説明

極端紫外光光源装置

【課題】放電電流の電流密度を高くしてEUV光の発光強度および輝度を大きくし、かつ集光点化し、露光精度の向上を図る。
【解決手段】容器1内にEUV光を放射させるための液体等の原料を供給する手段18と、エネルギービームを原料に照射して気化する手段3と、気化した原料を放電により容器内で加熱励起して高温プラズマを発生させるための所定距離だけ離間した一対の放電電極6,9と、放電電極間にパルス電力を供給する手段17と、放電電極間における放電により生成された高温プラズマから放射されるEUV光を集光する手段14と、集光されたEUV光を取り出す取出部15とを有する極端紫外光光源装置において、一対の放電電極6,9は回転機構が接続されて回転する円盤状の放電電極であり、少なくとも一方の円盤状の放電電極の周縁部の他方の放電電極と対向する位置に、複数の突起7,10が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外光を発生させる極端紫外光光源装置に係わり、特に、電極を回転させながら極端紫外光を発生させる極端紫外光光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化高集積化につれて、その製造用の投影露光装置においては解像力の向上が要請されている。その要請に応えるため、露光用光源の短波長化が進められ、エキシマレーザ装置に続く次世代の半導体露光用光源として、波長13〜14nm、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光ともいう)を放出する極端紫外光光源装置(以下、EUV光源装置ともいう)が開発されている。
【0003】
EUV光源装置において、EUV光を発生させる方法はいくつか知られているが、そのうちの1つにEUV放射種を加熱して励起することより高温プラズマを発生させ、このプラズマから放射されるEUV光を取り出す方法がある。このような方法を採用するEUV光源装置としては、高温プラズマの生成方式により、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)方式EUV光源装置と、DPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式EUV光源装置とに大きく分けられる。LPP方式EUV光源装置は、固体、液体、気体等のターゲットにパルスレーザを照射することにより、高温プラズマを生成する。一方、DPP方式EUV光源装置は、電流駆動により高温プラズマを生成するものである。
【0004】
また、EUV光源装置においては、波長13.5nmのEUV光を放出する放射種、即ち、高温プラズマ用原料として、現在10価前後のXe(キセノン)イオンが知られているが、最近は、より強い放射強度を得るための原料としてLi(リチウム)イオンとSn(錫)イオンが注目されている。例えば、Snは高温プラズマを発生させるための入力エネルギーに対する波長13.5nmのEUV光放射強度の比である変換効率がXeより数倍大きい。
【0005】
特許文献1および特許文献2には、DPP方式のEUV光源装置として、電極の消耗を防ぐため、電極を回転させる装置が提案されている。
【0006】
図11は、特許文献1の図1に示されたEUV光源装置の構成を示す断面図である。
同図において、101,102は円盤状の電極、103,104はそれぞれ電極101,102を回転させる回転軸、105は電極101,102の一部が浸される高温プラズマ用原料としての加熱された液体金属または溶融金属である。電極101,102の回転に伴って電極101,102の表面上に乗った液体状の金属105は、予め設定された電極101,102間の放電部106となるギャップに運ばれ、運ばれた液体状金属105に対してレーザビーム107が照射され気化される。次に、電極101,102間に気化された金属105を介して放電電圧が印加される。放電電圧が印加されると放電部106において放電が開始され、高温プラズマが発生する。高温プラズマから発生したEUV光は図面上側から取り出される。
【0007】
上記のEUV光源装置のように放電電極101,102を回転させると、次のような利点がある。即ち、電極101,102間に形成される放電部106に、常に新しいEUV発生種の原料である固体または液体状の高温プラズマ用原料を供給することができる。また、電極101,102のレーザビーム107を照射する位置、つまり、高温プラズマが発生する放電部106の位置が常に変化するので、電極101,102の熱負荷が低減し、電極101,102の消耗を防ぐことができる。
【特許文献1】特表2007−505460号公報
