説明

極端紫外光源装置

【課題】本発明の極端紫外光源装置は、溶融状態のターゲット物質に接触する面が、ターゲット物質によって侵食され、ターゲット物質と反応したり、削られたりするのを抑制する。
【解決手段】ターゲット発生部120は、ドロップレット状の溶融した錫をターゲット201として、チャンバ101内に噴射する。ノズル部121及びタンク部122の各面のうち、溶融状態の錫に接触する箇所には、錫に対する耐侵食性を有する保護膜が形成される。あるいは、溶融状態の錫に接触する部分は、耐侵食性及び耐熱性等を備える材料から形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レジストを塗布したウェハ上に、回路パターンの描かれたマスクを縮小投影し、エッチングや薄膜形成等の処理を繰り返すことにより、半導体チップが生成される。半導体プロセスの微細化に伴い、より短い波長の光が求められている。
【0003】
そこで、13.5nmという極端に波長の短い光と縮小光学系とを使用する、半導体露光技術が研究されている。この技術は、EUVL(Extreme Ultra Violet Lithography:極端紫外線露光)と呼ばれる。以下、極端紫外光をEUV光と呼ぶ。
【0004】
EUV光源としては、例えば、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)式の光源と、DPP(Discharge Produced Plasma)式の光源と、SR(Synchrotron Radiation)式の光源との三種類が知られている。
【0005】
LPP式光源とは、ターゲット物質にレーザ光を照射してプラズマを生成し、このプラズマから放射されるEUV光を利用する光源である。DPP式光源とは、放電によって生成されるプラズマを利用する光源である。SR式光源とは、軌道放射光を使用する光源である。
【0006】
以上三種類の光源のうち、LPP式光源は、他の方式に比べてプラズマ密度を高くすることができ、かつ、捕集立体角を大きくできるため、高出力のEUV光を得られる可能性が高い(特許文献1)。
【0007】
LPP式のEUV光源装置では、ターゲット物質として主に錫(Sn)等の金属が用いられる。LPP式EUV光源装置は、ターゲット供給装置を備えており、ターゲット供給装置は、錫を加熱して溶融させ、小径のノズルからドロップレットとして噴出させる。
【0008】
なお、極端紫外光源装置の技術分野とは関係はないが、いわゆる鉛フリーはんだを用いるはんだ槽の分野では、ステンレス鋼の表面に酸化膜等を形成することが知られている(特許文献2,特許文献3)。
【0009】
また、ターゲット物質を回収して再利用する技術も知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−80255号公報
【特許文献2】特開2004−188449号公報
【特許文献3】特開2004−52075号公報
【特許文献4】特開2008−226462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ターゲット供給装置は、耐圧性及び熱伝導性に優れたステンレス鋼で形成される。しかし、錫は反応性が高いため、ターゲット供給装置を使用し続けると、錫に接触する内壁が錫によって侵食される。そのため、ステンレス鋼の構成物質(たとえばFe、Cr、Ni等)、ステンレス鋼やターゲット物質等の不純物(例えば、硫黄(S)、酸素(O)等)と錫とが反応して固体となる。そして、この反応した固体の微粒子等(パーティクル)がノズルを詰まらせる原因となっていた。
【0012】
ノズルが詰まると、安定した形状のドロップレットを正確な位置に向けて、正確なスピードで噴出させることができなくなる。その結果、ターゲット(ドロップレット)にドライバレーザ光を照射できなくなったり、ドロップレットの中心にレーザ光の集光点を一致させることが難しくなっていた。その結果、以下の2つの問題点が発生していた。
第1に、より多くのデブリ(debris)が発生することによって、EUV集光ミラーに損傷を与え、ミラー寿命を短くしていた。第2に、EUV光の変換効率の低下及び変動をもたらし、発生するEUV光のエネルギの低下とエネルギの安定性が悪化を発生させていた。
【0013】
さらに、前記第3の特許文献(JP−A−2004−52075)では、酸化層側の表面粗度(Ra)を2〜50μmに設定するようになっている。はんだ槽の場合は、パーティクルの大きさを意識する必要性が少ない。しかし、極端紫外光源装置では、極めて小径のノズルからターゲットを射出するため、パーティクルの大きさが問題となる。
【0014】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的は、ターゲット物質の供給(発生)を安定化させることにより、高出力で安定した極端紫外光を発生させることのできる極端紫外光源装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、ターゲット供給に関連する装置の内表面において、ターゲット物質が接触する領域にコーティングしたり、または、ターゲット物質に接触する表面を含む基材部を基材用所定材料で形成したり、または、それらの組合せで構成することにより、ターゲット物質が接触する表面と反応してノズルを詰まらせるパーティクルをすることを防止し、ターゲットの発生を安定化させ、高出力で安定なEUV光を発生させることができる極端紫外光源装置を提供することにある。本発明の更なる目的は、後述する実施形態の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第1観点に従う、ターゲットにレーザ光を照射して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置は、チャンバと、ターゲット物質からターゲットを生成し、生成されたターゲットをチャンバ内に供給するターゲット発生部と、チャンバ内のターゲットにレーザ光を照射することにより、極端紫外光を発生させるレーザ光源と、を備え、ターゲット発生部は、ターゲット物質に接触する所定の領域が、ターゲット物質について耐侵食性と耐腐食性を有する。
