説明

極めて低い抵抗フィルムおよびそれを変性または生成するための方法

ELR材料からなる極めて低い抵抗(「ELR」)フィルムの動作特性は、ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を堆積して、変性ELRフィルムを生成することによって改善することができる。本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルムは、「c−フィルム」の形をとることができる。そのような動作特性は、高温でのELR状態での動作、追加の電荷の保持、改善された磁気的性質による動作、改善された機械的性質による動作、またはその他の改善された動作特性を含むことができる。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、YBCOなどであるがこれに限定されない混合原子価酸化銅ペロブスカイトである。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料は、クロムなどであるがこれに限定することのない、酸素に容易に結合する伝導性材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、高温で極めて低い抵抗を有するフィルムまたはテープ(「ELRフィルム」または「ELRテープ」)に関し、より詳細には、改善された動作特性で動作する、既存のELRフィルムの変性および/または新しいELRフィルムの生成に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2009年10月2日に出願した「High Temperature Extremely Low Resistance Materials and Methods for Modifying or Creating Same」という名称の米国特許仮出願第61/248,130号明細書の優先権を主張するものである。
【0003】
継続中の研究は、改善された動作特性、例えば超電導材料を含む既存の材料にも勝る、より高い温度で低い電気抵抗を有する新しい材料を実現しようと試みている。科学者らは、「完全導体」、または極めて低い抵抗で動作するがこれまで受け入れられてきた超電導材料の全ての特徴を必ずしも示さなくてもよい材料の、可能性ある存在について理論を立てた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.jmol.org.
【非特許文献2】Selvamanickam,V.ら、"High Current Y-Ba-Cu-O Coated Conductor using Metal Organic Chemical Vapor Deposition and Ion Beam Assisted Deposition"、Proceedings of the 2000 Applied Superconductivity Conference、Virginia Beach、Virginia、2000年9月17〜22日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それらの名称にも関わらず、従来の高温超電導(「HTS」)材料は、依然として非常に低い温度で動作する。事実、ほとんどの一般に使用されるHTS材料は、非常に低い沸点を有する液体(例えば、液体窒素)を使用する冷却システムの使用を、依然として必要とする。そのような冷却システムは、実装コストを増加させ、そのような材料の、広範囲にわたる商業的なかつ消費者向けの使用および/または利用を抑制する。
【0006】
改善された動作特性を有するELRフィルム;公知のELRフィルムを変性させて、この変性ELRフィルムが改善された動作特性で動作するようにするためのメカニズム;および/または新しいELRフィルムを設計し製作するための技法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的に言えば、本発明の様々な実施態様は、既存のELR材料の変性、および/または新しいELR材料を生成するためのプロセスに関する。本発明のいくつかの実施態様では、改善された動作特性を有する変性ELR材料が生成されるように、既存のELR材料を変性させる。これらの動作特性には、より高い温度でのELR状態(例えば、超電導状態を含む。)での動作、同じ(または、より高い)温度での高い電荷保持能力による動作、改善された磁気的性質による動作、改善された機械的性質による動作、および/またはその他の改善された動作特性を含めてもよいが、これらに限定するものではない。以下に、より詳述されるように、この記述においては、ELR材料は:HTS材料を含んだ超電導材料;完全伝導性材料(例えば、完全導体);および極めて低い抵抗を有するその他の伝導性材料を含む。
【0008】
本発明のいくつかの実施態様では、方法は、ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化して、変性ELRフィルムを生成するステップを含み、この変性ELRフィルムは、変性材料を持たないELRフィルムの場合に勝る改善された動作特性を有するものである。
【0009】
本発明のいくつかの実施態様では、方法は、ELRフィルム上にまたはELRフィルム内に適切な表面を形成するステップと、ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化して、変性ELRフィルムを生成するステップとを含み、この変性ELRフィルムは、ELRフィルム単独または変性材料を持たないELRフィルムの場合に勝る、改善された動作特性を有するものである。本発明のさらなる実施態様では、適切な表面は、ELRフィルムのc−平面に実質的に平行ではない。
【0010】
本発明の様々な実施態様では、改善された動作特性には、より高い温度でのELR状態での動作、同じ温度またはより高い温度での高い電荷保持能力による動作、改善された磁気的性質による動作、または改善された機械的性質による動作が含まれる。
【0011】
本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を堆積するステップを含む。本発明のその他の実施態様では、ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を堆積するステップは、MBE、PLD、またはCVDを使用するステップを含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、ELRフィルムのELR材料の結晶構造のc−平面に実質的に平行ではないELRフィルムの面上に、変性材料を層状化するステップを含む。本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、ELR材料の結晶構造のab−平面に平行なELR材料の面上に、変性材料を層状化するステップを含む。本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、ELR材料の結晶構造のa−平面またはb−平面に平行なELR材料の面上に、変性材料を層状化するステップを含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、ELRフィルムの適切な表面上にクロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、ベリリウム、ガリウム、またはセレンを層状化するステップを含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルム上またはELRフィルム内に適切な表面を形成するステップは、ELRフィルム上またはELRフィルム内に適切な表面を露出させるステップを含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルム上またはELRフィルム内に適切な表面を形成するステップは、基材の主軸に沿った方向にELR材料の結晶構造の特定の軸が向くように基材上にELR材料を層状化するステップであって、この特定の軸が、ELR材料の結晶構造のc−平面内にある線であるステップを含む。本発明のその他の実施態様では、特定の軸は、a−軸またはb−軸である。
【0016】
本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルムの適切な表面を露出させるステップは、ELRフィルムの1次表面をエッチングして、この1次表面の表面積を増加させるステップを含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルムの適切な表面を露出させるステップは、ELRフィルムの1次表面にパターンを生成し、それによってELRフィルムの1つまたは複数の適切な表面を露出させるステップを含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルムの1次表面にパターンを生成するステップは、ELRフィルムのELR材料に溝を彫るステップを含む。本発明のいくつかの実施態様では、溝は、実質的に、ELRフィルムの主軸の方向にある。本発明のいくつかの実施態様では、溝は、ELR材料の厚さに実質的に等しい深さを有する。本発明のいくつかの実施態様では、溝は、ELR材料の厚さ未満の深さを有する。本発明のいくつかの実施態様では、少なくとも1つの溝の幅は、10nmよりも大きい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料が、溝の内部に堆積される。
【0019】
本発明のいくつかの実施態様では、方法は、ELRフィルムの1次表面に少なくとも1つの溝を生成し、それによって、ELRフィルムのELR材料の結晶構造のab−平面に平行な面であるELRフィルムの面を露出させ、この露出した面上に変性材料を堆積するステップを含む。
【0020】
本発明のいくつかの実施態様では、露出した面上に変性材料を堆積するステップは、露出した面上に、変性材料の単一の単位層を堆積するステップを含む。本発明のいくつかの実施態様では、露出した面上に変性材料を堆積するステップは、露出した面上に、変性材料の2つ以上の単位層を堆積するステップを含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施態様では、ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、ELRフィルムのc−平面に実質的に平行ではないELRフィルムの面上に、変性材料を層状化するステップを含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施態様では、方法は、変性材料をELR材料に結合して、変性ELR材料を形成するステップであって、この変性ELR材料が、ELR材料単独の場合または変性材料を持たないELR材料の場合よりも高い温度で動作するステップを含む。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、超電導材料である。
【0023】
いくつかの実施態様では、変性材料は、ELR材料上に層状化されて、ELR材料単独の場合または変性材料を持たないELR材料の場合に勝る改善された動作特性により動作する、変性ELR材料を形成する。ELR材料は、混合原子価酸化銅ペロブスカイトと呼ばれるELR材料のファミリーから選択されてもよい。いくつかの実施態様では、変性材料は、下記の任意の1つもしくは組合せ、すなわちクロム(Cr)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ロジウム(Rh)、ベリリウム(Be)、ガリウム(Ga)、および/またはセレン(Se)から選択されてもよい。
【0024】
本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、ELR材料単独の場合または変性材料を持たないELR材料の場合よりも高い温度で、ELR状態で動作するように、ELR材料とこのELR材料に結合された変性材料とを含んでいる。
【0025】
本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、ELR材料を含む第1の層と、変性材料を含む第2の層とを含み、この第2の層は、第1の層に結合されている。本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、ELR材料を含む第1の層と、この第1の層に結合された、変性材料を含む第2の層と、ELR材料を含む第3の層と、この第3の層が結合された、変性材料の第4の層とを含む。本発明のいくつかの実施態様では、第2の層は第1の層上に堆積される。本発明のいくつかの実施態様では、第1の層は第2の層上に堆積される。本発明のいくつかの実施態様では、第1の層のELR材料は第2の層上に形成される。本発明のいくつかの実施態様では、第1の層は、少なくとも、ELR材料の単結晶単位セルの厚さを有する。本発明のいくつかの実施態様では、第1の層は、ELR材料のいくつかの結晶単位セルの厚さを有する。本発明のいくつかの実施態様では、第2の層は、少なくとも、変性材料の単一の単位(例えば、原子、分子、結晶、単位セル、またはその他の単位)の厚さを有する。本発明のいくつかの実施態様では、第2の層は、変性材料のいくつかの単位の厚さを有する。
【0026】
本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、YBCOを含む第1の層と、変性材料を含む第2の層とを含み、この第2の層の変性材料は、第1の層のYBCOに結合されており、変性材料は:クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、ベリリウム、ガリウム、またはセレンを含む群のいずれか1つまたは複数として選択された元素である。本発明のいくつかの実施態様では、第2の層の変性材料は、第1の層のYBCOの面に結合されており、この面は、YBCOのc−軸に実質的に平行である。本発明のいくつかの実施態様では、第2の層の変性材料は、第1の層のYBCOの面に結合されており、この面は、YBCOのab−平面に実質的に平行である。本発明のいくつかの実施態様では、第2の層の変性材料は第1の層のYBCOの面に結合されており、この面は、YBCOのb−軸に実質的に垂直である。本発明のいくつかの実施態様では、第2の層の変性材料は第1の層のYBCOの面に結合されており、この面は、YBCOのa−軸に実質的に垂直である。
【0027】
本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は超電導材料を含む。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、混合原子価酸化銅ペロブスカイト材料を含む。本発明のいくつかの実施態様では、混合原子価酸化銅ペロブスカイト材料は、LaBaCuO、LSCO、YBCO、BSCCO、TBCCO、HgBa2Ca2Cu3x、またはその他の混合原子価酸化銅ペロブスカイト材料と総称して呼ばれる群から選択されてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、鉄プニクタイド材料を含む。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、二ホウ化マグネシウムを含む。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料は、伝導性材料であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料は、酸素と容易に結合する材料であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料は、酸素と容易に結合する伝導性材料(「酸素結合伝導性材料」)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料は、クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、ベリリウム、ガリウム、および/またはセレンのいずれか1つまたは組合せであってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料と変性材料との様々な組合せを使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料がYBCOであり、変性材料がクロムである。
【0028】
本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料と変性材料との複合体は、ELR材料単独の場合または変性材料を持たないELR材料の場合よりも高い温度で動作する。本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、ELR材料単独の場合または変性材料を持たないELR材料の場合よりも高い温度でのELRを実証する。本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、ELR材料単独の場合または変性材料を持たないELR材料の場合よりも高い温度で、非ELR状態からELR状態に遷移する。本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、ELR材料単独の場合または変性材料を持たないELR材料の場合よりも高い遷移温度を有する。本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、ELR材料単独または変性材料を持たないELR材料によって伝達される場合よりも大量の電流を、ELR状態で伝達する。
【0029】
本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、ELR材料単独または変性材料を持たないELR材料よりも高い温度で、ELR状態で動作する。本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、下記の温度、すなわち:200K、210K、220K、230K、240K、250K、260K、270K、280K、290K、300K、または310Kのいずれか1つよりも高い温度で、ELR状態で動作する。
【0030】
ELR材料がYBCOである本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、YBCO単独または変性材料を持たないYBCOの場合に勝る、改善された動作特性を有する。ELR材料がYBCOである本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、YBCO単独の場合または変性材料を持たないYBCOの場合よりも高い温度で動作する。ELR材料がYBCOである本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、YBCO単独の場合または変性材料を持たないYBCOの場合よりも高い温度で、極めて低い抵抗であることを実証する。ELR材料がYBCOである本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、YBCO単独の場合または変性材料を持たないYBCOの場合よりも高い温度で、非ELR状態からELR状態に遷移する。ELR材料がYBCOである本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、YBCO単独の場合または変性材料を持たないYBCOの場合よりも高い遷移温度を有する。ELR材料がYBCOである本発明のいくつかの実施態様では、複合体は、単独でまたは変性材料を持たずにそのELR状態でYBCOにより伝達される場合よりも大量の電流を、ELR状態で伝達する。
【発明の効果】
【0031】
本発明のいくつかの実施態様では、ELR複合体は、ELR材料からなる第1の層と、第1の層のELR材料に結合された変性材料からなる第2の層とを含み、このELR複合体は、変性材料を持たないELR材料の動作特性に勝る、改善された動作特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明のさらなる理解をもたらすために含まれ、かつ本明細書に組み込まれ本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の様々な例示的な実施態様を示し、詳細な説明と一緒になって本発明の様々な原理および/または態様を説明する働きをする。
【0033】
【図1】第1の角度から見た例示的なELR材料の結晶構造を示す図である。
【図2】第2の角度から見た例示的なELR材料の結晶構造を示す図である。
【図3】第2の角度から見た例示的なELR材料の結晶構造を示す図である。
【図4】ELR材料の結晶構造の、概念的な機械的モデルを示す図である。
【図5】ELR材料の、本発明の様々な実施態様による、改善された結晶構造の概念的な機械的モデルを示す図である。
【図6】ELR材料の、本発明の様々な実施態様による、改善された結晶構造の概念的な機械的モデルを示す図である。
【図7】例示的なELR材料の、本発明の様々な実施態様による、改善された結晶構造の概念的な機械的モデルを示す図である。
【図8】ELR材料の、本発明の様々な実施態様による、改善された結晶構造の概念的な機械的モデルを示す図である。
【図9】ELR材料の、本発明の様々な実施態様による、改善された結晶構造の概念的な機械的モデルを示す図である。
【図10】第2の角度から見たELR材料の、本発明の様々な実施態様による、変性した結晶構造を示す図である。
【図11】第1の角度から見たELR材料の、本発明の様々な実施態様による、変性した結晶構造を示す図である。
【図12】本発明の様々な実施態様による、ELR材料から変性材料を生成するためのフローチャートを示す図である。
【図13A】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料の調製を示す図である。
【図13B】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料の調製を示す図である。
【図13C】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料の調製を示す図である。
【図13D】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料の調製を示す図である。
【図13E】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料の調製を示す図である。
【図13F】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料の調製を示す図である。
【図13G】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料の調製を示す図である。
【図13H】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料の調製を示す図である。
【図13I】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料の調製を示す図である。
【図13J】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料の調製を示す図である。
