説明

検知システム

【課題】 移動局の無線通信の状態をリアルタイムに検知する検知システムを提供すること。
【解決手段】 検知システム12は、受信電界情報43aを無線信号から検知し、位置情報41aと受信電界情報43aとを対応付けして記憶する受信電界検知記憶部43と、所定位置情報45aと設定受信電界情報45bとを対応付けて記憶する記憶部45と、記憶部45から位置情報41aと同一の所定位置情報45aまたは位置情報41aに近似する所定位置情報45aに対応する設定受信電界情報45bを算出し、位置情報41aに対応する受信電界情報43aを算出し、設定受信電界情報45bと受信電界情報43aとを比較する比較部47と、比較部47による比較結果を基に、設定受信電界情報45bと受信電界情報43aとが閾値以上の差を生じた際に受信部35の故障を検知する制御部49とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と移動局との間で無線通信することで移動局に搭載されている受信部の故障を検知する検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、列車などの移動局は、基地局を介して、移動局の運行を統制する統制局と無線通信する。このような移動局は、運行の統制の観点から、統制局と運行中に常に無線通信を行えるか否かを試験する試験通信を運行する前に統制局と行う必要が生じる。移動局は車上系であり、基地局と統制局とは地上系である。
【0003】
移動局は、試験通信を行う際に地上系からの試験通信のための無線信号を受信する受信部を有している。また地上系は、試験通信を行うための試験通信装置と、試験通信装置を介して移動局から試験通信のための無線信号を受信することで、移動局の無線通信の状態を検知する検知システムとを有している。移動局の無線通信の状態とは、移動局の受信部の故障や劣化、移動局の現在位置における受信電界強度などである。
【0004】
統制局は試験通信装置から基地局を介して試験通信のための無線信号を移動局に送信し、無線信号を受信した移動局は基地局と試験通信装置とを介して統制局に無線信号を返信する。そして統制局は、検知システムによって移動局の無線通信の状態を検知する。
【0005】
例えば特許文献1には、複数の移動局からの返信を基地局が受信した場合においても効率よくデータ収集、解析を行うことができ、また、移動局からの返信が基地局にて受信できない区域についても有効なデータ収集、解析を行うことのできる無線通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−252697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した検知システムは、運行前に移動局の無線通信の状態(受信部の故障や劣化、移動局の現在位置における受信電界強度など)を検知するシステムであり、運行中には運用することができない。このため検知システムは、例えば運行中に定期的に試験通信を行えず、運行中に移動局の無線通信の状態をリアルタイムに検知できない虞が生じる。
【0008】
そのため本発明は、上記事情に鑑み、移動局の無線通信の状態をリアルタイムに検知する検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は目的を達成するために、移動局に搭載され、前記移動局が基地局と無線信号を送受信して無線通信することで前記移動局の無線通信の状態を検知する検知システムであって、前記基地局から受信した前記無線信号に含まれる前記移動局の現在位置における受信電界強度を示す受信電界情報を前記無線信号から検知し、第1の所定の位置から前記移動局の現在位置までの距離を示す位置情報と前記位置情報に対応する前記受信電界情報とを対応付けして記憶する受信電界検知記憶部と、前記第1の所定の位置から第2の所定の位置までの距離を示す所定位置情報と、前記所定位置情報に対応し、前記第2の所定の位置において予め設定されている受信電界強度を示す設定受信電界情報とを対応付けて記憶する記憶部と、前記受信電界検知記憶部に記憶されている前記位置情報を基に前記記憶部から前記位置情報と同一の前記所定位置情報または前記位置情報に近似する前記所定位置情報に対応する前記設定受信電界情報を算出し、前記受信電界検知記憶部を基に前記位置情報に対応する前記受信電界情報を算出し、算出した前記設定受信電界情報と算出した前記受信電界情報とを比較する比較部と、前記比較部による比較結果を基に、前記設定受信電界情報と前記受信電界情報とが閾値以上の差を生じた際に前記移動局の無線通信の状態を異常とみなし、前記移動局の受信部の故障を検知する制御部と、を有していることを特徴とする検知システムを提供する。