【特許文献2】WO2005/101924
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に示されるEUV光源装置には、次のような問題がある。即ち、高温プラズマからのEUV発光強度および輝度を向上させるためには、プラズマに放電エネルギーを効率良く供給しなければならないが、そのためには、放電部106に局所集中電界を発生させて放電電流の電流密度を増加させる必要がある。しかし、この装置においては、放電部106は2つの円盤状の電極101,102が接近している、所謂円周のエッジ部分であり、放電は電極101,102のエッジの最も接近している部分で発生することとなる。しかし、実際の装置においては、電極101,102に供給する電力や電極101,102の熱容量や電極101,102の回転速度(周波数)を考慮すると、円盤状の電極101,102の径は大きくなり、両電極101,102のエッジの最も接近している部分とその近傍とで、電極間隔に差がなくなる。
【0009】
後述する図3(b)は、上記EUV光源装置の円盤状の電極101,102の放電部106の拡大図である。一例として、電極101,102は半径が約350mm、電極101,102間のギャップ長は約5mmであり、放電部106は、2つの円形の電極101,102に挟まれた領域となる。同図に示すように、放電部106における電極101,102の外周はほぼ直線状であり、両電極101、102のギャップ長は、電極101,102の外周10mmから20mmに亘ってほとんど変わらない。そのため、放電部106の電気力線が分散して電界が弱くなり、放電電流の電流密度が低くなり、EUV発光強度および輝度を大きくすることができない。
【0010】
また、上記EUV光源装置によれば、放電部106の電気力線が分散するので放電路(放電電流の通路)の空間的位置が変動する可能性が高くなる。放電路の空間的位置が変動すると、高温プラズマの空間的位置が変動し、EUV光の発光する位置も変動する。EUV光の発光する位置が変動すると、EUV光の集光点が変動し、露光精度に影響を及ぼす。これを防ぐためには、EUV光を発光するプラズマの空間的位置を安定させなければならない。そのためには、電気力線を集中させて(局所集中電界を発生させて)放電路の空間的位置を固定させなければならない。
【0011】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑みて、円盤状の回転する2つの電極を備えたEUV光源装置において、放電電流の電流密度を高くしてEUV発光強度および輝度を大きくし、かつEUV光の発光する位置を固定化してEUV光を集光点化し、露光精度の向上を図った極端紫外光光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、容器と、該容器内にEUV光を放射させるための液体または固体の原料を供給する原料供給手段と、エネルギービームを上記原料に照射して該原料を気化するエネルギービーム照射手段と、上記気化した原料を放電により上記容器内で加熱励起して高温プラズマを発生させるための所定距離だけ離間して配置された一対の放電電極と、該放電電極間にパルス電力を供給するパルス電力供給手段と、上記放電電極間における放電により生成された上記高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光光学手段と、上記集光された極端紫外光を取り出す極端紫外光取出部とを有する極端紫外光光源装置において、上記一対の放電電極は回転機構が接続されて回転する円盤状の放電電極であり、少なくとも一方の円盤状の放電電極の周縁部の他方の放電電極と対向する位置に、複数の突起が形成されていることを特徴とする極端紫外光光源装置である。
第2の手段は、第1の手段において、上記一対の円盤状のそれぞれの放電電極は、略同一平面上に配置されていることを特徴とする極端紫外光光源装置である。
第3の手段は、第1の手段において、上記一対の円盤状のそれぞれの放電電極は、同一軸上に平行に配置されていることを特徴とする極端紫外光光源装置である。
第4の手段は、第1の手段ないし第3の手段のいずれか1つの手段において、上記原料供給手段は、上記放電電極近傍に上記原料を滴下することを特徴とする極端紫外光光源装置である。
第5の手段は、第1の手段ないし第3の手段のいずれか1つの手段において、上記原料供給手段は、上記放電電極の表面に上記原料が塗布することを特徴とする極端紫外光光源装置である。
第6の手段は、第5の手段において、上記エネルギービーム照射手段は、上記突起の先端にエネルギービームを照射することを特徴とする極端紫外光光源装置である。