【0016】
ここで、侵食(erosion)とは物理的に削られることを意味する。例えば、ターゲット物質の接触領域において、ターゲット物質が流れることによって、物理的にターゲット物質との接触領域の表面が削られる。その結果、表面から削られたパーティクルが発生し、ターゲットを出力するノズルにこのパーティクルが詰まる不具合をもたらす。耐侵食性とは、ターゲット物質との物理的に表面が削れが少ないことを意味している。
一方、腐食(corrosion)とは、化学反応して削られることを意味する。例えば、ターゲット物質に接触する表面とターゲット物質とが反応して、合金や化合物を形成する。それらの合金や化合物は、ターゲット物質内に混入する。その結果、表面と化学反応した物質(合金や化合物)がターゲット物質中にパーティクルとして混入し、ノズルを詰まらせるという不具合をもたらす。耐腐食性とは、ターゲット物質と化学的な表面との反応性が少ないことを意味している。
【0017】
また、耐侵食性を実現するためには、ターゲット物質と接触する領域の表面が硬く、さらに、所定の表面粗さまで、表面粗さが小さいことが必要である。たとえば、所定の表面粗さは、所定の領域で発生するパーティクルの直径が1ミクロンメートル以下になるように、設定されるのが好ましい。直径1ミクロンメートル以下のパーティクルであれば、ターゲット発生部のノズル(例えば、ノズル径6ミクロンメートル)を詰まらせることがないためである。所定の領域を、例えば、化学研磨、電解研磨、バレル研磨、磁気研磨、物理研磨のいずれか一つまたは複数の組合せによって研磨することにより、所定の表面粗さを得る。
【0018】
所定の領域の製造時に、所定の表面粗さとなるように所定の領域が研磨される。さらに、ターゲット発生部を使用することによって所定の領域が損耗した場合、所定の領域を再び研磨して、所定の表面粗さに設定する。さらに、ターゲット発生部の使用時間等に基づいて定期的に、所定の領域が所定の表面粗さとなるように研磨してもよい。
【0019】
例えば、ターゲット物質は錫を主成分として構成されており、所定の領域とは、溶融状態の錫に接触する可能性のある領域である。
【0020】
所定の領域は、耐侵食性に関する構成の異なる複数の領域を備えてもよい。
所定の領域は、ターゲット物質に接触する表面部が表面用所定材料から形成される第1領域と、表面部を含む基材部の全体が基材用所定材料から形成される第2領域とを備えてもよい。
【0021】
所定の領域は、平坦な表面部に形成される領域と、凹凸を有する表面部に形成される領域とを備えてもよい。
【0022】
所定の領域は、表面用所定材料でコーティングされてもよい。
所定の領域を含む基材部が基材用所定材料から形成されてもよい。
【0023】
所定の領域が比較的表面処理のし易い場所である場合、所定の領域を表面用所定材料でコーティングし、所定の領域が比較的表面処理のしにくい場所である場合、所定の領域を含む基材部を基材用所定材料から形成することもできる。
【0024】
表面用所定材料は、金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物、モリブデン、タングステン、セラミックス、チタン、ダイヤモンド、カーボングラファイト、石英の少なくともいずれか一つを含んでもよい。この場合の基材材料は、ステンレス鋼や炭素鋼でも問題はない。
【0025】
基材用所定材料は、モリブデン、チタン、タンタル、ダイヤモンド、炭素鋼、アルミナを主成分とする結晶の少なくともいずれか一つを含んでもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ターゲット物質に接触する所定の領域に、ターゲット物質に対する耐侵食性と耐腐食性を与えるため、ターゲット発生部がターゲット物質により物理的に侵食されることと化学的に腐食されることの両方を抑制することができる。その結果、ターゲット発生部の性能低下を防止することができる。さらに、耐侵食性を実現するために、所定の領域を所定の表面粗さとなるように設定することによって、ターゲット発生部が詰まるのを防止することができる。
【0027】
本発明によれば、ターゲット物質に接触する表面のみを表面用所定材料でコーティングするか、または/及び、ターゲット物質に接触する表面を含む基材部全体を基材用所定材料で形成することができる。従って、例えば、表面処理の加工の容易性等に基づいて、適切な方法でターゲット物質に接触する所定の領域にターゲット物質に対する耐侵食性と耐腐食性を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施例に係る極端紫外光源装置の構成図。
【図2】ノズル部を拡大して示す断面図。
【図3】ノズル部の一部を拡大して示す断面図。
【図4】第2実施例に係るノズル部の一部を示す断面図。
【図5】第3実施例に係るノズル部の一部を示す断面図。
【図6】第4実施例に係るノズル部の一部を示す断面図。
【図7】第5実施例に係るノズル部の一部を示す断面図。
【図8】第6実施例に係るノズル部を拡大して示す断面図。
【図9】ノズル部の構成を示す断面図。
【図10】第7実施例に係るノズル部を拡大して示す断面図。
【図11】第8実施例に係るノズル部を拡大して示す断面図。
【図12】第9実施例に係るターゲット物質供給装置の端面図
【図13】第10実施例に係る極端紫外光源装置の構成図。
【図14】ターゲット物質供給装置の断面図。
【図15】第11実施例に係る極端紫外光源装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態では、以下に述べるように、ターゲット物質に接触する所定の領域に、ターゲット物質に対する耐侵食性と耐腐食性とを与えている。例えば、ターゲット発生部やターゲット物質回収装置、ターゲット物質供給装置等において、溶融状態のターゲット物質に接触する領域に、耐侵食性と耐腐食性が付与される。
