説明

横葺き外装材の施工方法及び横葺き外装構造の施工方法

【課題】 長手方向の接続を容易且つ確実に実施することができる横葺き外装材の施工方法及び横葺き外装構造の施工方法を提供する。
【解決手段】 本施工方法は、長手方向の一方の端縁に、1以上の凸状部分14Aを有する平面視凹凸状の接続部14を、一方の端縁に前記凸状部分14Aを差し込み可能な凹状部分15B又は挿入孔15Cを有する接続受部15を、一方の凸状部分4Aと他方の凹状部分15B又は挿入孔15Cとが短手方向に同位状になるように設けた横葺き外装材1を、その接続部14の最軒側の凸状部分14Aの軒縁を、長手方向に隣接する横葺き外装材1の接続受部15の凹状部分15Bの軒縁又は挿入孔15Cの軒縁に差し込む第一の工程と、差し込み部分を支点Fとして横葺き外装材1を回動させる第二の工程と、最軒側の凸状部分14Aの軒縁以外を、凹状部分15B又は挿入孔15Cに差し込んで接続する第三の工程と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向の接続を容易且つ確実に実施することができる横葺き外装材の施工方法及び横葺き外装構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来横葺き外装材の接続構造としては、幾つかの構造が提案されている(例えば特許文献1,2など)。
特許文献1には、外装材の一方の側縁に、別体の水切り片をかしめ嵌合させて一体化させ、側縁と水切り片の間に、隣接する外装材の他方の側縁の突片を差し込んで接続するものであるが、施工後の外装材の接続部分が段差違いに形成され、美観上(意匠上)好ましくないものであった。
【0003】
また、特許文献2には、施工後の外装材の接続部分が略平坦状に形成されるものの、一方の側縁に形成した上向き折返し縁と、他方の側縁に形成した下向き折返し縁を係合させて接続する構造が開示されているが、その組み合わせ施工に際しては、一方の外装材を軒側から棟側へスライドさせて接続するため、外装材(金属素材)に擦りキズがつき、腐食の原因となる恐れがあった。また、スライドする作業は、長尺な外装材全体を一斉に棟側へスライドさせる必要があるため、作業に多人数を要するものであった。
さらに、この接続法は、外装材を棟側へスライドさせただけでは、挿入が斜めであったり全体がずれている場合もあり、上向き折返し縁の端部を下向き折返し縁の奥に当接させるように外装材を桁行き方向に引っ張って位置決めする必要があるため、実質的に棟側へと桁行き方向への2方向へのスライドによる作業が必要であった。
また、使用する外装材は、短手方向及び長手方向の両方向の端縁に折り返し状の加工部を形成した構造であるため、成形スピードの高速化が図れず、結果として製造コストの上昇が避けられないものである。
【0004】
また、特許文献3には、長さ方向の端部を櫛歯状に切り欠いた後、プレス加工して成形する屋根板が開示されているが、より詳しくは、長さ方向の端縁に突出片状の交差部材(24a,24b)を多数形成し、各交差部材(24a,24b)は端部から裏面側に延びる折曲部(25)と、その下端から外方に延びる一定幅の平行部(26)と、その先端から下方へ延びる傾斜部(27)とからなる。そして、その組み合わせ施工に際しては、各交差部材(24a,24b)の加工先端が変形又は破損しないように屋根板全体を下地から浮かせた状態で、桁行き方向にスライドさせて突き合わせるように接続する必要があり、前記特許文献2と同様の問題を生じていた。
また、前述のように交差部材(24a,24b)の先端が下方へ延びるような形状では、先にプレス加工を行うと、その加工先端がロール成形にて変形してしまう。また、上述のようなプレス成形は極めて面倒であった。
【特許文献1】実開平7−35624号公報
【特許文献2】特開2000−120224公報