【図14】本発明の様々な実施態様による、ELR材料上に変性材料を堆積するためのフローチャートを示す図である。
【図15】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料の様々な動作特性を決定するのに有用な、試験床を示す図である。
【図16A】変性ELR材料の様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図16B】変性ELR材料の様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図16C】変性ELR材料の様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図16D】変性ELR材料の様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図16E】変性ELR材料の様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図16F】変性ELR材料の様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図16G】変性ELR材料の様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図17】第2の角度から見た例示的なELR材料の、結晶構造を示す図である。
【図18】第2の角度から見た例示的なELR材料の、結晶構造を示す図である。
【図19】第2の角度から見た例示的なELR材料の、結晶構造を示す図である。
【図20】本発明の様々な実施態様による、電荷を伝搬するのに有用な、ELR材料と変性材料との配置を示す図である。
【図21】例示的なELR材料の単一の単位セルを示す図である。
【図22】第2の角度から見た例示的なELR材料の結晶構造を示す図である。
【図23】本発明の様々な実施態様による例示的な表面変性ELR材料の、多層の結晶構造を示す図である。
【図24】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料、すなわちクロムを変性材料として有しかつYBCOをELR材料として有する材料の、様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図25】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料、すなわちバナジウムを変性材料として有しかつYBCOをELR材料として有する材料の、様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図26】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料、すなわちビスマスを変性材料として有しかつYBCOをELR材料として有する材料の、様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図27】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料、すなわち銅を変性材料として有しかつYBCOをELR材料として有する材料の、様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図28】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料、すなわちコバルトを変性材料として有しかつYBCOをELR材料として有する材料の、様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図29】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料、すなわちチタンを変性材料として有しかつYBCOをELR材料として有する材料の、様々な動作特性を実証する試験結果を示す図である。
【図30】第3の角度から見た例示的なELR材料の結晶構造を示す図である。
【図31】本発明の様々な実施態様について記述するのに有用な、基準座標系を示す図である。
【図32】本発明の様々な実施態様による、ELR材料のc−フィルムを示す図である。
【図33】本発明の様々な実施態様による、ELR材料の適切な表面を有するc−フィルムを示す図である。
【図34】本発明の様々な実施態様による、ELR材料の適切な表面を有するc−フィルムを示す図である。
【図35】本発明の様々な実施態様による、ELR材料の適切な表面上に層状化された変性材料を示す図である。
【図36】本発明の様々な実施態様による、ELR材料の適切な表面上に層状化された変性材料を示す図である。
【図37】本発明の様々な実施態様による、ELR材料の適切な表面を含む、エッチングされた表面を有するc−フィルムを示す図である。
【図38】本発明の様々な実施態様による、ELR材料の適切な表面を有するc−フィルムのエッチングされた表面上に層状化された変性材料を示す図である。
【図39】本発明の様々な実施態様による、ELR材料の適切な表面を有する、任意選択の基材を含むa−bフィルムを示す図である。
【図40】本発明の様々な実施態様による、a−bフィルムのELR材料の適切な表面上に層状化された変性材料を示す図である。
【図41】本発明の様々な実施態様による、ELR材料層、変性材料層、緩衝材もしくは絶縁層、および/または基材の様々な例示的な配置を示す図である。
【図42】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料を形成するためのプロセスを示す図である。
【図43】本発明の様々な実施態様による、実行することができる追加の処理の例を示す図である。
【図44】本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料を形成するためのプロセスを示す図である。
【図45】第2の角度から見た例示的なELR材料の結晶構造を示す図である。
【図46】第2の角度から見た例示的なELR材料の結晶構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の様々な特徴、利点、および実施態様は、以下の詳細な記述、図面、および特許請求の範囲を検討することによって説明することができまたは明らかにすることができる。詳細な記述および図面は例示的なものであり、特許請求の範囲に記載される内容を除き本発明の範囲を限定することなくさらなる説明を提供することを意図するものであることが理解される。
【0035】
本発明の様々な実施態様は、ELRフィルム(ELR材料を含む。)に関し、より詳細には、改善された動作特性により動作する既存のELRフィルムの変性および/または新しいELRフィルムの生成に関する。新規なELRフィルムは、例えば、複合体、生成物、製造のプロセス、プロセスにより限定される生成物、新規なELRフィルムを作製する方法であって、例えば新しい技術的効果を得るためのものを包含することができる。
【0036】
この記述においては、極めて低い抵抗(「ELR」)材料に:HTS材料を含むがこれに限定されない超電導材料;完全伝導性材料(例えば、完全導体);および極めて低い抵抗を有するその他の伝導性材料を含めてもよい。さらに、この記述においては、ELR材料および/または本発明の様々な実施態様に関する動作特性には、そのELR状態(例えば、超電導体、超電導状態に関する。)におけるELR材料の抵抗、ELR材料のそのELR状態への遷移温度、そのELR状態におけるELR材料の電荷伝搬能力、ELR材料の1つまたは複数の磁気的性質、ELR材料の1つまたは複数の機械的性質、および/またはELR材料のその他の動作特性を含めてもよいが、これらに限定するものではない。さらに、この記述においては、「極めて低い抵抗」は、その超電導状態にある第II種超電導材料の磁束フロー抵抗に、その大きさが類似した抵抗であり、一般に、ゼロオーム−cmから、293Kでの実質的に純粋な銅の抵抗率の50分の1(1/50)までの範囲の、抵抗率という用語で表すことができる。例えば、本明細書で使用される実質的に純粋な銅は、99.999%の銅である。本発明の様々な実施態様において、変性したかつ/または新しいELR材料の一部は、ゼロオーム−cmから3.36×10-8オーム−cmまでの範囲の抵抗率を有する。
【0037】
ELR材料、特に超電導材料の遷移温度(臨界温度と呼ばれる場合もある。)の漸進的な改善は、ELR材料が動作するメカニズムの理解によるものではなく、試行錯誤に基づくと考えられる。そのような理解がないと、公知のELR材料(またはその種類)の遷移温度(またはその他の動作特性)のさらなる改善、ならびに新しいELR材料の設計は、制限される。一般に理解されるように、遷移温度は、その下の温度でELR材料が「動作し」または極めて低い抵抗および/またはELR材料に関連したその他の現象を示す(または示し始める)、温度である。極めて低い抵抗で動作する場合、ELR材料は、ELR状態にあると見なされる。遷移温度よりも高い温度では、ELR材料は極めて低い抵抗を示さなくなり、ELR材料は、その非ELR状態にあると見なされる。言い換えれば、遷移温度は、ELR材料がその非ELR状態とそのELR状態との間で変化する温度に相当する。理解されるように、いくつかのELR材料の場合、遷移温度は、その上の温度でELR材料がその非ELR状態とそのELR状態との間で変化する温度の範囲にあってもよい。やはり理解されるように、ELR材料は、ELR材料が温まるときの1つの遷移温度およびELR材料が冷却されるときの別の遷移温度を有するその遷移温度内でヒステリシスを有していてもよい。
【0038】
図31は、本発明の様々な実施態様を記述するのに使用することができる、基準座標系3100を示す。基準座標系3100は、a−軸、b−軸、およびc−軸と呼ばれる一組の軸を含む。この記述においては:a−軸と言った場合はa−軸およびそれに平行な任意のその他の軸を含み;b−軸と言った場合はb−軸およびそれに平行な任意のその他の軸を含み;c−軸と言った場合はc−軸およびそれに平行な任意のその他の軸を含む。これらの軸の様々な対は、a−平面、b−平面、およびc−平面と呼ばれる一組の平面を基準座標系3100に形成し:a−平面は、b−軸およびc−軸により形成され、a−軸に垂直であり;b−平面は、a−軸およびc−軸により形成され、b−軸に垂直であり;c−平面は、a−軸およびb−軸により形成され、c−軸に垂直である。この記述においては:a−平面と言った場合、a−平面およびそれに平行な任意の平面を含み;b−平面と言った場合、b−平面およびそれに平行な任意の平面を含み;c−平面と言った場合、c−平面およびそれに平行な任意の平面を含む。さらに、本明細書に記述される結晶構造の様々な「面」または「表面」に関して、a−平面に平行な面を「b−c」面と呼んでもよいこともあり;b−平面に平行な面を「a−c」面と呼んでもよいこともあり;c−平面に平行な面を「a−b」面と呼んでもよいこともある。
【0039】
図1は、第1の角度、すなわち結晶構造100の「a−b」面に垂直でありかつそのc−軸に平行な角度から見た、例示的なELR材料の結晶構造100を示す。図2は、第2の角度、すなわち結晶構造100の「b−c」面に垂直でありかつそのa−軸に平行な角度から見た、結晶構造100を示す。図22は、例示的なELR材料の結晶構造100の、追加の深さ(すなわち、このページに入る。)を示す。この記述においては、図1、図2、および図22に示される例示的なELR材料は、一般に、様々なELR材料を代表する。本発明のいくつかの実施態様において、例示的なELR材料は、混合原子価酸化銅ペロブスカイトと呼ばれる超電導材料のファミリーの代表であってもよい。混合原子価酸化銅ペロブスカイト材料には、LaBaCuOx、LSCO(例えば、La2-xSrxCuO4など)、YBCO(例えば、YBa2Cu37など)、BSCCO(例えば、Bi2Sr2Ca2Cu310など)、TBCCO(例えば、Tl2Ba2Ca2Cu310、またはTlmBa2Can-1Cun2n+m+2+δ)、HgBa2Ca2Cu3x、およびその他の混合原子価酸化銅ペロブスカイト材料が含まれるが、これらに限定するものではない。その他の混合原子価酸化銅ペロブスカイト材料は、理解されるような陽イオンの様々な置換を含んでもよいが、これらに限定されない。やはり理解されるように、前述の命名された混合原子価酸化銅ペロブスカイト材料は、多くの異なる配合物が存在する材料の包括的な種類を指すことができる。本発明のいくつかの実施態様において、例示的なELR材料は、混合原子価酸化銅ペロブスカイト材料のファミリーの範囲外のHTS材料(「非ペロブスカイト材料」)を含んでいてもよい。そのような非ペロブスカイト材料には、鉄プニクタイド、二ホウ化マグネシウム(MgB2)、およびその他の非ペロブスカイトを含めることができるが、これらに限定するものではない。本発明のいくつかの実施態様において、例示的なELR材料は、その他の超電導材料であってもよい。アパーチャ210を有するその他の材料は、理解されるように本発明の様々な態様により活用することができる。
【0040】
多くのELR材料は、理解されるように、異なる原子、原子の組合せ、および/または格子配列を有する結晶構造100の場合に類似した(必ずしも同一ではないが)構造を有する。図2に示されるように、結晶構造100は、例示的なELR材料の、2つの完全単位セルで示され、基準線110の上方の1つの単位セルと基準線110の下方の1つの単位セルとを有している。図21は、例示的なELR材料の単一の単位セル2100を示す。
【0041】
一般的に言えば、理解されるように、例示的なELR材料の単位セル2100は6「面」:c−平面に平行な2つの「a−b」面;b−平面に平行な2つの「a−c」面;およびa−平面に平行な2つの「b−c」面を含む(例えば、図31参照)。やはり理解されるように、マクロ的な意味でのELR材料の「表面」は、多数の単位セル2100(例えば、何百、何千、またはそれ以上)からなるものであってもよい。この記述において、ELR材料の「表面」または「面」が特定の平面(例えば、a−平面、b−平面、またはc−平面)に平行であると言う場合、その表面は、特定の平面に実質的に平行な単位セル2100の面から、主に(すなわち、大部分が)形成されていることを示す。さらに、この記述において、ELR材料の「表面」または「面」がa−平面、b−平面、またはc−平面以外の平面(例えば、以下に記述のab−平面など)に平行であると言う場合、表面は、全体としてマクロ的な意味で、そのようなその他の平面に実質的に平行な表面を形成する単位セル2100の面のいくつかの混合物から形成されることを示す。
【0042】
研究は、いくつかのELR材料が、抵抗現象の異方的(すなわち、指向的)依存性を実証することを示す。言い換えれば、所与の温度および電流密度での抵抗は、結晶構造100に対する方向に依存する。例えば、それらのELR状態では、いくつかのELR材料はゼロ抵抗で、そのような材料がc−軸の方向でなす場合よりも著しく大量の電流を、a−軸の方向にかつ/またはb−軸の方向に流すことができる。理解されるように、様々なELR材料は、上述の場合以外の方向、上述の場合に加えた方向、または上述の場合を組み合わせた方向に、抵抗現象を含めた様々な性能現象で異方性を示す。この記述においては、第1の方向に抵抗現象(および類似の言語)を示す傾向がある材料と言う場合、その材料は、第1の方向でそのような現象を裏付けることを示し;第2の方向に抵抗現象(および類似の言語)を示す傾向がない材料と言う場合、その材料は、第2の方向でそのような現象を裏付けず、またはその他の方向からは徐々に少なくなるようになされることを示す。
【0043】
したがって公知のELR材料の従来の理解では、複数のアパーチャ原子250によって結晶構造100内に形成されたアパーチャ210を、抵抗現象に関与しているものとして非常に認識できなかった(例えば、アパーチャ210が単一の単位セル2100の描写で容易に明らかにされていない、図21参照)。以下にさらに記述されるように、アパーチャ210は、多くの公知のELR材料に存在する。ある意味で、アパーチャ原子250は、アパーチャ210の周りに別々の原子「境界」または「外周」を形成すると見なすことができる。本発明のいくつかの実施態様では、図2に示されるように、アパーチャ210は、結晶構造100の第1の部分220と第2の部分230との間に現れるが、本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、様々なその他の結晶構造のその他の部分に現れてもよい。アパーチャ210、アパーチャ310、およびその他のアパーチャが、単純な「球」として原子の描写に基づき図2、図3、および図面のその他の箇所に示されているが、そのようなアパーチャは、とりわけ、アパーチャ原子250を含めた結晶構造100の様々な原子の電子およびそれに関連した電子密度(他に示されていない。)に関係しかつそれらによって成形されることが理解されよう。
【0044】
本発明の様々な態様によれば、アパーチャ210は、結晶構造100内を通る電荷の伝搬を容易にし、アパーチャ210が結晶構造100内を通しての電荷の伝搬を容易にする場合、ELR材料はそのELR状態で動作する。この記述においては、「伝搬する(propagates)」、「伝搬している(propagating)」、および/または「伝搬を容易にする(facilitating propagation)」(それらのそれぞれの形と共に)は、一般に、「伝導する(conducts)」、「伝導している(conducting)」、および/または「伝導を容易にする(facilitating conduction)」、およびそれらのそれぞれの形;「輸送する(transports)」、「輸送している(transporting)」、および/または「輸送を容易にする(facilitating transport)」、およびそれらのそれぞれの形;「誘導する(guides)」、「誘導している(guiding)」、および/または「誘導を容易にする(facilitating guidance)」、およびそれらのそれぞれの形;および/または「伝達する(carry)」、「伝達している(carrying)」、および/または「伝達を容易にする(facilitating carrying)」、およびそれらのそれぞれの形を指す。この記述においては、電荷は、正電荷または負電荷、および/またはそのような電荷の対もしくはその他の群を含んでいてもよい。この記述においては、電流キャリアは電子を含んでもよいが、これに限定するものではない。本発明のいくつかの実施態様において、アパーチャ210は、結晶構造100内を通して負電荷を伝搬する。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、結晶構造100内を通して正電荷を伝搬する。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、結晶構造100内を通して電荷の対またはその他の群を伝搬する。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、結晶構造100内を通して電流キャリアを伝搬する。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、結晶構造100内を通して電流キャリアの対またはその他の群を伝搬する。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、結晶構造100内を通して、1つまたは複数の粒子の形をとる電荷を伝搬する。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、結晶構造100内を通して、1つまたは複数の粒子の形をとる電子、電子の対、および/または電子の群を伝搬する。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、結晶構造100内を通して、1つまたは複数の波または波束の形をとる電荷を伝搬する。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、結晶構造100内を通して、1つまたは複数の波または波束の形をとる電子、電子の対、および/または電子の群を伝搬する。
【0045】
本発明のいくつかの実施態様において、結晶構造100内を通しての電荷の伝搬は、導波路の場合に類似した方式であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、結晶構造100内を通しての電荷の伝搬に関する導波路であってもよい。導波路およびその動作は、一般に十分理解されている。特に、導波路の内部の周辺壁は、アパーチャ210の周りのアパーチャ原子250の境界または外周に対応してもよい。導波路の動作に関連した1つの態様は、その断面である。典型的には、導波路の断面は、導波路内を通して伝搬することが可能なシグナルの波長に関係する。したがって、アパーチャ210内を通して伝搬する電荷の波長は、アパーチャ210の断面に関係する可能性がある。原子レベルで、アパーチャ210および/またはその断面は、ELR材料の温度変化と共に実質的に変化する可能性がある。例えば、本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料の温度変化は、アパーチャ210およびその動作特性に変化を引き起こす可能性があり、それによってELR材料を、そのELR状態からその非ELR状態の間で遷移させ得る。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料の温度が上昇するにつれ、アパーチャ210は、結晶構造100内を通しての電荷の伝搬を制限しまたは妨げる可能性があり、対応するELR材料は、そのELR状態からその非ELR状態に遷移し得る。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料の温度が上昇するにつれ、アパーチャ210の断面が変化する可能性があり、それによってアパーチャ210の動作は、導波路に類似した方式で阻害され、対応するELR材料は、そのELR状態からその非ELR状態に遷移し得る。同様に、ELR材料の温度が下降するにつれ、本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は結晶構造100内を通しての電荷の伝搬を容易にすることができ(制限しまたは妨げるのとは対照的に)、対応するELR材料は、その非ELR状態からそのELR状態に遷移することができる。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210の断面を変化させることができ、それによって導波路としての(またはそれに類似した方式で)アパーチャ210の動作が容易になり、対応するELR材料は、その非ELR状態からそのELR状態に遷移することができる。
【0046】
