説明

構造用枠材の連結具

【課題】 構造用枠材の連結具の連結固定状態を確実にして構造用枠材の係合溝部からの連結具の脱落を防止する。
【解決手段】 本発明の構造用枠材の連結具は、構造用枠材の係合溝部に係止される係止爪を備えた左右一対のサイドハウジングと、上記サイドハウジング内に収容され、サイドハウジングの案内傾斜面に当接する押圧傾斜面を備えた可動体と、上記サイドハウジング対して設けられるナット部に螺合し、連結固定位置と連結解除位置との間で可動体を移動させるセットボルトと、を具備することによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一様の横断面形状を有する2本の構造用枠材を互いに直交させた姿勢で連結固定する場合、上記構造用枠材に他部材を連結固定する場合に使用される構造用枠材の連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から一様の横断面形状を有する2本の構造用枠材を互いに直交させた姿勢で連結固定するための構造用枠材の連結具が提案されている。それら連結具の構成を示すものとして、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等がある。それらに示されている連結具は、連結する2本の構造用枠材の連結コーナ部にあてがわれ、ボルトを締め付けることによって構造用枠材のT字形の溝部に挿入した係止片を幅方向外方に張り出させることによって取り付けられるようなものである。
【特許文献1】特開2003−13919号公報
【特許文献2】特開2005−291362号公報
【特許文献3】特開2007−303572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の構成によると次のような問題があった。すなわち、上記係止片を幅方向外方に張り出させるだけでは、構造用枠材と連結具の強固な固定を図ることはできず、例えば、構造用枠材が幅方向に衝撃荷重や偏心荷重を受けたような場合或いは経時的要因によって構造用枠材の溝部に対する係止片の係止量が浅くなってしまったような場合には係止片が溝部から外れてしまうことがあり、それによって、2本の構造用枠材同士の連結が損なわれてしまうという問題があつた。
【0004】
本発明は、このような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、構造用枠材と連結具の強固な連結固定が図れ、構造用枠材が受ける種々の方向の衝撃荷重や偏心荷重あるいは経時的要因による係合溝部からの係止片の脱落を防止できる簡単な構造の構造用枠材の連結具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による構造用枠材の連結具は、一様の横断面形状を有し、外側面に長手方向に延びる複数本の係合溝部が形成された2本の構造用枠材を使用して、一方の構造用枠材の一端面を他方の構造用枠材の外側面にあてがった直交させた状態で上記2本の構造用枠材を連結固定し得る構造用枠材の連結具において、上記構造用枠材の連結具は、上記直交配置された2本の構造用枠材における直交する2本の係合溝部内に同時に挿入され、該係合溝部の内側に張り出した係合突部に係止される2つの係止爪を直交する2辺に備えた左右一対のサイドハウジングと、上記左右一対のサイドハウジングの内部に形成された可動空間内に収容され、上記左右一対のサイドハウジングの内壁面に形成されている案内傾斜面に当接する押圧傾斜面を備えた可動体と、上記サイドハウジングに対して設けられるナット部に螺合することによって上記押圧傾斜面を対向する案内傾斜面間に進入させてサイドハウジングを押し広げることによって上記係止爪を構造用枠材の係合突部に係止させる連結固定位置と、上記押圧傾斜面を対向する案内傾斜面間から退出させて可動空間内に位置させる連結解除位置との間で上記可動体を移動させる押しボルトと、を具備していることを特徴とするものである。
又、請求項2による構造用枠材の連結具は、請求項1に記載の構造用枠材の連結具において、上記案内傾斜面と押圧傾斜面のそれぞれの傾斜角度は略同一角度に設定されていることを特徴とするものである。