【実施例1】
【0030】
図1〜図3に基づいて第1実施例を説明する。図1は、EUV光源装置1の全体構成を示す説明図である。EUV光源装置1は、例えば、真空チャンバ100と、ドライバレーザ光源110と、ターゲット発生部120と、磁場発生用コイル140,141と、EUV集光ミラー150と、隔壁用アパーチャ160,161と、ゲートバルブ170と、真空ポンプ190とを備えている。
【0031】
真空チャンバ100は、容積の大きい第1チャンバ101と、容積の小さい第2チャンバ102とを接続することにより構成される。第1チャンバ101は、プラズマの生成等を行うメインチャンバである。第2チャンバ102は、プラズマから放射されるEUV光を図外の露光装置に供給するための接続用チャンバである。
【0032】
第1チャンバ101には真空ポンプ190が接続されており、これにより、チャンバ100内は真空状態に保持される。なお、第2チャンバ102に、別の真空ポンプを設ける構成としてもよい。その場合には、第1チャンバ101内の圧力を第2チャンバ102内の圧力よりも小さくすることにより、デブリが露光装置側に流出するのを抑制できる。
【0033】
ターゲット発生部120は、例えば、錫(Sn)等の材料を加熱溶解することにより、固体または液体のドロップレットとして、ターゲット201を供給する。ターゲット発生部120は、ノズル部121と、タンク部122とを備える。
【0034】
タンク部122には、外部からターゲット物質としての錫が供給される。タンク部122は、ヒーター等の加熱装置124(図2参照)を備えており、錫を加熱して溶融状態にする。タンク部122には、例えば、アルゴンガスタンク301がバルブ302を介して接続されている。
【0035】
アルゴンガスは、ターゲットをノズル部121から噴出させるための噴出用ガスとして使用される。バルブ302が開くと、アルゴンガスがタンク部122内に供給される。タンク部122内の溶融状態の錫は、アルゴンガスの圧力によって、ノズル部121からチャンバ100内に噴出される。後述のように、ノズル121からジェット流として噴出される錫に、連続的に振動を加えることにより、錫のドロップレット201を生成できる。なお、噴出用ガスとしては、アルゴンガスに限らず、EUV光L2の吸収が少ない他の不活性ガスを用いてもよい。
【0036】
タンク部122には、排気ポンプ303がバルブ304を介して接続される。タンク部122に錫を供給する目的で大気開放した場合、バルブ304を開弁させて、排気ポンプ303を作動させる。これにより、タンク部122内の大気を排気して、錫を加熱する際に錫が酸化するのを防止できる。
【0037】
ドライバレーザ光源110は、ターゲット発生部120から供給されるターゲット201を励起させるためのドライバレーザL1を出力する。ドライバレーザ光源110は、例えば、CO2(炭酸ガス)パルスレーザ光源として構成される。
【0038】
ドライバレーザ光源110は、例えば、波長10.6μm、出力20kW、パルス繰り返し周波数100kHz、パルス幅20nsecの仕様を有するドライバレーザ光L1を出射する。なお、レーザ光源としてCO2パルスレーザを例に挙げるが、本発明はこれに限定されない。
【0039】
ドライバレーザ光源110から出力される励起用のドライバレーザ光L1は、集光レンズ111と入射窓112とを介して、第1チャンバ101内に入射する。第1チャンバ101内に入射したドライバレーザ光L1は、EUV集光ミラー150に設けられた入射穴152を通過して、ターゲット201を照射する。
【0040】
ターゲット201にドライバレーザ光L1が照射されると、錫ターゲット201はターゲットプラズマ202に変化する。以下、便宜上、単にプラズマ202と呼ぶ。プラズマ202は、中心波長13.5nmのEUV光L2を放射する。プラズマ202から放射されたEUV光L2は、EUV集光ミラー150に入射して反射される。ミラー150で反射されたEUV光L2は、第2チャンバ102内の中間集光点(IF:Intermediate Focus)に集光する。IFに集光されたEUV光L2は、開状態のゲートバルブ170を介して、露光装置へ導かれる。
【0041】
プラズマ202からEUV集光ミラー150を介してIFに向かうEUV光L2の光路を上下から挟むようにして、一対の磁場発生用コイル140,141が設けられている。各コイル140,141の軸心は一致する。各コイル140,141は、例えば、超伝導コイルを有する電磁石のように構成される。各コイル140,141に同方向の電流を流すと磁場が発生する。この磁場は、図1の上下方向に発生し、コイル140,141の近傍では磁束密度が高く、コイル140とコイル141の中間点では磁束密度が低くなる。
【0042】
ターゲット201にドライバレーザ光L1が照射されると、デブリが発生する。電荷を帯びているデブリ(プラズマ等のイオン)は、各コイル140,141によって発生する磁場に捕捉される。電荷を帯びたデブリは、ローレンツ力によって螺旋運動しながら、図1中の下側に向けて移動し、ターゲット回収装置180によって回収される。
【0043】
各コイル140,141の設置場所は、それらが作る磁力線によりイオン性のデブリがEUV集光ミラー150の表面に到達するのを回避して排出される位置であればよい。従って、図示する配置に限定されない。
【0044】
ターゲット発生部120で生成された多数のターゲット201のうち、ドライバレーザ光L1が照射されなかったターゲットも、ターゲット回収装置180に回収される。図1中、未使用のターゲットには符号203を付している。
【0045】
未使用ターゲット203の発生理由を説明する。デブリが次のターゲット201に影響を与えないように、意図的に、ドライバレーザ光L1の照射されないターゲット(未使用ターゲット203)を挿入する場合がある。
【0046】
