説明

構造物の表面構造体及びその構築方法

【課題】 金属、コンクリート、自然石、セラミックなどの構造物の表層に形成された、引き剥がし力に対して十分な接着力を有し、ピンホールが発生しにくく、大気中に放出する成分が少なく、広い温度範囲で効果が発揮される樹脂層を有する表面構造体、およびその形成方法を提供する
【解決手段】 構造物の表層に、第三級アミンまたはその誘導体を含有する無溶剤エポキシ樹脂プライマーの層と、ポリウレタンまたはポリウレアの層が積層されて形成されている表面構造体及びその構築方法である。無溶剤エポキシ樹脂プライマーが、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂液と、硬化剤が100重量部に対して0.1〜10重量部第三級アミンまたはその誘導体を含有する硬化剤を主成分とする硬化剤液とからなる態様は、好ましい態様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、コンクリート、自然石、セラミックなどの構造物の表層にプライマーの層と、ポリウレタンまたはポリウレアの層が積層されて形成されている表面構造体及びそれを構築する方法に関する。さらに詳しくは、プライマーの層が第3級アミンまたはその誘導体を含有する無溶剤エポキシ樹脂プライマーの層である、前記表面構造体及びそれを構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物の表面には、防水、防食、剥落防止などの目的で樹脂層が形成されることがある。これらの樹脂としてはポリウレア、ポリウレタンなどが使用されている。
このような樹脂層を有する表面構造体を構成するときに、接着力を確保し、ピンホール生成を防止する目的で、通常プライマーが用いられる。プライマーとしては、溶剤系ウレタンプライマー、溶剤系エポキシプライマーなどが使用されている。
【0003】
溶剤系プライマーでは溶剤が大気中に放出されるため、環境問題の観点からその使用には制約があった。また、構造体がコンクリート構造体の場合には、表面には、細かい孔が存在するため、従来の溶剤系プライマーではコンクリート表面に塗膜を完全に形成させることは困難であった。
【0004】
そこで本出願人は、コンクリート構造物表面に広く実施されるようになった繊維シートを用いた剥落防止システム(非特許文献1)よりすぐれた技術として、コンクリート表層に良好なプライマー塗膜を作業性よく形成させ、大気中に放出される溶剤が少ないプライマー層を介して樹脂層を形成させたはく落防止に効果があるコンクリート表面構造体を提案している。
【0005】
本発明者らは、鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物の表面に、耐引き剥がし性などが改善された樹脂層を形成させて、すぐれた表面構造体を得ることができる技術の開発に鋭意努力した結果、本発明に到達したものである。
【0006】
【非特許文献1】日本道路公団著「コンクリート片はく落防止対策マニュアル」平成12年11月発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物に、引き剥がし力に対して十分な接着力を有し、ピンホールが発生しにくく、大気中に放出する成分が少なく、広い温度範囲で効果が発揮される樹脂層を有する表面構造体、およびその形成方法を提供する。
本発明は、特にコンクリート構造物の剥落防止用表面構造体の構築に適した樹脂層を提供する。
本発明は、上記したようなすぐれた表面構造体の構築に適した樹脂層の形成を可能とするプライマーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物から選ばれた構造物の表層に、第3級アミンまたはその誘導体を含有する無溶剤エポキシ樹脂プライマーの層と、ポリウレタンまたはポリウレアの層が積層されて形成されている表面構造体を提供する。
【0009】
構造物がコンクリート構造物である前記表面構造体は好ましい態様である。
【0010】
前記無溶剤エポキシ樹脂プライマーが、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂液と、硬化剤を主成分とする硬化剤液とからなり、硬化剤が100重量部に対して0.1〜10重量部の第3級アミンまたはその誘導体を含有するものである、前記した表面構造体は本発明の好ましい態様である。
【0011】
前記無溶剤エポキシ樹脂プライマーが、その100重量部に対し、シランカップリング剤を0.1〜5重量部の割合で含有する、前記した表面構造体は本発明の好ましい態様である。
【0012】
前記ポリウレタン又はポリウレアが、脆化化温度が−25℃以下のポリウレタン又はポリウレアである、前記した表面構造体は本発明の好ましい態様である。
【0013】
本発明はまた、鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物から選ばれた構造物の表層に、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂液と、硬化剤100重量部に対して0.1〜10重量部の第3級アミンまたはその誘導体を含有する硬化剤を主成分とする硬化剤液とを供給してプライマー層を形成させる工程と、プライマー層上にポリウレタンまたはポリウレアの硬化性組成物を供給してポリウレタンまたはポリウレア層を形成させる工程を含む表面構造体の構築方法を提供する。
