説明

樹脂ケースのブラケット取付構造

【課題】高精度な隙間管理を実施することなく、ブラケットと樹脂ケースとの間にガタツキが発生せず、かつ保持力を充分確保する。
【解決手段】樹脂ケース1に、該樹脂ケース1を車両に取り付けるためのブラケット5が保持されるブラケット保持部3を設ける。ブラケット保持部3は、ブラケット5の左右両側部5aが挿入される挿入溝11を備え、この挿入溝11に、ブラケット5の左右両端面5a1に向けて突出する突起部15を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ケースに、該樹脂ケースを取付対象物に取り付けるためのブラケットが保持されるブラケット保持部を設けた樹脂ケースのブラケット取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来自動車に搭載する電子機器としては、電子部品を実装した配線基板などを樹脂ケースに収容した構造のものがあり、この電子機器(樹脂ケース)を自動車の規定位置に取り付ける際には、例えば下記特許文献1に記載されているように、ブラケットを用いる場合があり、このブラケットは、樹脂ケースに設けたブラケット差込孔に差し込まれている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−284842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したブラケットを樹脂ケースの差込孔に差し込む際には、不快な異音発生原因となるガタツキが発生しないように、ブラケットと樹脂ケースの差込孔とが強固に密着してブラケットに対する差込孔の保持力を充分確保しておく必要がある。
【0005】
ところが、上記した保持力を充分確保するために、差込孔の幅寸法をブラケット幅寸法に対して小さくし過ぎると、より強固な保持力を確保できるものの、それに伴い差し込み時に必要な力が増大するので、組み付け作業性が悪化して生産性の低下を招き、場合によっては治具が必要となる場合も発生する。
【0006】
このため従来では、ガタツキが発生せず、かつ保持力を充分確保するには、これら相互間の隙間管理を高精度に確保する必要が生じ、製造コストの上昇を招いている。
【0007】
そこで、本発明は、高精度な隙間管理を実施することなく、ブラケットと樹脂ケースとの間でガタツキが発生せず、かつ保持力を充分確保することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ブラケットの左右両側部が挿入される樹脂ケースの挿入溝に、ブラケットの側端面に向けて突出する突起部を設けたので、ブラケットを樹脂ケースの挿入溝に挿入する際に、ブラケットの側端面が樹脂ケースの突起部の先端に接触し、ブラケットと樹脂ケースの挿入溝との間のガタツキを防止することができる。
【0009】
この際、樹脂ケース側の突起部の先端は、少なくともブラケットの側端面に接触していればよく、この接触によって先端が潰れ変形しても、挿入時の力は小さくて済むので、組み付け作業性が向上して生産性が向上し、治具なども不要となり、製造コストを削減することができる。また、ブラケットの側端面と挿入溝に設けた突起部との相互間の寸法については、突起部の先端が側端面に少なくとも接触していればよいので、高精度に管理する必要がなく、製造コストを削減することができる。
【0010】
また、本発明は、ブラケットを挿入溝に挿入する際に、ブラケットの先端部が突起部の傾斜面に接触するので、挿入力が軽減されて挿入作業が容易となる。
【0011】
さらに、本発明は、突起部を先細形状としているので、ブラケットを挿入溝に挿入する際に、ブラケットと突起部との接触面積を少なく抑えることができ、挿入力が軽減されて該挿入作業が容易となる。また、このとき突起部は、基端側が太くなっているので、挿入後にこの太い部位にブラケットが接触することで、ブラケットに対する保持力が高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係わる樹脂ケースのブラケット取付構造を示す分解斜視図、図2は、図1に対し、樹脂ケース1のブラケット保持部3に、金属製で板状のブラケット5を保持させた状態を示す斜視図である。ここでの樹脂ケース1は、電子部品を実装した配線基板などを収容しており、取付対象物としての例えば自動車などの車両にブラケット5を介して取り付けるものである。
