力すること
を特徴とする検査方法。
【請求項11】
請求項10に記載の検査方法であって、
前記試料は、半導体装置製造プロセス中の半導体ウエハであること
を特徴とする検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−228311(P2011−228311A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136946(P2011−136946)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【分割の表示】特願2006−50853(P2006−50853)の分割
【原出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】