第6の手段は、第1の手段ないし第6の手段のいずれか1つの手段において、上記放電電極の周縁部に形成される突起の間隔は、該突起と対向する突起が形成されていない放電電極間が最も近接された間隔、または該突起と対向する放電電極に形成された突起間が最も近接された間隔よりも広いことを特徴とする極端紫外光光源装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1ないし請求項6に記載の発明によれば、両回転電極に電力を供給した際に、突起を備える回転電極においては、電気力線は2つの対向する突起間または1つの突起に対向する回転電極間に集中するので、回転電極間に高温プラズマが形成されたとき、突起間または突起と回転電極間では電流密度が高くなり、高温プラズマから放射されるEUV光の発光強度および輝度を高くすることができる。また、電気力線が突起の先端に集中しているので、突起間または突起と回転電極間にプラズマ原料が供給されて気化すれば、対向する突起の先端間でのみ放電が生じ、その位置から極端紫外光が放射されることになる。その結果、放電路の空間的位置が固定され、極端紫外光の発光位置を安定することができる。
また、請求項7に記載の発明によれば、両回転電極に形成する突起の間隔(ピッチ)を、最も接近して対向する突起の先端間の間隔(ギャップ)よりも広くすることにより、回転電極の突起間の電気力線を、最も接近して対向する突起との先端間に集中させることができ、極端紫外光の発光位置を安定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1の実施形態を図1ないし図3を用いて説明する。
図1(a)は、本実施形態に係る極端紫外光光源装置の概略構成を示す平面図、図1(b)は図1(a)に示した極端紫外光光源装置の要部の構成を示す正面図である。
これらの図において、1は一対の回転電極6,9等が収納される真空容器、2は放射されたEUV光を集光するEUV集光ミラー14等が収納される真空容器、3はエネルギービーム照射手段としてのレーザー装置、4はレーザー光、5はレーザー入射窓、6は一方の円盤状の回転電極、7は回転電極6の外周縁に所定の間隔で複数配置された突起、8は回転電極6の回転軸、9は回転電極6と略同一平面上に所定距離離間して配置された他方の円盤状の回転電極、10は突起7と対向するように回転電極9の外周縁に所定の間隔で複数配置された突起、11は回転電極9の回転軸、12は高温プラズマ原料のドロップレットターゲット、13は回転電極6,9とEUV集光ミラー14の間に設けられ、高温プラズマから発生するデブリを除去するホイルトラップ、14は集光光学手段としてのEUV集光ミラー、15はEUV光取出部としてのEUV光出射窓、16はガス排気ユニット、17は放電電極6,9にパルス電力を供給するパルス電力供給手段としてのパルス電源、18は放電領域、19は液体または固体の原料を供給する原料供給手段としてのドロップレット供給装置、20はターゲット回収筒である。
【0015】
これらの図に示すように、高温プラズマを発生させる原料(例えば、Sn)は、液体状のドロップレットとして、ドロップレット供給装置19から、両電極6,9間に滴下供給される。滴下された高温プラズマ原料は、レーザー装置3からのレーザー照射により気化され、それと共に、回転電極6の突起7と回転電極9の突起10間にパルス電源17からパルス電力が供給されて放電が開始され、これにより両突起7,9間に気化した原料による高温プラズマが形成されてEUV光が放射され、放射されたEUV光はEUV集光ミラー14により集光されたEUV光は、真空容器2に設けられたEUV光出射窓15から取り出される。
【0016】
図2(a)は、図1に示した極端紫外光光源装置の要部を詳細に説明するために回転電極6,9を上(原料供給側)から見た平面図、図2(b)は、図1に示した極端紫外光光源装置の要部を詳細に説明するために回転電極6,9を正面(光出射側)から見たす正面図である。
これらの図に示すように、1対(2枚)の円盤状の回転電極6,9は同一平面上に並べて配置され、回転電極6,9の回転軸8,11を介してモータ21,22が取り付けられ、回転軸8,11を中心にして回転する。回転電極6,9の周縁部(互いに対向する回転電極6,9の側面)には、複数の突起7,10が両者同数等間隔で形成されている。両回転電極6,9は同期して同じ速度で回転し、突起7,10は放電領域18において、突起7,10の先端同士が予め設定された所定の間隔で向き合い最接近するよう設計されている。両電極6,9が最も接近する位置が放電領域18であり、この放電領域18または放電領域18近傍に向けて、図1(b)に示すように、上方に配置されたドロップレット供給装置19から、図2(b)に示すように、Sn等の液体状の高温プラズマ原料が滴下される。滴下された高温プラズマ原料が、放電領域18に接近(または到達)したとき、図1(b)に示すように、レーザ装置3からレーザー光14が高温プラズマ原料に照射され気化される。それと共に、図1(a)、(b)に示したパルス電源17から回転電極6,9間にパルス電力が供給されて放電が開始され、これにより両電極間に高温プラズマが形成されてEUV光が出射する。
