説明

樹脂ネットの取り付け方法

【課題】手間を要することなく、カウルルーバに樹脂ネットを取り付ける方法を提供することである。
【解決手段】カウルルーバ10は、屈曲部位10aによって繋げられた少なくとも2つのパネル面16、18を備えており、この両パネル面16、18に外気取入口16a、18aがそれぞれ形成されている。樹脂ネット20には、その厚み方向を貫通するように、屈曲部位10aに沿う格好で点線状の切り込み22が形成されている。切り込み22は、少なくとも、その両端が切り欠かれるように形成されている。そして、切り込み22を屈曲部位10aに沿って折り曲げた状態で外気取入口16a、18aを覆うように樹脂ネット20を両パネル面16、18に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ネットの取り付け方法に関し、詳しくは、カウルルーバに樹脂ネットを取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スリット状または格子状の外気取入口が形成されているカウルルーバから車室内に空調用の外気を取り込む技術が既に知られている。ここで、下記特許文献1には、外気取入口の縁に網体を取り付けた(溶着させた)カウルルーバが開示されている。これにより、粉塵や粉雪等が車室内に侵入することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−113478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、空調能力を満たす観点から外気取入口の開口面積を広く確保することが求められている場合、例えば、図7に示すように、略L字状に繋げられた2つのパネル面(例えば、図7で示す、縦壁面116、横壁面118)からカウルルーバ110が構成され、これら両パネル面116、118にそれぞれ外気取入口116a、118aが形成されている場合、2枚の網体120、120を両外気取入口116a、118aの縁に個別に取り付ける必要があるため、これらの取り付けに手間を要するという問題が発生していた。この問題を解決するために、これら2枚の網体を並べたサイズに相当する1枚の大きな網体を略L字状の屈曲部位に沿って折り曲げ、この折り曲げた網体を両外気取入口の縁に取り付けることも考えられた。しかしながら、この考えでは、例えば、網体が樹脂ネットである場合、折り曲げに伴って網体に弾性力が作用するため、取り付けの作業性が悪くなり、結果的に、取り付けに要する手間を改善することができなかった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、手間を要することなく、カウルルーバに樹脂ネットを取り付ける方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、屈曲部位によって繋げられた少なくとも2つのパネル面を備えており、この両パネル面に外気取入口がそれぞれ形成されているカウルルーバに樹脂ネットを取り付ける方法であって、樹脂ネットには、その厚み方向を貫通するように、屈曲部位に沿う格好で点線状の切り込みが形成されており、切り込みは、少なくとも、その両端が切り欠かれるように形成されており、切り込みを屈曲部位に沿って折り曲げた状態で外気取入口を覆うように樹脂ネットを両パネル面に取り付けることを特徴とする方法である。
この方法によれば、樹脂ネットを切り込みに沿って折り曲げ状態に保持させることができるため、従来技術で説明したように、折り曲げに伴って樹脂ネットに弾性力が作用することがない。これにより、取り付けの作業性の悪化を防ぐことができ、結果的に、取り付けに要する手間を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るカウルルーバを適用した車両の縦断面一部を示す図である。
【図2】図2は、図1のカウルルーバに取り付ける前の樹脂ネットの平面図である。
【図3】図3は、本発明の実施例2に係るカウルルーバに取り付ける前の樹脂ネットの平面図である。
【図4】図4は、本発明の実施例3に係るカウルルーバに取り付ける前の樹脂ネットの平面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例4に係るカウルルーバに取り付ける前の樹脂ネットの平面図である。
【図6】図6は、本発明の実施例5に係るカウルルーバに取り付ける前の樹脂ネットの平面図である。
【図7】図7は、従来技術に係るカウルルーバを適用した車両の縦断面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、図1〜2を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、上、下、前、後とは、上述した図1に記載した、上、下、前、後の方向、すなわち、車両を基準にしたときの上、下、前、後の方向を示している。
【0009】
はじめに、本発明の実施例1に係るカウルルーバ10の概略構成を説明する。図1に示すように、カウルルーバ10は、その縦断面が略コ字状を成すように傾斜面12と底面14と縦壁面16とから成る凹み部位と、この凹み部位の縦壁面16から後方に向けて延設された横壁面18とから構成されており、車幅方向に延びるカバー部材である。
【0010】
この図1からも明らかなように、横壁面18は縦壁面16に対して略L字状に(屈曲部位10aによって)屈曲する格好で形成されている。この記載が、特許請求の範囲に記載の「屈曲部位によって繋げられた少なくとも2つのパネル面」に相当する。
【0011】
縦壁面16には、その長手方向(この場合、車幅方向)に沿って矩形状の外気取入口16aが形成されている。また、横壁面18にも、縦壁面16と同様に、その長手方向(この場合、車幅方向)に沿って矩形状の外気取入口18aが形成されている。なお、これら傾斜面12、底面14、縦壁面16および横壁面18とから構成されているカウルルーバ10は、例えば、剛性を有する合成樹脂によって一体的に成形されている。
【0012】
この縦壁面16と横壁面18との内面には、その両外気取入口16a、18aを覆うように、矩形状の樹脂ネット(例えば、線径φ0.3で16メッシュ/インチの樹脂製のネット)20が取り付けられている(例えば、溶着によって取り付けられている)。ここで、図2を参照して、樹脂ネット20について詳述すると、樹脂ネット20には、その厚み方向を貫通する点線状の切り込み22が形成されている(図2において、太線が切り欠かれている箇所を示している)。
【0013】
この切り込み22は、上述したように、縦壁面16と横壁面18との内面に樹脂ネット20を溶着させるとき、これら縦壁面16と横壁面18とを繋ぐ屈曲部位10aに沿う格好となるように形成されている。また、この切り込み22は、その両端が切り欠かれるように形成されている。
【0014】