【0010】
また本発明は目的を達成するために、前記位置情報を計測し、前記位置情報を前記受信電界検知記憶部と前記記憶部とに通知する位置計測部を具備することを特徴とする上記に記載の検知システムを提供する。
【0011】
また本発明は目的を達成するために、前記受信電界検知記憶部は、前記受信電界情報と共に、前記基地局から受信した前記無線信号に含まれる前記位置情報を検知することを特徴とする上記に記載の検知システムを提供する。
【0012】
また本発明は目的を達成するために、前記比較部は、所定位置情報45aに近似する2つの前記位置情報を前記受信電界検知記憶部から算出し、2つの前記位置情報に対応する前記受信電界情報の平均値を算出し、前記平均値と、前記設定受信電界情報に対応する前記設定受信電界情報とを比較することを特徴とする上記に記載の検知システムを提供する。
【0013】
また本発明は目的を達成するために、前記検知システムは、前記移動局に2つ搭載され、一方の前記検知システムにおいて、前記制御部は、一方の前記検知システムにおける前記比較部の比較結果と、他方の前記検知システムにおける前記比較部の比較結果とを比べ、他方の前記検知システムにおいて、前記制御部は、一方の前記検知システムにおける前記比較部の比較結果と、他方の前記検知システムにおける前記比較部の比較結果とを比べ、一方の前記検知システムにおける前記制御部と、他方の前記検知システムにおける前記制御部とは、互いの比較結果を比べて、両方の前記検知システムにおけるそれぞれの前記受信部の故障を検知した場合、一方の前記検知システムにおける前記制御部と他方の前記検知システムにおける前記制御部とは、両方の前記検知システムにおけるそれぞれの前記受信部の故障と判別せずに前記基地局側の故障と判別することを特徴とする上記に記載の検知システムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、移動局の無線通信の状態をリアルタイムに検知する検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、無線通信システムを示す図である。
【図2】図2は、検知システムを有する移動局の構成を示す図である。
【図3】図3は、位置情報と受信電界情報とをまとめたリストを示す図である。
【図4】図4は、所定位置情報と設定受信電界情報とをまとめたリストを示す図である。
【図5】図5は、移動局が例えば列車の場合、検知システムが例えば先頭の車両と、最後尾の車両とのそれぞれに配設されていることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1乃至図5を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、無線通信システム10は、統制局21と基地局23とから構成される地上系20と、移動局31から構成される車上系30とを有している。
【0017】
統制局21は、移動局31の運行の統制の観点から移動局31の運行中に常に基地局23を介して移動局31と無線通信を行う。これにより統制局21は、移動局31と運行情報を送受信し、移動局31の運行状態を監視し、移動局31の運行を統制している。
【0018】
基地局23は、複数配設され、それぞれ有線にて統制局21と接続しており、統制局21からの指示に基づいて移動局31との間で無線信号を送受信し、無線通信を行う。
【0019】
移動局31は、例えば線路81を走行する列車などである。
本実施形態では、例えば移動局31を格納する基地82と線路81との接点(基地82の端部)といった第1の所定の位置を、移動局31が走行する距離の原点83としている。移動局31が走行する例えば線路81沿いに、上述した基地局23が上述したように配設されている。原点83から各基地局23までの距離は、後述するが例えば図4に示す通りである。
【0020】
図2に示すように、移動局31は、基地局23と移動局31との間で無線通信する移動局側無線通信システム11を有している。移動局側無線通信システム11は、任意の情報を有する無線信号を基地局23に送信する送信部33と、任意の情報を有する無線信号を基地局23から受信する受信部35と、送信部33が無線信号を基地局23に送信し、受信部35が無線信号を基地局23から受信するために、基地局23と予め設定された周波数の無線信号を送受信するアンテナ37と、送信と受信とを切り替え、送信用の無線信号を送信部33からアンテナ37に伝達し、受信用の無線信号をアンテナ37から受信部35に伝達する共用器39とを有している。
【0021】