【0017】
図3(a)は、図2(a)、(b)に示した要部構成において、突起7を備える回転電極6と突起10を備える回転電極9が対向する放電領域18の拡大図、図3(b)は従来技術に係る突起を備えない回転電極101と回転電極102とが対向する放電領域の拡大図である。
図3(a)、(b)において、回転電極の半径は350mm、回転電極の回転速度は50Hz、放電の繰り返し周波数が10kHz、電極間隔が5mmという条件で設計し、図3(a)においては、突起7,10は約11mmの間隔(ピッチ)で形成されており、図3(b)においては回転電極101,102には突起が設けられていない。
【0018】
図3(a)、(b)の矢印は、両回転電極に電力を供給した際に、両回転電極間に生じる電界の電気力線を模式的に示したものであり、図3(b)に比べて図3(a)に示すように、突起7,10を備える回転電極6,9においては、電気力線は2つの対向する突起7,10間に集中する。従って、回転電極6,9間に高温プラズマが形成されたとき、突起7,10間では電流密度が高くなり、高温プラズマから放射されるEUV光の発光強度および輝度を高くすることができる。電気力線が突起7,10の先端に集中しているので、両突起7,10間に気化したプラズマ原料が供給されれば、対向する突起7,10の先端間でのみ放電が生じ、その位置からEUV光が放射されることになる。即ち、放電路の空間的位置が固定され、EUV光の発光位置を安定させることができる。
【0019】
回転電極6,9に形成する突起7,10の間隔(ピッチ)を、最も接近して対向する突起7,10の先端間の間隔(ギャップ)よりも広くするのは次の理由による。即ち、間隔(ピッチ)の方が狭いと、回転電極6,9の突起7,10間の電気力線が、対向する突起7,10との間だけでなく、隣の突起7,10との間でも集中してしまう可能性がある。そのため、放電は対向する突起7,10の先端間以外でも生じる可能性があり、その場合には、EUV光の発光位置が不安定になる。一方、図3(b)に示すように、突起を設けない回転電極101,102の場合は、回転電極101,102の径が大きいので、放電部における回転電極101,102の外周はほぼ直線状となり、回転電極101,102の間隔は10mm〜20mmにわたってほとんど変わらない。そのため、放電部の電気力線が分散して、電流密度が低くなり、EUV発光強度および輝度が大きくならない。また、放電部の電気力線が分散するので放電路位置が変動し、EUV光の発光位置が安定しない。
【0020】
次に、本発明の第2の実施形態を図4を用いて説明する。
図4(a)は、本実施形態に係る極端紫外光光源装置の概略構成を示す平面図、図4(b)は図4(a)に示した極端紫外光光源装置の要部の構成を示す正面図である。
これらの図において、23は原料供給手段としてのメタルバスであり、その他の構成は図1に示した同符号の構成に対応するので説明を省略する。
これらの図に示すように、本実施形態に係る極端紫外光光源装置は、図1に示した高温プラズマの原料供給手段としてのドロップレツト供給装置19に代えて、メタルバス23を用いたものである。メタルバス23には液体状の高温プラズマ原料が溜められており、回転電極9、10の一方または両方の一部がメタルバス23の中に浸かり、回転電極6,9が回転するものである。メタルバス23を通過した回転電極9の突起10の表面には、高温プラズマ原料が付着する。
【0021】
本実施形態の極端紫外光光源装置においては、両回転電極6,9は同期して同じ速度で回転し、突起7,10は放電領域18において、突起7,10の先端同士が予め設定された所定の間隔で向き合い最接近するよう設計されている。回転電極6,9の突起7,10が最も接近する位置が放電領域18であり、高温プラズマ原料が付着した突起10が、放電領域18に接近(または到達)したとき、レーザー装置3からレーザー光11が突起10の先端の高温プラズマ原料に照射され気化される。それと共に、パルス電源17から回転電極6,9間にパルス電力が供給されて突起7,10間で放電が開始され、これにより突起7,10間に高温プラズマが形成されてEUV光が出射する。
【0022】