【0014】
前記硬化剤液の供給が、第3級アミンまたはその誘導体を含む硬化剤液とその他の硬化剤を含む硬化剤液を別個に供給することによって行なわれる、前期の表面構造体の構築方法は本発明の好ましい態様である。
【0015】
前記ポリウレタン又はポリウレアの硬化性組成物として、指触乾燥時間が1〜120秒のものを使用する、前期の表面構造体の構築方法は本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物に、引き剥がし力に対して十分な接着力を有し、ピンホールが発生しにくく、大気中に放出する成分が少なく、広い温度範囲で効果が発揮される樹脂層を有する表面構造体を形成させることができる。
本発明により、コンクリート構造体に剥落防止に適した表面構造体を形成させることができる。
本発明により、上記したようなすぐれた表面構造体およびそれを構築する方法が提供される。
本発明により、上記構造体の表面構造体を構成するのに適したプライマー層と樹脂層が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物の表層に、第3級アミンまたはその誘導体を含有する無溶剤エポキシ樹脂プライマーの層と、ポリウレタンまたはポリウレアの層が積層されて形成されている表面構造体を提供する。
【0018】
また、本発明は、鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物の表層に、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂液と、硬化剤100重量部に対して0.1〜10重量部の第3級アミンまたはその誘導体を含有する硬化剤を主成分とする硬化剤液とを供給してプライマー層を形成させる工程と、プライマー層上にポリウレタンまたはポリウレアの硬化性組成物を供給してポリウレタンまたはポリウレア層を形成させる工程を含む表面構造体の構築方法を提供する。
【0019】
本発明のコンクリート表面構造物を構成する樹脂層は、無用剤エポキシ樹脂プライマー層と、ポリウレタンまたはポリウレアの層が積層されているものである。
【0020】
上記プライマー層としては、コンクリート表層に浸透してコンクリート下地及びポリウレタン又はポリウレアの層と強固に接着し、かつ上記物性を発現できるところから、無溶剤ポキシ樹脂プライマーが使用される。またコンクリート表面が湿潤状態にある場合においても、エポキシ樹脂プライマーとシランカップリング剤を併用することによって同様の物性を発現できるので好ましい。
【0021】
上記目的に使用可能なエポキシ樹脂プライマーは、有機溶剤を希釈剤として使用しない無溶剤型とするのが好ましい。無剤溶剤エポキシ樹脂プライマーとは、粘度調整の目的などで使用される有機溶剤を実質的に含有しないプライマーをいう。無溶剤エポキシ樹脂プライマーを使用することによって、大気中に放散される成分が少ないので、有機溶剤による健康及び環境への懸念が低減され、安心して作業することができるとともに、プライマーを適用した構造体自体の環境への懸念も低減することができる。
【0022】
エポキシ樹脂プライマーとしては、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂液を主剤(A液)とし、その硬化剤を主成分とする硬化剤液(B液)とからなる2液型のものを挙げることができる。
【0023】
樹脂液(A液)と硬化剤液(B液)の両液を混合した後の組成物において、作業性およびコンクリート表層への浸透性の観点から、B型粘度計により測定した20℃における粘度が、20〜5000mPa・s、好ましくは50〜3000mPa・sの範囲内にあるものが好ましい。
【0024】
A液としては、主剤であるエポキシ樹脂と共に、必要に応じ反応性希釈剤、チクソトロピー性付与剤、表面張力低下剤、カップリング剤などが配合される。
【0025】
A液に使用されるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン系樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、複素環式エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂などを挙げることができる。これらの中ではビスフェノールF型エポキシ樹脂を単独で使用することが好ましいが、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂を併用することもできる。
【0026】