【特許文献3】特開平10−317597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、長手方向の接続を容易且つ確実に実施することができる横葺き外装材の施工方法及び横葺き外装構造の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、短手方向の端縁に重合成形部を形成した横葺き外装材の施工方法であって、前記横葺き外装材は、長手方向の一方の端縁に、1以上の凸状部分を有する平面視凹凸状の接続部を、一方の端縁に前記凸状部分を差し込み可能な凹状部分又は挿入孔を有する接続受部を、一方の凸状部分と他方の凹状部分又は挿入孔とが短手方向に同位状になるように設けてなり、横葺き外装材の接続部の最軒側の凸状部分の軒縁を、長手方向に隣接する横葺き外装材の接続受部の凹状部分の軒縁又は挿入孔の軒縁に差し込む第一の工程と、差し込み部分を支点として横葺き外装材を回動させる第二の工程と、最軒側の凸状部分の軒縁以外を、凹状部分又は挿入孔に差し込んで接続する第三の工程と、からなることを特徴とする横葺き外装材の施工方法に関するものである。
尚、短手方向の端縁とは、長手方向に沿う側縁であり、長手方向の端縁とは、短手方向に沿う側縁である。また、凸状部分を差し込むとは、凹状部分であれば凸状部分をその裏面側に位置させることを意味し、挿入孔であれば凸状部分を挿入してその裏面側に位置させることを意味する。
【0007】
また、本発明は、一定幅で所定長さの金属材を成形材料とし、長手方向の両端縁にブランク加工を施して一方の端縁に1以上の凸状部分を有する平面視凹凸状の接続部を、他方の端縁に前記凸状部分が差し込み可能な凹状部分又は挿入孔を有する接続受部を、接続部の凸状部分と接続受部の凹状部分又は挿入孔とが短手方向に同位状になるように設け、前記接続受部を成形後端として、短手方向の端縁に重合成形部をロール成形により形成して横葺き外装材を作製した後、前記の方法にて長手方向に隣接する横葺き外装材と接続することを特徴とする横葺き外装構造の施工方法をも提案するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の横葺き外装材の施工(接続)方法は、長手方向の接続を容易且つ確実に実施することができ、施工後の外装材の接続部分が略平坦状に施工できる。例えば前述の従来の方法のように、一方の外装材を軒側から棟側へスライドさせて接続したり、桁行き方向にスライドさせて接続すると、外装材(金属素材)に擦りキズがつき、腐食の原因となる恐れがあったが、本発明では、最軒端の差し込み部分を支点として横葺き外装材を回動させるので、不用意な擦りキズがつく可能性は低い。
【0009】
また、接続部及び接続受部は、2段以上の段部を有する場合、凸状部分の適正箇所への差し込みが容易になり作業性が向上する。さらに、段部を設けることにより、接続構造において他方の接続受部の凹状部分又は挿入孔の裏面に沿わせる部分が平行状となり、近接もしくは当接する状態となり、凸状部分の基端に歪みが生ずることがなく、外装(接続)面はほぼ平坦になる。また、凹凸のかみ合いが適正に行われるので、作業性が向上し、しかも切断面が露出せず意匠性に優れた接続構造を形成できる。
【0010】
さらに、本発明の横葺き外装構造の施工方法は、横葺き外装構造の主構成材である横葺き外装材をブランク加工及びロール成形によって生産するので、端部のプレス成型を基本的に必要としないため、ロール成形のスピードを高速化でき、製造コストを低減でき、しかも従来の外装材の接続のようにカバー、端部保持部材(ジョイナー)、捨板(排水板)等の継手部材の全てを必要とするものではなく、カバー、端部保持部材(ジョイナー)等については必要としないので、施工のための部材点数を低減でき、全体的な施工コストを大幅に低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