本発明の様々な実施態様によれば、アパーチャ210が所与のELR材料中に「維持される」限り、ELR材料はELR状態で動作すべきである。本発明の様々な実施態様において、アパーチャ210が所与のELR材料中に維持される限り、アパーチャ210はELR状態で動作すべきである。本発明の様々な実施態様では、アパーチャ210の維持には:ELR状態でのアパーチャ210の維持;ELR状態で結晶構造100内を通して電荷を伝搬するというアパーチャ210の能力の維持;ELR材料がELR状態で動作するような、互いに対するアパーチャ原子250の維持;ELR材料がELR状態で動作するような、結晶構造100内のその他の原子に対するアパーチャ原子250の維持;ELR材料がELR状態のままであるような、その内部を通して電荷を伝搬させるのに十分なアパーチャ210の断面の維持;ELR材料がELR状態のままであるように、電荷の伝搬を妨げず、制限せず、またはその他の方法で妨害しないようなアパーチャ210の断面の維持;ELR材料がELR状態のままであるような、その内部を通して電流キャリアを伝搬させるのに十分なアパーチャ210の断面の維持;ELR材料がELR状態のままであるように、電流キャリアを妨害しないようなアパーチャ210の断面の維持;ELR材料がELR状態のままであるような、障害を実質的に含まないアパーチャ210の維持;ELR材料が、改善された動作特性で動作するような、アパーチャ210の維持;ELR材料が、改善された動作特性を有するELR状態で動作するような、アパーチャ210の強化;強化されたアパーチャが、改善された動作特性を有するELR状態で動作するような、アパーチャ210の強化;および/またはELR材料がELR状態で動作するような、アパーチャ210を維持するその他の方法を含めることができる。本発明の様々な実施態様によれば、既存のELR材料中にアパーチャ210を維持することによって、これら既存のELR材料の動作特性を改善することができる。本発明の様々な実施態様によれば、新しい材料中にアパーチャ210を維持することによって、そのいくつかが既存のELR材料よりも改善された動作特性を有することができる、新しいELR材料をもたらすことができる。本発明の様々な実施態様によれば、温度が上昇するときにアパーチャ210が所与のELR材料中に維持される限り、ELR材料はELR状態で動作すべきである。本発明の様々な実施態様によれば、結晶構造100内を通して電荷が伝搬するようにアパーチャ210が維持される限り、ELR材料はELR状態で動作すべきである。本発明の様々な実施態様によれば、結晶構造100内を通して電流キャリアが伝搬するようにアパーチャ210が維持される限り、ELR材料はELR状態で動作すべきである。本発明の様々な実施態様によれば、アパーチャ原子250が所与のELR材料中で互いに対して維持される限り、ELR材料はELR状態で動作すべきである。本発明の様々な実施態様によれば、アパーチャ原子250が、所与のELR材料中の結晶構造100内でその他の原子に対して維持される限り、ELR材料はELR状態で動作すべきである。本発明の様々な実施態様によれば、アパーチャ210の断面が、所与のELR材料中のアパーチャ210内を通して電荷が伝搬するよう十分維持される限り、ELR材料はELR状態で動作すべきである。本発明の様々な実施態様によれば、アパーチャ210の断面が、所与のELR材料中のアパーチャ210内を通して電流キャリアが伝搬するよう十分維持される限り、ELR材料はELR状態で動作すべきである。本発明の様々な実施態様によれば、電荷がアパーチャ210を通して妨害を少ししかまたは全く受けないように、アパーチャ210の断面が維持される限り、ELR材料はELR状態で動作すべきである。本発明の様々な実施態様によれば、電流キャリアがアパーチャ210を通して妨害を少ししかまたは全く受けないように、アパーチャ210の断面が維持される限り、ELR材料はELR状態で動作すべきである。本発明の様々な実施態様によれば、アパーチャ210の断面が、所与のELR材料中に障害を実質的に含まずに維持される限り、ELR材料はELR状態で動作すべきである。
【0047】
本発明の様々な実施態様によれば、妨害がほとんどまたは全くない状態でアパーチャ210がその内部を通して電荷を伝搬するように、アパーチャ210を維持することができかつ/または維持するように設計することができる。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210内を通して伝搬する電荷は、光導波路内で反射が生じる方法と同様に、アパーチャ210の境界または「壁」と弾性的に衝突する。より具体的には、アパーチャ210内を通して伝搬する電荷は、アパーチャ210の境界または壁を含む様々なアパーチャ原子250と弾性的に衝突する。そのような衝突が弾性的である限り、電荷は、アパーチャ210内を通して伝搬するときにその損失(すなわち、「抵抗」)が最小限に抑えられることになる。
【0048】
図2のアパーチャ210などであるがこれに限定されないアパーチャは、図3、図17、図18、図19、図45、図46などに示され、また以下に示される、様々なELR材料などであるがこれらに限定されない様々なELR材料中に存在する。図示されるように、そのようなアパーチャは、ELR材料のいくつかまたは全ての結晶構造に本来備わっているものである。アパーチャ210の様々な形、形状、サイズ、および数は、この記述に照らして理解されるようなELR材料の、結晶構造の精密な構成、原子の組成、および結晶構造内の原子の配列に応じて、ELR材料中に存在する。
【0049】
様々なELR材料の結晶構造100内を通して様々な軸の方向に延びるアパーチャ210の存在および不在は、そのようなELR材料によって実証される異方的依存性と矛盾しないものである。例えば、以下にさらに詳細に論じるように、図3、図17、図18、図19、図45、図46などに示される様々なELR材料は、これらの材料が抵抗現象を示す方向に延びるアパーチャを有し;同様に、これらのELR材料は、これらの材料が抵抗現象を示さない方向に延びるアパーチャを持たない傾向にある。例えば、YBCO−123は、a−軸およびb−軸の方向に抵抗現象を示すが、c−軸の方向に抵抗現象を示さない傾向がある。図3、図11、および図30に示されるELR材料360は、YBCO−123に対応する。YBCO−123により示される抵抗現象の異方的依存性とは矛盾することなく、図3は、a−軸の方向に結晶構造300内を通して延びるアパーチャ310を示し;図30は、アパーチャ310およびアパーチャ3010が、b−軸の方向に結晶構造300内を通して延びる状態を示し;図11は、c−軸の方向に結晶構造300内を通して延びる適切なアパーチャがない状態を示す。
【0050】
アパーチャ210および/またはその断面は、アパーチャ原子250の様々な原子特性に依存する可能性がある。そのような原子特性には、原子サイズ、原子量、電子の数、結合の数、結合の長さ、結合強度、アパーチャ原子間の結合角、アパーチャ原子と非アパーチャ原子との間の結合角、および/または同位体の数が含まれるが、これらに限定するものではない。アパーチャ原子250は、結晶構造および/またはその内部の原子に関してアパーチャ210を、そのサイズ、形状、剛性、および振動モード(振幅、周波数、および方向において)において最適化するように、それに対応する原子特性に基づいて選択されてもよい。
【0051】
本発明のいくつかの実施態様において、アパーチャ原子250の少なくともいくつかは、高い電気陰性度を有する原子、例えば酸素であるがこれに限定するものではない原子を含む。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ原子250の少なくともいくつかは、そのバルク形態である程度の伝導率を有すると理解される元素の原子を含む。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ原子250のいくつかは、高い電気陰性度を有する原子を含み、アパーチャ原子250のその他のいくつかは、ある程度の伝導率を有すると理解される元素の原子を含む。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ原子250は、アパーチャ210内を通して伝搬する電荷の供給源(例えば、電子など)を提供することができる。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ原子250は、そのような電荷の流れをアパーチャ210内を通して引き起こすために、電荷の容易に入手可能な供給源を提供することができる。
【0052】
アパーチャ210および/またはその断面は、「非アパーチャ原子」(すなわち、アパーチャ原子250以外の結晶構造100内の原子)の様々な原子特性に依存する可能性がある。そのような原子特性には、原子サイズ、原子量、電子の数、電子構造、結合の数、結合のタイプ、種々の結合、多重結合、結合の長さ、結合強度、および/または同位体の数が含まれるが、これらに限定するものではない。非アパーチャ原子は、結晶構造および/またはその内部の原子に関してアパーチャ210を、そのサイズ、形状、剛性、およびその振動モード(振幅、周波数、および方向において)において最適化するように、それに対応する原子特性に基づいて選択されてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、非アパーチャ原子は、アパーチャ210内を通して伝搬する電荷(例えば、電子など)の供給源を提供することができる。本発明のいくつかの実施態様では、非アパーチャ原子は、そのような電荷の流れをアパーチャ210内を通して引き起こすために、電荷の容易に入手可能な供給源を提供することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施態様において、アパーチャ210は、アパーチャ原子250に関連して、非アパーチャ原子の様々な原子特性に依存してもよい。本発明のいくつかの実施態様において、アパーチャ210は、非アパーチャ原子に関連して、アパーチャ原子250の様々な原子特性に依存してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、その他のアパーチャ原子250に関連して、アパーチャ原子250の様々な原子特性に依存してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、その他の非アパーチャ原子に関連して、非アパーチャ原子の様々な原子特性に依存してもよい。
【0054】
本発明の様々な実施態様によれば、結晶構造110内のアパーチャ210への変化は、抵抗現象に影響を及ぼす可能性がある。本発明の様々な実施態様によれば、アパーチャ210の断面への変化は、抵抗現象に影響を及ぼす可能性がある。本発明の様々な実施態様によれば、障害のサイズ、障害の数、またはそのような障害が現れる頻度もしくは可能性への変化を含めたアパーチャ210内の障害への変化は、抵抗現象に影響を及ぼす可能性がある。本発明のいくつかの実施態様では、そのような障害は、アパーチャ原子250の様々な原子特性に依存する可能性がある。本発明のいくつかの実施態様では、そのような障害は、非アパーチャ原子の様々な原子特性に依存する可能性がある。原子特性には、原子サイズ、原子量、電子の数、電子構造、結合の数、結合のタイプ、種々の結合、多重結合、結合の長さ、結合強度、および/または同位体の数が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0055】
本発明の様々な実施態様によれば、その断面の形状および/またはサイズの変化を含めたアパーチャ210の物理構造の変化は、抵抗現象に影響を及ぼす可能性がある。本発明の様々な実施態様によれば、アパーチャ210の電子構造の変化は、抵抗現象に影響を及ぼす可能性がある。本発明の様々な実施態様によれば、アパーチャ原子250に影響を及ぼす結晶構造100の変化は、抵抗現象に影響を及ぼす可能性がある。アパーチャ原子250に影響を及ぼす変化には:1)アパーチャ原子の核の、その他のアパーチャ原子に対する変位;2)アパーチャ原子に対する非アパーチャ原子の核の変位;3)アパーチャおよび/または非アパーチャ原子の可能性あるエネルギー状態の変化;および4)そのような可能性あるエネルギー状態の占有率の変化を含めることができるが、これらに限定するものではない。そのような変化またはそのような変化の組合せのいずれかは、アパーチャ210に影響を及ぼす可能性がある。例えば、結晶構造100の温度が上昇するにつれ、アパーチャ210の断面は、結晶構造100内の様々な原子の振動ならびに結晶構造100の原子のエネルギー状態またはその占有率の変化によって変化する可能性がある。結晶構造100の物理的な曲げ、張力、または圧縮は、結晶構造100内の様々な原子の位置、したがってアパーチャ210の断面にも影響を及ぼす可能性がある。結晶構造100に印加される磁場は、結晶構造100内の様々な原子の位置、したがってアパーチャ210の断面にも影響を及ぼす可能性がある。
【0056】
フォノンは、結晶構造100内の振動の様々なモードに対応する。結晶構造100のフォノンは、結晶構造100内を通して伝搬した電荷と相互に作用する可能性がある。より具体的には、結晶構造100のフォノンは、結晶構造100の原子(例えば、アパーチャ原子250、非アパーチャ原子など)と、結晶構造100内を通して伝搬した電荷とを相互に作用させることができる。より高い温度では、より高いフォノン振幅をもたらし、フォノン、結晶構造100の原子、およびそのような電荷の間での増大した相互作用をもたらす可能性がある。本発明の様々な実施態様は、フォノン、結晶構造100の原子、および結晶構造100内のそのような電荷の間でのそのような相互作用を、最小限に抑え、低減させ、またはその他の方法で修正することができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施態様において、既存のELR材料の結晶構造100に対する修正は、結晶構造100内にアパーチャ210を維持するのに行ってもよく、それによって既存のELR材料は、改善された動作特性で動作することが可能になる。本発明のいくつかの実施態様では、既存のELR材料の結晶構造100に対する修正は、より高い温度で結晶構造100内にアパーチャ210を維持するのに行ってもよく、それによって既存のELR材料は、改善された動作特性で動作することが可能になる。本発明のいくつかの実施態様では、既存のELR材料の結晶構造100に対する修正は、より高い温度で結晶構造100内にアパーチャ210を維持するのに行ってもよく、それによって既存のELR材料は、より高い温度でかつ/または高い電流容量を有しかつ/またはその他の改善された動作特性を有するELR状態のままにすることが可能になる。本発明のいくつかの実施態様では、新しいELR材料は、より高い温度でかつ/または高い電流容量を有しかつ/またはその他の改善された動作特性を有する状態でアパーチャ210を形成し維持する結晶構造に設計することができる。様々なメカニズムは、アパーチャ210を維持するために、結晶構造100が修正されるように使用することができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、液体窒素の温度、ほぼ液体窒素の温度、または液体窒素の温度よりも高い温度で維持される。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、固体二酸化炭素の温度、ほぼ固体二酸化炭素の温度、または固体二酸化炭素の温度よりも高い温度で維持される。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、液体アンモニアの温度、ほぼ液体アンモニアの温度、または液体アンモニアの温度よりも高い温度で維持される。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、液体フレオンの様々な配合物の温度、ほぼその温度、またはその温度よりも高い温度で維持される。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、凍結水の温度、ほぼ凍結水の温度、または凍結水の温度よりも高い温度で維持される。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210は、室温(例えば、21℃)、ほぼ室温、または室温よりも高い温度で維持される。
【0059】
したがって、様々な新しいELR材料は、既存のELR材料の修正したものとして、または新しいELR材料を設計し形成したものとして、生成することができる。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、液体窒素の温度、ほぼ液体窒素の温度、または液体窒素の温度よりも高い温度で、ELR状態で動作する。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、固体二酸化炭素の温度、ほぼ固体二酸化炭素の、または固体二酸化炭素の温度よりも高い温度で、ELR状態で動作する。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、液体アンモニアの温度、ほぼ液体アンモニアの温度、または液体アンモニアの温度よりも高い温度で、ELR状態で動作する。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、液体フレオンの様々な配合物の温度、ほぼその温度、またはその温度よりも高い温度で、ELR状態で動作する。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、凍結水の温度、ほぼ凍結水の温度、または凍結水の温度よりも高い温度で、ELR状態で動作する。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、室温(例えば、21℃)、ほぼ室温、または室温よりも高い温度で、ELR状態で動作する。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料の一部は、これらの温度、ほぼこれらの温度、またはこれらの温度のいずれか1つまたは複数よりも高い温度で、ELR状態で動作する。
【0060】
図3は、第2の角度からの、例示的なELR材料360の結晶構造300を示す。例示的なELR材料360は、ある配合物中で約90Kの遷移温度を有する、「YBCO」と一般に呼ばれる超電導材料である。特に、図3に示される例示的なELR材料360は、YBCO−123である。例示的なELR材料360の結晶構造300は、イットリウム(「Y」)、バリウム(「Ba」)、銅(「Cu」)、および酸素(「O」)の様々な原子を含む。図3に示されるように、アパーチャ310は、アパーチャ原子350、すなわちイットリウム、銅、および酸素の原子によって結晶構造300内に形成される。アパーチャ310でのイットリウムのアパーチャ原子間の断面距離は、約0.389nmであり、アパーチャ310での酸素アパーチャ原子間の断面距離は約0.285nmであり、アパーチャ310での銅アパーチャ原子間の断面距離は約0.339nmである。
【0061】
図30は、第3の角度からの、例示的なELR材料360の結晶構造300を示す。図3に関する上述の内容と同様に、例示的なELR材料360はYBCO−123であり、アパーチャ310は、アパーチャ原子350、すなわちイットリウム、銅、および酸素の原子によって結晶構造300内に形成される。この配向では、アパーチャ310でのイットリウムのアパーチャ原子間の断面距離が約0.382nmであり、アパーチャ310での酸素アパーチャ原子間の断面距離が約0.288nmであり、アパーチャ310での銅アパーチャ原子間の断面距離が約0.339nmである。この配向では、アパーチャ310に加え、例示的なELR材料360の結晶構造300はアパーチャ3010を含む。アパーチャ3010は、結晶構造300のb−軸の方向に生じる。より具体的には、アパーチャ3010は、結晶構造300内の例示的なELR材料360の個々の単位セル間に生じる。アパーチャ3010は、アパーチャ原子3050、すなわちバリウム、銅、および酸素の原子によって結晶構造300内に形成される。アパーチャ3010におけるバリウムのアパーチャ原子3050間の断面距離は、約0.430nmであり、アパーチャ3010での酸素アパーチャ原子3050間の断面距離は約0.382nmであり、アパーチャ3010での銅アパーチャ原子3050間の断面距離は約0.382nmである。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ3010は、アパーチャ310に関して本明細書で述べたものと同様の手法で動作する。この記述においては、そのそれぞれのアパーチャ原子350、3050の組成に基づいて、YBCO中のアパーチャ310を「イットリウムアパーチャ」と呼んでもよく、それに対してYBCO中のアパーチャ3010を「バリウムアパーチャ」と呼んでもよい。
【0062】
図17は、第2の角度から見た例示的なELR材料1760の結晶構造1700を示す。例示的なELR材料1760は、約94Kの遷移温度を有する、「HgBa2CuO4」と一般に呼ばれるHTS材料である。例示的なELR材料1760の結晶構造1700は、水銀(「Hg」)、バリウム(「Ba」)、銅(「Cu」)、および酸素(「O」)の様々な原子を含む。図17に示されるように、アパーチャ1710は、バリウム、銅、および酸素の原子を含むアパーチャ原子によって、結晶構造1700内に形成される。
【0063】
図18は、第2の角度から見た例示的なELR材料1860の結晶構造1800を示す。例示的なELR材料1860は、約128Kの遷移温度を有する、「Tl2Ca2Ba2Cu310」と一般に呼ばれるHTS材料である。例示的なELR材料1860の結晶構造1800は、タリウム(「Tl」)、カルシウム(「Ca」)、バリウム(「Ba」)、銅(「Cu」)、および酸素(「O」)の様々な原子を含む。図18に示されるように、アパーチャ1810は、カルシウム、バリウム、銅、および酸素の原子を含むアパーチャ原子によって、結晶構造1800内に形成される。図18には、2次アパーチャ1820が、カルシウム、銅、および酸素の原子を含む2次アパーチャ原子によって結晶構造1800内に形成されていてもよいことも、示されている。2次アパーチャ1820は、アパーチャ1810の場合と同様の手法で動作してもよい。
【0064】
図19は、第2の角度から見た例示的なELR材料1960の結晶構造1900を示す。例示的なELR材料1960は、約39Kの遷移温度を有する「La2CuO4」と一般に呼ばれるHTS材料である。例示的なELR材料1960の結晶構造1900は、ランタン(「La」)、銅(「Cu」)、および酸素(「O」)の様々な原子を含む。図19に示されるように、アパーチャ1910は、ランタンおよび酸素の原子を含むアパーチャ原子によって、結晶構造1900内に形成される。
【0065】
図45は、第2の角度から見た例示的なELR材料4560の結晶構造4500を示す。例示的なELR材料4560は、約38Kの遷移温度を有する「As2Ba0.34Fe20.66」と一般に呼ばれるHTS材料である。例示的なELR材料4560は、「鉄プニクタイド」と時々呼ばれるELR材料のファミリーを表す。例示的なELR材料4560の結晶構造4500は、ヒ素(「As」)、バリウム(「Ba」)、鉄(「Fe」)、およびカリウム(「K」)の様々な原子を含む。図45に示されるように、アパーチャ4510は、カリウムおよびヒ素の原子を含むアパーチャ原子によって結晶構造4500内に形成される。
【0066】
図46は、第2の角度から見た例示的なELR材料4660の結晶構造4600を示す。例示的なELR材料4660は、約39Kの遷移温度を有する「MgB2」と一般に呼ばれるHTS材料である。例示的なELR材料4660の結晶構造4600は、マグネシウム(「Mg」)およびホウ素(「B」)の様々な原子を含む。図46に示されるように、アパーチャ4610は、マグネシウムおよびホウ素の原子を含むアパーチャ原子によって、結晶構造4600内に形成される。
【0067】
