説明

検査装置および検査方法

【課題】光学画像の歪みを最小限にして、高い検査精度を実現可能な検査装置および検査方法を提供する。
【解決手段】検査装置100において、光源1からマスク22に照射された光は、マスク22を透過した後、レンズ4を介しミラー25で反射してラインセンサ5に結像する。ステージ2の位置はレーザ側長システム7aで測定され、拡大光学系200の位置はレーザ側長システム7bで測定される。得られたステージ2の位置と拡大光学系200の位置との差分に基づき、ミラー制御部26によってミラー25の角度が制御される。また、これらの差分に基づき、ステージ制御部15によってステージ2の移動速度が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置および検査方法に関し、より詳しくはレチクルやフォトマスクなどの欠陥検出に用いられる検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造における歩留まり低下の原因の1つに、フォトリソグラフィ工程で用いられるレチクルやフォトマスク(以下、マスクと総称する。)に生じた欠陥や異物がある。そこで、こうした欠陥や異物を検出する検査装置の開発が盛んに行われている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された検査装置では、光源から出射された光が光学系を介してマスクに照射される。マスクはステージ上に載置されており、ステージが移動することによって照射された光がマスク上を走査する。マスクを透過または反射した光はレンズを介して画像センサ上に結像し、画像センサで撮像された光学画像は測定データとして比較部へ送られる。比較部では、測定データと参照データとが適当なアルゴリズムにしたがって比較される。そして、これらのデータが一致しない場合には欠陥ありと判定される。
【0004】
しかしながら、従来の検査装置では、画像センサで撮像される光学画像に歪みが生じるという問題があった。光学画像が歪むと、正確な測定データが得られなくなって検査精度が低下する。
【0005】
上記問題の原因としては、ステージの振動や光学系の振動が挙げられる。そこで、従来より、検査装置を徐振台の上に載置して、ステージや光学系の振動を抑制することが行われている。しかし、この方法の場合、振動の抑制効果を高めようとすると除振台の剛性を高くすることが必要になって、装置全体の重量が増加するという問題があった。
【0006】
こうした問題に対して、特許文献2には、検査装置が振動することで発生する撮像部の映像信号の揺れを補正で是正することが記載されている。具体的には、画像処理部で撮像部の映像信号の揺れが検出されると、制御部によって撮像部の撮像素子の走査領域が変更される。すなわち、フレーム間の動きベクトルが検出されると、制御部は、撮像素子の有効走査領域を検出された動きベクトルの分だけシフトするような制御信号を出力する。これにより、モニタ上では揺れの低減された表示画像が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−112178号公報
【特許文献2】特開2003−215460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、撮像部には、CCDを用いたTVカメラが使用される。CCDの撮像面には対物レンズによって拡大された被写体の像が結像する。CCDは、光の強弱の光学像をその強弱に応じた映像信号に変換して出力する。
【0009】
特許文献2に記載された検査装置では、検査装置が振動することで発生する撮像部で撮像される画像の揺れを補正する補正処理手段を有する。この補正処理手段は同じ箇所において時系列的に出力される画像を比較して揺れ(画像のずれ)を検出し、画像に対して補正処理を行う。したがって、振動に起因する光学画像の歪みを十分には解消できず、検査精度の低下を抑制できないおそれがあった。
【0010】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、光学画像の歪みを最小限にして、高い検査精度を実現可能な検査装置および検査方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の検査装置は、光源と、
検査対象が載置されるステージと、
光源からの光を検査対象に照射する第1の光学系と、
検査対象を透過または反射した光を結像する第2の光学系と、
ステージの位置を測定する第1の測定部と、
第2の光学系の位置を測定する第2の測定部と、
