説明

模様付ホログラム生地、その製造方法およびその使用方法

【課題】本発明は、ホログラムフィルムの凹凸面を利用した複製ホログラムの装飾効果とその効果を積極的に排除した繰り返し模様または意味のある幾何学形状等を同時に複製することができるホログラム生地を提供する。
【解決手段】本発明によるホログラム生地は、紫外線または電子線に透明な長尺の透明ホログラム基板1と、前記ホログラム基板1の表面に形成されホログラムの再現に適した透明凹凸薄膜層2と、前記透明凹凸薄膜層2の上に局部的に形成された幾何学模様形成部分3から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模様(無ホログラム模様)付ホログラム生地、その製造方法およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムを、たとえばクレジットカード等に用いれば、偽造防止に寄与でき、本の表紙や容器のラベル等に用いれば、装飾的な外観が得られる。そのためにホログラムを用いた本の表紙やラベルが広く実施されている。またそれらのホログラムの再現(大量複製)のための発明が数多く(以下の特許文献1〜5)提案されている。
【特許文献1】特開昭60−254174号公報
【特許文献2】特開平4−153686号公報
【特許文献3】特公平6−85103号公報
【特許文献4】特開平5−232853号公報
【特許文献5】特開平8−36352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、複製ホログラムを印刷物表面に施す場合、前述の特許文献の多くに開示されているように、既製のホログラムフィルムを用いて、その凹凸模様をそのまま、印刷物の上面に塗工した外部刺激硬化形樹脂に転写複製をするものである。
またこの技術と製品の普及にしたがって、ホログラム再生の刺激が大同小異で与える視覚的な効果も陳腐化している。
そのために既製のホログラムと格段に異なる装飾感を与える独自のホログラム原版を作成する試みもなされたが、開発費用に見合う効果が得られていない。
【0004】
本発明の一般的な目的は、前述したように、印刷物表面への加飾方法の一つである、前述のホログラムフィルムの凹凸面を利用した複製ホログラムの装飾効果とその効果を積極的に排除した繰り返し模様または意味のある幾何学形状等を同時に複製することができる技術を提供することにある。
本発明の第1の目的は、ホログラム層に覆われていない幾何学模様部分を備えたホログラム生地を提供することにある。
本発明の第2の目的は、前記ホログラム生地の製造方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、前記ホログラム生地の使用方法(例えばラベル等の表面加工用の原版としての使用方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の目的を達成するために、本発明による請求項1記載の模様付ホログラム生地は、紫外線または電子線に透明な長尺の透明ホログラム基板と、
前記ホログラム基板の表面に形成されホログラムの再現に適した透明凹凸薄膜層と、
前記透明凹凸薄膜層の上に局部的に形成された樹脂パターンよりなる模様形成部分と、から構成されている。
また、本発明による請求項2記載の模様付ホログラム生地は、請求項1記載の模様付ホログラム生地において、前記模様形成部分は、周知図形の規則的な繰り返し模様、予想される特定の背景印刷と関連する幾何学模様とするものである。
本発明の第2の目的を達成するために、本発明による請求項3記載の方法は、
紫外線または電子線に透明な長尺のホログラム基板を準備するステップと、
前記ホログラム基板を誘導し、第1胴を介して透明凹凸薄膜層形成用の樹脂を塗布するステップと、
前記塗布された樹脂を乾燥させる第1の乾燥ステップと、
前記透明凹凸薄膜層の表面にホログラム再生を遮断する樹脂パターンよりなる模様形成部分を、模様を担持する第2胴を介して塗布する模様樹脂塗布ステップと、
前記塗布された樹脂を乾燥させる第2の乾燥ステップと、から構成されている。
【0006】
本発明の第3の目的を達成するために、本発明による請求項4記載の方法は、
請求項1記載の模様付ホログラム生地を使用する方法の発明において、
装飾対象の基板を準備するステップと、
前記装飾対象の基板の表面に紫外線または電子線硬化性の樹脂を塗布する樹脂塗布ステップと、
前記模様付ホログラム生地の樹脂パターンよりなる模様形成部分を前記樹脂塗布面に圧接して模様部分の樹脂を排除するとともに透明凹凸薄膜層を前記樹脂表面に密着させる圧接ステップと、
前記圧接状態で、紫外線または電子線を前記生地の基板側から照射して前記樹脂を硬化させる樹脂硬化ステップと、
前記生地を剥離する剥離ステップと、から構成されている。
また、本発明による請求項5記載の方法は、請求項4記載の方法において、
前記装飾対象の基板の表面は印刷が施された面とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明による請求項1記載の模様付ホログラム生地は、既成のホログラム原版を利用して複製された既存の長尺の透明ホログラム基板を利用して生地を大量に作成することができる。表面の幾何学模様も種々選択が可能である。
