説明

検知装置及び検知方法

【課題】中空管の長さや設置環境によらずに、異常を正確に検知すること。
【解決手段】両端が開口されたチューブ300と、チューブ300の両端近傍に設けられ、チューブ300に伝わる音響信号を集音する2つのマイクロホン200と、を有する音響チューブセンサ400に接続された侵入検知装置100は、2つのマイクロホン200で集音された物音の音響信号の到達時間の差に基づいて、物音を生じさせたチューブ300における物音の位置を推定する位置推定部130と、推定された位置に基づいて、音響信号の強度を補正する補正部141と、補正後の音響信号の強度が所定の異常検出閾値を超えているか否かを判断し、異常検出閾値を超えている場合に、異常と判断する異常判断部145とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知装置及び検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弾性のある中空管として一端を閉塞したチューブの開口側にマイクロホンを設置し、チューブに外力が加わってチューブが加圧されたときにチューブ内に発生する音を検知する感知装置(以下、「音響チューブセンサ」という。)が知られている。
【0003】
また、この感知装置のチューブ両端にマイクロホンを設置し、音を検知する時間差を用いることで検知位置を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これらの音響チューブセンサでは、チューブに直接接触して生じた音、または土、砂利などに埋設した状態で間接的に伝わる物音の音響信号の強度を、予め設定した閾値と比較することにより、異常であるか否か判別していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−76124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術では、チューブの全長によって、物音の集音感度が異なっている。このため、チューブの全長が長くなると、チューブを伝達する音響信号は距離に応じて減衰する。この減衰により異常検出の閾値を一定に定めることが困難となり、この結果、異常を正確に検知することが困難であるという問題がある。
【0006】
また、従来技術では、チューブを埋設する素材によっても物音の集音感度が異なる。すなわち、設置環境によっては、チューブを埋設している土、砂利等の素材が位置によって異なる場合が存在する。このため、素材によって音の伝達のしやすさが異なることから、異常検出の閾値を一定に定めることが困難となり、この結果、異常を正確に検知することが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、中空管の長さや設置環境によらずに、異常を正確に検知することができる検知装置及び検知方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる検知装置は、両端が開口された中空管と、前記中空管の両端近傍に設けられ、前記中空管に伝わる音響信号を集音する2つの集音部と、を有するセンサに接続された検知装置であって、前記2つの集音部で集音された物音の音響信号の各集音部への到達時間の差に基づいて、前記物音を生じさせた前記中空管における物音の位置を推定する位置推定部と、推定された位置に基づいて、前記音響信号の強度を補正する補正部と、補正後の前記音響信号の強度が所定の異常検出閾値を超えているか否かを判断し、前記異常検出閾値を超えている場合に、異常と判断する異常判断部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる検知方法は、両端が開口された中空管と、前記中空管の両端で前記中空管に伝わる音響信号を集音する2つの集音部と、を有するセンサを備えた検知装置で実行される検知方法であって、前記2つの集音部で集音された物音の音響信号の各集音部への到達時間の差に基づいて、前記物音を生じさせた前記中空管における物音の位置を推定する位置推定ステップと、推定された位置に基づいて、前記音響信号の強度を補正する補正ステップと、補正後の前記音響信号の強度が所定の異常検出閾値を超えているか否かを判断し、前記異常検出閾値を超えている場合に、異常と判断する異常判断ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中空管の長さや設置環境によらずに、異常を正確に検知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施の形態の侵入検知システムの全体構成図である。