第2の光学系に結像した光学画像に基づいて検査対象の検査を行う検査部とを有し、
第2の光学系は、センサと、検査対象を透過または反射した光をセンサに結像するレンズと、センサとレンズの間に配置されるミラーとを備えており、
第1の測定部で得られたステージの位置と、第2の測定部で得られた第2の光学系の位置との差分に基づいて、ミラーの角度を変えるミラー制御部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の検査装置は、第1の測定部で得られたステージの位置と、第2の測定部で得られた第2の光学系の位置との差分に基づいて、ステージの移動速度を制御するステージ制御部を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明の検査装置において、ミラーには、レンズを透過した光が入射する第1のミラーと、第1のミラーで反射した光が入射する第2のミラーとがあり、
ミラー制御部は、第1の測定部で得られたステージの位置と、第2の測定部で得られた第2の光学系の位置とのX方向の差分に基づいて、第1のミラーおよび第2のミラーのいずれか一方の角度を変えるとともに、第1の測定部で得られたステージの位置と、第2の測定部で得られた第2の光学系の位置とのY方向の差分に基づいて、他方の角度を変えることが好ましい。
【0015】
本発明の検査方法は、ステージ上に載置された検査対象に光を照射し、検査対象を透過または反射した光をレンズを介しミラーで反射させた後にセンサに結像して得られる光学画像に基づき検査対象を検査する検査方法であって、
ステージの位置と光学系の位置を測定し、これらの位置の差分に基づいてミラーの角度を変えることが好ましい。
【0016】
本発明の検査方法において、レンズを透過した光は、第1のミラーで反射し、さらに第2のミラーで反射した後にセンサに結像し、
ステージの位置と光学系の位置を測定し、これらの位置の差分に基づいて第1のミラーの角度と第2のミラーの角度を変えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の検査装置によれば、光学画像の歪みを最小限にして、高い検査精度を実現可能な検査装置が提供される。
【0018】
本発明の検査方法によれば、光学画像の歪みを最小限にして、高い検査精度を実現可能な検査装置および検査方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態における検査装置のシステム構成図の例である。
【図2】本実施の形態でステージと拡大光学系の構成を説明する概念図である。
【図3】本実施の形態における光学画像の取得方法を説明する概念図である。
【図4】(a)はミラーによる調整前の光学画像、(b)はミラーによる調整後の光学画像である。
【図5】本実施の形態における検査装置のシステム構成図の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における検査装置のシステム構成図である。本実施の形態においては、フォトリソグラフィ法などで使用されるマスクを検査対象としている。
【0021】
図1に示すように、検査装置100は、光学画像取得部Aと制御部Bを有する。
【0022】
光学画像取得部Aは、光源1と、水平方向(X方向、Y方向)および回転方向(θ方向)に移動可能なステージ2と、透過照明系を構成する第1の光学系としての照明光学系3と、第2の光学系としての拡大光学系200を構成するレンズ4、ミラー25およびラインセンサ5と、センサ回路6と、レーザ測長システム7a、7bと、オートローダ8とを有する。尚、図1では、ステージ2が光源1から鉛直方向に配置されているが、これに限られるものではない。例えば、光源1から出射した光の光路上に適当なミラーを配置し、このミラーによって光がステージ2に対して垂直に入射するようにしてもよい。
【0023】
制御部Bでは、制御計算機9が、バス10を介して、ミラー制御部26、位置情報部11、比較部12、参照部13、オートローダ制御部14、ステージ制御部15、磁気ディスク装置16、磁気テープ装置17、フレキシブルディスク装置18、CRT19、パターンモニタ20およびプリンタ21に接続されている。ステージ2は、ステージ制御部15によって制御されたX軸モータ、Y軸モータおよびθ軸モータによって駆動される。これらのモータには、例えば、ステップモータを用いることができる。
【0024】
尚、図1では、本実施の形態で必要な構成成分を記載しているが、マスクを検査するのに必要な他の公知成分が含まれていてもよい。
【0025】