短手方向の端縁にロール成形により重合成形部を形成し、ブランク加工により、長手方向の一方の端縁には1以上の凸状部分を有する平面視凹凸状の接続部を、他方の端縁には前記凸状部分が差し込み可能な凹状部分又は挿入孔を有する接続受部を設け、しかも接続部の凸状部分と接続受部の凹状部分又は挿入孔とが短手方向に同位状になるように設けた横葺き外装材を、最軒端の差し込み部分を支点として外装材を回動させ、長手方向に接続する。
【実施例1】
【0012】
本発明の横葺き外装材(以下、単に外装材という)の施工方法は、前述のように長手方向の一方の端縁に、1以上の凸状部分14Aを有する平面視凹凸状の接続部14を、一方の端縁に前記凸状部分14Aが差し込み可能な凹状部分15B又は挿入孔15Cを有する接続受部15を、一方の凸状部分14Aと他方の凹状部分15B又は挿入孔15Cとが短手方向に同位状になるように設けた外装材1を、最軒端の差し込み部分を支点Fとして外装材1を回動させ、長手方向に接続する方法である。
尚、図示実施例では、短手方向とは水流れ方向(軒棟方向)を指し、長手方向とは左右方向(桁行き方向)を指す。
【0013】
図1,2に示す実施例では、短手(軒棟)方向の端縁に形成される重合成形部とは、面板部11の軒端に設けられる軒側成形部12、面板部11の棟端に設けられる棟側成形部13を指す。
本発明における重合成形部は、係合又は嵌合により接続するものであれば特にその形状等について限定するものではなく、さらに詳しくは、その接続状態において一部が重合状に組み合わされて係合又は嵌合されるものである。そのため、軒側成形部12も棟側成形部13もそれに準ずる。
図示実施例の軒側成形部12は、面板部11の軒縁を下方へ略鉛直状に曲げ成形した折り下げ片121と、その下端を棟側へ曲げ成形して略水平状に延在させ、さらにその先端を裏面側へ折り返した水平片122とからなる構成とした。
また、棟側成形部13は、面板部11の端縁を表面側へ折り返し状に曲げ成形して延在した軒向き片131と、その軒端を棟側へ折り返し状に曲げ成形して延在させ、その上端を緩く上方へ折り曲げた棟向き片132とからなる構成とした。
【0014】
本発明における接続部14は、前述のように1以上の凸状部分14Aを有する平面視凹凸状であればよく、特にその形状等について限定するものではない。また、接続受部15は、前述のように前記凸状部分14Aが差し込み可能な凹状部分15B又は挿入孔15Cを有するものであればよく(両方を有するものでもよい)、特にその形状等について限定するものではない。これら接続部14及び接続受部15は、外装材1の長手方向の端縁にブランク加工によって形成することが望ましいが、プレス成形で形成してもよい。
図示実施例では、ブランク加工により、長手(桁行き)方向の一方(図面左側)の接続部14には、3つの略矩形状の凸状部分14Aと2つの凹状部分が形成され、他方(図面右側)の接続受部15には、2つの略矩形状の凸状部分15Aと3つの凹状部分15Bが形成される場合であり、凸状部分14Aと凹状部分15B、凹状部分14Bと凸状部分15Aとは、それぞれ短手方向に同位状に設けられている。また、各凸状部分14A,15Aは段部16を介して設けられている。そのため、各凸状部分14A,15Aは、面板部11に対して段部16分だけ裏面側に位置する略平坦状である。さらに、これら接続部14及び接続受部15では、軒側成形部12の水平片122が欠除され、棟側成形部13の棟向き片132が欠除される構成である。即ち長手(桁行き)方向の両端縁の軒側成形部12、棟側成形部13の折り返し部分となる部位が欠除する構成である。
尚、上記図示実施例の説明においては、図面左側の端部を一方側及び接続部14と説明し、図面右側の端部を他方側及び接続受部15と説明したが、この図1,2の実施例、或いは後述する図4や図5の各実施例のように、外装材1の両端縁に凸状部分及び凹状部分が形成される態様においては、何れの端部を接続部、接続受部としてもよく、説明上、便宜的に区別しているに過ぎない。
【0015】
以下に、図示実施例の外装材1を作成する手順を示す。