【図2】図2は、音響チューブセンサのチューブの施工例を示す模式図である。
【図3】図3は、土、砂利等に音響チューブセンサを埋設した状態を示す模式図である。
【図4】図4は、音響チューブセンサの他の構成の例を示す説明図である。
【図5】図5は、本実施の形態の侵入検知装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、音響チューブセンサの物音の音源位置や長さを模式的に示す概略図である。
【図7】図7は、Mic1のマイクロホンで集音した音響信号と、その信号パワーの時間的推移を示すグラフである。
【図8】図8は、Mic2のマイクロホンで集音した音響信号と、その信号パワーの時間的推移を示すグラフである。
【図9】図9は、音響チューブセンサの施工状態で観測した物音の算出例を示す図である。
【図10】図10は、物音のそれぞれについて、信号パワーの差と到達距離の差との関係をグラフに示した図である。
【図11】図11は、近似曲線の一例を示す図である。
【図12】図12は、図9の観測された物音の音響信号の信号パワー、マイクロホンMic1からの位置、補正後の音響信号の信号パワーを示す説明図である。
【図13】図13は、埋設素材による分類を示す図である。
【図14】図14は、本実施の形態の侵入検知処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる検知装置及び検知方法の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態の侵入検知システムの全体構成図である。本実施の形態の侵入検知システムは、図1に示すように、監視領域に設置された音響チューブセンサ400と、音響チューブセンサ400と接続された侵入検知装置100とを備えている。
【0013】
音響チューブセンサ400は、図1に示すように、弾性を有する中空管としてのチューブ300と、チューブ300の両端の開口部を封鎖するように設けられた集音部としての2つのマイクロホン200とから構成される。音響チューブセンサ400は、チューブ300が踏みつけられる等の衝撃が加えられた場合に、その衝撃の際の物音が中空管内を伝搬し、この物音を2つのマイクロホン200のそれぞれで集音し、集音された音響信号を侵入検知装置100に送出する。
【0014】
侵入検知装置100は、音響チューブセンサ400の2つのマイクロホン200から送出された2つの音響信号により、チューブ300における物音の位置を推定し、推定した位置から減衰する音響信号を補正して、補正後の音響信号により、侵入者が侵入したという異常判断を行うものである。
【0015】
音響チューブセンサ400は、監視対象となる監視領域の場所に施工する。音響チューブセンサ400の施工は、土または砂利等に埋設することができる。図2は、音響チューブセンサ400のチューブ300を、戸建て住宅の外周の土、砂利、マット等に埋設して施工した例を示す模式図である。図3は、土、砂利等に音響チューブセンサ400を埋設した状態を示す模式図である。
【0016】
音響チューブセンサ400に音が伝達する物質に埋設すれば、音響チューブセンサ400をいずれの場所にも設置することができる。
【0017】
また、音響チューブセンサ400の構成は、図1に示す構成に限定されるものではない。マイクロホン200がチューブ300の両端の開口部またはその近傍に物音を集音可能に設けられていればよい。図4は音響チューブセンサ400の他の構成の例を示す説明図である。例えば、図4に示すように、チューブ300を分岐させる構成としてもよい。
【0018】
次に、侵入検知装置100の詳細について説明する。図5は、本実施の形態の侵入検知装置100の機能的構成を示すブロック図である。本実施の形態の侵入検知装置100は、図5に示すように、AD変換部110と、物音検出部120と、位置推定部130と、異常検出部140と、記憶部150とを主に備えている。
【0019】
AD変換部110は、2つのマイクロホン200で集音され、伝搬されてきたアナログの音響信号を、デジタルの音響信号(以下、「音響信号」という。)にA/D変換する。
【0020】