図3、図17、図18、図19、図30、図45、および図46に示される前述の例示的なELR材料は、それぞれ、そのような材料中に様々なアパーチャが存在することを示している。様々なその他のELR材料は、類似するアパーチャを有する。抵抗現象に起因すると、アパーチャおよびそれに対応する結晶構造を活用して、既存のELR材料の動作特性を改善し、既存のELR材料から、改善されたELR材料を得、かつ/または新しいELR材料を設計し配合してもよい。
【0068】
本発明のいくつかの実施態様では、様々なELR材料の動作特性を改善するために、様々なコンピュータモデリングツールを使用してアパーチャおよびその結晶構造をモデル化することができる。記述する都合上、ELR材料360(およびその付帯的な特性および構造)は、図3に関して例示され記述されたELR材料だけではなく、図面に示されるELR材料1760、ELR材料1860、およびその他のELR材料を含むがこれらに限定することのない様々なELR材料と、以後、一般に呼ぶ。
【0069】
図4は、結晶構造100の概念的な機械的モデル400を示す。概念的なモデル400は、3つのばね、すなわちばねS1、ばねSF、およびばねS2と、2つの分銅、すなわち分銅M1および分銅M2を含む。この記述においては、ばねS1は、一端が剛壁410に取着しており、他端が分銅M1に取着しているとしてモデル化されてもよい。ばねS1および分銅M1は一緒に、結晶構造100の第1の部分220をモデル化するのに使用してもよい。分銅M1は、ばねS1とばねSFとの間に連結される。ばねSFは、結晶構造100のアパーチャ210をモデル化するのに使用してもよい(すなわち、第1の部分220と第2の部分230との間で相互に作用する力)。ばねSFは、分銅M1と分銅M2との間を連結する。分銅M2は、ばねSFとばねS2との間に連結される。ばねS2および分銅M2は一緒に、結晶構造100の第2の部分230をモデル化するのに使用してもよい。この場合も、この記述においては、ばねS2を剛壁420に取着するものとしてモデル化してもよい。その他の結晶質構造を、明らかなようにモデル化することができる。
【0070】
図4のばねは、結晶構造100内の原子の群の間で相互に作用する力を表す。これらの力のそれぞれは、十分に確立されたモデル化技法に従って、ばねを用いてモデル化されてもよい。図4のばねは1次元で示されているが、ばねは、明らかなように3次元でモデル化してもよく;しかしそのような3次元の描写は、本発明またはその実施態様を理解する目的には必要ではないことを理解すべきである。
【0071】
理解されるように、原子(例えば、フォノン)の温度および振動は関連している。特に、ELR材料の温度は、ELR材料の原子の振動が増すにつれて上昇する。これらの振動の振幅および周波数は、所与のELR材料に存在する様々な力および質量に関連する。結晶構造100に関し、ばねS1、S2、およびSFと分銅M1およびM2は、機械的モデルの振動に影響を及ぼして、温度が上昇すると共に結晶構造100が経験する振動をシミュレートするが、これがアパーチャ210に衝撃を与える可能性がある。
【0072】
本発明の様々な実施態様によれば、これらの振動はアパーチャ210に影響を与える。本発明の様々な実施態様によれば、遷移温度よりも高い温度では、振動は、ELR材料をその非ELR状態で動作させるように(例えば、アパーチャ210の断面は、アパーチャ210内を通した電荷の伝搬を制限し、妨げ、またはその他の方法で容易にしない。)、アパーチャ210を変化させ、またはその他の方法でアパーチャ210に影響を及ぼし;それに対して遷移温度よりも低い温度では、振動は、ELR材料がそのELR状態で動作するのを妨げない(例えば、アパーチャ210の断面は、アパーチャ210内を通る電荷の伝搬を容易にする。)。
【0073】
本発明の様々な実施態様によれば、遷移温度よりも高い温度では、振動は、ELR材料がその非ELR状態に遷移するようにかつ/またはその状態で動作するように(または言い換えれば、そのELR状態での動作を止めるように)、アパーチャ原子250を変化させまたはその他の方法でアパーチャ原子250に影響を及ぼす。本発明の様々な実施態様によれば、遷移温度よりも高い温度では、振動は、ELR材料がその非ELR状態に遷移するようにかつ/またはその状態で動作するように、非アパーチャ原子を変化させまたはその他の方法で非アパーチャ原子に影響を及ぼす。
【0074】
本発明の様々な実施態様によれば、様々な公知のELR材料の結晶構造は、変性ELR材料が、公知のELR材料に勝る改善された動作特性により動作するように、変性させてもよい(それによって新しい材料の誘導がもたらされる。)。本発明の様々な実施態様によれば、様々な公知のELR材料の結晶構造は、アパーチャ210がより高い温度で維持されるように変性させてもよい。本発明の様々な実施態様によれば、様々な公知のELR材料の結晶構造は、アパーチャ210がより高い温度で電荷を伝搬するように変性させてもよい(それによって、新しいELR材料の誘導がもたらされる。)。本発明の様々な実施態様によれば、様々な新しい、また既に公知のELR材料の結晶構造は、新しいELR材料が、既存のELR材料にも勝って改善された動作特性で動作するように、設計され製作されてもよい。本発明の様々な実施態様によれば、様々な新しい、また既に公知のELR材料の結晶構造は、アパーチャ210がより高い温度で維持されるように、設計され製作されてもよい。本発明の様々な実施態様によれば、様々な新しい、また既に公知のELR材料の結晶材料は、アパーチャ210がより高い温度で電荷を伝搬するように設計され製作されてもよい。
【0075】
本発明の様々な実施態様によれば、結晶構造100内のアパーチャ210は、ELR材料360がELR状態で動作するように、結晶構造100内を通して電荷が伝搬するのに十分なサイズの断面を有する。本発明のいくつかの実施態様では、そのサイズが0.20nmから1.00nmに及ぶ断面を有する結晶構造100内のそれらのアパーチャ210は、ELR材料360がELR状態で動作するように、結晶構造100内を通して電荷が伝搬することができる。本発明の様々な実施態様によれば、結晶構造100内のアパーチャ210は、アパーチャ210がELR状態で動作するように、結晶構造100内を通して電荷を伝搬するのに十分なサイズの断面を有する。いくつかの実施態様では、そのサイズが0.20nmから1.00nmに及ぶ断面を有する結晶構造100内のそれらのアパーチャ210は、アパーチャ210がELR状態で動作するように、結晶構造100内を通して電荷を伝搬させることができる。
【0076】
本発明のいくつかの実施態様では、改善された動作特性で動作するELR材料を改善し設計するステップは、アパーチャ210がより高い温度でELR状態のまま十分維持されるように、アパーチャ210および結晶構造100の機械的態様(例えば、力、距離、質量、振動モードなど)を分析するステップを含んでいてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、改善された動作特性で動作するELR材料を改善し設計するステップは、アパーチャ210がより高い温度でELR状態のまま十分維持されるように、結晶構造100内の原子(アパーチャ原子250を含むがこれに限定するものではない。)の電子的態様(例えば、原子間引力および斥力、伝導率、電気陰性度など)を分析するステップを含んでいてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、改善された動作特性で動作するELR材料を改善し設計するステップは、アパーチャ210が、より高い温度でELR状態で動作するよう十分に維持されるように、アパーチャ210および結晶構造100およびその中の原子の電気的態様および機械的態様の両方を分析するステップを含んでいてもよい。
【0077】
本発明のいくつかの実施態様では、概念的に言うと、ばねS1のばね定数は、図5に示されるようにS1’≠S1になるよう変化させてもよい。変化したばね定数は、機械的モデルの振動の、振幅、モード、周波数、方向、および/またはその他の振動特性を変化させる傾向にある。変化したばね定数は、それに対応した結晶構造100内の変化、例えば結晶構造100の第1の部分220の剛性の変化を導くことができる。結晶構造100の第1の部分220の剛性は、第1の部分220内の原子の結合の長さ、結合強度、結合角、結合の数、またはその他の原子特性に影響を及ぼすように、第1の部分220内の様々な原子を変化させることによって変化してもよい。結晶構造100の第1の部分220の剛性は、理解されるように、より少ないまたはより多くの原子を第1の部分220に結合し、それによってばねS1のばね定数を効果的に変化させることにより、変化させてもよい。
【0078】
本発明のいくつかの実施態様では、概念的に言うと、ばねS2のばね定数は、図6に示されるようにS2’≠S2になるよう変化させてもよい。上述のように、変化したばね定数は、機械的モデルの振動の、振幅、モード、周波数、方向、および/またはその他の振動特性を変化させる傾向にある。変化したばね定数は、それに対応した変化を結晶構造100内に導くことができ、例えば結晶構造100の第2の部分230の剛性の変化を、ばねS1に関して既に述べた場合と同様の手法で結晶構造100内に導くことができる。結晶構造100の第2の部分230の剛性は、理解されるように、より少ないまたはより多くの原子を第2の部分230に結合し、それによってばねS2のばね定数を効果的に変化させることにより、変化させてもよい。
【0079】
本発明のいくつかの実施態様では、やはり概念的に言えば、ばねSFのばね定数は、図7に示されるようにSF’≠SFになるよう変化させてもよい。上述のように、変化したばね定数は、機械的モデルの振動の、振幅、モード、周波数、方向、および/またはその他の振動特性を変化させる傾向にある。変化したばね定数は、それに対応した変化を結晶構造100内に導くことができ、例えば結晶構造100内に形成されたアパーチャ210の剛性の変化を、結晶構造100内に導くことができる。これは、アパーチャ210の形状を、その他の形状とはその強度が構造的に異なるものへと変化させるステップ、アパーチャ原子間の結合強度を変化さるステップ、結合角を変化させるステップ、結晶構造100の振動モードを変化させるステップ、アパーチャ原子250を変化させるステップ、またはその他の方法を含むがこれらに限定されない様々な方法で実現することができる。これは、例えば、理解されるように、第1の部分220と第2の部分230との間に1つまたは複数の結合を形成することによって材料の原子がアパーチャ210に跨るように、結晶構造100上に材料を層状化し、それによってばねSFのばね定数を有効に変化させることによって、実現してもよい。言い換えれば、アパーチャ210に跨る原子は、追加のばねSをSFに平行に導入し、実際に、第1の部分220と第2の部分230との間でばね定数が変化する。結晶構造100上に材料を層状化するこの修正例は、様々な実験の試験結果と併せて以下にさらに詳述する。
【0080】
本発明のいくつかの実施態様では、やはり概念的に言えば、分銅M1の質量は、図8に示されるように、M1’<M1になるように減少させることができる。減少した質量は、機械的モデルの振動の、様々な振幅、モード、周波数、方向、および/またはその他の振動特性を変化させる傾向がある。減少した質量は、それに対応する変化を結晶構造100に導くことができ、最終的には、より高い温度で結晶構造100内にアパーチャ210を維持しかつ/または安定化させるようにすることができる。これは、例えば、結晶構造100の第1の部分220内でより小さい分子および/または原子を使用することによって、または様々なより大きな分子および/または原子をより小さいものに置き換えることによって、実現することができる。同様の効果は、分銅M2の質量を減少させることによって実現することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施態様では、やはり概念的に言えば、分銅M1の質量は、図9に示されるように、M1’>M1になるように増加させることができる。増加した質量は、機械的モデルの振動の、様々な振幅、モード、周波数、方向、および/またはその他の振動特性を変化させる傾向がある。増加した質量は、それに対応する変化を結晶構造100に導くことができ、最終的には、より高い温度で結晶構造100内にアパーチャ210を維持しかつ/または安定化させるようにすることができる。これは、例えば、結晶構造100の第1の部分220内でより大きな原子を使用することによって、または様々なより小さな原子をより大きなものに置き換えることによって、実現することができる。同様の効果は、分銅M2の質量を増加させることによって実現することができる。
【0082】
本発明の様々な実施態様では、図5〜9に関して既に述べた様々な変化の任意の組合せを行って、機械的モデルの振動を変化させることができ、それによって、より高い温度でアパーチャ210が維持されるように対応する変化を結晶構造100内に導くことができる。本発明のいくつかの実施態様では、アパーチャ210の維持に最終的な改善をもたらすために、様々な変化と変化の間のトレードオフが必要と考えられる。
【0083】
本発明のいくつかの実施態様では、結晶構造100の3次元コンピュータモデルを使用して、より高い温度で維持される適切なアパーチャ210を有するELR材料を設計してもよい。そのようなモデルは、明らかなように、アパーチャ原子250および/または非アパーチャ原子の間の相互作用と、それらのそれぞれが温度変化と共にアパーチャ210に及ぼす影響を分析するのに使用してもよい。例えば、様々なコンピュータモデリングツールを使用して、結晶構造100を視覚化し分析することができ、具体的には結晶構造100内のアパーチャ210を視覚化し分析することができる。1つのそのようなコンピュータモデリングツールを「Jmol」と呼び、これは3Dで化学構造を見て処理するためのオープンソースJavaビューワーである。Jmolは、非特許文献1で入手可能である。
【0084】
本発明のいくつかの実施態様では、結晶構造100の様々な3次元コンピュータモデルをシミュレートして、結晶構造100およびその中の原子の相互作用を決定し評価することができる。そのようなコンピュータモデルは、密度関数理論(「DFT」)を用いてもよい。DFTを用いるコンピュータモデルは、アパーチャ210の維持に基づいて、新しいELR材料を設計するのに、また既存のELR材料を変性させるのに使用してもよく、その結果、これらのELR材料は、本明細書に記述される本発明の様々な原理に従ってかつ理解されるように、ELR状態で動作するようになる。
【0085】
本発明のいくつかの実施態様では、ばねと分銅との組合せは、様々な公知の技法により結晶構造100内でアパーチャ210に影響を及ぼす振動(それに関連した振動特性を含む。)を変化させるために、選択することができる。言い換えれば、ばねおよび分銅は、アパーチャ210に対するそれらの影響が最小限に抑えられるように、結晶構造100内の様々な振動の振幅、モード、周波数、方向、および/またはその他の振動特性を変化させるため、修正しかつ/または選択することができる。例として、ばねおよび分銅は、結晶構造100内の振動がアパーチャ210内を通る電荷の伝搬に平行(または実質的に平行)な方向になるように、またそれによって、アパーチャ210に対するそのような振動の影響が低減されるように、修正しかつ/または選択することができる。さらなる例として、ばねおよび分銅は、結晶構造100により様々な共鳴周波数を調節して、異なる温度でアパーチャ210内を通して電荷が伝搬するように、修正しかつ/または選択することができる。
【0086】
本発明のいくつかの実施態様では、ばねと分銅との組合せは、結晶構造100内で経験される振動とは無関係に、結晶構造100内にアパーチャ210を維持するように選択することができる。言い換えれば、結晶構造100内の振動を低減させ、増大させ、かつ/またはその他の方法で変化させても、アパーチャ210自体が維持されるならば、抵抗現象にその他の部分で影響を及ぼす可能性はない。
【0087】
図10は、本発明の様々な実施態様による、第2の角度から見た、変性ELR材料1060の、変性した結晶構造1010を示す。図11は、本発明の様々な実施態様による、第1の角度から見た、変性ELR材料1060の、変性した結晶構造1010を示す。ELR材料360(例えば、例として図3およびその他の箇所に示されるような)は変性されて、変性ELR材料1060を形成する。変性材料1020は、ELR材料360の結晶構造300(図3の)の原子と結合を形成して、図11に示されるような変性ELR材料1060の、変性した結晶構造1010を形成する。図示されるように、変性材料1020は、第1の部分320と第2の部分330との間の隙間を埋め、それによって、とりわけ、変性した結晶構造1010の振動特性を、特にアパーチャ310の領域で変化させる。そのようにすることで、変性材料1020は、より高い温度でアパーチャ310を維持する。図7を参照すると、変性材料1020は、例えばばねSFと平行な1つまたは複数の追加のばねとして作用することによって、ばねSFの有効ばね定数を変性させるように働く。したがって、本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、結晶構造300の適切な原子に適合しかつ結合されるように、特に選択される。
【0088】
本発明のいくつかの実施態様では、図10に示されるように、変性材料1020が、b−平面に平行な結晶構造300の面(例えば、「a−c」面)に結合される。変性材料1020が「a−c」面に結合されるような実施態様では、a−軸の方向に延びかつa−平面内に在る断面を有するアパーチャ310が、維持される。そのような実施態様では、電荷キャリアは、a−軸の方向にアパーチャ310内を通して流れる。
【0089】
本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、a−平面に平行な結晶構造300の面(例えば、「b−c」面)に結合される。変性材料1020が「b−c」面に結合されるような実施態様では、b−軸の方向に延びかつb−平面内に在る断面を有するアパーチャ310が維持される。そのような実施態様では、電荷キャリアは、b−軸の方向にアパーチャ310内を通して流れる。
【0090】
本発明の様々な実施態様は、ELR材料360の特定の表面を変性材料1020で層状化する(すなわち、ELR材料360の特定の表面を変性材料1020で変性させる。)ステップを含む。この記述から理解されるように、ELR材料360の「表面を変性させる」と言った場合には、最終的に、ELR材料360の1つまたは複数の単位セル2100の面(場合によっては複数の面)を変性させるステップが含まれる。言い換えれば、変性材料1020は、ELR材料360の単位セル2100内の原子に実際に結合する。
【0091】
例えば、a−平面に平行なELR材料360の表面を変性させるステップは、単位セル2100の「b−c」面を変性させるステップを含む。同様に、b−平面に平行なELR材料360の表面を変性させるステップは、単位セル2100の「a−c」面を変性させるステップを含む。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、c−軸に平行な任意の平面に実質的に平行であるELR材料360の表面に結合される。この記述においては、c−軸に平行な平面を、一般にab−平面と呼び、理解されるように、a−平面およびb−平面が含まれる。理解されるように、ab−平面に平行なELR材料360の表面は、単位セル2100の「a−c」面と「b−c」面とのいくつかの混合物から形成される。変性材料1020が、ab−平面に平行な表面に結合されるような実施態様では、a−軸の方向に延びるアパーチャ310およびb−軸の方向に延びるアパーチャ310が維持される。
【0092】
本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は伝導性材料であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、高い酸素親和性を有する材料(すなわち、酸素と容易に結合する材料)(「酸素結合材料」)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、酸素と容易に結合する伝導性材料(「酸素結合伝導性材料」)であってもよい。そのような酸素結合伝導性材料には:クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、およびチタンを含めてもよいが、これらに限定するものではない。そのような酸素結合伝導性材料には:ロジウムまたはベリリウムを含めてもよいが、これらに限定するものではない。その他の変性材料には、ガリウムまたはセレンを含めてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はクロム(Cr)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は銅(Cu)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はビスマス(Bi)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はコバルト(Co)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はバナジウム(V)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はチタン(Ti)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はロジウム(Rh)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はベリリウム(Be)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はガリウム(Ga)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はセレン(Se)であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、その他の元素を変性材料1020として使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、異なる材料(例えば、化合物、組成物、分子、合金など)の組合せを、変性材料1020として使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、材料および/または材料の組合せの様々な層を、変性材料1020としてまとめて使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、酸素と適切な結合を有する原子に対応する。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、第1の部分320の原子と第2の部分330の原子との間の距離の少なくとも半分程度の長さである、結晶構造1010内の様々な(1つまたは複数の)原子との結合の長さを有する原子を含む。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、結晶構造1010内で、様々な(1つまたは複数の)原子と結合する原子を含む。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、結晶構造1010内に様々な(1つまたは複数の)原子と十分結合する原子を含む。
【0093】