検査装置100では、光源1、ステージ2、照明光学系3、レンズ4、ミラー25およびラインセンサ5によって、高倍率の検査光学系が構成されている。ステージ2は、制御計算機9の制御の下に、ステージ制御部15によって駆動され、X方向、Y方向およびθ方向の3方向に移動可能である。また、ステージ2の上に載置されたマスク22は、オートローダ制御部14によって駆動されるオートローダ8から自動的に搬送されて、検査終了後には自動的に搬出されるようになっている。
【0026】
図2は、拡大光学系200付近の拡大図である。この図に示すように、ステージ2はモータ107によって動作され、モータ107は支持部材101に支持されている。また、レンズ4、ミラー25およびラインセンサ5は、支持部材である鏡筒102に支持されている。尚、図示を省略するが、ミラー25を所望の角度に調節する角度調節部25aは、図1のミラー制御部26に電気的に接続する部材に接続する。
【0027】
ステージ2の位置を測定する第1の測定部としてのレーザ側長システム7aは、支持部材103に支持されている。そして、支持部材101、103、鏡筒102は、いずれも基台104の上に載置されている。したがって、基台104が温度変化によって伸縮したり変形したりすると、これらの間の距離が変化し、ステージ2と拡大光学系200との相対的な位置関係に変動が起きる。このため、ステージ2の位置のみを測定して画像位置を特定したのでは、拡大光学系200のずれが加味されず、画像位置が実際の位置からずれてしまう。そこで、本実施の形態においては、レーザ測長システム7aに加えて、拡大光学系200の位置を測定する第2の測定部としてのレーザ測長システム7bを設ける。レーザ測長システム7bは、レーザ測長システム7aと同様に支持部材103によって支持される。
【0028】
図2におけるレーザ側長システム7aは、ステージ2のX方向とY方向の各位置を測定する。このため、レーザ側長システム7aは、ステージ2のX方向の位置を測定するレーザ干渉計(図示せず)と、Y方向の位置を測定するレーザ干渉計(図示せず)とを有する。これらのレーザ干渉計から照射されたレーザ光は、ミラー105で反射される。
【0029】
また、レーザ側長システム7bは、拡大光学系200のX方向とY方向の各位値を測定する。このため、レーザ側長システム7aと同様に、レーザ側長システム7bは、拡大光学系200のX方向の位置を測定するレーザ干渉計(図示せず)と、Y方向の位置を側定するレーザ干渉計(図示せず)とを有する。これらのレーザ干渉計から照射されたレーザ光は、ミラー106で反射される。
【0030】
得られたステージ2の移動位置は、レーザ測長システム7aから位置情報部11に送られる。また、拡大光学系200の移動位置は、レーザ側長システム7bから位置情報部11に送られる。
【0031】
ステージ2上に載置されたマスク22には、所定のパターン(図示せず)が形成されており、光源1からの照明光23が照明光学系3を介してこのパターンに照射される。マスク22を透過した光は、レンズ4を経て、ミラー25で光路を所定の角度に曲げられた後、ラインセンサ5に光学像として結像する。尚、ラインセンサ5としては、時間遅延積分型(TDI)センサが好適である。
【0032】
図3は、本実施の形態における光学画像の取得手順の説明図である。
【0033】
マスク22上の被検査領域は、図3に示すように、Y方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数のストライプSに仮想的に分割される。検査装置においては、各ストライプSが連続的に走査されるようにステージ2の動作が制御される。すなわち、ステージ2の移動によって、ラインセンサ5が相対的にX方向に連続移動しながら、光学画像が取得されていく。ラインセンサ5は、スキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。具体的には、1つのストライプの画像を撮像した後、スキャン幅WだけY方向にずれた位置で、先程とは逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。
【0034】
しかしながら、ステージ2や拡大光学系200が振動すると、ラインセンサ5によって取得される光学画像が所定の位置からずれてしまう。例えば、振動の影響がない場合には、1つの光学画像を撮像した後に、Y方向には移動せずに所定の幅だけX方向にずれた位置で光学画像が撮像される。これにより、図4(a)に示すような光学画像が得られる。しかし、振動が生じると、撮像した1つの光学画像に対して、次に撮像される光学画像が、Y方向に移動したり、X方向に所定の幅からずれて移動したりする。その結果、得られる光学画像に歪みが生じる。例えば、Y方向への移動が生じると、光学画像は図4(b)に示すように歪んだものとなる。