又、請求項3による構造用枠材の連結具は、請求項1又は請求項2記載の構造用枠材の連結具において、上記案内傾斜面と押圧傾斜面の少なくとも何れか一方は、上記係合溝に向かって直交する方向に傾斜していると共に上記係合溝にそって平行な方向にも傾斜して設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項4による構造用枠材の連結具は、請求項1〜請求項3の何れかに記載の構造用枠材の連結具において、上記可動体には上記押しボルトを受け入れるセット穴が刻設されたスリーブ状の可動本体部が設けられており、該可動体本体部の連結側端面と上記ナット部との間に上記可動体を連結解除方向に付勢するリターンスプリングが設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項5による構造用枠材の連結具は、請求項1〜請求項4の何れかに記載の構造用枠材の連結具において、上記サイドハウジングには上記可動体が連結固定位置に移動した時に上記押しボルトの軸部の端面が当接する度当て部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項6による構造用枠材の連結具は、一様の横断面形状を有し、外側面に長手方向に延びる複数本の係合溝部が形成された構造用枠材に他部材を連結固定し得る構造用枠材の連結具において、上記構造用枠材の連結具は、上記係合溝部内に挿入され、該係合溝部の内側に張り出した係合突部に係止される係止爪を備えた左右一対のサイドハウジングと、上記左右一対のサイドハウジングの内部に形成された可動空間内に収容され、上記左右一対のサイドハウジングの内壁面に形成されている案内傾斜面に当接する押圧傾斜面を備えた可動体と、上記サイドハウジングに対して設けられるナット部に螺合することによって上記押圧傾斜面を対向する案内傾斜面間に進入させてサイドハウジングを押し広げることによって上記係止爪を構造用枠材の係合突部に係止させる連結固定位置と、上記押圧傾斜面を対向する案内傾斜面間から退出させて可動空間内に位置させる連結解除位置との間で上記可動体を可動させる押しボルトと、を具備していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
したがって、本発明による構造用枠材の連結具によれば、直交配置された2本の構造用枠材における直交する2本の係合溝部内に同時に挿入され、該係合溝部の内側に張り出した係合突部に係止される2つの係止爪を直交する2辺に備えた左右一対のサイドハウジングと、上記左右一対のサイドハウジングの内部に形成された可動空間内に収容され、上記左右一対のサイドハウジングの内壁面に形成されている案内傾斜面に当接する押圧傾斜面を備えた可動体と、上記サイドハウジングに対して設けられるナット部に螺合することによって上記押圧傾斜面を対向する案内傾斜面間に進入させてサイドハウジングを押し広げることによって上記係止爪を構造用枠材の係合突部に係止させる連結固定位置と、上記押圧傾斜面を対向する案内傾斜面間から退出させて可動空間内に位置させる連結解除位置との間で上記可動体を移動させる押しボルトと、を具備しているので、上記押しボルトを締め付けて行くことによって、可動体の押圧傾斜面がサイドハウジングの案内傾斜面を押し広げながら可動体は連結方向に進行する。したがって、上記押圧傾斜面が楔様に作用して対向する案内傾斜面間に進入するため、押しボルトのみの締め付けによって係止爪の係合突部に対する強固な係止状態が形成される。又、直交する2辺に設けた案内傾斜面による案内作用によって可動体は構造用枠材の連結コーナ部へ引き寄せられるようにして移動するようになる。
又、案内傾斜面と押圧傾斜面のそれぞれの傾斜角度を略同一角度に設定した場合には、押圧傾斜面と案内傾斜面の接触面積が大きくなるため、可動体とサイドハウジングの動きが円滑になり、可動体の動きがロスなくサイドハウジングに伝達されて係止爪の係合突部に対する一層強固な係止状態が形成されるようになる。
又、上記案内傾斜面と押圧傾斜面の少なくとも何れか一方は、上記係合溝に向かって直交する方向に傾斜していると共に上記係合溝にそって平行な方向にも傾斜して設けられている場合には、一対のサイドハウジングを偏りなく広げてより強固な連結状態を得ることができる。
又、上記可動体に押しボルトを受け入れるセット穴が刻設されたスリーブ状の可動本体部を設け、可動本体部の連結側端面とナット部との間に可動体を連結解除方向に付勢するリターンスプリングを設けた場合には、可動体の連結解除方向の動きを円滑にし、可動体が連結解除位置に位置している時の可動体のガタ付きを防止することができる。