そして、樹脂ネット20は、その切り込み22を屈曲部位10aに沿って折り曲げた状態で両外気取入口16a、18aを覆うように、縦壁面16と横壁面18との内面に取り付けられている。カウルルーバ10は、このように構成されている。なお、この実施例1では、カウルルーバ10は、車幅方向に沿って形成されているため、切り込み22も樹脂ネット20の長手方向に沿って形成されている。
【0015】
次に、図1に戻って、上述したカウルルーバ10を車両1に組み付ける構成を説明する。図1において、2は、車両1の内部の車室である。この車室2の前側には、フロントガラス30が設けられている。3は、車両1のエンジンルームである。4は、車両フレームの一部である。
【0016】
そして、接着剤40、40を介してカウルルーバ10の横壁面18の後縁にフロントガラス30の下縁を挟み込ませ、さらに、クリップ(図示しない)を介してカウルルーバ10の底面14を車両フレーム4に締結させて、カウルルーバ10を車室2とエンジンルーム3との間に組み付けている。
【0017】
なお、カウルルーバ10の傾斜面12の前縁には、ボンネット60の後端を受けるシール材50が組み付けられている。これにより、カウルルーバ10とボンネット60との間の隙間から、異物がエンジンルーム3に入り込むことを防止できる。カウルルーバ10は、このように組み付けられている。
【0018】
本発明の実施例1に係る樹脂ネット20は、上述した方法で取り付けられている。この方法によれば、樹脂ネット20を切り込み22に沿って折り曲げ状態に保持させることができるため、従来技術で説明したように、折り曲げに伴って樹脂ネット20に弾性力が作用することがない。これにより、取り付けの作業性の悪化を防ぐことができ、結果的に、取り付けに要する手間を改善することができる。
【0019】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を、図3を用いて説明する。この実施例2は、既に説明した実施例1と比較すると、樹脂ネット20に形成されている切り込み22の形状が相違している。すなわち、実施例1では、切り込み22が樹脂ネット20の長手方向に沿って形成されている形態を説明した。これに対し、この実施例2では、切り込み22が樹脂ネット20の長手方向に対して緩やかに曲がる格好となるように形成されている。このように形成されていると、実施例1で説明した効果を得ることができると共に、例えば、カウルルーバ10が、車幅方向に緩やかに曲がっている場合でも、カウルルーバ10の縦壁面16と横壁面18との内面に樹脂ネット20をしっかりと取り付けることができる。
【0020】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3を、図4を用いて説明する。この実施例3は、既に説明した実施例2と比較すると、樹脂ネット20に形成されている切り込み22の形状が相違している。すなわち、実施例2では、切り込み22が樹脂ネット20の長手方向に対して緩やかに曲がる格好となるように形成されている形態を説明した。これに対し、この実施例3では、実施例2の切り込み22に対して、さらに、交差する格好にも、切り込み22が形成されている。このように形成されていると、実施例1で説明した効果を得ることができると共に、例えば、カウルルーバ10が、車幅方向に曲がっている場合でも、カウルルーバ10の縦壁面16と横壁面18との内面に樹脂ネット20をしっかりと取り付けることができる。
【0021】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4を、図5を用いて説明する。この実施例4は、既に説明した実施例2と比較すると、樹脂ネット20に形成されている切り込み22の形状が相違している。すなわち、実施例2では、切り込み22が略線状に形成されている形態を説明した。これに対し、この実施例4では、切り込み22がスリット状に形成されている。このように形成されていると、実施例1で説明した効果を得ることができると共に、例えば、カウルルーバ10が、車幅方向に大きく曲がっている場合でも、カウルルーバ10の縦壁面16と横壁面18との内面に樹脂ネット20をしっかりと取り付けることができる。
【0022】
(実施例5)
最後に、本発明の実施例5を、図6を用いて説明する。この実施例5は、既に説明した実施例3と比較すると、樹脂ネット20に形成されている切り込み22の形状が相違している。すなわち、実施例3では、切り込み22が略線状に形成されている形態を説明した。これに対し、この実施例5では、切り込み22がスリット状に形成されている。このように形成されていると、実施例1で説明した効果を得ることができると共に、例えば、カウルルーバ10が、車幅方向により大きく曲がっている場合でも、カウルルーバ10の縦壁面16と横壁面18との内面に樹脂ネット20をしっかりと取り付けることができる。
【0023】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
各実施例では、2面(縦壁面16と横壁面18)にわたって樹脂ネット20を取り付ける構成を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、3面以上にわたって樹脂ネット20を取り付ける構成でも構わない。
【0024】
また、実施例4、5では、切り込み22がスリット状に形成されている構成を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、例えば、打ち抜き孔状に形成されている構成でも構わない。
【符号の説明】
【0025】
10 カウルルーバ
10a 屈曲部位
16 縦壁面(パネル面)
16a 外気取入口
18 横壁面(パネル面)
18a 外気取入口
20 樹脂ネット
22 切り込み



【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部位によって繋げられた少なくとも2つのパネル面を備えており、この両パネル面に外気取入口がそれぞれ形成されているカウルルーバに樹脂ネットを取り付ける方法であって、
樹脂ネットには、その厚み方向を貫通するように、屈曲部位に沿う格好で点線状の切り込みが形成されており、
切り込みは、少なくとも、その両端が切り欠かれるように形成されており、
切り込みを屈曲部位に沿って折り曲げた状態で外気取入口を覆うように樹脂ネットを両パネル面に取り付けることを特徴とする樹脂ネットの取り付け方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−116261(P2011−116261A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276086(P2009−276086)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】