【0014】
樹脂ケース1の図1中で上面に位置する一側面7に設けたブラケット保持部3は、図1のA−A矢視断面図である図3(a)に示すように、一側面7上に図3(a)中で左右両側に一対のガイド爪9を設けている。ガイド爪9は、一側面7から立ち上がる基部9aと、基部9aから互いに接近する方向に一側面7と平行に延びる係止部9bとを備える。この左右の係止部9b相互は離間している。
【0015】
上記した係止部9bと一側面7との間の隙間が、前記したブラケット5の左右両側部5aが挿入される挿入溝11となる。
【0016】
図3(b)は、図3(a)のB−B線に沿う断面図であり、ブラケット5を上記した挿入溝11に挿入した状態では、ブラケット5の左右両側部5aと挿入溝11の側面11aとの間には、隙間13が形成される。なお、図3(a),(b)は、ブラケット5を挿入溝11に挿入した状態を二点鎖線で示している。
【0017】
そして、この挿入溝11の側面11aに、ブラケット5の左右両側端面5a1に向けて突出して該両側端面5a1に接触する突起部15を、左右両側部5aに沿って複数(ここでは一方の側部に3個、全部で6個)設けている。
【0018】
突起部15は、図3(b)に示すように、基部側対して先端側ほど細くなる先細形状となるように、平面視でほぼ二等辺三角形状を呈している。したがって、この突起部15は、図1中の矢印Cで示すブラケット5の挿入溝11への挿入方向に対向する部位に、基端側に対して先端側ほど前記挿入方向前方側となる傾斜面15aを備えていることになる。
【0019】
このような突起部15は、ブラケット5を樹脂ケース1の挿入溝11に挿入した状態では、その先端部がブラケット5の左右両側端面5a1に少なくとも接触する状態とするが、ここでは、ブラケット5の図3中で左右方向の幅を、左右の突起部15の先端部相互の間隔より若干広い寸法としている。このため、ブラケット5を挿入溝11に挿入した状態では、突起部15の先端が潰れ変形した状態となる。
【0020】
図4は、上記図2のようにブラケット5を挿入溝11に挿入した状態で、ガイド爪9の係止部9bを省略した斜視図であり、突起部15の先端が潰れ変形した状態を示している。
【0021】
また、樹脂ケース1のブラケット保持部3には、左右のガイド爪9相互間の一側面7上に位置する位置決め突起17を設けている。位置決め突起17は、ブラケット5の挿入方向に沿って延び、互いに離間した状態の2本の凸部からなり、これら各凸部の上面は、その長手方向中央部が図1中で最も上方に突出し、前記挿入方向の前後両端に向けて高さが低くなるガイド傾斜面17a,17bをそれぞれ備え、前記挿入方向と直交する左右側方から見て全体として低い山形状(図6参照)となっている。
【0022】
この位置決め突起17に対応してブラケット5には、位置決め凹部となる円形の位置きめ孔5bを設けている。ブラケット5を挿入溝11に挿入した状態で、この位置きめ孔5bの内周面に、位置決め突起17の前記挿入方向前後両端部17a1,17b1が内接した状態となる。
【0023】
また、上記した位置決め孔5bに対してブラケット5の挿入方向前方の前端部には、先端側ほど位置決め突起17の突出方向でかつ前記挿入方向前方に向けて傾斜するガイド傾斜部5cを設けている。このガイド傾斜部5cは、ブラケット5の前端部における左右幅方向中央部を、樹脂ケース1の一側面7から離れる方向に折り曲げ加工して形成してあり、ブラケット5を挿入溝11に挿入する際に、樹脂ケース1側の位置決め突起17に乗り上げて、位置決め突起17を位置決め孔5bに入り込ませる役目を果たす。
【0024】
上記した樹脂ケースのブラケット取付構造において、図示しない自動車の車体に図外の部位を固定するブラケット5を、図1の状態から矢印Cで示す方向に樹脂ケース1の挿入溝11に挿入すると、図5(a)に示すように、まず先端角部が一番手前にある突起部15の傾斜面15aに当接し、さらに押し込むことで、図5(b)に示すように、突起部15は挿入方向前方に倒れるようにして潰れ変形する。
【0025】