本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020の酸化物が、変性材料1020でELR材料360を変性させるのに関連した様々な操作中に、形成されてもよい。したがって、本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、変性材料1020の実質的に純粋な形態と、変性材料1020の様々な酸化物とを含んでいてもよい。言い換えれば、本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は、変性材料1020および変性材料1020の様々な酸化物で変性される。例として、しかし限定するものではないが、本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、クロムおよび酸化クロム(Crxy)を含んでいてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は、変性材料1020の様々な酸化物で変性される。例として、しかし限定するものではないが、本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は酸化クロム(Crxy)で変性される。
【0094】
本発明のいくつかの実施態様では、その他の材料を使用して結晶構造1010を変性させてもよい。例えば、酸化銅層に関連して高い結合強度を有する変性材料1020を、イットリウム(アパーチャ原子の1つ)の代わりに選択してもよい。また例えば、イットリウムに関連して高い結合強度を有する変性材料1020を、酸化銅層の代わりに選択してもよい。例えば、酸化クロム(CrO)を、酸化銅(CuO)の代わりに選択してもよい。また例えば、酸化銅層に関連して高い結合強度を有する変性材料1020を、バリウムの代わりに選択してもよい。これらの例は、結合強度について言及しているが、様々な変性材料1020を、より高い温度でアパーチャ310を維持する傾向があるその他の原子特性またはそれらの組合せに基づいて選択してもよく、例えば、限定するものではないが結晶構造1010での振動に正味の変化をもたらす可能性がある変性材料1020を選択してもよい。
【0095】
本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360はYBCOであってもよく、変性材料1020は、酸素結合伝導性材料であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はクロムであってもよく、ELR材料360はYBCOであってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は銅であってもよく、ELR材料360はYBCOであってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はビスマスであってもよく、ELR材料360はYBCOであってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はコバルトであってもよく、ELR材料360はYBCOであってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はバナジウムであってもよく、ELR材料360はYBCOであってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はチタンであってもよく、ELR材料360はYBCOであってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はロジウムであってもよく、ELR材料360はYBCOであってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はベリリウムであってもよく、ELR材料360はYBCOであってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は別の酸素結合伝導性材料であり、ELR材料360はYBCOであってもよい。
【0096】
本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はガリウムであってもよく、ELR材料360はYBCOであってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020はセレンであってもよく、ELR材料360はYBCOであってもよい。
【0097】
本発明のいくつかの実施態様では、混合原子価酸化銅ペロブスカイト材料と酸素結合伝導性材料との様々なその他の組合せを使用してもよい。例えば、本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は、「BSCCO」と一般に呼ばれる混合原子価酸化銅ペロブスカイト材料に該当する。BSCCOは、ビスマス(「Bi」)、ストロンチウム(「Sr」)、カルシウム(「Ca」)、銅(「Cu」)、および酸素(「O」)の様々な原子を含む。単独で、BSCCOは、約100Kの遷移温度を有する。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360はBSCCOであってもよく、変性材料1020は酸素結合伝導性材料であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360はBSCCOであってもよく、変性材料1020は:クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、またはベリリウムを含むがこれらに限定されない群から選択されてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR360材料はBSCCOであってもよく、変性材料1020は:クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、およびベリリウムからなる群から選択されてもよい。
【0098】
本発明のいくつかの実施態様では、その他のELR材料および変性材料の様々な組合せを使用してもよい。例えば、本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は、鉄プニクタイド材料に該当する。鉄プニクタイド単独では、約25〜60Kに及ぶ遷移温度を有する。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は鉄プニクタイドであってもよく、変性材料1020は酸素結合伝導性材料であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は鉄プニクタイドであってもよく、変性材料1020は:クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、またはベリリウムを含むがこれらに限定されない群から選択されてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は鉄プニクタイドであってもよく、変性材料1020は:クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、およびベリリウムからなる群から選択されてもよい。
【0099】
本発明のいくつかの実施態様では、その他のELR材料と変性材料との様々な組合せを使用してもよい。例えば、本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は二ホウ化マグネシウム(「MgB2」)であってもよい。単独では、二ホウ化マグネシウムは約39Kの遷移温度を有する。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は二ホウ化マグネシウムであってもよく、変性材料1020は酸素結合伝導性材料であってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は二ホウ化マグネシウムであってもよく、変性材料1020は:クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、またはベリリウムを含むがこれらに限定されない群から選択されてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は二ホウ化マグネシウムであってもよく、変性材料1020は:クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、およびベリリウムからなる群から選択されてもよい。
【0100】
本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020は、理解されるように、1種の組成物を別の組成物上に層状化するための様々な技法を使用して、ELR材料360のサンプル上に層状化されてもよい。例えば、そのような層状化技法には、パルスレーザ堆積法、同時蒸着、電子ビーム蒸着、および活性化反応性蒸着を含めた蒸着、マグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリング、およびイオン支援スパッタリングを含めたスパッタリング、カソードアーク蒸着、CVD、有機金属CVD、プラズマ強化CVD、分子線エピタキシー、ゾルゲル法、液相エピタキシー、および/またはその他の層状化技法が含まれるが、これらに限定するものではない。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は、1種の組成物を別の組成物上に層状化するための様々な技法を使用して、変性材料1020のサンプル上に層状化されてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020の単原子層(すなわち、変性材料1020の単原子または単分子に実質的に等しい厚さを有する変性材料1020の層)を、ELR材料360のサンプル上に層状化してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料の単一の単位層(すなわち、変性材料の単一の単位(例えば、原子、分子、結晶、またはその他の単位)に実質的に等しい厚さを有する変性材料の層)を、ELR材料のサンプル上に層状化してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、変性材料の単一の単位層上に層状化されてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料の2つ以上の単位層を、ELR材料上に層状化してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料は、変性材料の2つ以上の単位層上に層状化されてもよい。
【0101】
他のものは、様々な適用例でのそれらの有用性を改善する目的で、公知のELR材料上に様々な組成物(例えば、金、銅、ケイ素など)を層状化しようと試みてきた。しかし、そのような組成物の選択は、特に:結晶構造100およびアパーチャ210の様々な幾何学的特性(例えば、限定するものではないが、第1の部分220と第2の部分230との間の隙間の幅、アパーチャ210のサイズなど);結晶構造100内のアパーチャ原子250の原子特性、それらの互いに対する相互作用、および温度の変化によるアパーチャ210に対するそれらの影響と;結晶構造100の原子の原子特性、およびそれらと変性材料1020との相互作用(例えば、限定するものではないが、変性材料1020と結晶構造100の原子との様々な結合特性)に関して、アパーチャ210を変化させ、強化し、またはその他の方法で維持しようとする意思に基づいていなかった。
【0102】
本発明のいくつかの実施態様では、結晶構造100内で使用される格子に変化を加えることができる。例えば、単斜晶対称、斜方晶対称、または立方晶対称を有する格子を使用して、結晶構造100内の様々なその他の格子を改善してもよい。さらに、体心立方対称または面心立方対称を使用して、結晶構造100内の単純な立方対称を改善してもよい。いくつかの実施態様では、結晶構造100内のより広範な様々な格子は、より高い温度でアパーチャ210を維持していてもよい。いくつかの実施態様では、結晶構造100内のより複雑な格子は、より高い温度でアパーチャ210を維持していてもよい。
【0103】
本発明のいくつかの実施態様では、結晶構造100は、結晶構造100内のフォノン(すなわち、格子振動)が、アパーチャ210内を通る電荷の伝搬に平行な単一方向(すなわち、例えば図2のページに進入する方向)で結晶構造100内を主に伝搬するように、設計されてもよい。そのようなフォノンはアパーチャ210に影響を及ぼさない傾向にあり、それによって、アパーチャ210は、より高い温度でELR状態で動作することが可能になる。アパーチャ210内を通る電荷の伝搬に直交する任意のフォノンの伝搬は、アパーチャ210に影響が及ぶのが避けられるように最小限に抑えることができる。
【0104】
次に図12および図13A〜13Iを使用して、本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料1060を生成するためにELR材料360のサンプル1310を変性させるステップについて記述する。図12は、本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料1060を生成するためにELR材料360のサンプル1310を変性材料1020で変性させるためのフローチャートである。図13A〜13Jは、本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料1060を生成するために変性が加えられるELR材料360のサンプル1310を示す。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は混合原子価酸化銅ペロブスカイト材料であり、変性材料1380は酸素結合伝導性材料である。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料360は、YBCOと一般に呼ばれるHTS材料であり、変性材料1380はクロムである。
【0105】
図13Aに示されるように、サンプル1310はELR材料360の複数の結晶単位セルであり、c−軸に沿ってその非伝導性軸(またはより具体的には、その非ELRもしくは非超電導軸)がある状態に配向している。本発明のいくつかの実施態様では、サンプル1310は、約5mm×10mm×10mmの寸法を有する。この記述においては、サンプル1310は、ELR材料360の伝導の主軸がa−軸に沿って並ぶように配向している。明らかなように、ELR材料360が2つの伝導の主軸を含む場合、サンプル1310は、a−軸またはb−軸のどちらかに沿って配向することができる。さらに理解されるように、いくつかの実施態様では、サンプル1310は、c−平面(すなわち、任意のab−平面に平行な面)内の任意の線に沿って配向していてもよい。操作1210においてかつ図13Bおよび図13Cに示されるように、サンプル1310のa−平面に実質的に平行な平面に沿ってサンプル1310を切断することにより、切片1320を生成する。本発明のいくつかの実施態様では、切片1320は、その厚さが約3mmであるが、その他の厚さを使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、これは、精密なダイヤモンド刃を使用して実現することができる。
【0106】
任意選択の操作1220においてかつ図13D、図13E、および図13Fに示されるように、サンプル1310の様々なアパーチャが露出するように切片1320のa−平面の対角線に沿って切片1320を切断することにより、楔1330が生成される。本発明のいくつかの実施態様では、これは、精密なダイヤモンド刃を使用して実現する。この操作は、露出したアパーチャを有する楔1330の対角表面上に、面1340を生成する。本発明のいくつかの実施態様では、面1340は、c−軸に実質的に平行な任意の平面に該当する。本発明のいくつかの実施態様では、面1340は、a−軸に実質的に垂直な平面(すなわち、結晶構造100のa−平面)に該当する。本発明のいくつかの実施態様では、面1340は、b−軸に実質的に垂直な平面(すなわち、結晶構造100のb−平面)に該当する。本発明のいくつかの実施態様では、面1340は、ab−平面内の任意の線に実質的に垂直な平面に該当する。本発明のいくつかの実施態様では、面1340は、c−軸に実質的に垂直ではない任意の平面に該当する。本発明のいくつかの実施態様では、面1340は、ELR材料360の任意の実質的に非伝導性軸(または、非ELRもしくは非超電導軸)に実質的に垂直ではない任意の平面に該当する。理解されるように、切片1320は、露出したアパーチャおよび/または面1340に関して上記論じられたものと同様のその他の特性を有することができるので、操作1220は必要としなくてよい。
【0107】
操作1230においてかつ図13Gおよび図13Jに示されるように、変性材料1380(例えば、図10およびその他の箇所で例示された変性材料1020)が、面1340上に堆積されて、変性材料1380の面1350を楔1330上に生成し、変性ELR材料1060の変性した領域1360は、面1340と変性材料1380との間の界面に生成される。楔1330での変性した領域1360は、変性材料1380が本発明の様々な実施態様による結晶構造300に結合することによりアパーチャ310に近接した結晶構造300が改善した状態にある、楔1330の領域に該当する。変性材料1380とELR材料360とが結合するその他の形態を使用してもよい。操作1230について、図14を参照しながら以下にさらに詳述する。
【0108】
図14を参照すると、操作1410では、面1340が研磨される。本発明のいくつかの実施態様では、1種または複数の研磨剤を使用してもよい。ELR材料としてYBCOを含む本発明のいくつかの実施態様では、イソプロピルアルコール、ヘプタン、非有機または安定な有機スラリーを含むがこれらに限定することのない1種または複数の非水系研磨剤を使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、水系研磨剤を使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、面1340は、20nmのコロイド状スラリーで最終的に研磨される。本発明のいくつかの実施態様では、面1340の研磨は、楔1330のa−軸に実質的に平行な方向(すなわち、アパーチャ310の方向に沿って)で行われる。本発明のいくつかの実施態様では、理解されるように酸素プラズマアッシングを使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、表面に変性材料1380が層状化される直前の面1340の清浄度(すなわち、不純物、またはその他の材料、組成物、もしくは化合物が存在しないこと)は、変性していないELR材料の場合にも勝る、変性ELR材料の改善された動作特性を実現するのに重要と考えられる。
【0109】
操作1420では、面1340以外の1つまたは複数の表面がマスクされる。いくつかの実施態様では、面1340以外の全ての表面がマスクされる。操作1430では、変性材料1380は、気相成長を使用して面1340上に堆積される。本発明のいくつかの実施態様では、約40nmの変性材料1380が、気相成長を使用して面1340上に堆積されるが、より少ないまたはより多くの量の変性材料1380を使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1380は、5×10-6torr以下の圧力を有していてもよい真空中で、気相成長を使用して、面1340上に堆積される。
【0110】
図12、図13H、および図13Iを参照すると、任意選択の操作1240において、本発明のいくつかの実施態様では楔1330のサイズが縮小するように楔1330の一部が除去されて、楔1390を生成する。操作1250では、結合剤を使用して、楔1390の2つのa−平面(すなわち、「b−c」面)のそれぞれにダブルエンドリードを付着させる。本発明のいくつかの実施態様では、銀ペースト(Alfa Aesar銀ペースト#42469)を使用して、ダブルエンドリードを楔1390の2つのa−平面(すなわち、「b−c」面)に付着させる。操作1260では、結合剤を硬化させる。結合剤として銀ペーストを使用するいくつかの実施態様では、銀ペーストを60℃で1時間硬化し、次いでさらに1時間、150℃で硬化する。その他の硬化プロトコルは、明らかなように使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、銀などであるがこれに限定されない伝導性材料を、楔1390の2つのb−c面のそれぞれにスパッタリングしまたはその他の方法で結合し、明らかなようにダブルエンドリードをそこに取着する。ダブルエンドリードを楔490に取着するためのその他のメカニズムを使用してもよい。操作1250の後、変性した領域1360を有する楔1390(図13Jに示す。)は、試験の準備ができた状態になる。
【0111】
図15は、楔1390の様々な動作特性を決定するのに有用な試験床1500を示す。試験床1500は、ハウジング1510と、4つのクランプ1520とを含む。楔1390をハウジング1510内に配置し、ダブルエンドリードのそれぞれを、図示されるクランプ1520を使用してハウジング1510にクランプ留めする。リードは、硬化した銀ペーストの曲がりおよび/または破壊を防止するために、応力緩和がもたらされるようハウジング1510にクランプ留めされる。電流源は、1対のダブルエンドリードの一端に付着され、電圧計は、1対のダブルエンドリードの他端の電圧を測定する。この構成は、理解されるように、楔1390の、特に変性ELR材料1060の抵抗を決定するための、多点法を提供する。
【0112】
図16A〜16Gは、上述のように得られた試験結果1600を示す。試験結果1600は、温度(単位;K)の関数としての、変性ELR材料1060の抵抗のプロットを含む。より具体的には、試験結果1600は、変性材料1380がクロムに該当しELR材料360がYBCOに該当する、変性ELR材料1060に該当する。図16Aは、変性ELR材料1060の抵抗が測定される温度の全範囲、すなわち84Kから286Kに対する試験結果1600を含む。さらなる詳細について記述するために、試験結果1600を様々な温度範囲に分割し、示した。特に、図16Bは、240Kから280Kの温度範囲内でのそれらの試験結果1600を示し;図16Cは、210Kから250Kの温度範囲内でのそれらの試験結果1600を示し;図16Dは、180Kから220Kの温度範囲内でのそれらの試験結果1600を示し;図16Eは、150Kから190Kの温度範囲内でのそれらの試験結果1600を示し;図16Fは、120Kから160Kの温度範囲内でのそれらの試験結果1600を示し;かつ図16Gは、84.5Kから124.5Kの温度範囲内でのそれらの試験結果1600を示す。
【0113】