本実施形態の極端紫外光光源装置においても、回転電極6,9間に高温プラズマが形成されたとき、突起7,10間では電流密度が高くなり、高温プラズマから放射されるEUV光の発光強度および輝度を高くすることができる。電気力線が突起7,10の先端に集中しているので、両突起7,10間にプラズマ原料が供給されて気化すれば、対向する突起7,10の先端間でのみ放電が生じ、その位置からEUV光が放射されることになり、放電路の空間的位置が固定され、EUV光の発光位置を安定させることができる。
【0023】
次に、本発明の第3の実施形態を図5および図6を用いて説明する。
図5(a)は、本実施形態に係る極端紫外光光源装置の概略構成を示す平面図、図5(b)は図5(a)に示した極端紫外光光源装置の要部の構成を示す正面図、図6(a)は円盤状の回転電極を上から見た平面図、図6(b)は図6(a)のA−Aから見た断面図である。
図5(a)、(b)において、24は一方の円盤状の回転電極、25は回転電極24の外周縁に所定の間隔で複数配置された突起、26は回転電極24と同一軸上に平行に所定距離離間して配置された他方の円盤状の回転電極、27は突起25と対向するように回転電極26の外周縁に所定の間隔で複数配置された突起である。なお、その他の構成は図1に示した同符号の構成に対応するので説明を省略する。
【0024】
本実施形態の極端紫外光光源装置においては、図6(a)、(b)に示すように、対向する突起25,27の先端同士が予め設定された所定の間隔(ギャップ)で向き合うように設計されている。また、第1の実施形態で述べたと同様の理由により、回転電極24,26に形成した突起25,27の間隔(ピッチ)を突起25,27の先端間の間隔(ギャップ)よりも広く構成する。両突起25,27の間が放電領域18であり、この放電領域18近傍に向けて、上方に配置されたドロップレット供給装置19から、Sn等の液体状の高温プラズマ原料が滴下される。滴下された高温プラズマ原料が、放電領域18に接近したとき、レーザー装置3からレーザー光4が高温プラズマ原料に照射され気化される。それと共に、パルス電源17から回転電極24,26間にパルス電力が供給されて放電が開始され、これにより突起25,27間に高温プラズマが形成されてEUV光が出射する。
【0025】
本実施形態の極端紫外光光源装置においても、回転電極24,26間に高温プラズマが形成されたとき、突起25,27間では電流密度が高くなり、高温プラズマから放射されるEUV光の発光強度および輝度を高くすることができる。電気力線が突起25,27の先端に集中しているので、突起25,27間に気化したプラズマ原料が供給されれば、対向する突起25,27の先端間でのみ放電が生じ、その位置からEUV光が放射されることになり、放電路の空間的位置が固定され、EUV光の発光位置を安定させることができる。
【0026】
次に、本発明の第4の実施形態を図7を用いて説明する。
図7(a)は、本実施形態に係る極端紫外光光源装置の概略構成を示す平面図、図7(b)は図7(a)に示した極端紫外光光源装置の要部の構成を示す正面図である。
これらの図において、23は原料供給手段としてのメタルバス、24は一方の円盤状の回転電極、25は回転電極24の外周縁に所定の間隔で複数配置された突起、26は回転電極24と同一軸上に平行に所定距離離間して配置された他方の円盤状の回転電極、27は突起25と対向するように回転電極26の外周縁に所定の間隔で複数配置された突起である。なお、その他の構成は図1に示した同符号の構成に対応するので説明を省略する。
【0027】
これらの図に示すように、本実施形態に係る極端紫外光光源装置は、メタルバス23には液体状の高温プラズマ原料が溜められており、回転電極24,26の一方または両方の一部がメタルバス23の中に浸かり、回転電極24,26が回転する。メタルバス23を通過した回転電極26の突起27の表面には、高温プラズマ原料が付着する。
【0028】
本実施形態の極端紫外光光源装置においては、回転電極24,26は同期して同じ速度で回転し、突起25,27は放電領域18において、突起25,27の先端同士が予め設定された所定の間隔で向き合うように設計されている。回転電極24,26の突起25,27の間が放電領域18であり、高温プラズマ原料が付着した突起27の先端に、レーザー装置3からレーザー光4が照射され、高温プラズマ原料が気化される。それと共に、パルス電源17から回転電極23,25間にパルス電力が供給されて放電が開始され、これにより突起25,27間に高温プラズマが形成されてEUV光が出射する。
【0029】