別の理由として、ドライバレーザ光L1の繰り返し周波数と、所望の径のターゲット201を安定して生成するための周波数とが一致しない場合がある。この場合、ターゲット201の生成周波数をドライバレーザ光L1の繰り返し周波数の整数倍に設定する。これにより、ターゲット201の生成とドライバレーザ光L1の照射とを同期させる。この実施例においては、ターゲット(ドロップレット)201の生成周期を、ドライバレーザL1の繰り返し周期の2倍に同期させている場合を記載している。
【0047】
例えば、100kHzのドライバレーザ光L1をφ数十μmのターゲット201に照射させる構成の場合、ターゲット生成周波数は200kHzとなり、ターゲット発生部120から噴出された多数のターゲット201のうち、90%以上のターゲット201にドライバレーザ光L1は照射されず、未使用ターゲット203となる。
【0048】
そこで、本実施例では、第1チャンバ101の底部にターゲット回収装置180を設けて、未使用のターゲット203を回収する。回収されたターゲット203は、その後、ターゲット発生部120に供給されて再利用される。
【0049】
IFの前後には、2つの隔壁用アパーチャ160,161と、IF用アパチャ162とが配置されている。IF用アパチャ162は、IFの位置に設けられており、IF像よりも多少大きく形成されている。EUV集光ミラー150で反射されたEUV光L2の進行方向を基準とすると、IFの前側には第1隔壁用アパーチャ160が設けられており、IFの後側には第2隔壁用アパーチャ161が設けられている。各隔壁用アパーチャ160,161の間には、IF用アパチャ162が設けられている。各隔壁用アパーチャ160,161は、例えば、それぞれ数mm〜10mm程度の開口部を有する。さらに、IF用アパチャ162の直径は、数mm程度である。
【0050】
第1隔壁用アパーチャ160は、第1チャンバ101と第2チャンバ102とを接続する位置近傍に設けられており、第2隔壁用アパーチャ161は、第2チャンバ102と露光装置とを接続する位置近傍に設けられている。
【0051】
換言すれば、IFは、第1チャンバ101とは別の第2チャンバ102内に位置するように設定されており、IFの前後を仕切るようにして各隔壁用アパーチャ160,161が配置されている。
【0052】
なお、IFの前後いずれか一方または両方に、SPF(Spectrum Purity Filter)を設けて、13.5nm以外の波長の光を遮断する構成としてもよい。
【0053】
図2は、ターゲット発生部120を拡大して示す断面図である。高圧タンクとして構成されるタンク部122の上部には、ガス流入口123が設けられている。ガス流入口123は、バルブ302を介してアルゴンガスタンク301に接続される。アルゴンガスは、ガス流入口123からタンク部122内に流入し、ターゲット物質200である溶融状態の錫を加圧する。これにより、溶融状態の錫は、ノズル部121から外部に押し出される。
【0054】
タンク部122及びノズル部121の周囲には加熱装置124が設けられている。加熱装置124は、ヒーター等の発熱源と、温度センサからの検出信号に応じて発熱源の発熱量を調整するための温度コントローラとを備えている。加熱装置124は、ターゲット発生部120内の錫を、例えば、230℃−400℃の範囲内の温度となるように加熱し、錫を溶融状態にする。
【0055】
ノズル部121の噴射口の周囲には、振動発生部125が設けられている。振動発生部125は、例えば、ピエゾ素子のような振動発生素子を備えて構成される。振動発生部125を作動させることにより、ノズル部121が振動する。ノズル部121を振動させながら図示しない液状の錫ジェットを噴射させると、ドロップレット状のターゲット201が生成される。
【0056】
図3は、図2中の一部(例えば、図2中のIIIで示す領域)を拡大して示す断面図である。ターゲット発生部120は、基材部400と、基材部400の内面側に設けられる複数の層401,402とから構成されている。
【0057】
基材部400は、例えば、ステンレス鋼、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)から形成される。ターゲット発生部120が強磁場中に無い場合には、基材部400の材質として炭素鋼を用いても良い。基材部(substrate part)400は、母材部と呼ぶこともできる。また、例えば、基材部400の全体をモリブデンから形成することもできる。
【0058】
基材部400の内面は、錫に接触する面である。その内面には、第1保護層401が設けられる。第2保護層402は、第1保護層401の表面を覆って設けられる。例えば、第1保護層401は、窒化クロム層のような金属窒化層であり、硬い性質を有する。第2保護層402は、金属酸化層であり、錫による腐食を抑制する機能がある。第2保護層402は、第1保護層401の表面を酸化させることにより形成することができる。
【0059】
第1保護層401は、例えば、十数〜百数十μmの厚さt1となるように形成することができる。第2保護層402の厚みt2は、第1保護層401の厚みt1よりも薄く設定される。なお、図中では便宜上、第1保護層401と第2保護層402との厚さを略同じであるかのように示している。
【0060】
第1保護層401の材質としては、例えば、金属窒化物、モリブデン、タングステン(W)、炭化物、アルミナセラミックス(Al2O3)、ダイヤモンド、チタン、カーボングラファイト、石英を用いることができる。これら各材質のうち酸化しやすい材質の場合には、第2保護層402が自然に形成される。酸化しにくい材質の場合は、機械的な強度と、錫に対する耐侵食性との両方を備えている。
【0061】
第1保護層401(または第2保護層402)は、第1保護層401で発生しうるパーティクルの直径が1ミクロンメートル以下になるような、所定の表面粗さに設定されている。第1保護層401の表面を、例えば、化学研磨、電解研磨、バレル研磨、磁気研磨、物理研磨のいずれか一つまたは複数の組合せによって研磨することにより、所定の表面粗さを実現する。第1保護層401が所定の表面粗さとなるように研磨されていれば、酸化膜である第2保護層402の表面粗さも所定の表面粗さとなる。
【0062】