【0035】
図3でX方向のずれは、光学画像を撮像するタイミングを調整することである程度補正できる。具体的には、算出したずれ量に応じてステージを移動する速度を調整する。これにより、X方向のずれを補正可能である。しかし、Y方向のずれはこの方法では補正できない。そこで、本実施の形態においては、図1で、拡大光学系200を透過した光がミラー25で光路を所定の角度に曲げられた後にラインセンサ5に結像するようにする。ここで、所定の角度とは、Y方向のずれを補正するのに適当な値である。具体的には、次のようにして補正する。
【0036】
図1で説明したように、ステージ2の移動位置は、レーザ測長システム7aから位置情報部11に送られる。また、拡大光学系200の移動位置も、レーザ側長システム7bから位置情報部11に送られる。ここで、移動位置は、例えば、位置ベクトルで表すことができる。位置情報部11では、ステージ2のY方向の座標Yと、拡大光学系200のY方向の座標Yとの差分(Y−Y)を演算し、その結果をミラー制御部26に出力する。ミラー制御部26は、入射光に対するミラー25の角度を制御する。ここで、入射光とは、レンズ4を透過してミラー25に入射する光のことである。具体的には、ミラー25の向きを差分(Y−Y)に対応する角度に調整して、ラインセンサ5にY方向の歪みの低減された光学画像が結像するようにする。
【0037】
一方、X方向の歪みについては、ステージ2のX方向の座標Xと、拡大光学系200のX方向の座標Xとの差分(X−X)を演算し、その結果をステージ制御部15に出力する。ステージ制御部15は、ステージ2の移動速度を調整して、ラインセンサ5にX方向の歪みの低減された光学画像が結像するようにする。
【0038】
次に、本実施の形態の検査装置を用いた検査方法について説明する。
【0039】
図1で、マスク22を透過した照明光23は、レンズ4を経て、ミラー25で光路を所定の角度に曲げられた後、ラインセンサ5に結像する。結像したパターンの像は、光電変換され、さらにセンサ回路6でA/D(アナログデジタル)変換される。その後、ラインセンサ5の各画素データは、位置情報部11から出力されたステージ2上でのマスク22の位置を示すデータとともに、比較部12に送られる。測定データは、例えば、8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。
【0040】
図1の参照部13では、参照データ(参照画像)が作成される。具体的には、参照部13において、磁気ディスク装置16から制御計算機9を通してマスク22の設計データが読み出される。読み出されたデータは、2値または多値のイメージデータに変換されて参照データとなる。この参照データは、比較部12に送られる。
【0041】
比較部12では、まず、測定データと参照データの位置合わせが行われる。次いで、測定データの各画像データと、参照データの参照画素データとを、所定のアルゴリズムにしたがって比較して欠陥の有無を判定する。比較結果は、例えば、磁気ディスク装置16、磁気テープ装置17、フレキシブルディスク装置18、CRT19、パターンモニタ20またはプリンタ21に出力される。尚、これら以外の外部の機器に出力されるようにしてもよい。
【0042】
上記は、ダイ・ツー・データベース検査の例であるが、ダイ・ツー・ダイ検査を行う場合には、次のようにして行う。
【0043】
被検査試料とともに撮像された参照試料の測定データ(参照画像)が、位置情報部11から出力されたステージ2上でのマスク22の位置を示すデータとともに、比較部12に送られる。そして、比較部12内で、まず、測定データと参照データの位置合わせが行われる。次いで、測定データの各画像データと、参照データの参照画素データとを、所定のアルゴリズムにしたがって比較して欠陥の有無を判定する。比較結果は、例えば、磁気ディスク装置16、磁気テープ装置17、フレキシブルディスク装置18、CRT19、パターンモニタ20またはプリンタ21に出力される。尚、これら以外の外部の機器に出力されるようにしてもよい。
【0044】
以上述べたように、本実施の形態によれば、レンズ4を透過した光がミラー25で光路を所定の角度に曲げられた後にラインセンサ5に結像するようにする。そして、ステージ2の位置と、拡大光学系200の位置との差分に対応する角度にミラー25の向きを調整して、ラインセンサ5に歪みの低減された光学画像が結像するようにする。したがって、検査精度の向上を図ることができる。
【0045】
実施の形態2.