送信部33が送信する無線信号に含まれる任意の情報とは、例えば運行中の移動局31の動態を示す情報と、後述する移動局31の無線通信の状態(移動局31の受信部35の故障)を示す情報等である。また受信部35が受信する無線信号に含まれる任意の情報とは、例えば移動局31の現在位置における受信電界強度である。
【0022】
また移動局31は、基地局23と移動局31との間で無線通信することで移動局31の無線通信の状態を検知する検知システム12を有している。移動局31の無線通信の状態とは、例えば受信部35の故障や劣化、移動局31の現在位置における受信電界強度などである。
【0023】
この検知システム12は、第1の所定の位置である原点83から移動局31の現在位置までの距離を示す位置情報41aを計測する位置計測部41を有している。
【0024】
また検知システム12は、位置計測部41から位置情報41aを通知され、基地局23からアンテナ37と共用器39とを介して受信部35にて受信した無線信号に含まれる移動局31の現在位置における受信電界強度を示す受信電界情報43aを無線信号から検知し、位置計測部41から通知された位置情報41aとこの位置情報41aに対応する受信電界情報43aとを対応付けして記憶し、図3に示すように、位置情報41aと、この位置情報41aに対応する受信電界情報43aとをまとめたリスト43bを作成し、リスト43bを記憶する受信電界検知記憶部43と、第1の所定の位置である原点83から第2の所定の位置である各基地局23までの距離を示す所定位置情報45aと、この所定位置情報45aに対応し、第2の所定の位置において予め設定されている受信電界強度を示す設定受信電界情報45bとを対応付けて記憶し、図4に示すように、所定位置情報45aと、この所定位置情報45aに対応する設定受信電界情報45bとをまとめたリスト45cを作成し、リスト45cを記憶し、位置計測部41から位置情報41aを通知される記憶部45とを有している。
【0025】
また検知システム12は、受信電界検知記憶部43に記憶されているリスト43bにおける位置情報41aを基に記憶部45に記憶されているリスト45cからこの位置情報41aと同一の所定位置情報45aまたは位置情報41aに近似する所定位置情報45aに対応する設定受信電界情報45bを算出し、受信電界検知記憶部43に記憶されているリスト43bを基に位置情報41aに対応する受信電界情報43aとを算出し、設定受信電界情報45bと受信電界情報43aとを比較する比較部47を有している。
【0026】
また検知システム12は、送信部33と受信部35と位置計測部41と受信電界検知記憶部43と記憶部45と比較部47と後述する表示部51とを制御し、比較部47による比較結果を基に、設定受信電界情報45bと受信電界情報43aとが閾値以上の差を生じた際に移動局31の無線通信の状態を異常とみなし受信部35の故障や劣化を検知し、受信部35の故障や劣化を示す無線信号を送信部33と共用器39とアンテナ37と基地局23とを介して統制局21に出力する制御部49と、制御部49によって出力された無線信号を基に受信部35の故障や劣化を示す故障情報を表示する表示部51とを有している。
【0027】
位置計測部41は、例えば移動局31に搭載されている距離計である。位置計測部41は、原点83から移動局31の現在位置までの距離を計測することで、移動局31の現在位置を計測する。位置計測部41は、制御部49に含まれていてもよい。
【0028】
また位置計測部41は、移動局31が移動している際の全ての位置情報41aを受信電界検知記憶部43と記憶部45とに通知する必要はない。位置計測部41は、原点83から例えば500m毎といった所定の距離離れた移動局31の現在位置を示す位置情報41aを、受信電界検知記憶部43と記憶部45とに通知すればよい。このとき位置計測部41が計測し、受信電界検知記憶部43と記憶部45とに通知する位置情報41aは、図3に示すように例えば500m、1000m、1500m、2000m、2500mとなっている。
【0029】
受信電界検知記憶部43は、図3に示すように例えば原点83から500m毎といったように、この現在位置において受信電界情報43aを検知する。この受信電界情報43aは、上述したように移動局31の現在位置における受信電界強度を示し、無線信号に含まれる情報である。
【0030】
また図3に示すように、受信電界検知記憶部43が記憶するリスト43bには、原点83における受信電界強度が50dB、原点83から500m離れた位置における受信電界強度が50dB、原点83から1000m離れた位置における受信電界強度が50dB、原点83から1500m離れた位置における受信電界強度が50dB、原点83から2000m離れた位置における受信電界強度が50dB、原点83から2500m離れた位置における受信電界強度が30dBといった、位置情報41aと受信電界情報43aとがまとめられている。