試験結果1600は、楔1390内の変性ELR材料1060の様々な部分が、ELR材料360に比べ、より高い温度で、ELR状態で動作することを実証する。6つのサンプル分析試験操作を、楔1390を使用して行った。各サンプル分析試験操作ごとに、内部に楔1390が取り付けられている試験床1510を、約286Kから83Kにゆっくりと冷却した。冷却している間、電流源は、任意のDCオフセットおよび/または熱電対効果の影響を低減させるため、楔1390を通してデルタモード構成で電流を+60nAおよび−60nA印加した。規則的な時間間隔で、楔1390にかかる電圧を、電圧計により測定した。各サンプル分析試験操作ごとに、時系列の電圧測定値を、512点高速フーリエ変換(「FFT」)を使用してフィルタリングした。FFTからの最低44の周波数以外の全てをデータから除外し、フィルタリングされたデータを時間ドメインに戻した。次いで各サンプル分析試験操作からのフィルタリングされたデータを1つにまとめて、試験結果1600をもたらした。より具体的には、6つのサンプル分析試験操作からの全ての抵抗測定値を、「ビニング」と呼ばれる手法で、一連の温度範囲(例えば、80K〜80.25K、80.25Kから80.50、80.5Kから80.75Kなど)に組織化した。次いで各温度範囲での抵抗測定値を一緒に平均して、各温度範囲ごとの平均抵抗測定値を得た。これらの平均抵抗測定値は、試験結果1600を形成する。
【0114】
試験結果1600は、抵抗対温度のプロットで様々な個別のステップ1610を含み、そのような個別のステップ1610のそれぞれは、比較的狭い範囲の温度で比較的素早い抵抗変化を示す。これらの個別のステップ1610のそれぞれで、変性ELR材料1060の個別の部分は、それぞれの温度でそのような部分の電荷伝搬容量まで、電荷を伝搬し始める。この挙動について、変性材料1380とELR材料360との間の界面を示す図13Jを参照しながら記述する。非常に小さな規模では、面1340は、完全に滑らかではない。事実、示されるように、アパーチャ310の部分のみが面1340内で露出され、したがってELR材料360の小さな部分だけを変性させることができる。したがって、変性ELR材料1060中のアパーチャ310は、典型的には楔1390の全幅または全長にわたって延びることはない。したがって、本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1380は、ELR材料360の全表面を覆い、アパーチャ310間で電荷を運ぶ導体として働くことができる。
【0115】
試験結果1600についてさらに詳細に論じる前に、ELR材料360および変性材料1380の様々な特性について論じる。これらの材料の抵抗対温度(「R−T」)のプロファイルは個々に、一般に周知である。これらの材料の個々のR−Tプロファイルは、試験結果1600に見出される個別のステップ1610に類似したフィーチャを含むとは考えられない。事実、ELR材料360の変性していないサンプルおよび変性材料1380のサンプルは単独で、類似しかつしばしば同一の試験および測定構成の下で試験がなされた。どの場合にも、ELR材料360の変性していないサンプルのR−Tプロファイルと変性材料のR−Tプロファイルは単独で、個別のステップ1610に類似した任意のフィーチャを含んでいなかった。したがって個別のステップ1610は、本発明の様々な実施態様により、高温でアパーチャ310を維持し、それによってそのような高温で変性材料1380をELR状態のままにするために、変性材料1380でELR材料360を変性させた結果である。
【0116】
個別のステップ1610のそれぞれでは、変性ELR材料1060中のアパーチャ310の様々なものが、各アパーチャ310の電荷伝搬容量まで、電荷を伝搬し始める。電圧計により測定した場合、各電荷伝搬アパーチャ310は短絡として現れ、楔1390にかかる見掛けの電圧が少量だけ降下する。見掛けの電圧は、楔1390の温度がELR材料360の遷移温度に到達するまで(すなわち、YBCOの場合には約90Kである、変性していないELR材料の遷移温度)、アパーチャ310の追加のものが電荷を伝搬し始めると共に降下し続ける。
【0117】
試験結果1600は、変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約97Kで電荷を伝搬することを示す。言い換えれば、試験結果は、変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約97Kで、変性ELR材料1060の結晶構造内を通して電荷を伝搬することを示す。試験結果1600は:変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約100Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約103Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約113Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約126Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約140Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約146Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約179Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約183.5Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約200.5Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約237.5Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約250Kで電荷を伝搬することも示す。変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310は、理解されるように全温度範囲内のその他の温度で電荷を伝搬することができる。
【0118】
試験結果1600は、個別のステップ1610として他に特定されない比較的狭い温度範囲での様々なその他の比較的素早い抵抗変化を含む。これらのその他の変化のいくつかは、試験操作中に得られた測定値に関して使用されたデータ処理技法(例えば、FFT、フィルタリングなど)からのアーチファクトに該当すると考えられる。これらのその他の変化のいくつかは、様々な温度でアパーチャ310に影響を及ぼす、変性した結晶構造1010での共鳴周波数に起因した、抵抗の変化に該当すると考えられる。これらのその他の変化のいくつかは、追加の個別のステップ1610に該当すると考えられる。さらに、270〜274Kの温度範囲での抵抗の変化は、変性ELR材料1060中に存在する水に関連しそうであり、そのいくらかは、楔1380の伝搬中、例えば限定するものではないが操作1410中に導入されていた可能性がある。
【0119】
個別のステップ1610に加え、試験結果1600は、変性材料1380がELR材料360の遷移温度よりも高い温度で十分伝導するのに対し、ELR材料360は典型的にはそうではない点が、ELR材料360のR−Tプロファイルとは異なる。
【0120】
図24は、ELR材料360および変性材料1380のサンプルに関する追加の試験結果2400を示す。より具体的には、試験結果2400の場合、変性材料1380はクロムに該当し、ELR材料360はYBCOに該当する。試験結果2400では、ELR材料360のサンプルを、上記にて論じた様々な技法を使用して調製して、a−平面またはb−平面に平行な結晶構造300の面を露出させた。試験結果2400は、変性ELR材料1060に、ロックイン増幅器および24.0Hzで10nAの電流を印加するK6221電流源を使用してまとめた。試験結果2400は、温度(単位;K)の関数としての、変性ELR材料1060の抵抗のプロットを含む。図24は、変性ELR材料1060の抵抗が測定される温度の全範囲、すなわち80Kから275Kに対する試験結果2400を含む。試験結果2400は、変性ELR材料1060の様々な部分が、ELR材料360に比べ、より高い温度でELR状態で動作することを実証する。5つのサンプル分析試験操作を、変性ELR材料1060のサンプルで行った。各サンプル分析試験操作ごとに、変性ELR材料1060のサンプルを、80Kから275Kにゆっくり温めた。温めている間、変性ELR材料1060のサンプルにかかる電圧を規則的な時間間隔で測定し、抵抗を、ソース電流に基づいて計算した。各サンプル分析試験操作ごとに、時系列の抵抗測定値を、1024点FFTを使用してフィルタリングした。FFTからの最低15周波数以外は全てデータから除外し、フィルタリングした抵抗測定値を時間ドメインに戻した。次いで各サンプル分析試験操作からの、フィルタリングされた抵抗測定値を、上述のビニングプロセスを使用してまとめることにより、試験結果2400をもたらした。次いで各温度範囲での抵抗測定値を一緒に平均して、各温度範囲ごとの平均抵抗測定値を得た。これらの平均抵抗測定値は、試験結果2400を形成する。
【0121】
試験結果2400は、抵抗対温度のプロットで様々な個別のステップ2410を含み、そのような個別のステップ2410のそれぞれは、図16A〜16Gに関して上記にて論じた個別のステップ1610と同様に、比較的狭い温度範囲で比較的素早い抵抗変化を表す。これらの個別のステップ2410のそれぞれで、変性ELR材料1060の個別の部分は、それぞれの温度でのそのような部分の電荷伝搬容量まで、電荷を伝搬する。
【0122】
試験結果2400は、変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約120Kで電荷を伝搬することを示す。言い換えれば、試験結果2400は、変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約120Kで、変性ELR材料1060の結晶構造内を通して電荷を伝搬することを示す。試験結果2400は:変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約145Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約175Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約200Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約225Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約250Kで電荷を伝搬することも示す。変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310は、理解されるように、全温度範囲内のその他の温度で電荷を伝搬することができる。
【0123】
図25〜29は、ELR材料360および様々な変性材料1380のサンプルの、追加の試験結果を示す。これらの追加の試験結果では、ELR材料360のサンプルを上記にて論じた様々な技法を使用して調製して、a−平面もしくはb−平面、またはa−平面もしくはb−平面のいくつかの組合せに実質的に平行な、結晶構造300の面を露出させ、変性材料を、これらの露出した面上に層状化した。これらの変性したサンプルのそれぞれは、約300Kから80Kにゆっくり冷却した。温める間、電流源は、以下に記述されるように、変性したサンプル内を通してデルタモード構成で電流を印加した。規則的な時間間隔で、変性したサンプルにかかる電圧を測定した。各サンプル分析試験操作ごとに、時系列の電圧測定値を、最低周波数以外の全てを除去することによるFFTを使用して周波数ドメイン内でフィルタリングし、フィルタリングした測定値を時間ドメインに戻した。保たれる周波数は、一般に、各データ集合ごとに異なる。次いで試験操作のそれぞれからフィルタリングされたデータをビニングし、一緒に平均することにより、図25〜29に示される試験結果が得られた。
【0124】
図25は、温度の関数(単位;K)として、変性ELR材料1060の抵抗のプロットを含む、試験結果2500を示す。試験結果2500では、変性材料1380はバナジウムに該当し、ELR材料360はYBCOに該当する。試験結果2500は、20nA電流源を使用して、11の試験操作に関して生成し、1024点FFTを行い、最低12周波数以外の全てからの情報を除外した。試験結果2500は、変性ELR材料1060の様々な部分が、ELR材料360に比べ、より高い温度でELR状態で動作することを実証する。試験結果2500は、図16A〜16Gに関して上記にて論じたものと同様に、抵抗対温度のプロットで様々な個別のステップ2510を含む。試験結果2500は:変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約267Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約257Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約243Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約232Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約219Kで電荷を伝搬することを示す。変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310は、その他の温度で電荷を伝搬することができる。
【0125】
図26は、温度の関数(単位;K)として、変性ELR材料1060の抵抗のプロットを含む、試験結果2600を示す。試験結果2600では、変性材料1380はビスマスに該当し、ELR材料360はYBCOに該当する。試験結果2600は、400nA電流源を使用して、5つの試験操作に関して生成し、1024点FFTを行い、最低12周波数以外の全てからの情報を除外した。試験結果2600は、変性ELR材料1060の様々な部分が、ELR材料360に比べ、より高い温度でELR状態で動作することを実証する。試験結果2600は、図16A〜16Gに関して上記にて論じたものと同様に、抵抗対温度のプロットで様々な個別のステップ2610を含む。試験結果2600は:変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約262Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約235Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約200Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約172Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約141Kで電荷を伝搬することを示す。変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310は、その他の温度で電荷を伝搬することができる。
【0126】
図27は、温度の関数(単位;K)として、変性ELR材料1060の抵抗のプロットを含む、試験結果2700を示す。試験結果2700では、変性材料1380は銅に該当し、ELR材料360はYBCOに該当する。試験結果2700は、200nA電流源を使用して、6つの試験操作に関して生成し、1024点FFTを行い、最低12周波数以外の全てからの情報を除外した。試験結果2700は、変性ELR材料1060の様々な部分が、ELR材料360に比べ、より高い温度でELR状態で動作することを実証する。試験結果2700は、図16A〜16Gに関して上記にて論じたものと同様に、抵抗対温度のプロットで様々な個別のステップ2710を含む。試験結果2700は:変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約268Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約256Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約247Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約235Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約223Kで電荷を伝搬することを示す。変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310は、その他の温度で電荷を伝搬することができる。
【0127】
図28は、温度の関数(単位;K)として、変性ELR材料1060の抵抗のプロットを含む、試験結果2800を示す。試験結果2800では、変性材料1380はコバルトに該当し、ELR材料360はYBCOに該当する。試験結果2800は、400nA電流源を使用して、11の試験操作に関して生成し、1024点FFTを行い、最低12周波数以外の全てからの情報を除外した。試験結果2800は、変性ELR材料1060の様々な部分が、ELR材料360に比べ、より高い温度でELR状態で動作することを実証する。試験結果2800は、図16A〜16Gに関して上記にて論じたものと同様に、抵抗対温度のプロットで様々な個別のステップ2810を含む。試験結果2800は:変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約265Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約236Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約205Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約174Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約143Kで電荷を伝搬することを示す。変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310は、その他の温度で電荷を伝搬することができる。
【0128】
図29は、温度の関数(単位;K)として、変性ELR材料1060の抵抗のプロットを含む、試験結果2900を示す。試験結果2900では、変性材料1380はチタンに該当し、ELR材料360はYBCOに該当する。試験結果2900は、100nA電流源を使用して、25の試験操作に関して生成し、512点FFTを行い、最低11周波数以外の全てからの情報を除外した。試験結果2900は、変性ELR材料1060の様々な部分が、ELR材料360に比べ、より高い温度でELR状態で動作することを実証する。試験結果2900は、図16A〜16Gに関して上記にて論じたものと同様に、抵抗対温度のプロットで様々な個別のステップ2910を含む。試験結果2900は:変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約266Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約242Kで電荷を伝搬し;変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310が、約217Kで電荷を伝搬することを示す。変性ELR材料1060中の、あるアパーチャ310は、その他の温度で電荷を伝搬することができる。
【0129】
その他の実験では、変性材料1020を、結晶構造300のc−平面に実質的に平行なELR材料360の表面に層状化した。これらの試験結果(他に示されていない。)は、変性材料1020を有するc−平面に平行なELR材料360の表面を層状化するステップが、上述のようないかなる個別のステップ(例えば、個別のステップ1610)ももたらさなかったことを実証する。これらの試験結果は、ELR材料360が抵抗現象を示さない(または示さない傾向にある)方向に垂直なELR材料360の表面を変性するステップが、変性していないELR材料の動作特性を改善しないことを示す。言い換えれば、ELR材料360のそのような表面を変性するステップは、アパーチャ310を維持することができない。本発明の様々な原理によれば、変性材料は、ELR材料が抵抗現象を示さない(または示さない傾向にある)方向に平行なELR材料の表面に層状化されるべきである。より具体的には、例えばELR材料360に関して(図3に示される。)、変性材料1020は、アパーチャ310を維持するために、ELR材料360(c−軸の方向に抵抗現象を示さない傾向にある。)の結晶構造300の「a−c」面または「b−c」面(それらの面の両方とも、c−軸に平行である。)に結合されるべきである。
【0130】
図20は、本発明の様々な実施態様による、追加の電荷を伝搬するのに有用な、ELR材料360と変性材料1380とが交互に配された層を含む配置2000を示す。そのような層は、様々な堆積技法を使用して、互いの上に堆積してもよい。様々な技法は、ELR材料360の層内の結晶構造300のアライメントを改善するのに使用してもよい。結晶構造300の改善されたアライメントは、結晶構造300内を通して長さの延びたアパーチャ310をもたらす可能性があり、したがってより高い温度および/または高い電荷伝搬容量での動作をもたらすことができる。配置2000は、変性材料1380およびELR材料360の隣接層の間の各界面で、変性ELR材料1060内に多数のアパーチャ310を提供する。多数のアパーチャ310は、配置2000の電荷伝搬容量を増大させることができる。
【0131】
本発明のいくつかの実施態様では、任意の数の層を使用することができる。本発明のいくつかの実施態様では、その他のELR材料および/またはその他の変性材料を使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、その他の材料(例えば、絶縁体、導体、またはその他の材料)の追加の層を、ELR材料360と変性材料1380との対になった層の間に使用して、様々な効果(例えば、磁気効果、材料の移行、またはその他の効果)を和らげ、またはそのような対になった層内に形成された、変性ELR材料1060の特性を高めてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、全ての層が対になっているわけではない。言い換えれば、配置2000は、ELR材料360の1つもしくは複数の余分な(すなわち、対になっていない)層、または変性材料1380の1つもしくは複数の余分な層を有していてもよい。
【0132】