物音検出部120は、A/D変換された各音響信号の強度が所定の閾値より大きいか否かを判断し、大きい場合に、この音響信号を、音響チューブセンサ400のチューブ300に対して物音の音響信号として検出する。これ以降、音響信号の強度を信号パワーと呼ぶことがある。
【0021】
すなわち、音響チューブセンサ400の2つのマイクロホン200は、監視中、常時採取音の音響信号の信号パワーを算出している。物音検出部120は、算出した信号パワーが暗騒音の信号パワーである閾値よりも大きくなったとき、物音が発生したと判断して、その音響信号を抽出する。また、物音検出部120は、抽出した物音の信号パワーの最大レベルを記録する。
【0022】
物音検出部120についてより具体的に説明する。図6は、音響チューブセンサ400の物音の音源位置や長さを模式的に示す概略図である。ここで、図6において、以下のように定義する。
【0023】
L[m]:音響チューブセンサ400のチューブ300の全長
Mic1、Mic2:両端の各マイクロホン200
P_a:チューブ上で加えられた衝撃
r1_a[m]:Mic1からP_aまでの距離(位置推定結果)
r2_a[m]:Mic2からP_aまでの距離(位置推定結果)
S1_a[dB]:P_aに衝撃が加えられたとき、Mic1で算出された信号パワー
S2_a[dB]:P_aに衝撃が加えられたとき、Mic2で算出された信号パワー
【0024】
物音検出部120は、2つのマイクロホン200で採取した音響信号から、信号パワーを算出する。図7は、Mic1のマイクロホン200で集音した音響信号と、その信号パワーの時間的推移を示すグラフである。図8は、Mic2のマイクロホン200で集音した音響信号と、その信号パワーの時間的推移を示すグラフである。
【0025】
ここで、物音検出部120は、例えば2乗平均平方根等の手法を用いて、各音響信号の信号パワーを算出する。そして、物音検出部120は、信号パワーが、上述の閾値を超える場合に、閾値を超えた信号パワーの部分の音響信号を物音であるとして検出する。図7において、信号パワーS1_aの部分の音響信号が物音として検出され、図8の例では、信号パワーS2_aの部分の音響信号が物音として検出される。また、物音検出部120は、そのときの物音の信号パワーの最大値(S1_a_MAX,S2_a_MAX)を記録する。
【0026】
位置推定部130は、物音検出部120によりチューブ300に物音と判断された2つの音響信号の各マイクロホン200への到達時間の差に基づいて、チューブ300における物音の位置を推定する。なお、位置推定部130は、相関係数などの手法を用いて物音の位置を推定してもよい。
【0027】
より具体的に説明すると、音速c=340[m/s]、チューブ300の全長L=10[m]、チューブ300の両端のマイクロホン200への物音の到達時間差dt=0.01[s](ただし、Mic1の方の到達時間が早いと仮定)とすると、(1)式が成立する。
【0028】
【数1】

【0029】
(1)式を解法すると、マイクロホンMic1からP_aまでの距離r1_a[m]は、(2)式により求められる。
【0030】
【数2】

【0031】
従って、位置推定部130は、(2)式に、音速c、チューブ300の全長L、到達時間差dtの各値を代入して、マイクロホンMic1からP_aまでの距離r1_a=3.3[m]と推定する。
【0032】
記憶部150は、メモリやハードディスクドライブ装置(HDD)等の記憶媒体であり、後述する補正量(減衰補正量)や、素材に応じて予め定められた複数の異常検出閾値、物音検出部120による物音の判断の際の閾値等を記憶する。
【0033】
異常検出部140は、物音検出部120から2つの音響信号、位置推定部130からチューブ300における物音の位置を入力し、2つの音響信号と物音の位置に基づいて、不審者が監視領域内に侵入したか否かの異常を判断し、異常と判断された場合には警報を出力する。
【0034】
異常検出部140は、図5に示すように、補正部141と、閾値選択部143と、異常判断部145と、警報出力部147とを備えている。
【0035】
補正部141は、推定された物音の位置からチューブ300端部(マイクロホン200)までの距離が長い程、大きい値となる減衰補正量で、2つの音響信号の強度(信号パワー)を補正する。すなわち、チューブ300の複数の位置からチューブ300両端までの距離の差と各位置における物音を2つのマイクロホン200で集音した音響信号の強度の差との関係を予め近似式としての2次多項式(後述)で求めておく。そして、補正部141は、推定された物音の位置と、2つの各音響信号と、この近似式とに基づいて、減衰補正量を算出し、この減衰補正量で物音検出部120から出力された物音の2つの音響信号を補正する。