ここで、上記各研磨方法について簡単に説明する。化学研磨法とは、酸またはアルカリ溶液中で、表面を化学的に研磨する方法である。電解研磨法とは、研磨対象物をプラス側に、研磨対象物に対向する電極をマイナス側とし、両電極間に電解液を流して通電することにより、研磨対象物表面のバリを除去する方法である。バレル研磨法とは、バレル槽と呼ばれる研磨槽内に、研磨対象物と研磨石とコンパウンド溶液とを所定の割合で混合して充填し、研磨槽内の相対運動差を用いて研磨する方法である。磁気研磨法とは、研磨槽内に磁性メディアと研磨対象物を投入し、磁性メディアを磁場によって運動させて、研磨対象物を研磨する方法である。
【0063】
このように構成される本実施例では、ターゲット発生部120の内壁に、金属酸化層402を形成するため、長時間ターゲットを噴出させた場合でも、溶融状態の錫によって内壁が侵食及び腐食されるのを抑制して、不純物によりノズル部121が詰まるのを防止できる。従って、安定した形状のターゲット201を正確な方向及び安定した速度で噴出させることができ、所望のEUV発光点の位置とタイミングとで、ドロプレットを供給できる。このため、本実施例では、極端紫外光源装置の性能低下を防止し、信頼性を高めることができる。
【0064】
さらに、本実施例では、第1保護層401(または第2保護層402)は、第1保護層401で発生しうるパーティクルの直径が1ミクロンメートル以下になるような、所定の表面粗さに設定されるため、パーティクルの大きさを制御できる。従って、もしもパーティクルが発生した場合でも、そのパーティクルによってノズル部121が詰まるのを未然に防止することができ、ドロップレット供給の安定性及び極端紫外光源装置の信頼性を高めることができる。以下に述べる各実施例でも、ターゲット物質に接触する表面の粗度を、所定の値に制御するのが好ましい。
【0065】
具体的には、ターゲット物質が接触する領域の表面粗さ(表面粗度)を、ターゲット物質を出射するノズル直径の1/10以下の値に設定する。これにより、ノズルが詰まるのを防止し、ノズルから出力されるターゲット物質の安定性が向上する。例えば、ノズル形が10μmの場合、表面粗さはRa=1μm以下に設定される。さらに、表面粗さをノズル直径に対して1/100以下(たとえば、Ra=0.10μm)に設定すれば、より高精度なターゲット安定性を得ることができる。
【実施例2】
【0066】
以下、図4に基づいて第2実施例を説明する。以下に述べる各実施例は、第1実施例の変形例に相当する。従って、第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0067】
本実施例では、基材部400の内面に保護層403を一つだけ形成している。保護層403は、例えば、ダイヤモンド、モリブデン、チタン、タングステン、金属窒化物、炭化物、アルミナセラミックス、カーボングラファイト、石英のような、錫に対する耐侵食性を備えた材質から形成される。このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。
【実施例3】
【0068】
図5に基づいて第3実施例を説明する。本実施例では、基材部400の内面をショットブラスト処理等により粗面化した後で、第1保護層401A及び第2保護層402Aを形成する。
【0069】
各保護層401A,402Aは、粗面化した内面上に形成されるため、凹凸を有する粗面となる。これにより、第2保護層402Aの表面に錫が付着するのを抑制できる。このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。
【実施例4】
【0070】
図6に基づいて第4実施例を説明する。本実施例では、基材部400の内面を粗面化し、第1保護層401Aと第2保護層402Aとのセットが2つ形成される。即ち、基材部400の粗面化された内面には、第1保護層401A(1)と第2保護層402A(1)とが形成され、さらにその上に、別の第1保護層401A(2)及び第2保護層402A(2)が形成される。
【0071】
このように構成される本実施例では、第1保護層401A及び第2保護層402Aのセットを複数設けるため、より長い期間にわたって、錫による侵食を抑制することができ、信頼性をさらに高めることができる。なお、保護層401,420のセットを3つ以上設ける構成としてもよい。
【実施例5】
【0072】
図7に基づいて第5実施例を説明する。本実施例では、タンク部122とノズル部121とで、耐侵食性に関する構造を違えている。タンク部122では、図5で説明したように、基材部400の内面を粗面化して、第1保護層401A及び第2保護層402Aを形成する。これに対し、ノズル部121では、図3で説明したように、平坦な基材部400の内面に第1保護層401及び第2保護層402を形成する。
【0073】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、タンク部122の内壁を保護する保護層401A,402Aを粗面化し、ノズル部121の内壁を保護する保護層401,402を平坦に形成する。従って、タンク部122では、錫と反応して固体化した粒子がノズル部に到達するのを抑制することができる。その結果、ノズル部121では、ターゲット201の噴射方向及び速度を安定化することができる。
【実施例6】
【0074】
図8,図9に基づいて第6実施例を説明する。本実施例では、タンク部122とノズル部121Aとを別部材として形成している。図8は、ターゲット発生部120の断面図である。ノズル部121Aは、タンク部122とは別の部材として形成されており、タンク部122の下面に溶接等の固定手段により固定されている。また、ノズル部121Aとタンク部122の接触表面を表面粗が小さくなるように加工して、外部から押し当てて両部品を接触固定させてもよい。
【0075】
図9は、ノズル部121Aとタンク部122の構成を示す断面図である。タンク部122は、図5で述べたように、基材部400の内面を粗面化し、その上に第1保護層401A及び第2保護層402Aを形成している。