まず、外装材1の金属材料素材としては、代表的には概ね0.4〜1.6mm程度の溶融亜鉛メッキ鋼板やガルバリウム鋼板等の防錆処理鋼板、特殊鋼、非鉄金属、ステンレス鋼板、耐候性鋼板、銅板、アルミニウム合金板、鉛板、亜鉛板、チタニウム板などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは殆ど長尺なコイル状形態で供給される。また、これら各種の長尺なコイル状の金属材料の裏面に、結露防止、防音、防火対策上の理由により、必要に応じてポリエチレンフォーム、グラスウールシート等の裏貼り材を添装してもよい。
上記各種の長尺なコイル状の金属材料を定尺切断する等して、一定幅で所定長さの金属材を作成し、これを成形材料とする。
この成形材料に、長手方向の両端縁にブランク加工を施して前記構成の接続部14、接続受部15が形成されるようにする。尚、これらのブランク加工は、各端縁それぞれに行うようにしてもよいし、接続部14,15は、一方の凹状部分と他方の凸状部分とが短手方向に同位状になるように設けるので、一度のジグザグ状の切断にて形成するようにしてもよい。
【0016】
次に、前記ブランク加工を施された成形材料を、ロール成形機にかけるが、その際、図面上に白矢印で示した方向に成形機にかける。ロール成形機では、図示する二点鎖線にて折り曲げ加工が施される。そして、面板部11の軒端縁に前記構成の軒側成形部12が、棟端縁に前記構成の棟側成形部13がロール成形により形成される。
【0017】
上述の手順にて製造される外装材1は、ブランク加工及びロール成形によって生産されるので、長手方向の端縁のプレス成型を基本的には必要としないため、ロール成形のスピードを高速化でき、製造コストを低減できる。尚、前記段部16等はプレス成型にて形成する場合もある。
【0018】
このような外装材1を長手方向に接続する方法について説明する。
図2(a)に示すように、既に左側に配された外装材1の右端の接続受部15に、右側に配する外装材1の左端の接続部14を接続するに際し、まず、第一の工程として、右側の外装材1の接続部14の最軒側の凸状部分14Aの軒縁を、左側の外装材1の接続受部15の最軒側の凹状部分15Bの軒縁に差し込む。より詳しくは、左側の外装材1の軒棟方向に配された接続受部15に対し、右側の外装材1を、接続部14が傾斜状になるように臨ませ、凸状部分14Aを凹状部分15Bに完全に差し込むのではなく、その軒縁のみを差し込むようにする。
次に、第二の工程として、第一の工程で差し込んだ部分を支点Fとして右側の外装材1を反時計回りに回動させる。その際、右側の外装材1は、凸状部分14Aが略平坦状であるため下地に載置した状態で回動させればよいので、作業に多人数を要することなく容易に実施できる。
そして、第三の工程として、最軒側の凸状部分14Aの軒縁以外を、凹状部分15Bに差し込んで接続する。尚、この実施例では、接続部14及び接続受部15のそれぞれに凸状部分14A,15A、凹状部分14B,15Bを設けたので、各凸状部分14A,15Aを各凹状部分15B,14Bの裏面側へ沿わせるように差し込んで接続し、図2(b)に示すような略平坦状の外装面を施工する。
【0019】
短手(軒棟)方向に隣接する外装材1,1を接続する場合は、従来の横葺き外装材と全く同様であり、図2(c)に示すように、軒棟方向に隣接する外装材1,1の軒側成形部12と棟側成形部13を係合して接続し、棟側成形部13の棟向き片132を外装下地3に適した公知の釘やビス等の固着具(図示せず)で固定する。
この図示実施例の外装材1は、軒側から棟側へ向かって順次敷設するので、前述のような長手(桁行き)方向の接続に際してその軒側には既に外装材1が敷設されている。したがって、既に敷設された軒側の外装材1の棟側成形部13に対し、その軒側成形部12が係合するように左側の外装材1を敷設した後、前述の第一〜第三の工程により右側の外装材1を接続するが、その際、右側の外装材1は既に敷設された軒側の外装材1の棟側成形部13に対し、その軒側成形部12の右端を係合させつつ、前述のように接続部14の最軒側の凸状部分14Aの軒縁を、左側の外装材1の接続受部15の最軒側の凹状部分15Bの軒縁に差し込む。