又、上記サイドハウジングに上記可動体が連結固定位置に移動した時に上記押しボルトの軸部の端面が当接する度当て部を設けた場合には、可動体は押しボルトの軸部の端面が上記度当て部に当接することによって移動が規制されるが、この状態から押しボルトを締め付けて行くことによって左右のサイドハウジングを引き上げる方向の力が作用するようになるため、係止爪の係合突部に対する係止状態がより強固になる。
又、上記構成の構造用枠材の連結具を同規格の構造用枠材の連結固定に使用するのではなく、構造用枠材と他部材との連結固定に使用する場合には、上記案内傾斜面と押圧傾斜面及び係止爪は少なくとも1組のみ設けられていればよく、その場合にも上記と同様の係止爪の係合突部に対する強固な係止状態が形成されるから構造用枠材が受ける種々の方向の衝撃荷重や偏心荷重あるいは部品の摩耗等の経時的要因に起因する係合溝部からの係止爪の脱落が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図1乃至図10を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。図1は直交配置された構造用枠材の連結コーナ部に本発明の構造用枠材の連結具を連結固定した状態を示す斜視図、図2は直交配置された構造用枠材の連結コーナ部に本発明の構造用枠材の連結具を連結固定した状態を示す側面図、図3は直交配置された構造用枠材の連結コーナ部に本発明の構造用枠材の連結具を連結固定した状態を示す正面図、図4は直交配置された構造用枠材の連結コーナ部に本発明の構造用枠材の連結具を連結固定した状態を示す平面図、図5は構造用枠材の連結具を分解した状態を示す分解斜視図、図6は構造用枠材の連結具を分解した状態を示す分解正面図、図7は可動体とサイドハウジングの連結固定時の状態を示す側面図、図8は図7中のVIII−VIII断面図である。
【0008】
本実施の形態に係る構造用枠材の連結具1は、一様の横断面形状を有し、外側面3aに長手方向に延びる4本の係合溝部5が形成された2本の構造用枠材3、3を使用して、一方の構造用枠材3の一端面3bを他方の構造用枠材3の外側面3aに直交する方向からあてがった姿勢とし、その姿勢で上記2本の構造用枠材3、3を連結固定する場合に使用される。
具体的には、左右一対のサイドハウジング7L、7Rと、可動体8と、押しボルト10と、を具備することによって、本実施の形態による構造用枠材の連結具1は基本的に構成されており、上記直交配置された構造用枠材3、3の連結コーナ部4に対して装着されるようになっている。
【0009】
構造用枠材3は一例としてアルミニウム製の押出し成形品であり、図示のような一様の横断面形状を有する角棒状の部材である。そして、上記構造用枠材3の4つの外側面5aの中央には4本の係合溝部5が長手方向に沿って構造用枠材3の全長に亘って形成されている。
上記係合溝部5は入り口が狭く、奥部が広い茸様の横断面形状を有する溝部である。そして、上記入口の狭くなった部分に後述する係止爪13が係止される内側に庇状に張り出した係合突部5aが形成されている。
【0010】
向って左側に設けられるサイドハウジング7Lと、向って右側に設けられるサイドハウジング7Rは内側に後述する可動体8を収容する可動空間11が位置するように対向配置された左右対称形状の外筺部材である。
サイドハウジング7L、7Rは直交する2辺15、17を含む5辺から構成されている側面視五角形状をした偏平容器状の部材である。そして、上記直交する2辺15、17には各辺の長さ方向に延びる鉤様断面の係止爪13、13がそれぞれ左右外方に突出する様に設けられている。
【0011】
又、サイドハウジング7L、7Rの内壁面には、上記2辺15、17より幾分、内側の部分に凹陥部25L、25Rが形成されており、対向する凹陥部25L、25Rの間に形成される空間が上述した可動空間11になっている。
又、上記凹陥部25L、25Rが形成されていないサイドハウジング7L、7Rの内壁面の残りの部分に、上記直交する2辺15、17に沿って案内傾斜面27L、27Rが設けられている。
【0012】
案内傾斜面27L、27Rは後述する可動体8に設けられている押圧傾斜面23L、23Rに当接して、可動体8の連結コーナ部4に向けての動きをサイドハウジング7L、7Rの左右外方への動きに変換する役割を有している。ここで、上記案内傾斜面27L、27Rについて詳しく説明する。図5において、図中左側の案内傾斜面27Lをみてみると、まず、矢印aの方向(構造用枠材3の溝5に対して平行な方向)に沿ってその肉厚が徐々に厚くなるような傾斜面となっており、且つ、矢印bで示す方向(構造用枠材3の溝5に対して直交する方向から向かう方向)に沿ってその肉厚が徐々に厚くなるような傾斜面となっている。これは反対側の案内傾斜面27L、対向する案内傾斜面27R、27Rについても同様の構成になっている。案内傾斜面27L、27Rをこのような構成とすることにより、後述する可動体8側の押圧傾斜面23L、23Rとの協働により、一対のサイドハウジング7L、7Rを単に左右外方に押し広げる均一にバランス良く押し広げることができるようにし、それによって、より強固な締結状態を得ようとするものである。