図5(b)の状態からブラケット5をさらに押し込むことで、さらに前方にある2つの突起部15が、上記と同様にして順次変形し、前記図2,4のように完全に押し込んだ状態で、左右3つずつある全部で6つすべての突起部15が変形した状態となる。この状態で、ブラケット5は、左右の変形した突起部15によって挟持されることになる。
【0026】
一方、上記したブラケット5の挿入過程では、図6に示すように、ブラケット5における先端のガイド傾斜部5cの下面が、樹脂ケース1における位置決め突起17のガイド傾斜面17aに接触して乗り上げる。
【0027】
これによりブラケット5は、その後方(図6中で右側)の位置決め孔5bを含む部位が樹脂ケース1の表面(一側面7)からが浮き上がり、さらにブラケット5を押し込むことで、図2,図4のように、位置決め突起17が位置決め孔5bに入り込んだ状態となって位置決めされる。
【0028】
上記図2,図4のように、ブラケット5が樹脂ケース1の挿入溝11に挿入された状態では、位置決め突起17と位置決め孔5bにより主として挿入方向の位置決めがなされ、また、左右方向については、樹脂ケース1側の左右に位置する変形した突起部15によりブラケット5が挟持された状態となるので、樹脂ケース1とブラケット5との結合は、ガタツキを抑えつつ強固なものとなり、挿入溝11のブラケット5に対する保持力を充分確保することができる。
【0029】
ここで、ブラケット5の図3中で左右方向の幅は、左右の突起部15の先端部相互の間隔より若干広く、かつ、左右の挿入溝11の側面11a相互の間隔より狭い寸法とすればよく、これにより、ブラケット5の挿入溝11への挿入時に、差込力(挿入力)を小さく抑えた状態で突起部15を変形させることができる。
【0030】
上記のように、本実施形態ではブラケット5の挿入時の力が小さくて済むので、組み付け作業性が向上して生産性が向上し、治具なども不要となり、製造コストを削減することができる。また、ブラケット5と樹脂ケース1の挿入溝11との相互の隙間13の寸法については、突起部15の先端がブラケット5の左右両側端面5a1に少なくとも接触していればよいので、高精度に管理する必要がなく、その分製造コストを削減することができる。
【0031】
突起部15を設けていない構造で、左右の挿入溝11での保持力を確保するには、ブラケット5の図3中で左右方向の幅を、左右の挿入溝11相互の間隔より広くした状態で挿入する必要があり、この場合には、差込力(挿入力)が極めて大きくなり、作業性の悪化を招くことになる。
【0032】
また、突起部15のブラケット5の挿入方向に対向する部位に傾斜面15aを設けているので、この傾斜面15aにブラケット5の先端角部が当接して突起部15の変形が容易となり、前記した挿入力をより軽減することができ、組み付け作業性向上に寄与することができる。
【0033】
さらに、突起部15を先細形状としているので、挿入時でのブラケット5の突起部15との接触面積を小さくすることができて前記した挿入力をさらに軽減できるとともに、ブラケット5は基端側が太くなっていることで、この太くなった部位にてブラケット5を挟持することになるので、保持力としては高く維持することができる。
【0034】
なお、上記した実施形態での突起部15は、図3(b)に示すように、平面視で二等辺三角形となるような形状としているが、図7に示すように、ブラケット5の挿入方向前方に対向する傾斜面15a1をその前方に位置する前方傾斜面15bよりも傾斜角度を緩やかにしてもよい。なお、ここでの前方傾斜面15bは、前記した実施形態における傾斜面15aと同等の傾斜角度である。
【0035】
これにより、前記した実施形態に比較してブラケット5の挿入溝11への挿入力がより軽減し、組み付け作業性がさらに向上する。
【0036】
なお、上記した樹脂ケース1の一側部7に設けたブラケット保持部3は、樹脂ケース1の他の側部にも設けてあり、これら各ブラケット保持部3は取付対象物によって使い分ければよい。
【0037】
次に上記した本発明の実施形態から考えられる、より好ましい形態について、以下に記載する。
【0038】
(1)請求項2に記載の樹脂ケースのブラケット取付構造において、前記突起部は、前記傾斜面に対して前記挿入方向前方側に、基端側に対して先端側ほど前記挿入方向後方側となる前方傾斜面を設け、この前方傾斜面の傾斜角度よりも前記傾斜面の傾斜角度を緩やかとしたことを特徴とする。