実施の形態1では、図1に示すミラー25を用いて、図4(b)のY方向のずれを補正している。これに対し、本実施の形態では、2つのミラーを用いてX方向とY方向の2方向の歪みを低減する。
【0046】
図5は、本実施の形態における検査装置のシステム構成図である。図5で図1と同じ符号を付した部分は、図1と同じものであることを示している。また、本実施の形態の検査対象は、実施の形態1と同様に、フォトリソグラフィ法などで使用されるマスクとすることができる。
【0047】
図5において、検査装置300の光学画像取得部Aは、光源1と、水平方向(X方向、Y方向)および回転方向(θ方向)に移動可能なステージ2と、透過照明系を構成する第1の光学系としての照明光学系3と、第2の光学系としての拡大光学系200を構成するレンズ4、ミラー25(第1のミラー)、ミラー27(第2のミラー)およびラインセンサ5と、センサ回路6と、レーザ測長システム7a、7bと、オートローダ8とを有する。尚、図5では、ステージ2が光源1から鉛直方向に配置されているが、これに限られるものではない。例えば、光源1から出射した光の光路上に適当なミラーを配置し、このミラーによって光がステージ2に対して垂直に入射するようにしてもよい。
【0048】
検査装置300の制御部Bでは、制御計算機9が、バス10を介して、ミラー制御部26、位置情報部11、比較部12、参照部13、オートローダ制御部14、ステージ制御部15、磁気ディスク装置16、磁気テープ装置17、フレキシブルディスク装置18、CRT19、パターンモニタ20およびプリンタ21に接続されている。ステージ2は、ステージ制御部15によって制御されたX軸モータ、Y軸モータおよびθ軸モータによって駆動される。これらのモータには、例えば、ステップモータを用いることができる。
【0049】
尚、図5では、本実施の形態で必要な構成成分を記載しているが、マスクを検査するのに必要な他の公知成分が含まれていてもよい。
【0050】
検査装置300では、光源1、ステージ2、照明光学系3、レンズ4、ミラー25、ミラー27およびラインセンサ5によって、高倍率の検査光学系が構成されている。ステージ2は、制御計算機9の制御の下に、ステージ制御部15によって駆動され、X方向、Y方向およびθ方向の3方向に移動可能である。また、ステージ2の上に載置されたマスク22は、オートローダ制御部14によって駆動されるオートローダ8から自動的に搬送されて、検査終了後には自動的に搬出されるようになっている。
【0051】
ステージ2と拡大光学系200の各位置は、第1の測定部としてのレーザ側長システム7aと、第2の測定部としてのレーザ側長システム7bとによって測定される。そして、得られた情報は、それぞれ位置情報部11に送られる。
【0052】
ステージ2上に載置されたマスク22には、所定のパターン(図示せず)が形成されており、光源1からの照明光23が照明光学系3を介してこのパターンに照射される。マスク22を透過した光は、レンズ4を経て、ミラー25とミラー27によって光路を所定の角度に曲げられた後、ラインセンサ5に光学像として結像する。ラインセンサ5としては、時間遅延積分型(TDI)センサが好適である。
【0053】
次に、本実施の形態の検査装置を用いた検査方法について説明する。
【0054】
図5で、マスク22を透過した照明光23は、レンズ4を経て、ミラー25で光路を所定の角度に曲げられる。ここで、所定の角度とは、Y方向のずれを補正するのに適当な値である。具体的には、次のようにして補正する。
【0055】
図5に示すように、ステージ2の移動位置は、レーザ測長システム7aから位置情報部11に送られる。また、拡大光学系200の移動位置も、レーザ側長システム7bから位置情報部11に送られる。ここで、移動位置は、例えば、位置ベクトルで表すことができる。位置情報部11では、ステージ2のY方向の座標Yと、拡大光学系200のY方向の座標Yとの差分(Y−Y)を演算し、その結果をミラー制御部28に出力する。ミラー制御部28は、入射光に対するミラー25の角度を制御する。ここで、入射光とは、拡大光学系200を透過してミラー25に入射する光のことである。具体的には、ミラー25の向きを差分(Y−Y)に対応する角度に調整する。
【0056】