因みに、単に一対のサイドハウジング7L、7Rを左右外方に押し広げるためには、上記矢印bで示す方向(構造用枠材3の溝5に対して直交する方向から向かう方向)に沿って傾斜していればよいわけであるが、そのような構成にした場合、上記可動体8を押し込んでいくと、案内傾斜面27L、27Rの連結コーナ部4側の部位から押し広げられていくことになり、その結果、一対のサイドハウジング7L、7Rを左右外方に均一にバランス良く押し広げることができなくなってしまうことが懸念されるものである。
尚、図6に示すように、上記案内傾斜面27L、27Rによりなされる角度θは、一例として、約20°に設定されている。
【0013】
又、サイドハウジング7L、7Rの内壁面のコーナ部には後述する押しボルト10の軸部10bと螺合するナット部29を収容するためのナット収納凹部31L、31Rが刻設されている。そして、上記ナット収容凹部31L、31Rの形状は収容されるナット29の外形形状と係合する形状になっており、このように構成することによって螺合時のナット部29の回転を防止している。
又、上記凹陥部25L、25Rの連結コーナ部4方向の中心には、円弧状に抉られた湾曲案内面35L、35Rが連結コーナ部4方向に沿って形成されている。
【0014】
この他、サイドハウジング7L、7Rの内壁面のコーナ部には上記ナット収容凹部31L、31Rよりも更に2辺15、17のコーナ部寄りの位置に内方に突出した度当て部33L、33Rが設けられている。
度当て部33L、33Rは、可動体8が連結固定位置に移動した時に押しボルト10の軸部10bの端面が当接し、押しボルト10の連結コーナ部4方向のこれ以上の移動を規制する部材である。
可動体8は、中心に円筒スリーブ状をした可動本体部8aを備え、その上下に翼板部9A、9Bを備えた側面視6角形状をした幾分、肉厚の部材である。
可動本体部8aの中心には、後述する押しボルト10を受け入れるセット穴37が形成されており、該セット穴37は押しボルト10の頭部10aを受け入れる大径部37aと、押しボルト10の軸部10bを受け入れる小径部37bとを備えることによって構成されている。
【0015】
又、上記可動本体部8aの外周面39は、上述した湾曲案内面35L、35Rと摺接する摺接面になっており、翼板部9A、9Bに対して設けられている後述する押圧傾斜面23L、23Rと共に可動体8の可動時の姿勢を保つ役割を有している。
この他、可動本体部8aの上部には上端から矩形状に切り欠かれた切欠部41が形成されており、セット穴37から押しボルト10を取り出す際の作業等を容易にしている。
【0016】
翼板部9A、9Bは上部43と下部44で形状を異ならせており、上部43は単なる平板状であるが、下部44には上記案内斜面27L、27Rと共に本発明の特徴的構成である押圧傾斜面23L、23Rが形成されている。
押圧傾斜面23L、23Rは左右両面に夫々形成されている。この押圧傾斜面23L、23Rの構成を詳しくみてみる。例えば、押圧傾斜面23Rをみてみると、図5に示すように、まず、矢印c方向(構造用枠材3の溝5に対して平行な方向)に向かってその肉厚が徐々に薄くなるようにテーパ状に形成されている。又、図中矢印d方向(構造用枠材3の溝5に対して直交する方向から向かう方向)に対してもその肉厚が徐々に薄くなるようにテーパ状に形成されている。これは、前述した案内傾斜面27L、27Rのテーパ構造に対応したものであり、そのような構成にすることにより、上記案内傾斜面27L、27Rとの協働により、一対のサイドハウジング7L、7Rを単に左右外方に押し広げる均一にバランス良く押し広げることができるようにし、それによって、より強固な締結状態を得ようとするものである。
因みに、単に一対のサイドハウジング7L、7Rを左右外方に押し広げるためには、上記矢印dで示す方向(構造用枠材3の溝5に対して直交する方向から向かう方向)に沿って傾斜していればよいわけであるが、そのような構成にした場合、上記可動体8を押し込んでいくと、案内傾斜面27L、27Rの連結コーナ部4側の部位から押し広げられていくことになり、その結果、一対のサイドハウジング7L、7Rを左右外方に均一にバランス良く押し広げることができなくなってしまうことが懸念されるものである。