これを利用して、後述するように印刷物の表面の斬新な装飾を提供できる。またこの生地は繰り返し再利用が可能であるから、廃棄物の発生を抑止できる。
本発明による請求項3記載の方法によれば、前記生地を既存の技術の組み合わせにより達成でき、大量に前記生地を生産できる。
さらに前記模様付ホログラム生地を使用する方法の発明によれば、多量の印刷物等に斬新な装飾を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面等を参照して本発明による模様付ホログラム生地とその製造方法の実施態様を説明する。
図1は、本発明による模様付ホログラム生地の製造工程の前段を説明するための概略図、図2は、同製造工程の後段を説明するための概略図である。図3は、前記製造工程を説明するための各工程における生地の拡大断面図である。
【0009】
本発明による生地のホログラム基板1(図3(A)に拡大断面図を示す)の材料は、紫外線または電子線に透明な樹脂である。この基板1は長尺であり、視覚的にも透明であり表面にホログラムを担持している。この基板1は前述した特許文献に記載されているいずれかの方法で透明フィルム面上にホログラム情報を凹凸の変形で記録したものである。
この基板1から製造された本発明による生地は、図3(C)に示されており、前記ホログラム基板1の表面にホログラムの再現に適した透明凹凸薄膜層2が形成されている(図3(B)参照)。前記透明凹凸薄膜層2の上には樹脂パターンからなる模様形成部分3が局部的に形成されている。前記模様形成部分3は、幾何学模様として装飾を目的として形成されており、前記幾何学模様は、周知図形の規則的な繰り返し模様、予想される特定の背景印刷と関連する幾何学模様である。
【0010】
前記生地の製造工程は次のとおりであり、主として図1,図2を参照して説明する。
(ホログラム基板を準備するステップ)
基板1は紫外線または電子線に透明な樹脂基板であって、前述した多数の特許文献に示されているように、ホログラム原版を利用して容易に準備できる。
(透明凹凸薄膜層形成用の樹脂を塗布するステップ)
前記ホログラム基板1は長尺の透明フィルムであって、図示しないリール等に保持されており、図1に示すように左側から供給され、第1胴12と圧胴14間にローラ等により誘導される。
第1胴12は、凹版であって、透明樹脂よりなる塗布材料16が表面に塗布されており、ブレード状のドクタ13で均一化され、基板1の下面に塗布される。基板1に塗布材料16が塗布され、透明凹凸薄膜層2が形成された状態を図1の中央部と図3(B)にそれぞれ拡大して示してある。
(第1の乾燥ステップ)
きわめて薄い透明凹凸薄膜層2が塗布された基板1は、ローラ等により乾燥器15に導かれて乾燥させられ、図3(B)に示すように、基板1の表面とほぼ同一の形状の透明凹凸層2が形成される。この基板は、図示しないローラ等を介して図2の左側に導かれる。
【0011】
(模様樹脂塗布ステップ)
透明凹凸薄膜層2が形成された基板1は、図2に示すように第2胴22と圧胴24間にローラ等により誘導される。
第2胴22は、凹版であって、表面には円形の凹部が多数設けられている。
塗布材料26が表面に塗布され、ブレード状のドクタ23で前記凹部に塗布材料26が均一に保持され、基板1の下面の透明凹凸薄膜層2の表面に部分的に塗布される(図2右側の拡大図参照)。
(第2の乾燥ステップ)
前記基板1は、第2の乾燥器25に搬送され、前記塗布された樹脂が乾燥固化され表面に連続する多数の凸部からなる模様形成部分3が設けられる(図3(C)参照)。
【実施例】
【0012】
前述の実施例において用いた主要な材料は、次のとおりである。
ホログラム基板1 既製ホログラムフィルム:ポリプロピレン(OPP)
厚さ 20μ
透明凹凸薄膜層2 特殊下地:カチオン重合樹脂のモノマーと光開始剤(UV硬化剤)
模様形成部分3 特殊樹脂:シリコン系樹脂
厚さ 数μ
なお、ホログラム基板1は、50μ程度まで厚くしてもよい。
【0013】
次に、図4を参照して前述のようにして製造された模様付ホログラム生地の使用方法を説明する。図4は、本発明による生地の使用方法を説明するための各工程における生地と複製品との関係を示す拡大断面図である。
(装飾対象の基板を準備するステップ)
装飾対象の基板5は、たとえば印刷済のラベルとか書物の表紙等である。
(樹脂塗布ステップ)
前記基板5の上に、紫外線または電子線硬化性の樹脂7を塗布する。その状態が図4(A)に示されている。この塗布された樹脂は、流動性をもっている。
(圧接ステップ)
前記模様付ホログラム生地(1,2,3)の樹脂パターンからなる模様形成部分3を前記樹脂7の塗布面に圧接する。これにより模様形成部分3に対応する模様となる部分(図4(C)の8の部分)の樹脂を排除する。透明凹凸薄膜層2を残存樹脂7表面に密着させる。
(樹脂硬化ステップ)
前記圧接状態で、紫外線または電子線を前記生地の基板1側から照射して前記樹脂7を硬化させる。その状態が図4(B)に示されている。
(剥離ステップ)