本実施の形態では、ミラー25で反射した光をミラー27に入射させ、ミラー27でさらに光路を所定の角度に曲げる。ここで、所定の角度とは、X方向のずれを補正するのに適当な値である。具体的には、次のようにして補正する。
【0057】
上述の通り、レーザ側長システム7a、7bで測定されたステージ2と拡大光学系200の移動位置は、位置情報部11に送られる。そして、位置情報部11では、ステージ2のX方向の座標Xと、拡大光学系200のX方向の座標Xとの差分(X−X)を演算し、その結果をミラー制御部28に出力する。ミラー制御部28は、入射光に対するミラー27の角度を制御する。すなわち、ミラー制御部28は、ミラー25の制御に加えてミラー27の制御も行う。ここで、入射光とは、ミラー25で反射してミラー27に入射する光のことである。具体的には、ミラー27の向きを差分(X−X)に対応する角度に調整する。
【0058】
ミラー27で反射した光は、ラインセンサ5に結像する。結像したパターンの像は、光電変換され、さらにセンサ回路6でA/D(アナログデジタル)変換される。その後、ラインセンサ5の各画素データは、位置情報部11から出力されたステージ2上でのマスク22の位置を示すデータとともに、比較部12に送られる。測定データは、例えば、8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。
【0059】
図5の参照部13では、参照データ(参照画像)が作成される。具体的には、参照部13において、磁気ディスク装置16から制御計算機9を通してマスク22の設計データが読み出される。読み出されたデータは、2値または多値のイメージデータに変換されて参照データとなる。この参照データは、比較部12に送られる。
【0060】
比較部12では、まず、測定データと参照データの位置合わせが行われる。次いで、測定データの各画像データと、参照データの参照画素データとを、所定のアルゴリズムにしたがって比較して欠陥の有無を判定する。比較結果は、例えば、磁気ディスク装置16、磁気テープ装置17、フレキシブルディスク装置18、CRT19、パターンモニタ20またはプリンタ21に出力される。尚、これら以外の外部の機器に出力されるようにしてもよい。
【0061】
上記は、ダイ・ツー・データベース検査の例であるが、ダイ・ツー・ダイ検査を行う場合には、次のようにして行う。
【0062】
被検査試料とともに撮像された参照試料の測定データ(参照画像)が、位置情報部11から出力されたステージ2上でのマスク22の位置を示すデータとともに、比較部12に送られる。そして、比較部12内で、まず、測定データと参照データの位置合わせが行われる。次いで、測定データの各画像データと、参照データの参照画素データとを、所定のアルゴリズムにしたがって比較して欠陥の有無を判定する。比較結果は、例えば、磁気ディスク装置16、磁気テープ装置17、フレキシブルディスク装置18、CRT19、パターンモニタ20またはプリンタ21に出力される。尚、これら以外の外部の機器に出力されるようにしてもよい。
【0063】
以上述べたように、本実施の形態によれば、レンズ4を透過した光が、ミラー25で光路を所定の角度に曲げられた後、さらにミラー27で光路を所定の角度に曲げられてから、ラインセンサ5に結像するようにする。これにより、X方向とY方向の両方についての歪みが低減された光学画像が得られる。したがって、ステージ2の移動速度を調整することによって光学画像の歪みを調整する必要がなくなる。尚、上記例では、ミラー25でY方向の歪みを、ミラー27でX方向の歪みをそれぞれ調整したが、ミラー25でX方向の歪みを調整し、ミラー27でY方向の歪みを調整してもよい。
【0064】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0065】
例えば、実施の形態1および実施の形態2では、光源から出射された光が光学系を介してマスクに照射された後、マスクを透過した光がレンズとミラーを介してセンサに結像する例について述べた。しかし、本発明は、これに限られるものではなく、光源から出射された光が光学系を介してマスクに照射された後、マスクを反射した光がレンズとミラーを介してセンサに結像する場合にも適用可能である。この場合にも、上記例と同様に、センサで撮像された光学画像は測定データとして比較部へ送られ、比較部では、測定データと参照データとが適当なアルゴリズムにしたがって比較される。そして、これらのデータが一致しない場合には欠陥ありと判定される。