尚、上記押圧傾斜面23L、23Rによりなされる角度θ´は、図6に示すように、上述した案内傾斜面27L、23Rのなす角度θと同じ、一例として、約20°に設定されている。
【0017】
押しボルト10は上記可動体8を連結固定位置と連結解除位置との間で移動させる上記ナット29と螺合する締結具である。
尚、連結固定位置は上記押しボトル10をナット部29に螺合させた状態で締付け方向に回転させて上記押圧傾斜面23を対向する左右の案内傾斜面27L、27R間に進入させて左右のサイドハウジング7L、7Rを外方に押し広げると共に連結コーナ部4方向に押し付けることによって上記係止爪13を上記係合突部5aに係止させた位置である。
又、連結解除位置は上記押圧傾斜面23L、23Rを対向する案内傾斜面27L、27R間から退出させて可動空間11内に移動させた位置である。
【0018】
この他、本実施の形態では、上記押しボルト10の所定位置にはナット47が固定されている。
【0019】
次に、このようにして構成される本発明の構造用枠材の連結具1の作動態様を(1)連結解除持と、(2)連結固定時とに分けて具体的に説明する。
図9は構造用枠材の連結具の作動態様を示す連結解除時の側面図(a)と、連結固定時の側面図(b)、図10は構造用枠材の連結具の作動態様を示す連結解除時の正面図(a)と、連結固定時の側面図(b)である。
(1)連結解除時{図9(a)、図10(a)参照}
六角レンチ等の締付け工具59をセット穴37の大径部37aに挿入し、押しボルト10の頭部10aに形成されている六角穴等の係合凹部61に挿嵌して、押しボルト10を緩める方向に回転させる。
【0020】
押しボルト10は、ナット部29が固定されているため連結解除方向である斜め上方へ移動するようになる。上記押しボルト10の移動に伴なって、可動体8はナット47によって同方向に移動する。
そして、可動体8の翼板部9A、9Bに形成されている押圧傾斜面23L、23Rが対向して配置されている左右の案内傾斜面27L、27R間から退去して可動空間11内に至ると左右のサイドハウジング7L、7Rはコーナ部において当接状態となり、係止13が完全に係合溝部5から内側に外れた連結解除状態になる。
【0021】
(2)連結固定時{図9(b)、図10(b)参照}
締付け工具59を押しボルト10の係合凹部61に挿嵌して、押しボルト10を締め付ける方向に回転させると、ナット部29が固定されているため連結コーナ部4に向けて斜め下方に押しボルト10は移動するようになる。
上記可動体8は上記押しボルト10の頭部10aと係合しているセット穴37における大径部37aと小径部37bの経差部を通じて上記押しボルト10の動きが伝達され、押しボルト10と同方向に移動するようになる。
【0022】
そして、可動体8の押圧傾斜面23L、23Rは対向して配置されているサイドハウジング7L、7Rの案内傾斜面27L、27R間に進入し、上記案内傾斜面27L、27Rを左右外方に均一にバランス良く押し広げるように作用する。
又、上記サイドハウジング7L、7Rの外方への移動に伴なって、係止爪13は係合溝部5内に進入し、係合突部5aに係止される。
【0023】
この状態から押しボルト10を更に締付け方向に回転させると、押しボルト10の軸部10bの端面がサイドハウジング7L、7Rのそれぞれの度当て部33に当接し、それ以上の連結コーナ部4に向けての移動は規制される。
したがって、この状態から押しボルト10を更に締付け方向に回転させた場合には左右のサイドハウジング7L、7Rを斜め上方に引き上げる力が作用するようになって、係止爪13の係合突部5aに対する係止状態が強固になり、連結固定状態が形成される。
【0024】
このように本発明では基本的に左右一対のサイドハウジング7L、7Rと、可動体8と、押しボルト10とを備えるだけの少ない部品点数で直交配置させた2本の構造用枠材3、3を強固に連結することが可能になる。又、可動体8の上下の翼板部9A、9Bに形成されている押圧傾斜面23L、23Rが楔様に作用して対向する案内傾斜面27L、27R間に進入するため、押しボルト10のみの締め付けによって係止爪13の係合突部5aに対する係止状態が一層、強固になる。更に、直交する2辺15、17に設けた案内傾斜面27L、27Rによる案内作用によって、これらの案内傾斜面27L、27Rに当接する押圧傾斜面23L、23Rを介して上記可動体8は連結コーナ部4に引き寄せられるように移動し、直交配置された2本の構造用枠材3、3連結を一層確実にする。