尚、長手(桁行き)方向の接続位置は、通りを揃えてもよいが、一般的には、軒棟方向に隣り合う外装材の接続の通りと同じにならないよう1段ごとに位相させることが好ましい。
【0020】
このように本発明の外装材1の施工(接続)方法は、長手方向の接続を容易且つ確実に実施することができ、施工後の外装材の接続部分が略平坦状に施工できる。また、本発明では支点Fにて外装材1を回動させるので、擦りキズがつく可能性は低く、さらに凸状部分14Aが略平坦状であるため、回動作業を下地材に載置した状態で実施でき、凸状部分14Aの変形も生じないので、容易に実施できる。
【0021】
また、図示実施例のように凸状部分14A,15Aが段部16を介して設けられている場合、接続構造において他方の凹状部分15B,14Bの裏面に沿わせる部分が平行状となって、裏面に近接もしくは当接する状態となり、凸状部分14A,15Aの基端に歪みが生ずることがない。即ち段部16を介して設けた凸状部分14A,15Aは、段部16の分だけ他方側の面板部11よりも裏面側に位置するため、かみ合うように凸状部分14A,15Aが他方の凹状部分15B,14Bの裏面に差し込まれる
段部16がない場合は、他方側の裏面に位置する凸状部分14A,15Aは先端に向かって下降する傾斜状に配される場合もあると推察される。これに対して段部16があると、均一長さの凸状部分14A,15Aが段部16の分だけ他方側の裏面側に平行状に近接もしくは当接する状態となっている。そして、凸状部分14A,15Aの基端に歪みが生ずることがなく、外装(接続)面はほぼ平坦になり、切断面が露出せず意匠性に優れた接続構造を形成できる。また、段部16により、凹凸のかみ合いが適正に行われるので、作業性が向上する。尚、このような段部16は、1つに限定するものではなく、複数設けるようにしてもよい(複数設けた場合の効果は、後述する図5及び図6の各実施例にて説明する)。
【0022】
さらに、前記外装材1の長手(桁行き)方向の接続は、従来の外装材の接続のようにカバー、端部保持部材(ジョイナー)を必要とすることがなく、図2(b)に示すように裏面側に捨板2を配するだけで施工することができる。さらに外装材1の製造コストを低減できるので、全体的な施工コストを低く抑えることができる。
捨板2は、図3に示すように矩形状の平板部21の左右側縁を表面側へ折り返した折返し部22,22、平板部21の棟縁を表面側へ折り返した水返し部23が形成され、さらに軒縁を裏面側へ折り返し状に折曲して前記外装材1の軒側成形部12の内部に位置する軒側係合部24が設けられた構成である。
したがって、長手方向の接続部から浸入した雨水等は、この捨板2上に導かれ、下段側の外装材1の面板部11上に流下させることができる。
【0023】
図4に示す実施例では、接続部14及び接続受部15における凹凸の数は前記図1と同様であるが、面板部11に二箇所の屈曲部分111,112が設けられている。また、棟側成形部13の棟向き片132の形状が前記図1,2の実施例のものとは明らかに異なっている。それ以外の構成、並びに施工法は、前記図1,2の実施例と同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
図5に示す実施例では、ブランク加工により、長手(桁行き)方向の一方(図面左側)の接続部14には、4つの略矩形状の凸状部分14Aと3つの凹状部分が形成され、他方(図面右側)の接続受部15には、3つの略矩形状の凸状部分15Aと4つの凹状部分15Bが形成される場合であり、凸状部分14Aと凹状部分15B、凹状部分14Bと凸状部分15Aとは、それぞれ短手方向に同位状に設けられている。このように接続部14,15における凹凸の数は特に限定するものではない。
また、この実施例では、接続部14及び接続受部15が、それぞれ2段の段部16を有する構成であり、この場合、以下のような施工作業となる。尚、段部16は、面板部11側から1段目、2段目と表記する。