図23は、本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料1060の変性した結晶構造1010の、追加の層2310(層2310A、層2310B、層2310C、および層2310Dとして示される。)を示す。図示されるように、変性ELR材料1060は、結晶構造300(図3の)の原子と結合を形成する変性材料1020から材料1060に入るまでの異なる距離で、様々なアパーチャ310(アパーチャ310A、アパーチャ310B、およびアパーチャ310Cとして示される。)を含む。アパーチャ310Aは変性材料1020に最も近く、その次にアパーチャ310Bが近く、次いでアパーチャ310Cが近いといった状態である。本発明の様々な実施態様によれば、変性材料1020の影響はアパーチャ310Aで最も大きく、その次に少ない影響が及ぶのはアパーチャ310Bに関してであり、次いで少ない影響が及ぶのはアパーチャ310Cといった状態である。本発明のいくつかの実施態様によれば、変性材料1020にはアパーチャ310Aが近接しているので、変性材料1020は、アパーチャ310Bまたはアパーチャ310Cのどちらかよりもアパーチャ310Aのほうをより良好に維持すべきであり;同様に、変性材料1020にはアパーチャ310Bのほうが近接しているので、変性材料1020はアパーチャ310Cよりもアパーチャ310Bをより良好に維持すべきである、といった状態である。本発明のいくつかの実施態様によれば、変性材料1020にはアパーチャ310Aが近接しているので、変性材料1020は、アパーチャ310Bまたはアパーチャ310Cのどちらかの断面よりも、アパーチャ310Aの断面のほうをより良好に維持すべきであり;同様に、変性材料1020にはアパーチャ310Bのほうが近接しているので、変性材料1020は、アパーチャ310Cの断面よりもアパーチャ310Bの断面をより良好に維持すべきである、といった状態である。本発明のいくつかの実施態様によれば、変性材料1020にはアパーチャ310Aが近接しているので、変性材料1020は、特定の温度でのアパーチャ310Bまたはアパーチャ310Cのどちらかの電荷伝搬容量に対してよりも、特定の温度でのアパーチャ310Aの電荷伝搬容量のほうに対して、より大きな影響を及ぼすべきであり;同様に、変性材料1020にはアパーチャ310Bのほうが近接しているので、変性材料1020は、特定の温度でのアパーチャ310Cの電荷伝搬容量に対してよりも、特定の温度でのアパーチャ310Bの電荷伝搬容量に対してより大きな影響を及ぼすべきである、といった状態である。本発明のいくつかの実施態様によれば、変性材料1020にはアパーチャ310Aが近接しているので、変性材料1020は、アパーチャ310Bまたはアパーチャ310Cのどちらかを通る電荷の伝搬よりも、アパーチャ310A内を通る電荷の伝搬を高めるべきであり;同様に、変性材料1020にはアパーチャ310Bのほうが近接しているので、変性材料1020は、アパーチャ310C内を通る電荷の伝搬よりも、アパーチャ310B内を通る電荷の伝搬を高めるべきである、といった状態である。
【0133】
上述の様々な試験結果、例えば、とりわけ図16の試験結果1600は、本発明の様々な実施態様の、これらの態様を裏付けており、すなわち一般に、アパーチャ310に対する変性材料1020の影響は、互いに対するそれらの近接性に関連して様々に変化する。特に、試験結果1600のそれぞれ個別のステップ1610は、特定の層2310のそれらアパーチャ310(または、より適切には、図示される隣接層2310間に形成されたそれらアパーチャ310)がそのようなアパーチャ310の電荷伝搬容量まで電荷を伝搬するので、変性ELR材料1060によって運ばれる電荷の変化に対応すると考えられる。変性材料1020に、より近接している層2310のそれらアパーチャ310は、より高い温度での個別のステップ1610に対応するのに対し、変性材料1020から離れている層2310のそれらアパーチャ310は、より低い温度での個別のステップ1610に対応する。個別のステップ1610は、変性材料1020まで所与の相対距離にあるアパーチャ310(すなわち、層2310Aと2310Bとの間のアパーチャ310A)が特定の温度で電荷を伝搬しかつそれらの最大電荷伝搬容量に素早く到達するという意味で、「個別」である。別の個別のステップ1610には、変性材料1020から長距離にあるアパーチャ310(すなわち、層2310Bと2310Cとの間のアパーチャ310B)が、この長距離の結果として、したがって変性材料1020がそれらアパーチャ310に及ぼす影響がより少ない結果としてより低い温度で電荷を伝搬したときに、到達する。それぞれ個別のステップ1610は、変性材料1020からのそれらの距離に基づいて電荷を運び始める別の組のアパーチャ310に、対応する。しかし、少し離れた場所では、変性材料1020は、いくつかのアパーチャ310に不十分な影響を及ぼして、そうでない場合よりも高い温度で電荷を運ばせる可能性があり;したがって、そのようなアパーチャ310は、ELR材料360の場合と矛盾しない温度で電荷を伝搬する。
【0134】
本発明のいくつかの実施態様では、変性材料1020とアパーチャ310との間の距離は、より多くのアパーチャ310に対する変性材料1020の影響が増大するように、短くなる。事実上、より多くのアパーチャ310は、より高い温度に関連付けて個別のステップ1610で電荷を伝搬すべきである。例えば、図20の配置2000では、本発明の様々な実施態様によれば、ELR材料360の層は、ELR材料360および変性材料1380中のアパーチャ310間の距離を短くするために、単に数個の単位セルの厚さに作製することができる。この距離を短くすることによって、所与の温度で変性材料1380による影響を受けるアパーチャ310の数を、増加すべきである。この距離を短くすることによって、配置2000の所与の全厚にあるELR材料360が交互に配された層の数も増加し、それによって、配置2000の全電荷伝搬容量も増加する。
【0135】
図32は、基材3220上に形成されたELR材料3210のフィルム3200を示すが、基材3220は、本発明の様々な実施態様で必要としなくてよい。本発明の様々な実施態様では、フィルム3200は、ある長さ、例えば10cm超、1m、1kmまたはそれ以上の長さを有するテープに形成されてもよい。そのようなテープは、例えば、ELR導体またはELRワイヤとして役立てることができる。理解されるように、本発明の様々な実施態様を、ELRフィルムに関して記述しているが、そのような実施態様はELRテープにも同様に適用される。
【0136】
この記述においては、図32に示されるように、フィルム3200は、1次表面3230と主軸3240とを有する。主軸3240は、フィルム3200の長さに沿って延びる軸に該当する(フィルム3200の幅またはフィルム3200の厚さとは対照的に)。主軸3240は、電荷がフィルム3200内を通して流れる1次方向に該当する。1次表面3230は、図32に示されるフィルム3200の主表面に該当し、フィルム3200の幅および長さによって囲まれる表面に該当する。フィルム3200は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な長さ、幅、および/または厚さを有してもよいことが理解されるべきである。
【0137】
本発明のいくつかの実施態様では、フィルム3200の製作中に、ELR材料3210の結晶構造は、それらのc−軸がフィルム3200の1次表面3230に実質的に垂直になるように、かつそれらのそれぞれの結晶構造のa−軸またはb−軸のどちらかが主軸3240に実質的に平行になるように、配向することができる。したがって、図32に示されるように、c−軸には名称が付され、a−軸およびb−軸は特に標識されず、本発明の様々な実施態様を記述する目的でそれらを同義に使用できることが反映されている。フィルム3200のいくつかの製作プロセスでは、ELR材料の結晶構造は、c−平面内の任意の所与の線が主軸3240に実質的に平行となり得るように、配向してもよい。
【0138】
この記述においては、1次表面3230に実質的に垂直に配向したそれらのそれぞれの結晶構造のc−軸を有するフィルム3200(図32に示されるフィルム3200を含む。)を、「c−フィルム」(すなわち、c−フィルム3200)と呼ぶ。YBCOからなるELR材料3210を有するc−フィルム3200は、例えばAmerican Superconductors(商標)(例えば、344 Superconductor−Type 348C)またはTheva Dunnschichttechnik GmbH(例えば、HTSコーティング付き導体)から市販されている。
【0139】
本発明のいくつかの実施態様では、基材3220は、MgO、STO、LSGO、金属やセラミックなどの多結晶質材料、不活性酸化物材料、立方晶酸化物材料、希土類酸化物材料、または理解されるようなその他の基材材料を含むがこれらに限定されない基材材料を含んでいてもよい。
【0140】
本発明の様々な実施態様によれば(以下により詳述されるように)、変性材料(例えば、変性材料1020、1380)は、ELR材料3210の適切な表面上に層状化され、ELR材料3210の適切な表面は、ELR材料3210の結晶構造のc−軸に実質的に垂直ではない任意の表面に該当する。言い換えれば、ELR材料3210の適切な表面は、1次表面3230に実質的に平行ではない任意の表面に該当し得る。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料3210の適切な表面は、ELR材料3210の結晶構造のc−軸に実質的に平行な任意の表面に該当し得る。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料3210の適切な表面は、ELR材料3210の結晶構造のc−軸に実質的に垂直ではない任意の表面に該当し得る。c−フィルム3200(その1次表面3230は、ELR材料3210の結晶構造のc−軸に実質的に垂直である。)の適切な表面を変性させるために、ELR材料3210の適切な表面は、c−フィルム3200上またはc−フィルム3200内に形成することができる。本発明のいくつかの実施態様では、1次表面3230は、その上部に変性材料を層状化するため、c−フィルム3200上またはc−フィルム3200内に、ELR材料3210の(1つまたは複数の)適切な表面が露出するように処理することができる。本発明のいくつかの実施態様では、1次表面3230は、その上部に変性材料を層状化するため、c−フィルム3200上またはc−フィルム3200内に、ELR材料3210の1つまたは複数のアパーチャ210が露出するように処理することができる。本発明の様々な実施態様では、変性材料は、上述の適切な表面に加え、1次表面3230上に層状化することができると理解されるべきである。
【0141】
ELR材料3210の適切な表面および/またはアパーチャ210を露出させる、c−フィルム3200の1次表面3230の処理は、様々な湿式プロセスまたは乾式プロセスを含む様々なパターニング技法を含んでいてもよい。様々な湿式プロセスは、リフトオフ、化学エッチング、またはその他のプロセスであって、そのいずれかでは化学物質を使用することを含むことができかつc−フィルム3200内でその他の様々な表面を露出させることができるものを含んでいてもよい。様々な乾式プロセスは、イオンまたは電子ビーム照射、レーザ直接描画、レーザアブレーション、またはレーザ反応性パターニング、またはその他のプロセスであって、c−フィルム3200内でELR材料3210の様々な適切な表面および/またはアパーチャ210を露出させることができるものを含んでいてもよい。
【0142】
図33に示されるように、c−フィルム3200の1次表面3230は、c−フィルム3200内で適切な表面を露出するように処理することができる。例えば、c−フィルム3200は、結晶構造100のb−平面に実質的に平行なc−フィルム3200内の面、または結晶構造100のa−平面に実質的に平行なc−フィルム3200内の面が露出するように処理してもよい。より一般には、本発明のいくつかの実施態様では、c−フィルム3200の1次表面3230は、a/b−c面(すなわち、ab−平面に実質的に平行な面)に対応するc−フィルム3200内の適切な表面が露出するように処理してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、c−フィルムの1次表面3230は、1次表面3230に実質的に平行ではないc−フィルム3200内の任意の面が露出するように処理することができる。本発明のいくつかの実施態様では、c−フィルムの1次表面3230は、1次表面3230に実質的に平行ではなくかつまた主軸3240に実質的に平行であるc−フィルム3200内の任意の面が露出するように処理することができる。これらの面のいずれかは、これらの面の組合せも含め、c−フィルム3200上またはc−フィルム3200内のELR材料3210の適切な表面に該当すると考えられる。本発明の様々な実施態様によれば、ELR材料3210の適切な表面は、そのようなアパーチャ210を維持する目的で、ELR材料3210中のアパーチャ210へのアクセスをもたらし、またはその他の方法でアパーチャ210を「露出させる」。
【0143】
本発明のいくつかの実施態様では、図33に示されるように、1次表面3230は、1次表面3230に1つまたは複数の溝3310を形成するように処理される。溝3310は、変性材料が堆積される1つまたは複数の適切な表面(すなわち、1次表面3230に実質的に平行なもの以外の表面)を含む。溝3310は、その形状が実質的に矩形の断面を有するように図33に示されているが、理解されるようにその他の形状の断面を使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、溝3310の幅は10nmより大きくてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、図33に示されるように、溝3310の深さはc−フィルム3200のELR材料3210の全厚より小さくてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、図34に示されるように、溝3310の深さはc−フィルム3200のELR材料3210の厚さに実質的に等しくてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、溝3310の深さは、c−フィルム3200のELR材料3210内を通して延びて基材3220に入ってもよい(他に示されていない。)。本発明のいくつかの実施態様では、溝3310の深さは、ELR材料3210の1つまたは複数の単位の厚さに対応していてもよい(他に示されていない。)。溝3310は、レーザエッチングまたはその他の技法などであるがこれらに限定されない様々な技法を使用して、1次表面3230に形成されてもよい。
【0144】
本発明のいくつかの実施態様では、溝3310の長さは、c−フィルム3200の全長に対応していてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、溝3310は、互いに対してかつ主軸3240に対して実質的に平行である。本発明のいくつかの実施態様では、溝3310は、本発明の様々な態様による様々な構成および/または配置をとってもよい。例えば、溝3310は、任意の手法でかつ/または方向に延びてもよく、線、湾曲、および/またはその他の幾何形状の断面であって、その延びに沿って様々なサイズおよび/または形状を有するものを含んでいてもよい。
【0145】
本発明の様々な態様について、1次表面3230内に溝3310を形成するとして述べてきたが、同様の幾何形状を実現するために、ELR材料3210の適切な表面を含むバンプ、角、または突起が基材3220上に形成されてもよいことが理解されよう。
【0146】
本発明の様々な実施態様によれば、c−フィルム3200は、様々な変性したc−フィルムを形成するよう変性されてもよい。例えば、図35を参照すると、変性材料3520(すなわち、変性材料1020、変性材料1380)は、1次表面3230上に、かつ変性していないc−フィルム(例えば、c−フィルム3200)の1次表面3230内に形成された溝3310内に、したがって様々な適切な表面3510上に層状化されて、変性したc−フィルム3500を形成してもよい。適切な表面3510は、上記にて論じた任意の適切な表面を含んでいてもよい。適切な表面3510は、1次表面3230に垂直であるとして図35に示されているが、これは、この記述から理解されるように必要ではない。
【0147】
本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520は、図35に示されるように、1次表面3230上および溝3310内に層状化されてもよい。図36に示されるようないくつかの実施態様では、変性材料3520は、変性材料3520が溝3310にのみ残るように様々な技法を使用して(例えば、様々な研磨技法)変性したc−フィルム3600を形成するために1次表面3230から除去されてもよい。いくつかの実施態様では、変性したc−フィルム3600は、溝3310にのみ変性材料3520を層状化することによって実現されてもよい。言い換えれば、いくつかの実施態様では、変性材料3520は、変性材料3520を1次表面3230上に層状化することなく溝3310内および/または適切な表面3510上にのみ層状化されてもよく、または、変性材料3520が1次表面3230に結合およびその他の方法で接着しないように層状化されてもよい(例えば、様々なマスキング技法を使用して)。本発明のいくつかの実施態様では、様々な選択的堆積技法は、適切な表面3510上に直接変性材料3520を層状化するのに用いてもよい。
【0148】
溝3310内および/または1次表面3230上の変性材料3520の厚さは、本発明の様々な実施態様に応じて変化してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520の単一の単位層(すなわち、変性材料3520の単一の単位に実質的に等しい厚さを有する層)は、溝3310の適切な表面3510上および/または1次表面3230上に層状化されてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520の2つ以上の単位層が、溝3310の適切な表面3510上および/または1次表面3230上に層状化されてもよい。
【0149】
本発明の様々な実施態様による、変性したc−フィルム3500、3600(すなわち、変性材料3520で変性したc−フィルム3200)は、変性していないc−フィルム3200の場合に勝る、1つまたは複数の改善された動作特性を実現するのに役立てることができる。
【0150】
図37に示されるように、本発明のいくつかの実施態様では、変性していないc−フィルム3200の1次表面3230は、1次表面3230上で利用可能な適切な表面3510の面積を露出させまたはその他の方法で増加させるように、化学エッチングを介して変性してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、1次表面3230内の適切な表面3510の広い面積を特徴付ける1つの手法は、c−フィルム3200の1次表面3230の実効(RMS)表面粗さに基づいてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、化学エッチングの結果、c−フィルム3200の1次表面3230は、約1nmから約50nmの範囲の表面粗さを有するエッチングされた表面3710を含んでいてもよい。RMS表面粗さは、例えば、原子間力顕微鏡法(AFM)、走査型トンネル顕微鏡法(STM)、またはSEMを使用して決定されてもよく、理解されるように粒度の半径(r)の範囲であってもよいR−範囲の統計平均に基づいてもよい。化学エッチング後、c−フィルム3700のエッチングされた表面3710は、ELR材料3210の適切な表面3510に対応してもよい。
【0151】
図38に示されるように、化学エッチングの後、変性材料3520は、c−フィルム3700のエッチングされた表面3710上に層状化されて、変性したc−フィルム3800を形成してもよい。変性材料3520は、表面3710の実質的に全てを覆ってもよく、変性材料3520の厚さは、本発明の様々な実施態様に応じて変化してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520の単一の単位層を、エッチングされた表面3710上に層状化してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520の2つ以上の単位層を、エッチングされた表面3710上に層状化してもよい。
【0152】
本発明のいくつかの実施態様では、c−フィルム3200の場合以外のELR材料の結晶構造の配向を有するフィルムを、使用してもよい。例えば、図39を参照すると、本発明の様々な実施態様によれば、c−フィルム3200の場合のように1次表面3230に垂直に配向するc−軸の代わりに、フィルム3900は、主軸3240に垂直に配向したc−軸と、1次表面3230に垂直に配向したELR材料3910のb−軸とを有していてもよい。同様に、フィルム3900は、主軸3240に垂直に配向したc−軸と、1次表面3230に垂直に配向したELR材料3910のa−軸とを有していてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、フィルム3900は、主軸3240に垂直に配向したc−軸と、主軸3240に沿って配向したc−平面に平行な任意の線とを有していてもよい。図39に示されるように、本発明のこれらの実施態様では、フィルム3900は、その結晶構造が主軸3240に垂直に配向しかつ1次表面3930に平行なc−軸を有するELR材料3910を含み、これを本明細書では一般にa−bフィルム3900と呼ぶ。図39は、特定の配向にある結晶構造のその他の2つの軸を示すが、そのような配向は、理解されるように必要ではない。図示されるようにa−bフィルム3900は、任意選択の基材3220を含んでいてもよい(c−フィルム3200の場合のように)。
【0153】
本発明のいくつかの実施態様では、a−bフィルム3900は、図39に示されるように配向したELR材料3910の結晶構造のc−軸と、1次表面3930に垂直なa−軸とを有するa−フィルムである。そのようなa−フィルムは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている非特許文献2に記載されているものを含む、様々な技法を介して形成されてもよい。いくつかの実施態様では、a−フィルムは、下記の材料:LGSO、LaSrAlO4、NdCaAlO4、Nd2CuO4、またはCaNdAlO4で形成された基材3220上に成長させてもよい。その他の基材材料を、理解されるように使用してもよい。
【0154】
本発明の様々な実施態様では、a−bフィルム3900は、図39に示されるように配向したELR材料3910の結晶構造のc−軸と、1次表面3930に垂直なb−軸とを有するb−フィルムである。
【0155】
本発明のいくつかの実施態様によれば、a−bフィルム3900の1次表面3930は、適切な表面3510に該当する。a−bフィルム3900を用いるいくつかの実施態様では、ELR材料3910の適切な表面を形成するステップは、a−bフィルム3900を形成するステップを含んでもよい。したがって、a−bフィルム3900を含む本発明の実施態様では、図40に示されるように、変性材料3520はa−bフィルム3900の1次表面3930上に層状化されて、変性したa−bフィルム4000を生成してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520は、a−bフィルム3900の1次表面3930を全体的にまたは部分的に覆ってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520の厚さは、上記にて論じたように変化してもよい。より具体的には、本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520の単一の単位層を、a−bフィルム3900の1次表面3930上に層状化してもよく;本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520の2つ以上の単位層を、a−bフィルム3900の1次表面3930上に層状化してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、a−bフィルム3900には、例えば、変性材料3520が表面に層状化されるELR材料3910の適切な表面3510の全面積を増加させるため、c−フィルム3200に関して上記にて論じたように溝を彫ってもまたはその他の方法で変性させもよい。