A液に配合することが可能な反応性希釈剤としては、多価アルコールのモノ又はポリグリシジルエーテルが好ましく、エチレングリコールモノ又はジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノ又はジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールモノ又はジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノ又はジグリシジルエーテル、炭素数が8以上、さらには10以上の長鎖アルキレングリコールのモノ又はジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。反応性希釈剤としては、そのほか、オクチレンオキサイドのようなオレフィンオキサイド、ブチルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、3−(ペンタデシル)フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、シクロヘキセンビニルモノオキサイド、ジペンテンモノオキサイド、α−ピネンオキサイド等のモノエポキシ化合物をはじめとする低粘度のモノまたはポリエポキシ化合物、フルフリルアルコールのような反応性の基を有するアルコール類などを挙げることができる。
【0027】
A液に使用可能なチクソトロピー性付与剤としては、ケイ酸系(微粒子無水ケイ酸ないしヒュームドシリカ)、含水ケイ素マグネシウム系(セピオライト、クリソスタイル等)、ケイ酸アルミニウム系(モンモリロナイト系ベントナイト、ゼオライト等)などの無機化合物、層間に有機分子を吸着させた有機ベントナイトのような有機化した無機化合物、ポリヒドロキシカルボン酸またはそのアミド、ポリアクリル酸ソーダ、ジベンザルソルビット、ある種の界面活性剤などの有機化合物などを例示することができる。
【0028】
A液に使用可能な表面張力低下剤としては、例えば、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、シリコーン変性ポリアクリレート、ポリシロキサンなどを挙げることができる。上記チクソトロピー性付与剤の中にも表面張力低下作用を有するものがあるので、そのチクソトロピー性付与剤を表面張力低下剤として兼用することもできる。
【0029】
A液に配合可能なカップリング剤としては、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、クロムカップリング剤、有機リン酸カップリング剤などが挙げられるが、とくにシランカップリング剤の使用が好ましい。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、メタクリロキシトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどの不飽和基又はエポキシ基含有珪素化合物などを挙げることができる。これらの中ではとくにエポキシ基を有するシランカップリング剤を使用すると、コンクリート表層が湿潤状態にある場合においても、優れた特性を有するプライマー層を形成させることができるので好ましい。
【0030】
A液の配合組成として、例えばエポキシ樹脂及び反応性希釈剤の合計量を100重量部とするときに、エポキシ樹脂の割合を60〜100重量部、好ましくは65〜90重量部に対し、反応性希釈剤を40〜0重量部、好ましくは35〜10重量部の割合とし、またエポキシ樹脂及び反応性希釈剤の合計量を100重量部に対し、チクソトロピー性付与剤を0〜10重量部、表面張力低下剤を0〜3重量部、カップリング剤を0.1〜5重量部となるような割合とすることができる。
【0031】
本発明の無溶剤エポキシ樹脂プライマーを構成する硬化剤液(B液)は、硬化剤100重量部に対して、第3級アミンまたはその誘導体を0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部含有するものである。
第3級アミンまたはその誘導体がこの範囲で含有されていることによって、引き剥がし力に対して十分な接着力を有し、ピンホールが発生しにくく、大気中に放出する成分が少なく、広い温度範囲で効果が発揮される本発明の表面構造体の形成を可能とするプライマーを得ることができる。
【0032】
第3級アミンまたはその誘導体としては、第3級アミンおよびその誘導体としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリ-n-オクチルアミン、N−メチル−ジ−n−オクチルアミン、トリ−(2−エチルヘキシル)アミン、N,N−ジブチル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジイソプロピル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルベンジルアミン、トリベンジルアミン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−ブチルピロリジン、N−オクチルピロリジン、N,N'−ジメチルピペラジンなどの脂肪族系第3級アミン;N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)−m−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−ベンジル−N−エチルアニリンなどの芳香族系第3級アミン;N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、Nメチル−N,N−ジエタノールアミン、Nメチル−N,N−ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアミノアルコール系第3級アミン;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノールなどのフェノール誘導体第3級アミン;及びこれらの第3級アミンと有機酸あるいは無機酸の塩、例えば2,4,6−−トリス(ジアミノメチル)フェノールのトリ−2−エチルヘキシル酸塩などを挙げることができる。 