本実施形態の極端紫外光光源装置においても、回転電極24,26間に高温プラズマが形成されたとき、突起25,27間では電流密度が高くなり、高温プラズマから放射されるEUV光の発光強度および輝度を高くすることができる。電気力線が突起25,27の先端に集中しているので、両突起25,27間にプラズマ原料が供給されて気化すれば、対向する突起25,27の先端付近でのみ放電が生じ、その位置からEUV光が放射されることになり、放電路の空間的位置が固定され、EUV光の発光位置が安定させることができる。
【0030】
上記の各実施形態に係る極端紫外光光源装置においては、一方の円盤状の回転電極の外周縁に所定の間隔で複数突起を配置すると共に、上記一方の円盤状の回転電極と所定距離離間して配置された他方の円盤状の回転電極の外周縁にも所定の間隔で複数突起を配置したが、他方の円盤状の回転電極の外周縁に突起を設けないようにすることも可能である。
図8は、一対の回転電極うち一方の回転電極にしか突起を設けない場合の電気力線を示す図である。同図に示すように、両方の回転電極に突起を形成した場合に比べて、電気力線の集中の度合いは弱くなるが、突起を設けない場合に比べれば、電流密度は高くなるので、高温プラズマから放射されるEUV光の発光強度および輝度が高くすることができる。
【0031】
図9は、第1の実施形態に係る極端紫外光光源装置における制御システムを示す図、図10は、図9に示した制御システムのタイムチャートを示す図である。
高周波発振器および高周波アンプからの300kHz程度の高周波信号(正弦波、周波数f)でピエゾ素子を振動させ、高周波信号と同期した矩形信号(周波数f)を発生させる。次に、高周波信号fと同期して高温プラズマ原料であるSnのドロップレットが生成される。ここで、ドロップレット形成の安定条件は3<λ/d<8 (ドロップレット間隔λ、ノズル開口直径d)、安定形成時のドロップレット直径D〜2d、ドロップレット間隔λ〜4d、ドロップレット速度v=f×λ、ドロップレットが放電部に到達するまでの時間τ=L/vである。次に、分周器a(分周比1/A)を用いて、10kHz程度の同期信号(f/A)を作る。次に、遅延装置aを介して、レーザー装置3にトリガー信号(flaser=f/A)を入力し、遅れ時間Δtlaser後に、レーザーパルスが発生する。ここで、放電部に到達したドロップレットにレーザーパルスが集光照射できるように、遅延装置aの遅れ時間を設定する。次に、レーザー光がドロップレットに集光照射されると、Snの蒸発により放電部にターゲットガス(Sn蒸気)が供給される。次に、遅延装置bを介して、高電圧充電電源にトリガー信号(周波数fDischarge=f/A)を入力し、遅延時間ΔtDischarge後に、回転電極6,9電極間に高電圧パルスを印加する。ここで、ターゲットガス条件(密度、サイズ)が膨張過程によって時間変化する。極端紫外光(EUV、13.5nm)の発光に最適なプラズマ条件(イオン密度、電子温度)が得られるターゲットガス条件に達した時に、高電圧パルスが印加されて放電するように、遅延装置bの遅れ時間を設定する。
【0032】
一方、回転電極6,9は、ステッピングモーター(α[rad/pulse])とギアボックス(ギア比m)によって駆動される。ここで、回転速度は、ω=mω=mαf/2π=mαflaserA/2π、突起7,10の数Nとレーザー照射周波数flaserとの関係は、flaser=Nω、突起7,10のピッチaは、a=2πR/N=2πRω/flaser=RαAmの関係を満たし、電極間ギャップδは、放電位置の安定性を向上させるために、δ<aの関係を満たし、Snドロップレット、レーザーパルス、高電圧パルス、回転電極突起が同期するように回転の位相差を調節する。次に、分周器b(分周比1/B)を用いて、同期信号(f/A)から低繰り返し同期信号(f/(A×B))を作り、遅延装置cを介して同期CCDカメラとバックライトを駆動し、同期した画像を撮影する。ここで、CCDカメラがNTSC規格の場合、f/(A×B)=59.94Hzを満たすように分周比を設定し、CCDカメラの露光時間またはバックライトの発光時間を数μs程度以下にすることで、高速運動物体の止まった(瞬間的な)画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1の実施形態に係る極端紫外光光源装置の概略構成を示す平面図および極端紫外光光源装置の要部の構成を示す正面図である。
【図2】図1に示した極端紫外光光源装置の要部を詳細に説明するために回転電極を上(原料供給側)から見た平面図、および図1に示した極端紫外光光源装置の要部を詳細に説明するために回転電極を正面(光出射側)から見たす正面図である。
【図3】図2に示した要部構成において突起7を備える回転電極6と突起10を備える回転電極9が対向する放電領域18の拡大図、および従来技術に係る突起を備えない回転電極と回転電極が対向する放電領域の拡大図である。