【0031】
図4に示すように所定位置情報45aとは、例えば第1の所定の位置である原点83から第2の所定の位置である各基地局23a,23b,23c,23d,23e,23fまでの距離である。この距離は、図4に示すように例えばそれぞれ500m、900m、1500m、1750m、2000m、2500mとなっている。
設定受信電界情報45bは、移動局31が基地局23を通過した際に移動局31の無線通信の状態(受信部35の故障や劣化)を検知する際の基準となる情報であり、閾値である。そのため設定受信電界情報45bは、各基地局23a,23b,23c,23d,23e,23fにおいて図4に示すように例えば50dB、50dB、50dB、50dB、50dB、50dBといったように予め設定されている。よってこの設定受信電界情報45bは、例えば各基地局23においてこのように予め設定された受信電界強度である。
【0032】
そして記憶部45は、図4に示すように、上述した原点83から各基地局23までの距離を示す所定位置情報45aと、各基地局23において予め設定された設定受信電界情報45bとを対応付けて記憶している。
より詳細には、図4に示すように、記憶部45が記憶するリスト45cには、原点83における設定受信電界強度が50dB、原点83から500m離れた基地局23aにおける設定受信電界強度が50dB、原点83から900m離れた基地局23bにおける設定受信電界強度が50dB、原点83から1500m離れた基地局23cにおける設定受信電界強度が50dB、原点83から1750m離れた基地局23dにおける設定受信電界強度が50dB、原点83から2000m離れた基地局23eにおける設定受信電界強度が50dB、原点83から2500m離れた基地局23fにおける設定受信電界強度が50dBといった、所定位置情報45aと設定受信電界情報45bとがまとめられている。
【0033】
図3と図4とに示すように、原点83から500m、1500m、2000m、2500mという距離は、リスト43bでは位置情報41aであり、リスト45cでは所定位置情報45aであり、リスト43bとリスト45cとに共にまとめられている。この場合、基地局23a,23c,23e,23fの位置で、受信電界検知記憶部43は、位置計測部41から位置情報41aを通知され、受信電界情報を検知していることを示している。よってこのときの所定位置情報45aは、位置情報41aと同一となる。
そのため比較部47は、図3に示すリスト43bにおける500m、1500m、2000m、2500mという位置情報41aを基にリスト45cからこの位置情報41aと同一の500m、1500m、2000m、2500mという所定位置情報45aに対応する50dB、50dB、50dB、50dBという設定受信電界情報45bを算出する。
また比較部47は、リスト43bにおける500m、1500m、2000m、2500mという位置情報41aに対応する50dB、50dB、50dB、30dBという受信電界情報43aを算出する。
そして比較部47は、各位置において算出した設定受信電界情報45bと受信電界情報43aとを比較する。
【0034】
また図4に示すリスト45cにおいて900mという所定位置情報45aは、基地局23bの位置であり、図3に示すリスト43bに示す1000mという位置情報41aと近似している。よってこの場合の所定位置情報45aは、位置情報41aに近似する所定位置情報45aとなる。
そのため比較部47は、図3に示すリスト43bにおける1000mという位置情報41aを基にリスト45cからこの位置情報41aに近似する900mという所定位置情報45aに対応する50dBという設定受信電界情報45bを算出する。
また比較部47は、リスト43bにおける900mという位置情報41aに対応する50dBという受信電界情報43aを算出する。
そして比較部47は、この位置において算出した設定受信電界情報45bと受信電界情報43aとを比較する。
【0035】
なお図4に示すように所定位置情報45aが例えば1750m(原点83から基地局23dまでの距離)の場合、比較部47は、例えばこの距離に近似する2つの位置情報41aを受信電界検知記憶部43におけるリスト43bから算出し、各位置情報41aに対応する受信電界情報43aの平均値を算出する。そして比較部47は、平均値と、設定受信電界情報45bに対応する設定受信電界情報45bとを比較する。
つまり比較部47は、1750mという所定位置情報45aに近似する1500mと2000mという2つの位置情報41aをリスト43bから算出する。そして比較部47は、リスト43bを基に1500mという位置情報41aに対応する50dBという受信電界情報43aと、2000mという位置情報41aに対応する50dBという受信電界情報43aとの平均値である50dBを算出し、この平均値50dBと1750mという所定位置情報45aに対応する50dBという設定受信電界情報45bとを比較する。