中でも、脂肪族系第3級アミンまたはアミノアルコール系第3級アミンの使用が好ましく、特にはトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジメチルベンジルアミンなどが好適に使用される。第3級アミンおよびその誘導体は、単独で使用してもいいし、複数を混合して使用してもよい。前記した第3級アミンおよびその誘導体の量はそれらの合計量である。
【0033】
本発明の(B)液における第3級アミンまたはその誘導体の残余の硬化剤は、第3級アミンまたはその誘導体以外の硬化剤であって、例えば脂肪族第一アミン(脂肪族ジアミン、脂肪族ポリアミン、芳香環含有脂肪族ポリアミン、脂環ポリアミン、環状ポリアミン等)、芳香族第一アミン、含リンまたは含ハロゲンアミン硬化剤、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の低級アルキレンオキサイド又はその混合物を反応させて得られるポリエーテルの末端に有するヒドロキシル基をアンモニアと反応させてアミノ基に置換することによって得られるポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミンなどのポリエーテルポリアミン、又はこれらアミン硬化剤のエポキシ化合物のアダクト、アクリロニトリルの付加物またはマンニッヒ付加物などの変性物などのアミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、脂肪族カルボン酸無水物、脂環式カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸無水物などの酸または酸無水物系硬化剤などの硬化剤を主成分として用いる。好ましい硬化剤は、脂肪族ポリアミン、芳香環含有脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン又はこれらに上述の変性を施した変性ポリアミンなどを挙げることができる。第3級アミンまたはその誘導体以外の硬化剤も、単独であってもよいし2種以上の混合物であってもよい。
【0034】
本発明の(B液)における第3級アミンまたはその誘導体は、予めその他の硬化剤と混合して(B液)を形成することができる。また、第3級アミンまたはその誘導体からなる硬化剤液と、その他の硬化剤からなる硬化剤液とを、第3級アミンまたはその誘導体の量が上記範囲となるような割合で、別個に樹脂液(A液)と混合して(B液)を構成させる方法を採用することもできる。
【0035】
上記硬化剤液のB液にも、先に述べたチクソトロピー性付与剤、表面張力低下剤、カップリング剤などを配合しておくこともできる。例えばカップリング剤として、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基含有珪素化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有珪素化合物などを配合することができる。
【0036】
また、A液及びB液の一方あるいは双方に、必要に応じ可塑剤、軟化剤をはじめとする粘度低下ないし相溶性向上のための添加剤を含有させることができる。そのほかにも、エポキシ樹脂接着剤に用いられる種々の添加剤を含有させることもできる。
【0037】
本発明の表面構造体は、鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物の表層に、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂液(A液)と、前記した硬化剤を主成分とする硬化剤液(B)とを供給してプライマー層を形成させる工程と、プライマー層上にポリウレタンまたはポリウレアの硬化性組成物を供給してポリウレタンまたはポリウレアエポキシ樹脂層を形成させる工程を含む構築方法によって構築させることができる。
【0038】
プライマー層を形成させる方法及び樹脂層を形成させる方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を適宜選択して採用することができる。
【0039】
コンクリート構造物表面にエポキシ樹脂プライマーを塗布するに当って、A液とB液が配合される。A液とB液の配合割合は、使用するエポキシ樹脂や硬化剤の種類やその含有量などによっても異なるが、エポキシ当量/活性水素当量の比に基づく必要量に、実験的に定めた最適量を参考にして決めればよく、例えばA液100重量部に対し、B液10〜100重量部、とくに20〜80重量部となるような割合で使用することができる。