【0076】
これに対し、ノズル部121Aの基材部404は、例えば、モリブデン、チタン、タングステン、ダイヤモンド、金属窒化物、炭化物、アルミナセラミックス、カーボングラファイト、石英、アルミナを主成分とする結晶のような、錫に対する耐侵食性と、耐腐食性と、耐圧性と、耐熱性とを兼ね備える材料から形成される。ここで、アルミナを主成分とする結晶の例としては、ルビー、サファイヤ等の結晶がある。
【0077】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、ノズル部121Aをタンク部122と別部材として形成し、ノズル部121Aとタンク部122とに別々の方法で錫に対する耐侵食性と耐腐食性を与える構成とした。従って、表面処理の比較的難しい微細なノズル部121Aにも、錫に対する耐侵食性を十分に備えさせることができる。
【実施例7】
【0078】
図10に基づいて第7実施例を説明する。本実施例では、タンク部122の先端側にノズルホルダー122Aを形成し、そのノズルホルダー122A内にノズル部121Bを取り付けている。
【0079】
タンク部122の内面には第1保護層401及び第2保護層402が形成される。ノズル部121Bは、その全体が、錫に対する耐侵食性、耐腐食性と、耐圧性と、耐熱性とを兼ね備える材料から形成される。
【0080】
このように構成される本実施例も第1,第6実施例と同様の効果を奏する。さらに本実施例では、タンク部122の下側にノズルホルダー122Aを形成し、ノズルホルダー122Aにノズル部121Bを取り付ける。従って、第6実施例に比べて、ノズル部121Bをより小さく形成することができる。これにより、例えば、モリブデン、チタン、タングステン、ダイヤモンド、金属窒化物、炭化物、アルミナセラミックス、カーボングラファイト、石英、アルミナを主成分とする結晶のような高価な材料の使用量を少なくして、製造コストを低減できる。
【実施例8】
【0081】
図11に基づいて第8実施例を説明する。本実施例では、タンク部122の下側に設けられたノズルホルダー122B内に、漏斗状のノズル部121Cを取り付ける。このように構成される本実施例も第1,第6,第7実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、タンク部122内面の表面処理が比較的難しい領域、つまり、逆向き円錐状の部分を、漏斗状のノズル部121Cで保護することができる。
【実施例9】
【0082】
図12に基づいて第9実施例を説明する。本実施例では、ターゲット発生部120が同一の基材(substrate)で構成されている。即ち、タンク部122とノズル部121は同一の基材で構成されている。振動発生部125は、ノズル部121の外側に設置されている。そして、同一基材から形成されるノズル部121及びタンク部122の周囲を覆うようにして、加熱装置124が設置されている。
【0083】
基材は、例えば、モリブデン、チタン、タングステン、ダイヤモンド、金属窒化物、炭化物、アルミナセラミックス、カーボングラファイト、石英、アルミナを主成分とする結晶のような、錫に対する耐侵食性と、耐腐食性と、耐圧性と、耐熱性とを兼ね備える材料から形成される。ここで、アルミナを主成分とする結晶の例としては、ルビー、サファイヤ等の結晶がある。
【0084】
ターゲット発生部120内の錫は、加熱装置124により230℃以上に加熱されて溶融金属となっている。Arガスがガス流入口123から導入され、溶融錫の液面を押すことによって、ノズル部121から溶融金属が出力される。ここで、振動発生部125によってノズル部121に振動を与えることにより、小径ドロップレット201が形成される。
【0085】
上述の通り、パーティクルの発生を抑制するために、溶融錫と接触する基材の内面は研磨されている。溶融錫が接触する表面の表面粗さは、ノズル直径の1/10または1/100以下に設定される。これにより、ノズル部121の詰まりを防止でき、出力されるターゲット物質の安定性を向上させることができる。
【実施例10】
【0086】
図13,図14に基づいて第10実施例を説明する。本実施例の極端紫外光源装置1Aでは、図13の全体構成図に示すように、ターゲット発生部120にターゲット物質としての錫を自動的に供給するためのターゲット物質供給装置130を設けている。ターゲット物質供給装置130は、本体1301と、本体1301とターゲット発生部120のタンク部122とを接続するための供給管路1302とを備える。
【0087】
図14は、ターゲット物質供給装置130の断面図である。本体1301の基材部400の内面には、第1保護層401及び第2保護層402が形成されている。本体1301内には、溶融状態または固体の錫が収容される。
【0088】
本体1301の下側には、供給管路1302が取り付けられている。供給管路1302の基材部404は、例えば、モリブデン、チタン、タングステン、ダイヤモンド、金属窒化物、炭化物、アルミナセラミックス、カーボングラファイト、石英、アルミナを主成分とする結晶のような、錫に対する耐侵食性と耐腐食性と、耐圧性と、耐熱性とを兼ね備える材料から形成されている。
【0089】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、ターゲット発生部120にターゲット物質を供給するためのターゲット物質供給装置130を設け、そのターゲット物質供給装置130内の錫に触れる面に耐侵食性と耐腐食性を与える構成とした。従って、十分な量のターゲット物質を使用できるため、ターゲットを長時間射出させることができ、さらに、ターゲットを長時間射出させた場合でも、ターゲット物質供給装置130やターゲット発生部120が錫で侵食及び腐食されるのを抑制できる。このため、極端紫外光源装置1Aを長時間運転した場合でも信頼性を保持できる。
【実施例11】
【0090】
図15に基づいて第11実施例を説明する。本実施例では、回収された未使用ターゲット203をターゲット発生部120に戻すことにより、ターゲット物質を有効に使用し、極端紫外光源装置1Bの連続運転時間を長くしている。なお、本実施例の理解及びのために、必要に応じて特開2008−226462号公報の記載を引用可能である。