【0036】
以下、補正部141の減衰補正量を用いた音響信号の補正について具体例を用いて詳述する。マイクロホン200から音源までの距離が遠くなると、マイクロホン200で観測される音響信号は減衰する。そこで、補正部141は、位置推定部130により推定された物音の位置を用いて、物音の位置とチューブ300端部(マイクロホン200)までの距離が長い程、大きな値となる減衰補正量を算出する。
【0037】
図9は、音響チューブセンサ400の施工状態で観測した物音の算出例を示す図である。まず、各物音(P_a〜P_e)について、それぞれのマイクロホン200を基準とした信号パワーの差(S1−S2)、および物音の発生位置からマイクロホン200までの到達距離の差(r2−r1)を算出する。図10は、物音のそれぞれについて、信号パワーの差と到達距離の差との関係をグラフに示した図である。
【0038】
次に、図10に示す各値(S1−S2,r2−r1)の近似曲線を算出する。図11は、近似曲線の一例を示す図である。図11の例では、2次多項式を用いて近似曲線を求めたが、多項式の次数はこれに限定されるものではなく、処理能力や求める精度に応じて任意に設定することができる。本例では、近似曲線の2次多項式は、(3)式で示される。
【0039】
【数3】

【0040】
ここで、係数α、β、γは、図9の例の場合、以下のような値となる。
α=−0.0338
β=2.1004
γ=−4.9427
【0041】
ここで、近似曲線(2次多項式)の切片γは、チューブ300両端のマイクロホン200まで等しい距離における衝撃音の信号パワーの差、すなわちマイクロホン200の機器固有の集音感度差を示している。(3)式に、r1=r2=0を代入すると、次の(4−1)式、(4−2)式が得られる。
【0042】
【数4】

【0043】
従って、音響信号S1にγ[dB]を加算することによって、チューブ300両端のマイクロホン200の集音感度を統一することができる。このため、本実施の形態では、このγの値を上述のように求めて減衰補正量として記憶部150に保存しておく。
【0044】
以上により、補正前の信号パワーをS1、S2,補正後の信号パワーをS1_r,S2_rとすると、減衰補正量γを用いた補正後の信号パワーS1_r,S2_rの算出式は、(5−1)式、(5−2)式で示されることになる。
【0045】
【数5】

【0046】
従って、補正部141は、記憶部150から減衰補正量γを取得して、(5−1)、(5−2)式により、各音響信号の信号パワーS1,S1を補正し、補正後の信号パワーS1_r,S2_rを算出する。
【0047】
図5に戻り、異常検出部140の閾値選択部143は、記憶部150に保存された、素材ごとに予め定められた複数の異常検出閾値または素材ごとに予め定められた異常検出閾値の範囲の中から、位置推定部130により推定された位置と、補正後の音響信号の信号パワーと、音響チューブセンサ400のチューブ300を埋設している素材とに基づいて、素材に応じた異常検出閾値を選択する。
【0048】
ここで、異常検出閾値は、予め音響チューブセンサ400を用いた測定により算出され記憶部150に設定される。例えば、音響チューブセンサ400に、異常検知を行わない閾値算出モードを設け、例えば、人の足音等の実際に検知対象となる衝撃の物音を音響チューブセンサ400に与え、物音の位置の推定を行う。そして、抽出された物音の信号パワーの最大値に対し、上述のように、推定された位置に応じた減衰補正量による補正を行う。
【0049】
例えば、図9に示した、観測された物音がすべて検知対象となる物音であるとして、各物音の音響信号の信号パワーに減衰補正量による補正を行う。図12は、図9の観測された物音の音響信号の信号パワー、マイクロホンMic1からの位置、補正後の音響信号の信号パワーを示す説明図である。この図12により、補正後の信号パワーの最小値が34.9dB、最大値が60.5dBであることから、これらの値が含まれる信号パワーの範囲を異常検出閾値の範囲として定めることができる。ただし、この異常検出閾値の算出手法は一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
【0050】