【0066】
また、画像のずれの補正はミラーの角度を制御するミラー制御手段による具体例に限定されるものではなく、他の光学系(例えばレンズ)を制御する機構を採用するなど必要な構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
100、200 検査装置
1 光源
2 ステージ
3 照明光学系
4 レンズ
5 ラインセンサ
6 センサ回路
7a、7b レーザ測長システム
8 オートローダ
9 制御計算機
10 バス
11 位置情報部
12 比較部
13 参照部
14 オートローダ制御部
15 ステージ制御部
16 磁気ディスク装置
17 磁気テープ装置
18 フレキシブルディスク装置
19 CRT
20 パターンモニタ
21 プリンタ
22 マスク
23 照明光
25、27 ミラー
25a 角度調節部
26、28 ミラー制御部
101、103 支持部材
102 鏡筒
104 基台
105、106 ミラー
107 モータ






【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
検査対象が載置されるステージと、
前記光源からの光を前記検査対象に照射する第1の光学系と、
前記検査対象を透過または反射した光を結像する第2の光学系と、
前記ステージの位置を測定する第1の測定部と、
前記第2の光学系の位置を測定する第2の測定部と、
前記第2の光学系に結像した光学画像に基づいて前記検査対象の検査を行う検査部とを有し、
前記第2の光学系は、センサと、前記光を前記センサに結像するレンズと、前記センサと前記レンズの間に配置されるミラーとを備えており、
前記第1の測定部で得られた前記ステージの位置と、前記第2の測定部で得られた前記第2の光学系の位置との差分に基づいて、前記ミラーの角度を変えるミラー制御部を有することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第1の測定部で得られた前記ステージの位置と、前記第2の測定部で得られた前記第2の光学系の位置との差分に基づいて、前記ステージの移動速度を制御するステージ制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記ミラーには、前記レンズを透過した光が入射する第1のミラーと、前記第1のミラーで反射した光が入射する第2のミラーとがあり、
前記ミラー制御部は、前記第1の測定部で得られた前記ステージの位置と、前記第2の測定部で得られた前記第2の光学系の位置とのX方向の差分に基づいて、前記第1のミラーおよび前記第2のミラーのいずれか一方の角度を変えるとともに、前記第1の測定部で得られた前記ステージの位置と、前記第2の測定部で得られた前記第2の光学系の位置とのY方向の差分に基づいて、他方の角度を変えることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
ステージ上に載置された検査対象に光を照射し、前記検査対象を透過または反射した光をレンズを介しミラーで反射させた後にセンサに結像して得られる光学画像に基づき前記検査対象を検査する検査方法であって、
前記ステージの位置と前記光学系の位置を測定し、これらの位置の差分に基づいて前記ミラーの角度を変えることを特徴とする検査方法。
【請求項5】
前記レンズを透過した光は、第1のミラーで反射し、さらに第2のミラーで反射した後に前記センサに結像し、
前記ステージの位置と前記光学系の位置を測定し、これらの位置の差分に基づいて、前記第1のミラーの角度と前記第2のミラーの角度を変えることを特徴とする請求項4に記載の検査方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−38830(P2011−38830A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184657(P2009−184657)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】