【0036】
制御部49において、移動局31の無線通信の状態を異常とみなすための設定受信電界情報45bと受信電界情報43aとの差を示す閾値は例えば10dBである。移動局31の無線通信の状態を異常とは、移動局31が統制局21と無線通信をできない状態を示す。
制御部49は、例えば受信電界情報43aが設定受信電界情報45bから上述した閾値以上の離れていると、より詳細には例えば受信電界情報43aが設定受信電界情報45bから上述した閾値以上下がると、受信部35の故障や劣化を検知する。受信電界情報43aが受信電界検知記憶部43によって検知されているために、受信電界情報43aが設定受信電界情報45bから上述した閾値以上の離れていると、制御部49は受信部35の故障や劣化を検知するができる。
【0037】
また制御部49は、所定位置情報45aが位置情報41aに近似しているか、所定位置情報45aが2つの位置情報41aの平均値であるかを所定位置情報45aと位置情報41aとを基に検知し、上述したように場合わけを行う。
【0038】
次に本実施形態における検知システム12の動作方法について説明する。
移動局31は、基地82を出発し原点83を通り、線路81上を移動する。このとき位置計測部41は、位置情報41a(移動局31の現在位置)を、原点83を基準として計測する。
【0039】
同時に、位置計測部41は、原点83から例えば500m毎といった位置情報41aを、受信電界検知記憶部43に通知する。また移動局31は、送信部33と受信部35とアンテナ37と共用器39とによって、基地局23と無線信号を送受信し、無線通信を行う。
【0040】
受信電界検知記憶部43は、この無線通信によってアンテナ37と共用器39とを介して受信部35にて受信した無線信号から、受信電界情報43aを検知する。受信電界検知記憶部43は、この受信電界情報43aを、位置計測部41から通知された位置情報41aにおいて検知する。つまり受信電界検知記憶部43は、原点83から例えば500m毎といった現在位置において、受信電界情報43aを検知する。
【0041】
また受信電界検知記憶部43は、位置計測部41から通知された位置情報41aと、位置情報41aに対応する受信電界情報43aとを対応付けして記憶する。さらに受信電界検知記憶部43は、位置情報41aと、この位置情報41aに対応する受信電界情報43aとをまとめた図3に示すようなリスト43bを作成し、リスト43bを記憶する。
【0042】
なお受信電界検知記憶部43は、常に受信電界情報43aを検知し、検知した受信電界情報を一時的に記憶し、位置情報41aに対応する受信電界情報43aを抽出し、リスト43bを作成してもよい。
【0043】
また記憶部45は、図4に示すリスト45cを予め記憶している。この記憶部45は、受信電界検知記憶部43と同様に、位置計測部41から、原点83から例えば500m毎といった位置情報41aを通知される。
【0044】
比較部47は、図3に示すリスト43bにおける位置情報41aを基にリスト45cからこの位置情報41aと同一の所定位置情報45aに対応する設定受信電界情報45bを算出する。また比較部47は、リスト43bにおける位置情報41aに対応する受信電界情報43aを算出する。そして比較部47は、受信電界情報43aと設定受信電界情報45bとを比較する。
【0045】
より詳細には、比較部47は、図3に示すリスト43bを基に500m、1500m、2000m、2500mという位置情報41aに対応する50dB、50dB、50dB、30dBという受信電界情報43aと、図4に示すリスト45cを基に500m、1500m、2000m、2500mという所定位置情報45aに対応する50dB、50dB、50dB、50dBという設定受信電界情報45bとを比較する。
【0046】
また比較部47は、図3に示すリスト43bにおける位置情報41aを基にリスト45cからこの位置情報41aに近似する所定位置情報45aに対応する設定受信電界情報45bを算出する。また比較部47は、リスト43bにおける位置情報41aに対応する受信電界情報43aを算出する。そして比較部47は、算出した設定受信電界情報45bと受信電界情報43aとを比較する。
【0047】
より詳細には、比較部47は、図3に示すリスト43bを基に、900mという所定位置情報45aに近似する1000mという位置情報41aに対応する50dBという受信電界情報43aと、リスト45cを基に900mという所定位置情報45aに対応する50dBという設定受信電界情報45bとを比較する。
【0048】