【0091】
ターゲット回収装置180Aの上側(未使用ターゲット203の流入側)には、アルゴンガスタンク501がバルブ503を介して接続されている。ターゲット回収装置180Aの下側(未使用ターゲット203の流出側)には、真空ポンプ502がバルブ504を介して接続されている。ターゲット回収装置180A内を上から下に向けて流れるアルゴンガスにより、溶融状態の未使用ターゲット203をターゲット回収装置180A内で冷却固化させる。これにより、未使用ターゲット203から生じるターゲット物質によって集光ミラー150等が汚染されるのを防止する。
【0092】
ターゲット回収装置180Aの内周面には、複数の開口板181が軸方向に離間して設けられている。各開口板の中央部には未使用ターゲット203が通過するための穴が形成されている。各開口板181の穴の寸法は、下側に向かうに連れて小さくなるように設定されている。これら開口板により、ターゲット回収装置180A内のアルゴンガスがチャンバ101内に漏れる量を少なくできる。
【0093】
各開口板181の穴を通過した未使用ターゲット203は、ターゲット物質を捕集するための捕集部182内に捕集される。捕集された未使用ターゲット203は、ゲートバルブ183を介して、ターゲット再生装置184に供給される。
【0094】
ターゲット再生装置184は、未使用ターゲット203を再生するための装置であり、ターゲット回収装置180Aの下側に接続されている。ターゲット再生装置184には、温度センサ187と加熱装置188とが設けられている。加熱装置188は、ターゲット再生装置184内に供給された未使用ターゲット203を、例えば230℃−400℃程度に加熱することにより、溶融状態のターゲット物質200に戻す。
【0095】
ターゲット再生装置184には、バルブ305を介して、アルゴンガスタンク301が接続されている。さらに、ターゲット再生装置184には、バルブ306を介して、真空ポンプ307が接続されている。
【0096】
ゲートバルブ183を閉じた状態で、アルゴンガスタンク301からのアルゴンガスをターゲット再生装置184内に供給して加圧することにより、溶融状態のターゲット物質200は、配管311等を介してターゲット発生部120に送り込まれる。
【0097】
真空ポンプ307によってターゲット再生装置184内のアルゴンガスを排気し、ターゲット再生装置184内の圧力を低下させてから、ゲートバルブ183を開くと、ターゲット捕集部182に蓄積された未使用ターゲット203が、ターゲット再生装置184内に流入する。
【0098】
ターゲット再生装置184内のターゲット物質200を吸入するための吸入管186は、ターゲット再生装置184の下側から上向きに突出して設けられている。吸入管186の吸入口を覆うようにして、ドーム185が設けられている。溶融状態のターゲット物質200の液面付近に不純物が浮遊するため、不純物が吸入されないように、ドーム185で吸入管186を覆っている。
【0099】
吸入管186は、バルブ310を介して配管311に接続されている。配管311の周囲には、ヒーター等の加熱部312が設けられている。従って、吸入管186から吸い込まれた溶融状態のターゲット物質200(つまり、溶けた錫である)は、溶融状態のままでターゲット発生部120に供給される。
【0100】
さらに、本実施例では、配管311の途中にフィルタ600が設置してある。このフィルタ600の役割は、回収されたターゲット物質中の固体粒子等を除去することである。このフィルタ600は、例えばアルミナ、シリカ及びシリコンカーバイド等の多孔質フィルタとして構成される。あるいは、フィルタ600を、モリブデン、チタン、タンタルまたはカーボン繊維で構成してもよい。または、フィルタ600の基材の材料を、ステンレス鋼の焼結金属またはステンレス鋼の繊維から形成し、その基材の表面に、金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物、モリブデン、タングステンまたはセラミックスをコーティングして、フィルタ600を構成してもよい。
【0101】
さらに、本実施例では、溶融した錫が接触するフィルタハウジングの表面やフィルタハウジングの基材の材料を、上述の実施例のように構成している。なお、フィルタハウジングの外側は加熱器312に覆われて加熱されている。従って、フィルタ600内の錫が固体化することはない。
【0102】
また、この実施例では、フィルタ600をターゲット再生装置184からターゲット発生部120に至る配管311中に設置したが、この例に限定されない。例えば、図13に示す実施例の場合は、ターゲット供給装置130とターゲット発生部120との間にフィルタ600を設置してもよい。また、図2、図8、図10、図11の実施例においては、タンク部122とノズル部121との間にフィルタ600を設置してもよい。
【0103】
本実施例では、例えば、ターゲット発生部120、ターゲット回収装置180A、ターゲット再生装置184、配管311、バルブ310、ターゲット物質供給装置130等のような、溶融状態の錫に接触する面を有する部分に、錫に対する耐侵食性を与える。
【0104】
耐侵食性を与える方法としては、前記各実施例で述べたように、基材部の表面に一つまたは複数の保護層を形成する第1方法と、基材部全体を耐侵食性及び耐圧性及び耐熱性を有する材料から形成する第2方法とがある。
【0105】
第1方法によれば、比較的低コストに、耐侵食性を与えることができる。しかし、第1方法では、狭い部分や細い箇所に保護層を形成するのが難しい場合がある。その場合には、第2方法を用いればよい。
【0106】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、未使用ターゲット203を回収し再生して、再利用するため、ターゲット物質を無駄なく利用できる。
【0107】