【図4】第2の実施形態に係る極端紫外光光源装置の概略構成を示す平面図、および極端紫外光光源装置の要部の構成を示す正面図である。
【図5】第3の実施形態に係る極端紫外光光源装置の概略構成を示す平面図、および極端紫外光光源装置の要部の構成を示す正面図である。
【図6】円盤状の回転電極を上から見た平面図および断面図である。
【図7】第4の実施形態に係る極端紫外光光源装置の概略構成を示す平面図、および極端紫外光光源装置の要部の構成を示す正面図である。
【図8】一対の回転電極うち片方の回転電極にしか突起を設けない場合の電気力線を示す図である。
【図9】第1の実施形態に係る極端紫外光光源装置における制御システムを示す図である。
【図10】図9に示した制御システムのタイムチャートを示す図である。
【図11】特許文献1の図1に示されたEUV光源装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 真空容器
2 真空容器
3 レーザー装置
4 レーザー光
5 レーザー入射窓
6 回転電極
7 突起
8 回転軸
9 回転電極
10 突起
11 回転軸
12 ドロップレットターゲット
13 ホイルトラップ
14 EUV集光ミラー
15 EUV光出射窓
16 ガス排気ユニット
17 パルス電源
18 放電領域
19 ドロップレット供給装置
20 ターゲット回収筒
21,22 モータ
23 メタルバス
24 回転電極
25 突起
26 回転電極
27 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、該容器内に極端紫外光を放射させるための液体または固体の原料を供給する原料供給手段と、エネルギービームを上記原料に照射して該原料を気化するエネルギービーム照射手段と、上記気化した原料を放電により上記容器内で加熱励起して高温プラズマを発生させるための所定距離だけ離間して配置された一対の放電電極と、該放電電極間にパルス電力を供給するパルス電力供給手段と、上記放電電極間における放電により生成された上記高温プラズマから放射される極端紫外光を集光する集光光学手段と、上記集光された極端紫外光を取り出す極端紫外光取出部とを有する極端紫外光光源装置において、
上記一対の放電電極は回転機構が接続されて回転する円盤状の放電電極であり、少なくとも一方の円盤状の放電電極の周縁部の他方の放電電極と対向する位置に、複数の突起が形成されていることを特徴とする極端紫外光光源装置。
【請求項2】
上記一対の円盤状のそれぞれの放電電極は、略同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項3】
上記一対の円盤状のそれぞれの放電電極は、同一軸上に平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項4】
上記原料供給手段は、上記放電電極の近傍に上記原料を滴下することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つの請求項に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項5】
上記原料供給手段は、上記放電電極の表面に上記原料が塗布することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つの請求項に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項6】
上記エネルギービーム照射手段は、上記突起の先端にエネルギービームが照射することを特徴とする請求項5に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項7】
上記放電電極の周縁部に形成される突起の間隔は、該突起と対向する突起が形成されていない放電電極間が最も近接された間隔、または該突起と対向する放電電極に形成された突起間が最も近接された間隔よりも広いことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1つの請求項に記載の極端紫外光光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−104924(P2009−104924A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276336(P2007−276336)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】