上述の例のような異常検出閾値の範囲が記憶部150に設定されている場合における異常検出閾値の選択の例について説明する。例えば、マイクロホンMic1から5mまでの範囲が砂利、5m〜10mが土のように、音響チューブセンサ400を埋設している素材が異なる場合を考える。この場合、図9に示す物音は、図13に示す例のように分類される。閾値選択部143は、推定された位置と、図13に示す埋設素材による分類と、減衰補正量による補正後の信号パワーとから、マイクロホンMic1から5mまでの砂利の範囲では、異常検出閾値を、図12で説明した補正後の信号パワーから求めた範囲のうち、34.9dBから39.1dBの範囲の値を異常検出閾値として選択する。また、閾値選択部143は、同様に、5m〜10mの土の範囲では、図12で説明した補正後の信号パワーから求めた範囲のうち、38.9dBから60.5dBの範囲の値を異常検出閾値として選択する。
【0051】
図5に戻り、異常判断部145は、補正後の音響信号の強度(信号パワー)が、閾値選択部143で選択された異常検出閾値を超えているか否かを判断し、異常検出閾値を超えている場合に、検出された物音が異常音であると判断する。ここで、本実施の形態では、異常音として、侵入者が監視領域に侵入した際にチューブ300を踏みつけた衝撃により生じる物音等を考え、異常判断部145は、このような異常音と判断された場合に、監視領域に侵入者が侵入した可能性が高い異常状態であると判断する。
【0052】
警報出力部147は、異常判断部145により異常と判断された場合に、警報を出力し、また、ネットワークを介して監視センタ(不図示)に異常の旨を送信する。
【0053】
次に、以上のように構成された本実施の形態の侵入検知装置100による侵入検知処理について説明する。図14は、本実施の形態の侵入検知処理の手順を示すフローチャートである。
【0054】
まず、音響チューブセンサ400から2つのマイクロホン200で集音されたアナログの各音響信号が侵入検知装置100に入力されると、AD変換部110は、アナログの各音響信号をデジタルの音響信号にA/D変換する(ステップS11)。
【0055】
次に、物音検出部120は、経時的な音響信号の信号パワーが上述の閾値より大きい部分があるか否かを判断する(ステップS13)。そして、信号パワーがすべて閾値以下である場合には(ステップS13:No)、物音はないとして処理を終了する。
【0056】
一方、信号パワーが閾値より大きい部分が音響信号に存在する場合には(ステップS13:Yes)、物音検出部120は、閾値を超えた部分を物音と検出し抽出する。
【0057】
次に、位置推定部130は、抽出された物音の各音響信号のマイクロホン200(Mic1,Mic2)への到達時間の差から、上述の手法で、チューブ300上における物音の位置を推定する(ステップS15)。
【0058】
そして、補正部141は、上述の手法で、推定された位置に基づいて減衰補正量を決定し、物音の音響信号の信号パワーを減衰補正量で補正する(ステップS16)。
【0059】
次に、閾値選択部143は、音響チューブセンサ400が埋設されている素材に応じた異常検出閾値を記憶部150から選択する(ステップS17)。そして、異常判断部145は、補正後の信号パワーが、選択された異常検出閾値より大きいか否かを判断する(ステップS18)。
【0060】
そして、補正後の信号パワーが、選択された異常検出閾値より大きい場合には(ステップS18:Yes)、検出された物音は、侵入者等の侵入によるチューブ300の踏みつけなどの衝撃等の異常音であると判断し、警報出力部147は、異常の旨の警報を出力するとともに(ステップS19)、異常の旨をネットワークを介して監視センタに配信する(ステップS20)。
【0061】
このように本実施の形態では、音響チューブセンサ400の2つのマイクロホン200から集音した2つの音響信号の2つのマイクロホン200への到達時間から物音の位置を推定し、推定した位置に基づいて、音響信号の信号パワーを減衰補正量で補正し、補正後の信号パワーで異常判断を行っているので、音響チューブセンサ400のチューブ300の長さによる物音の減衰を補正して、チューブ300の長さによらず一定の異常検出閾値で異常音の検出を行うことができ、これにより、異常を正確に検知することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、音響チューブセンサ400が埋設されている素材に応じた異常検出閾値を選択して、異常判断を行っているので、音響チューブセンサ400の設置環境によらずに異常を正確に検知することができる。また、これにより、1本のチューブ300が複数の異なる素材に埋設するという施工の場合にも、適切に異常音を検出することができ、より正確な異常検出を行うことができる。