前記樹脂硬化ステップで樹脂7が硬化させられた後、模様付ホログラム生地(1,2,3)を剥離する。硬化された樹脂を7hで示してある。その状態が図4(C)に示されている。硬化された樹脂7hの表面にはホログラムが複製されている。装飾対象の基板5の露出表面8には、ホログラムが複製されないから、その部分はホログラムの再現能力がなく、通常の模様として視認される。なお、剥離された生地は、繰り返し使用することができる。
【0014】
以上説明した例は、断面形状のみを示してあるが、前記断面は円形の繰り返し模様を想定したものである。複製品は多数の円形のホログラム再生能力のない部分とホログラム再生部分をもつことになる。この模様の部分は、複製品の提供者の固有の模様にしたり、複製品の用途とか下地の印刷に関連して種々変更することができる。
【0015】
図5(A)に、特殊樹脂塗工(生地の模様部分3)による星型の柄表現部とホログラムフィルム柄表現部とを備える複製品の平面図を示す。図5(B)は、前記複製品の詳細を示す拡大斜視図である。図5(B)において7hはホログラムフィルム柄表現部であり、8は特殊樹脂塗工での柄表現部を示す。基板5の表面に印刷を施しておけば、7hの部分はホログラムの影響を受けた表示部となり、8には印刷表面が直接的に表示される。
【産業上の利用可能性】
【0016】
従来は印刷物の上面に塗工した外部刺激硬化形樹脂(UV,EB効果樹脂)に転写複製をするのみであったが、既製のホログラムでなくオリジナルを作成する場合、コスト面等でのリスクを負うことになる。
本発明によれば、既製のホログラムフィルムを利用して、そのフィルムに簡易に任意な柄を追加表現できる。さらに本発明は、特徴のあるホログラムフィルムを容易に生産することができる。したがって、印刷産業の各分野で広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による模様付ホログラム生地の製造工程の前段を説明するための概略図である。
【図2】本発明による模様付ホログラム生地の製造工程の後段を説明するための概略図である。
【図3】前記製造工程を説明するための各工程における生地の拡大断面図である。
【図4】本発明による生地の使用方法を説明するための各工程における生地と複製品との関係を示す拡大断面図である。
【図5】本発明による生地を利用して製造した装飾表面を有する基材を示す平面図と拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ホログラム基板
2 透明凹凸薄膜層
3 模様形成部分
5 基材(印刷物等)
7 UV(またはEB)硬化性樹脂
7h 硬化した樹脂
8 基材の表面
12 第1胴
22 第2胴
13(23)ドクタ
14(24)圧胴
15(25)乾燥器
16(26)塗布材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線または電子線に透明な長尺の透明ホログラム基板と、
前記ホログラム基板の表面に形成されホログラムの再現に適した透明凹凸薄膜層と、
前記透明凹凸薄膜層の上に局部的に形成された樹脂パターンよりなる模様形成部分と、
から構成した模様付ホログラム生地。
【請求項2】
前記模様形成部分は、周知図形の規則的な繰り返し模様、予想される特定の背景印刷と関連する幾何学模様である請求項1記載の模様付ホログラム生地。
【請求項3】
紫外線または電子線に透明な長尺のホログラム基板を準備するステップと、
前記ホログラム基板を誘導し、第1胴を介して透明凹凸薄膜層形成用の樹脂を塗布するステップと、
前記塗布された樹脂を乾燥させる第1の乾燥ステップと、
前記透明凹凸薄膜層の表面にホログラム再生を遮断する樹脂パターンよりなる模様形成部分を、模様を担持する第2胴を介して塗布する模様樹脂塗布ステップと、
前記塗布された樹脂を乾燥させる第2の乾燥ステップと、
から構成した模様付ホログラム生地の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の模様付ホログラム生地を使用する方法の発明において、
装飾対象の基板を準備するステップと、
前記装飾対象の基板の表面に紫外線または電子線硬化性の樹脂を塗布する樹脂塗布ステップと、
前記模様付ホログラム生地の樹脂パターンよりなる模様形成部分を前記樹脂塗布面に圧接して模様部分の樹脂を排除するとともに透明凹凸薄膜層を前記樹脂表面に密着させる圧接ステップと、
前記圧接状態で、紫外線または電子線を前記生地の基板側から照射して前記樹脂を硬化させる樹脂硬化ステップと、
前記生地を剥離する剥離ステップと、
から構成した模様付ホログラム生地を使用する方法。
【請求項5】
前記装飾対象の基板の表面は印刷が施された面である請求項4記載の模様付ホログラム生地を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−286323(P2007−286323A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113078(P2006−113078)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000239563)福島印刷工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】