まず同図(a)に示すように、回動させる外装材1の最軒側の凸状部分14Aを、既に固定された左側の外装材1の最軒側の凹状部分15Bの軒縁に差し込む。この時、接続部14の軒側から2番目の凸状部分14Aの2段目の段部16の軒端は、接続受部15の最軒側の凸状部分15Aの2段目の段部16の棟端に当接している(この部分を図面では規制部分E1と記した)。そのため、凸状部分14A,15Aの2段目の段部16の先端が、互いの係合される状態を保持しながら回動することになり、凸状部分14A,15A同士の乗り越え重合も阻止され、右側の外装材1が軒側にずれたりすることがなく安定に回動させることができる。
次に、同図(b)に示される状態では、前述の接続部14の軒側から2番目の凸状部分14A及び接続受部15の最軒側の凸状部分15Aは、それぞれ対応する凹状部分15B,14Bの裏面側に既に差し込まれているが、この時点では接続部14の軒側から3番目の凸状部分14Aの2段目の段部16の軒端が接続受部15の軒側から2番目の凸状部分15Aの2段目の段部16の棟端に当接している(この部分を図面では規制部分E2と記した)。そのため、前記同図(a)の場合と同様の作用により、右側の外装材1を安定に回動させることができる。
続いて、同図(c)に示される状態では、前述の接続部14の軒側から3番目の凸状部分14A及び接続受部15の軒側から2番目の凸状部分15Aは、それぞれ対応する凹状部分15B,14Bの裏面側に既に差し込まれているが、この時点では接続部14の最棟側の凸状部分14Aの2段目の段部16の軒端が接続受部15の最棟側の凸状部分15Aの2段目の段部16の棟端に当接している(この当接部分を図面では規制部分E3と記した)。そのため、前記同図(a)及び(c)の場合と同様の作用により、右側の外装材1を安定に回動させることができる。
そして、同図(d)に示されるように、略平坦状の接続面が得られる。
このように段部16を複数設けることにより、凸状部分14A,15Aの軒側へのずれが防止され、適正箇所への差し込みが容易になり作業性が向上する。
【0025】
図6に示す実施例では、ブランク加工により、長手(桁行き)方向の一方(図面左側)の接続部14には、4つの略矩形状の凸状部分14A(そのうち2つが挿入孔15Cに挿入される挿入片であり、図面では14A’を付した)と3つの凹状部分が形成され、他方(図面右側)の接続受部15には、2つの略矩形状の挿入孔15Cと2つの凹状部分15Bが形成される場合であり、2つの凸状部分14Aと凹状部分15B、2つの挿入片である凸状部分14A’と挿入孔15Cとは、それぞれ短手方向に同位状に設けられている。
また、接続部14及び接続受部15は、それぞれ2段の段部16を有する構成であり、前記図5の実施例と同様の施工作業となる。
即ち同図(b)に示すように、回動させる外装材1の最軒側の凸状部分14Aを、既に固定された左側の外装材1の最軒側の凹状部分15Bの軒縁に差し込む。この時、接続部14の軒側から2番目の凸状部分(挿入片)14A’の2段目の段部16の軒端は、接続受部15の最軒側の挿入孔15Cの軒端に当接している(この部分を図面では規制部分E4と記した)。そのため、軒側から2番目の凸状部分(挿入片)14A’の2段目の段部16の先端が、挿入孔15Cに係止される状態を保持しながら回動することになり、右側の外装材1が軒側にずれたりすることがなく回動させることができる。
【0026】
この図6の実施例のように挿入孔15Cを形成する態様においては、接続受部15は、凸状部分としての15Aの符号を図面に付してはいないが、2つの挿入孔15Cが形成された大きな凸状部分を有する構成と見なすこともできる。このことは、例えば図5の実施例における接続受部15の3つの凸状部分15Aを一部(挿入孔15になる)を除いて横方向に連結した場合に図6の接続受部15とほぼ同一となることからも明らかである。即ち、この態様においても、前記図1,2の実施例、図4の実施例、図5の実施例と同様に長手方向の両側縁に凸状部分を形成してそれぞれかみ合わせるものに他ならない。したがって、この実施例においても、2つの挿入孔15Cが形成された大きな凸状部分は、接続部14の凹状部分14Bの裏面に差し込まれる構成である。