【0156】
理解されるように、a−bフィルム3900を利用するのではなく、本発明のいくつかの実施態様は、a−bフィルム3900の場合と同様の手法で配向したその結晶構造を有するELR材料3210の層を利用してもよい。
【0157】
本発明のいくつかの実施態様では(他に示されていない。)、緩衝材または絶縁材料を、前述のフィルムのいずれかの変性材料3520上に引き続き層状化してもよい。これらの実施態様では、緩衝材または絶縁材料および基材は、ELR材料3210、3910およびそれらの間の変性材料3520と共に「サンドイッチ」を形成する。緩衝材または絶縁材料は、理解されるように変性材料3520上に層状化されてもよい。
【0158】
前述の材料のいずれかを、任意のその他の材料上に層状化してもよい。例えば、ELR材料を変性材料上に層状化してもよい。同様に、変性材料をELR材料上に層状化してもよい。さらに、層状化するステップは、理解されるようにその他の材料上に1種の材料を、組み合わせ、形成し、または堆積するステップを含んでもよい。層状化するステップは、パルスレーザ堆積法、同時蒸着、電子ビーム蒸着、および活性化反応性蒸着を含めた蒸着、マグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリング、およびイオン支援スパッタリングを含めたスパッタリング、カソードアーク蒸着、CVD、有機金属CVD、プラズマ強化CVD、分子線エピタキシー、ゾルゲル法、液相エピタキシー、および/またはその他の層状化技法が含むが、これらに限定されない任意の一般に公知の層状化技法を使用してもよい。
【0159】
ELR材料3210、3910、変性材料3520、緩衝材もしくは絶縁層、および/または基材1120の多層を、本発明の様々な実施態様で配置してもよい。図41は、本発明の様々な実施態様による、これらの層の様々な例示的な配置を示す。いくつかの実施態様では、所与の層は、緩衝材もしくは絶縁層または基材としても働く変性材料3520を含んでいてもよい。その他の配置または配置の組合せは、この記述を読むことによって理解されるように使用されてもよい。さらに、本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料の様々な層は、所与の配置で互いに異なる配向を有していてもよい。例えば、配置におけるELR材料の1つの層は、主軸3240に沿って配向したその結晶構造のa−軸を有していてもよく、この配置におけるELR材料の別の層は、主軸3240に沿って配向したその結晶構造のb−軸を有していてもよい。その他の配向を、本発明の様々な実施態様による所与の配置内で使用してもよい。
【0160】
図42は、本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料を生成するためのプロセスを示す。操作4210では、適切な表面3510が、ELR材料上またはELR材料内に形成される。ELR材料がc−フィルム3200のELR材料3210として存在する本発明のいくつかの実施態様では、適切な表面3510は、c−フィルム3200の1次表面3230上または1次表面3230内に適切な(1つまたは複数の)表面3510を露出させることによって形成される。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料3210の適切な表面は、上記にて論じたように、湿式もしくは乾式処理技法またはそれらの組合せのいずれかを使用して1次表面3230を変性させることにより、露出させてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、1次表面3230を、上記にて論じた化学エッチングによって変性させてもよい。
【0161】
ELR材料がa−bフィルム3900のELR材料3910として存在する(基材3220と共にまたはなしで)本発明のいくつかの実施態様では、適切な表面3510は、ELR材料3910(上述のように適正な配向にある。)を、基材3220を含んでも含まなくてもよい表面上に層状化することによって形成される。
【0162】
本発明のいくつかの実施態様では、適切な表面3510は、ab−平面に平行なELR材料の表面を含む。本発明のいくつかの実施態様では、適切な表面3510は、b−平面に平行なELR材料の面を含む。本発明のいくつかの実施態様では、適切な表面3510は、a−平面に平行なELR材料の面を含む。本発明のいくつかの実施態様では、適切な表面3510は、異なるab−平面に平行なELR材料の1つまたは複数の面を含む。本発明のいくつかの実施態様では、適切な表面3510は、ELR材料のc−軸に実質的に垂直ではない1つまたは複数の面を含む。
【0163】
本発明のいくつかの実施態様では、様々な任意選択の操作を行ってもよい。例えば、本発明のいくつかの実施態様では、適切な表面3510またはELR材料をアニールしてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、このアニール処理は、炉内アニールまたは高速熱処理(RTP)アニールプロセスであってもよい。本発明のいくつかの実施態様では、そのようなアニール処理は、所定の時間内、温度範囲内、およびその他のパラメータでの1つまたは複数のアニール処理操作で行ってもよい。さらに、理解されるように、アニール処理は、化学気相成長(CVD)チャンバ内で行ってもよく、適切な表面3510を、適切な表面3510を強化することができる所定時間にわたって温度および圧力の任意の組合せに供するステップを含んでもよい。そのようなアニール処理は、気体雰囲気中で、かつプラズマ強化によってまたはプラズマ強化なしで行ってもよい。
【0164】
操作4220では、変性材料3520を、1つまたは複数の適切な表面3510上に層状化してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520は、上述の様々なものを含む様々な層状化技法を使用して、適切な表面3510上に層状化してもよい。
【0165】
図43は、本発明の様々な実施態様による、操作4220中に行うことができる追加の処理の例を示す。操作4310では、適切な表面3510を研磨してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、上記にて論じたように1種または複数の研磨剤を使用してもよい。
【0166】
操作4320では、適切な表面3510以外の様々な表面を、任意の一般に公知のマスキング技法を使用してマスクしてもよい。いくつかの実施態様では、適切な表面3510以外の全ての表面をマスクしてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、適切な表面3510以外の1つまたは複数の表面をマスクすることができる。
【0167】
操作4330では、変性材料3520は、上記にて論じた任意の一般に公知の層状化技法を使用して、適切な表面3510上に層状化してもよい(またはいくつかの実施態様において、図43に示されるように、適切な表面3510上に堆積してもよい。)。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520は、MBEを使用して適切な表面3510上に堆積してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520は、PLDを使用して適切な表面3510上に堆積してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520は、CVDを使用して適切な表面3510上に堆積してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、約40nmの変性材料3520を、適切な表面3510上に堆積してもよいが、1.7nm程度に小さなある変性材料3520(例えば、コバルト)が試験された。本発明の様々な実施態様では、例えば数オングストローム程度のさらに少量の変性材料3520を、使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、変性材料3520を、5×10-6torr以下の圧力を有していてもよい真空中のチャンバ内で、適切な表面3510上に堆積してもよい。半導体ウェハを処理するのに使用されるものを含めた様々なチャンバを使用してもよい。本発明のいくつかの実施態様では、本明細書に記述されるCVDプロセスは、Genus,Inc.(Sunnyvale、Calif.)から7000という商標名で入手可能な反応チャンバ、Applied Materials,Inc.(Santa Clara、Calif.)から5000という商標名で入手可能な反応チャンバ、またはNovelus,Inc.(San Jose、Calif.)からPrismという商標名で入手可能な反応チャンバなどのCVD反応器内で実施してもよい。しかし、MBE、PLD、またはCVDを行うのに適切な任意の反応チャンバを使用してもよい。
【0168】
図44は、本発明の様々な実施態様による、変性ELR材料を形成するためのプロセスを示す。特に、図44は、a−bフィルム3900を形成しかつ/または変性するためのプロセスを示す。任意選択の操作4410では、緩衝材層を基材3220上に堆積する。本発明のいくつかの実施態様では、緩衝材層は、PBCOまたはその他の適切な緩衝材材料を含む。本発明のいくつかの実施態様では、基材3220は、LSGOまたはその他の適切な基材材料を含む。操作4420では、ELR材料3910は、図39に関連して既に述べた適正な配向を有する基材3220上に層状化される。理解されるように、任意選択の操作4410に応じて、ELR材料3910は基材3220または緩衝材層上に層状化する。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料3910の層は、2つ以上の単位層の厚さである。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料3910の層は、数個の単位層の厚さである。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料3910の層は、数個の単位層の厚さである。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料3910の層は、多くの単位層の厚さである。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料3910は、IBADプロセスを使用して基材3220上に層状化される。本発明のいくつかの実施態様では、ELR材料3910は、基材3220上に層状化されると共に磁場に曝されて、ELR材料3910内の結晶構造のアライメントが改善される。
【0169】
任意選択の操作4430では、ELR材料3910の(1つまたは複数の)適切な表面3510(a−bフィルム3900に関し、1次表面3930に該当する。)は、上述の様々な技法を使用して研磨される。本発明のいくつかの実施態様では、研磨は、ELR材料3910の適切な表面3510上に不純物を導入することなく実現される。本発明のいくつかの実施態様では、研磨は、清浄なチャンバを崩壊させることなく実現される。操作4440では、変性材料3520は、適切な表面3510上に層状化される。任意選択の操作4450では、銀などであるがこれに限定されないカバー材料を、変性材料3520全体の上に層状化する。
【0170】
図のフローチャート、図解、およびブロック図は、本発明の様々な実施態様による方法および製品の可能性ある実施態様の機構、機能、および操作を示す。いくつかの大体の実施態様では、ブロックに示される機能が、図に示される順序とは異なって生じてもよいことにも留意すべきである。例えば、必要とされる機能性に応じて、相次いで示される2つのブロックが実際に実質的に同時に実行されてもよく、またはこれらのブロックが逆の順序で時々実行されてもよい。
【0171】
さらに、先の記述は本発明の様々な実施態様を対象とするが、その他の変更および修正は当業者に明らかであり、それらを本発明の精神または範囲から逸脱することなく行ってもよいことに、留意されたい。さらに、本発明の一実施態様に関連して記述される様々な特徴は、上記にて明示されていないとしても、本明細書に記述される様々なその他の特徴またはその他の実施態様と併せてまたは組み合わせて使用してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ELRフィルムの動作特性を改善するための方法であって、
前記ELRフィルムは、結晶構造を有するELR材料を含み、
前記方法は、
前記ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化して、変性ELRフィルムを生成するステップを含み、
前記変性ELRフィルムは、前記変性材料のない前記ELRフィルムの特性に勝る、
改善された動作特性を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、前記変性材料を、前記ELR材料の前記適切な表面上に堆積するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、前記ELR材料の結晶構造のc−平面に実質的に平行ではない前記ELR材料の面上に前記変性材料を層状化するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、前記ELR材料の結晶構造のab−平面に平行な前記ELR材料の面上に前記変性材料を層状化するステップを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、前記ELR材料の結晶構造のa−平面またはb−平面に平行な前記ELR材料の面上に前記変性材料を層状化するステップを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、前記ELRフィルムの前記適切な表面上に、クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、ベリリウム、ガリウム、またはセレンを層状化するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ELRフィルム上または前記ELRフィルム内に前記適切な表面を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ELRフィルム上または前記ELRフィルム内に前記適切な表面を形成するステップは、前記ELRフィルム上または前記ELRフィルム内に前記適切な表面を露出させるステップを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ELRフィルム上または前記ELRフィルム内に適切な表面を形成するステップは、
基材上に、前記基材の主軸に沿って、前記ELR材料の結晶構造の特定の軸を配向させるように前記ELR材料を層状化するステップを含み、
前記特定の軸は、前記ELR材料の結晶構造の前記c−平面内の線であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記特定の軸は、a−軸またはb−軸であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
基材上に前記ELR材料を層状化するステップは、前記ELR材料を、MgO、SrTiO3、LaSrGaO4、またはこれらの組合せの上に層状化するステップを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ELRフィルムの前記適切な表面を露出させるステップは、前記ELRフィルムの1次表面をエッチングして、前記1次表面の表面積を増加させるステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ELRフィルムの前記適切な表面を露出させるステップは、前記ELRフィルムの1次表面にパターンを生成し、それによって前記ELRフィルムの1つまたは複数の適切な表面を露出させるステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ELRフィルムの1次表面にパターンを生成するステップは、前記ELRフィルムの前記1次表面に溝を彫るステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ELRフィルムの適切な表面上に変性材料を層状化するステップは、前記変性材料を前記溝に堆積するステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ELR材料は、超電導材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記超電導材料は、混合原子価酸化銅ペロブスカイトを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記超電導材料は、鉄プニクタイドまたは二ホウ化マグネシウムを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ELRフィルムの動作特性を改善するための方法であって、
前記ELRフィルムは、前記ELRフィルムの他の2つの軸のいずれよりも長い主軸を有し、
前記ELRフィルムは、前記ELRフィルムの他の直交面のいずれよりも広い面積を有する1次表面を有し、
前記ELRフィルムは結晶構造を有するELR材料を含み、
前記方法は
少なくとも1つの溝を前記ELRフィルムの前記1次表面に生成し、それによって前記ELR材料の面を露出させ、前記露出した面が、前記ELR材料の結晶構造のab−平面に平行な面であるステップと;
変性材料を、前記露出した面上に堆積するステップと;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記ELRフィルムの前記1次表面に少なくとも1つの溝を生成するステップは、前記ELR材料の厚さに実質的に等しい深さを有する少なくとも1つの溝を生成するステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ELRフィルムの前記1次表面に少なくとも1つの溝を生成するステップは、前記ELR材料の厚さ未満の深さを有する少なくとも1つの溝を生成するステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記露出した面上に変性材料を堆積するステップは、前記露出した面上に、前記変性材料の単一の単位層を堆積するステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記露出した面上に変性材料を堆積するステップは、前記露出した面上に、前記変性材料の2つ以上の単位層を堆積するステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの溝の幅は、10nmよりも大きいことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記ELRフィルムの前記1次表面に少なくとも1つの溝を生成するステップは、実質的に前記ELRフィルムの前記主軸の方向にある前記フィルムの前記1次表面に少なくとも1つの溝を生成するステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項26】
ELRフィルムであって、
ELR材料からなる第1の層と;
前記第1の層のELR材料に結合された、変性材料からなる第2の層と;
を含み、
前記変性材料に結合された前記ELR材料が、前記変性材料のない前記ELR材料の動作特性に勝る、改善された動作特性を有することを特徴とするELRフィルム。
【請求項27】
前記改善された動作特性は、より高い遷移温度を含むことを特徴とする請求項26に記載のELRフィルム。
【請求項28】
基材材料からなる第3の層をさらに含むことを特徴とする請求項26に記載のELRフィルム。
【請求項29】
前記第1の層は、前記基材層に隣接していることを特徴とする請求項28に記載のELRフィルム。
【請求項30】
前記第2の層は、前記基材層に隣接していることを特徴とする請求項28に記載のELRフィルム。
【請求項31】
緩衝材または絶縁層をさらに含むことを特徴とする請求項26に記載のELRフィルム。
【請求項32】
前記第1の層は、前記緩衝材または前記絶縁層に隣接していることを特徴とする請求項31に記載のELRフィルム。
【請求項33】
前記第2の層は、前記緩衝材または前記絶縁層に隣接していることを特徴とする請求項31に記載のELRフィルム。
【請求項34】
前記第2の層に結合されたELR材料の第3の層をさらに含むことを特徴とする請求項26に記載のELRフィルム。
【請求項35】
前記第1の層に結合された変性材料の第3の層をさらに含むことを特徴とする請求項26に記載のELRフィルム。
【請求項36】
前記基材材料は、多結晶質材料、多結晶質金属、合金、ハステロイ金属、ヘインズ金属、またはインコネル金属を含むことを特徴とする請求項28に記載のELRフィルム。
【請求項37】
前記変性材料は、クロム、銅、ビスマス、コバルト、バナジウム、チタン、ロジウム、ベリリウム、ガリウム、セレン、またはその他の金属を含むことを特徴とする請求項26に記載のELRフィルム。
【請求項38】
前記ELR材料は、超電導材料を含むことを特徴とする請求項26に記載のELRフィルム。
【請求項39】
前記超電導材料は、混合原子価酸化銅ペロブスカイトを含むことを特徴とする請求項38に記載のELRフィルム。
【請求項40】
前記超電導材料は、鉄プニクタイド材料を含むことを特徴とする請求項38に記載のELRフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図13G】
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【図13H】
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【図13I】
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【図13J】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図16F】
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【図16G】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公表番号】特表2013−507009(P2013−507009A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532382(P2012−532382)
【出願日】平成22年10月2日(2010.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/051239
【国際公開番号】WO2011/041764
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512086057)アンバチュア リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】