【0040】
エポキシ樹脂や硬化剤、あるいはその他添加剤の種類及び配合量を適宜選択することにより、A液とB液の混合後の20℃における粘度が20〜5000mPa・s、好ましく50〜3000mPa・sとなるように調製することが好ましい。
【0041】
本発明の表面構造体の構築を、コンクリート構造物に適用すると、コンクリート構築物の表面剥落防止に顕著な効果を発揮するので、本発明の最も好ましい態様である。
【0042】
本発明の無用剤エポキシ樹脂プライマーとしてはまた、コンクリート構造物表層が湿潤状態にあるようなものに塗布する場合には、前述のシランカップリング剤を併用する方法に加え、エポキシ樹脂及び/又は硬化剤にポリエーテル骨格のような親水性基を有するものを少なくとも一部に使用するのがよい。このような混合液を、はけ塗り等の手段によりコンクリート構造物表層に塗布することにより、所望の引張強度を有するプライマー層を形成させることができる。プライマー層の層厚みとしては、0.02〜0.4mm程度が好適である。このようなプライマー層を有することにより、コンクリート構造物とポリウレタン又はポリウレア層を強固に接着させることができると共に、後記するポリウレタン又はポリウレアと積層構造にすることより、−20〜60℃の範囲において、コンクリート片の変位に追随し、相応の応力に耐えることができる表面構造体を形成することができる。
【0043】
本発明のコンクリート表面構造体の樹脂層として使用されるポリウレタン又はポリウレアとしては、脆化温度が−25℃以下、とくに−30℃以下のものが好ましい。ポリウレタン又はポリウレアとして上記のような性状のものを使用することにより、−20〜60℃の範囲において、コンクリート片の変位に追随し、相応の応力に耐えることができる表面構造体を形成することができる。
【0044】
ポリウレタン又はポリウレアとして具体的には、イソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマーと水酸基及び/又はアミノ基を2個以上有する硬化剤を混合することによって形成させることができる。
【0045】
このようなウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応する活性水素を1分子中に2個以上有する化合物とを反応させることによって得ることができる。とくに活性水素化合物として、アルコール性水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールあるいはその他のポリオール等を1種又は2種以上組み合わせて形成させたウレタンプレポリマーが好適である。
【0046】
ウレタンプレポリマーの調製に使用できる上記ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類;p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類;上記各ポリイソシアネートをカルボジイミド変性又はイソシアヌレート変性したもの等が挙げられ、これらは単独で又は二種以上混合して用いることができる。好ましくは、取り扱い易さの点から2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類が用いられる。
【0047】
ウレタンプレポリマーの調製に使用可能なポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコールなどの他に、活性水素を二個以上有する低分子量活性水素化合物、例えばビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等のアミン類等の一種又は二種以上の存在下でプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイドを開環重合させて得られるランダム共重合体を挙げることができる。
【0048】
ウレタンプレポリマーの調製に使用可能なポリエステルポリオールとしては、例えば多塩基酸と多価アルコールを脱水縮合させて得られる重合体;ヒドロキシカルボン酸と多価アルコールの縮合体;ラクトンの開環重合体等が好適に用いられる。上記多塩基酸としては、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、二量化リノレイン酸、マレイン酸、等を挙げることができる。また多価アルコールとしては、例えばビスフェノールA、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオール類;グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類が用いられ得る。より具体的には両末端がジオール成分であるポリエチレンアジぺート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、ポリ(ジエチレングリコールアジペート)、ポリ(ヘキサメチレングリコール−1,6−カーボネート)、ポリカプロラクトンなどを例示することができる。
【0049】