【0039】
このように構成すれば、ブラケットの挿入溝への挿入力がより軽減し、組み付け作業性がさらに向上するという効果を得ることができる。
【0040】
(2)請求項1ないし3のいずれか1項に記載の樹脂ケースのブラケット取付構造において、前記ブラケット保持部に、前記ブラケットの位置決めを行う位置決め突起を設ける一方、前記ブラケットには、前記位置決め突起が入り込む位置決め凹部を設け、この位置決め凹部に対して前記ブラケットの前記挿入方向前方の前端部には、先端側ほど前記位置決め突起の突出方向でかつ前記挿入方向前方に向けて傾斜するガイド傾斜部を設けたことを特徴とする。
【0041】
このように構成すれば、ブラケットを挿入溝に挿入する際に、樹脂ケースの位置決め突起に対してブラケットのガイド傾斜部が乗り上げるので、その後方に位置する位置決め凹部に位置決め突起が容易に入り込むという効果を得ることができる。
【0042】
(3)請求項1ないし3のいずれか1項に記載の樹脂ケースのブラケット取付構造において、前記突起部の先端は、前記ブラケットを前記挿入溝に挿入した状態で前記ブラケットの側端面に接触して潰れ変形していることを特徴とする。
【0043】
このように構成すれば、ブラケットは、潰れ変形した突起部によって確実に保持されるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係わる樹脂ケースのブラケット取付構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1に対し、樹脂ケースのブラケット保持部にブラケットを保持させた状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は、図1のA−A矢視断面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図4】ブラケットを挿入溝に挿入した状態で、ガイド爪の係止部を省略した斜視図である。
【図5】ブラケットを樹脂ケースのガイド溝に挿入する過程を示す動作説明図である。
【図6】ブラケット先端のガイド傾斜部と樹脂ケースの位置決め突起との関係を示す動作説明図である。
【図7】樹脂ケースに設けた突起部の別の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 樹脂ケース
3 樹脂ケースのブラケット保持部
5 ブラケット
5a ブラケットの左右両側部
5a1 ブラケットの左右両側端面
11 樹脂ケースの挿入溝
15 挿入溝に設けた突起部
15a,15a1 突起部の傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ケースを取付対象物に取り付けるためのブラケットを保持するブラケット保持部が、前記樹脂ケースに設けられた樹脂ケースのブラケット取付構造において、前記ブラケット保持部は、前記ブラケットの左右両側部が挿入される挿入溝を備え、この挿入溝に、前記ブラケットの側端面に向けて突出して該側端面に接触する突起部を設けたことを特徴とする樹脂ケースのブラケット取付構造。
【請求項2】
前記突起部は、前記ブラケットの前記挿入溝への挿入方向に対向する部位に、基端側に対して先端側ほど前記挿入方向前方側となる傾斜面を備えていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂ケースのブラケット取付構造。
【請求項3】
前記突起部は、基端側に対して先端側ほど細くなる先細形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂ケースのブラケット取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−177229(P2008−177229A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7109(P2007−7109)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】