【0063】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
100 侵入検知装置
110 AD変換部
120 物音検出部
130 位置推定部
140 異常検出部
141 補正部
143 閾値選択部
145 異常判断部
147 警報出力部
150 記憶部
200 マイクロホン
300 チューブ
400 音響チューブセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口された中空管と、前記中空管の両端で前記中空管に伝わる音響信号を集音する2つの集音部と、を有するセンサに接続された検知装置であって、
前記2つの集音部で集音された物音の音響信号の各集音部への到達時間の差に基づいて、前記物音を生じさせた前記中空管における物音の位置を推定する位置推定部と、
推定された位置に基づいて、前記音響信号の強度を補正する補正部と、
補正後の前記音響信号の強度が所定の異常検出閾値を超えているか否かを判断し、前記異常検出閾値を超えている場合に、異常と判断する異常判断部と、
を備えたことを特徴とする検知装置。
【請求項2】
前記補正部は、推定された位置から前記集音部までの距離が長い程、大きい値となる減衰補正量で、前記音響信号の強度を補正すること
を特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記推定された位置と、前記2つの集音部で集音された各音響信号と、前記中空管の複数の位置から前記両端部までの距離の差と各位置における物音を前記2つの集音部で集音された音響信号の強度の差との関係を予め近似した近似式と、に基づいて、前記減衰補正量を算出すること
を特徴とする請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
前記近似式は、n次多項式(nは2以上の整数)であることを特徴とする請求項3に記載の検知装置。
【請求項5】
前記推定された位置と前記中空管が埋設された素材と補正後の前記音響信号の強度とに基づいて前記異常検出閾値を選択する閾値選択部をさらに備え、
前記異常判断部は、補正後の前記音響信号の強度が、選択された異常検出閾値を超えているか否かを判断すること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の検知装置。
【請求項6】
前記2つの集音部で集音された各音響信号の強度が所定の閾値より大きいか否かを判断し、大きい場合に、前記集音された音響信号を、前記中空管に対して衝撃を加えた物音の音響信号として検出する物音検出部
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の検知装置。
【請求項7】
前記異常判断部により異常と判断された場合に、警報を出力するとともに、ネットワークに接続された監視センタに異常の旨を送信する警報出力部
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の検知装置。
【請求項8】
両端が開口された中空管と、前記中空管の両端で前記中空管に伝わる音響信号を集音する2つの集音部と、を有するセンサを備えた検知装置で実行される検知方法であって、
前記2つの集音部で集音された物音の音響信号の各集音部への到達時間の差に基づいて、前記物音を生じさせた前記中空管における物音の位置を推定する位置推定ステップと、
推定された位置に基づいて、前記音響信号の強度を補正する補正ステップと、
補正後の前記音響信号の強度が所定の異常検出閾値を超えているか否かを判断し、前記異常検出閾値を超えている場合に、異常と判断する異常判断ステップと、
を含むことを特徴とする検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−211769(P2012−211769A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76232(P2011−76232)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)
【Fターム(参考)】