ウレタンプレポリマーの調製に使用可能なその他のポリオールとしては、例えばアクリルポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール、ヒマシ油の誘導体、トール油の誘導体、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール等の他、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の低分子ポリオール等も好適に用いられる。
【0050】
これらポリオール化合物としては、数平均分子量が100〜10,000、とくに300〜5000のものが好ましく、所望に応じ単独であるいは二種以上混合して用いることができる。
【0051】
ウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物中に含まれるヒドロキシル基1モルに対して、ポリイソシアネート化合物中に含まれるイソシアネート基が1モルを越える割合で、すなわち、化学当量比(NCO/OH)が1を越える配合として、ポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを、必要に応じて加熱して、反応させることで得ることができる。このようなウレタンプレポリマーは、通常、その分子両末端にイソシアネート基を有する。ウレタンプレポリマーとして、ポリオール化合物中に含まれるヒドロキシル基とポリイソシアネート化合物の中に含まれるイソシアネート基の化学当量比(NCO/OH)を1.6〜20の割合でポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させ、23℃において液状を呈するものが、作業性、硬化物の物性等といった点からより好ましい。
【0052】
本発明のコンクリート表面構造体を形成するポリウレタン又はポリウレアは、上記ウレタンプレポリマーに硬化剤、必要に応じその他添加剤を配合した硬化性組成物を硬化させることによって形成させることができる。ウレタンプレポリマーを硬化させる硬化剤として、イソシアネート基と反応する活性水素を1分子中に2個以上有する化合物が挙げられる。このような化合物として、分子量が18〜3000、好ましくは30〜300である低分子化合物が好ましく、例えば水;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1、6−へキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−トリヒドロキシブタン、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、1,1,1−トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ポリカプロラクトン、フラクトース、キシリトール、アラビトール、ソルビトール及びマンニトールなどの多価アルコール;エタノールアミンのような低分子アミノアルコール;アンモニア、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレエンヘキサミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、3,3′−ジクロロ−4、4′−ジアミノ−ジフェニルメタンなどの低分子ポリアミン化合物、また先に挙げたウレタンプレポリマーの調製の際に使用できる、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリオール;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド又はその混合物を反応させて得られるポリエーテル末端に有するヒドロキシル基をアンモニアと反応させてアミノ基に置換することによって得られるポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミンなどのポリエーテルポリアミンを挙げることができる。これら硬化剤の中では、ポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリアミンを使用することが好ましいが、ポリエーテルポリオール又はポリエーテルポリアミンに他の1種類以上の低分子ポリオール又は低分子ポリアミンを組み合わせて使用することもできる。これら硬化剤として、水以外の場合には、ウレタンプレポリマーに含まれるイソシアネート基1モルに対して、低分子化合物中の活性水素が、約0.8モル以上の割合、好ましくは約0.95〜1.2モルとなるように硬化剤が添加される。
【0053】
ウレタンプレポリマー及び硬化剤のほかに、任意に配合することができる添加剤としては、可塑剤、界面活性剤、顔料、染料、充填剤、硬化促進触媒、老化防止剤などを例示することができる。
【0054】
可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル等のカルボン酸エステルの他、リン酸エステル、ノルマルパラフィン、塩素化パラフィン、アルキルベンゼン及びその他各種液状成分が挙げられ、これらは単独または2種以上混合して用いられ得る。
【0055】