【0025】
次に、図11を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。すなわち、本発明の構造用枠材の連結具1は、図11に示すように構造用枠材3に他部材65を連結固定する目的で使用することも可能である。
この場合には、図11に示す構造用枠材の連結具1Aのように、係止爪13と、押圧傾斜面23と、案内傾斜面27とは、一辺15に対応した1組のみが設けられていればよく、押しボルト10の作用方向と、可動体8の移動方向を当該構造用枠材3と直交させる方向に設定することが可能である。
【0026】
因みに、図11に示す実施の形態の場合には、左右のサイドハウジング7L、7Rに対して他部材65の一例である締付け装置等を吊時するための吊時リング67が設けられている。
そして、上記のような他の実施の形態を採用した場合にも、上記図1〜10に示す実施の形態と同様の作用、効果が奏せられる。
【0027】
尚、本発明は上述した第1、第2の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、前記第1、第2の実施の形態では可動体8の押圧傾斜面23が左右のサイドハウジング7L、7Rの案内傾斜面27L、27R間に進入することによって左右のサイドハウジング7L、7Rが同時に左右外方に向けて移動する構成であったが、左右のサイドハウジング7L、7Rの一方のみが左右何れかの外方に向けて移動する構成であってもよい。そして、この場合には固定側のサイドハウジング7にナット部29を一体に設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、一様の横断面形状を有する2本の構造用枠材を互いに直交させた姿勢で連結固定する場合、上記構造用枠材に他部材を連結固定する場合に使用される構造用枠材の連結具の製造、使用分野等で利用でき、特に簡単な構造で強固な連結固定を図りたい場合に利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、直交配置された構造用枠材の連結コーナ部に構造用枠材の連結具を連結固定した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、直交配置された構造用枠材の連結コーナ部に構造用枠材の連結具を連結固定した状態を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、直交配置された構造用枠材の連結コーナ部に構造用枠材の連結具を連結固定した状態を示す正面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、直交配置された構造用枠材の連結コーナ部に構造用枠材の連結具を連結固定した状態を示す平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、構造用枠材の連結具を分解した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、構造用枠材の連結具を分解した状態を示す正面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、可動体とサイドハウジングの連結固定時の状態を示す側面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図7中のVIII−VIII断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、構造用枠材の連結具の作動態様を示す連結解除時の側面図(a)と、連結固定時の側面図(b)である。
【図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、構造用枠材の連結具の作動態様を示す連結解除時の正面図(a)と、連結固定時の正面図(b)である。
【図11】本発明の第2の実施の形態を示す図で、構造用枠材の連結具を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 (構造用枠材の)連結具
3 構造用枠材
3a 外側面
3b 一端面
4 連結コーナ部
5 係合溝部
5a 係合突部
7 サイドハウジング
8 可動体
8a 可動本体部
9 翼板部
10 押しボルト
10a 頭部
10b 軸部
11 可動空間
13 係止爪
15 辺
17 辺
23 押圧傾斜面