なお、本発明は、上述した各実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、上記各実施例を適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0108】
1,1A,1B:EUV光源装置、100:真空チャンバ、101:第1チャンバ、102:第2チャンバ、110:ドライバレーザ光源、111:集光レンズ、112:入射窓、120:ターゲット発生部、121,121A,121B,121C:ノズル部、122,122A,122B:タンク部、123:ガス流入口、124:加熱装置、125:振動発生部、130:ターゲット物質供給装置、140,141:磁場発生用コイル、150:EUV集光ミラー、152:入射穴、160,161:隔壁用アパーチャ、162:IF用アパチャ、170:ゲートバルブ、180,180A:ターゲット回収装置、181:開口板、182:捕集部、184:ターゲット再生装置、185:ドーム、186:吸入管、187:温度センサ、188:加熱装置、190:真空ポンプ、200:ターゲット物質、201:ターゲット、202:ターゲットプラズマ、203:未使用ターゲット、301,501:アルゴンガスタンク、302,304,305,306,310,503,504:バルブ、303:排気ポンプ、307,502:真空ポンプ、311:配管、312:加熱部、400,404:基材部、401,402,401A,402A,403:保護層、600:フィルタ、1301:ターゲット供給装置本体、1302:供給管路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットにレーザ光を照射して極端紫外光を発生させる極端紫外光源装置であって、
チャンバと、
ターゲット物質から前記ターゲットを生成し、生成された前記ターゲットを前記チャンバ内に供給するターゲット発生部と、
前記チャンバ内の前記ターゲットにレーザ光を照射することにより、前記極端紫外光を発生させるレーザ光源と、
を備え、
前記ターゲット発生部は、前記ターゲット物質に接触する所定の領域が、前記ターゲット物質について耐侵食性と耐腐食性を有する
極端紫外光源装置。
【請求項2】
前記所定の領域は、前記耐侵食性と前記耐腐食性に関する構成の異なる複数の領域を備えている、請求項1に記載の極端紫外光源装置。
【請求項3】
前記所定の領域は、前記ターゲット物質に接触する表面部が表面用所定材料から形成される第1領域と、前記表面部を含む基材部の全体が基材用所定材料から形成される第2領域とを備えている、請求項1に記載の極端紫外光源装置。
【請求項4】
前記所定の領域は、平坦な表面部に形成される領域と、凹凸を有する表面部に形成される領域とを備えている、請求項1に記載の極端紫外光源装置。
【請求項5】
前記所定の領域は、表面用所定材料でコーティングされている、請求項1に記載の極端紫外光源装置。
【請求項6】
前記所定の領域を含む基材部が基材用所定材料から形成されている、請求項1に記載の極端紫外光源装置。
【請求項7】
前記所定の領域が比較的表面処理のし易い場所である場合、前記所定の領域を表面用所定材料でコーティングし、
前記所定の領域が比較的表面処理のしにくい場所である場合、前記所定の領域を含む基材部を基材用所定材料から形成する、請求項1に記載の極端紫外光源装置。
【請求項8】
前記表面用所定材料は、金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物、モリブデン、タングステン、セラミックス、チタン、ダイヤモンド、カーボングラファイト、石英の少なくともいずれか一つを含んでいる、請求項3,5,7のいずれかに記載の極端紫外光源装置。
【請求項9】
前記基材用所定材料は、モリブデン、チタン、タンタル、ダイヤモンド、炭素鋼、アルミナを主成分とする結晶の少なくともいずれか一つを含んでいる、請求項3,6,7のいずれかに記載の極端紫外光源装置。
【請求項10】
前記ターゲット物質は錫を主成分として構成されており、
前記所定の領域とは、溶融状態の錫に接触する可能性のある領域である、
請求項1〜請求項9のいずれかに記載の極端紫外光源装置。
【請求項11】
前記ターゲット発生部から前記チャンバ内に供給された前記ターゲットのうち、前記レーザ光が照射されなかった未使用のターゲットを回収するためのターゲット回収装置を設け、
前記ターゲット回収装置の各面のうち溶融状態の前記ターゲット物質に接触する領域に、前記耐侵食性を与える、請求項1に記載の極端紫外光源装置。
【請求項12】
前記ターゲット発生部に前記ターゲット物質を供給するためのターゲット供給装置を設け、
前記ターゲット供給装置の各面のうち溶融状態の前記ターゲット物質に接触する領域に、前記耐侵食性と前記耐腐食性を与える、請求項1に記載の極端紫外光源装置。
【請求項13】
前記耐侵食性と前記耐腐食性を有するために、前記所定の領域の面粗さは、前記所定の領域で発生するパーティクルの直径が1ミクロンメートル以下になるように、設定されている、請求項1に記載の極端紫外光源装置。
【請求項14】
前記所定の領域の表面粗さがノズル直径の1/10以下になるように研磨した、請求項13に記載の極端紫外光源装置。
【請求項15】
前記所定の領域の表面粗さがノズル直径の1/100以下になるように研磨した、請求項13に記載の極端紫外光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−199560(P2010−199560A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4105(P2010−4105)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト/次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト(石特会計/EUV光源高信頼化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】