界面活性剤としては、消泡剤、顔料や充填剤の湿潤分散剤、乳化剤、粘性改良剤などの特性に応じて各種界面活性剤が単独もしくは二種以上混合して添加され得る。
【0056】
硬化物を着色するために、顔料としてはアゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料や、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、ベンガラ等各種無機顔料を用いることができる。
【0057】
充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、クレー、タルク、シリカ、ケイ藻土、及びこれらを脂肪酸や脂肪酸エステル等の表面処理剤で処理したもの等を挙げることができる。
【0058】
ウレタンプレポリマーと硬化剤の反応を促進するための硬化促進触媒としては、N−アルキルベンジルアミン、N−アルキル脂肪族ポリアミン、トリエチレンジアミン、N−アルキルピペラジン、N−アルキルモルホリン、ジモルホリノジエチルエーテル、オクテン酸錫やジブチル錫ジラウレートのような有機金属化合物等が挙げられ、これらは単独もしくは二種以上混合して用いられ得る。
【0059】
老化防止剤はポリウレタン又はポリウレアの層を、光、酸素、熱等から保護するために用いられ、老化防止剤として一般的に用いられるものには光安定剤や酸化防止剤等があり、光安定剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ヒンダードアミン系、ニッケル系等が挙げられる。また、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、アミン系、硫黄系、リン系等が挙げられる。
【0060】
本発明のコンクリート表面構造体は、コンクリート構造物に形成させたエポキシ樹脂プライマー層上に、上記のようなウレタンプレポリマー、硬化剤及び任意に配合される添加剤からなる硬化性組成物を塗布し、硬化させることによって、ポリウレタン又はポリウレアの0.3〜10mm、好ましくは0.5〜3mmの層を形成させることによって構築される。塗布方法はスプレー塗布、はけ塗りなど任意の方法によって行なうことができるが、短時間で施工が可能であるところから、スプレー塗布によるのが好ましい。ウレタンプレポリマー、硬化剤及び任意に配合される添加剤からなる硬化性組成物は、塗布作業性を考慮すると、コテ塗り等スプレー装置を使わずに手作業又はこれに準ずる方法で塗布する場合には、23℃における粘度が500〜2000mPa・s程度となるように調製されるのが好ましい。またウレタンプレポリマーの分子量、硬化剤や硬化促進触媒の種類、添加量等を選択することによって、23℃においてJIS K5600−1−1で規定される指触乾燥時間が、2液衝突混合型スプレー装置を使用する場合は1〜120秒となるように、また手作業又はこれに準ずる方法で塗布する場合は10〜200分となるように、それぞれ調製するのが好ましい。さらにウレタンプレポリマーや硬化剤の種類、及びその他添加剤の種類や配合量によって、引張強度、引張破断伸び、脆化温度等が所望の値となるように調製することができる。
【0061】
本発明のコンクリート表面構造体は、上記のようなエポキシ樹脂プライマー層とポリウレタン又はポリウレアの層との積層構造とすることにより、繊維シートを使用することなく、充分な剥落防止効果を発揮することができる。
【0062】
上記のごとく構築された表面構造体の耐候性、その他の性質を付与する目的で、ポリウレタン又はポリウレアの層の表面にトップコート層を設けてもよい。このようなトップコート層として、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂あるいはこれらの変性樹脂などを使用することができる。トップコート層としては、例えば0.05〜0.4mm程度の厚みに形成するのが効果的である。また上記ポリウレタン又はポリウレアの層を保護する目的で、ポリウレタン又はポリウレアの層の表面に、あるいはトップコート層の表面に、直接又はプライマー層を介して、厚みが2mm程度以下、好ましくは1〜2mm程度の保護層を設けることができる。保護層は、上記ポリウレタン又はポリウレアの層への接着性が良好で、通常の改修サイクルでは劣化せず、上記表面構造体の保護の目的を果たすものであれば材質を選ばないが、上記ポリウレタン又はポリウレアと同じ材料を使用することができる。この場合は改修で保護層を除去するときに、表面構造体における上記ポリウレタン又はポリウレアの層と保護層の相違が明確となるように、両者を異なる色に着色しておくのがよい。このような保護層を設ける場合には、さらにその上に上記のようなトップコート層を設けることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
【0064】
(実施例1)
市販の液状のアミン系硬化剤(商品名:ダイトクラールI−5476、大都産業(株)製)50重量部に対し、ベンジルジメチルアミン0.5重量部を加え、十分に撹拌混合した。これに液状エポキシ樹脂(商品名:アデカレジンR4901、旭電化工業(株)製)を100重量部加えて撹拌混合し、プライマー組成物とした。