制御部49は、比較部47による比較結果を基に、受信電界情報43aが設定受信電界情報45bから例えば10dBといった閾値以上、下がった際に、移動局31の無線通信の状態の異常とみなし、受信部35の故障や劣化を検知する。この場合、制御部49は、2500mという位置情報41aに対応する30dBという受信電界情報43aが2500mという所定位置情報45aに対応する50dBという設定受信電界情報45bよりも20dB下がっていることを、判別し、移動局31の無線通信の状態の異常、つまり受信部35の故障や劣化を判別する。
【0049】
そして制御部49は、受信部35の故障や劣化を示す無線信号を送信部33と共用器39とアンテナ37と基地局23とを介して統制局21に出力する。また表示部51は、制御部49によって出力された無線信号を基に故障や劣化を示す旨を表示する。
【0050】
本実施形態では、この地点のみの受信部35の故障や劣化とみなしてこの地点以後の移動局31の無線通信の状態の検知を継続してもよいし、この地点以後の移動局31の無線通信の状態の検知を終了してもよい。
【0051】
このように本実施形態では、位置情報41aを計測する位置計測部41と、受信電界情報43aを検知し、位置情報41aと受信電界情報43aとを対応付けして記憶する受信電界検知記憶部43と、所定位置情報45aと設定受信電界情報45bとを対応付けて記憶する記憶部45と、受信電界検知記憶部43に記憶されている受信電界情報43aと、記憶部45に記憶されている設定受信電界情報45bとを比較する比較部47とを有し、移動局31の無線通信の状態を検知する検知システム12を、移動局31に搭載している。
【0052】
これにより本実施形態では、運行中であっても常に移動局31の無線通信の状態(受信部35の故障や劣化)を検知でき、移動局31の無線通信の状態(受信部35の故障や劣化)をリアルタイムに検知することができる。
【0053】
また本実施形態では、移動局31を走行させるだけで、容易に移動局31の無線通信の状態(受信部35の故障や劣化)をリアルタイムに検知することができる。
【0054】
また本実施形態では、他の実験データを取得している際といった、他の作業をしながらでも、容易に移動局31の無線通信の状態(受信部35の故障や劣化)をリアルタイムに検知することができる。
【0055】
また本実施形態では、地上系20ではなく、車上系30で移動局31の無線通信の状態(受信部35の故障や劣化)をリアルタイムに検知することができるために、地上系20に試験通信を行うための試験通信装置を配設する必要が無く、安価にすることができる。
【0056】
また本実施形態では、1つの移動局31に1つの検知システム12を配設すればよく、安価にすることができる。
【0057】
また本実施形態では、リスト43bにおける位置情報41aと、リスト45cにおける所定位置情報45aとが同一でなくても、リスト43bを基に原点83から900mという位置情報41aに近似する原点83から1000mという位置情報41aに対応する受信電界情報43aと、リスト45cを基にこの原点83から900mという所定位置情報45aに対応する設定受信電界情報45bと、を比較する。これにより本実施形態では、無駄なく移動局31の無線通信の状態(受信部35の故障や劣化)をリアルタイムに検知することができる。
【0058】
また本実施形態では、所定位置情報45aが例えば原点83から1750mの場合、比較部47は、リスト43bを基に1500mという位置情報41aに対応する50dBという受信電界情報43aと、2000mという位置情報41aに対応する受信電界情報43aに対応する50dBという受信電界情報43aとの平均値を算出し、この平均値50dBと1750mという所定位置情報45aに対応する設定受信電界情報45bとを比較する。これにより本実施形態では、無駄なく移動局31の無線通信の状態(受信部35の故障や劣化)をリアルタイムに検知することができる。
【0059】
なお移動局側無線通信システム11と検知システム12は、移動局31が例えば列車の場合、図5に示すように、例えば先頭の車両31aと、最後尾の車両31bとのそれぞれに配設されていてもよい。このとき、先頭の車両における検知システム12aが有する制御部49aと、最後尾の車両における検知システム12bが有する制御部49bとは有線にて接続し、互いに監視している。
【0060】
より詳細には、制御部49aは、検知システム12aにおける比較部47aの比較結果と、検知システム12bにおける比較部47bの比較結果とを比べる。また制御部49bは、検知システム12aにおける比較部47aの比較結果と、検知システム12bにおける比較部47bの比較結果とを比べる。