25 凹陥部
27 案内傾斜面
29 ナット部
31 ナット収容凹部
33 度当て部
35 湾曲案内面
37 セット穴
37a 大径部
37b 小径部
39 外周面
41 切欠き部
43 上部
44 下部
45 連結側端面
47 ナット
59 締付け工具
61 係合凹部
65 他部材
67 吊時リング
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一様の横断面形状を有し、外側面に長手方向に延びる複数本の係合溝部が形成された2本の構造用枠材を使用して、一方の構造用枠材の一端面を他方の構造用枠材の外側面にあてがった直交させた状態で上記2本の構造用枠材を連結固定し得る構造用枠材の連結具において、
上記構造用枠材の連結具は、
上記直交配置された2本の構造用枠材における直交する2本の係合溝部内に同時に挿入され、該係合溝部の内側に張り出した係合突部に係止される2つの係止爪を直交する2辺に備えた左右一対のサイドハウジングと、
上記左右一対のサイドハウジングの内部に形成された可動空間内に収容され、上記左右一対のサイドハウジングの内壁面に形成されている案内傾斜面に当接する押圧傾斜面を備えた可動体と、
上記サイドハウジングに対して設けられるナット部に螺合することによって上記押圧傾斜面を対向する案内傾斜面間に進入させてサイドハウジングを押し広げることによって上記係止爪を構造用枠材の係合突部に係止させる連結固定位置と、上記押圧傾斜面を対向する案内傾斜面間から退出させて可動空間内に位置させる連結解除位置との間で上記可動体を移動させる押しボルトと、
を具備していることを特徴とする構造用枠材の連結具。
【請求項2】
請求項1に記載の構造用枠材の連結具において、
上記案内傾斜面と押圧傾斜面のそれぞれの傾斜角度は略同一角度に設定されていることを特徴とする構造用枠材の連結具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の構造用枠材の連結具において、
上記案内傾斜面と押圧傾斜面の少なくとも何れか一方は、上記係合溝に向かって直交する方向に傾斜していると共に上記係合溝にそって平行な方向にも傾斜して設けられていることを特徴とする構造用枠材の連結具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の構造用枠材の連結具において、
上記可動体には上記押しボルトを受け入れるセット穴が刻設されたスリーブ状の可動本体部が設けられており、該可動体本体部の連結側端面と上記ナット部との間に上記可動体を連結解除方向に付勢するリターンスプリングが設けられていることを特徴とする構造用枠材の連結具。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の構造用枠材の連結具において、
上記サイドハウジングには上記可動体が連結固定位置に移動した時に上記押しボルトの軸部の端面が当接する度当て部が設けられていることを特徴とする構造用枠材の連結具。
【請求項6】
一様の横断面形状を有し、外側面に長手方向に延びる複数本の係合溝部が形成された構造用枠材に他部材を連結固定し得る構造用枠材の連結具において、
上記構造用枠材の連結具は、
上記係合溝部内に挿入され、該係合溝部の内側に張り出した係合突部に係止される係止爪を備えた左右一対のサイドハウジングと、
上記左右一対のサイドハウジングの内部に形成された可動空間内に収容され、上記左右一対のサイドハウジングの内壁面に形成されている案内傾斜面に当接する押圧傾斜面を備えた可動体と、
上記サイドハウジングに対して設けられるナット部に螺合することによって上記押圧傾斜面を対向する案内傾斜面間に進入させてサイドハウジングを押し広げることによって上記係止爪を構造用枠材の係合突部に係止させる連結固定位置と、上記押圧傾斜面を対向する案内傾斜面間から退出させて可動空間内に位置させる連結解除位置との間で上記可動体を可動させる押しボルトと、
を具備していることを特徴とする構造用枠材の連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−71296(P2010−71296A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235834(P2008−235834)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(595034204)SUS株式会社 (40)
【Fターム(参考)】