JIS A5304に規定される30cm角コンクリート歩道版の表面をダイヤモンドサンダーにて研摩し、この面に上記プライマー組成物を150g/mの割合で塗布した。
24時間後に、プライマー塗布面にスプレー施工用速硬化ポリウレタン樹脂(商品名:リムスプレーF1000、三井化学産資(株)製)を、2液衝突混合形スプレー機(商品名:スプレーマシンH-2000及びスプレーガンGX7、米国ガスマー社製)にて吹付け、ポリウレタン層が2mm厚の積層体を得た。7日間そのままの状態で保持した後、積層体に端部より2cmの幅、長さ10cm、深さ1cmの切れこみをダイヤモンドカッターにて作り、積層体の端部を冶具ではさみ垂直方向に引張り、引き剥がしに対する応力をばね秤にて測定した。応力は192Nを示した。
【0065】
(実施例2)
ベンジルジメチルアミンの量を3重量とし、他の操作は実施例1と同様にして、引き剥がしに対する応力を測定した。応力は157Nを示した。
【0066】
(実施例3)
ベンジルジメチルアミンの代わりにトリエタノールアミンを1重量部加え、他の操作は実施例1と同様にして、引き剥がしに対する応力を測定した.応力は185Nを示した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明により提供される、鋼などの金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物などの構造物の表面構造体は、引き剥がし力に対して十分な接着力を有し、ピンホールが発生しにくく、大気中に放出する成分が少なく、広い温度範囲で効果が発揮される樹脂層を有する表面構造体である。
本発明により提供される表面構造体は、特にコンクリート構造体の剥落防止に適した表面構造体である。
本発明により、上記したようなすぐれた表面構造体を構築する方法が提供される。
本発明により、コンクリート構造物において、有効な剥落防止を達成する表面構造体の構築方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属構造体、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物から選ばれた構造物の表層に、第3級アミンまたはその誘導体を含有する無溶剤エポキシ樹脂プライマーの層と、ポリウレタンまたはポリウレアの層が積層されて形成されている表面構造体。
【請求項2】
前記構造物がコンクリート構造物であることを特徴とする請求項1に記載の表面構造体。
【請求項3】
前記無溶剤エポキシ樹脂プライマーが、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂液と、硬化剤を主成分とする硬化剤液とからなり、硬化剤が100重量部に対して0.1〜10重量部の第3級アミンまたはその誘導体を含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の表面構造体。
【請求項4】
前記第3級アミンまたはその誘導体が、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンおよびジメチルベンジルアミンから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面構造体。
【請求項5】
前記無溶剤エポキシ樹脂プライマーが、その100重量部に対し、シランカップリング剤を0.1〜5重量部の割合で含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面構造体。
【請求項6】
シランカップリング剤が、エポキシ基を有するシランカップリング剤である請求項5記載のコンクリート表面構造体。
【請求項7】
ポリウレタン又はポリウレアが、脆化温度が−25℃以下のものである請求項1〜6のいずれかに記載のコンクリート表面構造体。
【請求項8】
金属構造物、コンクリート構造物、自然石構造物、セラミック構造物から選ばれた構造物の表層に、エポキシ樹脂を主成分とする樹脂液と、硬化剤100重量部に対して0.1〜10重量部の第3級アミンまたはその誘導体を含有する硬化剤を主成分とする硬化剤液とを供給してプライマー層を形成させる工程と、プライマー層上にポリウレタンまたはポリウレアの硬化性組成物を供給してポリウレタンまたはポリウレア層を形成させる工程を含む表面構造体の構築方法。
【請求項9】
前記硬化剤液の供給が、第3級アミンまたはその誘導体を含む硬化剤液とその他の硬化剤を含む硬化剤液を別個に供給することによって行なわれる請求項8に記載の表面構造体の構築方法。
【請求項10】
前記ポリウレタン又はポリウレアの硬化性組成物として、指触乾燥時間が1〜120秒のものを使用することを特徴とする請求項8または9に記載のコンクリート表面構造体の構築方法。

【公開番号】特開2006−348707(P2006−348707A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179993(P2005−179993)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000175021)三井化学産資株式会社 (47)
【Fターム(参考)】