【0027】
尚、本発明の外装材1は、説明した構成を阻害するものでなければ公知のどのような構成を付加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
各種横葺き外装材及び外装構造に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)ブランク加工を行った成形材料を示す平面図、(b)ロール成形後の本発明に用いる横葺き外装材の一例を示す側面図、(c)その平面図である。
【図2】(a)図1(b)の横葺き外装材を長手(桁行き)方向に接続する状況を示す平面図、(b)施工された状態を示す平面図、(c)短手(軒棟)方向に接続した状態を示す側面図である。
【図3】(a)横葺き外装材と共に用いて外装構造を施工する捨板の一例を示す平面図、(b)その側面図、(c)短手(軒棟)方向の接続構造における捨板の配設状態を示す側面図である。
【図4】(a)本発明に用いる横葺き外装材の他の一例を示す平面図、(b)その横葺き外装材を長手(桁行き)方向に接続する状況を示す平面図、(c)短手(軒棟)方向に接続した状態を示す側面図である。
【図5】(a)接続部及び接続受部に段部を2つ形成した横葺き外装材を長手(桁行き)方向に接続する際、回動開始時の状態を示す平面図、(b)右側の外装材を回動させた状態を示す平面図、(c)さらに回動させた状態を示す平面図、(d)接続された状態を示す平面図である。
【図6】(a)接続部及び挿入孔を有する接続受部に段部を2つ形成した横葺き外装材の一例をを示す平面図、(b)その横葺き外装材を長手(桁行き)方向に接続する際、回動開始時の状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 (建築用金属)外装材
11 面板部
12 軒側成形部
13 棟側成形部
14 接続部
15 接続受部
14A,15A 凸状部分
14B,15B 凹状部分
15C 挿入孔
16 段部
F 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短手方向の端縁に重合成形部を形成した横葺き外装材の施工方法であって、
前記横葺き外装材は、長手方向の一方の端縁に、1以上の凸状部分を有する平面視凹凸状の接続部を、一方の端縁に前記凸状部分を差し込み可能な凹状部分又は挿入孔を有する接続受部を、一方の凸状部分と他方の凹状部分又は挿入孔とが短手方向に同位状になるように設けてなり、
横葺き外装材の接続部の最軒側の凸状部分の軒縁を、長手方向に隣接する横葺き外装材の接続受部の凹状部分の軒縁又は挿入孔の軒縁に差し込む第一の工程と、差し込み部分を支点として横葺き外装材を回動させる第二の工程と、最軒側の凸状部分の軒縁以外を、凹状部分又は挿入孔に差し込んで接続する第三の工程と、からなることを特徴とする横葺き外装材の施工方法。
【請求項2】
接続部及び接続受部は、2段以上の段部を有することを特徴とする請求項1に記載の横葺き外装材の施工方法。
【請求項3】
一定幅で所定長さの金属材を成形材料とし、長手方向の両端縁にブランク加工を施して一方の端縁に1以上の凸状部分を有する平面視凹凸状の接続部を、他方の端縁に前記凸状部分が差し込み可能な凹状部分又は挿入孔を有する接続受部を、接続部の凸状部分と接続受部の凹状部分又は挿入孔とが短手方向に同位状になるように設け、前記接続受部を成形後端として、短手方向の端縁に重合成形部をロール成形により形成して横葺き外装材を作製した後、前記請求項1又は2に記載の方法にて長手方向に隣接する横葺き外装材と接続することを特徴とする横葺き外装構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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