制御部49aと制御部49bとが互いの比較結果を比べ同じ現在位置(例えば上述したように2500mの位置)での受信部35a,35bの故障や劣化を検知した場合、制御部49aと制御部49bとは、この現在位置における受信部35aと受信部35bとの故障や劣化と判別せず、基地局23側の送信部の故障や劣化と判別する。そして制御部49aまたは制御部49bは、基地局23側の送信部が故障や劣化している旨の無線信号を送信部33aまたは送信部33bから基地局23に送信する。
【0061】
このように検知システム12が移動局31に2つ搭載され、比較結果が比べられることで、地上系20の無線通信の状態、より詳細には地上系20の送信部の故障や劣化を判別することができる。
【0062】
なお移動局31が例えば列車の場合、検知システム12は、例えば先頭の車両31aと、最後尾の車両31bとのそれぞれに配設されることで、車両31aと車両31bといったより離れた位置で受信電界情報を検知できる。よってこの場合、より精密な比較結果が取得でき、地上系20の送信部の故障や劣化を厳密に判別することができる。
【0063】
なお検知システム12は位置計測部41を有して無くても良く、その場合、地上系20が無線信号に受信電界情報43aと共に位置情報41aを含ませればよい。そして検知システム12は基地局23から位置情報41aを取得してもよい。より詳細には、受信電界検知記憶部43は、受信電界情報43aと共に、基地局23からアンテナ37と共用器39とを介して受信部35にて受信した無線信号に含まれる位置情報41aを検知すればよい。
【0064】
これにより本実施形態では、位置計測部41を配設する必要はないために安価にすることができる。また本実施形態では、受信部35にて受信した無線信号から、位置情報41aと受信電界情報43aとを検知するために、リスト43bをスムーズに作成することができる。
【0065】
なお移動局31は、列車に限定する必要はなく、検知システム12によって移動局31の無線通信の状態を検知する必要があれば、例えばタクシーを含む車両や、人などであってもよい。
【0066】
なお本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0067】
10…無線通信システム、11…移動局側無線通信システム、12…検知システム、20…地上系、21…統制局、23…基地局、30…車上系、31…移動局、33…送信部、35…受信部、37…アンテナ、39…共用器、41…位置計測部、41a…位置情報、43…受信電界検知記憶部、43a…受信電界情報、43b…リスト、45…記憶部、45a…所定位置情報、45b…設定受信電界情報、45c…リスト、47…比較部、49…制御部、81…線路、82…基地、83…原点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局に搭載され、前記移動局が基地局と無線信号を送受信して無線通信することで前記移動局の無線通信の状態を検知する検知システムであって、
前記基地局から受信した前記無線信号に含まれる前記移動局の現在位置における受信電界強度を示す受信電界情報を前記無線信号から検知し、第1の所定の位置から前記移動局の現在位置までの距離を示す位置情報と前記位置情報に対応する前記受信電界情報とを対応付けして記憶する受信電界検知記憶部と、
前記第1の所定の位置から第2の所定の位置までの距離を示す所定位置情報と、前記所定位置情報に対応し、前記第2の所定の位置において予め設定されている受信電界強度を示す設定受信電界情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記受信電界検知記憶部に記憶されている前記位置情報を基に前記記憶部から前記位置情報と同一の前記所定位置情報または前記位置情報に近似する前記所定位置情報に対応する前記設定受信電界情報を算出し、前記受信電界検知記憶部を基に前記位置情報に対応する前記受信電界情報を算出し、算出した前記設定受信電界情報と算出した前記受信電界情報とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果を基に、前記設定受信電界情報と前記受信電界情報とが閾値以上の差を生じた際に前記移動局の無線通信の状態を異常とみなし、前記移動局の受信部の故障を検知する制御部と、
を有していることを特徴とする検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−124783(P2011−124783A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280710(P2009−280710)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】